霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 水上(すゐじやう)(かげ)〔五八三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻 篇:第3篇 神山霊水 よみ:しんざんれいすい
章:第16章 第15巻 よみ:すいじょうのかげ 通し章番号:583
口述日: 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
亀彦、梅彦ら五人は、神素盞嗚大神のあとを追って西蔵にやってきたところ、女神の導きによって高国別を救うようにと、岩窟にやってきたのだ、と語った。
一行は、岩窟の中で鬼によって苦しめられていた老若男女を救った。さらに奥へ進んで行くと、岩戸の裏側に一人の女が縛められている。女は、愛子姫の従者・浅子姫であった。
浅子姫は、岸子姫・岩子姫らと共に愛子姫らを追って西蔵にやってきたが、ウラナイ教の蠑螈別によって捉えられてしまったのだ、と語った。そして岸子姫・岩子姫の安否を気遣った。
さらに進んで行くと池があり、岸子姫と岩子姫は、池に重りをつけられて投げ込まれ、苦しんでいた。梅彦と亀彦は池に飛び込んで二人を救出した。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1516
愛善世界社版:200頁 八幡書店版:第3輯 354頁 修補版: 校定版:199頁 普及版:91頁 初版: ページ備考:
001 三男三女(さんなんさんぢよ)神歌(しんか)(うた)(なが)ら、002(いさぎよ)前進(ぜんしん)する。003(また)もやトンと行当(ゆきあた)つた岩壁(がんぺき)
004高国別(たかくにわけ)『ヤア(また)しても岸壁(がんぺき)だ、005如何(いか)一切(いつさい)万事(ばんじ)行詰(ゆきつま)りの()(なか)だと()つても、006此処(ここ)まで行詰(ゆきつま)りの(かぜ)()いて()()るのか。007吾々(われわれ)(まこと)神力(しんりき)(もつ)(この)岩戸(いはと)(ひら)き、008行詰(ゆきつま)りの()(ひら)かねばなるまい。009()()休息(きうそく)(うへ)010ゆつくりと相談(さうだん)(いた)しませう』
011亀彦(かめひこ)臨時(りんじ)議会(ぎくわい)開会(かいくわい)はどうでせう』
012梅彦(うめひこ)『アハヽヽヽ、013議会(ぎくわい)()けば、014(しこ)岩窟(いはや)連想(れんさう)せずには()られない。015歴史(れきし)繰返(くりかへ)すとかや、016(ひと)つゆるりと秘密会(ひみつくわい)でも開催(かいさい)しませう』
017頃合(ころあひ)(いは)(うへ)腰打掛(こしうちか)けた。018三人(さんにん)女性(ぢよせい)(おな)じく(こし)()かけ、
019『アーア、020有難(ありがた)有難(ありがた)い、021マア此処(ここ)でゆつくりと(やす)まして(いただ)きませう』
022高国別(たかくにわけ)『エー、023あなた(がた)御一同(ごいちどう)はどうして(この)岩窟(いはや)にお這入(はい)りになりましたか』
024亀彦(かめひこ)吾々(われわれ)神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)地教山(ちけうざん)()(この)西蔵(チベツト)秘密郷(ひみつきやう)にお()(あそ)ばしたと()き、025()(もの)()(あへ)ず、026(あと)(した)つて(すす)(きた)(をり)しも、027(ちい)さき雑草(ざつさう)(をか)(まへ)突当(つきあた)り、028五人(ごにん)(いき)(やす)むる(をり)しもあれ、029何処(いづく)よりともなく一人(ひとり)女神(めがみ)(あら)はれ(きた)り、030(この)地底(ちてい)岩窟(がんくつ)には、031活津彦根命(いくつひこねのみこと)御探険(ごたんけん)あれば、032汝等(なんぢら)(いそ)ぎお(あと)(した)へ」との一言(いちごん)(のこ)し、033その(まま)姿(すがた)()えさせ(たま)うた。034(かたはら)()れば(くら)(あな)035ハテ(いぶ)かしやと(のぞ)()(さい)036地盤(ぢばん)はガタリと陥落(かんらく)し、037七八間(しちはちけん)地中(ちちう)落込(おちこ)んだと(おも)へば、038(この)岩窟(がんくつ)039……それより吾々(われわれ)一同(いちどう)はこの岩窟内(がんくつない)神歌(しんか)(うた)ひつつ、040(さぐ)(きた)(をり)しも、041(みち)(あた)つた古井戸(ふるゐど)042フト()れば(なに)(あや)しの物影(ものかげ)043合点(がてん)()かぬと(おも)(をり)044井戸(ゐど)(そこ)より貴下(きか)(こゑ)045……と()(やう)来歴(らいれき)御座(ござ)いましたよ』
046高国別(たかくにわけ)『アヽそれは結構(けつこう)でございました。047(じつ)吾々(われわれ)()井戸(ゐど)(おちい)りし刹那(せつな)048失心(しつしん)(いた)したと()え、049広大(くわうだい)なる原野(げんや)通過(つうくわ)し、050高山(たかやま)(いただ)きに(のぼ)りつめ、051五人(ごにん)男女(だんぢよ)(めぐ)()ひしと(おも)へば、052ハツト()()き、053(そら)(あふ)途端(とたん)に、054貴下(きか)一行(いつかう)のお姿(すがた)………イヤもう(じつ)不思議千万(ふしぎせんばん)(こと)御座(ござ)います』
055梅彦(うめひこ)吾々(われわれ)昨夜(さくや)(ゆめ)に、056貴下(きか)にお()にかかりましたが、057本日(ほんじつ)只今(ただいま)この岩窟内(がんくつない)()うして休息(きうそく)して()有様(ありさま)が、058ありありと()()きました。059(じつ)現幽(げんいう)一致(いつち)060(この)()()(ところ)不思議(ふしぎ)(ところ)ですな』
061 (にはか)何処(どこ)ともなく、062阿鼻叫喚(あびけうくわん)(こゑ)063(ひび)きわたる。064高国別(たかくにわけ)はツト()(あが)り、
065『ヤア(みな)さま、066(なに)(この)岩窟内(がんくつない)には変事(へんじ)(おこ)つて()ますよ。067サアサア(はや)(はや)探険(たんけん)()かけませうかい』
068()ひつつ、069岩壁(がんぺき)(ちから)(まか)せてグツと()した。070(いは)()はパツと(ひら)いた。071()れば数十人(すうじふにん)老若男女(らうにやくなんによ)072(いづ)れも高手(たかて)小手(こて)(いま)しめられ、073中央(ちうあう)(しゆ)(ごと)(あか)(つら)した鬼神(きしん)四五人(しごにん)074鉄棒(てつぼう)(ひつさ)げ、075(あし)(さき)にてポンポンと男女(だんぢよ)()(くる)しめて()る。
076高国別(たかくにわけ)『ヤア各方(おのおのがた)077此処(ここ)冥土(めいど)地獄(ぢごく)(やう)だ。078ヤア(いづ)れも(がた)079飛込(とびこ)んで(すく)うてやりませう』
080()(をど)らして(さき)()つた。081五人(ごにん)はあとに()()ひ、082(こゑ)(そろ)へて言霊(ことたま)奏上(そうじやう)する。083(おに)姿(すがた)追々(おひおひ)(かげ)うすく、084(つひ)には(けぶり)(ごと)くなつて()()せたり。085数多(あまた)老若男女(らうにやくなんによ)姿(すがた)()れば、086高手(たかて)小手(こて)(いまし)められ()たりと()えしは、087(まぼろし)なりしか、088各自(てんで)双手(もろて)(あは)せ、089岩窟(いはや)(まへ)端坐(たんざ)して、
090一同(いちどう)神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)091一時(いちじ)(はや)地上(ちじやう)(あら)はれ(たま)ひて、092吾等(われら)(すく)(たま)へ』
093一生懸命(いつしやうけんめい)094側目(わきめ)もふらず(をが)んで()るのであつた。095六人(ろくにん)姿(すがた)()るより、096一同(いちどう)老若男女(らうにやくなんによ)は、097此方(こなた)()(なほ)り、098合掌(がつしやう)(なが)ら、
099『ヤア有難(ありがた)有難(ありがた)し、100勿体(もつたい)なし、101あなた(さま)神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)御眷属(ごけんぞく)(さま)ならむ』
102(うれ)(なみだ)(むせ)ぶ。
103高国別(たかくにわけ)『ヤア最前(さいぜん)より様子(やうす)()けば、104汝等(なんぢら)一同(いちどう)(もの)105神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)御出現(ごしゆつげん)(いの)()有様(ありさま)106(なんぢ)至誠(しせい)(てん)(つう)じ、107只今(ただいま)カナンの(うち)(みこと)御逗留(ごとうりう)(あそ)ばすぞ。108一時(いちじ)(はや)(この)岩窟(がんくつ)立出(たちい)で、109仁慈(じんじ)大神(おほかみ)尊顔(そんがん)(はい)せよ』
110宣示(せんじ)したれば、111一同(いちどう)(この)言葉(ことば)()いて(おほい)(よろこ)び、
112『ヤア大神(おほかみ)御再臨(ごさいりん)113有難(ありがた)(かたじけ)なし』
114(うれ)(ごし)()かし、115のたくり(まは)り、116(ゑら)(よろこ)ぶ。117高国別(たかくにわけ)一同(いちどう)(むか)ひ、118(あま)数歌(かずうた)(とな)ふれば、119今迄(いままで)痩衰(やせおとろ)へたる数十人(すうじふにん)老若男女(らうにやくなんによ)は、120(にはか)肉付(にくづ)き、121顔色(がんしよく)(うるは)しく、122元気(げんき)恢復(くわいふく)し、123(たちま)ちムクムクと()(あが)り、124()()つて、125前後左右(ぜんごさいう)(をど)(くる)ひ、126大神(おほかみ)再臨(さいりん)(こころ)(そこ)より感謝(かんしや)する。127(しかし)一同(いちどう)はイソイソとして、128大麻(おほぬさ)()てる(をとこ)先頭(せんとう)にゾロゾロと(かへ)()く。129(あと)見送(みおく)つて高国別(たかくにわけ)は、
130『アヽ可愛(かあい)らしい(もの)だ。131これ(だけ)善男善女(ぜんなんぜんによ)(こころ)(ひと)つにして、132信仰(しんかう)(はげ)むのを()れば、133(なん)とも()とも()れぬ()心持(こころも)ちがする。134(みこと)()かせられても、135(さぞ)御満足(ごまんぞく)思召(おぼしめ)すであらう。136嗚呼(ああ)137惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
138 高国別(たかくにわけ)一行(いつかう)は、139(おく)(おく)へと(すす)()く。140()西山(せいざん)(ぼつ)せしと()え、141岩窟(がんくつ)(なか)(にはか)(くら)くなつて()た。142六人(ろくにん)(さぐ)(さぐ)(すす)()くにぞ、143(かたはら)(あや)しき呻声(うめきごゑ)(きこ)えゐる。144(みみ)ざとくも、145愛子姫(あいこひめ)(その)(こゑ)()き、
146『もしもし(みな)さま、147(なん)だか(あや)しき(こゑ)(きこ)えるではありませぬか』
148亀彦(かめひこ)『ヤアそれは、149あなたの神経(しんけい)でせう。150岩窟(がんくつ)(なか)音響(おんきやう)のこもるものですから、151大方(おほかた)最前(さいぜん)祝詞(のりと)(こゑ)内耳(ないじ)(ふか)潜伏(せんぷく)し、152反響(はんきやう)運動(うんどう)開始(かいし)して()るのでせう』
153愛子姫(あいこひめ)『イエイエ祝詞(のりと)(こゑ)ではありませぬ、154苦悶(くもん)(うつた)ふる、155しかも(をんな)(こゑ)156悪神(あくがみ)巣窟(そうくつ)たる(この)岩窟(いはや)157如何(いか)なる惨事(さんじ)(おこな)はれ()るやも(はか)られませぬ。158(みな)さま一同(いちどう)立止(たちど)まり、159(みみ)()ませて()いて(くだ)さい。160世界(せかい)(すく)(かみ)使(つかひ)吾々(われわれ)161苦悶(くもん)(こゑ)()(のが)し、162ムザムザと通過(つうくわ)出来(でき)かねます』
163亀彦(かめひこ)『ヤア如何(いか)にも(くる)しさうな(こゑ)だ。164もしもし高国別(たかくにわけ)(さま)165(くら)さは(くら)し、166(あま)軽々(かるがる)しく(すす)むよりも、167(ひと)(この)(こゑ)(さぐ)()てませうか』
168高国別(たかくにわけ)『ホンに如何(いか)にも(めう)(こゑ)(いた)しますな』
169()ひつつ、170(かたはら)岩壁(がんぺき)をグツと()した途端(とたん)に、171不思議(ふしぎ)や、172(いは)()案外(あんぐわい)(かる)くパツと(ひら)いた。173()()()れば、174(しろ)(かげ)175岩窟内(がんくつない)(よこ)たはり(くる)しさうに(うな)つて()る。
176亀彦(かめひこ)『ヤア(あや)しいぞ(あや)しいぞ、177(この)(くら)がりに、178(なん)だか(けづ)りたての材木(ざいもく)(やう)(もの)(うな)つて()る。179これは大方(おほかた)180白蛇(はくじや)であらう』
181梅彦(うめひこ)白蛇(はくじや)にしては、182(ふと)さの(わり)(あま)りに(たけ)(みじか)いではありませぬか』
183亀彦(かめひこ)白蛇(はくじや)(やつ)184どつかで半身(はんしん)()られて()て、185九死一生(きうしいつしやう)苦悶(くもん)(てい)()場面(ばめん)だらう。186……オイオイ白蛇(はくじや)先生(せんせい)187どうしたどうした』
188(しろ)(かげ)『アーア(うら)めしやなア、189(わらは)姫君様(ひめぎみさま)御後(おんあと)(した)ひ、190此処(ここ)まで()るは()たものの、191ウラナイ(けう)曲津神(まがつかみ)192蠑螈別(いもりわけ)計略(けいりやく)にかかり、193手足(てあし)(しば)られ、194岩窟(いはや)(なか)押込(おしこ)まれ、195(のが)()づる方策(てだて)もなし、196アヽ(なん)とせう、197(うら)めしやなア』
198亀彦(かめひこ)『ヨウ大蛇(をろち)だと(おも)へば、199(なん)だか(わか)らぬ(こと)をほざいて()るワ。200もしもし高国別(たかくにわけ)(さま)201一寸(ちよつと)調(しら)べて(くだ)さいな』
202『イヤあなた御苦労(ごくらう)(なが)一寸(ちよつと)(さぐ)つて()(くだ)さい、203どうやら人間(にんげん)らしう御座(ござ)いますよ』
204亀彦(かめひこ)滅相(めつさう)な、205あた(いや)らしい、206(この)(くら)がりに、207コンナ(しろ)(もの)が、208どうしてなぶられませうか……オイ(うめ)サン、209(まへ)平素(へいそ)より大胆(だいたん)(をとこ)だ。210(ひと)此処(ここ)らで侠気(をとこぎ)()して、211幾代姫(いくよひめ)(さま)英雄振(えいゆうぶり)をお()にかけたらどうだ』
212梅彦(うめひこ)『イヤ吾々(われわれ)吾々(われわれ)だが、213亀彦(かめひこ)サンも亀彦(かめひこ)サンだ。214菊子姫(きくこひめ)(さま)英雄振(えいゆうぶり)をお()せになつたらどうでせう、215(あま)(あつ)かましう(いた)すのも御無礼(ごぶれい)御座(ござ)る。216あなたには先取権(せんしゆけん)御座(ござ)る、217どうぞ御遠慮(ごゑんりよ)なく、218とつくりと、219(あたま)から(あし)(さき)までお調(しら)べなさいませ。220菊子姫(きくこひめ)(さま)手前(てまへ)御座(ござ)いまするぞ』
221亀彦(かめひこ)『アーア、222(えら)(ところ)尻平(しつぺい)()つて()られたものだ。223ナニ、224材木(ざいもく)(うご)いて()るのだと(おも)へば()い、225……コラコラ材木(ざいもく)226その(はう)何者(なにもの)だ』
227(しろ)(かげ)『アヽ(うら)めしや』
228亀彦(かめひこ)『ナヽ(なん)だ、229ウラナイ(けう)か、230幽霊(いうれい)か、231(なん)だか()らぬが、232材木(ざいもく)幽霊(いうれい)(むかし)から()いた(こと)はないワイ。233素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)御退隠(ごたいいん)(あそ)ばしてより、234山川草木(さんせんさうもく)(いた)(まで)235言問(ことと)うと()(こと)だが、236やつぱりこの材木(ざいもく)(その)(せん)()れないと()えて、237(なん)だか言問(ことと)ひをやつてゐる、238……コラ材木(ざいもく)239()きぬか()きぬか』
240 梅彦(うめひこ)は、241(しろ)(かげ)目当(めあて)に、242スウツと()でまわし、
243梅彦(うめひこ)『ヤアこれは人間(にんげん)だ、244しかも(はだ)(やはら)かき美人(びじん)()える、245高手(たかて)小手(こて)(いまし)められて()る。246おほかた悪神(わるがみ)(やつ)(しへた)ママげられて、247(この)岩窟(いはや)幽閉(いうへい)されたのであらう』
248()(なが)ら、249スラスラと(いましめ)()いた。250(しろ)(かげ)はスツクと()ちあがり、251懐剣(くわいけん)逆手(さかて)()つより(はや)く、
252『ヤア、253ウラナイ(けう)悪神(あくがみ)254蠑螈別(いもりわけ)手下(てした)者共(ものども)255モウ()うなる(うへ)は、256(わらは)死物狂(しにものぐる)覚悟(かくご)(いた)せ』
257六人(ろくにん)のほのかな(かげ)目当(めあて)短刀(たんたう)をピカつかせ(なが)ら、258前後左右(ぜんごさいう)(あば)(くる)ふ。
259亀彦(かめひこ)『ヤア()つた()つた、260吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)だよ』
261『ナニツ、262三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)とは、263まつかな(いつは)り、264浅子姫(あさこひめ)死物狂(しにものぐる)ひの車輪(しやりん)(はたら)き、265(おも)()れよ』
266飛鳥(ひてう)(ごと)くに()(まは)る。
267高国別(たかくにわけ)『ヤア(なんぢ)浅子姫(あさこひめ)とは、268顕恩郷(けんおんきやう)(あら)はれたる愛子姫(あいこひめ)腰元(こしもと)ならずや。269(われ)愛子姫(あいこひめ)(をつと)高国別(たかくにわけ)なるぞ』
270浅子姫(あさこひめ)執念深(しふねんぶか)悪魔(あくま)計略(けいりやく)271(その)()()つて(たま)らうか、272浅子姫(あさこひめ)手練(しゆれん)早業(はやわざ)273(おも)()れよ』
274(また)もや短刀(たんたう)(やみ)(ひらめ)かし暴狂(あれくる)ふ。275愛子姫(あいこひめ)は、
276『そなたは浅子姫(あさこひめ)(あら)ずや、277()()(しづ)まりなさい、278愛子姫(あいこひめ)間違(まちがひ)御座(ござ)らぬ』
279浅子姫(あさこひめ)『ヤアさう仰有(おつしや)るお(こゑ)は、280(まさ)しく愛子姫(あいこひめ)(さま)
281愛子姫(あいこひめ)『そなたは(まが)(かた)なき浅子姫(あさこひめ)(こゑ)282夜目(よめ)にもそれと()らるる(その)(はう)姿(すがた)283(うれ)しや(うれ)しや、284(おも)はぬ(ところ)()ひました』
285 浅子姫(あさこひめ)(やや)落着(おちつ)きたる(こゑ)にてハアハアと(いき)をはづませ(なが)ら、
286『そ、287そ、288そう仰有(おつしや)るあなたは(まが)(かた)なき愛子姫(あいこひめ)(さま)289(なつか)しう御座(ござ)います』
290とワツと(ばか)りに(その)()()()しぬ。291(この)(とき)何処(いづく)よりともなく、292一道(いちだう)光明(くわうみやう)サツと(かがや)(わた)り、293一同(いちどう)(かほ)(ひる)(ごと)(あきら)かになり()たりぬ。
294浅子姫(あさこひめ)『これはこれは(いづ)れも(さま)295不思議(ふしぎ)(ところ)でお()にかかりました、296()うマア(あやふ)(ところ)をお(たす)(くだ)さいました。297()れと()ふも、298(まつた)木花姫(このはなひめ)御守護(ごしゆご)(あつ)(ところ)
299合掌(がつしやう)し、300(あと)一言(ひとこと)()()はず、301(うれ)(なみだ)()(くも)るのみ。302(いさ)みを()けんと高国別(たかくにわけ)は、303浅子姫(あさこひめ)背中(せなか)を、304平手(ひらて)()()()(なが)ら、
305浅子姫(あさこひめ)殿(どの)306しつかりなさいませ。307(これ)には(ふか)様子(やうす)()らむ。308吾々(われわれ)(この)(さき)(おい)て、309(おほい)覚悟(かくご)せなくてはなりませぬ。310あなたを()くの(ごと)岩窟(いはや)押込(おしこ)めし以上(いじやう)は、311(たう)岩窟(いはや)には数多(あまた)悪神(わるがみ)巣窟(そうくつ)あらむ、312此処(ここ)立到(たちいた)られし仔細(しさい)(つぶ)さに物語(ものがた)られよ』
313(こゑ)(はげ)まして()ひかくれば、314浅子姫(あさこひめ)はハツと(こころ)取直(とりなほ)し、
315()れには(ふか)仔細(しさい)御座(ござ)いまする、316一先(ひとま)(わらは)物語(ものがたり)()(くだ)さいませ。317(あめ)太玉命(ふとたまのみこと)318顕恩郷(けんおんきやう)(あら)はれ(たま)ひ、319バラモン(けう)大棟梁(だいとうりやう)鬼雲彦(おにくもひこ)神退(かむやら)ひにやらひ(たま)ひ、320(わらは)愛子姫(あいこひめ)(さま)(とも)に、321顕恩城(けんおんじやう)守護(しゆご)しまつる(をり)しも、322天照大神(あまてらすおほかみ)(さま)323(あま)岩戸(いはと)(かく)(たま)ひしより、324太玉命(ふとたまのみこと)急遽(きふきよ)325天教山(てんけうざん)(のぼ)らせ(たま)ひ、326その不在中(ふざいちう)327愛子姫(あいこひめ)(さま)(わらは)城内(じやうない)(まも)(をり)しも咫尺暗澹(しせきあんたん)として昼夜(ちうや)(べん)ぜず、328荒振神(あらぶるかみ)五月蝿(さばへ)(ごと)(むら)がり(おこ)り、329鬼雲彦(おにくもひこ)(また)もや(あら)はれ(きた)りて、330(やみ)(まぎ)れて暴威(ばうゐ)(たくま)しうし、331(わらは)主従(しゆじゆう)生命(いのち)(あやふ)(ところ)332(やみ)(まぎ)れて城内(じやうない)(のが)()で、333エデンの(かは)生命(いのち)からがら打渡(うちわた)り、334(なん)目的(あてど)(とき)(みち)335(すす)()(をり)しも、336(やみ)(てら)して(あら)はれ()たる()出神(でのかみ)にめぐり()ひ、337愛子姫(あいこひめ)(さま)338菊子姫(きくこひめ)(さま)339幾代姫(いくよひめ)(さま)は、340神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)御後(おあと)(した)ひ、341西蔵(チベツト)(なん)(のが)れさせ(たま)ひしと()くより、342(わらは)岸子姫(きしこひめ)343岩子姫(いはこひめ)(とも)に、344()()()いで、345山野(さんや)(わた)り、346大河(おほかは)()え、347(やうや)くラサフの(みやこ)()()れば、348姫君様(ひめぎみさま)(くし)岩窟(がんくつ)にて面会(めんくわい)()させむと、349木花姫(このはなひめ)(ゆめ)のお()げ、350(わらは)三人(さんにん)(いさ)(すす)んで、351小高(こだか)(をか)入口(いりくち)より、352岩窟(いはや)(すす)(きた)(をり)しも、353ウラナイ(けう)曲神(まがかみ)蠑螈別(いもりわけ)354幾十(いくじふ)ともなく数多(あまた)邪神(じやしん)()()れ、355(わらは)三人(さんにん)前後左右(ぜんごさいう)取囲(とりかこ)み、356後手(うしろで)(しば)()げ、357(この)岩窟(いはや)押込(おしこ)めたり。358嗚呼(ああ)359岸子姫(きしこひめ)360岩子姫(いはこひめ)は、361如何(いかが)なりしぞ、362心許(こころもと)なや』
363(また)もや(なみだ)(そで)(しぼ)る。
364高国別(たかくにわけ)『これにて(ほぼ)様子(やうす)判然(はんぜん)(いた)しました。365……ヤア一同(いちどう)方々(かたがた)366岸子姫(きしこひめ)367岩子姫(いはこひめ)()(うへ)心許(こころもと)なく御座(ござ)れば、368(いそ)在処(ありか)(たづ)ね、369(すく)()さねばなりますまい』
370(しか)らば(すす)みませう』
371と、372一同(いちどう)四辺(あたり)(みみ)(そばだ)て、373()(くば)(なが)ら、374(いそ)ぎもせず、375(おく)れもせずと()足許(あしもと)にて、376奥深(おくふか)(すす)()く。377隧道(すゐだう)(にはか)前方(ぜんぱう)(ひく)く、378(いた)()てたる(ごと)急坂(きふはん)になつて()た。379一行(いつかう)七人(しちにん)は、380一足(ひとあし)一足(ひとあし)(ちから)()(なが)ら、381アブト(しき)(ぜん)と、382坂路(さかみち)隧道(すゐだう)(くだ)つて()く。383()(こと)七八丁(しちはつちやう)(おぼ)しき(ところ)に、384比較的(ひかくてき)(ひろ)水溜(みづたま)りがある。385薄暗(うすぐら)がりに()かし()れば、386(なん)だか水面(すゐめん)(ひと)(くび)(やう)なものが(ただよ)うて()る。387亀彦(かめひこ)()ざとくもこれに()(そそ)ぎ、
388亀彦(かめひこ)『ヤア此奴(こいつ)(また)389変挺(へんてこ)だ。390岩窟(いはや)(なか)(いけ)があると(おも)へば、391(まる)(かほ)(やう)(もの)()いて()る、392鴛鴦(おしどり)にしては(すこ)しく(おほ)きいやうだ。393ヤア目鼻(めはな)()いて()る。394悪神(あくがみ)(やつ)395(さけ)(くら)()つて、396瓢箪(へうたん)目鼻(めはな)をつけ、397(この)(いけ)()()みよつたのではあるまいか。398瓢箪(へうたん)ばかりが浮物(うきもの)か、399(おれ)(こころ)()いて()た。400サアサア()いたり()いたりだ、401アハヽヽヽヽ』
402梅彦(うめひこ)(かめ)サン、403あれを()御覧(ごらん)なさい、404(をんな)(くび)ですよ。405ナンダか、406つぶやいて()るぢやありませぬか』
407幾代姫(いくよひめ)『ヤア()(かほ)は、408岩子姫(いはこひめ)409岸子姫(きしこひめ)ではなからうか』
410亀彦(かめひこ)『エー(なに)仰有(おつしや)います、411(かも)かナンゾの(やう)に、412(をんな)(くび)ばつかりになつて、413(いけ)(なか)()いて()ると()(こと)がありませうか。414あなたは視神経(ししんけい)作用(さよう)が、415どうか変調(へんてう)(きた)して()るのでせう。416(くさ)(なは)()(へび)(おも)つて(おどろ)いたり、417()欠杭(かつくひ)()化物(ばけもの)(おも)(こと)往々(まま)()るものです。418マアマア()()けてください、419変視(へんし)420幻視(げんし)421妄視(ばうし)精神(せいしん)作用(さよう)でせう、422コンナ(ところ)棲息(せいそく)する(もの)は、423キツト河童(かつぱ)か、424(わに)か、425まかり間違(まちが)へば人魚(にんぎよ)ですよ。426人魚(にんぎよ)()(やつ)は、427()人間(にんげん)()()るものだ、428それで、429(ひと)(かたち)をした翫弄具(おもちや)人形(にんぎやう)サンと()ふのだ。430アハヽヽヽヽ』
431 (いけ)(なか)より(をんな)(くび)432(くる)しき(こゑ)(しぼ)(なが)ら、
433『ヤア、434あなたは幾代姫(いくよひめ)(さま)435菊子姫(きくこひめ)(さま)436愛子姫(あいこひめ)(さま)では御座(ござ)いませぬか。437夜目(よめ)にはしかと(わか)りませぬが、438姿(すがた)()()()ります。439(わらは)悪神(あくがみ)(とら)へられ、440手足(てあし)(しば)られ、441(おも)石錨(いしいかり)をつけられて(くるし)んで()ります、442岩子姫(いはこひめ)443岸子姫(きしこひめ)両人(りやうにん)御座(ござ)います。444どうぞお(たす)けくださいませ』
445亀彦(かめひこ)『ヤア金毛九尾(きんまうきうび)同類(どうるゐ)()446馬鹿(ばか)にするない、447何程(なにほど)(ばけ)たつて、448モウ駄目(だめ)だ。449()()(しな)()へ、450結局(けつきよく)(はて)には(いけ)(なか)姿(すがた)(あら)はし、451吾等(われら)水中(すゐちう)引込(ひきこ)まむとの(みづ)()らさぬ………(いな)水責(みづぜ)めの(なんぢ)計略(けいりやく)452(その)()()つて(たま)らうかい』
453岩子姫(いはこひめ)『イエイエ、454(けつ)して(けつ)して妖怪(えうくわい)変化(へんげ)では御座(ござ)いませぬ、455どうぞお(たす)(くだ)さいませ』
456亀彦(かめひこ)『もしもし高国別(たかくにわけ)(さま)457どうでせう、458彼奴(あいつ)本物(ほんもの)でせうか。459偽物(にせもの)()流行(りうかう)する時節(じせつ)ですから、460ウツカリと油断(ゆだん)はなりませぬぜ、461………コラコラ(ばけ)(やつ)462新意匠(しんいしやう)をこらし、463レツテルを()へて、464厄雑物(やくざもの)突付(つきつ)けても(その)()には()らぬぞ、465意匠登録法(いしやうとうろくはふ)違反(ゐはん)告発(こくはつ)をしてやらうか』
466高国別(たかくにわけ)『アハヽヽヽ、467(なに)()もあれ、468亀彦(かめひこ)サン、469高国別(たかくにわけ)厳命(げんめい)だ、470あなた真裸(まつぱだか)となつて(すく)うて()(くだ)さい。471高国別(たかくにわけ)(かみ)(かは)つて命令(めいれい)(いた)します』
472亀彦(かめひこ)滅相(めつさう)な、473どうしてどうして、474(これ)ばつかりは()(ぴら)御免(ごめん)475アーメン素麺(そうめん)476トコロテン、477ステテコテンのテンテコテン、478テンデ(はなし)になりませぬワイ、479テンと合点(がてん)がゆきませぬ、480()ればつかりは(ひら)御断(おことわ)(まを)す。481()(まを)すは(けつ)して亀彦(かめひこ)肉体(にくたい)では御座(ござ)らぬ。482亀彦(かめひこ)守護神(しゆごじん)(まを)(こと)御座(ござ)る』
483梅彦(うめひこ)『アハヽヽヽ、484(うま)(こと)()ひよるワイ、485融通(ゆうづう)()副守護神(ふくしゆごじん)だ、486()うなると副守(ふくしゆ)先生(せんせい)重宝(ちようほう)なものだなア』
487亀彦(かめひこ)亀彦(かめひこ)守護神(しゆごじん)が、488神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)(めい)()つて、489梅彦(うめひこ)厳命(げんめい)する………梅彦(うめひこ)490(すみや)かに真裸(まつぱだか)となり、491水中(すゐちう)にザンブと(ばか)飛込(とびこ)んで、492二人(ふたり)妖怪(えうくわい)(すく)(きた)れ。493万々一(まんまんいち)494(かれ)にして大蛇(だいじや)変化(へんげ)なれば、495(なんぢ)一呑(ひとの)みに蛇腹(じやふく)(ほうむ)られむ。496(しか)(とき)は、497(なんぢ)(みたま)引抜(ひきぬ)き、498至美(しび)至楽(しらく)天国(てんごく)(すく)ひ、499百味(ひやくみ)飲食(おんじき)(あた)(つか)はす、500ゆめゆめ(うたが)(こと)(なか)れ』
501梅彦(うめひこ)『ウンウンウン』
502亀彦(かめひこ)『コラコラ、503偽神懸(にせかむがかり)厳禁(げんきん)するぞ、504(かめ)サンの審神(さには)(くら)まさうと(おも)つても、505天眼通(てんがんつう)506天耳通(てんじつう)507宿命通(しゆくめいつう)508自他心通(じたしんつう)509感通(かんつう)510漏尽通(ろうじんつう)六大(ろくだい)神通力(しんつうりき)具備(ぐび)せる、511古今無双(ここんむさう)審神者(さには)のティーチヤーに(むか)つて、512誤魔化(ごまくわ)しは()かぬぞ、513(すみや)かに飛込(とびこ)め』
514 池中(ちちう)()かべる(ふた)つの(くび)は、515苦痛(くつう)(わす)れて、516(おも)はず、517『ホヽヽヽヽ』と(わら)()せば、
518亀彦(かめひこ)『それ()たか、519(おれ)天眼通(てんがんつう)はコンナものだ。520(この)(さむ)いのに(いけ)(なか)()()まれ、521人間(にんげん)なら、522(なに)気楽(きらく)さうに(わら)ふものか、523とうとう化物(ばけもの)正体(しやうたい)(あら)はしよつた。524アツハヽヽヽ』
525幾代姫(いくよひめ)亀彦(かめひこ)(さま)526梅彦(うめひこ)(さま)527あなたは(わか)らぬお(かた)ですな、528………アーアコンナ(かた)二世(にせ)(をつと)()つたと(おも)へば(はづ)かしいワ』
529亀彦(かめひこ)『コレコレ嬶左衛門(かかざゑもん)殿(どの)530(なん)御意(ぎよい)()さる。531親子(おやこ)一世(いつせ)532夫婦(ふうふ)二世(にせ)御座(ござ)るぞ』
533二女(にじよ)夫婦(ふうふ)二世(にせ)()(をきて)(さひは)ひ、534あなたの(やう)な、535臆病神(おくびやうがみ)との(ちぎり)()き、536第二(だいに)(をつと)()ちませう。537ネー愛子姫(あいこひめ)(さま)538(けつ)して天則(てんそく)違反(ゐはん)では御座(ござ)いますまい』
539 亀彦(かめひこ)540梅彦(うめひこ)541両手(りやうて)(ひろ)げて、
542『アヽ()つた()つた、543如何(いか)女権(ぢよけん)拡張(くわくちやう)()(なか)ぢやとて、544姫御前(ひめごぜん)()られもない(その)暴言(ばうげん)545これだから、546(あたら)しい(をんな)女房(にようばう)()つのは(こま)ると()ふのだ。547エー仕方(しかた)がない、548(おれ)(をとこ)だ………サア(うめ)サン………ヤア(かめ)サン………()()(みつ)ツだ』
549()ふより(はや)く、550真裸(まつぱだか)となり、551ザンブと飛込(とびこ)んだ。
552『ヤア比較的(ひかくてき)(あさ)(いけ)だワイ………オイオイ(ふた)つの生首(なまくび)553かぶりついちや不可(いかん)よ、554(おれ)一人(ひとり)ではない、555(おれ)には()(とほ)立派(りつぱ)奥方(おくがた)がお二人(ふたり)()いて御座(ござ)るのだ。556一度(いちど)()んだから二度(にど)とは()なないから、557吾々(われわれ)生命(いのち)(ぐらゐ)(なん)ともないが、558(あと)(のこ)つた菊子姫(きくこひめ)559幾代姫(いくよひめ)悲歎(ひたん)(ほど)(おも)()られる……コラコラ(たす)けてやるから生命(いのち)恩人(おんじん)だと(おも)つて、560かぶり()いてはならぬぞ』
561()ひつつ、562コワゴワ頭髪(とうはつ)をグツと(にぎ)()めた。
563岩子姫(いはこひめ)『アイタタ、564(いた)御座(ござ)んす、565どうぞ、566(わらは)(こし)(あたり)(さぐ)つて()(くだ)さい』
567亀彦(かめひこ)(をんな)分際(ぶんざい)としてあられもない(こと)()ふな、568立派(りつぱ)奥様(おくさま)(おほ)きな()()いて監督(かんとく)をして御座(ござ)るぞ、569(こし)のあたりを(いら)つて(たま)るものかい』
570岸子姫(きしこひめ)『イエイエ、571(こし)(あた)りに、572()なり(おほ)きい(ひも)(おほ)きい(いし)(しば)りつけて御座(ござ)います。573(みつ)つも(よつ)つも、574(おも)(いし)(つな)がれて()ます、575どうぞ(その)(つな)()つて(たす)けて(くだ)さい』
576亀彦(かめひこ)『アーア、577(えら)(こと)になつて()たワイ、578(かみ)(つな)(かけ)たら(はな)さぬぞよ、579アハヽヽヽ』
580岩子姫(いはこひめ)冗談(じやうだん)仰有(おつしや)らずに、581どうぞ真面目(まじめ)にほどいて(くだ)さい』
582 二人(ふたり)水中(すゐちう)()(おろ)し、583(こし)のあたりを(さぐ)つて()て、
584『ヤア(えら)(こと)()つて()る……やつぱり(うろこ)でもなければ、585(はね)でもない、586人間(にんげん)(はだ)だ』
587()(なが)ら、588ほどかむとすれど、589(つな)(ふく)れてどうする(こと)出来(でき)ぬ。
590『アーア仕方(しかた)がない』
591(ふたた)(きし)()(あが)り、592双刃(もろは)(つるぎ)(くち)(くは)へ、593バサバサと飛込(とびこ)み、594プツツと(つな)()り、595二人(ふたり)(かた)にひつ(かつ)(なが)(あが)つて()た。596高国別(たかくにわけ)および三人(さんにん)女性(ぢよせい)は、
597『アーア結構(けつこう)結構(けつこう)598()(ところ)(たす)かつたものだ』
599浅子姫(あさこひめ)岩子(いはこ)さま、600岸子(きしこ)さま、601あなたは(えら)()()ひましたな、602(わらは)御主人様(ごしゆじんさま)(すく)はれました……アヽ結構(けつこう)結構(けつこう)603これと()ふも、604大神様(おほかみさま)(まつた)御守護(ごしゆご)御座(ござ)いませう』
605浅子姫(あさこひめ)は、606今更(いまさら)(ごと)(うれ)(なみだ)()れて水面(すゐめん)(むか)つて合掌(がつしやう)しゐたりける。
607大正一一・四・三 旧三・七 松村真澄録)
608(昭和一〇・三・二三 於花蓮港支部 王仁校正)