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忍路

インフォメーション

題名：忍路著者：出口王仁三郎

ページ：148 目次メモ：

概要：備考：『故山の夢』p281-284 タグ：データ凡例：データ最終更新日：2023-11-06 12:22:44 OBC ：B121808c67

─二十五六歳の頃─

白梅(しらうめ)の花から桃へ桜へと蝶のごとくにうつらふわかき日

桃色の面(おも)はうるはし桜花(さくらばな)のかをるもめぐし春のこころは

吾(わ)が軒(のき)に巣くふ燕(つばめ)の仲のよさつらつらみつつもゆる胸の火

紫雲英(れんげ)咲く田(た)の面(も)にたてばその君(きみ)の姿霞(かすみ)のなかにうきをり

春の野(の)は人の目しげし紫雲英(れんげ)咲くああこの赤き花のむしろよ

二尺余りのびたる麦の畑(はた)いくつすかして見ゆる姉(あね)さんかぶりよ

吾(わ)がもゆる心も雲雀(ひばり)は白雲(しらくも)の空からしきりにぞよいてゐやがる

森かげに簔(みの)うちしきてやすみをれば彼女は母とわが前とほる

吾(わ)が恋ふる人の母とは思へども心に淡きいまはしさのわく

母親の後(あと)よりちらちらふりむきて吾(わ)が面(おも)見つつゆく女かな

吾(われ)もまた彼女のかげの隠るまで目をそばだててのびあがりつつ

掌中(しやうちう)の玉を奪(と)られし心地してわれ森かげに呆然と立てり

○

あしびきの山鳥(やまどり)の尾の長(なが)ながし春空(はるぞら)の日はかたむかぬかな

やうやくに日はかたむきぬ野良仕事をはりて吾(われ)は家路に帰る

夕飯(ゆふはん)の箸(はし)投げ捨ててしのびしのび彼女が家(いへ)の軒(のき)にたたずむ

おそること一つも知らぬ吾(われ)ながら何故(なぜ)か彼女の前には弱かり

春の夜(よ)はなやましかりき花にほひ鳥はうたへど吾(わ)が恋遠し

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