霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 ()(いはや)〔六一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第1篇 雪山幽谷 よみ:せつざんゆうこく
章:第2章 魔の窟 よみ:まのいわや 通し章番号:613
口述日:1922(大正11)年04月21日(旧03月25日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
五人は仕方なく裸のまま雪道を行くが、途中に雪崩にあってお節が雪に埋まってしまった。
鬼虎と鬼彦は、平助、お楢、お節に罵られながらも、懸命にお節を救出しようとする。
ようやくお節を救い出すと、お節は狐に変化して、山道をかけていく。平助とお楢はその後を追って行き、五人もそれに続く。
平助とお楢は嘆き悲しむが、お節の狐が消えたところは、鬼雲彦の命で鬼彦、鬼虎がお節を閉じ込めた魔の岩窟の入口だった。
鬼彦と鬼虎は、岩窟に入っていって本物のお節を救い出そうと平助・お楢に約束して中に入っていく。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:27頁 八幡書店版:第3輯 534頁 修補版: 校定版:29頁 普及版:11頁 初版: ページ備考:
001 平助(へいすけ)親子(おやこ)三人(さんにん)(こゑ)かけられて鬼彦(おにひこ)002鬼虎(おにとら)003(いは)004(かん)005(いち)一同(いちどう)は、006フト()がつけば野中(のなか)(きたな)雪隠(せんち)中央(まんなか)両手(りやうて)(あは)せ、007一生懸命(いつしやうけんめい)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)()たりける。
008鬼彦(おにひこ)『アヽ、009馬鹿(ばか)らしい、010(おほ)きな(かほ)して日中(ひなか)(ある)けた(ざま)ぢやない(わい)011これと()ふも(まつた)大江山(おほえやま)鬼雲彦(おにくもひこ)加担(かたん)し、012所在(あらゆる)(あく)(つく)して()天罰(てんばつ)(むく)うて()たのでせう。013身魂(みたま)借銭(しやくせん)()しと(おも)へば結構(けつこう)だが、014何時(いつ)()にやら五人(ごにん)五人(ごにん)とも(うま)赤子(あかご)のやうに真裸(まつぱだか)になり、015(まわし)(ひと)()たぬ無一物(むいちぶつ)となつて仕舞(しま)ひました。016(をとこ)(はだか)百貫(ひやくくわん)だ、017サアこれから(をとこ)としての真剣(ほんたう)(ちから)(ため)(とき)だ、018精神(せいしん)さへ(しつか)りして()れば少々(せうせう)(ゆき)だつて感応(こた)へるものか、019力士(すまうとり)寒中(かんちう)でも真裸(まつぱだか)だ、020サアサア(みな)さま()きませう』
021鬼彦(おにひこ)(さき)()つ。
022岩公(いはこう)(なん)とマア、023(はだか)行列(ぎやうれつ)()ふものは、024()つともないものだ。025それにつけても鬼彦(おにひこ)叮嚀(ていねい)言葉(ことば)使(つか)ふかと(おも)へば(たちま)(あら)つぽい言葉(ことば)になる、026()ちらにか()めて(もら)はないと吾々(われわれ)応対(おうたい)するについても方針(はうしん)()まらないからなア』
027鬼彦(おにひこ)本守護神(ほんしゆごじん)や、028正守護神(せいしゆごじん)や、029副守護神(ふくしゆごじん)言葉(ことば)混合(こんがふ)して()るから仕方(しかた)がありませぬわいやい。030オイ岩公(いはこう)031(いま)(しばら)辛抱(しんばう)なされませ、032(この)鬼彦(おにひこ)(ちつ)(ばか)精神(せいしん)落着(おちつき)()いで()るからなア』
033()ひつつ大股(おほまた)雪路(ゆきみち)(また)(やま)(ふか)(すす)みゆく。034正月(しやうぐわつ)二十八日(にじふはちにち)太陽(たいやう)晃々(くわうくわう)として(かがや)き、035徐々(そろそろ)(ゆき)()(はじ)め、036真名井ケ嶽(まなゐがだけ)より(ころ)()つる雪崩(なだれ)大塊(おほかたまり)は、037幾十(いくじふ)ともなく囂々(がうがう)(おと)()落下(らくか)する(その)剣呑(けんのん)さ。038(たちま)落下(らくか)(きた)大雪塊(だいせつくわい)押潰(おしつぶ)され、039(せつ)(くび)から(うへ)()して悲鳴(ひめい)をあげ、
040『お(たす)け お(たす)け』
041(こゑ)(かぎ)りに(さけ)()く。
042鬼彦(おにひこ)『オイ鬼虎(おにとら)043去年(きよねん)はお(せつ)さまを(くる)しめた、044(その)(わび)にあの雪塊(せつくわい)()()けて(いのち)(たす)け、045(わび)をしやうぢやないか』
046鬼虎(おにとら)『さうぢや、047(わび)をするのは(いま)ぢや、048(いま)()いてコンナ機会(きくわい)があるものか。049モシモシお(せつ)さま、050(いま)(わたくし)がお(たす)(いた)します、051(しばら)()つて(くだ)さい。052エイエイ(かた)雪塊(ゆきかたまり)だ、053(つめた)(やつ)だなア』
054 お(せつ)(くび)左右(さいう)()り、
055『いゑいゑ仮令(たとへ)()すとも鬼彦(おにひこ)鬼虎(おにとら)のお世話(せわ)にはなりませぬ、056どうぞ(ほか)のお(かた)057()てきて(たす)けて(くだ)さいませ』
058鬼彦(おにひこ)『エヽ、059何処迄(どこまで)執念深(しふねんぶか)いお(せつ)さまだナア、060危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)人嫌(ひとぎらひ)どころぢやあるまい。061サア鬼虎(おにとら)貴様(きさま)二人(ふたり)062(いま)がお(わび)のし(どき)だ、063サア()(ひい)(ふう)()つ』
064雪塊(せつくわい)にむかひ真裸(まつぱだか)(たい)()つける。065さしもの大塊(おほかたまり)()けども()せどもビクともしない。
066 平助(へいすけ)(なら)()(ごゑ)()(しぼ)り、
067平助(へいすけ)『アヽ、068私達(わたくしたち)(ほど)因果(いんぐわ)なものが三千世界(さんぜんせかい)(また)とあらうか、069折角(せつかく)機嫌(きげん)のよい姿(すがた)()てやつと蘇生(そせい)(おも)ひをしたと(おも)へば、070一日(いちにち)()つや()たずの(あひだ)に、071(また)もや不慮(ふりよ)災難(さいなん)()うして(これ)(いき)()られう。072オイお(なら)073(まへ)(わし)(これ)から(むすめ)(とも)十万億土(じふまんおくど)(たび)()かけませう。074サア用意(ようい)ぢや、075よいか』
076(なら)『ハイハイ(わたくし)(をんな)(はし)くれ、077親子(おやこ)三人(さんにん)(この)()(いさぎよ)(いのち)(はた)し、078神界(しんかい)とやらに(まゐ)りませう。079コレお(せつ)080(ばば)一足先(ひとあしさき)()(ほど)にどうぞ(ゆつ)くり(あと)から()(くだ)さい、081六道(ろくだう)(つじ)(ばば)(ぢぢ)とが()つて()ます、082オンオンオン』
083平助(へいすけ)『これやこれやお(なら)084何事(なにごと)運命(うんめい)(つな)(あやつ)られて()るのだ。085(この)()(およ)んで(なみだ)禁物(きんもつ)だ、086サア(いさぎよ)く』
087()ふより(はや)懐剣(くわいけん)()()()せず、088(われ)(わが)(はら)にぐつと()()てむとする。089鬼彦(おにひこ)(おどろ)いて平助(へいすけ)()(うで)(しつか)(にぎ)り、
090鬼彦(おにひこ)『ヤア、091(ぢい)さま()つた()つた、092()ぬのは(はや)いぞ、093()んで花実(はなみ)()くものか、094(この)()安心(あんしん)をせずにどうして()()安心(あんしん)出来(でき)ると(おも)ふか、095マアマア()つた()つた、096短気(たんき)損気(そんき)だ』
097(なら)平助(へいすけ)どのさらば』
098(また)もや短刀(たんたう)()くより(はや)(のど)()()さむとする一刹那(いちせつな)099鬼虎(おにとら)(われ)(わす)れてお(なら)()(うで)グツと(にぎ)り、
100鬼虎(おにとら)『お()アさま()つた()つた』
101(なら)『ヤア(たれ)かと(おも)へば大江山(おほえやま)鬼雲彦(おにくもひこ)乾児(こぶん)であつた鬼虎(おにとら)だな、102エヽ(けが)らはしい、103(かま)つて(くだ)さるな、104(ばば)(いのち)(ばば)()てるのだ。105(まへ)厘毛(りんまう)損害(そんがい)()けるのでない、106()つて()いて(くだ)さい、107()らぬお世話(せわ)だ、108あた(けが)らはしい、109(まへ)のやうな悪人(あくにん)(たす)けられて()うしてノメノメ(この)()(いき)()られるものか、110エヽ()つて()いて(くだ)さい』
111 鬼虎(おにとら)112涙声(なみだごゑ)になつて、
113『お(なら)さま()うしても(わたくし)(つみ)(ゆる)して(くだ)さいませぬか』
114(なら)(きま)つた(こと)だ、115()んでも(ゆる)しやせぬ、116仮令(たとへ)ミロクの()()てもお(まへ)(うらみ)(わす)れるものか』
117鬼虎(おにとら)『お(なら)さま、118ソンナラ貴女(あなた)()にかけて、119(わたくし)(おも)存分(ぞんぶん)(なぶ)(ごろ)しにして(くだ)さい。120さうしたら貴女(あなた)(うらみ)(ちつ)とは()れませう、121さうして(わたくし)(つみ)(わす)れて(くだ)さいませ』
122 平助(へいすけ)大声(おほごゑ)()きながら、
123『コラコラお(なら)124もう()加減(かげん)愚痴(ぐち)()うて()かぬかい、125(これ)(だけ)前非(ぜんぴ)()(ぜん)(たましひ)()(かへ)つた鬼彦(おにひこ)126鬼虎(おにとら)両人(りやうにん)127(この)(うへ)愚痴(ぐち)(こぼ)すと(かへ)つて此方(こちら)(ふか)(つみ)になるぞ。128(それ)よりも(いさぎよ)(むすめ)(とも)神界(しんかい)(たび)(いた)さうぢやないか、129娑婆(しやば)執着(しふちやく)(ちつ)とも(のこ)さぬやうにして()れ、130アヽ鬼彦(おにひこ)131鬼虎(おにとら)両人(りやうにん)さま、132貴方方(あなたがた)真心(まごころ)頑固(ぐわんこ)一辺(いつぺん)平助(へいすけ)骨身(ほねみ)(こた)へました。133(けつ)して(けつ)してもう(この)(うへ)貴方(あなた)(うら)みませぬ、134どうぞ()(はな)して(くだ)さい』
135 鬼彦(おにひこ)『どうしてどうして貴方方(あなたがた)見殺(みごろ)しにしてなるものか、136短気(たんき)(おこ)さずに、137一度(いちど)(おも)(なほ)して(くだ)さい、138オイ鬼虎(おにとら)139(なら)さまの(かいな)(はな)すぢやないぞ、140(しつか)(つか)まへて()()れ、141これやこれや岩公(いはこう)142(かん)143(いち)144(はや)くお(せつ)さまを(すく)()さぬか、145(なに)愚図々々(ぐづぐづ)(いた)して()るのぢや』
146岩公(いはこう)最前(さいぜん)から吾々(われわれ)三人(さんにん)(この)(とほ)雪塊(せつくわい)()けに(つく)して()るのが(わか)らぬか、147サアサアお(せつ)さま、148もう大分(だいぶん)(かる)くなつたらう、149一寸(ちよつと)(うご)いて()(くだ)さい』
150(せつ)『ハイハイ有難(ありがた)御座(ござ)います、151(いき)()れさうにありましたが、152追々(おひおひ)とお蔭様(かげさま)(らく)になつて()ました、153(すこ)()()けて(くだ)されば大丈夫(だいぢやうぶ)(たす)かりませう、154モシモシお(ぢい)さま、155()アさま、156どうぞ(しつか)りして(くだ)さいませ、157(せつ)はどうやら(たす)けて(もら)へさうで御座(ござ)います』
158 平助(へいすけ)159(なら)一時(いちじ)に、
160『ヤアヤアお(せつ)(たす)かるか、161それは(なに)よりぢや、162(まへ)(この)()(いき)()るのなれば、163(ぢぢ)(ばば)は、164どうして(この)()()つてなるものか、165もう(みな)さま安心(あんしん)して(くだ)さい、166()ねと仰有(おつしや)つても()ぬものぢやない、167(まへ)さまも鬼彦(おにひこ)168鬼虎(おにとら)()つて随分(ずゐぶん)悪人(あくにん)だつたが、169()そこまで改心(かいしん)出来(でき)た。170サアサア神様(かみさま)にお(れい)(まをし)ませう』
171岩公(いはこう)『モシモシ、172(ぢい)さま、173()アさま、174それや結構(けつこう)だがまだ(この)雪塊(せつくわい)容易(ようい)にとれないのだ、175(まへ)さま()祝詞(のりと)()げて(くだ)さい、176これやこれや鬼彦(おにひこ)177鬼虎(おにとら)178もはやお(ぢい)さまお(ばば)アさまの(はう)安心(あんしん)だ、179此方(こちら)加勢(かせい)加勢(かせい)だ』
180『おうさうだ』
181鬼彦(おにひこ)182鬼虎(おにとら)雪塊(せつくわい)()けに全力(ぜんりよく)(つく)して()る。183(やうや)くにして雪塊(せつくわい)()()けられ、184(せつ)はむくむくと()(あが)り、185(いや)らしき(わら)(ごゑ)186(した)四五寸(しごすん)(ばか)りノロノロと()し、
187(せつ)『キヤアツ キヤアツ キヤアツ キヤハヽヽヽ』
188(しり)()()くり、189トントントンと山奥(やまおく)さして姿(すがた)(かく)したりける。
190 五人(ごにん)(をとこ)(きも)(つぶ)(こし)()かさむ(ばか)りに、191(いや)らしさと(さむ)さに(ふる)うて()る。192平助(へいすけ)(なら)二人(ふたり)皺嗄声(しわがれごゑ)張上(はりあ)げながら、
193『オイお(せつ)194オーイオーイ、195(ぢぢ)(ばば)とは此処(ここ)()るぞ、196()つて()()つて()れ』
197呶鳴(どな)りながら、198雪崩(なだれ)落下(らくか)する谷道(たにみち)危険(きけん)(わす)れて(つゑ)(ちから)()けつ(まろ)びつ(のぼ)()く。199五人(ごにん)裸男(はだかをとこ)二人(ふたり)(あと)(した)ひ、
200(ぢい)さま(ばあ)さま(あぶ)ない(あぶ)ない、201()つた()つた、202(せつ)さまと()えたのは化物(ばけもの)だつた、203(いのち)あつての物種(ものだね)だ、204(あぶ)ない(あぶ)ない』
205(こゑ)(かぎ)りに(あと)から()つかける。206(ぢい)サンと(ばあ)サンは一生懸命(いつしやうけんめい)無我夢中(むがむちう)になつてお(せつ)(あと)()つて()く。
207 お(せつ)(ある)谷川(たにがは)左右(さいう)(ましら)(ごと)()()ひながら、208とある()(あた)つた岩石(がんせき)(まへ)にピタリと(たふ)れ、209(その)(まま)姿(すがた)白煙(しらけぶり)210雪解(ゆきど)けの(しづく)(おと)(あめ)(ごと)(こずゑ)よりポトリポトリと()(くだ)る。211平助(へいすけ)夫婦(ふうふ)はハツと(ばか)(この)()()(たふ)れ、212前後(ぜんご)()らず()(しづ)む。213五人(ごにん)裸男(はだかをとこ)(この)()(あら)はれ、214気絶(きぜつ)して()平助(へいすけ)(なら)其辺(あたり)(ゆき)(くち)(ふく)ませ、215一生懸命(いつしやうけんめい)神霊(しんれい)注射(ちうしや)(おこな)ひければ、216老夫婦(らうふうふ)(やうや)くウンと(いき)()(かへ)し、217(また)もや『お(せつ)(せつ)』と()(さけ)ぶ。
218鬼虎(おにとら)『ヤア此処(ここ)()巌窟(いはや)だ、219去年(きよねん)今頃(いまごろ)だつたな、220鬼雲彦(おにくもひこ)(めい)によつて(この)巌窟(いはや)にお(せつ)さまを()()め、221(かた)出入(しゆつにふ)出来(でき)ないやうにして()いたのは(おれ)だ。222(その)()鬼雲彦(おにくもひこ)大将(たいしやう)チヨコチヨコとやつて()(はず)だつたが、223(せつ)(こと)念頭(ねんとう)から遺失(ゐしつ)して()たのか、224(いま)一回(いつくわい)(この)(いは)接触(いぢ)つた痕跡(こんせき)がない、225一年(いちねん)(くらゐ)食料(しよくれう)として勝栗(かちぐり)沢山(たくさん)()れてあれば滅多(めつた)飢死(うゑじに)して()(はず)()からうし、226(みづ)天然(てんねん)()()()るから寿命(じゆみやう)さへあれば(いき)()るのだらう、227最前(さいぜん)のお(せつ)(おも)うたのは(なん)でも妖怪変化(えうくわいへんげ)であつた。228サアサア(ぢい)さま()アさま、229(この)鬼彦(おにひこ)230鬼虎(おにとら)改心(かいしん)証拠(しようこ)真実(ほんと)のお(せつ)さまに()はして()げやう。231何卒(どうぞ)これで日頃(ひごろ)(うらみ)()らして(くだ)さい』
232平助(へいすけ)真実(ほんと)(むすめ)()はして(くだ)さるか、233(むすめ)さへ無事(ぶじ)(いき)()れば、234今迄(いままで)(うらみ)(なに)もすつかり(わす)れて(しま)ひませう、235ナアお(なら)236さうぢやないか』
237(なら)『どうぞ(はや)(たす)けて(くだ)さい、238真実(ほんと)(むすめ)()たい(わい)なア、239オーンオーンオーン』
240()きそそる。241鬼虎(おにとら)242鬼彦(おにひこ)四辺(あたり)()ごろの(いし)(ひろ)ひ、243()()()つと合図(あひづ)しながら岩壁(がんぺき)一度(いちど)(ちから)(かぎ)(なぐ)つた。244(いは)()(うち)(ひら)いて(なか)には真暗(まつくら)(みち)がついて()る。
245鬼彦(おにひこ)『サア(ひら)きました、246(たれ)這入(はい)らないと()えて随分(ずゐぶん)エライ蜘蛛(くも)()だ、247オイ岩公(いはこう)248(その)(へん)()(えだ)()つて()い、249さうして貴様(きさま)蜘蛛(くも)()(ばら)ひだ』
250岩公(いはこう)(めう)巌窟(がんくつ)もあつたものだ、251よし()た』
252(かたはら)常磐木(ときはぎ)(えだ)()()り、253左右左(さいうさ)()りながら(くら)巌窟(がんくつ)(おく)目蒐(めが)けて(すす)()る。254鬼虎(おにとら)(あと)()(かへ)り、
255鬼虎(おにとら)『お()イさま、256()アさま、257巌窟(がんくつ)(なか)大変(たいへん)危険(きけん)御座(ござ)います、258(しばら)此処(ここ)()つて()(くだ)さい、259(せつ)さまを立派(りつぱ)にお()(まをし)(かへ)つて()ます』
260(なら)『ハイハイ有難(ありがた)う、261何卒(どうぞ)一時(いちじ)(はや)()はして(くだ)され』
262平助(へいすけ)何卒(どうぞ)(みな)さま(たの)みます』
263鬼虎(おにとら)承知(しようち)しました』
264段々(だんだん)(おく)(すす)みつつ鬼彦(おにひこ)(むか)(ちひ)さい(こゑ)で、
265鬼虎(おにとら)『オイ鬼彦(おにひこ)266此処(ここ)押込(おしこ)めてからもう一年(いちねん)になるが、267鬼雲彦(おにくもひこ)大将(たいしやう)(その)()一度(いちど)此処(ここ)()()ないやうだ、268万々一(まんまんいち)(せつ)さまが()んで(しま)つて()つたら、269老人(らうじん)夫婦(ふうふ)にどうして()(わけ)をしたら()からうなア、270屹度(きつと)夫婦(ふうふ)(また)(のど)()(さわ)ぎをやるに(きま)つて()る。271ハテ心配(しんぱい)(こと)ぢやないか』
272鬼彦(おにひこ)『ナニ心配(しんぱい)するにや(およ)ぶまい、273屹度(きつと)神様(かみさま)(まも)つて()(くだ)さるだらう。274ソンナ()らざる取越苦労(とりこしくらう)をするよりも、275一刻(いつこく)(はや)前進(ぜんしん)して安否(あんぴ)(さぐ)ることにしようぢやないか。276もし万々一(まんまんいち)(せつ)さまが()んで()たら、277吾々(われわれ)罪滅(つみほろぼ)しに(いさぎよ)割腹(かつぷく)したらよいぢやないか』
278岩公(いはこう)『オイ勘公(かんこう)279櫟公(いちこう)280(なん)だか今日(けふ)怪体(けたい)()ぢやないか、281彼方(あちら)にも此方(こちら)にも()ぬだの割腹(かつぷく)だの国替(くにがへ)だのと縁起(えんぎ)(わる)(こと)(ばか)()ひよつて、282俺達(おれたち)(なん)だか大変(たいへん)()にかかり、283(あな)へでも這入(はい)()いやうになつて仕舞(しま)つた』
284勘公(かんこう)(すで)吾々(われわれ)(あな)這入(はい)つて()るぢやないか、285穴阿呆(あなあはう)らしい』
286一同(いちどう)『アハヽヽヽ、287(むか)ふに()かるい(かげ)()えるぞ。288大方(おほかた)彼処(あすこ)(あた)りだらう、289ナア鬼彦(おにひこ)290あの(へん)がお(せつ)さまの(かく)してある(ところ)でせう』
291鬼彦(おにひこ)『ウンさうだ、292もう其処(そこ)だ、293(いそ)(いそ)げ』
294一行(いつかう)五人(ごにん)岩彦(いはひこ)先頭(せんとう)巌穴(いはあな)(かす)かな(ひかり)目当(めあ)てに(すす)()く。
295大正一一・四・二一 旧三・二五 加藤明子録)