霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 文珠(もんじゆ)如来(によらい)〔六〇九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻 篇:第3篇 真奈為ケ原 よみ(新仮名遣い):まないがはら
章:第19章 文珠如来 よみ(新仮名遣い):もんじゅにょらい 通し章番号:609
口述日:1922(大正11)年04月16日(旧03月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
黒姫は今度は、悦子姫に説教を始める。黒姫は大風呂敷を広げて素盞嗚尊の悪口を言い、変性男子の系統の日の出神の生き宮に従うように、と悦子姫に迫る。
一同は黒姫に係わり合いになっていると足止めを食うので、そのまま過ぎ去ろうとするが、黒姫が引き止めにかかるが、鬼虎、加米彦は先へ促す。
音彦は黒姫の偵察をしようと付いてきたわけを明かし、ウラナイ教の教理は取るに足らないことがわかったから、もう三五教に戻って一緒に行こう、という。
黒姫はしきりに大風呂敷を広げて一同をウラナイ教に引き込もうとするが、説得力がなく、三五教の一行は去っていく。
一行は途中、文珠堂を見つけてそこで一夜の宿を取る。鬼虎は、かつて竜灯松の麓へ悦子姫らを召捕りに行った晩のことを思い出している(第一章)。青彦、音彦、加米彦らもかつての遍歴を思い起こして語り出す。
鬼虎は寝ずの番を買って出るが、寝ぼけて夢を見ている。その間に、天から竜灯松をめがけて火団が落下して物凄い音を立てた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-02-08 18:22:04 OBC :rm1619
愛善世界社版:227頁 八幡書店版:第3輯 484頁 修補版: 校定版:231頁 普及版:102頁 初版: ページ備考:
001 ヤンチヤ(ばば)アの黒姫(くろひめ)は、002性来(しやうらい)()かぬ()極度(きよくど)発揮(はつき)し、003青彦(あをひこ)004音彦(おとひこ)(その)()(むか)つて舌端(ぜつたん)黒煙(こくえん)()き、005一人(ひとり)(のこ)さず紅蓮(ぐれん)(ほのほ)()(つく)さむと(すさま)じき(いきほひ)なり。
006黒姫(くろひめ)『コレコレ、007最前(さいぜん)から其処(そこ)に、008(をとこ)とも、009(をんな)とも、010(わけ)(わか)らぬ(ふう)をして()三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)011()加減(かげん)(この)()(いとま)()ひをしても悦子姫(よしこひめ)阿婆擦(あばず)(をんな)012沢山(たくさん)荒男(あらをとこ)()きつれて、013女王(ぢよわう)気取(きど)りで、014傲然(ごうぜん)(かま)へて御座(ござ)るが、015チト(この)(ばば)アが天地(てんち)根本(こつぽん)道理(だうり)()みて(ふく)める(やう)()()かしてやるから、016ソンナ蓑笠(みのかさ)をスツパリと()いで、017此処(ここ)御座(ござ)れ、018滅多(めつた)にウラナイ(けう)(ため)(わる)(やう)(こと)(まを)さぬ。019()ふは当座(たうざ)(はぢ)020()らぬは末代(まつだい)(はぢ)だ、021(この)(やま)(なか)結構(けつこう)神徳(しんとく)(いただ)いて、022(また)都会(ひろみ)()たら、023自分(じぶん)発明(はつめい)した(やう)に、024宣伝使(せんでんし)(づら)()げて(ある)かうと(まま)ぢや。025(なん)でも()いて()けば(そん)()かぬ。026サアサア(ばば)アの渋茶(しぶちや)でも()みて、027トツクリと身魂(みたま)洗濯(せんたく)をしなされ。028チツト(この)(ごろ)はお(まへ)顔色(かほいろ)(わる)い。029(この)黒姫(くろひめ)(みやく)()つて()げよう。030……どうやら浮中沈(ふちうちん)031七五三(しちごさん)脈膊(みやくはく)混乱(こんらん)して()(やう)ぢや、032(いま)(うち)療養(れうやう)せぬと、033丸気違(まるきちがひ)になつて(しま)ふぜ。034(いま)でさへも半気違(はんきちがひ)ぢや。035神霊(しんれい)注射(ちうしや)()つてあげようか。036それが()かなくば、037モルヒネ注射(ちうしや)でもしてやらうかい。038サアサア トツトと(まへ)()なさい』
039悦子姫(よしこひめ)『それはそれは、040(なに)から(なに)まで()(こころ)()けられまして、041()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)います』
042黒姫(くろひめ)有難(ありがた)いか、043ウラナイ(けう)親切(しんせつ)なものだらう。044(あたま)(さき)から(あし)爪先(つまさき)045神経(しんけい)系統(けいとう)から運動(うんどう)機関(きくわん)(まを)すに(およ)ばず、046食道(しよくだう)047消化(せうくわ)機関(きくわん)から生殖器(せいしよくき)048(なに)から(なに)(まで)049チヤンと()をつけて、050根本(こつぽん)から()()かし、051(やまひ)()()重宝(ちようほう)(をしへ)ぢや。052(まへ)神経(しんけい)中枢(ちうすう)多少(たせう)異状(いじやう)があると()えて、053三五教(あななひけう)木花姫(このはなひめ)生宮(いきみや)(やう)に、054(をんな)だてら、055(をとこ)風采(なり)をして、056(をとこ)同伴(つら)つて、057そこら(ぢう)(ある)きまはすのは、058普通(ひととほり)ではない。059(この)(まま)()つとくと、060巣鴨(すがも)(ゆき)をせなければならぬかも()れやしない。061………サアサア(この)黒姫(くろひめ)耆婆(きば)扁鵲(へんじやく)跣足(はだし)()げると()義理(ぎり)(がた)義婆(ぎば)ぢや。062世間(せけん)(やつ)(わけ)()らずに、063黒姫(くろひめ)(なん)(かん)のと(まを)すけれども、064燕雀(えんじやく)()ンぞ大鵬(たいほう)(こころざし)()らむやだ。065三千(さんぜん)世界(せかい)立替(たてかへ)立直(たてなほ)しの根本(こつぽん)(さぐ)ると()ふ、066大望(たいまう)なウラナイ(けう)を、067三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(くらゐ)(わか)つて(たま)るものか。068(まへ)此処(ここ)()たのも、069みなウラナイ(けう)守護(しゆご)(たま)ふ、070(たふと)大神(おほかみ)(さま)()引合(ひきあは)せぢや。071(つまづ)(いし)(えん)(はし)()つて、072世界(せかい)には(みち)(ある)いて()ると、073沢山(たくさん)(いし)(ころ)がつて()る。074(その)幾十万(いくじふまん)とも()れぬ(いし)(うち)に、075(つまづ)(いし)()つたら、076(わづか)(ひと)つか(ふた)(くらゐ)なものだよ。077これも因縁(いんねん)()ければ蹴躓(けつまづ)(こと)出来(でき)なければ、078蹴躓(けつまづ)かれる(こと)出来(でき)やしない。079(おな)時代(じだい)(うま)れ、080(おな)じお(つち)(うへ)()つても、081コンナ結構(けつこう)なウラナイ(けう)()らずに、082三五教(あななひけう)にとぼけて一生(いつしやう)(おく)(やう)(こと)本当(ほんたう)(つま)らぬぢやないか。083何事(なにごと)(かみ)(さま)のお引合(ひきあは)せ、084惟神(かむながら)()摂理(せつり)085(えん)あればこそ、086()うしてお(まへ)(この)(やま)(おく)()(まよ)ひ……イヤイヤ(かみ)(さま)()()られて()たのだ。087(けつ)して(けつ)して黒姫(くろひめ)()()うと(おも)つたら量見(りやうけん)(ちが)ひますデ、088竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまが仰有(おつしや)るのだ。089今迄(いままで)(なが)らく(うみ)(そこ)のお住居(すまゐ)で、090沢山(たくさん)(たから)(うみ)(そこ)(たくは)へて()られたのぢやが、091今度(こんど)(うしとら)金神(こんじん)(さま)()にお(あが)りなさるに(つい)て、092物質(ぶつしつ)(てき)(たから)よりも、093(まこと)(たから)()いと()つて、094五六七(みろく)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)(ため)に、095()しげも()綺麗(きれい)サツパリと、096(うしとら)金神(こんじん)さまに()(わた)しなされると()段取(だんど)りぢや。097(しか)人間(にんげん)(まこと)(たから)結構(けつこう)ぢやが、098肉体(にくたい)()(かぎ)り、099(いへ)()てねばならず、100着物(きもの)()ねばならず、101美味(うま)いものも()はねばならず、102あいさには(さけ)もチヨツピリ()みたいと()代物(しろもの)だから、103(かたち)のある(たから)必要(ひつえう)ぢや。104三五教(あななひけう)(やつ)は「この()(たから)は、105(さび)106(くさ)り、107()け、108(おぼ)れ、109朽果(くちは)つる(たから)だ、110無形(むけい)(たから)(かみ)(くに)()め」なぞと、111(みづ)(なか)()()いた(やう)屁理屈(へりくつ)()つて、112世界(せかい)(やつ)誤魔化(ごまくわ)して()るが、113(まへ)()大方(おほかた)(その)部類(くち)だらう……イヤ(その)(とほ)宣伝(せんでん)して(ある)くのだらう。114……()(かんが)へて()なされ。115(まへ)だつて()はず()まずに、116内的(ないてき)生活(せいくわつ)ばかり主張(しゆちやう)して()つて、117(だう)して(かみ)(みち)宣伝(せんでん)歩行(ある)けるか。118これ(ほど)(わか)()つた現実(げんじつ)道理(だうり)無視(むし)すると()(をしへ)はヤツパリ邪教(じやけう)ぢや。119瑞霊(みづのみたま)(ぬか)(こと)は、120(がい)して(みな)コンナものだ。121()()くして(おこな)(べか)らざる(をしへ)(なに)になるものか。122体主(たいしゆ)霊従(れいじう)霊主(れいしゆ)体従(たいじう)正中(まんなか)()ふのが当世(たうせい)ぢや。123当世(たうせい)(あは)(やう)(をしへ)をしたつて(たれ)()くものか。124(かみ)(きよ)御心(みこころ)(あは)むとすれば、125暗黒(あんこく)なる()(ひと)(こころ)(あは)ず、126俗悪(ぞくあく)世界(せかい)(ひと)(こころ)(あは)むとすれば、127(かみ)(こころ)(かな)はず……なぞと(わけ)(わか)()つた小理屈(こりくつ)を、128素盞嗚(すさのをの)(みこと)馬鹿神(ばかがみ)(さえづ)りよつて、129(やす)きを()(かた)きに()かむとする、130迂遠(うゑん)(きは)まる盲信教(まうしんけう)だから、131()つから、132()つから、133(はね)()えぬのぢや。134ウラナイ(けう)()()えても、135(いま)雌伏(しふく)時代(じだい)ぢや。136軍備(ぐんび)充実(じゆうじつ)した(うへ)で、137捲土(けんど)重来(ぢうらい)138回天(くわいてん)動地(どうち)大活動(だいくわつどう)(えん)じ、139それこそ()いた(くち)(ふさ)がらぬ、140(うし)(くそ)天下(てんか)()る、141アンナ(もの)がコンナ(もの)になると()仕組(しぐみ)(おく)()(あら)はして、142(てん)()三体(さんたい)大神(おほかみ)(さま)にお()にかける、143(うしとら)金神(こんじん)仕組(しぐみ)ぢや。144三五教(あななひけう)(うしとら)金神(こんじん)(をしへ)()てとる(やう)(かほ)して()るが、145本当(ほんたう)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(をしへ)九分(くぶ)九厘(くりん)ぢや。146黒姫(くろひめ)はそれがズンとモウ()()はぬので、147変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)肉体(にくたい)の、148()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(ちから)(たの)み、149竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまの生宮(いきみや)となつて、150外国(ぐわいこく)行方(やりかた)を、151(すみ)から(すみ)(まで)調(しら)べあげて、152今度(こんど)(あま)岩戸開(いはとびらき)に、153千騎(せんき)一騎(いつき)大活動(だいくわつどう)をするのぢや。154(まへ)も、155三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()(こと)ぢやが、156()はどうでもよい、157三体(さんたい)大神(おほかみ)(さま)(うしとら)金神(こんじん)(さま)御用(ごよう)()きさへすれば()いのだらう。158サアサア今日(けふ)(かぎ)化物(ばけもの)(やう)(やつ)(ぬか)(こと)を、159弊履(へいり)(ごと)打棄(うちす)てて、160最勝(さいしよう)最妙(さいめう)161至貴(しき)至尊(しそん)162無限(むげん)絶対(ぜつたい)163無始(むし)無終(むしう)神徳(しんとく)(かがや)く、164ウラナイ(けう)(かぶと)()いで、165迷夢(めいむ)()まし、166綺麗(きれい)サツパリと改心(かいしん)して、167ウラナイ(けう)迷信(めいしん)なされ、168(わる)(こと)(まを)しませぬ、169ギヤツハヽヽヽ』
170悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ、171アハヽヽヽ、172あのマア黒姫(くろひめ)さまの(くろ)(くち)173……(わたし)(やう)(くち)(はた)(ちち)()いてる(やう)(もの)では、174到底(たうてい)あなたの舌鋒(ぜつぽう)(むか)つて太刀打(たちうち)出来(でき)ませぬ。175あなたは何時(いつ)宣伝使(せんでんし)にお()りになりましたか、176随分(ずゐぶん)円転(ゑんてん)滑脱(かつだつ)177自由(じいう)自在(じざい)布留那(ふるな)(べん)178懸河(けんが)論説(ろんせつ)滔々(たうたう)として瀑布(ばくふ)()ちるが(ごと)くですナ』
179黒姫(くろひめ)(きま)つた(こと)だよ。180入信(にふしん)してからまだ(じふ)(ねん)にはならぬ。181()れでも(この)(とほ)りの雄弁家(ゆうべんか)だ、182()れには素養(そやう)がある。183(わか)(とき)から諸国(しよこく)遍歴(へんれき)して、184言霊(ことたま)練習(れんしふ)し、185(うた)であらうが、186浄瑠璃(じやうるり)であらうが、187浪花節(なにはぶし)であらうが、188音曲(おんきよく)()音曲(おんきよく)(のこ)らず上達(じやうたつ)して(きた)へたのぢや。189千変(せんぺん)万化(ばんくわ)190自由(じいう)自在(じざい)口車(くちぐるま)191十万(じふまん)馬力(ばりき)()けた輪転機(りんてんき)(やう)に、192廻転(くわいてん)自由(じいう)自在(じざい)ぢや、193オホヽヽヽ』
194加米彦(かめひこ)『モシモシ悦子姫(よしこひめ)さま、195コンナ(ばば)アに、196何時(いつ)までも相手(あひて)になつとると、197()()れますで、198(いち)()(はや)真名井(まなゐ)(はら)(むか)ひませうか』
199悦子姫(よしこひめ)『アヽさうだ、200折角(せつかく)(たふと)いお説教(せつけう)()かして(もら)うて、201名残(なごり)()しいが、202(さき)()きますから此処(ここ)らで御免(ごめん)(かうむ)りませうか』
203鬼虎(おにとら)『アーア、204最前(さいぜん)から(だま)つて()いて()れば、205随分(ずゐぶん)()(さへづ)つたものだ。206一寸(ちよつと)()はれを()けば、207()つから()つから有難(ありがた)(やう)だが、208執拗(しつこ)()けば、209(むか)(ぱら)()つ……お()アさま、210ゆつくり、211(ひざ)とも談合(だんがふ)212膝坊主(ひざばうず)でも(かか)へて、213自然(しぜん)言霊(ことたま)停電(ていでん)するまで、214馬力(ばりき)をかけ、215メートルを()げなさい。216アリヨース』
217黒姫(くろひめ)()つた()つた、218(おほ)いにアリヨースだ、219様子(やうす)あつて(この)(ばば)アは、220(この)魔窟(まくつ)(はら)仮小屋(かりごや)(こしら)へ、221(まへ)(たち)()るのを()つて()たのだ。222()くと()つたつて、223一寸(いつすん)だつて、224(この)(ばば)が、225()れと(にら)みたら(うご)かすものか』
226鬼虎(おにとら)『まるで(へび)(やう)(やつ)ぢやナア。227執念深(しふねんぶか)い……何時(いつ)()にか、228(おれ)(たち)魅入(みい)れよつたのぢやナ』
229黒姫(くろひめ)『さうぢや、230()()れたのぢや、231(まへ)もチツト身入(みい)れて()いたが()からう、232(くちなは)(ねら)はれた(かへる)(やう)なものぢや、233此処(ここ)かへる()つたつて、234(かへ)(こと)出来(でき)(やう)に、235チヤーンと霊縛(れいばく)(くは)へてある。236悪霊(あくれい)注射(ちうしや)()らず()らずの(あひだ)に、237チヤアンと()つて(しま)うた。238サア(うご)くなら(うご)いて()よれ』
239鬼虎(おにとら)『アハヽヽ、240(なに)(ぬか)すのだ。241(うご)けぬと()つたつて、242(おれ)(からだ)(うご)かすのは、243(おれ)自由(じいう)権利(けんり)だ。244……ソレ……どうだ。245これでも(うご)かぬのか』
246黒姫(くろひめ)『それでも(うご)かぬぞ。247(まへ)今晩(こんばん)真名井(まなゐ)(はら)()いて、248草臥(くたび)れて、249前後(ぜんご)()らず、250(やす)ンだ(とき)は、251ビクとも(からだ)(うご)かぬ(やう)にしてやるワイ』
252鬼虎(おにとら)『アハヽヽヽ、253大方(おほかた)ソンナ(こと)ぢやろと(おも)うた。254……ヤイヤイ黒姫(くろひめ)255三五教(あななひけう)()きとる人間(にんげん)を、256()(まへ)霊縛(れいばく)して(うご)けぬ(やう)にするのぢやぞ。257(ひと)つやつてやらうか、258……(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)……』
259黒姫(くろひめ)(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()心地(ここち)よろづウ……ソラ(なに)()ふのぢや、260それぢやから三五教(あななひけう)体主(たいしゆ)霊従(れいじう)()ふのぢや。261(あさ)から(ばん)まで、262算盤(そろばん)はぢく(やう)(かず)(かぞ)へて、263(いち)から(じふ)まで(せん)から(まん)まで……()()(こと)につけては抜目(ぬけめ)のない(をしへ)ぢや。264(かみ)(みち)無形(むけい)()265無算(むさん)(かぞ)へ、266無声(むせい)()くと()ふのぢやないか、267()ンぢや、268小学校(せうがくかう)生徒(せいと)(やう)に、269(ひと)(ふた)()つと勿体(もつたい)らしさうに、270……ソンナことは、271()()でも()つてるワイ。272……(おほ)きな(こゑ)()しよつて、273アオウエイぢやの、274カコクケキぢやのアタ阿呆(あはう)らしい、275(なに)(ぬか)すのぢやい……白髪(しらが)蓬々(ぼうぼう)()やしよつた(だい)(をとこ)()つともない、276桶伏山(をけぶせやま)(うへ)へあがつて、277イロハからの勉強(べんきやう)ぢやと()ひよつてな、278……小学校(せうがくかう)生徒(せいと)(わら)うて()るのも()らぬのか、279()腰抜(こしぬけ)だなア、280それよりも天地(てんち)根本(こつぽん)大先祖(おほせんぞ)因縁(いんねん)()らずに(かみ)(をしへ)()つものか、281三五教(あななひけう)(やう)阿呆(あはう)ばつかりなら()いが、282()(なか)には(さん)(にん)()(にん)283()()いた人間(にんげん)()いとは()はれぬ。284(その)(とき)に、285(むかし)(むかし)のサル(むかし)からの因縁(いんねん)()らずに、286どうして(をしへ)出来(でき)るか、287馬鹿(ばか)()加減(かげん)にしといたが()からう。288鎮魂(ちんこん)ぢや、289暗魂(あんこん)ぢやとか()ひよつて、290糞詰(ふんづま)りが雪隠(せんち)へでも()つた(やう)に、291ウンウンと(あせ)をかきよつて、292(なん)のザマぢやい、293(しり)(あな)(つま)つて穴無(あなな)(けう)()ふのか、294阿呆(あはう)らしい、295(すす)むばつかりの行方(やりかた)で、296(しり)(しま)りの出来(でき)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(みだ)れた(をしへ)297(なに)(それ)(ほど)有難(ありがた)いのぢや、298勿体(もつたい)ないのぢや、299サア鎮魂(ちんこん)とやらをかけるのなら、300()けて()い、301……ソンナ糞垂腰(ばばたれごし)鎮魂(ちんこん)(かか)つてたまるかイ。302グヅグヅすると、303(わし)(はう)から、304暗魂(あんこん)をかけてやらうか』
305加米彦(かめひこ)『ヤア時刻(じこく)(うつ)る、306()アさま、307(また)ゆつくりと、308後日(ごじつ)()にかかりませう』
309黒姫(くろひめ)後日(ごじつ)()にかからうと()つたつて、310一寸先(いつすんさき)(やみ)()ぢや。311()うた(とき)笠脱(かさぬ)げと()ふぢやないか、312(この)笠松(かさまつ)(した)でスツクリと改心(かいしん)して、313宣伝使(せんでんし)(かさ)()ぎ、314(みの)()り、315ウラナイ(けう)改悪(かいあく)しなさい。316一時(いつとき)(はや)慢心(まんしん)をせぬと、317大峠(おほたうげ)()()(とき)(たす)けて(もら)へぬぞや』
318加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、319オイ()アさま、320(まへ)さま本気(ほんき)()つてるのかい、321(まへ)()(こと)支離(しり)滅裂(めつれつ)322雲煙(うんえん)模糊(もこ)323捕捉(ほそく)(べか)らずだがナア』
324黒姫(くろひめ)(きま)つた(こと)だイ、325広大(くわうだい)無辺(むへん)大神(おほかみ)生宮(いきみや)326竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまのお宿(やど)ぢや、327捕捉(ほそく)(べか)らざるは竜神(りうじん)本体(ほんたい)ぢや、328(まへ)(たち)(やう)凡夫(ぼんぶ)が、329竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)尻尾(しつぽ)でも(とら)へようと(おも)ふのが(あやま)りぢや、330ギヤツハヽヽヽ』
331音彦(おとひこ)『アヽ()れは()れは、332加米彦(かめひこ)さま、333(ひさ)(ぶり)ぢやつたナア』
334加米彦(かめひこ)『ヤア聞覚(ききおぼ)えのある(こゑ)だが、335……その(かほ)はナンダ、336真黒(まつくろ)けぢやないか、337炭焼(すみやき)(ぢい)かと(おも)つて()た、338……一体(いつたい)(まへ)(たれ)だ』
339音彦(おとひこ)音彦(おとひこ)だよ、340北山村(きたやまむら)より(この)(ばば)アの(あと)()いて、341ドンナ(こと)をしよるかと(おも)つて、342ウラナイ(けう)()()()いて()たのだ。343イヤモウ言語(ごんご)道断(どうだん)344(おもて)立派(りつぱ)で、345(なか)這入(はい)ると、346シヤツチもないものだ、347伏見(ふしみ)人形(にんぎやう)(やう)に、348(おもて)ばつかり(かざ)()てよつて、349(うら)這入(はい)ればサツパリぢや。350(はら)(なか)はガラガラぢや。351ウラナイ(けう)(あなど)(べか)らざる強敵(きやうてき)(おも)つて今日(けふ)(まで)細心(さいしん)注意(ちうい)(おこた)らなかつたが、352(うはさ)(やう)にない微弱(びじやく)なものぢや、353何程(なにほど)高姫(たかひめ)や、354黒姫(くろひめ)車輪(しやりん)になつても、355最早(もはや)前途(ぜんと)()えて()る。356吾々(われわれ)もモウ安心(あんしん)だ。357到底(たうてい)歯牙(しが)()くるに()らない教理(けうり)だから、358わしもお(まへ)(あと)()いて、359(いま)より三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)公然(こうぜん)名乗(なの)つて()(こと)にしよう。360(この)()アさまは、361如何(どう)しても駄目(だめ)だ。362改心(かいしん)(のぞ)みが()かぬ、363(えん)なき衆生(しゆじやう)済度(さいど)(がた)し、364……エー可憐相(かはいさう)(なが)ら、365見殺(みごろ)しかいなア』
366黒姫(くろひめ)『アーア音彦(おとひこ)可憐相(かはいさう)なものだナア。367如何(どう)ぞして(まこと)(こと)()かしてやらうと(おも)ふのに、368(たましひ)(しび)()つて()るから、369食塩(しよくえん)注射(ちうしや)(くらゐ)では効験(かうけん)がない(わい)370アーア()(どく)ぢや、371いぢらしい(もの)ぢや……それに()けても青彦(あをひこ)(やつ)372可憐相(かはいさう)(たま)らぬ。373……コラコラ青彦(あをひこ)一遍(いつぺん)374直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)し、375(むね)()()てて()(かへり)みて、376ウラナイ(けう)(すく)はれると()()はないか。377(この)(ばば)はお(まへ)行先(ゆくさき)(あん)じられてならぬワイ』
378青彦(あをひこ)『アーア、379黒姫(くろひめ)()アさま、380(まへ)()親切(しんせつ)有難(ありがた)い、381(しか)(なが)ら、382個人(こじん)としては(その)親切(しんせつ)(ちから)一杯(いつぱい)感謝(かんしや)する、383が、384主義(しゆぎ)主張(しゆちやう)(おい)ては、385全然(ぜんぜん)反対(はんたい)ぢや、386人情(にんじやう)(もつ)真理(しんり)()げる(こと)出来(でき)ぬ、387真理(しんり)(てつ)(ぼう)(ごと)きもの、388()げたり、389ゆがめたり、390()つたりは出来(でき)ない、391公私(こうし)区別(くべつ)(あきら)かにせなくては、392信仰(しんかう)真諦(しんたい)(あやま)るからナア、393……左様(さやう)なら…()ゆるりと()(やす)みなされませ、394(わたくし)()れから、395悦子姫(よしこひめ)(さま)のお(あと)(した)ひ、396一行(いつかう)花々(はなばな)しく、397悪魔(あくま)征討(せいたう)(むか)ひます。398ウラナイ(けう)何程(なにほど)399シヤチになつても、400釣鐘(つりがね)()襲撃(しふげき)する(やう)なものだ。401三五教(あななひけう)(あな)()いから大丈夫(だいぢやうぶ)だ。402(みづ)()らさぬ(かみ)(をしへ)403御縁(ごえん)()つたら(また)()(かか)りませう』
404黒姫(くろひめ)『アーア、405(えん)なき衆生(しゆじやう)()(がた)しか、406……エー仕方(しかた)がないワイ………ウラナイ(けう)大明神(だいみやうじん)407(かな)はぬから(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)408(かな)はぬから(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)409……ポンポン』
410魔窟(まくつ)(はら)黒姫(くろひめ)
411伏屋(ふせや)(のき)(いとま)()
412()西山(せいざん)(かたむ)いて
413附近(あたり)(かげ)(つつ)めども
414四方(よも)景色(けしき)悦子姫(よしこひめ)
415(まつ)()(かぜ)音彦(おとひこ)
416秋山彦(あきやまひこ)門番(もんばん)
417()をやつしたる加米彦(かめひこ)
418(かほ)(いろ)さへ青彦(あをひこ)
419(とも)なひ(すす)九十九(つくも)(をり)
420(おに)棲処(すみか)(きこ)えたる
421大江(おほえ)本城(ほんじやう)左手(ゆんで)(なが)
422鬼彦(おにひこ)鬼虎(おにとら)(いは)(いち)勘公(かんこう)引連(ひきつ)れて
423さしも(けは)しき坂路(さかみち)
424(あへ)(あへ)ぎて(のぼ)()
425()一面(いちめん)銀世界(ぎんせかい)
426(すね)(ぼつ)する雪路(ゆきみち)
427()けつ(まろ)びつ汗水(あせみづ)
428()らして(すす)岩戸口(いはとぐち)
429折柄(をりから)()()(ゆき)しばき
430(おもて)()くべき(よし)もなく
431(かさ)(かざ)して(くだ)()
432(よる)(とばり)はおろされて
433遠音(とほね)(ひび)(なみ)(おと)
434(まつ)(ひびき)成相(なりあひ)
435(そら)()(わた)(あま)(はら)
436(あま)橋立(はしだて)(した)()
437雪路(ゆきみち)(わた)一行(いつかう)
438勇気(ゆうき)日頃(ひごろ)百倍(ひやくばい)
439気焔(きえん)万丈(ばんぢやう)()()なく
440文珠(もんじゆ)切戸(きりど)()きにけり。
441青彦(あをひこ)『アーア、442()()れたし、443前途(ぜんと)遼遠(れうゑん)444(あし)()(ほど)疲労(くたび)れました。445アヽ文珠堂(もんじゆだう)(なか)這入(はい)つて一夜(いちや)(しの)ぎ、446団子(だんご)でも(かぢ)つて休息(きうそく)(いた)しませうか』
447悦子姫(よしこひめ)(いづ)れもさま(がた)448随分(ずゐぶん)()疲労(つかれ)でせう。449青彦(あをひこ)さまの仰有(おつしや)(とほ)り、450あのお(だう)(なか)で、451()(かく)休息(きうそく)(いた)しませうか』
452 一同(いちどう)(この)言葉(ことば)に『オウ』と(こた)へて、453(いそ)文珠堂(もんじゆだう)(むか)つて()けり()く。
454鬼虎(おにとら)『ヤア此処(ここ)()ると、455何時(いつ)やらの(こと)連想(れんさう)するワイ、456恰度(ちやうど)今夜(こんや)(やう)(ばん)ぢやつた。457(この)(やう)(ゆき)(つも)つて()らぬので、458あたりは真暗(まつくら)がり、459鬼雲彦(おにくもひこ)大将(たいしやう)命令(めいれい)()つて、460あの竜灯松(りうたうまつ)(ふもと)へ、461悦子姫(よしこひめ)さま(たち)召捕(めしとり)()つた(とき)(こと)(おも)へば、462全然(まるで)(ゆめ)のやうだ。463昨日(きのふ)(てき)今日(けふ)味方(みかた)464(あめ)(した)(てき)()(もの)()きものぞと、465三五教(あななひけう)(おん)(をしへ)466つくづくと(しの)ばれます。467(その)(とき)悦子姫(よしこひめ)さまに霊縛(れいばく)をかけられた(とき)は、468どうせうかと(おも)つた。469本当(ほんたう)貴女(あなた)随分(ずゐぶん)悪戯好(いたづらずき)(かた)でしたなア』
470悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽヽ』
471鬼彦(おにひこ)『オイオイ鬼虎(おにとら)472貴様(きさま)はお二人(ふたり)中央(まんなか)にドツカリ(すわ)りよつて、473()()になつて()たのだらう』
474鬼虎(おにとら)馬鹿(ばか)()へ、475(なに)(なん)だか、476(やはら)かいものの(うへ)に、477ぶつ(たふ)れて、478気分(きぶん)(わる)いの、479(わる)くないのつて、480何分(なにぶん)正体(しやうたい)(わか)らぬものだから、481ホーズの化物(ばけもの)()たかと(おも)つて()()ぢやなかつたよ、482それに()けても、483生者(しやうじや)必滅(ひつめつ)会者(ゑしや)定離(ぢやうり)484栄枯(ゑいこ)盛衰(せいすゐ)485有為(うゐ)転変(てんぺん)()(なか)無常(むじやう)迅速(じんそく)(かん)(いよいよ)(ふか)しだ。486()(とり)(おと)(いきほひ)鬼雲彦(おにくもひこ)(おん)大将(たいしやう)は、487鬼武彦(おにたけひこ)(ため)伊吹山(いぶきやま)遁走(とんそう)し、488吾々(われわれ)四天王(してんわう)()ばれ、489随分(ずゐぶん)羽振(はぶり)()かした(もの)だが、490(かは)れば()はる()(なか)だ。491あの(とき)(こと)(おも)へば、492長者(ちやうじや)乞食(こじき)(ほど)懸隔(けんかく)がある。493三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(たまご)になつて悦子姫(よしこひめ)さまのお(とも)(まで)494()(さが)つたのか、495成上(なりあ)がつたのか()らぬが、496一度(いちど)497あの(とき)四天王(してんわう)(ぶり)発揮(はつき)したい(やう)()もせぬ(こと)はない。498アーア(まこと)(みち)結構(けつこう)なものの、499(つら)いものだ。
 
500 あひ()ての(のち)(こころ)(くら)ぶれば (むかし)(もの)(おも)はざりけり
 
501だ。502善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)区別(くべつ)()らず、503天下(てんか)吾物顔(わがものがほ)に、504利己主義(われよし)自由(じいう)行動(かうどう)()つた(とき)(はう)が、505何程(なにほど)愉快(ゆくわい)だつたか()れやしない、506(あゝ)507(しか)(なが)人間(にんげん)天地(てんち)(かみ)(おそ)れねばならぬ、508(いま)苦労(くらう)(すゑ)(ため)だ。509アーア コンナ世迷言(よまひごと)はヨウマイ ヨウマイ。510神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に……(かみ)(さま)511見直(みなほ)聞直(ききなほ)して(くだ)さい。512(わたくし)今日(こんにち)(かぎ)り、513今迄(いままで)繰言(くりごと)()(なほ)します。514アヽ、515惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
516青彦(あをひこ)因縁(いんねん)()ふものは(めう)なものですな、517(おな)(この)竜灯(りうとう)(まつ)下蔭(したかげ)(おい)て、518(とら)へようとした宣伝使(せんでんし)師匠(ししやう)(あふ)いで、519(とも)をなさるのは、520反対(あべこべ)悦子姫(よしこひめ)(さま)(とりこ)となつた(やう)なものだ。521アハヽヽヽ、522吾々(われわれ)(まつた)三五教(あななひけう)捕虜(ほりよ)になつて(しま)つた。523それに()けても、524執拗(しつえう)なのは黒姫(くろひめ)ぢや、525何故(なぜ)あれ(ほど)頑固(ぐわんこ)なか()らぬ、526どうしても彼奴(あいつ)改心(かいしん)出来(でき)ぬと()えますなア』
527音彦(おとひこ)到底(たうてい)駄目(だめ)でせう。528(わたくし)もフサの(くに)北山(きたやま)のウラナイ(けう)本山(ほんざん)へ、529信者(しんじや)となり()()みて、530(うち)様子(やうす)(さぐ)つて()れば、531()れも()れも(めくら)(つんぼ)ばつかり、532桶屋(をけや)さまぢやないが、533輪変(わがへ)吾善(わがへ)(おも)つてる(やつ)ばつかり、534(なか)にも蠑螈別(いもりわけ)だの、535魔我彦(まがひこ)だのと()(やつ)は、536素的(すてき)頑固(ぐわんこ)(わか)らぬ()だ。537高姫(たかひめ)黒姫(くろひめ)()たら、538()でも蒟蒻(こんにやく)でもいく(やつ)ぢやない。539どうかして帰順(きじゆん)さしたいと(おも)ひ、540千辛(せんしん)万苦(ばんく)結果(けつくわ)541黒姫(くろひめ)荷持役(にもちやく)とまで()ぎつけ、542遥々(はるばる)自転倒(おのころ)(じま)まで()いて()て、543(をり)()(もの)(せつ)し、544チヨイチヨイと注意(ちうい)(あた)へたが、545元来(ぐわんらい)精神(せいしん)(じやう)(めくら)(つんぼ)だから、546如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ない。547(わたし)加米彦(かめひこ)さまに()うたのを(きり)として、548此処迄(ここまで)()たのだが、549随分(ずゐぶん)ウラナイ(けう)頑固者(ぐわんこもの)寄合(よりあひ)ですよ』
550加米彦(かめひこ)『フサの(くに)で、551あなたが宣伝(せんでん)をして()られた(とき)552(さけ)()むな(さけ)()むなと(きび)しい()説教(せつけう)553(わたし)はムカついて、554(まへ)サンの横面(よこづら)を、555(なな)()(なぐ)つた。556(その)(とき)にお(まへ)サンは、557(いた)さを(こら)へて、558ニコニコと(わら)ひ、559禁酒(きんしゆ)宣伝歌(せんでんか)(うた)うて御座(ござ)つた、560その熱心(ねつしん)(かん)じ、561三五教(あななひけう)(しん)じて、562村中(むらぢう)(ひろ)めて()つた(ところ)563バラモン(けう)捕手(とりて)(やつ)()嗅付(かぎつ)けられ、564可愛(かはい)妻子(つまこ)()てて、565夜昼(よるひる)なしに、566トントントンと(ひがし)()して駆出(かけだ)し、567(つき)(くに)まで()()れば、568此処(ここ)にもバラモン(けう)勢力(せいりよく)(さか)ンにして、569()(こと)出来(でき)ず、570西蔵(チベツト)()え、571蒙古(もうこ)(わた)り、572(あめ)真名井(まなゐ)横断(よこぎ)つて暴風(ばうふう)()ひ、573(ふね)(しづ)み、574(そこ)藻屑(もくづ)となつたと(おも)ひきや、575()()けば由良(ゆら)(みなと)真裸(まつぱだか)(まま)(よこ)たはり、576()()いて(あぶ)られて()た。577「アーア世界(せかい)(おに)()い、578何処(どこ)何方(どなた)()りませぬが、579生命(いのち)()(たす)(くだ)さいまして有難(ありがた)う」と()(れい)(まを)()れば秋山彦(あきやまひこ)(おん)大将(たいしやう)580生命(いのち)(ひろ)つて(もら)うた恩返(おんがへ)しに、581門番(もんばん)となり、582馬鹿(ばか)()りすまし(つと)めて()たが、583人間(にんげん)()(かは)れば()はるものぢや、584世界(せかい)(ひろ)(やう)なものの(せま)いものぢや。585フサの(くに)で、586あなたを虐待(ぎやくたい)した(わたくし)が、587(また)あの(やう)(やぶ)小屋(ごや)でお()にかからうとは(かみ)ならぬ()(はか)()られぬ(ひと)運命(うんめい)だ…………アヽ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)588三五教(あななひけう)大神(おほかみ)(さま)有難(ありがた)御座(ござ)います、589(かは)(なが)れと(ひと)行末(ゆくすゑ)590何事(なにごと)(みな)貴神(あなた)()自由(じいう)御座(ござ)います。591どうぞ前途(ぜんと)幸福(かうふく)に、592無事(ぶじ)神業(しんげふ)参加(さんか)出来(でき)まする(やう)593特別(とくべつ)()恩寵(おんちやう)()れさせ(たま)はむ(こと)(ひとへ)(こひねが)()(たてまつ)ります』
594悦子姫(よしこひめ)『サアサア(みな)さま、595天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(いた)しませう』
596 一同(いちどう)は『オウ』と(こた)へ、597(こゑ)(すず)しく奏上(そうじやう)(をは)る。
598悦子姫(よしこひめ)『サア(みな)さま、599坊主(ばうず)(きやう)大事(だいじ)600吾々(われわれ)(また)明日(あす)大切(だいじ)だ。601ゆつくりとお(やす)みなされませ。602(わたし)(みな)さまの安眠(あんみん)(まも)(ため)603今晩(こんばん)不寝番(ねずのばん)(つと)めませう』
604鬼虎(おにとら)『ヤア滅相(めつさう)な、605あなたは吾々(われわれ)一同(いちどう)(ため)には(おん)大将(たいしやう)だ。606不寝番(ねずのばん)(この)鬼虎(おにとら)(つかまつ)りませう。607どうぞお(やす)(くだ)さいませ』
608悦子姫(よしこひめ)『さうかナ、609鬼虎(おにとら)さまに今晩(こんばん)()苦労(くらう)にならうか』
610(みの)(まと)うた(まま)611(しづ)かに(よこ)たはる。612一同(いちどう)(おも)(おも)ひに(よこ)になり、613(たちま)鼾声(かんせい)(らい)(ごと)四辺(あたり)空気(くうき)動揺(どうえう)させつつ、614華胥(くわしよ)(くに)()る。615鬼虎(おにとら)不寝番(ねずのばん)退屈(たいくつ)(まぎ)れに雪路(ゆきぢ)をノソノソと(ある)()し、616何時(いつ)()にやら、617竜灯(りうとう)(まつ)根元(ねもと)()き、618ふつと()()き、
619鬼虎『あゝ此処(ここ)此処(ここ)だ、620悦子姫(よしこひめ)霊縛(れいばく)をかけられた古戦場(こせんじやう)だ。621(をり)から火光(くわくわう)(てん)(こが)して竜灯(りうとう)(まつ)目蒐(めが)けて、622ブーンブーンと(うな)りを()てて()つて()(とき)(すさま)じさ、623(いま)(おも)つても竦然(ぞつ)とするワイ。624あれは一体(いつたい)(なん)()だらう。625(ひと)()()鬼火(おにび)では()るまいか。626鬼虎(おにとら)()ると(おも)つて、627鬼火(おにび)(やつ)628握手(あくしゆ)でもせうと(おも)ひよつたのかナア。629霊魂(みたま)もお肉体(にくたい)もあの(とき)はビリビリのブルブルぢやつた。630どうやら(そら)様子(やうす)可笑(をか)しいぞ、631真黒(まつくろ)けの(おに)東北(とうほく)(てん)渦巻(うづま)(はじ)めた。632今度(こんど)こそ()つて()よつた(くらゐ)なら、633(ひと)奮戦(ふんせん)激闘(げきとう)634正体(しやうたい)見届(みとど)けてやらねばなるまい。635()れが宣伝使(せんでんし)肝試(きもだめ)しだ。636オーイ、637オイ、638鬼火(おにび)(やつ)639鬼虎(おにとら)さまの()出張(しゆつちやう)だ、640三五教(あななひけう)(にはか)宣伝使(せんでんし)鬼虎(おにとら)(みこと)此処(ここ)()り、641得体(えたい)()れぬ火玉(ひだま)となつて(あら)はれ()鬼火(おにび)(みこと)対面(たいめん)せむ』
642とお(やま)大将(たいしやう)(おれ)一人(ひとり)気取(きどり)になつて、643(ゆき)(なか)呶鳴(どな)つて()る。644(たちま)一道(いちだう)火光(くわくわう)645(てん)一方(いつぱう)(ひらめ)(はじ)めた。
646鬼虎『ヤア天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)647(うはさ)をすれば(かげ)とやら、648()ぶより(そし)れとは(この)(こと)だ。649鬼虎(おにとら)言霊(ことたま)は、650マアざつと()くの(とほ)りぢや。651一声(いつせい)風雲(ふううん)()(おこ)し、652一音(いちおん)天火(てんび)喚起(よびおこ)す。653()うなつては天晴(あつぱ)一人前(いちにんまへ)のネツトプライス、654チヤキチヤキの宣伝使(せんでんし)ぢや、655イザ()(きた)れ、656天火(てんびの)(みこと)657(この)鬼虎(おにとら)獅子(しし)奮迅(ふんじん)活動振(くわつどうぶ)り……イヤサ(いづ)雄猛(をたけ)()(たけ)御覧(ごらん)()れむ』
658 言下(げんか)東北(とうほく)(てん)(あら)はれたる火光(くわくわう)は、659巨大(きよだい)なる火団(くわだん)となりて、660中空(ちうくう)(かす)め、661四辺(あたり)(てら)し、662竜灯(りうとう)(まつ)目蒐(めが)けて(くだ)()る。
663鬼虎(おにとら)『ヨウ大分(だいぶ)張込(はりこ)みよつたな、664(この)(あひだ)(やつ)(こと)(おも)へば、665余程(よほど)ネオ(てき)だとみえる。666容積(ようせき)(おい)て、667光沢(くわうたく)(おい)天下(てんか)一品(いつぴん)だ……(いな)天上(てんじやう)一品(いつぴん)だ。668サア()れから腹帯(はらおび)でもシツカリ(しめ)て、669捻鉢巻(ねぢはちまき)でも(いた)さうかい、670(はら)(おび)(ゆる)むとまさかの(とき)忍耐(こば)れぬぞよと、671三五教(あななひけう)(かみ)(さま)仰有(おつしや)つた。672サアサア鬼虎(おにとら)さまの肝玉(きもだま)(おほ)きいか、673天火(てんび)(みこと)()(たま)(おほ)きいか、674(おほ)きさ(くら)べぢや』
675 火団(くわだん)竜灯(りうとう)(まつ)中心(ちうしん)に、676(ゑん)(ゑが)き、677地上(ちじやう)五六(ごろく)(しやく)(ところ)まで(くだ)(きた)り、678ブーンブーンと(うな)りを()て、679ジヤイロコンパスの(やう)に、680急速度(きふそくど)(もつ)てクルクルと回転(くわいてん)()たり。
681鬼虎(おにとら)『ヤイヤイ()(たま)682何時(いつ)までも(ちう)にぶら()がつて()るのは、683チツト、684ノンセンスだないか、685()加減(かげん)正体(しやうたい)(あら)はし、686(この)(はう)さまと握手(あくしゆ)をしたらどうだい。687(まへ)(てん)鬼火(おにびの)(みこと)688(おれ)()鬼虎(おにとらの)(みこと)だ、689天地(てんち)合体(がつたい)和合(わがふ)一致(いつち)して、690神業(しんげふ)参加(さんか)せうではないか。691()れからは()()守護(しゆご)になるのだから、692貴様(きさま)のやうな(やつ)時代(じだい)匹敵(ひつてき)した代物(しろもの)だ……イヤ()くて(かな)はぬ人物(じんぶつ)だ。693サアサア(はや)く、694(てん)()との障壁(しやうへき)打破(だは)して、695開放(かいはう)(てき)にならぬかい。696(まへ)(おれ)(たがひ)にハーモニーすれば、697ドンナ(こと)でも天下(てんか)()らざるなしだ』
698 火団(くわだん)(たちま)()()(ごと)く、699姿(すがた)(かく)しけるが、700鬼虎(おにとら)(まへ)忽然(こつぜん)として(あら)はれた白面(はくめん)白衣(びやくい)のうら(わか)美女(びぢよ)701(くれなゐ)(くちびる)(ひら)き、
702『ホヽヽヽヽ、703(まへ)鬼虎(おにとら)さまか、704ようマア無事(ぶじ)()(くだ)さつたナア』
705鬼虎(おにとら)(なん)ぢやア、706()(こと)()い、707(ゆき)()アの(やう)真白(まつしろ)けの美人(びじん)()けよつて、708(ゆき)白鷺(しらさぎ)()りた(やう)に、709(しろ)(ところ)(しろ)(もの)710一寸(ちよつと)見当(けんたう)()れぬ代物(しろもの)だナア。711(おれ)()つて()るとは一体(いつたい)どうした(わけ)だ、712(おれ)(うま)れてから、713(まへ)(やう)美人(びじん)()つた(こと)一度(いちど)()い、714何時(いつ)()()つたのだ』
715『ホヽヽヽヽ、716モウ(わす)れなさつたのかいなア、717(おぼ)えの(わる)此方(こち)(ひと)718(まへ)(いま)から五十六(ごじふろく)(おく)七千万(しちせんまん)(ねん)のツイ(むかし)719(わらは)文珠(もんじゆ)菩薩(ぼさつ)(あら)はれて、720(この)切戸(きりど)(ささ)やかな(いへ)(つく)り、721一人(ひとり)住居(ずまゐ)をして()つた(ところ)へ、722(とし)二八(にはち)優姿(やさすがた)723在原(ありはら)業平(なりひら)朝臣(あそん)(やう)な、724綺麗(きれい)(かほ)をして烏帽子(ゑぼし)直垂(ひたたれ)で、725此処(ここ)()(とほ)(あそ)ばしただらう。726(その)(とき)(わらは)物書(ものか)きをして()つたが、727(なん)だか(かん)ばしき(にほ)ひがすると(おも)つて、728(まど)から(のぞ)けば、729()にある(やう)殿御(とのご)のお姿(すがた)730ホヽヽヽヽおお(はづか)し……(その)一刹那(いちせつな)(たがひ)見合(みあは)(かほ)(かほ)731(まへ)(すず)しい……()(とき)()732何百(なんびやく)(ねん)()つても(わす)られようか、733(わらは)()電波(でんぱ)直射(ちよくしや)(てき)にお(まへ)()(おく)られた。734(まへ)(また)「オウ」とも(なん)とも()はずに、735電波(でんぱ)(かへ)した……。736あの(とき)のローマンスをモウお(まへ)(わす)れたのかいなア。737エーエ()はり(やす)きは殿御(とのご)(こころ)738(さくら)(はな)ぢやないが、739最早(もはや)(まへ)(こころ)(えだ)から、740(はな)(あらし)()たれて()つたのかい……、741アーア残念(ざんねん)や、742口惜(くちを)しや、743男心(をとこごころ)(あき)(そら)744(わらは)(かみ)(ほとけ)心願(しんぐわん)()けて、745やつと(おも)ひの(かな)うた(とき)は、746(とき)ならぬ(かほ)紅葉(もみぢ)()らした(わい)なア、747オホヽヽヽ、748(はづか)しやなア』
749鬼虎(おにとら)『さう()へば、750ソンナ()もせぬでも()いやうだ。751何分(なにぶん)色男(いろをとこ)(うま)れたものだから、752(かど)(ひろ)いので、753スツカリ(こころ)(なか)からお(まへ)記憶(きおく)磨滅(まめつ)して()たのだ。754(かなら)(かなら)気強(きづよ)(をとこ)(うら)めて()れな。755()れでも()()り、756(なみだ)()る。757(もの)(あは)れは(ひやく)承知(しようち)758(せん)合点(がてん)だ。759サア()れから(たがひ)()()(とり)かはし、760()なば諸共(もろとも)761三途(せうづ)(かは)死出(しで)(やま)762(はす)(うてな)一蓮(いちれん)托生(たくしやう)763弥勒(みろく)()までも(たのし)みませう』
764(をんな)『ホヽヽヽ、765()かぬたらしいお(かた)766(たれ)がオ(まへ)(やう)山葵卸(わさびおろし)(やう)剽男(ひよつとこ)野郎(やらう)心中立(しんぢうだて)するものかいナ。767(わらは)(いま)其処(そこ)に、768(てん)から()りて御座(ござ)つた()出神(でのかみ)(さま)にお(はなし)をしとるのだよ。769()()になつて、770(まへ)(はなし)横取(よこど)りをして、771色男(いろをとこ)気取(きど)りになつて……可笑(をか)しいワ、772ホヽヽヽ』
773鬼虎(おにとら)『エーツ(なん)(こと)だ。774(ひと)馬鹿(ばか)にしよるな、775まるで(ゆめ)のやうな(はなし)だワイ』
776(をんな)『ホヽヽヽ、777(ゆめ)になりとも()ひたいと()ふぢやないか。778(わし)(やう)女神(めがみ)(つか)まへて、779スヰートハートせうとは、780身分(みぶん)不相応(ふさうおう)ですよ。781(うま)(うま)()れ、782(うし)(うし)()れ、783(からす)女房(にようばう)はヤツパリ(からす)ぢや。784(この)(ゆき)()つた(しろ)世界(せかい)(からす)()りたよな(くろ)(をとこ)を、785(たれ)がラブする物好(ものずき)があるものか。786自惚(うぬぼれ)程々(ほどほど)になさいませ。787オツホヽヽヽ、788おかしいワ……』
789鬼虎(おにとら)『エー馬鹿(ばか)にするな、790(おれ)(なん)(おも)つて()る。791大江山(おほえやま)鬼雲彦(おにくもひこ)四天王(してんわう)()ばれたる、792剛力(がうりき)無双(むさう)のジヤンヂヤチツクのジヤンジヤ(うま)793鬼虎(おにとら)さまとは(おれ)(こと)だよ。794繊弱(かよわ)(をんな)分際(ぶんざい)として、795暴言(ばうげん)()くにも(ほど)()る。796サアもう量見(りやうけん)ならぬ。797この蠑螺(さざえ)壺焼(つぼやき)()つて(くた)ばれ』
798(ちから)(かぎ)りに、799ウンと(ばか)(なぐ)()けたり。
800悦子姫(よしこひめ)『アイタタタ…(たれ)だイ、801(ひと)休眠(やす)みてるのに、802……(ちから)一杯(いつぱい)(あたま)()ぐるとはあまりぢやありませぬか』
803鬼虎(おにとら)『ヤア、804()みませぬ。805悦子姫(よしこひめ)さまで御座(ござ)いましたか。806ツイ別嬪(べつぴん)翫弄(おもちや)にしられた(ゆめ)()まして、807(ちから)一杯(いつぱい)(なぐ)つたと(おも)へば、808貴女(あなた)御座(ござ)いましたか。809ヤア(まこと)()まぬ(こと)(いた)しました。810真平(まつぴら)御免(ごめん)(くだ)さいませ。811(けつ)して(けつ)して、812悪気(わるぎ)でやつたのぢや御座(ござ)いませぬ』
813悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ、814三五教(あななひけう)這入(はい)つても、815ヤツパリ美人(びじん)(こと)(わす)れられませぬなア』
816鬼虎(おにとら)『ヤアもう申訳(まをしわけ)御座(ござ)いませぬ。817()(なか)(をんな)がなくては、818人間(にんげん)(たね)()えまする。819()出神(でのかみ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)も、820世界(せかい)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)は、821みな(をんな)から(うま)れたのです。
 
822 故郷(ふるさと)穴太(あなを)(すこ)上小口(うへこぐち) ただぼうぼうと()えし(くさむら)
 
823とか(まを)しまして、824(をんな)(くらゐ)825(ゆめ)()ても気分(きぶん)()(もの)()りませぬワ、826アハヽヽヽ』
827鬼彦(おにひこ)『ナヽ()ンぢや、828(よる)夜中(よなか)(おほ)きな(こゑ)(わら)ひよつて、829()加減(かげん)()ぬかイ。830明日(あす)大事(だいじ)ぢやぞ。831貴様(きさま)は、832……今晩(こんばん)(わたくし)不寝番(ねずのばん)(いた)します……なぞと、833怪体(けたい)(こと)をぬかすと(おも)つて()たが、834悦子姫(よしこひめ)さまの綺麗(きれい)(かほ)を、835(あな)()(ほど)(のぞ)いて()よつただらう。836デレ(すけ)だなア』
837鬼虎(おにとら)馬鹿(ばか)()ふない。838(おれ)職務(しよくむ)忠実(ちうじつ)(つと)める(つも)りで()つたのに、839何時(いつ)()にか、840ウトウト睡魔(すゐま)(おそ)はれ、841竜灯松(りうとうまつ)(した)()つて別嬪(べつぴん)()うた(ゆめ)()()つたのぢや。842聖人(せいじん)君子(くんし)でなくてはアンナ愉快(ゆくわい)(ゆめ)()られないぞ。843貴様(きさま)のやうな身魂(みたま)(くも)つた人間(にんげん)は、844到底(たうてい)アンナ(ゆめ)末代(まつだい)一度(いちど)だつて()られるものかい』
845鬼彦(おにひこ)『アツハヽヽヽ、846その(あと)()かして(もら)はうかい。847他人(ひと)恋女(こひをんな)岡惚(をかぼれ)しよつて、848色男(いろをとこ)気取(きど)りになつて、849肱鉄(ひぢてつ)(くら)つた(ゆめ)()よつたのだらう。850大抵(たいてい)ソンナものだよ、851アハヽヽヽ。852(はや)()ぬかい、853()()けたら(また)854テクつかねばならぬぞ』
855 ()(とき)(てん)一方(いつぱう)より、856今度(こんど)真正(しんせい)火団(くわだん)(ひらめ)くよと()()に、857竜灯松(りうとうまつ)目蒐(めが)けて、858(うな)りを()()()(ごと)(くだ)(きた)り、859一同(いちどう)(まへ)にズドンと大音響(だいおんきやう)(はつ)し、860爆発(ばくはつ)したり。861火光(くわくわう)はたちまち、862花火(はなび)(ごと)四方(よも)散乱(さんらん)し、863数百千(すうひやくせん)(ちひ)さき火球(くわきう)となつて、864地上(ちじやう)二三丈(にさんぢやう)(ばか)りの(ところ)を、865(あを)866(あか)867(しろ)868(むらさき)869各種(かくしゆ)(いろ)(へん)じ、870(ぶと)餅搗(もちつき)する(ごと)くに浮動(ふどう)飛散(ひさん)(はじ)めたる。871(その)壮観(さうくわん)一同(いちどう)(たま)()かして見惚(みと)()る。872(あゝ)873(この)火光(くわくわう)何神(なにがみ)変化(へんげ)なりしか。
874大正一一・四・一六 旧三・二〇 松村真澄録)

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