霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 大逆転(だいぎやくてん)〔六二〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第2篇 千態万様 よみ:せんたいばんよう
章:第9章 第17巻 よみ:だいぎゃくてん 通し章番号:620
口述日:1922(大正11)年04月22日(旧03月26日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
平助親子は家に戻ってきたが、平助は手桶に水を汲んで運ぶ途中にこけて倒れてしまう。お節はあわてて天の数歌を歌い、平助は息を吹き返した。
平助は、美しい神界を旅していたところを、お節の声に呼び戻されたのだという。それより平助は発熱して、半月ほどして帰らぬ人となった。
それよりお節も悲しみのあまり具合が悪くなり、伏せってしまう。お楢は真名井ヶ原に参詣して助けを求めようと比治山を登っていくと、黒姫が立ちはだかり、お楢の窮状につけこんで、ウラナイ教の祈祷を承諾させてしまう。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:136頁 八幡書店版:第3輯 574頁 修補版: 校定版:143頁 普及版:59頁 初版: ページ備考:
001 比沼(ひぬ)真名井ケ原(まなゐがはら)(あら)はれ(たま)豊国姫(とよくにひめ)(みづ)宝座(ほうざ)(まう)でたる平助(へいすけ)親子(おやこ)三人(さんにん)は、002(うづ)聖地(せいち)()みしめて(こころ)(いさ)み、003意気(いき)揚々(やうやう)(かへ)(きた)る。004(ゆき)()(みち)()にもせず、005(つゑ)()きつつ(やうや)荒屋(あばらや)門口(かどぐち)()きにけり。
006平助(へいすけ)『お(かげ)無事(ぶじ)下向(げかう)出来(でき)た。007サアサアお(なら)008(はや)うお()()かしてくれ、009(あし)でも(あら)つて(ゆつ)くり(やす)まうぢやないか』
010(せつ)『イエイエ、011(ぢい)さま、012(わたし)()()かします。013()アさま、014何卒(どうぞ)(やす)(くだ)さいませ』
015(なら)『イヤイヤ、016(まへ)(なが)らく()(やう)(くら)(あな)(なか)()()められて()つたのだから、017()()いて()(わる)くなるといかぬ、018(この)(ばば)()きますから、019サアサア親爺(おやぢ)どの、020(みづ)()みて(くだ)され』
021(せつ)『お(ぢい)さま、022(わたし)(みづ)()みます、023何卒(どうぞ)(やす)(くだ)さい』
024平助(へいすけ)『イヤイヤお(まへ)身体(からだ)(よわ)つてる、025(この)(おやぢ)()みてやるから()()(まで)026マアマアゆつくりして()るがよい』
027 (ぢい)撥釣瓶(はねつるべ)覚束(おぼつか)なげに何回(なんくわい)右左(みぎひだり)にブリンブリンと()(まは)(やうや)半分(はんぶん)ばかり()()げ、028()()げては手桶(てをけ)(うつ)(また)()()げては手桶(てをけ)(うつ)し、
029『サアサアお(なら)030(みづ)()めた、031(はや)()かしてくれ、032アーア(とし)()ると(みづ)(ろく)()めはせないワ』
033(なら)(おい)ては()(したが)へと()(こと)がある、034(なん)でお(せつ)()ましなさらぬのぢや、035それだからお(まへ)何時(いつ)()(つよ)いと()ふのぢや、036()(こし)(ほね)でも()つたら如何(どう)なさる、037(まへ)難儀(なんぎ)(ばか)りぢや()い、038(ばば)もお(せつ)総体(そうたい)難儀(なんぎ)ぢやないか』
039平助(へいすけ)『エー八釜(やかま)しう()ふない、040何程(なにほど)(とし)()つても(みづ)(くらゐ)()えでかい』
041手桶(てをけ)一杯(いつぱい)()つた(みづ)を、042ヨロヨロと(ひつさ)(なが)ら、043(には)滑石(なめらいし)(すべ)つてスツテンドウと仰向(あふむけ)にひつくり(かへ)り、
044『アイタヽ、045ウンウン』
046(うな)つたきり(には)真中(まんなか)()(たふ)れける。047(なら)048(せつ)(おどろ)き、049()狂乱(きやうらん)し、050(おやぢ)頭部(とうぶ)足部(そくぶ)(はし)()り、
051(なら)『お(ぢい)さま、052オーイオーイ、053()をつけなさいのう』
054 お(せつ)も、
055『お(ぢい)さまお(ぢい)さま』
056()(たけ)る。
057(なら)『アーア、058如何(どう)しても此奴(こいつ)はいかぬ、059サアサアお(せつ)060もう()うなつては神様(かみさま)をお(ねがひ)するより仕方(しかた)がない、061(まへ)三五教(あななひけう)とやらの(うた)()つてるさうぢや、062何卒(どうぞ)(はや)(うた)つて(おやぢ)さまの(いき)()(かへ)して(くだ)され』
063(せつ)『ハイハイ、064承知(しようち)(いた)しました、065(ばあ)さま(はや)くお(ぢい)さまに()()けて(くだ)さい、066(ひと)067(ふた)068()069()070(いつ)071(むゆ)072(なな)073()074(ここの)075(たり)076(もも)077()078(よろづ)
079三四回(さんしくわい)繰返(くりかへ)せば、080平助(へいすけ)(やうや)呼吸(いき)()(かへ)し、
081『アーア、082えらい(こと)ぢやつた、083(てん)(あを)(やま)()(みどり)(いろ)()び、084種々(いろいろ)(うつく)しい(はな)(ところ)()きまで()(にほ)ひ、085(なん)とも()へぬ(うつく)しい大鳥(おほとり)小鳥(ことり)(すず)しい(こゑ)()して、086常世(とこよ)(はる)(うた)ひ、087其辺処(そこら)一面(いちめん)花莚(はなむしろ)088(なん)とも()へぬ綺麗(きれい)綺麗(きれい)田圃道(たんぼみち)(すす)()くと、089(むか)ふの(はう)(なん)とも()へぬ立派(りつぱ)三重(みへ)(たふ)()えた。090(その)(たふ)(うへ)から(した)まで黄金作(こがねづく)り、091それに日輪様(にちりんさま)がキラキラと(かがや)いて(なん)とも()へぬ爽快(さうくわい)(おも)ひに(みた)され、092一時(いちじ)(はや)其処(そこ)()()(やう)()がして(つゑ)(ちから)一生懸命(いつしやうけんめい)駆出(かけだ)すと、093(とほ)(とほ)(うしろ)(やま)より(かすか)(きこ)ゆるお(なら)(こゑ)094(つづ)いて可愛(かあい)らしいお(せつ)(こゑ)がフツと(みみ)這入(はい)つたので、095アヽ折角(せつかく)コンナ綺麗(きれい)(ところ)()()るのに何故(なぜ)馬鹿娘(ばかむすめ)(わし)()()めるのか、096アヽ(なさけ)ない(やつ)ぢや、097(しか)(なが)(ひさ)()りで()うた(むすめ)098何時(いつ)もならば頑張(ぐわんば)つて()()めた(くらゐ)後戻(あともど)りする平助(へいすけ)ぢやないが、099あまり(むすめ)可愛(かあい)(こゑ)(かな)(さう)()ぶものだから、100フツと()()まり()いて()れば、101(たれ)だか()らぬが(わし)(とし)(ひと)(ふた)(みつ)(かぞ)()し、102(しまひ)には百千万(ももちよろづ)()びて()る。103アヽ(わし)見慣(みな)れぬ結構(けつこう)(ところ)()()るが、104(これ)はヒヨツとしたら神界(しんかい)旅行(りよかう)してゐるのではあるまいか、105まだまだ七十(しちじふ)や、106そこいらで神界(しんかい)()るのぢやない、107百千万(ももちよろづ)(とし)現界(げんかい)苦労(くらう)せなくてはコンナ結構(けつこう)(ところ)へは()られぬのぢやと(おも)刹那(せつな)()がつけば、108(みづ)だらけの(には)()(たふ)れて()つたのか、109アヽ(なさけ)ない(なさけ)ない、110コンナ(こと)なら後戻(あともど)りをせなかつた(はう)()かつたに、111(また)娑婆(しやば)一息(ひといき)苦労(くらう)をせにやならぬかいな』
112(なら)『コレコレ親爺(おやぢ)どの、113それやお(まへ)(なに)()ふのだい、114二世(にせ)三世(さんぜ)(さき)()かけても(ちか)うた夫婦(ふうふ)(なか)115(この)(ばば)一人(ひとり)娑婆(しやば)(のこ)して()いて、116(まへ)ばつかり極楽(ごくらく)()つて()むのかいなア』
117平助(へいすけ)『アヽさうだつたな、118あまり結構(けつこう)(ところ)でお(まへ)(こと)何時(いつ)()にやら念頭(ねんとう)()つて()たよ、119(しか)(なが)()をまはして(ゆめ)()()つたのだ、120夢物語(ゆめものがたり)(つかま)へてさう真剣(しんけん)(おこ)つて(もら)うては(こま)るぢや()いか、121ア、122(せつ)か、123何卒(どうぞ)二人(ふたり)()つて(おれ)身体(からだ)介抱(かいほう)して寝床(ねどこ)()いて(やす)まして()れ、124(なん)だか(こし)具合(ぐあひ)(へん)だから』
125 お(なら)126(せつ)(なみだ)(なが)寝床(ねどこ)(こしら)(あし)掃除(さうぢ)もそこそこに平助(へいすけ)(かか)へて(とこ)(やす)ませたるが、127それより平助(へいすけ)発熱(はつねつ)毎日(まいにち)()にち囈言(うさごと)()半月(はんつき)ばかり()(つひ)帰幽(きいう)したりける。128(なら)129(せつ)死骸(しがい)()()号泣(がうきふ)(やうや)野辺(のべ)(おく)りも()ませ(その)(のち)二人(ふたり)日課(につくわ)(やう)(あさ)(ひる)(ばん)三回(さんくわい)常磐木(ときはぎ)(えだ)()つては(そな)(みづ)()(はこ)びて()(ひと)(れい)(なぐさ)めて()たり。130(なら)()アは(ぢい)先立(さきだ)たれ、131(むすめ)のお(せつ)(ちから)面白(おもしろ)からぬ月日(つきひ)(おく)()たりけり。
132 (しか)るにお(せつ)平助(へいすけ)帰幽(きいう)した(ころ)より身体(しんたい)益々(ますます)痩衰(やせおとろ)(また)もや(とこ)にべつたり()囈言(うさごと)さへ()(やう)になりければ、133(ばば)()まり()一生懸命(いつしやうけんめい)真名井ケ原(まなゐがはら)跣参詣(はだしまゐり)(はじ)()比治山峠(ひぢやまたうげ)(のぼ)りつめると(れい)黒姫(くろひめ)白壁(しらかべ)(やう)皺苦茶顔(しわくちやがほ)をコテコテ()()(はな)(あざむ)妙齢(めうれい)照子(てるこ)134清子(きよこ)二人(ふたり)(とも)前方(ぜんぱう)()(ふさ)がり、
135黒姫(くろひめ)『これこれ、136()さま、137(まへ)(この)(あいだ)此処(ここ)(とほ)つた親子(おやこ)三人連(さんにんづ)れの(ばば)さまぢやないか。138(また)しても(また)しても素盞嗚尊(すさのをのみこと)悪神(あくがみ)(をしへ)迷信(めいしん)して真名井山(まなゐさん)(まゐ)るのだな』
139(なら)『ハイハイ左様(さやう)御座(ござ)います、140(ちから)(たの)親爺(おやぢ)どのは神様(かみさま)(まゐ)つて(かへ)るが(はや)いか(には)()()けて、141それが原因(もと)となり夜昼(よるひる)(くる)しみた揚句(あげく)142到頭(たうとう)あの()(ひと)となつて仕舞(しま)ひました、143オーン、144オンオン』
145()(くづ)れる。146黒姫(くろひめ)はニヤリと(わら)ひ、
147『さうぢやろさうぢやろ、148アンナ(ところ)(わし)親切(しんせつ)()にして(まゐ)るものだから、149(みづ)(みたま)悪神(あくがみ)大切(たいせつ)生命(いのち)をとられて仕舞(しま)うたのぢや。150ようまアお(まへ)(むね)()()てて(かんが)へて()なさい、151神様(かみさま)(まゐ)るのは()けて()ぬのが目的(もくてき)ぢやあるまい、152千年(せんねん)万年(まんねん)長生(ながいき)して(まご)から曾孫(ひまご)153玄孫(つるまご)まで()みて、154百年(ひやくねん)二百年(にひやくねん)長生(ながいき)出来(でき)(やう)(まゐ)るのぢやないか、155それに(なん)(こと)ぢや、156神様(かみさま)(まゐ)つて(かへ)るなりウンと、157(たたみ)(うへ)ならまだしもだが(には)()(なか)糞蛙(くそがへる)()()けた(やう)にフン()びて、158おまけに(みづ)(まで)(かぶ)つて寂滅(じやくめつ)する(やう)信心(しんじん)(なん)になるかいな、159それぢやから()(ほど)(わし)親切(しんせつ)()めたのぢや、160土台(どだい)(まへ)親爺(おやぢ)()(やう)()でも仲々(なかなか)()(つよ)いから(ばち)覿面(てきめん)ぢや。161愚図々々(ぐづぐづ)して()るとお(まへ)(むすめ)まで生命(いのち)をとられ、162(しまひ)にはお(まへ)()ンで仕舞(しま)ふぞや、163メソメソと何程(なにほど)()いたつて(あと)後悔(こうくわい)(さき)()たずぢや、164エーもう()ンだ(ぢい)仕方(しかた)()いとして、165(まへ)()けなりと長生(ながいき)するやうに綺麗(きれい)薩張(さつぱり)改心(かいしん)して、166三五教(あななひけう)(かみ)(かは)へでも(なが)し、167結構(けつこう)結構(けつこう)なウラナイ(けう)(まこと)(うしとら)金神様(こんじんさま)をお(まつ)りなされ、168何時迄(いつまで)頑張(ぐわんば)つて()るとド(えら)(こと)出来(でき)ますぜ、169大方(おほかた)(まへ)(むすめ)(あを)(かほ)して()つたが、170今頃(いまごろ)()()痺疳(ひかん)()みた(やう)にヒーヒー()うて(あさ)から(ばん)まで、171ひしつて()るだらう』
172(なら)『ハイハイ(おつ)しやる(とほ)(ぢい)さまと()ひ、173大切(たいせつ)孫娘(まごむすめ)(なん)だか()らぬが()()身体(からだ)(やせ)る、174日向(ひなた)(こほり)()ける(やう)(いき)()まで(ほそ)つて()きます。175(わたし)親爺(おやぢ)どのに先立(さきだ)たれ、176(ちから)(おも)孫娘(まごむすめ)何時(いつ)()ぬやら(わか)らぬ(やう)大病(たいびやう)(かか)り、177(その)(うへ)(みみ)(とほ)くなり(こし)(まが)り、178(あし)(ろく)(うご)きませぬ。179アヽコンナ(こと)なら親爺(おやぢ)どのと一緒(いつしよ)()ンだがましぢやつたと、180昨夕(ゆうべ)一人(ひとり)そつと(はか)(まゐ)り「親爺(おやぢ)どの、181何卒(どうぞ)(わたし)(はや)()びに()(くだ)さい、182浮世(うきよ)(いや)になつた、183(まへ)一緒(いつしよ)にあの()(くら)したいから」と一生懸命(いつしやうけんめい)(たの)みて()りましたら、184()ンでも正念(しやうねん)があると()えまして、185親爺(おやぢ)姿(すがた)(はか)(なか)からポツと(あら)はれ「お(まへ)女房(にようばう)のお(なら)か、186()()うて()れた、187ソンナラ(おれ)(これ)から冥途(めいど)()れて()つてやらう」と(いや)らしい(かほ)して()ひました。188(わたし)(にはか)()ぬのが(いや)になり「今度(こんど)今度(こんど)(その)今度(こんど)189十年(じふねん)二十年(にじふねん)三十年(さんじふねん)190百年(ひやくねん)()つた(その)(うへ)(むか)ひに()(くだ)され」と吃驚(びつくり)して()けつ(まろ)びつ(わが)()(かへ)つて()れば、191(むすめ)のお(せつ)(なん)だか()らぬが青彦(あをひこ)々々(あをひこ)夢中(むちう)になつて(いや)らしい(こゑ)()して()ります。192親爺(おやぢ)どのの(はか)では(あを)()(あを)(つら)()せられ生命(いのち)からがら()げて()れば、193一人(ひとり)(むすめ)(ねつ)()かされて青彦(あをひこ)々々(あをひこ)夢中(むちう)になつて(うめ)いて()る、194如何(どう)して(これ)(たま)りませうかいな、195アーン、196アンアン、197ウーン、198ウンウン』
199()(くづ)()る。
200黒姫(くろひめ)(なに)201(まへ)(むすめ)のお(せつ)青彦(あをひこ)々々(あをひこ)()びて()るか、202それは(えら)いものぢや、203(まへ)(わし)()(こと)()いてウラナイ(けう)になりなさい、204そしたら(むすめ)病気(びやうき)(せん)(いち)(たす)かるかも()れませぬよ、205(まへ)()()()()いと()つても、206サア(いま)となれば矢張(やつぱり)()ぬのが(いや)だらう、207千年(せんねん)万年(まんねん)長生(ながいき)出来(でき)るウラナイ(けう)神様(かみさま)信心(しんじん)しなさい、208(これ)から(おれ)がお(まへ)(うち)()つて、209三五教(あななひけう)神様(かみさま)(まつ)つてあれば()()し、210ウラナイ(けう)大神様(おほかみさま)(まつ)つて()げよう』
211(なら)『イエイエ、212まだ三五教(あななひけう)神様(かみさま)(まつ)つて御座(ござ)いませぬ、213(むすめ)のお(せつ)(たす)けられたと()ふので信心(しんじん)をして()るので御座(ござ)います、214恰度(ちやうど)(さいは)ひお(まへ)さまが()(まつ)つて(くだ)されば(むすめ)病気(びやうき)(なほ)るだらうし、215(わし)長生(ながいき)出来(でき)ませうから、216一時(いちじ)(はや)(たの)みますわいな、217ウン、218ウン、219ウン(泣声(なきごゑ))』
220黒姫(くろひめ)『よしよし(まつ)つては()げるが、221さう軽々(かるがる)しう結構(けつこう)神様(かみさま)だから、222荷物(にもつ)()(はこ)(やう)にはいけませぬ、223マアお(せつ)どのにも(とつく)()()かし、224三五教(あななひけう)(おも)()らした(その)(うへ)(まつ)つて()(やう)かい、225サアサ(これ)より(はや)比沼(ひぬ)真名井(まなゐ)(みづ)宝座(ほうざ)とやらを(をが)みて()なさい、226さうして(また)(かへ)つて(には)(だい)()になつて……オホヽヽヽ』
227(なら)『イエイエ如何(どう)して如何(どう)して、228貴女(あなた)のお(はなし)()いた(うへ)(たれ)真名井(まなゐ)(など)(まゐ)りませうか、229あの(とき)にも(わし)はお(まへ)さまの(はなし)()いて(みみ)(かたむ)改心(かいしん)しかけて()つたのだが、230昔気質(むかしかたぎ)親爺(おやぢ)どのなり(むすめ)のお(せつ)()かぬものだから仕方(しかた)なしに(まゐ)りました、231あの(とき)貴女(あなた)(おつ)しやる(とほ)りにして()けば()かつたのに、232親爺(おやぢ)どのも()(かへ)しのならぬ下手(へた)をしたものぢやわいな、233アーン、234アンアン』
235黒姫(くろひめ)『サア(ばば)さま、236決心(けつしん)がきまつたら仕方(しかた)がない、237(わし)特別(とくべつ)待遇(たいぐう)出張(しゆつちやう)してあげよう、238(まへ)余程(よつぽど)(かた)()いお(かた)ぢや、239(わし)直接(ちよくせつ)()(もら)うと()(やう)(こと)滅多(めつた)()いぞえ』
240(なら)『ハイハイ、241勿体(もつたい)ない、242有難(ありがた)御座(ござ)います、243蔭様(かげさま)でお(せつ)病気(びやうき)本復(ほんぷく)(いた)しませう、244何分(なにぶん)(よろ)しくお(たの)(まを)します』
245黒姫(くろひめ)『アーア、246生神様(いきがみさま)になると(いそが)しいものだ、247たつた一人(ひとり)(むすめ)でも(みな)天地(てんち)(かみ)分霊(わけみたま)(ちが)ひはない、248一視同仁(いつしどうじん)249至仁至愛(みろく)(こころ)()して(たす)けて()げようかい、250サアサア(てる)さま、251(きよ)さま、252(まへ)一緒(いつしよ)()いて()るのだよ、253これこれお(なら)さま、254(うれ)しいかい』
255(なら)『ハイハイ、256有難(ありがた)御座(ござ)います、257ソンナラ(これ)から(わたし)御案内(ごあんない)(いた)しませう』
258黒姫(くろひめ)『よしよし()つてあげよう、259(まへ)()(ぽど)幸福者(しあはせもの)ぢや、260もう(これ)真名井山(まなゐさん)(おも)()つたぢやらうな』
261(なら)『ヘイヘイ、262(たれ)真名井山(まなゐさん)なぞへ(まゐ)りますものか』
263(さき)()つて()く。264黒姫(くろひめ)はしすましたりと北叟笑(ほくそゑ)(なが)二人(ふたり)(むすめ)(ともな)丹波村(たんばむら)(ばば)伏屋(ふせや)()して意気(いき)揚々(やうやう)(すす)()く。
265大正一一・四・二二 旧三・二六 北村隆光録)