霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一三章 山上(さんじやう)幽斎(いうさい)〔五六三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第14巻 如意宝珠 丑の巻 篇:第3篇 高加索詣 よみ(新仮名遣い):こーかすまいり
章:第13章 山上幽斎 よみ(新仮名遣い):さんじょうゆうさい 通し章番号:563
口述日:1922(大正11)年03月25日(旧02月27日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年11月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一行はコーカス山に向かって、小鹿峠の二十三坂の上にやってきた。ここは広い高原になっている。清浄な場所のように思え、一同は気分よく休息している。与太彦は勝彦に、このような清い場所で、鎮魂帰神の法を授けてくれ、と頼み込む。
勝彦は、ここでは水がなくて禊ぎを行えないから、と言って難色を示す。弥次彦、与太彦はしきりに勝彦を説得する。ついに勝彦は承諾して、幽斎を行うことになった。
弥次彦はたちまち神懸りになって、空中に浮遊すると、空高く浮いてしまった。勝彦は指から霊光を発射して、弥次彦の体を制している。
与太彦と六公はそれをみてすっかり感心してしまう。勝彦も自分の神力にやや慢心の態を見せている。勝彦は、今のは木常姫の悪霊が弥次彦にかかったのを、最終的に追い出したのだ、と解説する。
しかし与太彦と六公は、悪神でも何でもよいから、自分たちも空中滑走をやってみたい、と言い出す。勝彦は、人間は大地に足をしっかりつけて活動しなければならない、と諭すが、三人は聞かず、三人とも邪神に憑かれて発動してしまう。
発動した三人は、勝彦の周りを飛びながら迫ってくる。勝彦は言霊や霊光を発射して抵抗するが、効かずに苦しめられる。すると、中空から馬に乗って、日の出別ら宣伝使一行が現れた。
日の出別らは金幣を打ち振って邪神を追い払うと、三人はたちまち正気に返った。勝彦は懺悔の言葉を述べて過ちを悔いると、日の出別は一言も発せずにうなずき、また天に姿を隠した。
一同は二十三坂上での幽斎を反省し、進んでようやく二十五番坂上に着いた。すると、またもや暴風が吹き荒れて四人の体は舞い上がり、谷底に吹き落とされた、と思うと、瑞月は目を覚ました。見れば、藪医者が自分を診断している。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-08-01 15:30:15 OBC :rm1413
愛善世界社版:203頁 八幡書店版:第3輯 233頁 修補版: 校定版:210頁 普及版:96頁 初版: ページ備考:
001 (しこ)魔風(まかぜ)様々(さまざま)の、002()誘惑(いうわく)勝彦(かつひこ)の、003(かみ)使(つかひ)宣伝使(せんでんし)は、004弥次彦(やじひこ)005与太彦(よたひこ)006六公(ろくこう)(さん)(にん)(とも)なひ、007小山(こやま)(さと)打過(うちす)ぎて、008二十(はたち)(さか)()()えし、009(たうげ)(いただ)きに(やうや)(のぼ)()いた。
010 この(たうげ)(いただ)きは今迄(いままで)過来(すぎき)各峠(かくたうげ)頂上(ちやうじやう)引換(ひきか)へて大変(たいへん)(ひろ)高原(かうげん)になつて()る。011小鹿川(こしかがは)(なが)れは眼下(がんか)山麓(さんろく)を、012白布(しろぬの)(さら)した(ごと)く、013(いは)(いは)とにせかれて飛沫(ひまつ)()ばして()る。014山腹(さんぷく)(ほと)んど(いは)(もつ)(おほ)はれ、015灌木(くわんぼく)其処(そこ)彼処(かしこ)青々(あをあを)として、016(いは)(いは)配合(はいがふ)を、017優美(いうび)高尚(かうしやう)色彩(いろど)つて()る。
018()小鹿峠(こしかたうげ)(やうや)二十三(にじふさん)(さか)跋渉(ばつせふ)したが、019この頂上(ちやうじやう)くらゐ(ひろ)(ところ)()かつた。020東西(とうざい)南北(なんぽく)遠近(ゑんきん)(やま)021茫漠(ばうばく)たる原野(げんや)一望(いちばう)(もと)(よこ)たはり、022(かぜ)(きよ)く、023(なん)となく(はる)気分(きぶん)(ただよ)ふて()た。024此処(ここ)吾々(われわれ)はゆつくりと休養(きうやう)して(まゐ)(こと)(いた)しませうか』
025(かつ)『アヽそれは()からう、026この頂上(ちやうじやう)より四方(よも)(なが)めた(とき)気分(きぶん)は、027(じつ)雄渾(ゆうこん)快濶(くわいくわつ)にして、028宇宙(うちう)我手(わがて)(にぎ)つたやうな按配(あんばい)(しき)だ。029ゆるゆると神界(しんかい)(はなし)でもさして(いただ)かうか、030()()(きよ)(ところ)では、031何程(なにほど)神界(しんかい)秘密(ひみつ)(はな)した(ところ)で、032滅多(めつた)曲津(まがつ)(かみ)襲来(しふらい)する(おそれ)もなからう』
033()(なが)ら、034青芝(あをしば)(うへ)(こし)(おろ)した。035(さん)(にん)(おな)じく、036芝生(しばふ)(うへ)(よこ)たはつた。
037()『アヽ()気分(きぶん)だ。038何時(いつ)()ても、039頂上(ちやうじやう)(きは)めた(とき)心持(こころもち)はまた格別(かくべつ)だが、040今日(けふ)殊更(ことさら)気分(きぶん)()い。041()()(とき)(ひと)幽斎(いうさい)修業(しうげふ)(はじ)めたら、042キツト()(かみ)(さま)感合(かんがふ)して(くだ)さるでせう、043………もし宣伝使(せんでんし)(さま)044一同(いちどう)此処(ここ)三五教(あななひけう)鎮魂(ちんこん)帰神(きしん)神法(しんぱふ)(ほどこ)して(くだ)さいませぬか』
045(かつ)『それは結構(けつこう)だが、046生憎(あひにく)高地(かうち)(こと)とて、047(みづ)()し、048()(あら)(くち)をすすぎ、049(みづ)(かぶ)ると()(こと)出来(でき)ないから……第一(だいいち)()れには閉口(へいこう)だ』
050()(かみ)(さま)(をしへ)にも、051()(あか)風呂(ふろ)湯槽(ゆぶね)(あら)(ども)052(あら)()れぬは(たま)(あか)なり」と(しめ)されてある、053たとへ(みづ)()くとも、054(かみ)(さま)(ひと)御免(ごめん)(かうむ)つて、055身魂(みたま)洗濯(せんたく)をして(もら)(わけ)にはゆきますまいか。056(みづ)肉体(にくたい)(あか)(あら)(おと)(だけ)のもの、057鎮魂(ちんこん)精神(せいしん)(あか)(おと)すものですから、058今日(けふ)肉体(にくたい)(やむ)()ずとして、059(みたま)(だけ)洗濯(せんたく)をして(もら)ひませうか……ナア与太彦(よたひこ)060六公(ろくこう)
061()『それも(ひと)つの真理(しんり)だ……もしもし勝彦(かつひこ)宣伝使(せんでんし)062あなたは古参者(こさんしや)だ、063吾々(われわれ)新参者(しんざんもの)064どうぞ(ひと)鎮魂(ちんこん)(ねが)つて(くだ)さいな』
065(かつ)霊肉(れいにく)一致(いつち)066現幽(げんいう)一本(いつぽん)だから、067理屈(りくつ)()へば、068(べつ)水行(すゐぎやう)をせなくつても、069(れい)さへ(あら)へば()いと()(やう)なものだが、070矢張(やつぱり)(きたな)肉体(にくたい)には(うつく)しい(みたま)(かみ)(うつ)(こと)は、071到底(たうてい)不可能(ふかのう)だらう。072コンナ(ところ)漫然(うつかり)幽斎(いうさい)でもやらうものなら、073ウラル(けう)守護(しゆご)(いた)して()悪神(あくがみ)が、074何時(なんどき)憑依(ひようい)するかも()れたものでない。075(この)(ごろ)霊界(れいかい)(おい)て、076往昔(むかし)国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)077その()神々(かみがみ)(たい)し、078極力(きよくりよく)反抗(はんかう)(こころ)み、079(つひ)には大神(おほかみ)をして退隠(たいいん)()むなきに(いた)らしめたと()大逆(だいぎやく)無道(ぶだう)常世姫(とこよひめ)木常姫(こつねひめ)080口子姫(くちこひめ)081八十(やそ)枉彦(まがひこ)邪霊(じやれい)連中(れんちう)が、082(すこ)しでも名望(めいばう)のある肉体(にくたい)憑依(ひようい)し、083(ふたた)神界(しんかい)混乱(こんらん)陰謀(いんぼう)(くわだ)てて()るのだから、084愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()ると、085何時(いつ)憑依(ひようい)されるか(わか)つたものでない。086宇宙(うちう)一切(いつさい)大国治立(おほくにはるたちの)(みこと)()支配(しはい)だから、087(いた)(ところ)として(ただ)しき(かみ)神霊(しんれい)は、088充満(じゆうまん)(たま)ふとは()ふものの、089また盤古(ばんこ)系統(けいとう)090自在天(じざいてん)系統(けいとう)邪神(じやしん)天地(てんち)充満(じゆうまん)して()るから、091此方(こちら)(れい)をよほど清浄(せいじやう)潔白(けつぱく)にして(かか)らねば、092神聖(しんせい)(かみ)降臨(かうりん)()けるといふ(こと)は、093到底(たうてい)不可能(ふかのう)なが原則(げんそく)だ。094(みづ)一滴(いつてき)もないのだから、095肉体(にくたい)(きよ)める(わけ)にも()かないから、096また滝壷(たきつぼ)()(ところ)か、097(きよ)(なが)れの(みづ)(みそぎ)をするとかして、098その(うへ)幽斎(いうさい)修業(しうげふ)にかかつたが(よろ)しからう』
099()『アヽ融通(ゆうづう)()かぬものだな、100全智(ぜんち)全能(ぜんのう)根本(こんぽん)(かみ)(さま)でも、101ソンナ窮屈(きうくつ)意見(いけん)(もつ)()られるのだらうか。102善悪(ぜんあく)(あひ)(こん)じ、103美醜(びしう)(たがひ)(まじ)はつて、104天地(てんち)一切(いつさい)万物(ばんぶつ)は、105(ここ)(はじ)めて(ちから)(しやう)じ、106各自(かくじ)活動(くわつどう)開始(かいし)するのでは()りませぬか。107()(なか)には絶対(ぜつたい)(ぜん)もなければ、108また絶対(ぜつたい)(あく)もない。109如何(いか)水晶(すゐしやう)身魂(みたま)だと()つても、110大半(たいはん)腐敗(ふはい)せる臭気(しうき)(つつ)まれた人間(にんげん)(からだ)宿(やど)らねばならぬのだから、111何程(なにほど)表面(うはべ)(みづ)(くらゐ)(あら)つた(ところ)で、112五臓(ござう)六腑(ろつぷ)まで洗濯(せんたく)しきれるものでない、113(もの)(ふか)(かんが)へれば、114()(あし)()せなくなつて(しま)ふ。115何事(なにごと)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)詔直(のりなほ)して、116ここで(ひと)神聖(しんせい)なる幽斎(いうさい)修業(しうげふ)を、117是非(ぜひ)々々(ぜひ)開始(かいし)して(くだ)さい。118ナンダカ神経(しんけい)興奮(こうふん)して、119神懸(かむがかり)修業(しうげふ)がしたくつて、120仕方(しかた)がなくなつて()た』
121(かつ)幽斎(いうさい)修業(しうげふ)心身(しんしん)清浄(せいじやう)にする(ため)122第一(だいいち)要件(えうけん)として、123清潔(せいけつ)なる衣服(いふく)(まと)ひ、124身体(しんたい)湯水(ゆみづ)(きよ)めて(かか)らねばならぬのだが、125さう()へば仕方(しかた)がない、126(かみ)(さま)御免(ごめん)(かうむ)つて幽斎(いうさい)修業(しうげふ)をさして(いただ)(こと)にしやうかなア』
127()『イヤー有難(ありがた)いありがたい……ナア与太彦(よたひこ)128六公(ろくこう)129貴様(きさま)今迄(いままで)まだ神懸(かむがかり)経験(けいけん)がないのだから、130この弥次彦(やじひこ)サンの神懸(かむがかり)を、131()つく(をが)め、132(こころ)(きよ)め、133(きも)()れ、134……サア勝彦(かつひこ)宣伝使(せんでんし)(さま)135(はや)審神(さには)をして(くだ)さい。136ナンダカ()がイソイソとして()まらなくなつて()ました、137……ウンウンウンウン、138ウーウー』
139(たちま)惟神(かむながら)(てき)両手(りやうて)()まれ、140身体(しんたい)(たちま)前後(ぜんご)左右(さいう)動揺(どうえう)(はじ)めた。
141()『ヨー弥次彦(やじひこ)(やつ)142(ひと)芝居(しばゐ)(はじ)()したナ、143ナンダ、144(めう)恰好(かつかう)だな、145()(ふさ)ぎよつて両手(りやうて)()み、146(すわ)つたなりに飛上(とびあ)がり、147(ちう)にまいまいの芸当(げいたう)(はじ)()した。148大方(おほかた)(まつ)大木(たいぼく)から滑走(くわつそう)しよつた(とき)亡霊(ばうれい)が、149まだ(からだ)のどつかに残留(ざんりう)して()つたと()える……オイ六公(ろくこう)150面白(おもしろ)いぢやないか、151……コレコレ勝彦(かつひこ)サン、152今日(けふ)はモウ口上(こうじやう)(だけ)はやめて(くだ)さい、153(たの)みますぜ』
154(かつ)『アハヽヽヽ』
155 弥次彦(やじひこ)夢中(むちう)になつて、156(あせ)をブルブル()らし(なが)ら、157(ぶと)空中(くうちう)餅搗(もちつき)した(やう)に、158地上(ちじやう)(いつ)(しやく)以上(いじやう)(はな)れ、159五六(ごろく)(しやく)(あひだ)昇降(しやうかう)運動(うんどう)開始(かいし)して()る。160神懸(かむがかり)(くわん)しては素人(しろうと)与太彦(よたひこ)161六公(ろくこう)二人(ふたり)は、162(くち)アングリとして大地(だいち)(たふ)れた(まま)
163()164(ろく)『アーアー、165ヤルヤル、166(めう)(めう)だ、167オイ弥次彦(やじひこ)168貴様(きさま)はそれ(だけ)(かく)(げい)()つて()つたのか、169重宝(ちようほう)(やつ)だ、170宙吊(ちうづ)りの芸当(げいたう)(めづ)らしい。171ワハヽヽヽ、172モシモシ宣伝使(せんでんし)さま、173どうとかして、174()神力(しんりき)弥次彦(やじひこ)(からだ)を、175猿廻(さるまは)しの(やう)使(つか)つて()せて(くだ)さいな』
176 勝彦(かつひこ)両手(りやうて)()み、177天津(あまつ)祝詞(のりと)(こゑ)(ゆる)やかに奏上(そうじやう)(をは)り、178(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)と、179(あま)数歌(かずうた)(うた)(をは)り、180(みぎ)食指(ひとさしゆび)指頭(しとう)より五色(ごしき)霊光(れいくわう)発射(はつしや)し、181弥次彦(やじひこ)身体(からだ)(むか)つて、182空中(くうちう)(ゑん)(ゑが)いた。183弥次彦(やじひこ)身体(からだ)勝彦(かつひこ)(ゆび)廻転(くわいてん)()れて、184空中(くうちう)(ゑん)(ゑが)き、185(ゆび)(むか)方向(はうかう)に、186(かれ)身体(からだ)回転(くわいてん)する。187勝彦(かつひこ)は、188今度(こんど)(おも)()つて(うで)()べ、189中天(ちうてん)(むか)つてブンマワシ(ごと)くに(ゑん)(ゑが)き、190弥次彦(やじひこ)(からだ)勝彦(かつひこ)(ゆび)さす中空(ちうくう)(むか)つて舞上(まひあが)()(くだ)り、191また()(あが)舞下(まひくだ)り、192空中(くうちう)遊行(いうかう)大活劇(だいくわつげき)(えん)ずる面白(おもしろ)さ。
193()『オイ六公(ろくこう)194あれを()い、195弥次彦(やじひこ)(やつ)196漸々(だんだん)熱練(じゆくれん)しよつて、197(からだ)(ちい)さくなつて、198()えぬやうな(たか)(とこ)まで、199空中(くうちう)滑走(くわつそう)し、200(あが)つたり()りたり、201(うへ)になつたり(した)になつたり、202大変(たいへん)大技能(だいぎのう)発揮(はつき)しよるぢやないか、203……モシモシ宣伝使(せんでんし)さま、204あなたの(ゆび)(うご)(とほ)りに、205弥次彦(やじひこ)(やつ)206(うご)きますなア。207あれなら軽業師(かるわざし)になつても大丈夫(だいぢやうぶ)()へますナ』
208(かつ)『アハヽヽヽ、209あれは霊線(れいせん)(ちから)(あやつ)られて、210(からだ)自由(じいう)使(つか)はれて()るのだ。211(わし)(ゆび)(とほ)りになるであらうがな』
212()『ハハア、213さうすると弥次彦(やじひこ)(えら)いのじやなくて、214あなたの(ゆび)(えら)神力(しんりき)具備(ぐび)して()るのだなア……あなたはヤツパリ魔法使(まはふつかひ)だ、215(おそ)ろしい油断(ゆだん)のならぬ宣伝使(せんでんし)ぢや、216(わたくし)(だけ)はアンナ曲芸(きよくげい)は、217どうぞ()らさぬ(やう)(ねが)ひますで、218(のう)六公(ろくこう)219アンナ(こと)をやられたら、220(いき)(なに)()れて(しま)うワ』
221(ろく)『アヽ(おそ)ろしい(こと)だのう』
222 ()()(うち)223弥次彦(やじひこ)()はスーと空気(くうき)()ける(おと)(とも)に、224(さん)(にん)(まへ)(くだ)つて()た。225勝彦(かつひこ)(また)もや両手(りやうて)()んで、226(ゆる)す』と一声(いつせい)227弥次彦(やじひこ)常態(じやうたい)(ふく)し、228()をギロつかせ(なが)ら、
229()『アヽやつぱり二十三(にじふさん)(たうげ)頂上(ちやうじやう)だつた、230ヤア(こわ)(ゆめ)()たよ、231(てん)()がるかと(おも)へば()(くだ)つて、232()(くだ)つたと(おも)へば(また)(てん)引上(ひきあ)げられる、233()はまわる、234(なん)ともかとも()れぬほど(くる)しかつた、235アヽやつぱり(ゆめ)(ゆめ)だ』
236()237(ろく)『エ、238なアに、239(ゆめ)(どころ)実地(じつち)(まこと)正味(しやうみ)正真(しやうまつ)だ。240(げん)(おれ)(たち)(いま)ここで貴様(きさま)大発明(だいはつめい)軽業(かるわざ)を、241無料(むれう)観覧(くわんらん)した(ところ)だ。242貴様(きさま)もよつぽど(めう)病気(びやうき)があると()える、243(おや)のある(うち)治療(ちれう)をして()かないと、244(おや)()くなつたら、245到底(たうてい)一生(いつしやう)(やまひ)だ。246不治(ふぢ)難症(なんしやう)(たけのこ)医者(いしや)宣告(せんこく)されるが最後(さいご)247(しば)(かぶ)つて()ない(かぎ)り、248(とて)(この)()では駄目(だめ)だぞ、249……モシモシ勝彦(かつひこ)さま、250コラ一体(いつたい)(なん)(わざ)ですか』
251(かつ)弥次彦(やじひこ)には、252悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)木常姫(こつねひめ)()(やつ)が、253タツタ(いま)油断(ゆだん)()すまして、254くつつきよつたのだ。255そこで(わし)鎮魂(ちんこん)(ちから)(もつ)木常姫(こつねひめ)悪霊(あくれい)(しば)つたのだ。256悪霊(あくれい)(わし)(ゆび)指揮(しき)(したが)つて、257あの(とほ)容器(いれもの)一所(いつしよ)に、258(ちう)()(くる)うたのだよ、259モウ(いま)(ところ)では、260木常姫(こつねひめ)邪霊(じやれい)往生(わうじやう)(いた)して()げよつたから、261弥次彦(やじひこ)(もと)(とほ)り、262常態(じやうたい)になつたのだ、263ウツカリして()ると、264貴様(きさま)()(また)何時(なんどき)邪霊(じやれい)一派(いつぱ)(おそ)はれるか()れやしないぞ。265()れだから、266至貴(しき)至重(しちよう)至厳(しげん)なる幽斎(いうさい)修業(しうげふ)は、267肉体(にくたい)(きよ)めもせず、268(あせ)だらけの、269(あか)()いた衣服(いふく)(まと)ふて奉仕(ほうし)する(こと)出来(でき)ないと、270(わし)説諭(せつゆ)したのだ。271それにも(かか)はらず、272(わし)言葉(ことば)()にして()かないものだから、273修業(しうげふ)(はじ)めない(うち)から、274邪霊(じやれい)誑惑(けうわく)され、275(たちま)木常姫(こつねひめ)容器(いれもの)となりよつたのだ、276……オイ弥次彦(やじひこ)277しつかりせないと、278(また)もや邪神(じやしん)襲来(しふらい)するぞ』
279()智覚(ちかく)精神(せいしん)(ほと)んど忘却(ばうきやく)して()ましたから、280(なに)(なん)だか(わたし)としては、281明瞭(めいれう)()きますが、282仮令(たとへ)邪神(じやしん)にもせよ、283(ちう)()けるナンテ、284(えら)(ちから)のあるものですなア』
285(かつ)馬鹿(ばか)()ふな、286胴体(どうたい)なしの(いかのぼり)といふ(こと)がある。287悪魔(あくま)()(もの)は、288大体(だいたい)表面(うはべ)ばかりで、289実地(じつち)()がないから、290恰度(ちやうど)291()へば(かぜ)(やう)なものだ。292その邪霊(じやれい)人間(にんげん)肉体(にくたい)這入(はい)つたが最後(さいご)293人間(にんげん)(からだ)風船玉(ふうせんだま)人間(にんげん)(ちう)にひつぱり()げる(やう)具合(ぐあひ)になつて、294(からだ)()()がるのだ。295人間(にんげん)大地(だいち)(あゆ)(もの)296(とり)かなんぞの(やう)に、297(ちう)()(やつ)は、298最早(もはや)人間(にんげん)としての資格(しかく)はゼロだ、299貴様(きさま)たちも中空(ちうくう)(かけ)つて()たいのか』
300()301(ろく)『ヘイヘイ邪神(じやしん)だらうが、302(なん)だらうが、303人間(にんげん)として天空(てんくう)(かけ)ると()(やう)(こと)出来(でき)るのなら、304(わたくし)一寸(ちよつと)一遍(いつぺん)305ソンナ()()ふて()たいですな。306世界(せかい)人間(にんげん)(おどろ)いて……「ヤア与太彦(よたひこ)307六公(ろくこう)(やつ)308(えら)神力(しんりき)(もら)ひよつた、309生神(いきがみ)さまになりよつた」と()つて、310尊敬(そんけい)して()れるでせう。311そうなると、312「ヤア彼奴(あいつ)三五教(あななひけう)信者(しんじや)だ、313三五教(あななひけう)神力(しんりき)(つよ)(かみ)だ、314(おれ)三五教(あななひけう)帰依(きえ)する」と()ふて、315世界中(せかいぢう)人間(にんげん)一遍(いつぺん)改心(かいしん)するのは請合(うけあひ)です。316(かみ)(さま)吾々(われわれ)にアンナ神力(しんりき)(あた)へて、317世界(せかい)(やつ)をアツと()はして(くだ)さつたら一遍(いつぺん)にお(みち)(ひら)けて、318世界(せかい)有象(うざう)無象(むざう)改心(かいしん)するのだけれどなア』
319(かつ)正法(しやうはふ)不思議(ふしぎ)なし、320奇蹟(きせき)(もつ)(ひと)(みちび)かむとする(もの)は、321いはゆる悪魔(あくま)(この)んで()(ところ)手段(しゆだん)だ。322吾々(われわれ)(かみ)(さま)貴重(きちよう)生宮(いきみや)だ、323充分(じゆうぶん)自重(じちよう)して、324(にく)(みや)(おも)みを()け、325少々(せうせう)(かぜ)にまで(とび)あがり、326(ちう)をかける(やう)(こと)になつては、327最早(もはや)天地(てんち)経綸(けいりん)司宰者(しさいしや)たる資格(しかく)はゼロになつたのだ。328何処(どこ)までも吾々(われわれ)はお(つち)(うへ)(あし)をピツタリと()()るのが法則(はふそく)だ』
329()『それでも、330鷹彦(たかひこ)宣伝使(せんでんし)(ちう)()つぢやありませぬか』
331(かつ)鷹彦(たかひこ)半鳥(はんてう)半人(はんじん)境遇(きやうぐう)()るエンゼルだ。332(かれ)(とき)あつて空中(くうちう)飛行(ひかう)し、333神業(しんげふ)参加(さんか)すべき使命(しめい)()つて()るのだから、334羽翼(うよく)(あた)へられてあるのだよ。335羽翼(うよく)空中(くうちう)飛翔(ひしよう)するための道具(だうぐ)だ。336(はね)もない人間(にんげん)が、337(いま)弥次彦(やじひこ)(やう)(こと)()るのは変則(へんそく)だ、338悪魔(あくま)翫弄物(おもちや)にせられて()るのだよ』
339(ろく)『さうすると、340悪魔(あくま)(はう)がよつぽど(えら)(やう)ですな。341(まこと)(かみ)(さま)(つち)(した)しみ、342悪魔(あくま)天空(てんくう)(かけ)るとは、343(じつ)天地(てんち)転倒(てんたう)()(なか)とは()(なが)ら、344コラ(また)あまり矛盾(むじゆん)ぢやありませぬか。345仮令(たとへ)邪神(じやしん)でも(なん)でも(かま)はぬ、346一遍(いつぺん)アンナ(はな)(わざ)(えん)じて()たいワ』
347(かつ)『コラコラ六公(ろくこう)348言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)だ、349ソンナ(こと)()ふと、350貴様(きさま)には、351竜宮城(りうぐうじやう)から鬼城山(きじやうざん)使(つか)ひした、352一旦(いつたん)大神(おほかみ)(そむ)いた口子姫(くちこひめ)(れい)が、353貴様(きさま)身辺(しんぺん)(ねら)つて()るぞ、354シツカリ(いた)せ』
355(ろく)『ヤアそいつは一寸(ちよつと)(おつ)でげすな、356何時(いつ)(うつ)(どほ)しにされては(こま)るが、357一遍(いつぺん)(くらゐ)(うつ)つて()れても()愛嬌(あいけう)だ、358……ヤイ口子姫(くちこひめ)とやら、359(おれ)肉体(にくたい)()して()るから、360一遍(いつぺん)アツサリと(うつ)つて()れぬかい』
361 弥次彦(やじひこ)(くち)をきつて
362弥次彦『クヽヽヽチヽヽヽコヽヽヽヒヽヽヽメヽヽヽ口子(くちこ)口子(くちこ)…ヒヒメメメメ口子姫(くちこひめの)(みこと)只今(ただいま)より六公(ろくこう)肉体(にくたい)守護(しゆご)(いた)すぞよ』
363(ろく)有難(ありがた)御座(ござ)います』
364()ふや(いな)や、365身体(からだ)上下(じやうげ)左右(さいう)動揺(どうえう)(はじ)めた。366地上(ちじやう)より四五(しご)(しやく)(ばか)りの(ところ)を、367(のぼ)りつ(くだ)りつ、368石搗(いしつき)曲芸(きよくげい)(えん)(はじ)めた。369(つひ)には(あし)地上(ちじやう)(はな)れ、370最低(さいてい)地上(ちじやう)()ること(いつ)(しやく)()371最高(さいかう)二三丈(にさんぢやう)空中(くうちう)上下(じやうげ)し、372廻転(くわいてん)(はじ)めた。
373()『ヤア六公(ろくこう)(やつ)374(えら)神力(しんりき)(もら)ひよつたぞ、375(けな)りい(こと)だ、376(おれ)一遍(いつぺん)アンナ(こと)()つて()たい。377(おれ)にアヽ()実地(じつち)(あら)はれたら、378それこそ(いち)()もなく(かみ)存在(そんざい)を、379心底(しんてい)から承認(しようにん)するのだが、380どうしても(おれ)には、381(れい)(くも)つて()ると()えて、382(かみ)(うつ)つて()れぬワイ』
383()『オイ弥次公(やじこう)384貴様(きさま)ア、385アンナ(こと)(どころ)かい、386(ほとん)日天(につてん)(さま)(ところ)()きよつたかと(おも)ふほど(たか)う、387空中(くうちう)をクルクルクルと廻転(くわいてん)しよつて、388まるで(とり)(くらゐ)(ちい)さく()える(とこ)まで……貴様(きさま)(げん)大曲芸(だいきよくげい)(えん)じよつたのだよ、389それを貴様(きさま)記憶(きおく)して()らぬか』
390()『アヽさうか、391ナンダかソンナ(ゆめ)()たやうな記憶(きおく)(おぼろ)げに(のこ)つて()(やう)だ。392ヤアヤア六公(ろくこう)(やつ)393追々(おひおひ)熟練(じゆくれん)しよつて、394ハア(あが)るワ(あが)るワ……(ほとん)(からだ)(ちい)さく()える(ところ)まで(あが)りよつたナ、395……モシモシ勝彦(かつひこ)さま、396アラ一体(いつたい)全体(ぜんたい)どうなるのですか』
397(かつ)『あまり慢心(まんしん)をすると、398(からだ)重量(おもみ)がスツカリ()くなつて、399邪神(じやしん)容器(ようき)となり、400風船玉(ふうせんだま)のやうに()()らされるのだ、401(さいはひ)(いま)無風(むふう)だから()いが、402一昨日(おととひ)(やう)(かぜ)でも()いた(くらゐ)なら、403()れこそ、404どこへ()つて仕舞(しま)ふか(わか)りやしないぞ。405それだから(おれ)此処(ここ)では幽斎(いうさい)修業(しうげふ)()られぬと()ふたのだ、406……(あゝ)407(こま)つた病人(びやうにん)二人(ふたり)出来(でき)よつた、408愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()ると、409与太公(よたこう)410貴様(きさま)にも伝染(でんせん)兆候(てうこう)()えて()る、411病菌(びやうきん)潜伏期(せんぷくき)だ。412(なん)とかして、413免疫法(めんえきはふ)(かう)じたいものだが、414(この)附近(ふきん)には避病院(ひびやういん)もなし、415消毒薬(せうどくやく)()し、416(こま)つた(こと)だワイ』
417()消毒薬(せうどくやく)とは(なん)ですか』
418(かつ)生粋(きつすゐ)清浄(せいじやう)なお(みづ)だ、419(みづ)(からだ)(きよ)めて、420(かみ)(さま)霊光(れいくわう)()で、421黴菌(ばいきん)()(ほろ)ぼすのだ。422(あゝ)423(こま)つた(こと)だ、424……オイ与太公(よたこう)425しつかりせぬか、426貴様(きさま)には八十(やそ)枉彦(まがひこ)()(ねら)ふて()るぞ、427……(なん)(その)態度(たいど)は……またガタガタと(ふる)()したぢやないか』
428()強度(きやうど)帰神(きしん)状態(じやうたい)で、429……イヤもう神人(しんじん)感合(かんがふ)妙境(めうきやう)(たつ)するのも、430(あま)(とほ)くはありますまい、431……南無(なむ)八十(やそ)枉彦(まがひこ)大明神(だいみやうじん)432何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)この与太彦(よたひこ)肉体(にくたい)にどこどこまでもお見捨(みす)てなく、433神懸(かむがか)(くだ)さいませ、434惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
435(かつ)『また伝染(でんせん)しよつた、436病毒(びやうどく)伝播(でんぱ)()ふものは、437(じつ)迅速(じんそく)なものだ、438アヽ仕方(しかた)がない、439此奴(こいつ)()(みな)奇蹟(きせき)(この)んで(かみ)(みと)めやうとする偽信者(にせしんじや)だから、440谷底(たにそこ)()ちて()()ますまで打遣(うつちや)つて()かうかなア。441大火事(おほくわじ)(なか)へ、442一本(いつぽん)二本(にほん)のポンプを()けた(ところ)仕方(しかた)がないワ。443エ、444ままよ、445これ(だけ)(あつ)くなつて()(きた)つた火柱(ひばしら)(やう)な、446周章魂(うろたへだましひ)は、447最早(もはや)(すく)ふの余地(よち)はない、448……(あゝ)449国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)(さま)450木花姫(このはなひめ)(かみ)(さま)451()出神(でのかみ)(さま)452モウ(この)(うへ)貴神(あなた)御心(みこころ)(まま)になさつて(くだ)さいませ、453惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)454惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
455 勝彦(かつひこ)(いの)(をは)るや、456六公(ろくこう)上下動(じやうげどう)休止(きうし)し、457芝生(しばふ)(うへ)にキチンと双手(もろて)()んだ(まま)端坐(たんざ)し、458真赤(まつか)(かほ)をし(なが)ら、459(あせ)をタラタラと()らして()る。460与太公(よたこう)(また)もや(うな)()した。461(はふ)(はづ)れの大声(おほごゑ)で、
462与太彦『ヤヤヤヤヤア、463ヤソ、464ヤソ ヤソ ヤソ、465ママママ、466ガヽヽヽ、467マガ マガ マガ、468ヒヒ、469ココ、470ヒコ ヒコ、471八十(やそ)枉彦(まがひこ)だア……(くさ)()つたる(たましひ)で、472三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)とは()くも()ふたり、473勝彦(かつひこ)(やつ)474……(おれ)審神(さには)出来(でき)るなら、475サア、476サア サア サア、477美事(みごと)()つて()よ……』
478(かつ)『ナニツ、479(この)()(みだ)悪神(あくがみ)480退却(たいきやく)(いた)せ』
481双手(もろて)()んで霊線(れいせん)発射(はつしや)した。
482()『アハヽヽヽヽ、483ワツハヽヽヽヽ、484可笑(をか)しいワイ、485イヤ面白(おもしろ)いワイ、486小鹿峠(こしかたうげ)二十三(にじふさん)(さか)(うへ)(おい)て、487審神者(さには)(づら)(いた)した(その)(むく)い、488数多(あまた)魔神(まがみ)()きつれて、489貴様(きさま)肉体(にくたい)八裂(やつざき)(いた)してやらう、490覚悟(かくご)(いた)せ、491……ヤツ…ヤツ…』
492矢声(やごゑ)()(なが)ら、493勝彦(かつひこ)端坐(たんざ)せる頭上(づじやう)を、494前後(ぜんご)左右(さいう)()びまわり()した。495勝彦(かつひこ)全身(ぜんしん)(ちから)(れい)()めて、496(みぎ)食指(ひとさしゆび)より霊光(れいくわう)を、497八十(やそ)枉彦(まがひこ)(かか)れる与太彦(よたひこ)前額部(ぜんがくぶ)目掛(めが)けて発射(はつしや)した。
498()『ワツハヽヽヽ、499オツホヽヽヽ、500猪口才(ちよこざい)腰抜(こしぬけ)審神者(さには)501吾々(われわれ)審判(さには)するとは片腹(かたはら)(いた)い。502サアこれよりは(その)(はう)()(くび)()()いてやらう、503覚悟(かくご)(いた)せ』
504猿臂(えんぴ)()ばして(つか)みかかる。505勝彦(かつひこ)は『ウン』と一声(いつせい)言霊(ことたま)発射(はつしや)に、506与太彦(よたひこ)身体(からだ)翻筋斗(もんどり)うつてクルクルと七八(しちはち)廻転(くわいてん)(なが)ら、507(かたはら)()(しげ)みに(ころ)()んだ。508(また)もや弥次彦(やじひこ)容色(ようしよく)(へん)じ、509()(いか)らせ、510()をキリキリと(きし)(おと)511……(しばら)くあつて大口(おほぐち)(ひら)き、
512弥次彦『コヽヽヽツヽヽヽネヽヽヽヒヽヽヽヒメ、513コツコツコツ、514ネヽヽヽヒヒヒ、515メメメメ、516コツコツ、517コツネヒメのミコト、518……(その)(はう)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(まを)し、519変性(へんじやう)男子(なんし)埴安彦(はにやすひこ)(かみ)520変性(へんじやう)女子(によし)埴安姫(はにやすひめ)(かみ)神政(しんせい)(たて)()り、521吾々(われわれ)天下(てんか)(さわ)がす腰抜(こしぬけ)野郎(やらう)522この二十三(にじふさん)(たうげ)は、523吾々(われわれ)屈強(くつきやう)関所(せきしよ)だ。524二十三(にじふさん)(さか)525二十四(にじふし)(さか)(あひだ)は、526ウラル(ひこ)(かみ)守護(しゆご)いたす、527八岐(やまた)大蛇(おろち)や、528金狐(きんこ)529悪鬼(あくき)縄張(なはばり)地点(ちてん)530此処(ここ)()たは(なんぢ)(うん)()き、531これから(その)(はう)霊肉(れいにく)(とも)木葉(こつぱ)微塵(みぢん)にうち(ほろ)ぼし()れむ、532カカ覚悟(かくご)をせよ』
533弥次彦(やじひこ)肉体(にくたい)は、534拳骨(げんこつ)(かた)めて、535勝彦(かつひこ)()がけて(せま)つて()る。536勝彦(かつひこ)(また)もや『ウン』と一声(ひとこゑ)言霊(ことたま)水火(いき)発射(はつしや)した。537弥次彦(やじひこ)肉体(にくたい)二三間(にさんげん)(うしろ)()()がり、538大口(おほぐち)()けて、
539弥次彦『オホヽヽヽヽ、540(なんぢ)(めくら)宣伝使(せんでんし)分際(ぶんざい)(いた)して、541この木常姫(こつねひめ)言向和(ことむけやは)さむとは片腹(かたはら)(いた)し、542(おも)()れよ。543(なんぢ)身魂(みたま)生命(いのち)は、544最早(もはや)風前(ふうぜん)灯火(ともしび)だ。545この谷底(たにそこ)()(おと)し、546絶命(ぜつめい)させてやらうか、547ホヽヽホウ、548愉快(ゆくわい)千万(せんばん)(こと)出来(でき)たワイ。549貴様(きさま)首途(かどで)血祭(ちまつ)りに、550(まつ)りあげ、551()れよりは(なほ)(すす)んでコーカス(ざん)蹂躙(じうりん)し、552ウラルの(かみ)刄向(はむか)変性(へんじやう)女子(によし)身魂(みたま)(かた)(ぱし)から()(ころ)し、553(たひら)()れむは(またた)(うち)554オツホヽヽホウ、555(うれ)(うれ)(よろこ)ばし、556大願(たいぐわん)成就(じやうじゆ)時節(じせつ)到来(たうらい)だ、557………ヤアヤア部下(ぶか)者共(ものども)558(いち)()(はや)勝彦(かつひこ)身辺(しんぺん)(むら)がり(きた)つて、559(いき)()()めよ、560ホーイ ホーイ ホーイ』
561()ふかと()れば、562ゾツと()()(あや)しの(かぜ)563縦横(じうわう)無尽(むじん)()(きた)り、564四辺(しへん)陰鬱(いんうつ)()(とざ)され、565数十万(すうじふまん)(いや)らしき()(ごゑ)566(わら)(ごゑ)567(さけ)(ごゑ)568()()はれぬ惨澹(さんたん)たる光景(くわうけい)となつて()た。569勝彦(かつひこ)最早(もはや)これ(まで)と、570一生(いつしやう)懸命(けんめい)571両眼(りやうがん)()ぢ、572天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、573(あま)数歌(かずうた)(うた)(はじ)めた。574与太彦(よたひこ)身体(からだ)前後(ぜんご)左右(さいう)脱兎(だつと)(ごと)く、575()(めぐ)(はじ)めた。576(つづ)いて弥次彦(やじひこ)身体(からだ)()(ばひ)となつて猛虎(まうこ)()(くる)ふが(ごと)く、577(くち)より猛火(まうくわ)()きつつ、578勝彦(かつひこ)居所(ゐどころ)中心(ちうしん)(たけ)(くる)飛廻(とびまは)る。579六公(ろくこう)(たちま)頭上(づじやう)中空(ちうくう)跳上(はねあ)がり、580勝彦(かつひこ)頭上(づじやう)前後(ぜんご)左右(さいう)()けめぐり、581(なん)とも(たとへ)(がた)悪臭(あくしう)(はな)(はじ)めた。582四辺(あたり)刻々(こくこく)暗黒(あんこく)()()した。583最早(もはや)勝彦(かつひこ)身辺(しんぺん)烏羽玉(うばたま)(やみ)(つつ)まれて(しま)つた。
584(弥次彦)八十(やそ)枉彦(まがひこ)585木常姫(こつねひめ)586口子姫(くちこひめ)(かみ)神力(しんりき)には(おそ)()つたか、587イヤ(おそ)()らずに()られうまい、588ワツハヽヽヽ、589オツホヽヽヽ、590ホツホヽヽヽ』
591(くら)がりより、592怪体(けたい)(こゑ)(しき)りに(ひび)(わた)る。593(とら)(うそぶ)くか、594獅子(しし)()ゆるか、595(りう)(ぎん)ずるか、596(ただ)しは暴風(ばうふう)怒濤(どたう)(こゑ)か、597(ひびき)か、598四辺(しへん)暗澹(あんたん)599荒涼(くわうりやう)600魔神(まがみ)諸声(もろこゑ)五月蝿(さばへ)(ごと)(ひび)(わた)る。601(くわい)また(くわい)(つつ)まれたる勝彦(かつひこ)は、602一生(いつしやう)懸命(けんめい)603(たき)(ごと)(あせ)(しぼ)(なが)ら、604神言(かみごと)生命(いのち)(つな)に、605(こゑ)(つづ)(かぎ)奏上(そうじやう)しかけた。606この(とき)(やみ)(てら)して、607中空(ちうくう)より、608(うま)(またが)(くだ)(きた)四五(しご)生神(いきがみ)があつた。609()()(この)()(あら)はれ、610金幣(きんぺい)打振(うちふ)打振(うちふ)り、611前後(ぜんご)左右(さいう)(うま)(をど)らせ、612()(めぐ)れば、613流石(さすが)邪神(じやしん)()(うしな)ひ、614(さき)(あらそ)ふて二十四(にじふし)(さか)方面(はうめん)()して、615ドツと(ばか)動揺(どよ)めき(わた)り、616(あや)しき(こゑ)(とも)(けぶり)(ごと)()()つた。617与太彦(よたひこ)618弥次彦(やじひこ)619六公(ろくこう)(たちま)(もと)覚醒(かくせい)状態(じやうたい)復帰(ふくき)した。
620(かつ)『アヽ有難(ありがた)有難(ありがた)し、621悪魔(あくま)襲来(しふらい)(はら)(きよ)(たま)ひし、622大神(おほかみ)()神徳(しんとく)有難(ありがた)感謝(かんしや)(つかまつ)ります』
623大地(だいち)(かしら)をすりつけて、624(うれ)(なみだ)(むせ)ぶ。625弥次彦(やじひこ)626与太彦(よたひこ)627六公(ろくこう)(さん)(にん)も、628(おな)じく芝生(しばふ)(あたま)()け、629(なん)となく驚異(きやうい)(ねん)()られ、630一生(いつしやう)懸命(けんめい)神言(かみごと)奏上(そうじやう)して()る。631()(にん)身体(からだ)(にじ)(ごと)鮮麗(せんれい)なる霊衣(れいい)(つつ)まれた。632芳香(はうかう)馥郁(ふくいく)として四辺(しへん)(かほ)り、633嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)(ひびき)は、634()(にん)身魂(みたま)()()むが(ごと)(きこ)ゆるのであつた。635()(にん)(やうや)(かうべ)()げて(なが)むれば、636こはそも如何(いか)に、637()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)は、638鷹彦(たかひこ)639岩彦(いはひこ)640梅彦(うめひこ)641亀彦(かめひこ)642駒彦(こまひこ)643音彦(おとひこ)(とも)に、644馬上(ばじやう)(ゆたか)(この)()()つて()る。
645(かつ)『ヤア()れは()れは()出別(でわけ)(かみ)(さま)646()くも()加勢(かせい)(くだ)さいました。647(おも)はぬ不調法(ぶてうはふ)(いた)しまして、648重々(ぢうぢう)(つみ)()(ゆる)(くだ)さいませ。649(この)(うへ)(けつ)して(けつ)して、650()かる不規律(ふきりつ)なる幽斎(いうさい)修業(しうげふ)(だん)じて(おこな)ひませぬ。651何事(なにごと)も、652我々(われわれ)不覚(ふかく)無智(むち)(いた)(ところ)653()らず()らずに慢心(まんしん)(つかまつ)り、654(わび)申様(まをしやう)御座(ござ)いませぬ』
655 ()出別(でわけ)(かみ)一言(いちごん)(はつ)せず、656(くび)二三回(にさんくわい)(うなづ)かせ(なが)ら、657一行(いつかう)宣伝使(せんでんし)引連(ひきつ)れ、658(ふたた)天馬(てんば)(くう)(かけ)つて、659雲上(うんじやう)(たか)姿(すがた)(かく)した。660無数(むすう)光輝(くわうき)()えたる霊線(れいせん)は、661(にじ)(ごと)彗星(すゐせい)(ごと)く、662一行(いつかう)(あと)(やや)(しばら)姿(すがた)(そん)しける。
663 (みね)()()()(わた)春風(はるかぜ)(こゑ)は、664(しと)やかに(きこ)えて()た。665百鳥(ひやくてう)(はる)(うた)(こゑ)長閑(のどか)()(にん)(みみ)音楽(おんがく)(ごと)(きこ)(はじ)めた。
666()『モシ勝彦(かつひこ)宣伝使(せんでんし)さま、667大変(たいへん)大騒動(だいさうどう)がおつぱじまつて、668(あま)岩戸(いはと)(がく)れの(まく)()りましたな、669あの(とき)(わたし)(くる)しさと()つたら、670沢山(たくさん)青面(あをづら)671赤面(あかづら)672黒面(くろづら)(うさぎ)や、673(とら)や、674(おほかみ)675大蛇(だいじや)(いち)()()つて()て、676(あし)にかぶり()く、677(かみ)()()つぱる、678(みみ)()く、679(かいな)をひく、680(なぐ)る、681それはそれは随分(ずゐぶん)(くる)しい()()はされました。682イヤもう神懸(かむがかり)()()りでした。683咫尺(しせき)暗澹(あんたん)として昼夜(ちうや)(べん)ぜず、684(くる)しいと()つても譬様(たとへやう)のない、685えぐい、686(いた)い、687(つら)い、688(くさ)いイヤもう惨々(さんざん)きつい()()ひました。689その(とき)に…アヽ宣伝使(せんでんし)(さま)がウンと(ひと)()つて(くだ)さると()いのだけれど、690あなたは霊眼(れいがん)(うと)いと()えて、691(てき)()ない(はう)ばつかり、692一生(いつしやう)懸命(けんめい)鎮魂(ちんこん)をやるものだから、693鼻糞(はなくそ)(まと)()つた(ほど)効能(かうのう)()く、694(つんぼ)ほども言霊(ことたま)神力(しんりき)()かず、695イヤモウ迷惑(めいわく)千万(せんばん)(こと)でしたよ』
696(かつ)『アヽさうだつたか、697そらさうだらう、698何分(なにぶん)(くも)()つた肉体(にくたい)で、699(にはか)審神者(さには)()ひられて無理(むり)()つたものだから、700審神者(さには)肉体(にくたい)(かみ)(さま)完全(くわんぜん)宿(やど)つて(くだ)さらぬものだから失敗(しつぱい)をやつたのだ。701(しか)しチツトは鎮魂(ちんこん)効能(かうのう)(あら)はれただらう』
702()千遍(せんべん)一度(いちど)(くらゐ)まぐれ(あた)りに、703(わたくし)()めて()悪霊(あくれい)(はう)霊光(れいくわう)発射(はつしや)したのは(たし)かです。704イヤモウ脱線(だつせん)だらけで、705必要(ひつえう)(ところ)へはチツトも(れい)光線(くわうせん)発射(はつしや)せないものだから、706悪魔(あくま)(やつ)益々(ますます)()()んで、707武者(むしや)()りつき、708えらい(くるし)みをしました。709アーア()うなると立派(りつぱ)大将(たいしやう)()しくなつて()たワイ』
710(かつ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
711()(わたし)もえらい()()はされた、712(ひと)(くび)真黒(まつくろ)けの(なは)で、713悪魔(あくま)(やつ)714幾筋(いくすぢ)ともなく(しば)りよつて、715古池(ふるいけ)(みづ)両方(りやうはう)から、716釣瓶(つるべ)(つな)をつけて替揚(かへあ)げる(やう)に、717空中(くうちう)自由(じいう)自在(じざい)()(まは)しよつた(とき)(くるし)さと()つたら、718何遍(なんべん)(いき)()えたと(おも)つたか(わか)りませぬ、719アヽコンナ(くるし)責苦(せめく)()ふのなら、720一層(いつそう)(こと)721一思(ひとおも)ひに(ころ)して()しいと(おも)ひましたよ。722(あつ)いと(おも)へば(また)(つめ)たい谷底(たにそこ)(からだ)()()ろされ、723今度(こんど)(また)(こげ)つく(やう)(あつ)(ところ)()()げられ、724(なつ)(ふゆ)とが瞬間(しゆんかん)交代(かうたい)をするのだから、725(からだ)健康(けんかう)(だい)なしになるなり、726手足(てあし)()()りバラバラになつて(しま)つた(やう)(くるし)みを(かん)じた。727その(とき)審神者(さには)勝彦(かつひこ)サンは、728どうして御座(ござ)るか、729ここらでこそ(たす)けて()れさうなものだと(おも)つて、730あなたの(はう)(なが)めて()れば、731あなたの背後(うしろ)には、732常世姫(とこよひめ)悪霊(あくれい)が、733貧乏(びんばふ)団扇(うちは)をふつて、734悪霊(あくれい)指揮(しき)命令(めいれい)をやつて()る、735(まへ)さまは、736その常世姫(とこよひめ)()(うご)(とほ)りに、737(あやつ)人形(にんぎやう)(やう)活動(くわつどう)し………(いな)蠢動(しゆんどう)して()るものだから、738(かへつ)てそれが此方(こちら)(たす)(どころ)か、739邪魔(じやま)になつて、740益々(ますます)(くる)しさを(くは)へ、741イヤモウ言語(げんご)(ぜつ)する煩悶(はんもん)苦悩(くなう)742()(たま)一丁(いつちやう)ほど(さき)飛出(とびだ)すやうな悲惨(ひさん)()()はされました』
743(かつ)『それだから、744コンナ(ところ)幽斎(いうさい)修業(しうげふ)()せと()ふのに、745貴様(きさま)勝手(かつて)悪魔(あくま)(はう)()きよつたのだ。746仮令(たとへ)邪神(じやしん)でも、747あの弥次彦(やじひこ)(やう)に、748空中(くうちう)滑走(くわつそう)がしたいの曲芸(きよくげい)(えん)じたいのと、749熱望(ねつばう)(てき)気焔(きえん)()くものだから、750魔神(まがみ)(やつ)()たり(かしこ)し、751()註文(ちゆうもん)(とほ)(なん)でも御用(ごよう)(うけたま)はります、752(わたし)好物(かうぶつ)753手具脛(てぐすね)()いて()つて()ました、754(なん)のこれしきの芸当(げいたう)手間(てま)もへツチヤクレも()るものか、755遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)にや(およ)ばぬ、756悪神(あくがみ)容器(いれもの)には()つて()いして()いぢや、757ヤツトコドツコイして()いナ、758権兵衛(ごんべゑ)(きた)れ、759太郎兵衝(たらうべゑ)(きた)れ、760(くろ)()い、761(あか)()い、762大蛇(だいじや)()い、763(ついで)(きつね)も、764(たぬき)も、765野天狗(のてんぐ)も、766幽霊(いうれい)も、767あらゆる()(あし)(みたま)もやつて()いと、768八十(やそ)枉彦(まがひこ)号令(がうれい)(もと)(あつ)まり(きた)つた数万(すうまん)魔軍(まぐん)769千変(せんぺん)万化(ばんくわ)魔術(まじゆつ)(つく)して()()仰々(ぎやうぎやう)しさ、770()ざましかりける次第(しだい)なりけりだ。771アツハヽヽヽ』
772()『モシモシ勝彦(かつひこ)宣伝使(せんでんし)さま、773あまり法螺(ほら)()いて(もら)ひますまいか、774………イヤ法螺(ほら)ぢやない業託(ごうたく)(なら)べて嘲弄(てうろう)して(もら)ひますまいかい。775この天地(てんち)言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)ぢやありませぬか、776ソンナ(こと)()つて()ると、777(また)もや(わたくし)(やう)に、778軽業(かるわざ)標本(へうほん)に、779魔神(まがみ)(やつ)から使役(しえき)されますぜ。780労銀(らうぎん)値上(ねあげ)八釜(やかま)しい(いま)()(なか)に、781破天荒(はてんくわう)の………(いな)廻転(くわいてん)動天(どうてん)軽業(かるわざ)生命(いのち)からがら、782無報酬(むはうしう)強制(きやうせい)され、783(あせ)(あぶら)(しぼ)られて、784墓原(はかはら)骨左衛門(ほねざゑもん)骨皮(ほねかは)痩右衝門(やせうゑもん)(やう)な、785我利(がり)々々(がり)亡者(まうじや)痩餓鬼(やせがき)にならねばなりますまい、786チツト改心(かいしん)なされ』
787(かつ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ) 惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
788(ろく)『コレコレ立派(りつぱ)審神者(さには)勝彦(かつひこ)さま、789あなたの()神力(しんりき)には往生(わうじやう)(いた)しましたよ、790イヒヽヽヽ』
791(かつ)『みなが()つて、792さう(おれ)包囲(はうゐ)攻撃(こうげき)しても(こま)るぢやないか。793(おれ)だつて誠心(せいしん)誠意(せいい)794()らむ(かぎ)りのベストを(つく)したのだ。795これ以上(いじやう)吾々(われわれ)(のぞ)むのは、796予算(よさん)超過(てうくわ)()ふものだ。797国庫(こくこ)支弁(しべん)方法(はうはふ)差支(さしつか)へて(しま)ふ。798又復(またまた)増税(ぞうぜい)なんて、799(ひと)(いや)がる(こと)()はねばならぬ。800(まへ)()はさう()つて、801吾々(われわれ)当局(たうきよく)審神者(さには)攻撃(こうげき)するが、802当局者(たうきよくしや)()にもチツトはなりて()るが()い。803国家(こくか)多事(たじ)多難(たなん)のこの(さい)ぢや、804(かね)()るのは(そこ)()れず、805増税(ぞうぜい)806徴募(ちようぼ)あらゆる手段(しゆだん)(つく)して膏血(かうけつ)(しぼ)り、807()らむ(かぎ)りの智慧(ちゑ)味噌(みそ)臨時(りんじ)支出(ししゆつ)までして、808ヤツトこの()切抜(きりぬ)けたのだ。809さう八釜(やかま)しく()(たて)ると、810勝彦(かつひこ)内閣(ないかく)瓦解(がかい)()むを()ざる悲運(ひうん)立到(たちいた)らねばならなくなる。811さうなれば、812貴様(きさま)()一蓮(いちれん)托生(たくしやう)813連袂(れんぺい)辞職(じしよく)()かけねばなるまい。814今度(こんど)責任(せきにん)(おれ)一人(ひとり)負担(ふたん)させやうと()ふのは、815あまり(むし)好過(よす)ぎるワイ。816共通(きようつう)(てき)責任(せきにん)()つのが、817いはゆる一蓮(いちれん)托生(たくしやう)主義(しゆぎ)だよ、818アハヽヽヽ』
819()『イヤ(おつしや)(とほ)りだ、820御尤(ごもつと)もだ、821モチだ。822スツテの(こと)勝彦(かつひこ)内閣(ないかく)崩解(ほうかい)するとこだつた。823(しか)(なが)ら、824人間(にんげん)老少(らうせう)不定(ふぢやう)825何時(なんどき)冥土(めいど)(おに)(むか)へられて、826欠員(けつゐん)出来(でき)るか()れたものぢやない、827その(とき)には、828弥次彦(やじひこ)後釜(あとがま)(すわ)つて、829この弥次(やじ)喜多(きた)内閣(ないかく)でも組織(そしき)し、830(まへ)サンの政綱(せいかう)維持(ゐぢ)して()く、831つまり連鎖(れんさ)内閣(ないかく)でも成立(せいりつ)させて、832()すわる(つも)りだから、833(あと)(こころ)(のこ)さず、834白紙(はくし)三角帽(さんかくぼう)(あたま)(いただ)いて、835未練(みれん)(のこ)さず旅立(たびだち)なされ。836(いづ)新顔(しんがほ)一人(ひとり)二人(ふたり)()れても(かま)はぬ、837居坐(ゐすわ)内閣(ないかく)をやつて()(はう)が、838党勢(たうせい)維持(ゐぢ)(じやう)都合(つがふ)()いから、839アハヽヽヽ。840(しか)しコンナ(ところ)長居(ながゐ)(おそ)れだ、841グズグズしとると、842冥土(めいど)から(つの)()えた鬼族院(きぞくゐん)がやつて()られちや、843一寸(ちよつと)閉口(へいこう)だ。844これや(ひと)つ、845研究会(けんきうくわい)でも(ひら)いて、846熟議(じゆくぎ)をこらすが(みち)だけれど、847(あま)(おな)(ところ)にくつついて()るのも()()かない。848二十四番(にじふしばん)(たうげ)踏破(たふは)し、849二十五(にじふご)(ばん)(たうげ)(うへ)で、850善後策(ぜんごさく)をゆつくり講究(かうきう)(いた)しませうか、851アハヽヽヽ』
852一同(いちどう)『ワハヽヽヽ』
853(かつ)『まだ(わら)(ところ)へは()かないぞ、854何時(いつ)瓦解(がかい)(おそれ)があるかも()れやしない。855常世姫(とこよひめの)(みこと)が、856(とほ)(うみ)彼方(あなた)()()つて、857(さかん)空中(くうちう)無線(むせん)電信(でんしん)合図(あひづ)をして()るから、858一寸(いつすん)(すき)()つたものぢやない、859()()けツ、860(すす)めツおいち()(さん)()ツ』
861(みち)なき(みち)をアルコールに()ふた猩々(しやうじやう)(ごと)く、862無闇(むやみ)矢鱈(やたら)二十五(にじふご)(ばん)(たうげ)(うへ)まで、863(やうや)辿(たど)()いた。
864(かつ)『アーア、865ヤレヤレ(あぶ)ない(こと)だつた、866中空(ちうくう)(たか)一本(いつぽん)丸木橋(まるきばし)(わた)つて()るやうな心持(こころもち)だつた』
867()地獄(ぢごく)(かま)一足飛(いつそくとび)といふ曲芸(きよくげい)も、868首尾(しゆび)()成功(せいこう)(いた)しました。869皆様(みなさま)870()()りましたら、871一同(いちどう)(そろ)ふて拍手(はくしゆ)喝采(かつさい)希望(きばう)いたします』
872(かつ)『ヤア賛成者(さんせいしや)(すくな)いなア、873……、874ヤア(ひと)つも拍手(はくしゆ)する(やつ)がない、875全然(ぜんぜん)反対(はんたい)だと()えるワイ』
876()『それでも勝彦(かつひこ)さま、877あなたの()(うち)簇生(ぞくせい)して()寄生虫(きせいちう)は、878ソツと拍手(はくしゆ)して()ましたよ。879その(こゑ)が……ブン……と()つて、880裏門(うらもん)から放出(はうしゆつ)しました。881イヤもう鼻持(はなもち)のならぬ(くさ)(こと)だつた、882ワハヽヽヽ』
883 この(とき)忽然(こつぜん)として、884東北(とうほく)(てん)より黒雲(こくうん)(おこ)り、885暴風(ばうふう)(たちま)()(きた)つて、886(たうげ)(うへ)()てる()(にん)(からだ)中空(ちうくう)()(あが)り、887(そこ)ひも()れぬ谷間(たにま)()がけて天上(てんじやう)より、888(いは)をぶつつけた(ごと)く、889一瀉(いつしや)千里(せんり)(いきほひ)(もつ)て、890(あを)()つたる(ふち)(むか)つて、891真逆(まつさか)(さま)にザンブと落込(おちこ)んだ。
892 その途端(とたん)(ゆめ)(やぶ)られ附近(あたり)()れば瑞月(ずゐげつ)近隣(きんりん)三四(さんよ)(にん)(をとこ)893藪医者(やぶいしや)(まね)いて(みやく)()らせて()る。
894 藪医者(やぶいしや)は、895一寸(ちよつと)(くび)(ひね)つて、
896医者『アー此奴(こいつ)ア、897強度(きやうど)催眠(さいみん)状態(じやうたい)(おちい)つて()る、898自然(しぜん)覚醒(かくせい)状態(じやうたい)になるまで、899放任(はうにん)して()くより(みち)はなからう……非常(ひじやう)麻痺(まひ)だ、900痙攣(けいれん)だ……』
901宣告(せんこく)(くだ)()たりける。
902大正一一・三・二五 旧二・二七 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
逆リンク(このページにリンクが張られているページ)
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→