霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 紫姫(むらさきひめ)〔六二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第17巻 如意宝珠 辰の巻 篇:第3篇 鬼ケ城山 よみ:おにがじょうざん
章:第13章 第17巻 よみ:むらさきひめ 通し章番号:624
口述日:1922(大正11)年04月23日(旧03月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年1月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
岩窟に入ると五六人の手下たちがいたが、加米彦の一喝で慌て出す。しかし手下の中の丹州という男が理屈をこねて加米彦に食ってかかる。
しかし丹州は実は自分は玉彦という者で、豊国姫命の命で小鬼となってバラモン教に潜入していた、という。そして、丹州はバラモン教の他の手下らを手なずけて、紫姫の二人の僕かくまっていた。衣に猪の血をつけて荒鷹・鬼鷹の目をごまかしていたのである。
丹州は二人の僕を他の手下に連れてこさせた。そして丹州は一行を鬼ヶ城の方へ案内するが、三嶽山の山頂に出たところで一行は突風に煽られてしまう。
丹州が手なずけていた荒鷹・鬼鷹の手下らは、吹き飛ばされてしまった。雲の中から大蛇が舌を出して一行に襲い掛かるが、加米彦の言霊の発射で雲の中に逃げていく。
風はぴたりと止み、一同は天津祝詞と宣伝歌を唱和して、山伝いに鬼ヶ城へと進んで行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1713
愛善世界社版:201頁 八幡書店版:第3輯 598頁 修補版: 校定版:207頁 普及版:89頁 初版: ページ備考:
001 (ほそ)(くら)(あな)(こし)(かが)めて二三十間(にさんじつけん)(すす)んで()くと、002其処(そこ)(あか)りのさした(やや)(ひろ)隧道(すゐだう)前方(ぜんぱう)貫通(くわんつう)()たり。
003紫姫(むらさきひめ)『サア(これ)から天井(てんじやう)(たか)御座(ござ)います、004何卒(どうぞ)(こし)()ばしてお(ある)(くだ)さいませ、005(この)巌窟(がんくつ)(なが)三丁(さんちやう)(ばか)縦横(たてよこ)十文字(じふもんじ)隧道(すゐだう)穿(うが)たれ、006処々(ところどころ)四角(しかく)岩窟(いはや)()御座(ござ)います。007荒鷹(あらたか)008鬼鷹(おにたか)()ります場所(ばしよ)(とく)(ひろ)(きづ)いてあります』
009加米彦(かめひこ)『ヤア益々(ますます)(おに)(やつ)010洒落(しやれ)(こと)をやつて()よる(わい)011鬼ケ城(おにがじやう)()つて不在中(ふざいちゆう)安心(あんしん)(やう)なものだが、012()しひよつと愚図々々(ぐづぐづ)して()ると中途(ちうと)(かへ)つて()よつて、013あの(ほそ)入口(いりぐち)をピツタリ(ふさ)ぎよるか(ただし)青松葉(あをまつば)でも(くす)べられたら、014それこそ大変(たいへん)だ、015()加減(かげん)探険(たんけん)したら斯様(かやう)危険(きけん)地帯(ちたい)退却(たいきやく)するに(かぎ)る、016ナア音彦(おとひこ)さま』
017音彦(おとひこ)『さうだなア、018一方口(いつぱうぐち)(ふさ)がれては(ふくろ)(ねずみ)同然(どうぜん)だ』
019紫姫(むらさきひめ)『イエイエ御心配(ごしんぱい)(くだ)さいますな、020二ケ所(にかしよ)三ケ所(さんかしよ)非常口(ひじやうぐち)()いて()ます、021(わたし)()承知(しようち)して()りますから御安心(ごあんしん)して(くだ)さい』
022加米彦(かめひこ)『アヽさうですか、023それなら安心(あんしん)だ』
024紫姫(むらさきひめ)(あと)につき大手(おほて)()つて大股(おほまた)にフン()()く。
025加米彦(かめひこ)『ヤア小鬼(こおに)(ども)沢山(たくさん)()()よるワ。026オイオイ、027小鬼(こおに)(やつこ)028()きぬかい、029三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)悦子姫(よしこひめ)一行(いつかう)御臨検(ごりんけん)だ、030サアサア(これ)から簡閲点呼(かんえつてんこ)(はじ)まり』
031 五六人(ごろくにん)(をとこ)吃驚(びつくり)して()(あが)り、
032何方(どなた)さまか()りませぬが生憎(あいにく)御大将(おんたいしやう)御不在(ごふざい)033一向(いつかう)(かま)出来(でき)ませぬ、034何卒(なにとぞ)悠々(ゆるゆる)とお(やす)(くだ)さいませ』
035加米彦(かめひこ)(やす)めと()はいでも(やす)みてやる、036(しか)(なが)貴様(きさま)(たち)(なん)(ため)留守番(るすばん)(いた)して()るのぢや、037(おに)上前(うはまへ)()音彦(おとひこ)や、038加米彦(かめひこ)がノソノソと奥深(おくふか)進入(しんにふ)し、039(この)岩窟(いはや)最早(もはや)陥落(かんらく)より(ほか)(みち)なき悲境(ひきやう)()(いた)つて()るのに、040大将(たいしやう)留守(るす)(うかが)ひ、041秘蔵(ひざう)(さけ)(くら)()ひ、042(ふか)(やう)愚助八兵衛(ぐうすけはちべゑ)前後(ぜんご)()らず()()るとは不届(ふとど)至極(しごく)代物(しろもの)だ、043サア(この)加米彦(かめひこ)()()まつた以上(いじやう)容赦(ようしや)(いた)さぬ、044鬼鷹(おにたか)045荒鷹(あらたか)両人(りやうにん)になり(かは)り、046今日(こんにち)只今(ただいま)より(ひま)(つか)はす、047(いづれ)へなりと勝手(かつて)()()け』
048小鬼(こおに)『オイ丹州(たんしう)049金州(きんしう)050源州(げんしう)051遠州(ゑんしう)052播州(ばんしう)053大変(たいへん)だぞ、054只今(ただいま)(かぎ)免職(めんしよく)だとえ』
055丹州(たんしう)『それだから(さけ)()むな、056(さけ)()んだら縮尻(しくじ)ると何時(いつ)()うとるのだ、057(おれ)もウラナイ(けう)黒姫(くろひめ)児分(こぶん)になつて二三年(にさんねん)()いて(まは)つて()つたが、058三五教(あななひけう)には随分(ずゐぶん)(えら)豪傑(がうけつ)()つて神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)(じゆつ)使(つか)ひ、059ドンナ(ところ)へでも生命(いのち)(かま)はずに()()ると()(こと)()つて()つたが、060本当(ほんたう)油断(ゆだん)のならぬ三五教(あななひけう)ぢや、061三五教(あななひけう)(あな)()いのでコンナ(おに)(あな)まで(さが)して()りに()るのだらうなア』
062加米彦(かめひこ)『コレコレ丹州(たんしう)とやら、063(なに)(まを)す、064神妙(しんめう)(この)(はう)(まを)(とほ)退却(たいきやく)(いた)さぬか』
065丹州(たんしう)『お(まへ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)ぢやないか、066ドンナ悪神(あくがみ)でも悪人(あくにん)でも(おに)でも餓鬼(がき)でも虫族(むしけら)までも(たす)けると()ふお(やく)だらう、067仮令(たとへ)吾々(われわれ)(おに)乾児(こぶん)になつて()つても、068(もと)天地(てんち)大神様(おほかみさま)結構(けつこう)御分霊(わけみたま)069指一本(ゆびいつぽん)でも()へるなら()へて()なさい、070天則違反(てんそくゐはん)大罪(だいざい)()(くに)071(そこ)(くに)真逆様(まつさかさま)(おと)されますぞえ』
072加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、073此奴(こいつ)074仲々(なかなか)理屈(りくつ)()ひよる(わい)075オイ丹州(たんしう)076貴様(きさま)何処(どこ)出生(うまれ)ぢや』
077丹州(たんしう)(おれ)かい、078(おれ)()はいでも(きま)つた(こと)ぢや、079(くに)(うま)れだよ』
080加米彦(かめひこ)(くに)()つても沢山(たくさん)あるぢやないか、081何処(どこ)(くに)だ』
082丹州(たんしう)『エー、083頭脳(あたま)(わる)(をとこ)だなア、084ソンナ(こと)宣伝使(せんでんし)(つと)まるか、085丹波(たんば)(くに)()(くに)(うま)れと()へば丹波(たんば)(きま)つて()るではないか』
086加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、087そうして丹波(たんば)何処(どこ)だ』
088丹州(たんしう)丹波(たんば)三嶽山(みたけやま)ぢや』
089加米彦(かめひこ)三嶽山(みたけやま)(きま)つて()る、090(なん)()(むら)(なん)()(もの)から(うま)れたのだ』
091丹州(たんしう)(うま)れた(ところ)(むら)(わか)つたり、092(おや)(わか)(やう)なら(たれ)がコンナ(おに)乾児(こぶん)になつて()るものかい、093(まへ)余程(よつぽど)(わけ)(わか)らぬ(こと)()ふものぢやな』
094音彦(おとひこ)『サアサア加米彦(かめひこ)095(はや)探険(たんけん)出掛(でか)(やう)ぢやないか、096愚図々々(ぐづぐづ)して()ると大将株(たいしやうかぶ)(かへ)つて()よるかも()れないぞ』
097加米彦(かめひこ)大将株(たいしやうかぶ)(かへ)つて()るのを()つて()るのだ、098盗賊(たうぞく)親方(おやかた)()らぬ(やつこ)サン(ばか)りの(ところ)()()威張(ゐば)(わけ)にも()かぬ、099張合(はりあひ)()けて(こま)つて()るのだ』
100丹州(たんしう)『モシモシ加米(かめ)サンとやら、101御心配(ごしんぱい)なさいますな。102最前(さいぜん)(この)丹州(たんしう)鬼ケ城(おにがじやう)(はう)()けて合図(あひづ)をして()きました、103たつた(いま)雲霞(うんか)(ごと)勇将(ゆうしやう)猛卒(まうそつ)引率(いんそつ)し、104鬼熊別(おにくまわけ)御大将(おんたいしやう)105旗鼓(きこ)堂々(だうだう)此方(こなた)(むか)つて()めて()ますよ、106マアお(まへ)さまも暫時(しばらく)生命(いのち)だ、107ゆつくりと法螺(ほら)でも()いて刹那心(せつなしん)(たの)しみなさい』
108加米彦(かめひこ)『ハツハヽヽヽ、109(なに)(ぬか)しよるのだい、110仮令(たとへ)悪神(あくがみ)千匹(せんびき)万匹(まんびき)111やつて()(ところ)で、112三五教(あななひけう)独特(どくとく)神霊(しんれい)発射(はつしや)によつて(たちま)消滅(せうめつ)さしてやるのだ、113一時(いちじ)(はや)()()せて()ないかいなア、114アヽ()(どほ)しいワイ』
115丹州(たんしう)『アハヽヽヽ、116(ちから)()うだか()らぬが随分(ずゐぶん)()きますな』
117加米彦(かめひこ)『きまつた(こと)だよ、118二百十日(にひやくとをか)綽名(あだな)()つた加米彦(かめひこ)だ、119まごまごして()ると、120(おれ)鼻息(はないき)貴様等(きさまら)木端鬼(こつぱおに)(ども)中天(ちうてん)()()げるぞ』
121丹州(たんしう)(じつ)(ところ)(わたくし)真名井ケ原(まなゐがはら)()れました玉彦(たまひこ)(まを)すもの、122あまり悪神(あくがみ)跋扈(ばつこ)するので豊国姫(とよくにひめ)(さま)御命令(ごめいれい)()け、123小鬼(こおに)()(やつ)し、124(この)岩窟(がんくつ)(まぎ)()悪魔(あくま)状勢(じやうせい)(さぐ)つて()たもので御座(ござ)いますよ、125紫姫(むらさきひめ)(さま)のお(とも)になつた二人(ふたり)(しもべ)は、126(わたくし)計企(はからひ)或処(あるところ)大切(たいせつ)にして(かく)して()きました、127やがてお()()けませう』
128紫姫(むらさきひめ)『ホー、129其方(そなた)(なん)仰有(おつしや)る、130あの(しもべ)(かく)して()いたとな、131ソンナラ何故(なぜ)二人(ふたり)着物(きもの)血塗泥(ちみどろ)になつて()つたのですか、132(その)理由(わけ)()かして(くだ)さい』
133丹州(たんしう)『アハヽヽヽ、134それは(この)丹州(たんしう)計企(はからひ)()つて(しし)()つた(その)()着物(きもの)()め、135荒鷹(あらたか)136鬼鷹(おにたか)大将(たいしやう)に「(この)(とほ)嬲殺(なぶりごろ)しに(いた)しました」と()つて()せたのだ、137(うたが)ひとあらば(いま)()()けませう』
138紫姫(むらさきひめ)何卒(なにとぞ)一時(いちじ)(はや)()はして(くだ)さい』
139丹州(たんしう)『オイ、140(みな)(やつ)141何時(いつ)(わし)()うて()かしてある(とほ)り、142(なに)()も、143服従(ふくじゆう)するだらうなア』
144 (かふ)(おつ)(へい)(てい)145一度(いちど)(かしら)()げ、
146『ハイハイ、147承知(しようち)(いた)しました』
148丹州(たんしう)『ヨシヨシ、149それでこそ(おれ)家来(けらい)だ、150サア金州(きんしう)151遠州(ゑんしう)両人(りやうにん)152二人(ふたり)をこれへ()れて()い』
153(かしこ)まりました』
154(きん)155(ゑん)二人(ふたり)(いそ)いで岩窟(がんくつ)彼方(あなた)姿(すがた)(かく)したるが、156暫時(しばらく)ありて二人(ふたり)(をとこ)(ともな)(きた)り、
157『サア親方(おやかた)158二人(ふたり)のお(きやく)さまを御案内(ごあんない)して(まゐ)りました』
159紫姫(むらさきひめ)『ヤアお(まへ)鹿(しか)(うま)160()うマア無事(ぶじ)()(くだ)さつたナア』
161 鹿(しか)162(うま)一度(いちど)両手(りやうて)をつき(うれ)(なみだ)()れて()る。
163悦子姫(よしこひめ)『コレコレ丹州様(たんしうさま)とやら、164其方(そなた)一目(ひとめ)()(とき)から(かは)つたお(かた)ぢやと(おも)つて()ましたが、165豊国姫(とよくにひめ)神様(かみさま)御命令(ごめいれい)御越(おこ)しになつたとは、166それは真実(しんじつ)御座(ござ)いますか』
167丹州(たんしう)『ハイハイ、168真実(しんじつ)真実(しんじつ)169ずつと正真正銘(しやうしんしやうめい)真実(しんじつ)御座(ござ)います』
170加米彦(かめひこ)悦子姫(よしこひめ)さま、171音彦(おとひこ)さま、172(なん)だか(いきほひ)()ンで岩窟(いはや)探険(たんけん)()()るは()たものの、173(くら)がりで()()ンだ(やう)(はなし)ですな。174もうコンナ(ところ)張合(はりあひ)がないから何処(どこ)()(みち)(をし)へて(もら)つて、175崎嶇(きく)たる山道(やまみち)跋渉(ばつせふ)鬼ケ城(おにがじやう)(むか)つたら()うでせう、176三五教(あななひけう)には退却(たいきやく)二字(にじ)()いから元来(もとき)(みち)()(かへ)(こと)もならず、177何処(どこ)()(あな)でも見付(みつ)かつたら脱出(だつしゆつ)するのですなア』
178丹州(たんしう)(この)岩窟(いはや)には三ケ所(さんかしよ)()(あな)があります、179一方(いつぱう)鬼ケ城(おにがじやう)()(みち)180一方(いつぱう)大江山(おほえやま)()(みち)181一方(いつぱう)(たに)(みづ)()みに()()(あな)182何方(どちら)御案内(ごあんない)(いた)しませうか』
183加米彦(かめひこ)(おな)(こと)なら鬼ケ城(おにがじやう)(はう)案内(あんない)して(くだ)さい』
184丹州(たんしう)承知(しようち)(いた)しました』
185(さき)()ちドンと()(あた)つた岩石(がんせき)片手(かたて)でグイと()途端(とたん)にガラリと()いた。186()れば三嶽(みたけ)山頂(さんちやう)187四方(しはう)八方(はつぱう)見晴(みは)らしのよき場所(ばしよ)なりける。
188加米彦(かめひこ)『サアもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ、189(みな)さま(この)風景(ふうけい)(なが)めて一休(ひとやす)(いた)しませうか、190紫姫(むらさきひめ)さまも如何(どう)です、191一緒(いつしよ)にお(とも)(いた)しませう、192(この)(やう)岩窟(がんくつ)何時迄(いつまで)蟄居(ちつきよ)して()ても(なん)(たの)しみもありますまい、193貴女(あなた)のお()きな音彦(おとひこ)さまと、194ね……』
195紫姫(むらさきひめ)『ホヽヽヽ』
196(そで)(かほ)(かく)俯向(うつむ)く。
197 一同(いちどう)山上(さんじやう)風景(ふうけい)()(ところ)(こし)()()ろし四方(しはう)(なが)雑談(ざつだん)(ふけ)る。198(をり)しも西南(せいなん)(てん)(あた)一塊(いつくわい)黒雲(くろくも)(あら)はれ、199()()拡大(くわくだい)して満天(まんてん)(すみ)(なが)せし(ごと)四方(しはう)暗黒(あんこく)(つつ)まれ咫尺(しせき)(べん)ぜざるに()(いた)りぬ。200()をきる(ばか)りの寒風(かんぷう)201岩石(がんせき)()ばし、202樹木(じゆもく)(たふ)れよと(ばか)()きつけ(きた)る。203金州(きんしう)204源州(げんしう)205遠州(ゑんしう)206播州(ばんしう)四人(よにん)は『アツ』と()つたきり(かぜ)()()くられて(やみ)谷底(たにそこ)姿(すがた)(かく)したり。
207音彦(おとひこ)『ヤア大変(たいへん)(こと)になつて()たワイ、208八岐(やまた)大蛇(をろち)襲来(しふらい)(さう)形勢(けいせい)(あら)はれたぞ。209紫姫(むらさきひめ)さま、210(わたくし)()(にぎ)つてあげませう、211愚図々々(ぐづぐづ)して()ると()()らされて(しま)ひますよ。212ヤ、213加米彦(かめひこ)214(まへ)悦子姫(よしこひめ)さまの保護(ほご)(にん)(あた)れ、215丹州(たんしう)216(まへ)御苦労(ごくらう)だが一人(ひとり)()いて()()れ』
217丹州(たんしう)『ハイハイ、218委細(ゐさい)承知(しようち)(いた)しました、219(しか)(なが)ら、220もう暫時(しばらく)此処(ここ)休息(きうそく)しなさつたら如何(どう)です、221(これ)から(さき)大変(たいへん)断崖(だんがい)絶壁(ぜつぺき)222(くら)がりに()(はづ)したら大変(たいへん)です』
223加米彦(かめひこ)(なに)224(かま)うものかい、225()うなるも()うなるも神様(かみさま)思召(おぼしめし)だ。226(これ)ばかしの(かぜ)屁古垂(へこた)れて宣伝使(せんでんし)(つと)まるか』
227丹州(たんしう)(えら)馬力(ばりき)ですな、228(しか)足許(あしもと)(わか)りますか』
229加米彦(かめひこ)『それや一寸(ちよつと)(わか)らないよ、230(あし)()()いからなア』
231 黒雲(くろくも)左右(さいう)(わか)れてヌツと(あら)はれた巨大(きよだい)竜体(りゆうたい)232中央(ちうあう)半身(はんしん)(あら)はし大口(おほぐち)(ひら)五人(ごにん)頭上(づじやう)にブラ(さが)り、233一丈(いちぢやう)ばかりの(あか)(した)()して(なめ)かかる。
234加米彦(かめひこ)『ヤア、235やりよつたな、236面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、237オイ八岐(やまた)大蛇(をろち)238貴様(きさま)十八番(じふはちばん)はそれ(くらゐ)なものか、239それ(くらゐ)(こと)吾々(われわれ)観客(くわんきやく)は「やんや」と()はないぞ、240もちつと(かは)つた(はな)(わざ)をやらないか、241(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)
242言霊(ことたま)発射(はつしや)大蛇(をろち)姿(すがた)はおひおひ縮小(しゆくせう)(つひ)には(くも)全身(ぜんしん)(ぼつ)(をは)りける。
243加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、244加米彦(かめひこ)さまの言霊(ことたま)発射(はつしや)見事(みごと)なものだ、245ナア音彦(おとひこ)さま、246(この)神力(しんりき)には流石(さすが)悦子姫(よしこひめ)さまも御感服(ごかんぷく)(あそ)ばすだらう』
247悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ、248加米(かめ)サン、249何故(なぜ)折角(せつかく)()()大蛇(をろち)()なして(しま)つたの、250捕擒(とりこ)出来(でき)なかつたの』
251加米彦(かめひこ)『エ、252荷物(にもつ)(おほ)いのにあの(やう)(かさ)(たか)い、253不恰好(ぶかつかう)(やつ)荷物(にもつ)にした(ところ)(ぼう)にもならず、254(つゑ)にもならず、255(おび)には(みじか)(たすき)にや(なが)し、256邪魔(じやま)になるから(たす)けてやりました。257アハヽヽ、258東西々々(とうざいとうざい)259只今(ただいま)芸当(げいたう)()(とど)まりますれば(つぎ)なる芸当(げいたう)()()けます』
260音彦(おとひこ)『アハヽヽヽ、261陽気(やうき)(をとこ)だな、262(ついで)にモ(ひと)立派(りつぱ)手品(てじな)()せて(もら)はうかい』
263加米彦(かめひこ)八釜(やかま)しう()ふない、264(いま)大蛇(をろち)(やつ)楽屋(がくや)厚化粧(あつげしやう)最中(さいちう)だ、265(しば)らく()つて(くだ)さい、266今度(こんど)素敵滅法界(すてきめつぱふかい)代物(しろもの)をお()にぶら()げます』
267 (かぜ)はピタリと()み、268満天(まんてん)黒雲(くろくも)はさらりと霽渡(はれわた)り、269日光(につくわう)晃々(くわうくわう)(かがや)(はじ)めたり。
270加米彦(かめひこ)『サアサア(あま)岩戸(いはと)(びら)きと御座(ござ)い、271(みな)さまお()()まりますれば拍手(はくしゆ)喝采(かつさい)(かは)りに天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)して(くだ)さい』
272 (ここ)悦子姫(よしこひめ)273音彦(おとひこ)274加米彦(かめひこ)275紫姫(むらさきひめ)276丹州(たんしう)277鹿公(しかこう)278馬公(うまこう)一同(いちどう)は、279西天(せいてん)(むか)両手(りやうて)(あは)天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)宣伝歌(せんでんか)(うた)(をは)つて、280一行(いつかう)(いさぎよ)(みなみ)()して山伝(やまづた)ひ、281雲表(うんぺう)(そび)ゆる鬼ケ城(おにがじやう)目蒐(めが)けて(すす)()く。
282大正一一・四・二三 旧三・二七 北村隆光録)