霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 難風(なんぷう)〔五五七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻 篇:第2篇 幽山霊水 よみ:ゆうざんれいすい
章:第7章 第14巻 よみ:なんぷう 通し章番号:557
口述日:1922(大正11)年03月24日(旧02月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年11月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
急坂を登った一行は、休息を取っている。弥次彦と与太彦はおかしな雑談を交わしている。
弥次彦はその中にも、言霊の善言美詞についての一説を交えるなど、中には三五教の教理にかなった法話を含ませている。
折から、小鹿山の山おろしが猛烈に吹いてきた。一行は、強風に飛ばされないように二人一組で肩を組んで進んで行くことにした。
突然突風が吹くと、弥次彦と勝彦の二人を空中に舞い上げ、谷間の彼方に吹き飛ばした。与太彦と六は慌てて二人を探しに行く。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1407
愛善世界社版:112頁 八幡書店版:第3輯 198頁 修補版: 校定版:117頁 普及版:52頁 初版: ページ備考:
001 小鹿峠(こしかたうげ)急阪(きふはん)を、002弥次彦(やじひこ)003与太彦(よたひこ)004勝彦(かつひこ)005六公(ろくこう)一行(いつかう)は、006岩根(いはね)(つまづ)き、007()()(あし)()き、008(みぎ)(たふ)(ひだり)()どつくり(くち)から出任(でまか)せ、009野趣(やしゆ)満々(まんまん)たる俄作(にはかづく)りの宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、010爪先(つまさき)(あが)りの(あめ)(さら)され()れたる(みち)を、011千鳥(ちどり)(あし)覚束(おぼつか)なくも、012(あへ)ぎに(あへ)(のぼ)()く。013(ちり)(つも)れば(やま)となる、014一尺(いつしやく)一尺(いつしやく)(また)げた(あし)も、015始終(しじう)(やす)まぬ四十八坂(しじふやさか)を、016(こころ)ばかりの勝彦(かつひこ)が、017自慢(じまん)(はこ)十八番(じふはちばん)(さか)(うへ)に、018やつと(のぼ)つて、019(すつぽん)(たで)()ました(やう)荒息(あらいき)()(なが)(おや)()らぬにハア(はは))ハアと(いき)をはづませ辿(たど)()く。
020(かつ)(みな)サン、021(この)見晴(みは)らしの()(ところ)で、022(しばら)くコンパスの停車(ていしや)をして、023浩然(こうぜん)()(やしな)つたらどうですか』
024()『サア(たれ)遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もありませぬワ、025公然(こうぜん)休養(きうやう)(いた)しませう、026(てん)洪然(こうぜん)(むな)しうする(なか)れだ。027しかし休養(きうやう)(ついで)(ひと)石炭(せきたん)積込(つみこみ)をやりませうかい、028()()適当(てきたう)港口(かうこう)は、029この(さき)には滅多(めつた)()りますまい、030どうやら機関(きくわん)(あぶら)()れさうになつて()ました』
031(かつ)何分(なにぶん)アンナ(かた)(ところ)格納(かくなふ)されて()たものだから、032サツパリ倉庫(さうこ)空虚(くうきよ)になつて(しま)つた、033(なに)をパクついて()いか、034肝腎(かんじん)原料(げんれう)はないのだから仕方(しかた)がありませぬワ、035(はら)(むし)咽喉部(いんこうぶ)まで突喊(とつかん)して()て、036(しき)りに汽笛(きてき)()きます、037せめて給水(きふすゐ)なりとやつて、038(ごみ)(にご)したいが、039生憎(あひにく)(たに)(ふか)し、040起臥(きぐわ)進退(しんたい)(これ)(きは)まると()腹具合(はらぐあひ)ですワイ、041(なん)とか()腹案(ふくあん)はありますまいかな』
042()『オー此処(ここ)にお粗末(そまつ)な、043()にも()けぬのに()げた(やう)(いろ)のした握飯(むすび)が、044(しめ)二個(にこ)ありますワイ、045三途川(せうづがは)鬼婆(おにばば)アサンから記念(きねん)(ため)(もら)つて()た、046形而上(けいじじやう)弁当(べんたう)だ、047()世話(せわ)()らねば、048五臓六腑(ござうろつぷ)にお世話(せわ)になる面倒(めんだう)()い。049これなつと()つて、050唾液(つばき)でも()()んで、051()つた気分(きぶん)になりませうかい』
052()『オイオイ弥次彦(やじひこ)053あた(きたな)い、054貴様(きさま)はまだ娑婆(しやば)妄執(まうしふ)………オツトドツコイ幽界(いうかい)妄執(まうしふ)()れぬと()えて、055(ばば)アだの、056ハナ(めし)だのと、057不潔(ばば)(こと)(さへづ)(やつ)だ、058()加減(かげん)(おも)()つたらどうだい』
059()(やま)()()沢山(たくさん)あれど、060(おも)()(さら)にない………あの()アサンの、061(いや)らしい(かほ)をして、062歯糞(はくそ)だらけのくすぼつた()を、063ニユーツと突出(つきだ)し「親譲(おやゆづ)りの着物(きもの)をこつちやへ(わた)せ」と(ぬか)しよつた(とき)面付(つらつき)を、064どうして(おも)()(こと)出来(でき)るか、065(めし)()ふたびに(にぎ)(めし)のことを(おも)()して、066ムカムカして()るワイ』
067()『どこまでも弥次(やじ)(しき)だな、068()れほど(おそ)ろしい(ばば)アに、069なぜ貴様(きさま)一蓮托生(いちれんたくしやう)だとか、070半座(はんざ)()けて()つて()るとか、071ハンナリとせぬ、072変則的(へんそくてき)なローマンスをやりよつたのだ、073得体(えたい)()れぬ唐変木(たうへんぼく)だなア』
074()『そこは、075外交的(ぐわいかうてき)手腕(しゆわん)(ふる)つたのだよ。076燕雀(えんじやく)(なん)大鵬(たいほう)(こころざし)()らむやだ、077至聖(しせい)大賢(たいけん)心事(しんじ)が、078朦昧(もうまい)無智(むち)人獣(にんじう)(わか)つてたまるものかい』
079()人獣(にんじう)とは(なん)だ、080(おれ)人獣(にんじう)なら貴様(きさま)人鬼(にんき)だ』
081()(きま)つた(こと)だよ、082天下(てんか)一品(いつぴん)人気男(にんきをとこ)だもの、083それだから、084閻魔(えんま)サンでさへも跣足(はだし)()げる(やう)な、085あの鬼婆(おにばば)アが、086(おれ)にかけたら、087(たこ)か、088豆腐(とうふ)のやうに(ほね)()しになつて仕舞(しま)ひよつて()まで(ほそ)くして、089ミヅバナ(まじ)つた(よだれ)()れよつた(くらゐ)だもの………貴様(きさま)(おれ)人気男(にんきをとこ)実地(じつち)目撃(もくげき)した正確(せいかく)保証人(ほしようにん)だ、090勝彦(かつひこ)や、091六公(ろくこう)にも吹聴(ふいちやう)せぬかい、092(おれ)戦功(せんこう)報告(はうこく)するのは貴様(きさま)使命(しめい)だ、093(えん)(した)(まひ)埋没(まいぼつ)されては、094吾々(われわれ)苦心(くしん)惨憺(さんたん)神妙(しんめう)鬼策(きさく)何時(いつ)()天下(てんか)(あら)はれむやだ』
095()『アハヽヽヽ、096貴様(きさま)どこまでも弥次(やじ)(しき)だな』
097()(きま)つた(こと)だ、098シキだよ、099天下(てんか)一品(いつぴん)色魔(しきま)だよ。100老若(らうにやく)男女(なんによ)101貴賎(きせん)貧富(ひんぷ)区別(くべつ)なく、102(ねこ)杓子(しやくし)も、103(いたち)(すつぽん)も、104蝸牛(でんでんむし)なめくぢりも、105(うし)(うま)も、106この弥次(やじ)サンに(むか)つては(みんな)駄目(だめ)だ。107アヽ人気男(にんきをとこ)()ふものは随分(ずゐぶん)()()めるものだ。108冥土(めいど)()けば()くで、109(やさ)しうもない脱衣婆(だついばば)アまでが、110強烈(きやうれつ)なる電波(でんぱ)()けるのだから、111人気男(にんきをとこ)色男(いろをとこ)といふ(もの)(かは)つたものだよ、112古今(ここん)にその類例(るゐれい)()つと()ふチーチヤーだ、113チーチヤー貴様(きさま)もこの弥次彦(やじひこ)にあやかつたらどうだ』
114(かつ)『アハヽヽヽ、115ナント面白(おもしろ)人足(にんそく)………オツトドツコイ人気男(にんきをとこ)出会(でつくは)したものだナア』
116()『ヤア(かつ)サン、117(まへ)(わたし)知己(ちき)だ、118英雄(えいゆう)心事(しんじ)()(もの)は、119(きみ)たつた一人(ひとり)だよ。120人気(にんき)応変(おうへん)121活殺(くわつさつ)自在(じざい)122神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の、123赤門(あかもん)()のチヤキチヤキのチーチヤアだからネ』
124()『アハヽヽヽ、125()いた(くち)(ふさ)がらぬワイ』
126()()いた(くち)(ふさ)がるまい、127牛糞(うしぐそ)天下(てんか)()るぞよ、128コンナお粗末(そまつ)弥次(やじ)弥次馬(やじうま)でも、129馬糞(うまくそ)天下(てんか)()時節(じせつ)()るのだから、130あまり軽蔑(けいべつ)して(もら)ふまいかい、131アンナものがコンナものになつたと()仕組(しぐみ)であるぞよ』
132()『イヤー()いたりな()いたりな、133三百十日(さんびやくとをか)大風(おほかぜ)のやうだのう』
134()三百十日(さんびやくとをか)()(こと)があるかい、135二百十日(にひやくとをか)だらう』
136()馬鹿(ばか)()へ、137貴様(きさま)三百代言(さんびやくだいげん)をやつておつた(をとこ)だ、138十人十日口(じふにんとをかぐち)だと(ぬか)して、139その()(ぐら)しの貧苦(ひんく)生活(せいくわつ)(くる)しみ、140(みつ)(ちがひ)(にい)サン………と()ふて(くら)して()るうちに』
141()(なに)(ぬか)しよるのだ、142そりや貴様(きさま)(こと)だよ、143(おれ)(ところ)(ひと)()(ごと)く、144高取村(たかとりむら)豪農(がうのう)だ、145下女(げぢよ)一人(ひとり)使(つか)ひ、146(しもべ)半人(はんにん)使(つか)つた門閥家(もんばつか)だぞ』
147()『アハヽヽヽ、148半人(はんにん)(しもべ)とは、149そらナンダイ』
150()『きまつたことよ、151允請(ゐんせい)ポリスを()いた(こと)だよ』
152()『ポリスでも判任官(はんにんくわん)か……判任官(はんにんくわん)目下(めした)ぢやないか』
153()『その(てん)はしつかりと判任(はんにん)せぬワイ、154マアどうでも()いワ、155貴様(きさま)一人前(いちにんまへ)人間(にんげん)になるのだ。156一人(ひとり)一党(いつたう)主義(しゆぎ)で、157快活(くわいくわつ)(たれ)(はばか)(ところ)もなく、158無限(むげん)天地(てんち)活躍(くわつやく)するのが人間(にんげん)本分(ほんぶん)だ』
159()『エーソンナ雑談(ざつだん)中止(ちうし)解散(かいさん)(めい)じます』
160()聴衆(ちやうしう)一時(いちじ)()ち、161喧々囂々(けんけんがうがう)収拾(しうしう)(べか)らずと()(まく)だな、162アハヽヽヽ』
163(かつ)(なん)()つても、164吾々(われわれ)(こめ)()(むし)だ、165(はら)()つては(いくさ)出来(でき)ない、166(なん)とか兵糧(ひやうろう)工面(くめん)せなくてはなりますまい』
167(ろく)御心配(ごしんぱい)なされますな、168今日(こんにち)兵站部(へいたんぶ)(わたくし)担任(たんにん)(いた)しませう、169粗末(そまつ)(もの)であなた(がた)()のお(くち)には()ひますまいが、170大事(だいじ)なければ、171(めし)あがつて(くだ)さいませ』
172背中(せなか)風呂敷(ふろしき)から(かた)パンを()した。
173(かつ)『アー有難(ありがた)い、174(はら)がカツカツして(ほとん)渇命(かつめい)にも(およ)ばむとする(ところ)だつたよ』
175()『コラコラ(ろく)でもない(こと)()ふない、176六公(ろくこう)177人様(ひとさま)(もの)()げるのに、178粗末(そまつ)だとか、179(くち)()ひますまいとか、180そら()んだ、181チツト言霊(ことたま)(つつし)まないか。182これは美味(おい)しいから()げませう、183うまいから()つて()(くだ)さいと()ふのが礼儀(れいぎ)ぢやないか……、184ナンダ失敬(しつけい)な、185()はれぬ(やう)(もの)や、186粗末(そまつ)なものを(ひと)進上(しんじやう)するといふ(こと)があるかい。187神様(かみさま)(もの)()げるのにも、188蜜柑(みかん)(いつ)(くらゐ)のピラミツドを(こしら)へて、189(かぶら)大根(だいこん)人参(にんじん)(ぐらゐ)をあしらひ、190千切(せんぎり)昆布(こんぶ)191和布(わかめ)192果実(このみ)193小鮎(こあゆ)194ジヤコ(ぐらゐ)をチヨンビリ(たてまつ)つて、195海河(うみかは)山野(やまぬの)種々(くさぐさ)美味物(うましもの)を、196八足(やたり)机代(つくゑしろ)横山(よこやま)(ごと)置足(おきた)らはして(たてまつ)(さま)を、197(たひら)けく(やす)らけく(きこ)()せ、198ポンポン………とやるぢやないか』
199(ろく)『ハイハイ、200あなたの御趣意(ごしゆい)徹底(てつてい)しました。201(しか)(なが)(わたくし)本心(ほんしん)は、202この麺包(パン)美味(おい)しい結構(けつこう)なものだと(おも)つて()るのだが、203一寸(ちよつと)遠慮(ゑんりよ)をして、204粗末(そまつ)だとか、205(くち)()ふまいと()つたのですワ』
206()(くち)(こころ)(ちが)横道者(わうだうもの)だナア、207虚偽(きよぎ)虚飾(きよしよく)パノラマ(しき)生活(せいくわつ)(つづ)けて、208得々然(とくとくぜん)として()るとは、209(なん)()心得(こころえ)ちがひだ。210ソンナ(こと)()(やつ)は、211五十万年(ごじふまんねん)未来(みらい)十九世紀(じふきうせいき)から二十世紀(にじつせいき)初期(しよき)にかけて(うま)れた、212人三化七(にんさんばけしち)(ほざ)巧妙(こうめう)辞令(じれい)だ、213チツト確乎(しつかり)せぬかい』
214(ろく)益々(ますます)(もつ)不可解(ふかかい)千万(せんばん)215合点(がてん)(むし)がどうしても検定(けんてい)()みにして()れませぬワイ』
216()『まだ貴様(きさま)(わか)らないのか』
217(ろく)日本(にほん)支那(しな)道徳(だうとく)混乱(こんらん)して()つたつて和漢乱(わかんらん)当然(たうぜん)ぢやないか、218神様(かみさま)正直(しやうぢき)誠実(まこと)(おこな)ひをお(よろこ)びなさるのに、219ナンダ、220粗末(そまつ)(もの)を、221ホンの後家(ごけ)(ばば)アの世帯(しよたい)ほど八百万(やほよろづ)神様(かみさま)(たてまつ)つて、222相嘗(あひな)めに(きこ)()せとか、223海河(うみかは)山野(やまぬ)種々(くさぐさ)美味物(うましもの)だとか、224横山(よこやま)(ごと)置足(おきた)らはしてとか、225現幽(げんいう)一致(いつち)御透見(ごとうけん)(あそ)ばす神様(かみさま)(まへ)に、226虚偽(きよぎ)()れて、227商売(しやうばい)繁昌(はんぜう)228家運(かうん)長久(ちやうきう)229子孫(しそん)繁栄(はんゑい)230無病(むびやう)息災(そくさい)231願望(ぐわんばう)成就(じやうじゆ)232天下(てんか)泰平(たいへい)233国土(こくど)成就(じやうじゆ)234五穀(ごこく)豊穣(ほうじやう)なぞと、235斎官(はふり)(ども)(ぬか)すぢやないか、236一体(いつたい)全体(ぜんたい)この(てん)()()ちないのだよ』
237()(わか)らぬ(やつ)だなア、238この天地(てんち)言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)だ、239(わる)(もの)でも()詔直(のりなほ)すのだ。240(すくな)(もの)でも沢山(たくさん)なやうに()(なほ)すのだ、241貴様(きさま)(やう)に、242()(もの)(わる)いと()ひ、243美味(うま)(もの)をまづいと()ふのは、244言霊(ことたま)法則(はふそく)破壊(はくわい)すると()ふものだ。245()禁厭(まじなひ)()つて、246(いさ)んで(くら)せば(いさ)(こと)が、247とつかけ()つかけ(あら)はれて()る、248(くや)めば(くや)むほど(くや)(ごと)続発(ぞくはつ)するものだ、249それだから人間(にんげん)は、250言霊(ことたま)(きよ)くせなくてはならないのだよ』
251(ろく)『モシモシ弥次彦(やじひこ)サン、252チツトの(もの)沢山(たくさん)だと()ひ、253(あぢ)()(もの)美味(うま)(もの)()ふのは、254いはゆる羊頭(やうとう)(かか)げて狗肉(くにく)()るといふものぢやないか。255ソンナ(こと)をすると、256現行(げんかう)刑法(けいはふ)第何条(だいなんでう)()つて詐欺(さぎ)取財(しゆざい)告発(こくはつ)()られますよ。257(わけ)(わか)らぬ(めくら)ばつかりの人間(にんげん)()つてたかつて(こしら)へた法律(はふりつ)でさへも、258是丈(これだけ)条理(でうり)整然(せいぜん)として()るのだ、259()して尊厳(そんげん)無比(むひ)なる神様(かみさま)御前(おんまへ)に、260詐欺(さぎ)をやつて()()()まして()れると(おも)ふのか、261無感覚(むかんかく)にも(ほど)()るぢやないか』
262()(きま)つた(こと)だい、263人間(にんげん)神様(かみさま)水火(いき)から(うま)れた(かみ)()だ、264(すこ)しでも間隔(かんかく)があつて(たま)らうかい、265()かんかく当然(たうぜん)だよ』
266(ろく)『ヤア(めう)(ところ)脱線(だつせん)しよつたな、267本当(ほんたう)脱線(だつせん)もない………』
268()脱線(だつせん)流行(はやり)ものだい、269工事(こうじ)請負人(うけおひにん)と○○と結托(けつたく)して○○をやるものだから、270広軌(くわうき)鉄道(てつだう)であらうが、271電鉄(でんてつ)だらうが、272(すぐ)脱線(だつせん)転覆(てんぷく)する()(なか)だ、273善人(ぜんにん)悪人(あくにん)見做(みな)され、274悪人(あくにん)脱線(だつせん)して善人(ぜんにん)になると()(くら)がりの()(なか)だ、275(あゝ)脱線(だつせん)なる(かな)脱線(だつせん)なる(かな)だ、276アハヽヽ』
277(かつ)広軌(くわうき)鉄道(てつだう)とか電鉄(でんてつ)とか()ふものは、278それや何処(どこ)敷設(ふせつ)されてるものですか』
279()『ヤア()れから数十万年後(すうじふまんねんご)の、280餓鬼道(がきだう)()(なか)の、281文明(ぶんめい)利器(りき)()()()化物(ばけもの)のことだよ。282アハヽヽヽ』
283(ろく)随分(ずゐぶん)あなたの滑車(くわつしや)()運転(うんてん)しますな、284万丈(ばんぢやう)気焔(きえん)()いて、285我々(われわれ)(けむり)()き、286雲煙(うんえん)糢糊(もこ)として四辺(しへん)(つつ)(てい)鼻息(はないき)287イヤモウ恐縮(きようしゆく)軍縮(ぐんしゆく)(いた)りですよ』
288()随分(ずゐぶん)巨大(きよだい)なクルツプ(はう)装置(さうち)されて()ると()えますワイ、289ホー(はう)290(はう)291(はう)292ホー』
293()(きま)つた(こと)だよ、294与太公(よたこう)六公(ろくこう)(やう)な、295与太六(よたろく)とはチツト原料(げんれう)(ちが)ふのだ、296特別(とくべつ)(だい)(ごく)上等(じやうとう)の、297豊富(ほうふ)なる原料(げんれう)(もつ)て、298鍛錬(たんれん)鍛錬(たんれん)(くは)へ、299製造(せいざう)したる至貴(しき)至重(しちよう)なる身魂(みたま)持主(もちぬし)だ、300古今(ここん)類例(るゐれい)()つと()逸物(いつぶつ)だから、301(なん)()つたつて、302弥次彦(やじひこ)足型(あしがた)をも()めさうな(こと)はないのだ』
303(かつ)『モシモシ弥次彦(やじひこ)サン、304あなたは余程(よほど)自尊心(じそんしん)旺盛(わうせい)強烈(きやうれつ)なる御人格者(ごじんかくしや)ですネー、305自分(じぶん)(しよう)して弥次彦(やじひこ)サンと敬語(けいご)使(つか)ひ、306友人(いうじん)(たい)しては、307与太公(よたこう)だの、308六公(ろくこう)だのと、309(あたか)君王(くんわう)(しもべ)(たい)する(やう)傲慢(ごうまん)不遜(ふそん)御態度(ごたいど)310三五教(あななひけう)信者(しんじや)にも似合(にあ)はぬお振舞(ふるまひ)311どこで勘定(かんぢやう)(ちが)つたのでせう。312これもやつぱり脱線(だつせん)()(なか)感化(かんくわ)をお()けになつたのぢやありますまいかな』
313()『ソンナラ(これ)から与太彦(よたひこ)サン、314六公(ろくこう)サンと()(なほ)しますが、315しかしよく(かんが)へて()なさい、316(かみ)(けい)する(ごと)(ひと)(けい)し、317我身(わがみ)(けい)すべしと()信条(しんでう)三五教(あななひけう)何処(どつか)()つたやうに(おも)ひます。318我々(われわれ)無限(むげん)絶対力(ぜつたいりよく)至貴(しき)至尊(しそん)大神様(おほかみさま)水火(いき)(もつ)(うま)()で、319天地(てんち)経綸(けいりん)司宰者(しさいしや)たる特権(とくけん)賦与(ふよ)されて()(もの)ではありませぬか、320(ひと)(かみ)なり、321(かみ)(ひと)なり、322神人(しんじん)合一(がふいつ)して(ここ)無限(むげん)権力(けんりよく)発揮(はつき)するのでせう。323吾々(われわれ)霊肉(れいにく)(とも)(けつ)して私有物(しいうぶつ)ではありませぬ、324みな神様(かみさま)(あづか)(もの)です、325さうだから、326弥次彦(やじひこ)サンと()つたつて(べつ)(すこ)しの矛盾(むじゆん)撞着(どうちやく)もないぢやありませぬか。327神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)(さま)は、328大蛇(おろち)退治(たいぢ)て、329串稲田姫(くしなだひめ)芽出度(めでた)偕老同穴(かいらうどうけつ)(ちぎり)(むす)(たま)ふた(とき)に、330自分(じぶん)(むね)(おさ)へて「あが御心(みこころ)すがすがし」と、331自分(じぶん)自分(じぶん)(こころ)(うやま)はせ(たま)ひ、332天照大神(あまてらすおほかみ)(さま)は「われは天照大神(あまてらすおほかみ)なり」と(みづか)敬語(けいご)をお使(つか)ひになつた。333(むかし)(みかど)(さま)葛城山(かつらぎざん)狩猟(かり)をなされた(とき)にも、334その御腕(みうで)(あぶ)()()いた、335その(とき)に「あが御腕(みたたむき)(あぶ)かきつき」と()らせ(たま)ふたぢやありませぬか、336これを()ても敬語(けいご)()ふものは、337どこまでも使用(しよう)せなくてはなりませぬよ、338(けつ)して等閑(とうかん)()すべき問題(もんだい)ではなからうと拝察(はいさつ)するのです。339(いま)(やつ)は、340君主(くんしゆ)でもない友人(いうじん)(たい)して、341(きみ)とか、342賢兄(けんけい)とか()ひ、343(しもべ)でもないのに(ぼく)だとか拙者(せつしや)だとか()つて、344虚偽(きよぎ)生活(せいくわつ)(おく)得意(とくい)がつて()逆様(さかさま)()(なか)だ、345自分(じぶん)(ちち)ほど(かしこ)(もの)()い、346(はは)ほど(えら)(もの)()いと(こころ)(なか)()めて居乍(ゐなが)ら、347愚父(ぐふ)だとか、348愚母(ぐぼ)だとか()ひ、349自分(じぶん)息子(むすこ)悧巧(りこう)だ、350他家(よそ)息子(むすこ)馬鹿(ばか)だ、351天保銭(てんぽうせん)だと(こころ)(おも)(なが)ら、352自分(じぶん)()(しよう)して、353愚息(ぐそく)だとか、354拙息(せつそく)だとか豚児(とんじ)だとか(ほざ)き、355他人(たにん)馬鹿(ばか)息子(むすこ)や、356鼻垂(はなたれ)小僧(こぞう)御賢息(ごけんそく)だとか、357御令息(ごれいそく)だとか()つて、358(うそ)(かた)めてゐる()(なか)だ。359本当(ほんたう)冠履(くわんり)転倒(てんたう)とはこの(こと)だ。360女郎(じよらう)()(ぶん)ぢやないが、361(くち)(わる)()ふて(こころ)()めて、362(かげ)のろけ()かしたい」と()(やう)な、363娼婦的(しやうふてき)奴根性(どこんじやう)人間(にんげん)(ばか)りだから、364()(なか)逆様(さかさま)ばつかり出来(でき)るのだ。365一日(いちじつ)(はや)三五教(あななひけう)教理(けうり)天下(てんか)宣明(せんめい)して、366第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として、367この言霊(ことたま)詔直(のりなほ)しを(はじ)めなくては、368何時(いつ)までも五六七(みろく)神政(しんせい)樹立(じゆりつ)さるるものではありませぬワイ』
369(かつ)『イヤア(これ)(これ)結構(けつこう)御託宣(ごたくせん)(うけたま)はりました、370()()ふお(はなし)度々(たびたび)(をし)へて(くだ)さいませ。371(わたくし)宣伝使(せんでんし)となつて、372この(とほ)変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)373自由自在(じいうじざい)活動(くわつどう)(つづ)けて()ましたが()だその(てん)()()いて()なかつたのです…………(あゝ)374何処(どこ)にドンナ(ひと)(かく)れて()るやら、375何時(いつ)神様(かみさま)(くち)()つて、376(いまし)めて(くだ)さるやら、377(わか)つたものぢやない。378アヽ有難(ありがた)有難(ありがた)い、379惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)380惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
381()『コレコレ弥次彦(やじひこ)サン、382(まへ)(また)383日頃(ひごろ)言行(げんかう)にも()ず、384今日(けふ)(かぎ)つて何故(なぜ)ソンナ深遠(しんゑん)教理(けうり)()いたのだい』
385()『ナニ、386ナンダカ(くち)(すべ)つて、387(なか)から何者(なにもの)かが()ひよつたのだい、388弥次彦(やじひこ)()つた(こと)かい、389アハヽヽヽ』
390(かつ)『ヤア(ろく)サン、391結構(けつこう)なお弁当(べんたう)沢山(たくさん)頂戴(ちやうだい)いたしました、392これで元気(げんき)快復(くわいふく)しました。393サア徐々(そろそろ)御一同様(ごいちどうさま)394テクル(こと)(いた)しませうかな』
395()『コレコレ勝彦(かつひこ)サン、396(おもて)(おもて)397(うら)(うら)だ、398この道中(だうちう)にソンナ几帳面(きちやうめん)挨拶(あいさつ)免除(めんぢよ)して(くだ)さいな、399(たがひ)無駄口(むだぐち)(たた)(あひ)で、400われ、401(おれ)()きませうかい、402(なん)だか(かた)()つて疲労(ひらう)()()(やう)だから…………のう勝公(かつこう)403与太六(よたろく)
404()与太六(よたろく)とはあまり(ひど)いちやないか』
405()面倒(めんだう)(くさ)いから、406与太公(よたこう)六公(ろくこう)とを併合(へいがふ)したのだ、407会社(くわいしや)でもチツト左前(ひだりまへ)になると併合(へいがふ)するものだよ』
408()(いま)(おれ)はパンを鱈腹(たらふく)()つたのだ、409空腹前(ひだるまへ)(どころ)か、410これ()い、411この(とほ)りの(ふと)(ぱら)だ』
412()『ホンにホンに、413全然(まるで)(ふぐ)横飛(よことび)()たやうな土手(どて)(ぱら)だな、414(ふくがへる)行列(ぎやうれつ)か、415(ふぐ)陳列会(ちんれつくわい)か、416イヤモウ()んともかとも形容(けいよう)出来(でき)ないお姿(すがた)だ、417コンナ(とこ)三面(さんめん)記者(きしや)にでも()つけられた(くらゐ)なら、418(すぐ)新聞(しんぶん)材料(ざいれう)だよ。419アハヽヽヽ』
420 (をり)から小鹿山(こしかやま)山颪(やまおろし)421()(たふ)(いは)()べよと(ばか)りに()(きた)る。
422()『ヨー(かぜ)(かみ)423一寸(ちよつと)洒落(しやれ)てゐよるなア。424()くなら()け、425大砲(たいはう)弥次彦(やじひこ)がご通行(つうかう)だ、426反対(あべこべ)吹飛(ふきと)ばしてやらうか』
427()『アハヽヽヽ、428(えら)元気(げんき)だのう、429しかし(なに)ほど弥次(やじ)サンが黄糞(かにここ)をこいて、430(きん)()()いて気張(きば)つた(ところ)で、431(てき)サンは洒々落々(しやしやらくらく)432(ふう)馬牛(ばぎう)といふ御態度(ごたいど)だから、433如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)まいかい』
434()『ヨーヨーこれや意外(いぐわい)強風(きやうふう)だぞ、435二人(ふたり)づつ(かた)(かた)とをから()んで(すす)まうかい…………与太六(よたろく)436貴様(きさま)一組(ひとくみ)だ、437弥次彦(やじひこ)勝公(かつこう)()()んで、438単梯陣(たんていぢん)()つて、439驀地(まつしぐら)進軍(しんぐん)だ。440小舟(こぶね)()つて大海(たいかい)(わた)(とき)にも、441暴風(ばうふう)怒濤(どたう)出会(であ)つた(とき)には、442(ふね)(ふね)二艘(にそう)一所(いつしよ)()はして連結(からく)んで()くと、443容易(ようい)顛覆(てんぷく)せないものだ。444(ふね)じやないけれど、445吾々(われわれ)(かぜ)(たい)する風船玉(ふうせんだま)(なん)()ける(ため)に、446連結(からく)んで(かぜ)(なみ)()(わた)(こと)とせうかい。447グヅグヅして()ると小鹿峠(こしかたうげ)渓谷(けいこく)顛覆(てんぷく)沈没(ちんぼつ)(やく)()ふかも()れない。448サアサア(はや)(はや)く、449連結(からく)んだ連結(からく)んだ』
450 四人(よにん)二人(ふたり)づつ(かた)(かた)とを()(あは)せ、451(かぜ)(むか)つて強圧的(きやうあつてき)に、452前方(ぜんぱう)三十五度(さんじふごど)傾斜体(けいしやたい)坂路(さかみち)跋渉(ばつせふ)する。
453()『イヨー此奴(こいつ)猛烈(まうれつ)だ、454今日(けふ)(かぎ)つて(かぜ)(かみ)(やつ)455どう予算(よさん)(くる)はせよつたのか、456勿体(もつたい)なくも、457天地(てんち)経綸(けいりん)司宰者(しさいしや)たる人間(にんげん)(さま)御通行(ごつうかう)(あそ)ばすのに、458(おそ)()もなく前途(ぜんと)抗塞(かうそく)するとは、459不都合(ふつがふ)千万(せんばん)だ。460ヤア六公(ろくこう)461しつかりせぬかい、462()()ばされるぞ』
463(ろく)『これ(くらゐ)(かぜ)吹飛(ふきと)ばされる気遣(きづかひ)はないが、464弥次彦(やじひこ)サンの気焔(きえん)には随分(ずゐぶん)吹飛(ふきと)ばされさうだ。465アハヽヽヽ』
466()『コラコラ、467貴様(きさま)(なに)をグヅグヅ()つて()よるのだい、468この烈風(れつぷう)確乎(しつかり)勇気(ゆうき)()して(すす)まないと、469内閣(ないかく)乗取(のつとり)不可能(ふかのう)だぞ、470グヅグヅしてると、471九分九厘(くぶくりん)()つた(ところ)流産(りうざん)内閣(ないかく)になつて(しま)ふかも()れないぞ』
472()『エー八釜(やかま)しう()ふない、473如何(いか)神出鬼没(しんしゆつきぼつ)勇将(ゆうしやう)でも、474ハヤこの(かぜ)(むか)つて、475どうして突喊(とつかん)出来(でき)るものかい、476千引(ちびき)(いは)でさへも中空(ちうくう)()きあげると()(やう)(かぜ)(かみ)鼻息(はないき)だ、477チツト(かぜ)(かみ)も、478聞直(ききなほ)して()れさうなものだな、479この谷間(たにま)へでも()ちて()よれ、480(また)(ぞろ)幽界(いうかい)旅行(りよかう)をやらねばならぬぞ』
481()『そら(なに)幽界(いうかい)482悲観(ひくわん)するな、483モツト愉快(ゆくわい)になつて、484(かぜ)()いて突進(とつしん)するのだ』
485()(なん)()つても貴様(きさま)のやうな無茶(むちや)(こと)は、486(おれ)には到底(たうてい)不可能(ふかのう)だ。487如何(いか)人間(にんげん)(かしこ)いと()つてもコンナ記録(きろく)(やぶ)りの暴風(ばうふう)出会(でくわ)しては、488人間(にんげん)としては到底(たうてい)不可抗力(ふかかうりよく)だ、489………オイ一寸(ちよつと)そこらで一服(いつぷく)したらどうだい』
490()三五教(あななひけう)退却(たいきやく)二字(にじ)はないぞ、491どこ(まで)(ただ)(すす)むの一事(いちじ)あるのみだ。492一度(いちど)(ひら)(うめ)(はな)493何時(いつ)までも(かぜ)(かみ)だつて、494さう資本(しほん)(つづ)くものぢやない。495グヅグヅ()かすと足手纏(あしてまと)ひになるから、496貴様(きさま)(おれ)とは最早(もはや)国交(こくかう)断絶(だんぜつ)だ、497旅券(りよけん)交附(かうふ)してやるから、498サツサと本国(ほんごく)引返(ひきかへ)したが()からうぞ』
499()『アーア仕方(しかた)のない頓馬助(とんますけ)だナア……オイ六公(ろくこう)500マア()とれ、501向意気(むこいき)ばつかり(つよ)いが、502タツタ(いま)(かぜ)(あふ)られて、503(ふたたび)幽冥界(いうめいかい)探険(たんけん)()かけるのが(おち)だぞ』
504 この(とき)山岳(さんがく)(くづ)れ、505蒼天(さうてん)墜落(つゐらく)するかと(おも)はるる(ばか)りの音響(おんきやう)(とも)に、506最大(さいだい)強烈(きやうれつ)なる暴風(ばうふう)()()るよと()()に、507弥次彦(やじひこ)羽織(はおり)(はかま)(たもと)(かぜ)(ふく)んで、508勝彦(かつひこ)()()んだまま、509中空(ちうくう)()あげられ、510空中(くうちう)飛行(ひかう)曲芸(きよくげい)(えん)じつつ、511(かぜ)()はれて谷間(たにま)彼方(あなた)に、512悠々(いういう)として姿(すがた)(かく)した。513不思議(ふしぎ)烈風(れつぷう)は、514(うそ)をついた(やう)にケロリと()んだ。
515()『ヤア大変(たいへん)だ、516意地(いぢ)(わる)(かぜ)だないか、517弥次彦(やじひこ)吹飛(ふきと)ばして()きよつて、518それを合図(あひづ)にピタリと休戦(きうせん)喇叭(らつぱ)をふきよつた(やう)なものだ』
519(ろく)『あまり弥次公(やじこう)大法螺(おほぼら)をふくものだから、520(かぜ)(かみ)(やつ)521(ひと)(こら)しめてやらうと(おも)つて、522(なん)でも(はや)うから作戦(さくせん)計画(けいくわく)をやつて()つたのに(ちがひ)ないぞ、523(なん)だか夜前(やぜん)から雲行(くもゆき)(わる)いと(おも)つて()つた。524ヤア()れにしても吾々(われわれ)はこの(まま)放任(はうにん)して()(わけ)には()かず、525滅多(めつた)天上(てんじやう)した気遣(きづかひ)はなからうから、526吾々(われわれ)両人(りやうにん)此処(ここ)(ひと)捜索(そうさく)をせなければなるまいぞ』
527()『ナアニ、528彼奴(あいつ)(かぜ)()つて、529コーカス(ざん)へお(さき)失礼(しつれい)とも(なん)とも()はずに、530参詣(さんけい)しよつたのだらうよ。531アハヽヽヽ』
532(ろく)『ソンナ気楽(きらく)(こと)()ふて()場合(ばあひ)じやあるまい、533(これ)から両人(りやうにん)協心(けふしん)戮力(りくりよく)して、534両人(りやうにん)在処(ありか)(さが)さうじやないか』
535()(さが)すもよいが、536拙劣(へた)間誤(まご)つくと、537冥土(めいど)道伴(みちづれ)にならねばならないかも()れないぞ、538(おれ)はモウ冥土(めいど)(たび)一度(いちど)経験(けいけん)()んだのだから、539(あま)(くる)しいとも(おも)はぬが、540貴様(きさま)初旅(はつたび)だから勝手(かつて)(わか)らず、541随分(ずゐぶん)(こま)るだらうよ』
542(ろく)『エーろくでもない(こと)()ふものじやないワ、543言霊(ことたま)(さち)はふ()(なか)だのに』
544()風玉(かざだま)(わざはひ)する()(なか)だ、545アハヽヽヽ』
546 二人(ふたり)弥次彦(やじひこ)547勝彦(かつひこ)()りて()つた方面(はうめん)()して、548(かほ)(いろ)()(なが)ら、549(いそ)いで(もと)()(みち)引返(ひきかへ)し、550二人(ふたり)所在(ありか)捜索(そうさく)することとなつた。551(あゝ)552二人(ふたり)行衛(ゆくゑ)はどうなつたであらう。
553大正一一・三・二四 旧二・二六 松村真澄録)