霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 四尾山(よつをやま)〔六三二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第2篇 再探再険 よみ:さいたんさいけん
章:第4章 第18巻 よみ:よつおやま 通し章番号:632
口述日:1922(大正11)年04月25日(旧03月29日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
自転倒島の真秀良場、青垣山をめぐらせる下津岩根の貴の苑、この世を治める丸山の、神の稜威は世継王山。桶伏の丸き神の丘、黄金の玉が隠された貴の聖地の永久に動かぬ御代の神柱。
国武彦が常永に鎮まりまして、天翔り国翔ける神力を潜め居る弥仙山。木の花姫の生御魂である埴安彦や埴安姫が築いた神の都は、いつしか栄えて開ける梅の花。
悦子姫一行は、英子姫から弥仙山に神業があると聞いて山に上り、玉照姫の出産に立ち会った。
悦子姫は神の大命を被って、音彦、加米彦、夏彦に命じて世継王山の麓にささやかな家を造らせた。ここに国治立命、豊国姫命を鎮祭した。
ある日、悦子姫を尋ねてくる四人の男女があった。それは、紫姫、青彦、馬、鹿の四人連れであった。
悦子姫は、紫姫のみを部屋に入れて人払いをした。その他の一同は、仕方なく外で待っている。その間、夏彦と加米彦は軽口を叩き合っている。
加米彦が悦子姫に人払いの解除を催促に行くと、一同は呼び戻された。そして神命により悦子姫は近江の竹生島に音彦を伴って行く事になった、と告げた。竹生島には、神素盞嗚大神がお隠れになっている。
加米彦と夏彦は、残って世継王山麓の館を守ることになった。年長者の夏彦を主と決めた。
紫姫一行は、神命によって行く先を授けられた。青彦は、日の出神より若彦と名を賜った。
翌朝、悦子姫と音彦は竹生島へと発ち、紫姫は供の三人に行く先も告げないまま、由良川の河辺伝いに西北指して進んでいった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1804
愛善世界社版:57頁 八幡書店版:第3輯 658頁 修補版: 校定版:59頁 普及版:26頁 初版: ページ備考:
001(あめ)(つち)との(かみ)水火(いき)
002うまらにつばらに大八洲(おほやしま)
003(あま)沼矛(ぬほこ)一雫(ひとしづく)
004自転倒島(おのころじま)真秀良場(まほらば)
005青垣山(あをがきやま)(めぐ)らせる
006下津岩根(したついはね)(うづ)(その)
007(この)()(をさ)むる丸山(まるやま)
008(かみ)稜威(みいづ)世継王山(よつわうやま)
009(ちから)(かく)して桶伏(をけふせ)
010(まる)姿(すがた)(かみ)(をか)
011黄金(こがね)(たま)(かく)されし
012(うづ)聖地(せいち)永久(とこしへ)
013(うご)かぬ御代(みよ)神柱(かむばしら)
014国武彦(くにたけひこ)常永(とことは)
015(しづ)まりまして(あま)(かけ)
016(くに)かけります神力(しんりき)
017(ひそ)めて(ここ)弥仙山(みせんざん)
018()花姫(はなひめ)生御魂(いくみたま)
019埴安彦(はにやすひこ)埴安姫(はにやすひめ)
020(かみ)(みこと)()てましし
021(かみ)(みやこ)何時(いつ)しかに
022(ひら)けて(さか)ゆる(うめ)(はな)
023(かほ)(ゆか)しき(まつ)()
024弥勒(みろく)御代(みよ)老松(おいまつ)
025(しげ)川辺(かはべ)小雲川(こくもがは)
026(きよ)(なが)れの(そこ)(ふか)
027四方(よも)神々(かみがみ)人々(ひとびと)
028霊魂(みたま)(あら)白瀬川(しらせがは)
029(かみ)仕組(しぐみ)由良(ヨルダン)
030ほまれを(なが)生田川(いくたがは)
031イクタの(なや)(しの)ぎつつ
032神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)
033(あめ)(つち)との神柱(かむばしら)
034堅磐常磐(かきはときは)()(たま)
035(やみ)()らして英子姫(ひでこひめ)
036万代(よろづよ)寿(ことほ)亀彦(かめひこ)
037(つる)巣籠(すごも)松ケ枝(まつがえ)
038千代(ちよ)(いしずゑ)(かた)めつつ
039(この)()(みだ)曲津神(まがつかみ)
040鬼雲彦(おにくもひこ)言向(ことむ)けて
041四方(よも)(ふさ)がる叢雲(むらくも)
042(かみ)伊吹(いぶき)吹払(ふきはら)
043(きよ)めにや山家(やまが)肥後(ひご)(はし)
044神子坂橋(みこさかばし)手前(てまへ)まで
045スタスタ(きた)宣伝使(せんでんし)
046(おぼろ)にかかる月影(つきかげ)
047(すか)して(むか)ふを(なが)むれば
048(むし)()らすか(なん)となく
049(こころ)にかかる春霞(はるがすみ)
050シカと()えねど陽炎(かげろふ)
051(またた)()もなく宣伝歌(せんでんか)
052(みみ)さす(ごと)(きこ)()
053ツと立止(たちと)まり(みち)()
054様子(やうす)(うかが)(をり)もあれ
055夜目(よめ)にシカとは(わか)らねど
056どこやら気分(きぶん)悦子姫(よしこひめ)
057(ゆか)しき(かげ)とおとなへば
058(あん)にたがはぬ麻柱(あななひ)
059(かみ)(つかさ)悦子姫(よしこひめ)
060川瀬(かはせ)(ひび)音彦(おとひこ)
061まだシーズンは(きた)らねど
062()夏彦(なつひこ)加米彦(かめひこ)
063随従(みとも)(かげ)四人連(よにんづ)
064(つれ)()浮世(うきよ)()まれたる
065(こころ)(そこ)のつれづれを
066徒然草(つれづれぐさ)(しとね)とし
067(たがひ)にあかす物語(ものがたり)
068神徳(しんとく)()らす()()()()
069(いつ)御霊(みたま)六人連(むたりづ)
070七度(ななたび)八度(やたび)(ここの)(たり)
071百度(ももたび)千度(ちたび)万度(よろづたび)
072(かめ)加米(かめ)との呼吸(いき)(あは)
073顕幽二界(けんいうにかい)出没(しゆつぼつ)
074五六七(みろく)御代(みよ)(きた)すまで
075(こころ)(おび)(かた)()
076()くさにや山家(やまが)(みち)()
077(ふか)(おも)ひを(のこ)しつつ
078(ひがし)西(にし)(わか)()
079(つも)(ねが)ひの山坂(やまさか)
080さらばさらばの(こゑ)(とも)
081(わか)()くこそ雄々(をを)しけれ
082悦子(よしこ)(ひめ)はスタスタと
083三人(みたり)益良夫(ますらを)(ともな)ひて
084胸突坂(むなつきざか)辿(たど)りつつ
085(こころ)(そら)()かぶ(くも)
086英子(ひでこ)(ひめ)御言葉(おんことば)
087由縁(ゆかり)ありげに(あぢ)はひつ
088(かすみ)辿(たど)心地(ここち)して
089いと(いさ)ましくかけて()
090(やま)老樹(らうじゆ)大空(おほぞら)
091(ふう)じて月日(つきひ)(かく)しつつ
092(ふか)仕組(しぐみ)(つつ)むなる
093躑躅(つつじ)(はな)のここかしこ
094(むね)もいろいろ(みだ)()
095咲耶(さくや)(ひめ)(まつ)りたる
096()(はな)(にほ)(かみ)(やま)
097(めぐみ)(たか)須弥仙(しゆみせん)
098(やま)(ふもと)()()れば
099アヽ天国(てんごく)楽園(らくゑん)
100(やま)(やま)とに(はさ)まれし
101青麦畑(あをむぎばたけ)菜種花(なたねばな)
102紫雲英(げんげ)(はな)()きみちて
103心持(こころもち)よき(はな)むしろ
104(てふ)()(あそ)神苑(しんゑん)
105(こころ)(あか)丹頂(たんちやう)
106(つる)()りたる(ごと)くなる
107景色(けしき)(なが)めて(しづ)()
108(ほそ)(けぶり)豊彦(とよひこ)
109(ゆき)(あざむ)白髯(しらひげ)
110折柄(をりから)()()春風(はるかぜ)
111いぢらせ(なが)らコツコツと
112あかざ(つゑ)にすがりつつ
113(かみ)使(つか)ひか真人(しんじん)
114やつれし(ひと)()もやらず
115威風(ゐふう)(そな)はる(おきな)どの
116(たの)むとかけし(こと)()
117刹那(せつな)(かぜ)(あふ)られて
118(こころ)もそよぐ悦子姫(よしこひめ)
119(かみ)にひかるる(おも)ひにて
120伏屋(ふせや)(まへ)()()れば
121三月三日(さんぐわつみつか)菱餅(ひしもち)
122(まが)ふべらなる(かど)()
123(おどろ)(なが)何気(なにげ)なう
124表戸(おもてど)(ひら)音彦(おとひこ)
125悦子(よしこ)(ひめ)(とも)なひて
126しけこき小屋(こや)(あが)(ぐち)
127(やす)らふ(をり)しも老夫婦(らうふうふ)
128(てふ)(はな)よと(はぐく)みし
129生命(いのち)(たの)掌中(しやうちう)
130(むすめ)のお(たま)病気(いたつき)
131(こころ)にかかる物語(ものがたり)
132うまらにつばらに()りつれば
133慈愛(じあい)権化(ごんげ)悦子姫(よしこひめ)
134真玉手(またまで)玉手(たまで)さし()べて
135(むすめ)のお(たま)()でさすり
136(くび)(かたむ)けとつおいつ
137(おい)夫婦(ふうふ)打向(うちむか)
138豊彦(とよひこ)豊姫(とよひめ)(たま)さま
139(かなら)心配(しんぱい)(あそ)ばすな
140一生(いつしやう)(なほ)らぬ()(やまひ)
141生命(いのち)にかかる気遣(きづか)ひは
142ない(なみだ)()らしませ
143(いづ)御霊(みたま)大神(おほかみ)
144五六七(みろく)御代(みよ)(いしずゑ)
145(かみ)水火(いき)をば(かた)めまし
146(たま)(かた)(たい)()
147()つの御霊(みたま)(むつ)()
148宿(やど)りましたる(かみ)御子(みこ)
149(ひと)呼吸(いき)にて(かた)めたる
150(くも)りの(おほ)(たま)でない
151水晶玉(すいしやうだま)のミツ御霊(みたま)
152(いづ)御霊(みたま)()ねませる
153三五(さんご)(つき)大神(おほかみ)
154(をしへ)(まも)神人(しんじん)
155今日(けふ)(うれ)しき誕生日(たんじやうび)
156黒白(あやめ)()かぬ(やみ)()
157(いよいよ)(ひら)(はる)(そら)
158アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
159御霊(みたま)(さち)はひましませと
160(いの)(をり)しも(たちま)ちに
161ホギヤアホギヤアと(うぶ)(こゑ)
162(ぢぢ)姿(ばば)アは()ふも(さら)
163おつたま()たるお(たま)まで
164妊娠(おと)がしてから十八月(じふやつき)
165(かみ)(めぐみ)(つつが)なく
166()(おと)したる音彦(おとひこ)
167万代(よろづよ)(いは)加米彦(かめひこ)
168()(まひ)(あし)()(ところ)
169()らぬ(ばか)りに雀躍(こをどり)
170芽出度(めでた)芽出度(めでた)いお芽出(めで)たい
171千代(ちよ)八千代(やちよ)伊勢蝦(いせえび)
172(まが)つた(こし)夏彦(なつひこ)
173(もも)(よはひ)(かさ)ねつつ
174ピンピンシヤンと()ねまはる
175(この)瑞祥(ずゐしやう)のミツ御霊(みたま)
176悦子(よしこ)(ひめ)(はか)らひに
177玉照姫(たまてるひめ)命名(めいめい)
178()ぶる挨拶(あいさつ)そこそこに
179口籠(くちごも)りたる涙声(なみだごゑ)
180(なみだ)(あめ)(しの)ぎつつ
181門口(かどぐち)()づる()つの(かさ)
182()ツつの(つゑ)()(たた)
183(はる)(かすみ)(つつ)まれて
184(かさ)空中(くうちう)(ゆら)()
185()烏羽玉(うばたま)()()てて
186一夜(ひとや)()かす(もり)(なか)
187(からす)(こゑ)諸共(もろとも)
188(また)もや(すす)()つの(つゑ)
189弥仙(みせん)(やま)絶頂(ぜつちやう)
190四足(しそく)草蛙(わらぢ)(つつが)なく
191七尺(しちしやく)(あま)りの()()せて
192(かみ)御声(みこゑ)(かさ)(うち)
193(いづ)御前(みまへ)のいと(きよ)
194(おに)大蛇(をろち)もコンパスの
195谷間(たにま)()して(くだ)()
196(ここ)四人(よにん)一行(いつかう)
197(みね)(あらし)(おく)られて
198老木(らうぼく)(しげ)谷路(たにみち)
199(なが)れに沿()ひて逸早(いちはや)
200(すす)(すす)みて檜山(ひのきやま)
201(かみ)(めぐみ)()(はな)
202一度(いちど)(ひら)梅迫(うめざこ)
203(みち)(すぐ)なる上杉(うへすぎ)
204(さと)(うしろ)味方原(みかたばら)
205(ふか)仕組(しぐみ)白瀬川(しらせがは)
206浪音(なみおと)(たか)音彦(おとひこ)
207加米(かめ)(なつ)とを(とも)なひて
208悦子(よしこ)(ひめ)(まも)りつつ
209(あや)聖地(せいち)(のぼ)()
210(うづ)御言(みこと)(かうむ)りし
211悦子(よしこ)(ひめ)(むね)(うち)
212うちあけかねし(くるし)みは
213(かみ)より(ほか)()(ひと)
214(はか)()られぬ仕組(しぐみ)なり
215アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
216御霊(みたま)(さち)はひましませよ。
217 悦子姫(よしこひめ)は、218世継王山(よつわうざん)(ふもと)に、219(かみ)大命(たいめい)(かうむ)りて、220加米彦(かめひこ)221夏彦(なつひこ)222音彦(おとひこ)(めい)じ、223(ささ)やかなる(いへ)(つく)らしめ、224ここに国治立命(くにはるたちのみこと)225豊国姫命(とよくにひめのみこと)二神(にしん)鎮祭(ちんさい)し、226加米彦(かめひこ)227夏彦(なつひこ)をして(これ)(まも)らしめ、228(みづか)らは音彦(おとひこ)(とも)なひ、229神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)(かく)(たま)近江(あふみ)竹生島(ちくぶしま)出立(しゆつたつ)せむとする(をり)しも、230悦子姫(よしこひめ)在処(ありか)(たづ)ねて(きた)四人(よにん)男女(だんぢよ)231()(やうや)西山(せいざん)(かく)れし黄昏時(たそがれどき)232(もん)()(たた)いて、
233『モシモシお(たづ)(まを)します。234(この)(うち)悦子姫(よしこひめ)(さま)のお(やかた)では御座(ござ)いませぬか』
235(やさ)しき(をんな)(こゑ)
236加米彦(かめひこ)『ヤアどこやらで()いた(こと)()(やう)(こゑ)だ……おい夏彦(なつひこ)237(おもて)()けて()よ』
238夏彦(なつひこ)(この)()()(しげ)つた(やま)(すそ)一軒家(いつけんや)239薄暗(うすぐら)くなつてから、240(をんな)(こゑ)()して(たづ)ねて()るよな(もの)は、241どうせ本物(ほんもの)であるまい……加米彦(かめひこ)242御苦労(ごくらう)だが()けて(くだ)さらぬか。243(わし)(また)弥仙山(みせんざん)(やう)(こゑ)がすると(こま)るからなア』
244加米彦(かめひこ)『エー()(よわ)(をとこ)だなア。245(ひる)になるとビチビチはしやいで、246(よる)になると悄気(せうげ)(しま)加米彦(かめひこ)……オツトドツコイ夏彦(なつひこ)(やう)(をとこ)だなア』
247夏彦(なつひこ)『ハヽヽヽ、248オイ加米彦(かめひこ)249チツト勘定(かんぢやう)(ちが)ひはしませぬか、250ソンナ計算(けいさん)をやつて()ると、251一年(いちねん)()たずに破産(はさん)運命(うんめい)(おちい)り、252身代(しんだい)(かぎ)りの処分(しよぶん)()けますぞ』
253加米彦(かめひこ)『ナーニ、254一寸(ちよつと)神霊術(しんれいじゆつ)()つて、255人格(じんかく)交換(かうくわん)をやつたのだ。256(まへ)肉体(にくたい)には加米彦(かめひこ)(うつ)り、257加米彦(かめひこ)肉体(にくたい)にはお(まへ)(れい)(うつ)つて()るのだから、258所謂(いはゆる)259(まへ)()()けるのは畢竟(つまり)加米彦(かめひこ)()けるのだ。260……オイ加米彦(かめひこ)代表者(だいへうしや)261夏彦(なつひこ)命令(めいれい)する、262……(はや)()けないか』
263夏彦(なつひこ)『エー(なん)とかかとか()つて、264責任(せきにん)忌避(きひ)する(こと)ばつかり(かんが)へて()やがる。265……アヽ仕方(しかた)がない、266ソンナラ(じゆん)加米彦(かめひこ)()()けてやらうかい』
267小声(こごゑ)(ささや)(なが)ら、268ガラリと()けた。
269夏彦(なつひこ)『ヤアあなたは紫姫(むらさきひめ)(さま)270……ヤア青彦(あをひこ)さま、271(うま)さま、272鹿(しか)さま、273(ひさ)(ぶり)だ。274サア這入(はい)つて(くだ)さい。275……オイオイ夏彦(なつひこ)代理(だいり)276紫姫(むらさきひめ)(さま)御光来(ごくわうらい)だ。277悦子姫(よしこひめ)(さま)御取次(おとりつぎ)(まを)さぬか』
278加米彦(かめひこ)『モウ人格(じんかく)変換(へんくわん)だ。279(しか)悦子姫(よしこひめ)(さま)申上(まをしあ)げるのは、280矢張(やつぱり)加米彦(かめひこ)特権(とくけん)だ』
281一間(ひとま)()り、
282『モシモシ悦子姫(よしこひめ)さま、283紫姫(むらさきひめ)さま一行(いつかう)()えました』
284悦子姫(よしこひめ)『それは()(ところ)()(くだ)さつた。285(じつ)夜前(やぜん)から、286一寸(ちよつと)287神界(しんかい)御用(ごよう)があるので、288鎮魂(ちんこん)をかけて()いたのです。289青彦(あをひこ)290馬公(うまこう)291鹿公(しかこう)さんも()ましたでせう』
292加米彦(かめひこ)『ヤアあなたは(へん)(こと)仰有(おつしや)いますネ』
293悦子姫(よしこひめ)天眼通(てんがんつう)294自他神通(じたしんつう)妙法(めうはふ)(もつ)て、295(ひと)霊魂(みたま)自由自在(じいうじざい)使(つか)うたのです、296ホヽヽヽ』
297加米彦(かめひこ)『ヤアそンな(こと)があなたに出来(でき)るとは、298今迄(いままで)(おも)はなかつた。299(ひと)見掛(みかけ)()らぬものですネー』
300悦子姫(よしこひめ)紫姫(むらさきひめ)さまを一時(いちじ)(はや)く、301(わたくし)居間(ゐま)へお()(まを)して(くだ)さい』
302承知(しようち)(いた)しました』
303加米彦(かめひこ)は、304(つぎ)()(さが)り、
305『アヽやつぱり(をんな)女連(をんなづ)れだ。306モシモシ紫姫(むらさきひめ)さま、307悦子姫(よしこひめ)(さま)特別(とくべつ)待遇(たいぐう)(もつ)てあなた一人(ひとり)(かぎ)り、308拝謁(はいえつ)(ゆる)すと(あふ)せられます。309どうぞ(おく)へお(とほ)(くだ)さい』
310紫姫(むらさきひめ)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います』
311(おく)一間(ひとま)姿(すがた)(かく)したり。
312悦子姫(よしこひめ)『コレ音彦(おとひこ)さま、313加米彦(かめひこ)さま、314あなた(しばら)く、315(わたし)(こゑ)(きこ)えぬ(とこ)()(くだ)さい。316(すこ)御相談(ごさうだん)がありますから……』
317加米彦(かめひこ)(をんな)曲者(くせもの)とはよく()つたものだ、318ナア音彦(おとひこ)さま、319今迄(いままで)音彦(おとひこ)々々(おとひこ)仰有(おつしや)つたが、320紫姫(むらさきひめ)さまがお()でになるが(はや)いか、321一寸(ちよつと)相談(さうだん)があるから、322(きこ)えぬ(とこ)()(くだ)さい……なンテ本当(ほんたう)馬鹿(ばか)にされますなア』
323音彦(おとひこ)(なに)()(かく)324(みな)さま、325(しばら)(はやし)(なか)へでも()つて、326面白(おもしろ)(はなし)でも(いた)しませう。327何時(なんどき)吾々(われわれ)()うやつて()つても、328悦子姫(よしこひめ)女王(ぢよわう)から、329ドンナ御命令(ごめいれい)(さが)つて、330何処(どこ)出張(しゆつちやう)(めい)ぜられるやら(わか)つたものぢやない。331(いま)(うち)(ひと)つゆつくりと、332芝生(しばふ)(うへ)打解(うちと)けて(はなし)(いた)しませうかい。333青彦(あをひこ)さま、334(うま)さま、335鹿(しか)さま、336サア(まゐ)りませう』
337音彦(おとひこ)(さき)()ち、338半丁(はんちやう)(ばか)(はな)れたる木下闇(こしたやみ)に、339(さぐ)(さぐ)(すす)()く。
340加米彦(かめひこ)『アヽ(くら)(くら)い、341(まる)弥仙山(みせんざん)野宿(のじゆく)した(とき)(やう)だ』
342夏彦(なつひこ)『キヤツキヤツ、343ザアザア、344ウンウン、345バチバチ、346ガラガラ……ガ、347サアこれから幕開(まくあ)きと御座(ござ)い』
348加米彦(かめひこ)『エーしやうもない(こと)()ふな。349言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)だ。350(しか)(なが)夏彦(なつひこ)351貴様(きさま)紫姫(むらさきひめ)さまに電波(でんぱ)を、352チヨイチヨイ(おく)つて()るが、353長持(ながもち)(ふた)だ、354片一方(かたいつぱう)はアイても、355片一方(かたいつぱう)はアク気遣(きづか)ひはないワ。356モウ今日(けふ)(かぎ)り、357執着心(しふちやくしん)()てたが()からうぞ』
358夏彦(なつひこ)(なに)()ひよるのだ。359(かはづ)(くち)から、360……それや貴様(きさま)(こと)だよ』
361加米彦(かめひこ)『ナーニ、362貴様(きさま)(れい)(おれ)肉体(にくたい)始終(しじう)出入(でいり)しよつて、363ソンナ(こころ)()しよるのだ。364貴様(きさま)(れい)憑依(ひようい)した(とき)(こひ)猛烈(まうれつ)さ……と()つたら、365九寸五分式(くすんごぶしき)だ、366まだも(ちが)へば軋死式(あつししき)367首吊(くびつ)(しき)368暴風雨(ばうふうう)地震式(ぢしんしき)(こひ)(くも)(つつ)ンで()よつて、369暗憺咫尺(あんたんしせき)(べん)ぜずと()ふ……時々(ときどき)(まく)()りるのだよ。370もう()加減(かげん)改心(かいしん)をして、371(おれ)肉体(にくたい)(はな)れて()れ。372(その)(かは)りに小豆飯(あづきめし)三升(さんじよう)三合(さんがふ)373油揚(あぶらあげ)三十三枚(さんじふさんまい)()つて、374四辻(よつつじ)まで(おく)つてやる、375()れでモウさつぱりと(あきら)めるのだよ』
376夏彦(なつひこ)(なに)()やがるのだ。377勝手(かつて)(ねつ)ばつかり()きよつて、378……弥仙山(みせんざん)極秘(ごくひ)を、379音彦(おとひこ)さまの(まへ)暴露(ばくろ)しようか』
380加米彦(かめひこ)『どうなつと勝手(かつて)にしたが()いワい。381大胆不敵(だいたんふてき)加米彦(かめひこ)梟鳥式(ふくろどりしき)だ。382()()暗夜(あんや)になればなる(ほど)383元気(げんき)旺盛(わうせい)となつて()るのだ。384弥仙山(みせんざん)野宿(のじゆく)した(とき)は、385貴様(きさま)副守護神(ふくしゆごじん)(おれ)肉体(にくたい)憑依(ひようい)しよつて、386臆病(おくびやう)(ざま)()せたぢやないか。387他人(ひと)(こと)ぢやと(おも)うて()れば、388(みな)()(こと)であるぞよ、389改心(かいしん)なされ……』
390夏彦(なつひこ)『どこまでも厳重(げんぢう)鉄条網(てつでうまう)()りよつて、391攻撃(こうげき)する余地(よち)がなくなつた。392まつ四角(しかく)(かほ)四角(しかく)(かた)(そび)やかし、393四角(しかく)四面(しめん)な、394冗談(ぜうだん)(ひと)()はぬ(やう)(かぜ)(よそほ)うて居乍(ゐなが)ら、395ぬらりくらりと、396まるで蛸入道(たこにふだう)(やう)代物(しろもの)だなア。397カメと()(やつ)ア、398六角(ろくかく)(かふ)()()(やつ)だが、399此奴(こいつ)二角(にかく)(ほど)(おと)して()よつた。400カメと(すつぽん)との混血児(こんけつじ)だなア。401……オーさうさう混血児(こんけつじ)(おも)()した。402コンコン()(やつ)ア、403やつぱり、404ケツだ。405小豆飯(あづきめし)油揚式(あぶらあげしき)霊魂(みたま)だ。406(その)(せい)か、407()(くち)(なめ)らかに(すべ)(わい)
408音彦(おとひこ)『オイ加米彦(かめひこ)409充分(じゆうぶん)今日(けふ)気焔(きえん)()いて()かして()れ。410明日(あす)はお(わか)れせにやならぬかも(わか)らないからなア』
411加米彦(かめひこ)『エーそれや音彦(おとひこ)さま、412本当(ほんたう)ですか』
413音彦(おとひこ)『どうやらソンナ気配(けはい)がする(やう)だ。414どうも悦子姫(よしこひめ)さまのお顔色(かほいろ)(あら)はれて()(やう)だ』
415加米彦(かめひこ)『アハー、416あなたは、417()がな(すき)がな、418あの(うつく)しい別嬪(べつぴん)見詰(みつ)めて御座(ござ)(だけ)あつて(ちが)つてますなア。419(をとこ)(あや)しい笑靨(ゑくぼ)(なか)()()みて(しま)(だけ)魔力(まりよく)保有(ほいう)して御座(ござ)女王(ぢよわう)さまだから、420何時(いつ)()にか音彦(おとひこ)さまも恋縛(れんばく)()けなさつたと()えるワイ……ヤアお芽出(めで)たう、421おウラ山吹(やまぶき)さま、422……(しか)(なが)道心堅固(だうしんけんご)悦子姫(よしこひめ)(さま)だ。423太田道灌(おほただうくわん)ぢやないが「七重八重(ななへやへ)(はな)()けども山吹(やまぶき)の、424()(ひと)つだになきぞ(かな)しき」とウツカリ秋波(しうは)でも(おく)らうものなら、425三十珊(さんじつサンチ)巨弾(きよだん)撃退(げきたい)されて(しま)ふよ。426自惚(うぬぼれ)梅毒気(かさけ)()(もの)滅多(めつた)にないから、427音彦(おとひこ)さま、428()()()けなさい』
429音彦(おとひこ)『アハヽヽヽ、430加米彦(かめひこ)さま、431それは、432(れい)人格(じんかく)交換(かうくわん)ぢや()りませぬか。433音彦(おとひこ)でなくて実際(じつさい)加米彦(かめひこ)さまの(こと)でせう。434芽出(めで)たいお(かた)ですネ』
435 一同(いちどう)大声(おほごゑ)()げて(わら)ふ。
436加米彦(かめひこ)『モウ密談(みつだん)()みただらう。437()加減(かげん)()()かして(かへ)りませうか、438コンナ(くら)がりへ()()まれて、439夜分(やぶん)()()えぬ人間(にんげん)は、440(いささ)迷惑(めいわく)だ。441()()(くら)(ばん)得意(とくい)(やつ)はアマ夏彦(なつひこ)一匹(いつぴき)(くらゐ)なものだ、442ワツハヽヽヽ』
443仇笑(あだわら)ひつつ(さき)()(かへ)つて()く。444加米彦(かめひこ)445門口(かどぐち)より、
446『モシモシ悦子姫(よしこひめ)(さま)447モウ御安産(ごあんざん)()みましたかな、448(をとこ)でしたか(をんな)でしたか、449……(なん)()ふお()をおつけになりました。450……玉照彦(たまてるひこ)ですか……』
451悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ、452加米(かめ)さまですか。453エライ失礼(しつれい)(いた)しました。454サア(みな)さまと一緒(いつしよ)にお這入(はい)(くだ)さいませ』
455加米彦(かめひこ)『お役目(やくめ)なれば、456(まか)(とほ)るツ。457悦子姫(よしこひめ)殿(どの)458紫姫(むらさきひめ)殿(どの)459(ゆる)させられえ』
460とワザと(からだ)角立(かどだ)て、461紙雛(かみびな)(やう)なスタイルで、462(やや)()気味(ぎみ)になつて、463悦子姫(よしこひめ)居間(ゐま)にズーツと(とほ)る。
464悦子姫(よしこひめ)加米(かめ)さま、465冗談(ぜうだん)()加減(かげん)にして()きなさらぬか。466(わたし)明早朝(みやうさうてう)467音彦(おとひこ)さまと此処(ここ)立出(たちい)で、468()(ところ)(まゐ)ります。469加米彦(かめひこ)さまと夏彦(なつひこ)さま、470どうぞ留守(るす)をシツカリ(たの)みます』
471加米彦(かめひこ)『ヘー、472ヤツパリ……ヤツパリですなア』
473悦子姫(よしこひめ)『エツ、474(なん)ですと』
475加米彦(かめひこ)『ヤア、476(なん)でも()りませぬ。477ヤツパリあなたは神界(しんかい)大切(たいせつ)御用(ごよう)をなさるお(かた)478到底(たうてい)吾々(われわれ)ヘツポコの(はか)()(べか)らざる御経綸(ごけいりん)()ると()えますワイ』
479悦子姫(よしこひめ)『ホヽヽヽ』
480紫姫(むらさきひめ)『ホヽヽヽ』
481音彦(おとひこ)唯今(ただいま)(うけたま)はれば、482(わたくし)はあなたと(とも)に、483どつかへ(まゐ)るのですか』
484悦子姫(よしこひめ)『ハイ御苦労様(ごくらうさま)(なが)ら、485どうぞ(わたし)()いて()(くだ)さいませ』
486音彦(おとひこ)『ハイ承知(しようち)(つかまつ)りました。487どこまでも、488神様(かみさま)(ため)ならば、489(とも)(いた)しませう』
490加米彦(かめひこ)『ヤア音彦(おとひこ)(みこと)491万歳(ばんざい)々々(ばんざい)
492と、493度拍子(どべうし)()けた大声(おほごゑ)呶鳴(どな)()てる。
494音彦(おとひこ)加米彦(かめひこ)さま、495(なが)らく御昵懇(ごぢつこん)になりましたが、496(しばら)くお(わか)れせなくてはなりませぬ。497どうぞ機嫌(きげん)よく留守(るす)をして()(くだ)さいませや』
498加米彦(かめひこ)『ハイハイ(かしこ)まりました。499あなたも、500悦子姫(よしこひめ)さまと御機嫌(ごきげん)よく、501(あひ)提携(ていけい)して、502極秘的(ごくひてき)神業(しんげふ)御参加(ごさんか)(くだ)されませ』
503意味(いみ)()りげに、504ニタリと(わら)ふ。
505夏彦(なつひこ)悦子姫(よしこひめ)(さま)506(わたくし)はお(とも)(かな)ひませぬか』
507悦子姫(よしこひめ)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。508(しか)(なが)神様(かみさま)御命令(ごめいれい)で、509あなたは(しばら)く、510(わらは)(かへ)るまで、511加米彦(かめひこ)さまと留守(るす)をして()(くだ)さいませ』
512加米彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、513(ざま)()い、514サア明日(あす)からは(この)加米彦(かめひこ)の、515何事(なにごと)指揮(しき)命令(めいれい)服従(ふくじゆう)するのだぞ。516……モシモシ悦子姫(よしこひめ)さま、517どうぞあなたのお留守中(るすちう)は、518夏彦(なつひこ)吾々(われわれ)命令(めいれい)服従(ふくじゆう)(いた)します(やう)に、519(きび)しく命令(めいれい)(くだ)しておいて(くだ)さい。520上下(じやうげ)区別(くべつ)がついて()ませぬと、521(すべ)ての(てん)(おい)矛盾(むじゆん)撞着(どうちやく)522政治上(せいぢじやう)統一(とういつ)(みだ)しますから……』
523悦子姫(よしこひめ)加米彦(かめひこ)さま、524あなたお(とし)幾歳(いくつ)でしたかネー』
525加米彦(かめひこ)『ハイ(わたくし)はザツト二十才(にじつさい)御座(ござ)います』
526悦子姫(よしこひめ)(ちが)ひませう……』
527加米彦(かめひこ)『イエ(べつ)に……さう沢山(やつと)(ちが)ひませぬが……精神上(せいしんじやう)から(まを)せば、528()二十才(にじつさい)……現界(げんかい)肉体(にくたい)(あら)はしてからは三十三年(さんじふさんねん)になります』
529悦子姫(よしこひめ)『それは大変(たいへん)違算(ゐさん)ぢやありませぬか』
530加米彦(かめひこ)何分(なにぶん)亡父(ぼうふ)貧乏暮(びんばふぐら)しをして()たものですから、531素寒貧(すかんぴん)で、532十三(じふさん)仰山(ぎやうさん))な遺産(ゐさん)御座(ござ)いませぬ、533アハヽヽヽ』
534悦子姫(よしこひめ)夏彦(なつひこ)さまは幾才(いくつ)ですか』
535夏彦(なつひこ)『ハイ(わたくし)()(わり)とは、536ひね南瓜(かぼちや)御座(ござ)います。537精神(せいしん)()(かく)も、538肉体(にくたい)四十八(しじふはち)になりました』
539悦子姫(よしこひめ)『アヽそれなら年長者(ねんちやうしや)(もつ)上役(うはやく)(さだ)めます。540加米彦(かめひこ)さま、541(わたし)此家(ここ)出立(しゆつたつ)するが最後(さいご)542何事(なにごと)夏彦(なつひこ)さまの指揮(しき)命令(めいれい)(したが)つて、543神妙(しんめう)留守(るす)をして(くだ)さいや』
544加米彦(かめひこ)『ヘエ………』
545 悦子姫(よしこひめ)546(やや)顔色(がんしよく)()へ、
547加米彦(かめひこ)さま、548(いや)ですか』
549『イヤイヤ滅相(めつそう)もない、550何事(なにごと)もあなたの御命令(ごめいれい)(したが)ひます』
551悦子姫(よしこひめ)夏彦(なつひこ)さまの命令(めいれい)(すなは)(わたし)命令(めいれい)552どうぞ(よろ)しうお(たの)(まを)します』
553とワザと両手(りやうて)をついて叮嚀(ていねい)(した)から()る。
554『エー(じつ)(ところ)は、555夏彦(なつひこ)(した)()くのは(むし)()きませぬが、556其処(そこ)まで仰有(おつしや)つて(くだ)さいますれば、557(つつし)みてお(うけ)(いた)します。558……悦子姫(よしこひめ)(さま)のお代理(だいり)夏彦(なつひこ)(さま)559どうぞ(よろ)しう、560何事(なにごと)御指導(ごしだう)(くだ)さいませ』
561夏彦(なつひこ)『お互様(たがひさま)(よろ)しうお(ねがひ)(いた)します』
562悦子姫(よしこひめ)『どうぞお二人(ふたり)さま、563公私(こうし)混同(こんどう)せない(やう)(たの)みますで……』
564 二人(ふたり)一度(いちど)に、
565『ハイハイ承知(しようち)(いた)しました』
566両手(りやうて)()き、567今度(こんど)真面目(まじめ)になつてお(うけ)をする。
568紫姫(むらさきひめ)青彦(あをひこ)さま、569(うま)さま、570鹿(しか)さま、571これから(わたし)は、572悦子姫(よしこひめ)(さま)神様(かみさま)より重大(ぢうだい)なる使命(しめい)(かうむ)りました。573明朝(みやうてう)未明(みめい)此処(ここ)立出(たちい)で、574(わたし)()(ところ)へ、575御苦労(ごくらう)(なが)()いて()(くだ)さい。576さうして青彦(あをひこ)さまと()ふお()は、577一寸(ちよつと)都合(つがふ)(わる)(こと)()りますから、578今日(けふ)(かぎ)()(あらた)めて、579()出神(でのかみ)(さま)より若彦(わかひこ)とお()へになりましたから、580(その)()もりで()(くだ)さいや』
581青彦(あをひこ)『ハイ承知(しようち)(いた)しました。582(なん)だか(あま)稚彦命(わかひこのみこと)(さま)()()たよな()ですなア。583(うれ)しい(やう)でもあり、584(かな)しい(やう)気持(きもち)(いた)します。585(しか)(なが)ら、586何事(なにごと)神命(しんめい)のまにまに、587絶対(ぜつたい)服従(ふくじゆう)(いた)します。588どうぞ(よろ)しう……』
589紫姫(むらさきひめ)『ハイ、590不束(ふつつか)(わたし)591どうぞ(よろ)しう御指導(ごしだう)(あふ)ぎます。592……まだ夜明(よあ)けまでには()御座(ござ)いますれば、593(みな)さま一休眠(ひとやすみ)(いた)しませう』
594音彦(おとひこ)『それや結構(けつこう)です。595サア(みな)さま、596休眠(やすみ)なさいませ。597(さき)失礼(しつれい)
598(よこ)になつて、599(はや)くも高鼾(たかいびき)をかく。
600加米彦(かめひこ)『ナント(つみ)のない(をとこ)だなア。601(いま)(もの)()つて()つたかと(おも)えば、602(はや)高鼾(たかいびき)だ。603人間(にんげん)(ここ)まで(すべ)てに超越(てうゑつ)すれば、604モウ(しめ)たものだ、605悦子姫(よしこひめ)(さま)眼力(がんりき)(えら)いワイ』
606夏彦(なつひこ)『コレコレ加米彦(かめひこ)さま、607皆様(みなさま)のお就寝(やすみ)御邪魔(おじやま)になります。608あなたも(はや)く、609おとなしくお睡眠(やすみ)なさい』
610加米彦(かめひこ)『コレハコレハ上官(じやうくわん)御命令(ごめいれい)611(たしか)遵守(じゆんしゆ)(たてまつ)る、612恐惶頓首(きようくわうとんしゆ)613アツハヽヽヽ』
614(わら)()けた(まま)615呼吸(こきふ)不整調(ふせいてう)高鼾(たかいびき)をかく。616一同(いちどう)()れに(なら)うて、617(のこ)らず(しん)()きたり。
618 (とり)(こゑ)()をさまし、619悦子姫(よしこひめ)音彦(おとひこ)(ともな)ひ、620(あや)大橋(おほはし)打渡(うちわた)り、621山家(やまが)方面(はうめん)()して(すす)()く。622紫姫(むらさきひめ)は、623由良川(ゆらがは)川辺(かはべ)(づた)ひに、624西北(せいほく)()して三人(さんにん)(をとこ)(ともな)ひ、625行先(ゆくさき)をも()げずトボトボと(くだ)()く。626嗚呼(ああ)627紫姫(むらさきひめ)今後(こんご)如何(いか)なる活動(くわつどう)をなすならむか。
628大正一一・四・二五 旧三・二九 松村真澄録)
629(昭和一〇・六・一 王仁校正)