霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 枯尾花(かれをばな)〔六一八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第2篇 千態万様 よみ:せんたいばんよう
章:第7章 第17巻 よみ:かれおばな 通し章番号:618
口述日:1922(大正11)年04月22日(旧03月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
話は戻って、黒姫は高姫の肝いりで、フサの国の高山彦を婿に取る事になった。黒姫は魔窟ヶ原の隠れ家で、手下に婚礼の用意をさせながら、婿が来るのを今や遅しと待っている。
高山彦一行がフサの国から天の磐船に乗って到着し、黒姫の手下の夏彦と常彦が迎えに出た。
婚礼が始まり、黒姫と高山彦を祝歌を歌いながら舞い踊った。夏彦も余興に滑稽な歌を歌って、宴は乱痴気騒ぎのうちに夜を明かした。
明けて正月二十七日、黒姫は真名井ヶ原の瑞の宝座を占領しようと図り、高山彦が連れて来た軍勢を合わせて聖地に進撃した。
正月二十八日の大攻撃を開始したが、青彦、加米彦の言霊にさんざんに散らされて敗走し、魔窟ヶ原に逃げ帰って次の計略に着手していた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1707
愛善世界社版:95頁 八幡書店版:第3輯 559頁 修補版: 校定版:99頁 普及版:42頁 初版: ページ備考:
001味方(みかた)人数(にんずう)大江山(おほえやま)
002魔窟ケ原(まくつがはら)穿(うが)ちたる
003岩窟(いはや)(なか)黒姫(くろひめ)
004五十路(いそぢ)(さか)()(なが)
005()さへ()ちたる(あき)()
006(こずゑ)(さび)しき(かへ)()
007(この)()にアキの(しも)(かみ)
008コテコテ()つた黒漆(くろうるし)
009俄作(にはかづく)りの夕鴉(ゆふがらす)
010カワイカワイと皺枯(しはが)れた
011(こゑ)()()げてウラナイの
012(みち)(つた)ふる空元気(からげんき)
013天狗(てんぐ)(はな)高山彦(たかやまひこ)
014三世(さんぜ)(つま)(さだ)めてゆ
015流石(さすが)(をんな)(はづ)かしげに
016(かほ)紅葉(もみぢ)()らしつつ
017黒地(くろぢ)白粉(おしろい)ペツタリと
018生地(きぢ)(かく)した曲津面(まがつづら)
019(くち)(やかま)しき(つばくろ)
020(あさ)(ゆふ)なにチユウチユウと
021(すずめ)(ひやく)まで牡鳥(をんどり)
022(わす)れかねてか婿(むこ)()しと
023あこがれ()たる片相手(かたあひて)
024(ほし)(いただき)(つき)()
025()にち毎日(まいにち)山坂(やまさか)
026()(まは)りつつ(かよ)()
027(をとこ)(かず)(かぎ)りなく
028(たで)()(むし)()()きと
029(えぐ)(ばば)アの皺面(しわづら)
030(のろ)けて()()浅間(あさま)しさ
031(ひろ)(やう)でも(せま)いは世間(せけん)
032(いろ)真黒(まつくろ)黒姫(くろひめ)
033(こころ)(かな)うた高山彦(たかやまひこ)
034タカか(とんび)()らね(ども)
035(からす)婿(むこ)(えら)まれて
036()しき()()大江山(おほえやま)
037魔窟ケ原(まくつがはら)(あな)(のぞ)
038(おく)(おく)へと(すす)()
039(いつ)コク()コクと(せま)()
040三国一(さんごくいち)花婿(はなむこ)
041()つた(いは)ひの黒姫(くろひめ)
042(うれ)しき便(たよ)りを菊若(きくわか)
043(こころ)頑固(ぐわんこ)岩高(いはたか)
044(ひと)(おやぢ)寅若(とらわか)
045(なさけ)容赦(ようしや)夏彦(なつひこ)
046富彦(とみひこ)常彦(つねひこ)諸共(もろとも)
047()めよ(さわ)げの大酒宴(だいしゆえん)
048岩屋(いはや)(なか)(はち)()
049一度(いちど)(やぶ)れし(ごと)くなり。
050 黒姫(くろひめ)皺苦茶(しわくちや)だらけの垢黒(あかぐろ)(かほ)に、051(しろ)(もの)をコテコテに()り、052鉄倉(かなぐら)上塗(うはぬり)みた(やう)な、053真白(まつしろ)厚化粧(あつげしやう)054白髪(しらが)(からす)濡羽色(ぬればいろ)()め、055(うめ)(はな)()らした派手(はで)襠衣(うちかけ)羽織(はお)り、056三国一(さんごくいち)婿(むこ)(きた)るを、057(いま)(おそ)しと、058(ふと)(みじか)首筋(くびすぢ)細長(ほそなが)()ばして、059蜥蜴(とかげ)天井(てんじやう)(のぞ)いた(やう)なスタイルで、060入口(いりぐち)岩窟(がんくつ)(のぞ)()み、061(とし)()つた(しはが)(ごゑ)(いろ)()け、062ワザと音曲(おんぎよく)()れた(わか)(こゑ)()し、
063『コレコレ夏彦(なつひこ)064常彦(つねひこ)065まだお(きやく)さまは()えぬかな。066(まへ)御苦労(ごくらう)だが、067一寸(ちよつと)そこまで(むか)へに()つて()(くだ)さらぬか。068由良(ゆら)(みなと)までは、069フサの(くに)から、070(あま)鳥船(とりふね)()つてお()しなのだから、071轟々(ぐわうぐわう)(おと)(きこ)えたら、072それが高山彦(たかやまひこ)さまの一行(いつかう)だ。073(そら)()をつけ足許(あしもと)にも()()けて()()(くだ)さい』
074夏彦(なつひこ)『ハイハイ承知(しようち)(いた)しました。075遠方(ゑんぱう)(こと)とは()(なが)ら、076随分(ずゐぶん)(ひま)()(こと)ですなア。077サア常彦(つねひこ)078(むか)へに()つて()うぢやないか』
079常彦(つねひこ)黒姫(くろひめ)さま、080今日(けふ)はお芽出度(めでた)う。081ソンナラ()()ませうか』
082黒姫(くろひめ)(なん)ぢや常彦(つねひこ)083(あらた)まつて、084芽出度(めでた)うもあつたものか。085あまり年寄(としよ)りが婿(むこ)(もら)うと(おも)うて(ひや)やかすものぢやない。086サアサア トツトと()()なさい』
087常彦(つねひこ)『ソンナラ、088(なん)()つて挨拶(あいさつ)をしたら()いのですか。089今日(けふ)芽出(めで)たいのぢやありませぬか』
090黒姫(くろひめ)芽出(めで)たいと()へば芽出(めで)たいのぢやが、091ナニもう(わし)は、092五十(ごじふ)(さか)()えて、093(たれ)(この)みて婿(むこ)(もら)うたりするものか。094これと()ふのも、095神様(かみさま)(をしへ)(ひろ)げる(ため)に、096(この)黒姫(くろひめ)(からだ)犠牲(ぎせい)にして、097天下(てんか)国家(こくか)(ため)(つく)すのだよ。098芽出(めで)たうと()(かは)りに御苦労様(ごくらうさま)()ひなされ』
099常彦(つねひこ)『これはこれは五苦労(ごくらう)四苦労(しくらう)100真黒々助(まつくろくろすけ)黒姫(くろひめ)(さま)101十苦労(とくらう)さまで御座(ござ)います』
102黒姫(くろひめ)『エーエーお(まへ)(この)黒姫(くろひめ)馬鹿(ばか)にするのかい。103十苦労(とくらう)()(こと)があるものか。104あまりヒヨトくりなさるな』
105常彦(つねひこ)『イエ滅相(めつさう)な、106あなたも天下(てんか)(ため)犠牲(ぎせい)御成(おな)りなさるのは五苦労(ごくらう)さまぢや。107(また)(この)常彦(つねひこ)三国一(さんごくいち)婿(むこ)さまを、108()()(くれ)になつてから、109(ほそ)山路(やまぢ)(むか)ひに()くのも、110ヤツパリ五苦労(ごくらう)さまぢや。111(まへ)さまの五苦労(ごくらう)(わたくし)五苦労(ごくらう)と、112日韓(にちかん)併合(へいがふ)して十苦労様(とくらうさま)()うたのですよ。113アハヽヽヽ』
114夏彦(なつひこ)常彦(つねひこ)115()かうかい』
116と、117岩穴(いはあな)をニユツと(のぞ)き、
118『ヤア(しめ)(しめ)た、119モウ()かいでも()い』
120常彦(つねひこ)()かでも()いとは、121ソラ(なん)だい、122高山彦(たかやまひこ)さまが()えたのかい』
123夏彦(なつひこ)『きまつた(こと)だ。124モシモシ黒姫(くろひめ)さま、125(よろこ)びなさいませ。126(えら)(いきほひ)沢山(たくさん)家来(けらい)()れて()えましたよ』
127黒姫(くろひめ)『それはそれは御苦労(ごくらう)(こと)ぢや。128どうぞ(あな)(くち)まで(むか)ひに()(くだ)され。129あまり這入(はい)(ぐち)(ちひ)さいので、130行過(ゆきすご)されてはお(こま)りだからなア』
131 夏彦(なつひこ)(かた)から(うへ)をニユツと()し、132高山彦(たかやまひこ)一行(いつかう)近付(ちかづ)(きた)るを()()たる。
133高山彦(たかやまひこ)此処(ここ)黒姫(くろひめ)住家(すみか)(きこ)えたる魔窟ケ原(まくつがはら)ぢやないか。134モウ(たれ)(むか)ひに()()さうなものだに、135(なに)をして()るのだらうな』
136虎若(とらわか)『ヤア御大将様(おんたいしやうさま)137(この)魔窟ケ原(まくつがはら)随分(ずゐぶん)(ひろ)(ところ)()きました。138(いづ)先方(むかう)から()つて()られませうが、139何分(なにぶん)予定(よてい)とは(はや)()いたものですから、140先方(むかう)如才(じよさい)なく準備(じゆんび)はやつて()られませうが、141つい(おそ)くなつたのでせう。142御馳走(ごちそう)(ひと)(こしら)へるにも()()不便(ふべん)土地(とち)143何事(なにごと)三五教(あななひけう)ぢやないが、144見直(みなほ)聞直(ききなほ)し、145御機嫌(ごきげん)(なほ)してモウ一息(ひといき)(すす)(くだ)さいませ』
146高山彦(たかやまひこ)『それはさうだが、147如何(いか)黒姫(くろひめ)148部下(ぶか)()いと()つても、149二十人(にじふにん)三十人(さんじふにん)()りさうなものだ。150三人(さんにん)五人(ごにん)(むか)ひに(よこ)したつて()いぢやないか。151縁談(えんだん)(めし)()()にも(ひえ)ると()(こと)()る。152あまり(さむ)いので、153(ひえ)たのぢやあるまいか、154ナア虎若(とらわか)
155虎若(とらわか)『トラ、156ワカりませぬ。157何分(なにぶん)(この)(とほ)り、158あちらにも此方(こちら)にも(ゆき)(たま)つて()りますから随分(ずゐぶん)(ひえ)(こと)でせう。159(わたくし)(なん)だか(からだ)(さむ)くなつて()た。160フサの(くに)()(とき)随分(ずゐぶん)(あたた)かであつたが、161空中(くうちう)航行(かうかう)した(とき)(さむ)さ、162それに(また)(この)自転倒島(おのころじま)()いてからの(さむ)さと()つたら、163骨身(ほねみ)(こた)えますワ』
164 高山彦(たかやまひこ)苦虫(にがむし)()つた(やう)不機嫌(ふきげん)(かほ)をし(なが)ら、165爪先(つまさき)(あが)りの雪路(ゆきみち)(すす)()る。166(ゆき)一面(いちめん)(つも)つた()(なか)から、167夏彦(なつひこ)(くび)(だけ)()して、
168『コレハコレハ高山彦(たかやまひこ)のお()で、169サアサアお這入(はい)(くだ)さいませ。170黒姫(くろひめ)さまが大変(たいへん)にお待兼(まちかね)御座(ござ)います。171あなたも遥々(はるばる)国家(こくか)(ため)犠牲(ぎせい)になつて(くだ)さいまして有難(ありがた)御座(ござ)います』
172虎若(とらわか)『ヤア(なん)だ、173コンナ(ところ)(くび)(ひと)()ちて、174(もの)()つて()やがる。175……ハヽア此奴(こいつ)ア、176大江山(おほえやま)化州(ばけしう)だな……オイ化州(ばけしう)177這入(はい)れと()つても、178蚯蚓(みみづ)ぢやあるまいし、179何処(どこ)から這入(はい)るのぢやい。180入口(いりぐち)()いぢやないか。181貴様(きさま)(からだ)如何(どう)したのぢや。182松露(しようろ)(なん)ぞの(やう)(あたま)ばつかりで(いき)てる(はず)もあるまいし、183怪体(けつたい)代物(しろもの)ぢやなア』
184夏彦(なつひこ)黒姫(くろひめ)さまは高山彦(たかやまひこ)さまに、185(のろ)(あそ)ばして(くび)(たけ)(はま)つて御座(ござ)るが、186(この)夏彦(なつひこ)(くび)(そと)()して、187(からだ)(だけ)はまつて御座(ござ)るのだ。188サアサア不都合(ふつがふ)這入口(はいりぐち)(やう)だが、189(なか)立派(りつぱ)御座敷(おざしき)190用心(ようじん)(ため)にワザと入口(いりぐち)(ほそ)うしてある。191高山彦(たかやまひこ)さま、192どうぞお這入(はい)(くだ)さいませ。193一人(ひとり)づつ這入(はい)つて(もら)へば、194何程(なにほど)(おほ)きな(をとこ)でも()(かか)らずに這入(はい)れます』
195()ふより(はや)夏彦(なつひこ)窟内(くつない)姿(すがた)(かく)しける。
196虎若(とらわか)『ヤア(めう)だ。197()(わり)とは(おほ)きな(ほら)()いて()る。198ヤア階段(きざはし)もついて()る。199サア高山彦(たかやまひこ)さま、200御案内(ごあんない)(いた)しませう』
201 虎若(とらわか)先頭(せんとう)に、202高山彦(たかやまひこ)数多(あまた)従者(じゆうしや)(とも)に、203ゾロゾロと岩窟(いはや)(なか)(くぐ)()る。204黒姫(くろひめ)(この)(とき)(すで)(おく)()(しの)()み、205(かがみ)(まへ)(くち)()けたり、206()()いたり、207(はな)(つま)ンで()たり、208(かほ)整理(せいり)余念(よねん)なかりける。209夏彦(なつひこ)(この)()(はし)(きた)り、
210『モシモシ、211高山彦(たかやまひこ)御大将(おんたいしやう)()えました。212どうぞ(はや)此方(こちら)へお()(くだ)さいませ』
213黒姫(くろひめ)『エー()()かぬ(こと)ぢやなア。214(なん)とか()つて、215(ちや)でも()して、216(くち)()(やす)まして()くのだよ。217それまでに化粧(けしやう)をチヤンと(ととの)へて、218(かた)ばかりの祝言(しうげん)をせなくてはならぬ。219菊若(きくわか)220岩高(いはたか)(なに)をして()るのだ。221料理(れうり)用意(ようい)出来(でき)たか。222(ちや)でも()げて世間話(せけんばなし)でもして()つて(もら)ふのだよ』
223夏彦(なつひこ)今日(けふ)芽出度(めでた)婚礼(こんれい)224それにお(ちや)をあげては、225茶々無茶苦(ちやちやむちやく)になりやしませぬか。226今日(けふ)はお(みづ)()げたらどうでせう』
227黒姫(くろひめ)『エー(ちや)(ちや)()ひなさるな。228(ちや)()いのだ。229(みづ)をあげると水臭(みづくさ)くなると()かぬから……』
230夏彦(なつひこ)『ハヽア、231(ちや)(ちや)アと(ちや)ツつく(つも)りで、232(ちや)()ませと仰有(おつしや)るのかなア……(ちや)233承知(しようち)(いた)しました』
234黒姫(くろひめ)『エーグヅグヅ()はずに、235あちらへ()つて、236高山彦(たかやまひこ)(さま)御一同(ごいちどう)のお相手(あひて)になるのだよ。237こつちの準備(じゆんび)出来(でき)たら、238祝言(しうげん)(さかづき)にかかる(やう)にして()きなさい。239……アーア(ひと)使(つか)へば()使(つか)ふとは、240()()つたものだ。241(をとこ)ばつかりで、242女手(をんなで)()いのも……ア(こま)つたものだ。243(きよ)サン、244(てる)サンと()二人(ふたり)(わか)(をんな)()つたけれども、245これは真名井ケ原(まなゐがはら)(かく)()()いてあるなり、246()()(とき)(をんな)()らぬと便利(べんり)(わる)い。247(さけ)(しやく)(ひと)つするにも、248(をとこ)ばつかりでは(かど)ばつて面白(おもしろ)くない。249(しか)(なが)(きよ)サン、250(てる)サンは十人(じふにん)(なみ)(すぐ)れた(うつく)しい(をんな)251折角(せつかく)(もら)うた婿(むこ)どのを横取(よこどり)しられちや大変(たいへん)だと(おも)つて、252()れて()なかつたが、253安心(あんしん)(かは)りには便利(べんり)(わる)いワイ。254サアサアこれで(わか)うなつて()た。255化粧(けしやう)()ふものは(えら)いものだナア。256(むかし)から(をんな)化物(ばけもの)だと()ふが……われと(わが)()見惚(みと)れる(やう)になつた。257如何(いか)色男(いろをとこ)高山彦(たかやまひこ)でも、258(この)姿(すがた)()たら()()くであらう。259現在(げんざい)(をんな)自分(じぶん)でさへも、260自分(じぶん)姿(すがた)見惚(みと)れるのだもの……ヤツパリ霊魂(みたま)()いと()える。261アーア惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)262惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)263………コレコレ常彦(つねひこ)……オツトドツコイ、264コンナ(とし)()つた婆声(ばばごゑ)()しては愛想(あいさう)()かされてはならぬ。265端唄(はうた)浄瑠璃(じやうるり)(きた)へて()いた十七八(じふしちはち)(むすめ)(こゑ)使(つか)はねばなるまい、266……コレコレ夏彦(なつひこ)267用意(ようい)出来(でき)たよ。268これ夏彦(なつひこ)269一寸(ちよつと)此方(こちら)へお()し』
270夏彦(なつひこ)『エツ、271(なん)だ、272(めう)(こゑ)がするぞ。273黒姫(くろひめ)さま、274何時(いつ)()にか(わか)(てる)サン、275(きよ)サンを(ひつ)ぱつて()たと()える。276アンナ別嬪(べつぴん)()れて()たら、277婿(むこ)横取(よこど)りに()られて(しま)うがな……』
278黒姫(くろひめ)『コレコレ夏彦(なつひこ)サン、279(はや)()なさらぬかいな』
280夏彦(なつひこ)(ばば)アと(ちが)うて、281(むすめ)(こゑ)何処(どこ)ともなしに気分(きぶん)()いワイ。282今晩(こんばん)黒姫(くろひめ)高山彦(たかやまひこ)婆組(ばばぐみ)婚礼(こんれい)をする。283(あと)(てる)サンと夏彦(なつひこ)サンの婚礼(こんれい)だ。284これ(だけ)沢山(たくさん)(をとこ)()るのに、285あの(やさ)しい(こゑ)夏彦(なつひこ)サンと()ひやがるのは、286()(ぽど)思召(おぼしめし)()ると()えるワイ。287どうれ、288(ひと)つ、289(えり)でも(なほ)して、290()(かか)らうかい』
291 ()(こす)り、292(はな)をほぜくり、293(くちびる)()め、294(えり)(あは)()をキチンとし、295(おび)から(はかま)まで(あらた)め、
296『ヤアこれで天晴(あつぱ)色男(いろをとこ)だ……エツヘン』
297 足音(あしおと)()(なが)ら、298(やや)()(かへ)りて、299色男然(いろをとこぜん)()まし(がほ)300一間(ひとま)障子(しやうじ)をガラリと()け、
301(いま)()びとめになつたのは、302(てる)サンで御座(ござ)いますか、303何用(なによう)御座(ござ)います……』
304黒姫(くろひめ)『お(まへ)夏彦(なつひこ)ぢやないか。305(なん)ぢや(その)()ました(かほ)は……(てる)サンぢやないかテ…()(ひる)(てる)サンに……(てる)(あま)(うつつ)()かしよつて、306わしの()うた(こと)(みみ)這入(はい)らぬのか』
307夏彦(なつひこ)『それでも(わか)(をんな)(こゑ)がしましたもの、308(わか)(をんな)()へば、309(いま)(ところ)では(てる)サン、310(きよ)サンより()いぢやありませぬか』
311黒姫(くろひめ)(てる)(きよ)真名井ケ岳(まなゐがだけ)(かく)()()いてあるぢやないか。312(なに)をとぼけて()るのぢや。313黒姫(くろひめ)()びたのですよ』
314夏彦(なつひこ)『ヘエー、315(なん)(わか)(こゑ)()るものですな』
316黒姫(くろひめ)『きまつた(こと)ぢや。317言霊(ことたま)練習(れんしふ)がしてあるから、318老爺(ぢい)(こゑ)でも、319(ばば)(こゑ)でも、320十七八(じふしちはち)(をんな)(こゑ)でも、321赤児(あかご)(こゑ)でも、322(とび)でも、323(からす)でも、324(ねこ)でも、325(ねずみ)でも、326自由自在(じいうじざい)言霊(ことたま)使(つか)へるのですよ』
327夏彦(なつひこ)『ア、328ハハー、329さうですか、330さうすると今晩(こんばん)は、331(ねずみ)鳴声(なきごゑ)()かして(もら)はうと(まま)ですな、332アハヽヽヽ』
333黒姫(くろひめ)『エーエー(やかま)しいワイ。334(はや)うお(きやく)さまのお相手(あひて)をして、335それからソレ……レイの用意(ようい)をするのよ』
336夏彦(なつひこ)『レイの用意(ようい)だつて……()(こと)だか(わか)りませぬがなア』
337黒姫(くろひめ)『レイの(うへ)にコンが()くのぢや。338アタ(はづか)しい。339()加減(かげん)()()かしたらどうぢや』
340夏彦(なつひこ)(しも)()(あたま)(くろ)(ばう)()けて、341鍋墨(なべずみ)(やう)(かほ)白粉(おしろい)()けて、342華美(はで)着物(きもの)()ると、343ヤツパリ浦若(うらわか)(むすめ)(やう)()になつて、344(はづ)かしうなるものかいなア。345(はづ)かしい(こと)()つたら()らぬ黒姫(くろひめ)ぢやと(おも)うて()つたのに、346流石(さすが)(をんな)だ。347(はづ)かしいと仰有(おつしや)る、348アツハヽヽヽ』
349 其処(そこ)常彦(つねひこ)(あら)はれ(きた)り、
350黒姫(くろひめ)(さま)351万事(ばんじ)万端(ばんたん)用意(ようい)(ととの)ひました。352サアどうぞお()(くだ)さいませ』
353 黒姫(くろひめ)はつと()ちあがり、354姿見鏡(すがたみ)(まへ)に、355(こし)(ゆす)り、356(しり)(たた)き、357()ばたきし(なが)ら、358(やや)空向気味(そらむきぎみ)になり、359すまし()み、360仕舞(しまひ)でも()(やう)足附(あしつき)で、361ソロリソロリと婚礼(こんれい)()(すす)()く。
362 黒姫(くろひめ)363高山彦(たかやまひこ)結婚式(けつこんしき)無事(ぶじ)終結(しうけつ)した。364三々九度(さんさんくど)(さかづき)365神前(しんぜん)結婚(けつこん)模様(もやう)(とう)(りやく)しておきます。
366 黒姫(くろひめ)結婚(けつこん)(しゆく)する(ため)367長袖(ちやうしう)(しと)やかに、368(みづか)(うた)(みづか)()ふ。369日頃(ひごろ)(きた)へし腕前(うでまへ)370声調(せいてう)()ひ、371身振(みぶ)りと()ひ、372(あし)(すべ)(かた)373()(あやつ)(かた)374(じつ)巧妙(かうめう)(きは)め、375出色(しゆつしよく)のものなりける。
376黒姫(くろひめ)(いろ)(にほ)へど()りぬるを
377()()(たれ)(つね)ならむ
378有為(うゐ)奥山(おくやま)今日(けふ)()えて
379(あさ)夢見(ゆめみ)しゑひもせず
380昨日(きのふ)きやう(きやう))の飛鳥川(あすかがは)
381(きよ)(なが)れて行末(ゆくすゑ)
382(よし)(あし)きも浪速江(なにはえ)
383綿帽子(わたばうし)(かく)したツノ(くに)
384(はる)景色(けしき)(まが)ふなる
385(はな)容顔(かんばせ)(つき)(まゆ)
386(とし)(いく)つか白雲(しらくも)
387二八(にはち)(はる)優姿(やさすがた)
388(しわ)()つても村肝(むらきも)
389(こころ)(いろ)稚桜姫(わかざくらひめ)
390(かみ)(みこと)御教(みをしへ)
391(あさ)(ゆふ)なに(かしこ)みて
392(つか)(まつ)りし甲斐(かひ)ありて
393色香(いろか)つつしむ一昔(ひとむかし)
394(はな)(くれなゐ)()(みどり)
395手折(たを)(がた)きは高山彦(たかやまひこ)
396(そら)()きたる(うめ)(はな)
397時節(じせつ)()たにやならぬもの
398(てん)(かは)りて(つち)となり
399(つち)(のぼ)りて(てん)となる
400さしもに(たか)高山彦(たかやまひこ)
401(わが)()(みこと)(おそ)ざくら
402手折(たを)今日(けふ)こそ芽出度(めでた)けれ
403疳声(かんごゑ)(たか)高姫(たかひめ)
404(あさ)(ゆふ)なに口角(こうかく)
405(みが)きすまして(あわ)()ばし
406()言霊(ことたま)(みづ)(あわ)
407アワぬ(むかし)()(かく)
408()うた(この)()(うれ)しさは
409仮令(たとへ)天地(てんち)(かは)るとも
410()へてはならぬ(いも)()
411(うれ)しき(みち)(この)旅出(たびで)
412(たび)()いもの(つら)いもの
413(つら)いと()つても夫婦連(ふうふづれ)
414(こがらし)(すさ)山路(やまみち)
415(しも)(つるぎ)()きかざす
416浅茅ケ原(あさぢがはら)(なん)のその
417夫婦(ふうふ)()()()りかわし
418(たがひ)(むつ)二人仲(ふたりなか)
419二世(にせ)(つま)とは()()うた
420五百世(いほせ)までも夫婦(ふうふ)ぞと
421()(ことわざ)()ふものを
422()ツチヤン(そだ)ちの緯役(よこやく)
423世間(せけん)をミヅの御霊(みたま)とて
424(わけ)(わか)らぬ(こと)()
425(おもて)(おもて)(うら)(うら)
426仮令(たとへ)雪隠(せんち)(みづ)つきと
427(わか)らぬ(やつ)(ほざ)くとも
428()うなる(うへ)是非(ぜひ)もない
429雪隠(せんち)千年(せんねん)万年(まんねん)
430浮世(うきよ)()いて瓢箪(へうたん)
431(むね)(あた)りに()めくくり
432(えにし)(いと)をしつかりと
433呼吸(いき)(あは)して(むす)昆布(こぶ)
434(ほね)(くだ)けし蛸入道(たこにふだう)
435烏賊(いか)世人(よびと)(さわ)ぐとも
436(のぼ)()めたは(わが)恋路(こひぢ)
437成就(じやうじゆ)(するめ)今日(けふ)(よひ)
438()いも(わる)いも門外漢(もんぐわいかん)
439容喙(ようかい)すべき(こと)でない
440高山彦(たかやまひこ)(わが)(つま)
441千軍万馬(せんぐんばんば)(こう)()
442苦労(くらう)苦労(くらう)(かさ)ねたる
443すべての(みち)にクロトなる
444(この)黒姫(くろひめ)末永(すえなが)
445世帯(しよたい)駿河(するが)富士(ふじ)(やま)
446()けて(うれ)しき(なつ)(ゆき)
447(しろ)(はだへ)(あら)はして
448(かほ)()めたる()(はな)
449一度(いちど)(ひら)(たの)しみは
450神伊弉諾(かむいざなぎ)大神(おほかみ)
451(いも)(みこと)諸共(もろとも)
452(あま)瓊矛(ぬぼこ)をかき(おろ)
453コヲロコヲロに()()して
454山河草木(やまかはくさき)(もも)(かみ)
455()()でませし(その)(ごと)
456(なれ)(ひだり)(わし)(みぎ)
457(みぎ)(ひだり)呼吸(いき)(あは)
458()かす(まこと)(うら)()
459ウラナイ(けう)(かみ)(みち)
460国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)
461(ひら)(たま)ひし三五(あななひ)
462(かみ)(をしへ)(いま)(はや)
463(みづ)御霊(みたま)()(かへ)
464穴有(あなあ)(けう)となりにける
465(いよいよ)()れから比治山(ひぢやま)
466(みね)(つづ)きの比沼真名井(ひぬまなゐ)
467豊国姫(とよくにひめ)(あら)はれし
468(うづ)宝座(はうざ)蹂躙(じうりん)
469(まこと)(ひと)つのウラナイの
470(かみ)(をしへ)永久(とことは)
471夫婦(ふうふ)呼吸(いき)(あは)せつつ
472()てねば()かぬ(たて)(のり)
473稚桜姫(わかざくらひめ)(かみ)さへも
474(はな)色香(いろか)()(まよ)
475(こころ)(みだ)して()(たま)
476(その)古事(ふるごと)神習(かむなら)
477(この)黒姫(くろひめ)(つつし)みて
478(かみ)御跡(みあと)()ひまつる
479五十路(いそぢ)(さか)()(なが)
480()いた(ばば)アと(わら)(やつ)
481世間(せけん)()らずの間抜者(まぬけもの)
482さはさり(なが)夏彦(なつひこ)
483岩高彦(いはたかひこ)常彦(つねひこ)
484色々(いろいろ)(はなし)菊若(きくわか)
485(わらは)(なら)つて(あやま)つな
486(とし)()つての(をつと)()
487(わたし)(ふか)因縁(いんねん)
488(つな)にからまれ是非(ぜひ)もなく
489(かみ)御為(おんため)(くに)(ため)
490ウラナイ(けう)御為(おんため)
491(こころ)にもなき(つま)()
492陽気(やうき)浮気(うはき)黒姫(くろひめ)
493コンナ(さわ)ぎをするものか
494直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
495善言美詞(ぜんげんびし)()(なほ)
496(かなら)悪口(わるくち)()ふでない
497(あと)になつたら(みな)判明(わか)
498(かみ)(おく)には(おく)()
499(その)(また)(おく)には(おく)がある
500(むかし)(むかし)のさる(むかし)
501(ひと)(むかし)のまだ(むかし)
502まだも(むかし)大昔(おほむかし)
503(かみ)(さだ)めた因縁(いんねん)
504(たま)(たま)との真釣(まつ)()
505()れて(あふぎ)(すゑ)(ひろ)
506(あふ)げよ(あふ)神心(かみごころ)
507(こころ)(ひと)つの()ちやうで
508(この)黒姫(くろひめ)()(こと)
509(ぜん)()えたり(また)(あく)
510()えて()るかも()れないが
511身魂(みたま)(くも)つた人間(にんげん)
512(こころ)(たか)ぶりツベコベと
513(かま)()てをばするでない
514(すべ)細工(さいく)流々(りうりう)ぢや
515仕上(しあ)げた(ところ)()てお()
516身魂(みたま)因縁(いんねん)性来(しやうらい)
517大根本(だいこつぽん)根本(こつぽん)
518()つたる(かみ)(ほか)()
519()出神(でのかみ)生宮(いきみや)
520(さだ)まりきつた高姫(たかひめ)
521(なが)らく(うみ)(そこ)(くに)
522住居(すまゐ)なされた竜宮(りうぐう)
523乙姫(おとひめ)さまの(にく)(みや)
524(この)黒姫(くろひめ)(ただ)二人(ふたり)
525()らぬ屁理屈(へりくつ)()はぬもの
526(こころ)(きよ)きモチヅキの
527(おと)(みみ)をば()ましつつ
528三五(さんご)(つき)(きよ)らかな
529(こころ)(かがみ)をみがきあげ
530ウラナイ(けう)御仕組(おんしぐみ)
531(なに)()はずに()御座(ござ)
532(いま)()ふべき(とき)でない
533()はぬは()ふに(いや)(まさ)
534高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
535婚礼(こんれい)したのも理由(わけ)がある
536人間心(にんげんごころ)因縁(いんねん)
537どうして(わか)らう(はず)はない
538朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
539(つき)()つとも()くるとも
540仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
541(この)因縁(いんねん)(ひと)()
542(うかが)()らるる(こと)でない
543(いま)五六七(みろく)()()れば
544(ただ)一厘(いちりん)神界(しんかい)
545仕組(しぐみ)をあけて()せてやる
546それ(まで)(やかま)しう()ふでない
547(くち)(つつし)み、ギユツと()
548(みづ)御霊(みたま)にとぼけたる
549(わけ)(わか)らぬ人民(じんみん)
550高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
551(この)結婚(けつこん)彼此(かれこれ)
552(くち)(きは)めて(そし)るだらう
553(そし)らば(そし)れ、()はば()
554(わたし)(こころ)(かみ)()
555(かみ)御為(おんため)(くに)(ため)
556(みち)(ため)黒姫(くろひめ)
557(つく)(まこと)逸早(いちはや)
558世界(せかい)(もの)()らせたい
559(あゝ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
560御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ
561アヽ、惟神(かむながら)々々(かむながら)
562そろうて(さけ)をば()むがヨイ
563ヨイヨイヨイトサア
564ヨイトサノサツサ』
565 黒姫(くろひめ)調子(てうし)()つて(をど)(くる)ひ、566(あせ)をタラタラ(なが)し、567白粉(おしろい)をはがし、568顔一面(かほいちめん)縄暖簾(なはのれん)()げたる(ごと)くなりにける。569高山彦(たかやまひこ)()ちあがり、570祝歌(しゆくか)(うた)ふ。
571『フサの(みやこ)(うま)()
572浮世(うきよ)(かぜ)()まれつつ
573妻子(つまこ)()てて遥々(はるばる)
574ウラナイ(けう)大元(おほもと)
575北山村(きたやまむら)()()れば
576鼻高々(はなたかだか)高姫(たかひめ)
577天地(てんち)道理(だうり)()()かす
578支離(しり)滅裂(めつれつ)繰言(くりごと)
579(いや)(こと)ぢやと(みみ)(おさ)
580三日(みつか)四日(よつか)()(うち)
581(はら)(むし)()何時(いつ)()
582グレツと(かは)つてウラナイの
583(かみ)(をしへ)面白(おもしろ)
584()けば()(ほど)(あぢ)()
585(うし)()かれて善光寺(ぜんくわうじ)
586()サン()サンが(まゐ)(やう)
587何時(いつ)()にやらウラナイの
588(をしへ)(とりこ)()()てて
589(あさ)(ゆふ)なの水垢離(みづごうり)
590(かはづ)(やう)(ぎやう)をして
591(うれ)(うれ)しの()(おく)
592(めくら)(つんぼ)(あつ)まりし
593ウラナイ(けう)大元(おほもと)
594()あき一人(ひとり)高山彦(たかやまひこ)
595天津空(あまつそら)より(くだ)()
596天女(てんによ)(やう)(うやま)はれ
597()(はや)されて高姫(たかひめ)
598(するど)眼鏡(めがね)(かな)うたか
599抜擢(ばつてき)されて黒姫(くろひめ)
600(つま)となれとの御託宣(ごたくせん)
601(ことわ)りするも(なん)とやら
602枯木(かれき)(はな)()くためし
603地獄(ぢごく)(うへ)()(やう)
604胆力(たんりよく)()ゑて高姫(たかひめ)
605承知(しようち)(むね)(こた)ふれば
606高姫(たかひめ)さまも雀躍(こをど)りし
607これで(わたし)安心(あんしん)
608数多(あまた)家来(けらい)()しまわし
609(そら)()ける磐船(いはふね)
610数多(あまた)準備(しつら)ひフサの(くに)
611(うな)りを()てて中空(ちうくう)
612(おも)ひがけなき高上(たかあが)
613高山彦(たかやまひこ)低山(ひきやま)
614(そら)(かす)めて(わた)()
615大海原(おほうなばら)島々(しまじま)
616数多(あまた)()えつつ悠々(いういう)
617(かぜ)()られて()(きた)
618由良(ゆら)(みなと)広野原(ひろのはら)
619イヨイヨ無事(ぶじ)着陸(ちやくりく)
620虎若(とらわか)富彦(とみひこ)(ともな)ひて
621大江(おほえ)(やま)(さぐ)りつつ
622魔窟ケ原(まくつがはら)()()れば
623見渡(みわた)(かぎ)銀世界(ぎんせかい)
624(つま)住家(すみか)何処(いづく)ぞと
625(まなこ)白黒(しろくろ)黒姫(くろひめ)
626岩戸(いはと)(まも)夏彦(なつひこ)
627(くび)から(さき)突出(つきだ)して
628ヤア婿(むこ)さまか婿(むこ)さまか
629黒姫(くろひめ)さまのお待兼(まちか)
630遠慮(ゑんりよ)()らぬサア(はや)
631這入(はい)りなされと(さき)()
632(あたま)(かく)して段階(だんばしご)
633ヒヨコリヒヨコリと(くだ)()
634虎若(とらわか)富彦(とみひこ)(さき)()
635高山彦(たかやまひこ)(とも)なひて
636(うち)はホラホラ岩窟(いはやど)
637(くぐ)りて()れば()如何(いか)
638()黒姫(くろひめ)()きつれど
639()きしに(たが)(しろ)(かほ)
640(ゆめ)牡丹餅(ぼたもち)()(やう)
641(うれ)しき(ちぎり)今日(けふ)(よひ)
642(とし)二八(にはち)二九(にく)からぬ
643姿(すがた)(やさ)しき(この)ナイス
644幾久(いくひさ)しくも末永(すゑなが)
645鴛鴦(をし)(ふすま)(むつ)()
646()きつ(しづ)みつ()(わた)
647今日(けふ)結縁(かため)(たの)しけれ
648(つき)()つとも()くるとも
649仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
650高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
651妹背(いもせ)(なか)何時(いつ)までも
652いや常永(とこしへ)(かは)らざれ
653八洲(やしま)(くに)(ひろ)くとも
654(をんな)(かず)(おほ)くとも
655女房(にようばう)にするは(ただ)一人(ひとり)
656(かみ)(むす)びし(この)(えにし)
657(むつ)(した)しむ玉椿(たまつばき)
658八千代(やちよ)(はる)(むか)へつつ
659ウラナイ(けう)(かみ)(のり)
660四方(よも)国々(くにぐに)()(つた)
661神政(しんせい)成就(じやうじゆ)神業(かむわざ)
662(つか)(まつ)りて(うるは)しき
663(たふと)御代(みよ)弥勒(みろく)()
664弥勒三会(みろくさんゑ)(あかつき)
665(かね)()るとも()れるとも
666二人(ふたり)(なか)(かは)らまじ
667あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
668御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
669(うた)つて、670(おほ)きな図体(づうたい)をドスンとおろした(その)機会(はづみ)に、671(さかづき)も、672徳利(とくり)も、673一二尺(いちにしやく)()(あが)り、674(にはか)舞踏(ぶたふ)(えん)じ、675(おも)はぬ余興(よきよう)()へにける。676夏彦(なつひこ)は、677くの()(まが)つた(こし)を、678()()(にぎ)(こぶし)にて()(なが)ら、679土盃(かはらけ)右手(めて)(ささ)げ、680オツチヨコチヨイのチヨイ(ごし)になつて、681(みづか)(うた)ひ、682(みづか)(をど)(はじ)めける。
683『アヽ芽出(めで)たい芽出(めで)たいお芽出(めで)たい
684(とし)()つても(いろ)(みち)
685(わす)れられぬと()えまする
686(むすめ)(まご)のある(なか)
687田舎(いなか)雪隠(せんち)水漬(みづつき)
688ババアが()いてうき()らし
689(かほ)白粉(おしろい)コテコテと
690(すずめ)のお宿(やど)のお()アさま
691(たか)(やま)から()(どり)
692言葉(ことば)(たくみ)(さそ)()
693()ふな()ふなと吾々(われわれ)
694舌切雀(したきりすずめ)のお芽出(めで)たさ
695()さりも(ひる)もチヨンチヨンと
696(しわ)のよつたる(はた)()
697ハタの()()(たま)らない
698(すずめ)(ひやく)までをンどりを
699(わす)れぬ(ためし)()いて()
700(わし)(をとこ)のはしぢやもの
701相手(あひて)()しい()しいわいナ
702恋路(こひぢ)(まよ)うと()(こと)
703可愛(かわ)(をとこ)(おほやしま)
704(しんにう)かけた(こと)ぢやげな
705図蟹(づがに)(あわ)(ふく)(かみ)
706恵比須(ゑべす)大黒(だいこく)ニコニコと
707(はら)(かか)へて(をど)()
708弁天(べんてん)さまの真似(まね)をして
709(かほ)コテコテと撫塗(なづ)()
710(つき)(かさ)なりや布袋腹(ほていばら)
711(ふく)れて(こま)るは()のあたり
712それでも(わし)(だま)つてる
713(なが)(あたま)寿老人(げほう)さま
714高山彦(たかやまひこ)婿(むこ)()
715まるビシヤモンを(たた)()
716(うへ)(した)への大戦(おほいくさ)
717大洪水(だいこうずゐ)(なが)されて
718天変地妖(てんぺんちえう)大騒動(おほさうどう)
719黒白(あやめ)()かぬ(やみ)()
720(おも)はぬ地震(ぢしん)()るであろ
721地震(ぢしん)(かみなり)()(くるま)
722(かは)れば(かは)()(なか)ぢや
723(むすめ)(まご)のある(ひと)
724(からす)婿(むこ)(たか)()
725()(ひか)らして(これ)からは
726(あめ)(した)なる有象無象(うぞむぞ)
727(なん)容赦(ようしや)荒鷹(あらたか)
728(いきほひ)(たけ)(やま)(かみ)
729苦労(くらう)(かさ)なる黒姫(くろひめ)
730行末(ゆくすゑ)こそはお芽出(めで)たい
731あゝなつかしや夏彦(なつひこ)
732夢寐(むび)にも(わす)れぬ(てる)さまは
733どうして御座(ござ)るか比治山(ひぢやま)
734黒姫(くろひめ)さまの隠家(かくれが)
735(ひぢ)(まくら)()御座(ござ)
736アヽなつかしやなつかしや
737高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
738今日(けふ)慶事(けいじ)()るにつけ
739(こころ)にかかるは(てる)さまの
740比治山峠(ひぢやまたうげ)独寝(ひとりね)ぢや
741コンナ(ところ)()せられて
742()なり(なみだ)がポロポロと
743(わし)(こぼ)れて()たわいナ
744アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
745ホンに(かな)はぬ(こと)ぢやわい
746(かな)はぬ(とき)神頼(かみだの)
747比沼(ひぬ)真名井(まなゐ)(かみ)さまに
748(ひと)(ねが)ひを()けて()よう
749ウラナイ(けう)()つてより
750(はや)十年(じふねん)になるけれど
751(かみ)(をしへ)信徒(まめひと)
752(をんな)(まなこ)()れなよと
753高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)
754何時(いつ)(きび)しきお警告(いましめ)
755それに(なん)ぞや今日(けふ)(また)
756黒姫(くろひめ)さまが()扮装(やつ)
757天女(てんによ)(やう)()けかはり
758(かへ)()きとは(なん)(こと)
759黒姫(くろひめ)さまが口癖(くちぐせ)
760(うら)(おもて)がある(をしへ)
761(おく)(おく)には(おく)があると
762()うて()たのは(この)(こと)
763(おれ)はあンまり(かみ)さまに
764(はう)けて()つて馬鹿(ばか)()
765馬鹿正直(ばかしやうぢき)夏彦(なつひこ)
766これから(こころ)改悪(かいあく)
767(いま)まで(こら)へた(こひ)(みち)
768土手(どて)()らしてやつて()
769サア常彦(つねひこ)岩高(いはたか)
770何時(いつ)(はなし)菊若(きくわか)
771(わか)奴等(やつら)(おれ)(あと)
772(した)うて()()比治山(ひぢやま)
773(てる)さま、(きよ)さま(ひそ)()
774肱鉄砲(ひぢてつぱう)覚悟(かくご)して
775(たづ)ねて()かうサア()かう
776高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
777今日(けふ)結婚(けつこん)()みたなら
778(わし)はお(ひま)(いただ)かう
779グヅグヅしてると(とし)()
780(わか)(さか)りは二度(にど)とない
781皺苦茶爺(しわくちやぢぢ)イになつてから
782如何(いか)女房(にようばう)(さが)しても
783適当(てきたう)(やつ)()りはせぬ
784(とき)(おく)れては一大事(いちだいじ)
785(はな)(さか)りの吾々(われわれ)
786(いま)から(こころ)取直(とりなほ)
787女房(にようばう)()つて(いさぎよ)
788体主霊従(たいしゆれいじう)有丈(ありたけ)
789(つく)して(くら)すが一生(いつしやう)
790各自(めいめい)(とく)ぢやトツクリと
791思案(しあん)(さだ)めて()かうかいの
792サアサ()かうではないかいナ
793ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
794ウントコドツコイ黒姫(くろひめ)さま
795ヤツトコドツコイ高山彦(たかやまひこ)
796(なが)(あたま)のゲホウさま
797ドツコイシヨのドツコイシヨ』
798自暴自棄(やけくそ)になつて、799一生懸命(いつしやうけんめい)不平(ふへい)()らし(をど)(くる)ふ。800常彦(つねひこ)801岩高(いはたか)802菊若(きくわか)も、803夏彦(なつひこ)(うた)同意(どうい)(へう)し、804(さかづき)()げ、805燗徳利(かんどくり)()り、806什器(じふき)()(くだ)き、807(ゑひ)にまぎらし乱痴気(らんちき)(さわ)ぎに(その)()()かしけるが、808流石(さすが)黒姫(くろひめ)結婚(けつこん)(いは)ひの(よる)とて一言(ひとこと)もツブやかず、809夏彦(なつひこ)()乱暴(らんばう)をなす(まま)(まか)()たりける。
810 ()くれば正月(しやうぐわつ)二十七日(にじふしちにち)811黒姫(くろひめ)は、812高山彦(たかやまひこ)(その)()面々(めんめん)一間(ひとま)(まね)き、813比沼(ひぬ)真名井(まなゐ)豊国姫(とよくにひめ)出現場(しゆつげんば)なる、814(みづ)宝座(ほうざ)占領(せんりやう)せむことを提議(ていぎ)し、815満場(まんぢやう)一致(いつち)可決(かけつ)結果(けつくわ)816(ねこ)杓子(しやくし)脛腰(すねこし)()(もの)全部(ぜんぶ)引連(ひきつ)れ、817高山彦(たかやまひこ)(こま)(またが)り、818真名井ケ原(まなゐがはら)()して驀地(まつしぐら)進撃(しんげき)し、819(ここ)正月(しやうぐわつ)二十八日(にじふはちにち)大攻撃(だいこうげき)開始(かいし)し、820青彦(あをひこ)821加米彦(かめひこ)言霊(ことたま)に、822散々(さんざん)()()()()りバラバラに、823(ふたた)魔窟ケ原(まくつがはら)岩窟(がんくつ)引返(ひきかへ)し、824第二(だいに)作戦(さくせん)計画(けいくわく)着手(ちやくしゆ)したりける。825嗚呼(ああ)826黒姫(くろひめ)一派(いつぱ)如何(いか)なる手段(しゆだん)(もつ)て、827真名井ケ原(まなゐがはら)聖場(せいぢやう)占領(せんりやう)せむとするにや。
828大正一一・四・二二 旧三・二六 松村真澄録)