霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二二章 ()(せん)〔五八九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻 篇:第4篇 神行霊歩 よみ:しんこうれいほ
章:第22章 第15巻 よみ:わとせん 通し章番号:589
口述日: 口述場所:錦水亭 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
言依別命一行は、神界探検の後、ウブスナ山の山頂指して進んで行く。斎苑館の門前で呼ばわると、八十猛神の長と名乗る、国武彦が出迎えた。斎苑館では、神素盞嗚大神は不在で、長男の八島主、娘の愛子姫、幾代姫、亀彦、梅彦が留守をしていた。
八島主らは一行を館の奥に招いて、歓迎の宴を開いた。そこへ八十猛神が慌しく現れ、バラモン軍の襲撃の急を告げた。そして国武彦が奮戦中だが、旗色が悪く、一行にコーカス山に退避するようにと注進した。
しかし八島主を始め、招かれた言依別命ら一行も、まったく意に介せずに宴を続けている。亀彦と梅彦は、事態の急に押っ取り刀で防戦に出ようとするが、愛子姫に引っ掛け戻される。
遂にバラモン軍の鬼雲彦が血のついた槍を持ったまま宴の場に現れて、一同に降伏を迫った。また鬼掴もやってきて一同を脅すが、八島主らは泰然として宴を続け、鬼雲彦と鬼掴の様子を笑いの種にしている。
怒った鬼雲彦は、手下に下知して八島主らを襲わせるが、八島主はバラモン軍に霊縛をかけた。鬼雲彦らはその場に硬直して動けなくなっているところへ、国武彦と八十猛神が現れた。
国武彦と八十猛神は、天より日の出神に率いられた神軍が現れて、形勢逆転し、バラモン軍は打ち負かされて倒れ伏している、と報告した。言依別命と八島主は、玉彦に命じて敵味方の負傷者を治療しに行かせた。
厳彦と楠彦は、奥の間で硬直している鬼雲彦ら将卒たちに、宣伝歌を聞かせている。八島主は、腰から下だけ霊縛を解くと、バラモン軍は上半身が硬直したまま、その場を逃げ出した。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1522
愛善世界社版:276頁 八幡書店版:第3輯 381頁 修補版: 校定版:273頁 普及版:126頁 初版: ページ備考:
001 言依別命(ことよりわけのみこと)不思議(ふしぎ)(こと)より神界(しんかい)探険(たんけん)(ふたた)正気(しやうき)()(かへ)(たま)ひて、002玉彦(たまひこ)003厳彦(いづひこ)004楠彦(くすひこ)諸共(もろとも)に、005(こま)(むちう)しとしととウブスナ山脈(さんみやく)神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)御舎(みあらか)()して(すす)()く。
006 山上(さんじやう)御舎(みあらか)(いづ)れも丸木柱(まるきばしら)(もつ)(つく)られありぬ。007用材(ようざい)(ひのき)008(すぎ)009(まつ)010(もみ)(その)()種々(いろいろ)()をあしらひ、011(あま)(ひろ)からず(せま)からず(なん)とも()へぬ風流(ふうりう)なる草葺(わらぶき)屋根(やね)012幾棟(いくむね)となく()(なら)()たり。013一行(いつかう)四人(よにん)門前(もんぜん)到着(たうちやく)し、014(うま)をヒラリと()()りて大音声(だいおんじやう)に、
015(たの)まう(たの)まう』
016(おと)なへば、
017(オー)
018(こた)へて(だい)(をとこ)三四人(さんよにん)019(もん)左右(さいう)にパツと(ひら)き、020四人(よにん)姿(すがた)()るより、
021『ヨー、022これはこれは、023()()らせられました。024只今(ただいま)高天原(たかあまはら)よりの急報(きふはう)()貴使等(あなたがた)四人(よにん)当邸(たうやしき)(あら)はれますと(うけたま)はりお()(まを)して()りました。025サアサ御這入(おはい)(くだ)さいませ、026御案内(ごあんない)(いた)しませう。027(わたくし)八十猛(やそたける)(かみ)(をさ)(つと)むるもの、028国武彦(くにたけひこ)(まを)すもので御座(ござ)います』
029()ひつつ(さき)()つてドスンドスンと地響(ぢひび)きさせ(なが)(おく)(おく)へと案内(あんない)したり。
030 本宅(ほんたく)(おぼ)しき(やかた)玄関口(げんくわんぐち)(たたず)み、031国武彦(くにたけひこ)は、
032『アア八島主(やしまぬし)(さま)033言依別命(ことよりわけのみこと)御一行(ごいつかう)がお()でになりました』
034言葉(ことば)(をは)ると(とも)玄関(げんくわん)(ふすま)はサラリと(ひら)かれたり。
035国武彦(くにたけひこ)『サアサアこれが命様(みことさま)御本殿(ごほんでん)御座(ござ)います、036御遠慮(ごゑんりよ)なく御上(おあが)(くだ)さいませ』
037案内(あんない)する。
038(しか)らば御免(ごめん)
039一同(いちどう)(おく)(おく)へと(すす)み入る。040容色(ようしよく)(うるは)しき二人(ふたり)美人(びじん)(この)()(あら)はれしを()()()れば愛子姫(あいこひめ)041幾代姫(いくよひめ)なりき。
042言依別(ことよりわけ)『アア貴神(あなた)顕恩郷(けんおんきやう)(まし)ませし(みこと)御娘子(おむすめご)043愛子姫(あいこひめ)044幾代姫(いくよひめ)(さま)では御座(ござ)らぬか』
045『ハイ、046左様(さやう)御座(ござ)います、047()くマアお()(くだ)さいました』
048(わらは)(あふ)せの(ごと)幾代姫(いくよひめ)御座(ござ)います、049何卒(どうぞ)御悠(ごゆつく)りと御休息(ごきうそく)(くだ)さいませ。050(わらは)(ちち)天下(てんか)蒼生(さうせい)()めに、051ここ十日(とをか)(ばか)以前(いぜん)(やかた)()()で、052常世(とこよ)(くに)さして()くと(まを)して()られました。053折角(せつかく)のお(たづ)ねで御座(ござ)いまするが(ちち)生憎(あひにく)不在(ふざい)なれども、054(わらは)(あに)八島主(やしまぬし)(ちち)代理(だいり)として留守(るす)(いた)して()りますれば、055何卒(どうぞ)ゆるりとお(はな)(くだ)さいます(やう)に』
056言依別(ことよりわけ)『アヽ左様(さやう)御座(ござ)るか、057(これ)()しい(こと)(いた)した。058イヤ先程(さきほど)御父上(おちちうへ)()高天原(たかあまはら)(おい)拝顔(はいがん)()ました』
059 愛子姫(あいこひめ)060幾代姫(いくよひめ)一度(いちど)に、
061『エ、062(ちち)にお()ひで御座(ござ)いましたか、063それは(いづ)れの地方(ちはう)(おい)て』
064言依別(ことよりわけ)『ハイ、065()高天原(たかあまはら)(おい)三十五万年(さんじふごまんねん)未来(みらい)(うるは)しき御尊顔(ごそんがん)(はい)しました』
066『アヽ左様(さやう)御座(ござ)いましたか、067それはそれは都合(つがふ)()(こと)御座(ござ)いましたナア。068(ちち)(なん)(まを)しましたか』
069言依別(ことよりわけ)『イヤ吾々(われわれ)には(いま)現界(げんかい)(おい)(つく)すべき神務(しんむ)あれば、070三十五万年(さんじふごまんねん)(むかし)()(かへ)現界的(げんかいてき)神業(しんげふ)(つく)せよとの御厳命(ごげんめい)御座(ござ)いましたよ。071イヤもう(つみ)(ふか)吾々(われわれ)072容易(ようい)高天原(たかあまはら)(まゐ)(こと)出来(でき)ませぬ』
073 玉彦(たまひこ)074厳彦(いづひこ)075楠彦(くすひこ)076三人(さんにん)一度(いちど)に、
077『オー貴女(あなた)神様(かみさま)御娘子(おむすめご)御座(ござ)いましたか、078私共(わたくしども)言依別(ことよりわけ)命様(みことさま)御供(おとも)(いた)すもの常世(とこよ)(くに)(おい)(うま)れましたる、079はした(もの)御座(ござ)います。080何卒(どうぞ)以後(いご)はお見捨(みすて)なく御昵懇(ごじつこん)御指導(ごしだう)(ねが)()(たてまつ)ります』
081慇懃(いんぎん)挨拶(あいさつ)する。
082御挨拶(ごあいさつ)(かへつ)(いた)()ります、083(わらは)は、084たらはぬ(をんな)()085何卒(なにとぞ)御見捨(おみすて)なく何時々々迄(いついつまで)御昵懇(ごじつこん)(ねが)()御座(ござ)います』
086(かしら)()ぐる。087(この)(とき)088(まなこ)(きよ)(まゆ)(ひい)鼻筋(はなすぢ)(とほ)口許(くちもと)しまり桃色(ももいろ)(かんばせ)089鼻下(びか)八字髭(はちじひげ)(およ)下顎(かがく)垂髯(たれひげ)()みつつ徐々(しづしづ)()(きた)り、090一行(いつかう)(まへ)端坐(たんざ)し、091叮嚀(ていねい)会釈(ゑしやく)(なが)ら、
092(わたくし)八島主(やしまぬし)御座(ござ)います。093貴使(あなた)(うはさ)(たか)言依別(ことよりわけ)命様(みことさま)094遠路(ゑんろ)(ところ)遥々(はるばる)()御越(おこ)(くだ)さいました。095吾父(わがちち)(おは)しましたならばどれ(ほど)(よろこ)(こと)御座(ござ)いませう』
096()(しばた)き、097そつと(なみだ)(ぬぐ)ふ。098一同(いちどう)(なん)となく八島主(やしまぬし)態度(たいど)につまされて(あは)れを(もよほ)(なみだ)(そで)(しぼ)()る。099(この)(とき)菊子姫(きくこひめ)二人(ふたり)侍女(じぢよ)(ともな)ひ、
100御一同様(ごいちどうさま)101御飯(ごはん)用意(ようい)出来(でき)ました、102何卒(どうぞ)此方(こちら)御越(おこ)(くだ)さいませ』
103挨拶(あいさつ)する。104主人側(しゆじんがは)八島主(やしまぬし)(はじ)四人(よにん)菊子姫(きくこひめ)(あと)(したが)つて(おく)別室(べつま)(すす)()る。105別室(べつま)入口(いりぐち)には亀彦(かめひこ)106梅彦(うめひこ)107愛子姫(あいこひめ)108幾代姫(いくよひめ)四人(よにん)叮嚀(ていねい)端坐(たんざ)(かしら)()一行(いつかう)(むか)()る。109ここに一場(いちぢやう)晩餐会(ばんさんくわい)(もよほ)され、110果実(このみ)(さけ)(こころ)(いさ)一同(いちどう)(かは)(がは)小声(こごゑ)(うた)(うた)ひ、111菊子姫(きくこひめ)長袖(ちやうしう)しとやかに舞曲(ぶきよく)(えん)じて(きよう)()へにける。
112 ()(やうや)西(にし)(かく)れて夕暮(ゆふぐれ)()ぐる諸鳥(ももどり)(こゑ)113(さび)()(きこ)()たる。114(とき)しもあれ、115(あはただ)しく(この)()(あら)はれたる八十猛(やそたける)(かみ)は、
116八島主(やしまぬし)命様(みことさま)(まを)()げます、117只今(ただいま)バラモンの大棟梁(だいとうりやう)鬼雲彦(おにくもひこ)なるもの、118鬼掴(おにつかみ)先頭(せんとう)数多(あまた)魔軍(まぐん)引率(いんそつ)し、119当館(たうやかた)十重(とへ)二十重(はたへ)取囲(とりかこ)(あめ)(ごと)くに()()かけ、120(また)決死隊(けつしたい)()えて数百(すうひやく)荒武者男(あらむしやをとこ)121長剣(ちやうけん)長槍(ちやうさう)(ひらめ)かしドツと(ばか)りに()()せました。122当館(たうやかた)猛将(まうしやう)国武彦(くにたけひこ)館内(くわんない)味方(みかた)(のこ)らず()(あつ)め、123防戦(ばうせん)(ちから)(つく)して()りますれど、124(てき)(いきほひ)刻々(こくこく)(くは)はり味方(みかた)(わづ)かに二十有余人(にじふいうよにん)125(てき)大軍(たいぐん)(しう)(たの)んで(とき)(つく)り、126(いち)(やかた)127()(やかた)128(さん)(やかた)最早(もはや)彼等(かれら)占領(せんりやう)する(ところ)となりました。129国武彦(くにたけひこ)(むら)がる(てき)長剣(ちやうけん)()()()(むか)ひ、130縦横無尽(じうわうむじん)()りたて(なぎ)たて(ふせ)(たたか)へども、131(てき)()(あま)大軍(たいぐん)132勝敗(しようはい)(かず)歴然(れきぜん)たるもの、133御主人様(ごしゆじんさま)134此処(ここ)()まし(さふらふ)ては御身(おんみ)一大事(いちだいじ)135一時(いちじ)(はや)裏門(うらもん)より(みね)(つた)ひにビワの(うみ)(のが)()で、136コーカス(ざん)(しの)ばせ(たま)へ、137(てき)間近(まぢか)()()せました。138サアサ(はや)御用意(ごようい)あれ』
139注進(ちうしん)するを、140八島主(やしまぬし)(すこし)(さわ)がず、
141『ホー、142(なんぢ)八十猛(やそたける)(かみ)143()きに取計(とりはか)らへよ、144(われ)遠来(ゑんらい)(きやく)待遇(もてな)さねばならぬ。145(なんぢ)国武彦(くにたけひこ)(とも)防戦(ばうせん)用意(ようい)(いた)すが()からうぞ』
146『これは主人様(しゆじんさま)のお言葉(ことば)では御座(ござ)いまするが、147危機一髪(ききいつぱつ)(この)場合(ばあひ)148左様(さやう)呑気(のんき)(こと)(まを)して()られませうか。149最早(もはや)第三(だいさん)(やかた)まで(てき)占領(せんりやう)され、150(また)国武彦(くにたけひこ)()数槍(すうさう)()苦戦(くせん)最中(さいちう)御座(ござ)います。151味方(みかた)大半(たいはん)討死(うちじに)(いた)した(やう)御座(ござ)います。152何卒(どうぞ)一時(いちじ)(はや)くお(きやく)さまと(とも)(この)()をお(のが)(くだ)さいませ』
153『アツハヽヽヽ、154面白(おもしろ)(こと)出来(でき)たものだ、155御父(おんちち)留守(るす)(うかが)ひ、156弱身(よわみ)につけ()(かぜ)(かみ)157(たか)()れたる鬼雲彦(おにくもひこ)軍勢(ぐんぜい)158仮令(たとへ)百万騎(ひやくまんき)159千万騎(せんまんき)一度(いちど)()(きた)るとも、160八島主(やしまぬし)一本(いつぽん)指先(ゆびさき)(ちから)にて、161縦横無尽(じうわうむじん)にかけ(なや)まし一泡(ひとあわ)()かせて()れむ、162(なんぢ)(おもて)()(むか)ひ、163(なんぢ)としての力限(ちからかぎ)りを(つく)せよ。164ヤアヤア皆様(みなさま)165敵軍(てきぐん)()(きた)(さわ)有様(ありさま)(さけ)(さかな)(いた)して、166ゆるりと()みませう、167(とき)にとつての一興(いつきよう)168(なに)もお(なぐさ)みで御座(ござ)います。169(てき)襲来(しふらい)なりと見物(けんぶつ)して御心(みこころ)(なぐさ)(くだ)さいませ』
170 言依別命(ことよりわけのみこと)は、
171『アツハヽヽヽ、172ヤア面白(おもしろ)(こと)出来(でき)ました、173もう(すこ)近寄(ちかよ)つて()れますれば見物(けんぶつ)都合(つがふ)(よろ)しいが、174此処(ここ)(たし)(やつ)()御館(おやかた)175まだ四棟(よむね)(へだ)てて()りますれば()()安全(あんぜん)地帯(ちたい)176乍然(しかしながら)一利(いちり)あれば一害(いちがい)あり、177危険(きけん)()()はねば面白(おもしろ)(こと)()られませぬ(わい)178アハヽヽヽ』
179 亀彦(かめひこ)180梅彦(うめひこ)(かた)(いか)らし(ひぢ)()り、181顔色(がんしよく)物凄(ものすご)呼吸(いき)(はづ)ませ(なが)ら、
182『これはこれは八島主(やしまぬし)(さま)183言依別(ことよりわけ)(さま)184二方(ふたかた)狂気(きやうき)()されたか、185(この)()(のぞ)んで(なに)悠々(いういう)と、186(さけ)どころの(さわ)ぎぢや御座(ござ)いますまい。187サアサ防戦(ばうせん)用意(ようい)をなさいませ。188吾々(われわれ)生命(いのち)(まと)奮戦(ふんせん)(いた)し、189()(きた)奴輩(やつばら)片端(かたつぱし)より()りたて薙散(なぎち)らし、190一泡(ひとあわ)()かせて()れむ』
191()ふより(はや)長押(なげし)長刀(なぎなた)192梅彦(うめひこ)はおつ()(おもて)()でむとす。193亀彦(かめひこ)長剣(ちやうけん)()()き、194(また)もや()かむとす。195愛子姫(あいこひめ)二人(ふたり)(あし)にヒラリと(つな)をかけ(うしろ)()いた。196()かむとする(いきほひ)に、197(ちから)上半身(じやうはんしん)()下半身(しもはんしん)(せみ)()(がら)(ごと)くなつた足許(あしもと)引掛(ひつか)けられ、198スツテンドウと座敷(ざしき)真中(まんなか)にひつくり(かへ)りける。
199亀彦(かめひこ)千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)200(なに)悪戯(じやうだん)(あそ)ばす、201猶予(いうよ)(およ)ばば御身(おんみ)一大事(いちだいじ)202サアサ姫様達(ひめさまたち)一刻(いつこく)(はや)裏門(うらもん)より()ちのびなさい。203菊子姫(きくこひめ)殿(どの)204幾代姫(いくよひめ)殿(どの)205サアサア(はや)(はや)く。206(われ)(これ)より(おもて)()()し、207細腕(ほそうで)(つづ)(かぎ)奮戦(ふんせん)せむ』
208(また)もや()(あが)り、209(いきほひ)こんで(おもて)()かむとす。
210 八島主(やしまぬし)悠然(いうぜん)として、
211『アハヽヽヽ、212皆様(みなさま)213(てき)(さわ)ぎを()ずとも味方(みかた)狂言(きやうげん)沢山(たくさん)御座(ござ)います(わい)214ヤアヤア亀彦(かめひこ)215梅彦(うめひこ)()一杯(いつぱい)()(あが)れ』
216(さかづき)をつき()す。217梅彦(うめひこ)はかぶりを()(なが)ら、
218『エーエ、219(また)しても気楽(きらく)御主人様(ごしゆじんさま)220ソンナ(どころ)御座(ござ)いませうか、221サアサ(はや)(にげ)るか(すす)むか、222(ふた)つに(ひと)つの間髪(かんぱつ)()れざる場合(ばあひ)御座(ござ)れば、223(いづ)れへなりと御覚悟(ごかくご)あつて(しか)るべし』
224()()てて二人(ふたり)(おもて)()して韋駄天走(ゐだてんばし)りに(すす)()く。225最早(もはや)(てき)第五(だいご)(やかた)占領(せんりやう)第六(だいろく)(むか)はむとする(とき)なりき。
226 八十猛(やそたける)(かみ)(また)もや血相(けつさう)()へて顔面(がんめん)()(なが)(なが)(はし)(きた)り、
227(まを)()げます、228最早(もはや)(てき)第六(だいろく)(やかた)(せま)りました、229勝敗(しようはい)(すう)(すで)(けつ)す、230一時(いちじ)(はや)御落(おお)()(くだ)さいませ。231吾等(われら)生命(いのち)のつづく(かぎ)奮戦(ふんせん)相果(あひは)つる覚悟(かくご)御座(ござ)います』
232 八島主(やしまぬし)平然(へいぜん)として、
233『ヤア八十猛(やそたける)か、234御苦労(ごくらう)であつたのう、235()づ、236ゆつくり(さけ)でも()んで(はたら)くが()からうよ』
237 八十猛(やそたける)(いき)(はづ)ませ(なが)ら、
238『ソヽヽヽそれは(なに)(おつ)しやります、239(さけ)どこの(さわ)ぎですか、240国家(こくか)興亡(こうばう)(この)瞬間(しゆんかん)(せま)る、241(さけ)(のど)(とほ)りませぬ』
242言依別(ことよりわけ)『アハヽヽヽ、243八島主(やしまぬし)命様(みことさま)244随分(ずゐぶん)貴使(あなた)御家来(ごけらい)には勇将(ゆうしやう)猛卒(まうそつ)()りますね、245勇将(ゆうしやう)(もと)弱卒(じやくそつ)なし、246イヤもう感心(かんしん)(いた)しました』
247『イヤ、248さう()はれては(かへ)言葉(ことば)御座(ござ)いませぬ、249彼等(かれら)周章狼狽(しうしやうらうばい)醜態(しうたい)250()()けまして(まこと)(はぢ)()次第(しだい)御座(ござ)います。251吾々(われわれ)(てき)攻撃(こうげき)(まか)無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)をとるもの、252(もと)より勝敗(しようはい)(すう)歴然(れきぜん)たるものに御座(ござ)いますれば、253何程(なにほど)(あわて)(ところ)結果(けつくわ)(おな)(こと)ですよ、254()づは刹那心(せつなしん)(たの)しみませう。255一刻(いつこく)(さき)(わか)つたものぢやありませぬよ、256アヽヽヽ』
257 (また)もや(さけ)をグビリグビリと()んで()る。258日頃(ひごろ)狼狽者(あわてもの)玉彦(たまひこ)259厳彦(いづひこ)260楠彦(くすひこ)神界(しんかい)旅行(りよかう)経験(けいけん)()てより(なん)となく(こころ)()()きしと()え、261(この)騒動(さうだう)(ほと)んど感知(かんち)せざるものの(ごと)く、262悠々(いういう)として(はし)をとり、263(はなむけ)(さけ)舌鼓(したづつみ)()(ひそ)かに鼻唄(はなうた)(うた)つて()る。264愛子姫(あいこひめ)一絃琴(いちげんきん)をとり()(こゑ)(しと)やかに(うた)()した。
265菊子姫(きくこひめ)さま、266幾代姫(いくよひめ)さま、267貴女(あなた)(ひと)()うて(くだ)さいな。268遠来(ゑんらい)御客様(おきやくさま)(あま)殺風景(さつぷうけい)(ところ)をお()()けて()まないから、269(ひと)(はな)やかな(ところ)御覧(ごらん)()れて(くだ)さい、270(わらは)(うた)ひませう』
271 菊子姫(きくこひめ)272幾代姫(いくよひめ)は、
273『あい』
274(こた)へて仕度(したく)にとりかかり(しと)やかに()(はじ)めたり。275(おもて)修羅道(しゆらだう)(たたか)ひ。276(おく)一室(ひとま)悠々(いういう)たる(はる)花見(はなみ)(ごと)く、277(あき)()月見(つきみ)(ごと)(しづ)まりかへつて、278(わら)ひの(こゑ)屋外(をくぐわい)()()たり。
279 鬼雲彦(おにくもひこ)血糊(ちのり)()いた(やり)(しご)(なが)阿修羅王(あしゆらわう)(ごと)(この)()(あら)はれ(きた)り、
280『ヤア()くなる(うへ)最早(もはや)(かな)ふまい、281サア尋常(じんじやう)切腹(せつぷく)(いた)すか、282(ただし)(この)(はう)(やり)(さび)にして()らうか、283サアサア返答(へんたふ)如何(どう)じや』
284息巻(いきま)いて()る。285鬼雲彦(おにくもひこ)(つづ)いて鬼掴(おにつかみ)(この)()(また)もや(あら)はれ(きた)り、
286『さしも豪傑(がうけつ)(きこ)えたる八十猛(やそたける)287国武彦(くにたけひこ)吾手(わがて)にかかつて(もろ)くも討死(うちじに)(いた)したれば、288最早(もはや)(かな)はぬ百年目(ひやくねんめ)289サア尋常(じんじやう)切腹(せつぷく)(いた)すか、290(ただし)(この)(はう)()(くだ)さうか、291サア返答(へんたふ)(いた)せ』
292八島主(やしまぬし)『アツハヽヽヽ』
293言依別(ことよりわけ)『オツホヽヽヽ、294(なん)面白(おもしろ)芸当(げいたう)では御座(ござ)らぬか、295千両(せんりやう)役者(やくしや)跣足(はだし)()()します(わい)296ワツハツハヽヽヽ』
297玉彦(たまひこ)『ヨー、298鬼雲彦(おにくもひこ)御大将(おんたいしやう)299バラモン(けう)随分(ずゐぶん)(つよ)(かた)()ますな、300吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)301いや、302とてもとても貴方(あなた)のお相手(あひて)(あんま)馬鹿(ばか)らしうてなりませぬ(わい)303アツハツハヽヽヽ』
304厳彦(いづひこ)『ヤア(なまり)(つく)つた仁王(にわう)(やう)随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)なスタイルですな、305ワツハヽヽヽ』
306楠彦(くすひこ)『ホー立派(りつぱ)(もの)だ、307(ふし)くれ()つたり、308気張(きば)つたり、309閻魔(えんま)(ちやう)からやつて()たお使(つかい)(やう)だ。310ヤア(さけ)(さかな)面白(おもしろ)(こと)()せて(いただ)きます(わい)311ハツハヽヽヽ』
312愛子姫(あいこひめ)『オホヽヽヽ、313あの鬼雲彦(おにくもひこ)さまとやらの、314立派(りつぱ)のお(かほ)わいな、315鬼掴(おにつかみ)サンのあの気張(きば)(やう)
316『ホヽヽヽ』
317 鬼雲彦(おにくもひこ)318座敷(ざしき)真中(まんなか)突立(つつた)(なが)団栗眼(どんぐりまなこ)をグリグリ回転(くわいてん)させ、
319(この)()(およ)んで(なに)()かす、320(その)(はう)()(くる)うたか、321(あは)至極(しごく)(もの)だ、322ワツハツハヽヽヽ』
323豪傑(がうけつ)(わら)ひをする。324鬼雲彦(おにくもひこ)(かた)(ゆす)(なが)(また)もや、
325『ワツハヽヽヽ、326チエツヘヽヽヽ、327心地(ここち)()やな、328バラモン(けう)(うん)(ひら)(ぐち)329(この)(やかた)()()るからは、330最早(もはや)三五教(あななひけう)寂滅為楽(じやくめつゐらく)331(さて)(さて)も、332(あは)れな(もの)だワイ、333ワツハヽヽヽ』
334無理(むり)(かた)をしやくり豪傑(がうけつ)(わら)ひを(つづ)けて()る。335八島主命(やしまぬしのみこと)(みぎ)食指(ひとさしゆび)をヌツと(まへ)突出(つきだ)し、
336『ヤア鬼雲彦(おにくもひこ)一同(いちどう)者共(ものども)337()つく()け、338両刃(もろは)長剣(ちやうけん)(かみ)生身魂(いくみたま)339熊野楠日(くまのくすび)(かみ)とは吾事(わがこと)なるぞ、340八島主(やしまぬし)とは(この)()(しの)(かり)()341サアサア一時(いちじ)(はや)改心(かいしん)(いた)すか、342返答(へんたふ)如何(どう)ぢや』
343 鬼雲彦(おにくもひこ)344大口(おほぐち)()けて高笑(たかわら)ひ、
345『ワツハヽヽヽ、346()かしたりな()かしたりな、347(この)()(およ)んで(なん)繰言(くりごと)348()かれ(もの)小唄(こうた)とは(なんぢ)(こと)349エー面倒(めんだう)だ、350(かた)(ぱし)から血祭(ちまつ)りに(いた)して()れむ、351ヤア者共(ものども)352之等(これら)一座(いちざ)男女(なんによ)()()武者(むしや)()(ほろぼ)せよ』
353下知(げち)すれば、
354『ハツ』
355(こた)えて四方(しはう)より魔軍(まぐん)将卒(しやうそつ)()(あつ)まり前後左右(ぜんごさいう)()めかくる。356八島主(やしまぬし)右手(めて)()ばし、
357『ウン』
358一声(ひとこゑ)359言霊(ことたま)(ちから)鬼雲彦(おにくもひこ)(はじ)一同(いちどう)将棋倒(しやうぎだふ)しにバタバタと(その)()(たふ)れ、360身体(しんたい)硬直(かうちよく)して石地蔵(いしぢざう)(ごと)硬化(かうくわ)したり。
361八島主(やしまぬし)『ワツハヽヽヽ』
362言依別(ことよりわけ)『ヤア面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、363()せば()いのに()らぬチヨツカイを()しよつて、364(この)有様(ありさま)何事(なにごと)だ。365サア玉彦(たまひこ)366厳彦(いづひこ)367楠彦(くすひこ)368汝等(なんぢら)彼等(かれら)(むか)つて宣伝(せんでん)(いた)すが()からう』
369 三人(さんにん)は、
370『ハア』
371(こた)へて()(あが)り、372バツタリと(たふ)れて身動(みうご)きもならず(くる)しめる鬼雲彦(おにくもひこ)373鬼掴(おにつかみ)(まへ)突立(つつた)ち、
374『アハヽヽヽ、375アヽ愉快(ゆくわい)(こと)じや、376(いや)()(どく)なものだな』
377 三人(さんにん)(くび)から(うへ)霊縛(れいばく)()いた。378鬼雲彦(おにくもひこ)379鬼掴(おにつかみ)(はじ)数多(あまた)勇将(ゆうしやう)猛卒(まうそつ)(くび)(ばか)前後左右(ぜんごさいう)()(まは)し、380何事(なにごと)(しき)りに(つぶや)いて()る。381(この)(とき)(おもて)(はう)より国武彦(くにたけひこ)382八十猛(やそたける)両人(りやうにん)(あら)はれ(きた)り、
383御主人(ごしゆじん)申上(まをしあ)げます、384雲霞(うんか)(ごと)大軍(たいぐん)味方(みかた)(わづか)二十有余人(にじふいうよにん)385暫時(しばし)(いど)(たたか)ひしが、386衆寡(しうくわ)(てき)せず、387進退(しんたい)(これ)(きは)まり味方(みかた)敗亡(はいばう)瞬時(しゆんじ)(せま)(をり)から、388(てん)一方(いつぱう)より巨大(きよだい)火光(くわくわう)(くだ)(きた)り、389(てき)軍中(ぐんちう)落下(らくか)するよと()れば、390(おも)ひきや()出神(でのかみ)宣伝使(せんでんし)391数多(あまた)神軍(しんぐん)引率(いんそつ)して忽然(こつぜん)として(あら)はれ、392(むら)がる(てき)言霊(ことたま)爆弾(ばくだん)()びせかけ(たま)へば、393(てき)獲物(えもの)大地(だいち)()()て「(あたま)(いた)し、394(むね)(くる)し」と(さけ)(なが)(のこ)らず大地(だいち)打倒(うちたふ)身体(しんたい)硬直(かうちよく)した(まま)395(からく)人形(にんぎやう)(ごと)くに(くび)打振(うちふ)可笑(おか)しさ、396いやもう結構(けつこう)御神徳(おかげ)(いただ)きました。397ホー此処(ここ)にも大将株(たいしやうかぶ)(たふ)れて()りますね、398これはしたり、399(めう)(こと)もあればあるもので御座(ござ)(わい)400アハヽヽヽ』
401言依別(ことよりわけ)吾々(われわれ)天下(てんか)無敵(むてき)主義(しゆぎ)標榜(へうぼう)するもの、402彼等(かれら)(いへど)矢張(やはり)天地(てんち)(かみ)御水火(みいき)より(あら)はれ()でたる青人草(あをひとぐさ)403一人(ひとり)でも(なや)(くる)しむる(こと)(はふ)(ゆる)さぬ(ところ)404万々一(まんまんいち)敵軍(てきぐん)(なか)(おい)一人(ひとり)たりとも負傷者(ふしやうしや)あらば(たす)けてやらねばなりますまい』
405八島主(やしまぬし)御尤(ごもつと)もで御座(ござ)る、406サア御苦労(ごくらう)(なが)玉彦(たまひこ)(さま)407貴方(あなた)一人(ひとり)結構(けつこう)ですから一度(いちど)敵味方(てきみかた)負傷者(ふしやうしや)有無(うむ)調(しら)べて(くだ)さい』
408 玉彦(たまひこ)は、
409承知(しようち)(いた)しました』
410(はや)くも()つて(おもて)()()し、411彼方(あなた)此方(こなた)負傷(ふしやう)して()(なが)(くる)しむ軍卒(ぐんそつ)(かた)(ぱし)から数歌(かずうた)(うた)(なが)ら、412(のこ)らず()やし(まは)りぬ。413(しか)して玉彦(たまひこ)一同(いちどう)(まへ)(こゑ)()()げて宣伝歌(せんでんか)(うた)()かしけるに、414(いづ)れも(うた)(みみ)()るや、415(あく)守護神(しゆごじん)(あたま)(きび)しく(こた)へしと()えて益々(ますます)苦悶(くもん)(うな)(ごゑ)(たか)くなり()く。416(おく)一室(ひとま)には鬼雲彦(おにくもひこ)417鬼掴(おにつかみ)(その)()猛将(まうしやう)勇卒(ゆうそつ)(むか)つて厳彦(いづひこ)418楠彦(くすひこ)宣伝歌(せんでんか)()()かしゐる。419鬼雲彦(おにくもひこ)(この)(うた)()くより益々(ますます)苦悶(くもん)(はじ)流汗淋漓(りうかんりんり)420青息吐息(あをいきといき)()()()()藻掻(もが)可笑(おか)しさ。
421言依別(ことよりわけ)如何(どう)しても身魂(みたま)因縁(いんねん)()ふものは(あらそ)はれぬものだナア。422何程(なにほど)結構(けつこう)(をしへ)(きか)してやつた(ところ)で、423身魂(みたま)があはねば帰順(きじゆん)させる(こと)出来(でき)ぬと()える。424(ひと)には(ひと)()食物(しよくもつ)があり、425(うし)には(うし)426獅子(しし)には獅子(しし)427(ねこ)には(ねこ)428糞虫(くそむし)には糞虫(くそむし)食糧(しよくりやう)惟神的(かむながらてき)(きま)つてる(やう)に、429(をしへ)(えば)(その)(とほ)りだと()える。430人間(にんげん)()ふべき食物(しよくもつ)牛馬(ぎうば)(あた)ふるのは(かへつ)彼等(かれら)(くる)しめる(やう)なものだ。431(えん)なき衆生(しゆじやう)済度(さいど)(がた)し、432悪神(あくがみ)悪神(あくがみ)相当(さうたう)安心(あんしん)(もつ)()るでせう、433何程(なにほど)彼等(かれら)(すく)ふてやり()いと(おも)うてもこれは到底(たうてい)駄目(だめ)でせうよ、434(ふたた)(てき)たはぬ(やう)にして(かへ)して()りませうかい』
435八島主(やしまぬし)貴使(あなた)御説(おせつ)436御尤(ごもつと)もで御座(ござ)る。437(しか)らば(こし)より(うへ)(しば)らく(もと)硬直(かうちよく)状態(じやうたい)にして()いて(あし)のみ自由(じいう)(ゆる)して()りませう』
438()(なが)八島主(やしまぬし)()(あが)示指(ひとさしゆび)をグツと(まへ)()()空中(くうちう)(ゑん)(ゑが)いて、
439半日(はんにち)(あひだ)440(こし)から(うへ)霊縛(れいばく)(くは)ふ、441(こし)から以下(いか)自由(じいう)(ゆる)す』
442との(こゑ)(した)より今迄(いままで)氷柱(いてばしら)(ごと)くなつて()手足(てあし)()(まが)りムクムクと()つて、443(くび)()ゑたまま、444()垂直(すゐちよく)したもの、445片手(かたて)()()げたもの、446種々(しゆじゆ)様々(さまざま)珍姿怪態(ちんしくわいたい)陳列場(ちんれつぢやう)開設(かいせつ)し、447一目散(いちもくさん)門外(もんぐわい)さして(さき)(あらそ)()()す。448玉彦(たまひこ)(この)(てい)()()()し、
449『ヤア此奴(こいつ)()工夫(くふう)だ。450オイ数多(あまた)魔軍(まぐん)(ども)451(これ)より一日(いちにち)(あひだ)452(こし)より(うへ)霊縛(れいばく)(くは)()く、453(こし)より(した)汝等(なんぢら)勝手(かつて)たるべし、454(ゆる)す』
455()言葉(ことば)(もと)彼等(かれら)(あし)(うご)()したり。456一同(いちどう)(あし)自由(じいう)となりしを(さひは)(こし)から(うへ)材木(ざいもく)(やう)にビクともせず、457(あし)のみ(いそが)しく門外(もんぐわい)さしてウンともスンとも()()はず、458コソコソと(この)()()()りにけり。
459大正一一・四・四 旧三・八 於錦水亭 北村隆光録)