霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 (あや)しの(をんな)〔五三七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第3篇 探険奇聞 よみ:たんけんきぶん
章:第11章 怪しの女 よみ:あやしのおんな 通し章番号:537
口述日:1922(大正11)年03月17日(旧02月19日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
天津祝詞を唱え終わって、一同は怪しい声がする方へと進んできた。道は狭くなってくる。すると傍らの岸壁に小窓が開いており、そこからたいへんな美人がちらりと顔をのぞかせた。一同は妖怪変化かと警戒しながら、先を争って窓から中を覗き込む。
美人はまたしても窓から顔をのぞかせ、三五教の宣伝歌を歌い始めた。鷹彦は、これは三五教の宣伝使が閉じ込められているのかもしれない、と言った。
岩彦は入口がないかと辺りを探し、妙な石が落ちているのを見つけた。石を押しのけると、仕掛けが出てきたので引っ張ると、石戸がめくれて開いた。
一同は中に入り、石段を登っていくと、二坪ばかりの平面な部屋に、先ほどの美人が座っていた。岩彦はてっきり妖怪変化かと思い、女を怒鳴りつけるが、女は平然としている。
女は一同の名前を知っており、また昨日からここで皆が来るのを待っていたのだ、という。鷹彦は名前を尋ねるが、女は三五教の宣伝使であれば、自分を知っているはずだ、と答える。
そこへ外から宣伝歌が聞こえてきた。そして小窓から中を覗き込んだのは、日の出別宣伝使であった。岩彦はにわかに元気付いて、女に対して正体をあらわせ、と毒づく。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:132頁 八幡書店版:第3輯 79頁 修補版: 校定版:132頁 普及版:56頁 初版: ページ備考:
001 一同(いちどう)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(をは)つて、002(あや)しき(こゑ)する(はう)(むか)つて強行的(きやうかうてき)前進(ぜんしん)(つづ)けた。003(みち)はおひおひ(せま)くなつて()た。
004岩彦(いはひこ)『ヤア(せま)いぞ、005まるで羊腸(やうちやう)小径(こみち)だ、006()をつけよ』
007梅彦(うめひこ)窈窕(ようてう)嬋研(せんけん)たる美人(びじん)嬌音(けうおん)(きこ)えて()るぢやないか、008中々(なかなか)もつて前途(ぜんと)有望(いうばう)だ』
009音彦(おとひこ)(なん)だ、010気楽(きらく)さうに魔窟(まくつ)探険(たんけん)()てゐながら窈窕(ようてう)美人(びじん)もあつたものかい。011何処(どこ)までも貴様(きさま)はウラル(しき)発揮(はつき)する(をとこ)だな』
012梅彦(うめひこ)三歳児(みつご)(たましひ)(ひやく)まで(とほ)せだ、013(すずめ)(ひやく)まで(をど)りを(わす)れぬ。014(いは)んや青春(せいしゆん)()()ゆる梅彦(うめひこ)(おい)てをやだ』
015岩彦(いはひこ)『アハヽヽヽ、016それにしても最前(さいぜん)(あや)しき(こゑ)(なん)だつたらう。017(ぼく)(はなは)(もつ)諒解(りやうかい)(くる)しまざるを()ないわ』
018亀彦(かめひこ)『あれは魔神(まがみ)(ささや)きだよ。019天津(あまつ)祝詞(のりと)言霊(ことたま)(はた)()(ほこ)(をさ)めて予定(よてい)退却(たいきやく)出掛(でかけ)たのだよ。020オイオイ段々(だんだん)(せま)くなつて(あたま)がつかへるぢやないか』
021鷹彦(たかひこ)『フルのケ原(がはら)()(なか)
022(そそ)()ちたる(いは)(やま)
023(しこ)巌窟(いはや)()つの(あな)
024探険(たんけん)せむと()()れば
025六道(ろくだう)(つじ)()らねども
026此処(ここ)一行(いつかう)(めぐ)()
027力限(ちからかぎ)りに岩壁(がんぺき)
028()した途端(とたん)亀彦(かめひこ)
029(おも)(がけ)()陥穽(おとしあな)
030(うな)りをたてて直線(ちよくせん)
031ザンブと(ばか)墜落(つゐらく)
032()かぬ(ばか)りに(こゑ)たてて
033慈悲(じひ)ぢや(なさけ)ぢや宣伝使(せんでんし)
034何卒(どうぞ)生命(いのち)をお(たす)けと
035吠面(ほえづら)かわく可笑(をか)しさに
036吾等(われら)五人(ごにん)逸早(いちはや)
037井戸端(ゐどばた)会議(くわいぎ)開会(かいくわい)
038多数決(たすうけつ)にて亀彦(かめひこ)
039(すく)ふは全然(ぜんぜん)不可能(ふかのう)
040決定(けつてい)したる(とき)(とき)
041なまくら海鼠(なまこ)亀彦(かめひこ)
042()えて()るかと(おも)ひきや
043素知(そし)らぬ(かほ)にてムクムクと
044階段(かいだん)(のぼ)吾前(わがまへ)
045(あら)はれ(きた)可笑(をか)しさよ
046シヅの巌窟(いはや)魔窟原(まくつはら)
047(しこ)魔神(まがみ)言向(ことむ)けて
048世人(よびと)(がい)(のぞ)かむと
049(かた)らふ(をり)しも何処(どこ)となく
050呂律(ろれつ)()はぬ言霊(ことたま)
051拍子(へうし)ぬけたる(うな)(ごゑ)
052これはてつきり曲神(まがかみ)
053悪戯事(いたづらごと)推断(すゐだん)
054天津(あまつ)祝詞(のりと)(とな)ふれば
055流石(さすが)(たけ)曲津見(まがつみ)
056(けむり)(ごと)()()せて
057(あと)しら(ゆき)()けて()
058此処(ここ)一行(いつかう)六人(ろくにん)
059(あし)(はや)めて前進(ぜんしん)
060ヤツト(きま)つた羊腸(やうちやう)
061小径(こみち)岩穴(がんけつ)辿(たど)りつつ
062()けども()けども(かぎ)りなく
063(はや)(こころ)細道(ほそみち)
064長蛇(ちやうだ)(ぢん)()きつつも
065いよいよ此処(ここ)喇叭口(ラツパぐち)
066(ひら)いて(うれ)広庭(ひろには)
067(きた)りて()ればあら不思議(ふしぎ)
068(はる)弥生(やよい)(うぐひす)
069秋野(あきの)にすだく鈴虫(すずむし)
070それより(きよ)宣伝歌(せんでんか)
071何処(いづく)ともなく(きこ)()
072アヽ(いぶか)しや(いぶか)しや
073(かみ)(おもて)(あら)はれて
074(ぜん)(あく)とを()()ける
075(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
076(こころ)(ひろ)巌窟(がんくつ)
077魔神(まがみ)征服(せいふく)面白(おもしろ)
078アヽ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
079(すす)めよ(すす)めいざ(すす)
080如何(いか)なる悪魔(あくま)(きた)るとも
081大和心(やまとごころ)()(おこ)
082(いづ)雄健(をたけ)()(たけ)
083(いづ)嘖譲(ころび)(おこ)しつつ
084一歩(いつぽ)退(しりぞ)くこと(なか)
085(すす)めや(すす)(いは)(みち)
086(うた)(をり)しも(かたはら)岩壁(がんぺき)より(ゆき)(あざむ)婉麗(ゑんれい)なる美人(びじん)(かほ)087チラリと此方(こなた)(のぞ)()る。
088 梅彦(うめひこ)(さと)くも(この)(かほ)()て、
089『ヤア大変(たいへん)だ、090()たぞ()たぞ。091ドツコイシヨ』
092()ひながら尻餅(しりもち)()く。
093『ヤアヤア、094()つた()つた。095()()た』
096鷹彦(たかひこ)()たとは(なん)だ。097(べつ)(なん)にも()ないぢやないか』
098梅彦(うめひこ)()ないの、099()るのつて、100意外(いぐわい)(やつ)()るのだもの』
101鷹彦(たかひこ)(なに)()るのだい』
102 梅彦(うめひこ)(かたはら)岩穴(いはあな)(ゆび)さし、
103『マアマア、104あれを()い』
105鷹彦(たかひこ)『なんだ梅公(うめこう)106コンナ(ところ)(こし)(おろ)して、107(はや)()たぬかい』
108梅彦(うめひこ)『イヤあまり()(なが)し、109綺麓(きれい)花盛(はなざか)りだから一寸(ちよつと)ここで(こし)()()けて(はな)見物(けんぶつ)だ。110貴様等(きさまら)仕様(しやう)()窈窕嬋研(ようてうせんけん)たる美人(びじん)だなぞと()ふものだから、111()けの(やつ)112御註文(ごちゆうもん)(どほ)別嬪(べつぴん)になつて()けて()よつたのだよ』
113岩彦(いはひこ)『アハヽヽヽ、114此奴(こいつ)チツト逆上(ぎやくじやう)して()るな。115()にも()はせないぢやないか。116(ある)きもつて(ゆめ)()(やつ)何処(どこ)にあるかい』
117梅彦(うめひこ)(ゆめ)ぢや()いぞ、118(うつつ)ぢや()いぞ、119(まぼろし)ぢや()いぞ。120ゆめゆめ(うたが)ふな』
121音彦(おとひこ)『ヤア此奴(こいつ)(へん)だぞ。122オイ梅公(うめこう)123貴様(きさま)はバのケぢやないか。124フルのケ原(がはら)妖怪(えうくわい)そつくりのロジックを使(つか)ひよつて』
125梅彦(うめひこ)『ヤア(けつ)して(けつ)して、126妖怪(えうくわい)どころか、127マアその(いは)(あな)(のぞ)いて()よ。128あの(うつく)しい(こゑ)出所(でどころ)はその(あな)(なか)だよ』
129 駒公(こまこう)(いは)()きつき背伸(せの)びをし(なが)ら、130梅彦(うめひこ)(ゆび)さした岩壁(がんぺき)(あな)一寸(ちよつと)(のぞ)き『ヤア』と()つたきりズルズルドスン、
131『アイタヽ、132イヤもう如何(どう)にも()うにも()(くわい)()(くわい)133奇妙(きめう)きてれつ134古今独歩(ここんどつぽ)135珍無類(ちんむるゐ)金覆輪(きんぷくりん)覆輪(ぷくりん)々々(ぷくりん)だ』
136岩彦(いはひこ)(なん)だ、137二人(ふたり)(とも)あの(あな)(のぞ)いては()(たい)(こと)()ひよる。138どら(おれ)(ひと)厳重(げんぢゆう)臨検(りんけん)してやらう』
139()(なが)(また)もや岩壁(がんぺき)()(のぼ)り、140一寸(ちよつと)(なか)(のぞ)いて()て、
141『ヤア()()る、142素敵(すてき)滅法界(めつぽふかい)魔性(ましやう)(をんな)だ』
143鷹彦(たかひこ)『ドレドレ、144(おれ)(ひと)魔性(ましやう)(をんな)首実検(くびじつけん)出掛(でかけ)てやらう』
145岩彦(いはひこ)『ヤア、146()つた()つた、147梅公(うめこう)駒公(こまこう)(やつ)148(こし)()かしよつた(やう)美人(びじん)だ。149成功(せいこう)したのはこの(いは)サン(ばか)りだ。150先取権(せんしゆけん)(おれ)にある。151()るなら()せてやらぬ(こと)()いが、152何程(いくら)コンミツシヨンを()すか』
153鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、154貴様(きさま)たちは化物(ばけもの)であらうが(なん)であらうが、155(をんな)でさへあれば()いのだな』
156岩彦(いはひこ)天地(てんち)開闢(かいびやく)(はじ)めより(をんな)ならでは()()けぬ(くに)だ。157これや(また)(なん)とした有難(ありがた)(こと)だらう、158これだから(たび)()いもの(つら)いものと()ふのだい』
159鷹彦(たかひこ)『ともかく()()(ぐらゐ)無料(むれう)でもよからう。160(べつ)(おれ)慧眼(けいがん)一瞥(いちべつ)したと()つたとて、161それがために(やせ)るものでもあるまい。162また(はる)(こほり)(やう)()けもせまいから』
163音彦(おとひこ)鷹彦(たかひこ)サン、164亀公(かめこう)三角(さんかく)同盟(どうめい)(むす)んで此奴等(こいつら)堅塁(けんるゐ)粉砕(ふんさい)し、165(ひと)(その)美人(びじん)占領(せんりやう)したら如何(どう)ですか』
166岩彦(いはひこ)占領(せんりやう)しようと()つたつて(いは)(なか)()岩姫(いはひめ)だ。167如何(どう)する(こと)出来(でき)やしない』
168 この(とき)(また)もや美人(びじん)(いは)(くち)(うるは)しき面貌(めんばう)(あら)はし、169ニタリと(わら)(なが)ら、
170(かみ)(おもて)(あら)はれて
171(ぜん)(あく)とを()()ける
172この()(つく)りし神直日(かむなほひ)
173(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
174(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
175直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)せ』
176岩彦(いはひこ)『ヤアこの化物(ばけもの)177洒落(しやれ)てやがる。178三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)(うた)つてるぢやないか。179チツト合点(がてん)がゆかぬぢやないか』
180 鷹彦(たかひこ)諸手(もろて)()んで(やや)そり(かへ)(なが)ら、
181鷹彦(たかひこ)『ウーン、182ウン、183オイ一同(いちどう)宣伝使(せんでんし)184これや(なん)でも三五教(あななひけう)(をんな)宣伝使(せんでんし)相違(さうゐ)ないぞ』
185岩彦(いはひこ)入口(いりぐち)()いのに、186コンナ(ほそ)(あな)から化物(ばけもの)ぢや()ければ、187出入(しゆつにふ)する(こと)出来(でき)ぬぢやないか。188これやこれやてつきりバの()にケの()ぢや』
189 鷹彦(たかひこ)(くび)()りながら、
190鷹彦(たかひこ)『イヤイヤ、191()()て。192沈思(ちんし)黙考(もくかう)する()けの余地(よち)十分(じふぶん)にある。193(なん)でも豪胆(がうたん)宣伝使(せんでんし)吾々(われわれ)(ごと)探険(たんけん)にやつて()魔神(まがみ)計略(けいりやく)にかかり、194(いは)(なか)()()められて()るのかも()れない。195(ひと)力限(ちからかぎ)りこの(ほら)岩壁(がんぺき)()して()ようか、196何処(どこ)かに(かく)()があるに(ちが)ひないぞ』
197音彦(おとひこ)『あまり(ちから)()れて()すと、198また亀公(かめこう)(やう)空中滑走(くうちうくわつそう)をやつて井戸(ゐど)(そこ)着水(ちやくすゐ)するかも()れない。199やあわり()したがよからう』
200岩彦(いはひこ)(なに)201躊躇(ちうちよ)逡巡(しゆんじゆん)する必要(ひつえう)があるか』
202()(なが)ら、203あたりの岩壁(がんぺき)金剛力(こんがうりき)()してウンウンと()して()て、
204『アヽ、205如何(どう)しても入口(いりぐち)がハツキリせぬわ、206これや(なん)でも仕掛(しかけ)があるに(ちが)ひない。207ヤア此処(ここ)(めう)(いし)()ちて()る、208(これ)仕掛(しかけ)かも()れぬぞ』
209()ひつつその(いし)片手(かたて)()ばしてグイと()()けた。210(たちま)両手(りやうて)這入(はい)(やう)恰好(かつかう)(あな)があいた。211岩公(いはこう)両手(りやうて)()つかけた(まま)ウンと背伸(せの)びをする途端(とたん)に、212(あつ)四五寸(しごすん)(ばか)りの(いし)一枚戸(いちまいど)()くれて()た。
213『ヨー、214コンナ(こと)をやつてゐよる。215(なん)でも入口(いりぐち)はこの(へん)にあるに(ちが)ひないぞ。216オイ(みな)(もの)217サア()()た』
218()(なが)(あな)(くぐ)つて一間(いつけん)(ばか)前進(ぜんしん)すると(また)もや(いは)()にピタリと()まつた。219岩彦(いはひこ)力限(ちからかぎ)(いは)()(むか)ふへ()した。220途端(とたん)岩戸(いはと)(おも)ひの(ほか)(かる)(ひら)いた。221一同(いちどう)(さき)(あらそ)うて岩戸(いはと)(なか)(すす)()るのであつた。222岩壁(がんぺき)には足掛(あしかけ)(きざ)まれてある。223それを一歩(ひとあし)々々(ひとあし)(のぼ)つて()くと二坪(ふたつぼ)ばかりの平面(へいめん)(ところ)がある。224その中央(ちうあう)容色(ようしよく)婉麗(ゑんれい)なる以前(いぜん)美人(びじん)がやや俯向(うつむ)き、225(はづか)しげに(すわ)つてゐた。226岩彦(いはひこ)()るより『ヤア』と(おどろ)いて(たふ)れむとしたが、227『ドツコイ』と()()(なほ)全身(ぜんしん)(ちから)()(なが)ら、228(こゑ)まで(ふる)はせ、
229岩彦(いはひこ)『ヤイヤイ、230ヤイ、231一体(いつたい)全体(ぜんたい)貴様(きさま)何物(なにもの)のお()けだ。232大蛇(をろち)か、233(おに)か、234(おほかみ)か、235古狐(ふるぎつね)か、236古狸(ふるたぬき)か、237もう()うなつては(ほとけ)(わん)ぢや、238かなはぬぞ。239()(てい)白状(はくじやう)(いた)せ。240吾々(われわれ)六人(ろくにん)勇士(ゆうし)包囲(はうゐ)されては、241もはや遁走(とんそう)する(こと)出来(でき)まい。242サア尋常(じんじやう)白旗(はくき)(かか)ぐるか、243開城(かいじやう)するか』
244(をんな)『ホヽヽ、245(これ)はしたり(にはか)宣伝使(せんでんし)岩彦(いはひこ)サンとやら、246大変(たいへん)なお元気(げんき)御座(ござ)いますこと』
247岩彦(いはひこ)益々(ますます)合点(がてん)のゆかぬ大怪物(だいくわいぶつ)248コラ、249貴様(きさま)何程(なにほど)うまく()けてもこの(はう)天眼通(てんがんつう)で、250チヤンと調(しら)べてあるのだ。251()(どく)(なが)貴様(きさま)(しり)()い。252(おほ)きな()()()えてるぢや()いか』
253(をんな)『ホヽヽヽヽ、254(なん)()()()えて()りますか。255大蛇(をろち)ですか、256(おほかみ)ですか、257(きつね)か、258獅子(しし)か、259(たぬき)か、260(ねこ)か、261(いたち)か、262(ねずみ)か、263あてて御覧(ごらん)
264岩彦(いはひこ)『ナヽヽ(なに)(ほざ)きよるのだ。265図太(づぶと)化物(ばけもの)()が。266一体(いつたい)(おれ)誰方(どなた)(おも)つてけつかる』
267(をんな)『ホヽヽヽヽ、268誰方(どなた)でもありませぬ、269此方(こなた)サンぢやと(おも)ひます。270オヽヽヽ可笑(をか)し、271元気(げんき)身体(からだ)272達者(たつしや)(さう)姿(すがた)
273岩彦(いはひこ)『コラ、274(おれ)()()えると()つたらよい()になつて、275元気(げんき)だの、276達者(たつしや)だのと(ひと)言葉(ことば)()につけて横道者(うだうもの)()が。277()278大蛇(ろち)(ほかみ)何奴(どいつ)かの()()が』
279(をんな)『ホー(これ)鷹彦(たかひこ)サン、280梅彦(うめひこ)サン、281音彦(おとひこ)サン、282(かめ)サン、283(こま)サン、284昨日(きのふ)から此処(ここ)にお()()けして()ましたよ』
285鷹彦(たかひこ)『ヤア、286さう()貴女(あなた)(いづ)れの(かた)でござるか、287拙者(せつしや)一向(いつかう)一面識(いちめんしき)もござらぬ』
288(をんな)『オホヽヽヽ、289貴方(あなた)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)290(わらは)姿(すがた)をお(おぼ)えぢやありませぬか』
291鷹彦(たかひこ)『ホー一向(いつかう)合点(がてん)(むし)承諾(しようだく)しませぬワイ。292一体(いつたい)全体(ぜんたい)貴女様(あなたさま)は、293(いづ)れの神様(かみさま)でございますか』
294(をんな)(たか)サン、295マアマア()()ちつけて(わらは)素性(すじやう)(あら)つて御覧(ごらん)296それが(わか)らない(やう)(こと)では三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)駄目(だめ)ですよ。297(しこ)巌窟(いはや)征服(せいふく)もさつぱり(ゼロ)ですよ』
298岩彦(いはひこ)『オイオイ梅公(うめこう)299(おと)300(かめ)301(こま)302貴様(きさま)(なん)だ。303何時(いつ)もベラベラ口車(くちぐるま)廻転(くわいてん)させる(くせ)今日(けふ)(かぎ)つてその沈黙(ちんもく)(なん)だい。304まさか汽缶(きくわん)(あぶら)がきれたでもあるまいに、305(おれ)(ばか)りに談判(だんぱん)させよつてチツト交渉(かうせふ)したら如何(どう)だい』
306(をんな)『オホヽヽヽ、307あの(いは)サンの気張(きば)(やう)308(わらは)はあまり可笑(をか)しくて横腹(よこはら)(いた)みます』
309岩彦(いはひこ)(いた)まうと(いた)むまいと(おれ)()つた(こと)かい。310コンナ魔窟(まくつ)(なか)巣剿(すく)ひよつて吾等(われら)(たぶ)らかさうと(おも)つても、311ソンナ(もの)瞞著(まんちやく)されるものと(せん)(こと)にするのだ、312あまり巫山戯(ふざけ)るない。313良々加減(いいかげん)正体(しやうたい)(あら)はさぬと(この)(いは)サンの鉄拳(てつけん)がお見舞(みま)(まを)すぞ』
314(をんな)『オホヽヽヽ、315貴方(あなた)がたは()()(わか)らぬ(ひと)ですね。316(ふた)つのお()銀紙(ぎんがみ)ですか、317節穴(ふしあな)ですか、318不思議(ふしぎ)(さき)()えぬお()だこと。319オホヽヽヽヽヽ』
320岩彦(いはひこ)『エーイ、321()(たい)(わる)いこのお()()322(やさ)しい(かほ)をしよつて失敬(しつけい)千万(せんばん)(こと)()ひよる(ふと)(やつ)だ。323もう(この)(うへ)勘忍袋(かんにんぶくろ)()()れた。324サア覚悟(かくご)(いた)せ』
325(をんな)『オホヽヽヽ』
326鷹彦(たかひこ)『ハテナ、327此奴(こいつ)(ただ)(たぬき)ぢやあるまいな』
328(をんな)『ホヽヽヽ』
329岩彦(いはひこ)(たぬき)どころか、330大化物(おほばけもの)親玉(おやだま)だ。331(たぬき)なら八畳敷(はちでふじき)()(はず)だ。332(わづ)かに四畳敷(しでふじき)(ぐらゐ)巌窟(いはや)()んでる化物(ばけもの)だから大方(おほかた)土蜘蛛(つちぐも)(せい)だらう、333ヤイ土蜘蛛(つちぐも)334(おれ)何時(いつ)までも(あま)いと(おも)つて()るか、335(あま)けら砂糖(さたう)だと(おも)ひよるのか。336(なん)だ、337(あま)つたるい(こゑ)()しよつて、338弥生(やよひ)(うぐひす)真似(まね)をして、339オホヽヽヽと、340それや一体(いつたい)なんの芸当(げいたう)だい。341真実(ほんと)荒男(あらをとこ)六人(ろくにん)(むか)ふに(まは)して悠々自適(いういうじてき)342国家(こくか)興亡(こうばう)吾不関(われくわんせず)(えん)()(やう)落着(おちつ)(はら)つたその(こし)つき、343小癪(こしやく)(さわ)代物(しろもの)だナア』
344(をんな)『ホヽヽヽヽ』
345 この(とき)(また)もや宣伝歌(せんでんか)(きこ)えて()た。346宣伝歌(せんでんか)(ぬし)(そと)より岩穴(いはあな)一寸(ちよつと)(のぞ)いて()て、
347『ヤア(たか)サン、348(いは)サン、349此処(ここ)()つたのか』
350岩彦(いはひこ)『ヤア貴神(あなた)()出別命(でわけのみこと)(さま)351ようマア()(くだ)さいました。352(これ)だから神様(かみさま)九分九厘(くぶくりん)まで()つたら(たす)けてやらうと(おつ)しやるのだ。353サアもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。354サアお()け、355(なに)なつと(ほざ)け、356もう(かな)はぬぞ』
357(にはか)(かた)(そび)やかす(その)可笑(をか)しさ。
358(をんな)『ホヽヽヽヽ』
359大正一一・三・一七 旧二・一九 北村隆光録)