霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 相見互(あひみたがひ)〔六三九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第4篇 舎身活躍 よみ:しゃしんかつやく
章:第11章 相身互 よみ:あいみたがい 通し章番号:639
口述日:1922(大正11)年04月28日(旧04月02日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
元ウラナイ教で、今は三五教の宣伝使となっていた常彦は、観音峠の頂上で旅の疲れからうとうとしていると、みすぼらしい二人の男が登ってくるのに出くわした。これは、黒姫の元から逃げてきた板公と滝公であった。
板公と滝公は、松姫のところも追い出され、困窮していた。二人は常彦を三五教の宣伝使と認め、空腹を満たすために食物の提供を求めた。常彦は握り飯を与えた。
飢えを満たした二人は常彦に礼を言う。常彦は、二人が板公と滝公であることを認め、このような境遇に陥った訳を尋ねた。二人は黒姫のところで失敗をして逃げた顛末を語った。
常彦は、青彦やお節、紫姫らの一行が黒姫のところに行ったと聞いて、三五教信心堅固な彼らがウラナイ教になったことを不審に思う。そこで魔窟ヶ原に行って事の真相を確かめたい、と言う。
滝公と板公は、常彦に恩義を感じて、三五教の人間としてお供したい、と申し出て許可を得る。三人が須知山峠の頂上まで来て休んでいると、そこへ鬼鷹、荒鷹の二人が通りかかった。
鬼鷹、荒鷹は丹州に言われて、こちら方面にやってきたのだ、という。そして、弥仙山の麓の村で、玉照姫という尊い神人が生まれたこと、黒姫が玉照姫をウラナイ教に引き込んで利用しようとしていることを伝えた。
鬼鷹、荒鷹は丹州に言われたとおりの方向に旅を続けた。常彦は、弥仙山に興味を抱きつつ、最初に決めた目的地に進むことを思案した。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:187頁 八幡書店版:第3輯 706頁 修補版: 校定版:193頁 普及版:85頁 初版: ページ備考:愛世版と校定版は目次「身」、本文「見」。八幡版は目次も本文も「見」。普及版は目次も本文も「身」。
001()りみ()らずみ(そら)(ひく)
002四辺(あたり)(くら)黄昏(たそが)れて
003山時鳥(やまほととぎす)遠近(をちこち)
004本巣(ほんざう)かけたか、かけたかと
005八千八声(はつせんやこゑ)()()いて
006(こゑ)湿(しめ)りし五月空(さつきぞら)
007(うき)(なや)める人々(ひとびと)
008(をし)へて(かみ)大道(おほみち)
009(すく)はむものと常彦(つねひこ)
010鬼ケ城山(おにがじようざん)(あと)にして
011(あし)もゆらゆら由良(ゆら)(かは)
012(じや)(はな)長谷(はせ)(さと)()
013生野(いくの)()ぎての檜山(ひのきやま)
014須知(しゆち)蒲生野(こもの)()()えて
015(こま)鞭打(むちう)一人旅(ひとりたび)
016観音峠(くわんおんたうげ)頂上(ちやうじやう)
017シトシト(きた)(あめ)(そら)
018(とほ)彼方(あなた)見渡(みわた)せば
019天神山(てんじんやま)小向山(こむきやま)
020(はな)園部(そのべ)()(した)
021横田(よこた)木崎(きざき)開展(かいてん)
022高城山(たかしろやま)雲表(うんぺう)
023姿(すがた)(あら)はす夜明(よあ)(ごろ)
024眼下(がんか)野辺(のべ)(なが)むれば
025生命(いのち)(なへ)(うゑ)つける
026早乙女(さをとめ)(たち)()(おも)
027三々伍々(さんさんごご)(たい)をなし
028御代(みよ)富貴(ふうき)(うた)(こゑ)
029さながら神代(かみよ)姿(すがた)なり。
030 常彦(つねひこ)(たうげ)(うへ)岩石(がんせき)(もた)れ、031()旅路(たびぢ)(つか)れを(もよほ)し、032(のぼ)(あさひ)遥拝(えうはい)しつつ、033()らず()らずに睡魔(すゐま)(おそ)はれ()る。
034 観音峠(くわんおんたうげ)頂上(ちやうじやう)さして、035(ひがし)より(のぼ)()二人(ふたり)乞食姿(こじきすがた)
036(かふ)人間(にんげん)も、037()落魄(おちぶ)れては、038どうも仕方(しかた)がないぢやないか。039何程(なにほど)(をとこ)(はだか)百貫(ひやくくわん)だと()つても、040(やぶ)襦袢(じゆばん)一枚(いちまい)()()けて、041()うシヨボシヨボと、042(あめ)()五月雨(さみだれ)(そら)043どこの(うち)(たづ)ねても、044()をピツシヤリ()めて、045野良(のら)()()(もの)ばつかり、046(ちや)一杯(いつぱい)()ばれる(ところ)()し、047谷川(たにがは)(みづ)(すく)つて()めば、048塩分(しほけ)はあるが、049(たちま)(はら)加減(かげん)(わる)うして(しま)ふ。050(はだか)(もの)遺失(おと)さぬ(かは)りに、051(なに)()りつかうと(おも)つても、052せめて着物(きもの)(だけ)なつとなければ、053相手(あひて)になつて()れる(もの)もなし。054純然(じゆんぜん)たるお乞食(こじき)さまと、055誤解(ごかい)されて(しま)ふ。056(じつ)残念(ざんねん)だなア』
057(おつ)天下(てんか)救済(きうさい)するの、058(まこと)(みち)ぢやのと、059偉相(えらさう)()つて()るウラナイ(けう)高城山(たかしろやま)松姫(まつひめ)も、060今迄(いままで)とは態度(たいど)一変(いつぺん)し、061(めし)(うへ)(はへ)(はら)(やう)虐待(ぎやくたい)をしよつたぢやないか。062これと()ふのも、063ヤツパリ此方(こちら)智慧(ちゑ)()らぬからぢや。064(あめ)には(なぶ)られ、065(かぜ)にはなぶられ、066おまけに()にまで襲撃(しふげき)され、067七尺(しちしやく)男子(だんし)が、068(この)(ひろ)天地(てんち)()()るる(ところ)もなき(やう)になつたのも(えう)するに、069智慧(ちゑ)(まは)らぬからだよ。070あの梅公(うめこう)(やつ)(はじ)め、071松姫(まつひめ)(ごと)きは、072随分(ずゐぶん)陰険(いんけん)代物(しろもの)だが、073巧妙(うま)黒姫(くろひめ)取入(とりい)つて、074(いま)では豪勢(がうせい)なものだ。075(なん)とかして、076モウ一度(いちど)黒姫(くろひめ)部下(ぶか)になる(わけ)にはいかうまいかなア』
077(かふ)一旦(いつたん)男子(だんし)広言(くわうげん)()いて、078此方(こちら)から(ひま)()れた以上(いじやう)079ノメノメと()()つて()(こと)出来(でき)ようか。080(たか)()ゑても()()まぬ……と()(こと)がある。081ソンナ弱音(よわね)()くな、082(やみ)(あと)には(つき)()るぢやないか』
083(おつ)人間(にんげん)運命(うんめい)()ふものは()まつて()ると()える。084黒姫(くろひめ)高姫(たかひめ)085松姫(まつひめ)はどこともなしに、086(まる)(ゆたか)(かほ)をして()るが、087丸顔(まるがほ)(うれ)ひなし、088長顔(なががお)(うれ)ひありと()つて、089俺達(おれたち)(かね)さへ()れば、090社会(しやくわい)にウリザネ(かほ)だと()つて、091歓待(もて)代物(しろもの)だけれど、092今日(けふ)(やう)(ざま)になつては、093ますます貧相(ひんさう)に……自分(じぶん)(なが)()えて()る。094自分(じぶん)から愛想(あいさう)をつかす(やう)物騒(ぶつそう)肉体(にくたい)095何程(なにほど)馬鹿(ばか)(おほ)()(なか)だと()つて、096(たれ)()をかけて()れる(もの)()らうか。097アーア仕方(しかた)がない。098(なん)とか一身上(いつしんじやう)処置(しよち)()ける(こと)にしようかい。099ヌースー(しき)をやつては、100神界(しんかい)(たい)して(つみ)(かさ)ね、101万劫末代(まんごふまつだい)(くる)しみの(たね)()かねばならず、102(じつ)103さうだと()つて、104自殺(じさつ)罪悪(ざいあく)であり、105()ぬにも()なれず、106(こま)つた(もの)だ。107どうしたら(この)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)()けるであらう。108(いや)スツパリと(わす)れられるだらう』
109(かふ)(こころ)(ひと)つの()ちやうだ。110刹那心(せつなしん)(たのし)むんだよ』
111(おつ)貴様(きさま)はまだ、112ソンナ気楽(きらく)(こと)()つて()るが、113衣食(いしよく)()りて礼節(れいせつ)()るだ。114今日(けふ)三日(みつか)(なに)()はずに、115()()身代限(しんだいかぎ)りを請求(せいきう)する。116一歩(いつぽ)(あゆ)(こと)出来(でき)なくなつて、117どうして刹那心(せつなしん)(たのし)めよう。118刹那(せつな)々々(せつな)苦痛(くつう)(ます)ばつかりぢやないか。119アーアこれを(おも)へば、120黒姫(くろひめ)御恩(ごおん)今更(いまさら)(ごと)(わか)つて()たワイ』
121(かふ)『ヤア(なさけ)ない(こと)()ふな。122そら其処(そこ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()つて()るぞ』
123(おつ)『モウ()うなつちやア、124三五教(あななひけう)もウラナイ(けう)()るものぢやない。125()はぬが(かな)しさぢや。126飢渇(きかつ)(せま)つてから、127(はづか)しいも(なに)()つたものかい』
128常彦(つねひこ)(たたず)(まへ)(すす)()り、
129(おつ)『モシモシ、130あなたは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)ぢやありませぬか』
131(ちから)()(こゑ)に、132常彦(つねひこ)はフツと()(さま)し、
133『アーア(よる)(たび)草臥(くたび)れたと()えて、134()らぬ()寝込(ねこ)んで(しま)うたワイ。135……ヤアお(まへ)乞食(こじき)()えるな。136(なん)御用(ごよう)御座(ござ)るか』
137 (おつ)(なん)にも()はず、138(くち)(はら)()し、139(うゑ)(せま)れる(こと)(しめ)した。
140常彦(つねひこ)『ヤア一人(ひとり)かと(おも)へば、141二人連(ふたりづれ)ぢやな。142(さいは)ひ、143ここに(にぎ)(めし)(のこ)つて()る。144失礼(しつれい)だが(これ)をお(あが)りなさらぬか』
145(おつ)『ハイそれは有難(ありがた)御座(ござ)います。146早速(さつそく)頂戴(ちやうだい)(いた)しませう。147……オイ滝公(たきこう)148(たす)(ぶね)兵站部(へいたんぶ)出来(でき)たぞ。149サア御礼(おれい)(まを)せ』
150滝公(たきこう)『アーそんなら頂戴(ちやうだい)しようかなア、151(はづか)しい(こと)だ。152旅人(たびびと)弁当(べんたう)(もら)つて()ふのは、153(うま)れてから(はじ)めてだ』
154四個(よんこ)(にぎ)(めし)分配(ぶんぱい)し、155(ふた)ツづつ、156()()(やう)(たひら)げて(しま)ひ、
157(おつ)『アーアこれで(すこ)人間(にんげん)らしい()がして()た。158……イヤ宣伝使(せんでんし)(さま)159有難(ありがた)御座(ござ)います。160……(しか)(なが)(この)(さき)(また)どうしたら()からうかなア』
161滝公(たきこう)刹那心(せつなしん)だよ。162(また)神様(かみさま)がお(たす)(くだ)さる。163心配(しんぱい)するな。164……(いづ)れの(かた)()りませぬが有難(ありがた)御座(ござ)いました。165これでヤツと、166こつちのものになりました』
167見上(みあ)ぐる途端(とたん)にハツと(おどろ)(かほ)(かく)す。
168常彦(つねひこ)『ヤア失礼(しつれい)(なが)らあなたは、169ウラナイ(けう)滝公(たきこう)さまぢやありませぬか。170ヤアあなたは板公(いたこう)さま、171どうしてそんな姿(すがた)におなりなさつた。172(なに)様子(やうす)御座(ござ)いませう。173差支(さしつかへ)なくばお()かせ(くだ)さいませいなア』
174板公(いたこう)(はづか)しい(ところ)175()にかかりました。176(じつ)()うなるも()から()(さび)177(なん)とも()(やう)がありませぬが、178(じつ)(ところ)は、179あまり宣伝(せんでん)効果(かうくわ)()がらないので、180一寸(ちよつと)した(こと)をやりました。181それが(この)(とほ)大零落(だいれいらく)(ふち)(しづ)端緒(たんちよ)となつたのです』
182滝公(たきこう)(まこと)赤面(せきめん)(いた)り、183智慧(ちゑ)(まは)らぬ(くせ)に、184人真似(ひとまね)をして、185大変(たいへん)失敗(しつぱい)(えん)じ、186(やみ)谷底(たにそこ)転落(てんらく)し、187生命(いのち)カラガラな()()ひ、188(つひ)には黒姫(くろひめ)御機嫌(ごきげん)(そこ)ねたのみならず、189青彦(あをひこ)190(せつ)()()まれ、191一生懸命(いつしやうけんめい)()げて()ました。192それから私等(わたくしら)二人(ふたり)高城山(たかしろやま)(まゐ)り、193松姫(まつひめ)(まへ)(しり)(まく)つて、194ウラナイ(けう)内幕(うちまく)暴露(ばくろ)してやらうと、195強圧的(きやうあつてき)()(ところ)196中々(なかなか)強者(しれもの)197吾々(われわれ)智嚢(ちなう)(しぼ)()した狂言(きやうげん)も、198松姫(まつひめ)(たい)しては()()(つゆ)(ほど)脅威(けふゐ)(あた)へず、199シツペイ(がへ)しを(くら)つて、200生命(いのち)からがら此処(ここ)までやつて()ました。201(しか)(なが)(きう)すれば(らん)すと()(ことわざ)もありますが、202吾々(われわれ)一旦(いつたん)(まこと)(みち)()いた(もの)203仮令(たとへ)餓死(がし)しても(ひと)(もの)失敬(しつけい)する(こと)絶対(ぜつたい)(いや)(たま)らず、204最早(もはや)生命(いのち)瀬戸際(せとぎは)205一生(いつしやう)大峠(おほたうげ)となつた(ところ)206あなたに(めぐ)()ひ、207一塊(いつくわい)のパンを(あた)へられて、208(やうや)人間心地(にんげんごこち)(いた)しました。209これもアカの他人(たにん)(めぐ)まれるのであつたならば残念(ざんねん)ですが、210有難(ありがた)(こと)には、211一旦(いつたん)御心易(おこころやす)うして()たあなたに(すく)はれたと()ふのも、212まだ天道(てんだう)吾々(われわれ)()(たま)はざる(しるし)と、213(なん)となく勇気(ゆうき)()()ました』
214常彦(つねひこ)(いま)のお言葉(ことば)に、215青彦(あをひこ)(せつ)黒姫(くろひめ)(ところ)()つたと仰有(おつしや)つたが、216ソレヤ本当(ほんたう)ですか』
217滝公(たきこう)『ヘエヘエ本当(ほんたう)本当(ほんたう)218一文生中(いちもんきなか)の、219掛値(かけね)御座(ござ)いませぬ。220今頃(いまごろ)黒姫(くろひめ)も、221青彦(あをひこ)(せつ)(その)()二三人(にさんにん)男女(だんぢよ)(あざむ)かれて、222道場(だうぢやう)(やぶ)られ、223フサの(くに)へでも()げて()つたかも()れますまい、224高城山(たかしろやま)松姫(まつひめ)様子(やうす)(なん)だか(へん)御座(ござ)いましたから……』
225板公(いたこう)『ナーニ黒姫(くろひめ)はそんな(やつ)ぢやない。226キツと青彦(あをひこ)227(せつ)(ふくろ)(ねずみ)228(した)(さき)(うま)くチヨロまかされて()るに(ちが)ひない。229それよりも()しいと(おも)うのは、230紫姫(むらさきひめ)さまに、231馬公(うまこう)鹿公(しかこう)()(わか)(をとこ)だ。232キツと、233ウラナイ(けう)沈没(ちんぼつ)して()るに相違(さうゐ)ない』
234常彦(つねひこ)『ハテナ、235吾々(われわれ)御両人(ごりやうにん)()らるる(とほ)り、236ウラナイ(けう)のカンカンであつたが、237(あま)内容(ないよう)充実(じゆうじつ)せないのと、238黒姫(くろひめ)言心行(げんしんかう)一致(いつち)()いだ(その)(てん)()()ちず、239(また)数多(あまた)信者(しんじや)(たい)して、240吾々(われわれ)部下(ぶか)宣伝使(せんでんし)として弁解(べんかい)(ことば)がないので、241アヽ最早(もはや)ウラナイ(けう)前途(さき)()えた。242根底(こんてい)から(くづ)れて(しま)つた。243()()(こと)で、244どうして天下(てんか)修斎(しうさい)出来(でき)ようぞ、245信仰(しんかう)酔払(よつぱら)つた連中(れんちう)(いま)(ところ)246(やや)命脈(めいみやく)(たも)つて()るが、247酔払(よつぱら)つた(さけ)何時(いつ)しか()める(ごと)く、248信仰(しんかう)追々(おひおひ)冷却(れいきやく)するは当然(たうぜん)帰結(きけつ)と、249前途(ぜんと)見越(みこ)して、250ヤツパリ天下(てんか)(すく)ふは三五教(あななひけう)だと、251(ただち)三五教(あななひけう)入信(にふしん)し、252鬼ケ城(おにがじよう)邪神(じやしん)退治(たいぢ)出掛(でか)け、253それより諸方(しよはう)宣伝(せんでん)(まは)つて()るのだ。254それにしても合点(がつてん)のゆかぬは、255あれ(ほど)決心(けつしん)(かた)かつた青彦(あをひこ)256(せつ)紫姫(むらさきひめ)さまぢや。257これには(なに)(ふか)様子(やうす)()(こと)であらう。258コラ()うしても()られない。259一時(いつとき)(はや)魔窟ケ原(まくつがはら)()つて、260(こと)真偽(しんぎ)(たしか)め、261(その)(うへ)(また)作戦(さくせん)計画(けいくわく)(さだ)めねばなるまい。262アーア(こま)つた(こと)出来(でき)たワイ』
263()()んで(ふと)(いき)をつく。
264滝公(たきこう)『これに(つい)常彦(つねひこ)さま、265あなたは(なに)かお(かんが)へがありますか。266ならう(こと)なら、267私達(わたくしたち)共々(ともども)三五教(あななひけう)(ため)(つく)さして(いただ)きたいのですが、268(なに)()うても零落(おちぶ)れた(この)(からだ)269あなたの(かほ)にかかはりますから……』
270常彦(つねひこ)『ソラ(なに)仰有(おつしや)る。271衣服(いふく)何時(なんどき)でも()へられる。272あなたの今迄(いままで)失敗(しつぱい)経験(けいけん)()つて(きた)()げられたる(その)身魂(みたま)は、273容易(ようい)()られるものでない。274(なに)()(かく)一緒(いつしよ)(まゐ)りませう。275また都合(つがふ)()(ところ)()れば、276衣服(いふく)でも()つて()げませう。277()(かく)青彦(あをひこ)以下(いか)救援(きうゑん)(むか)はねばならぬ。278サア滝公(たきこう)279板公(いたこう)280(まゐ)りませう』
281 二人(ふたり)(なん)にも()はず、282(うれ)(なみだ)()(なが)ら、283常彦(つねひこ)(あと)(したが)ひ、284西北(せいほく)()して、285今迄(いままで)衰耗敗残(すゐまうはいざん)()(みた)された態度(たいど)(たちま)枯木(かれき)(はな)()きし(ごと)く、286イソイソとして()いて()く。
287 山頭寒巌(さんとうかんがん)()りて()てる古木(こぼく)(はる)陽気(やうき)()ひて深緑(しんりよく)()()()したる(ごと)く、288(あを)ざめた(かほ)(たちま)桜色(さくらいろ)(かは)り、289常彦(つねひこ)絶対(ぜつたい)服従(ふくじゆう)至誠(しせい)(ささ)げつつ、290(はな)()(にほ)枯木峠(かれきたうげ)打渡(うちわた)り、291(かみ)(すく)ひをエノキ(たうげ)急坂(きふはん)(あと)()て、292(にぎ)(こぶし)をホドいて夏風(なつかぜ)に、293そよぐ(わらび)野辺(のべ)打渡(うちわた)り、294とある茶店(ちやみせ)立入(たちい)りて、295(ふたた)(はら)(こしら)(たちま)(ふと)大原(おほはら)(さと)296テクテク(きた)須知山峠(しゆちやまたうげ)絶頂(ぜつちやう)に、297青葉(あをば)(わた)(すず)しき(なつ)(かぜ)()(なが)ら、298かたへの(いはほ)(こし)打掛(うちか)け、
299常彦(つねひこ)『アヽ(はや)いものだ、300モウ一息(ひといき)聖地(せいち)到着(たうちやく)する。301世継王山(よつわうざん)山麓(さんろく)には、302悦子姫(よしこひめ)さまの経綸場(けいりんば)出来(でき)たと()(こと)だ。303(ひと)立寄(たちよ)つて()ようかな。304大抵(たいてい)青彦(あをひこ)様子(やうす)(わか)らうから………イヤイヤ今度(こんど)素通(すどほり)をして、305青彦(あをひこ)対面(たいめん)し、306(すく)はるるものならば、307どこまでも(まこと)(つく)して忠告(ちうこく)(あた)へ、308(その)(うへ)にて悦子姫(よしこひめ)(さま)(いほり)御訪(おたづ)ねする(こと)にしよう。309(さいはひ)青彦(あをひこ)以下(いか)改心(かいしん)をして、310三五教(あななひけう)復帰(ふくき)したとすれば、311(さき)(めう)(こと)をお(みみ)()()くのは(かへつ)青彦(あをひこ)(ため)面白(おもしろ)くない。312友人(いうじん)(みち)として絶対(ぜつたい)秘密(ひみつ)にしてやるが本当(ほんたう)だらう』
313滝公(たきこう)青彦(あをひこ)さまはよもや、314ウラナイ(けう)になつて()気遣(きづか)ひは()りますまい』
315板公(いたこう)(なん)とも、316保証(ほしよう)がでけぬ、317突然(とつぜん)(こと)吾々(われわれ)岩窟(いはや)退治(たいぢ)()たのだと(おも)つて(おどろ)いたが、318(あと)になつてよくよく(かんが)へて()れば、319どうも黒姫(くろひめ)()ひ、320青彦(あをひこ)321紫姫(むらさきひめ)さま(その)()顔色(がんしよく)(すこ)しも(へん)(いろ)()かんで()らなかつた。322黒姫(くろひめ)魔術(まじゆつ)()りて剣尖山(けんさきやま)(たき)(ふもと)でうまくシテやられたのかも()れない、323()(かく)常彦(つねひこ)さまをお(たの)(まを)して、324吾々(われわれ)弟子(でし)となつた以上(いじやう)は、325青彦(あをひこ)さま一行(いつかう)(もと)(みち)(すく)はねばなりますまい。326これから首尾(しゆび)()凱旋(がいせん)する(まで)327悦子姫(よしこひめ)(さま)(いほり)(たづ)ねなさらぬ(はう)が、328万事(ばんじ)都合(つがふ)()(やう)(おも)ひます。329ナア常彦(つねひこ)さま』
330常彦(つねひこ)『アヽ(わたくし)はさう(かんが)へるのだ。331(なに)()けても大事件(だいじけん)突発(とつぱつ)した(やう)なものだ』
332(はな)(をり)しも、333(さか)(のぼ)(きた)二人(ふたり)(をとこ)
334(をとこ)『ヤアあなたは常彦(つねひこ)さまぢやありませぬか。335何処(どこ)へお()でになつて()ました? 吾々(われわれ)二人(ふたり)丹州(たんしう)(とも)弥仙山(みせんざん)(ふもと)(あた)つて、336(むらさき)(くも)337日々(にちにち)立昇(たちのぼ)るのを()て、338コレヤ(なに)神界(しんかい)経綸(けいりん)()るのだらうと(その)(くも)目当(めあて)(まゐ)りました。339(ところ)(ちか)くへ()つて()れば、340恰度(ちやうど)(にじ)(やう)で、341(その)(くも)一寸(ちよつと)(むか)ふの(はう)靉靆(たなび)いて()る。342コレヤ大変(たいへん)だ、343どこまで()つても(くも)(つか)むとは(この)(こと)だと、344丹州(たんしう)さまにお(わか)れをして、345ここまでやつて()ました』
346常彦(つねひこ)『ヤアお(まへ)鬼ケ城(おにがじやう)言霊戦(ことたません)勇士(ゆうし)347荒鷹(あらたか)348鬼鷹(おにたか)のお二人(ふたり)さま、349どこへ()(つも)りだ』
350荒鷹(あらたか)丹州(たんしう)さまは吾々(われわれ)(むか)仰有(おつしや)るには、351一寸(ちよつと)神界(しんかい)御用(ごよう)があるから弥仙山(みせんざん)中心(ちうしん)として(しばら)(この)(へん)探険(たんけん)しようと(おも)ふから、352前達(まへたち)はこれから聖地(せいち)()して(すす)んで()け。353(しか)(なが)聖地(せいち)立寄(たちよ)(こと)はならぬ。354須知山峠(しゆちやまたうげ)()して()けとの御言葉(おことば)355どこを目的(あて)ともなくやつて()ました。356(その)時々(ときどき)(かみ)(うつ)つて()らしてやるから、357安心(あんしん)して()けとの(こと)358大方(おほかた)伊吹山(いぶきやま)邪神(じやしん)退治(たいぢ)()くのではなからうかと(おも)つて(まゐ)りました。359(しか)しあなたのお(かほ)()るなり、360(なん)だか(むか)ふへ()くのが張合(はりあひ)()けた(やう)()がしてなりませぬワイ』
361常彦(つねひこ)『それは不思議(ふしぎ)(こと)()くものだ。362(なに)(ほか)()いた(こと)()りませぬか』
363鬼鷹(おにたか)『ヤア()ります()ります、364大変(たいへん)(かは)つた(こと)があるのですよ』
365常彦(つねひこ)(かは)つた(こと)とは(なん)ですか』
366鬼鷹(おにたか)弥仙山(みせんざん)(ふもと)(むら)に、367(たま)()(むすめ)があつて、368(をつと)()いのに(はら)(ふく)れ、369十八ケ月目(じふはちかげつめ)()(おと)したのが(をんな)()370玉照姫(たまてるひめ)とか()つて、371(うま)れてから百日(ひやくにち)にもならないのに、372種々(いろいろ)(こと)()いて()かせる、373さうして室内(しつない)自由(じいう)()つて(ある)くと()(うはさ)で……あの近在(きんざい)持切(もちき)りで御座(ござ)います。374それに(つい)て、375ウラナイ(けう)黒姫(くろひめ)(やつ)376抜目(ぬけめ)のない……(その)子供(こども)()んとか()とか()つて、377()()れようとし、378幾度(いくたび)使(つかい)(つか)はし、379(ほね)()つて()るさうですが、380(ぢい)(ばば)アとが、381中々(なかなか)頑固者(ぐわんこもの)容易(ようい)(わた)さない。382(うち)血統(ちすぢ)()れると()つて()るさうです。383なかなかウラナイ(けう)抜目(ぬけめ)がありませぬなア』
384常彦(つねひこ)不思議(ふしぎ)(こと)()るものだなア。385()(かく)吾々(われわれ)一度(いちど)(その)()()たいものだが、386それよりも(さき)()めた問題(もんだい)から解決(かいけつ)せなくてはならぬ。387(その)問題(もんだい)さへ解決(かいけつ)がつかば、388黒姫(くろひめ)様子(やうす)(わか)り、389子供(こども)因縁(いんねん)(わか)るだらう。390(しか)鬼鷹(おにたか)さま、391荒鷹(あらたか)さま、392あなたは何処(どこ)()(つも)りか』
393(あら)394(おに)『まだ行先(ゆくさき)不明(ふめい)……(わたくし)()(ところ)何処(どこ)御座(ござ)います……と(じつ)はあなたにお(たづ)ねしたいと(おも)つて()るのです』
395常彦(つねひこ)()(かく)丹州(たんしう)さまのお言葉(ことば)(どほ)り、396()(とこ)までお()でなさいませ。397(かみ)(つな)(あやつ)られて()るのだから、398(いま)(なに)(かんが)へた(ところ)仕方(しかた)()りますまい。399(しか)丹州(たんしう)さまは……あなた(がた)400(なん)(おも)うて()ますか』
401荒鷹(あらたか)『どうもあの(かた)は、402吾々(われわれ)としては、403(せい)とも(じや)とも、404(けん)とも()とも、405見当(けんたう)()れませぬ。406つまり一種(いつしゆ)の……(わる)()へば怪物(くわいぶつ)ですなア。407(しか)(なん)とも()はれぬ崇高(すうかう)(ところ)があつて、408自然(しぜん)吾々(われわれ)(あたま)()がり、409何程(なにほど)下目(しため)()ようと(おも)うても、410()らぬ()吾々(われわれ)守護神(しゆごじん)服従(ふくじゆう)(いた)します』
411鬼鷹(おにたか)(わたくし)同感(どうかん)です。412(なん)でも特別(とくべつ)神界(しんかい)使命(しめい)()けた(かた)(ちが)ひありませぬワ、413(もと)吾々(われわれ)使(つか)つて()つた(その)時分(じぶん)から、414(すこ)(へん)だなアと(おも)うて()た。415今日(こんにち)(ところ)では、416()(かく)不可解(ふかかい)人物(じんぶつ)だ。417時々(ときどき)頭上(づじやう)より閃光(せんくわう)発射(はつしや)したり、418眉間(みけん)からダイヤモンドの(やう)(ひかり)放出(はうしゆつ)して(たちま)(ひと)()る。419到底(たうてい)凡人(ぼんじん)品等(ひんとう)すべき(かぎ)りではありませぬワ』
420 常彦(つねひこ)421()()み、422(くび)をうな()れ、423思案(しあん)()れて()る。424荒鷹(あらたか)425鬼鷹(おにたか)は、
426左様(さやう)なら常彦(つねひこ)さま、427(また)惟神(かむながら)再会(さいくわい)(とき)(たのし)みませう』
428一礼(いちれい)して、429スタスタ(さか)(みなみ)(くだ)()く。430常彦(つねひこ)(すこ)しも気付(きづ)かず、431瞑目(めいもく)して(うつ)むいて()る。
432滝公(たきこう)『モシ常彦(つねひこ)さま二人(ふたり)(かた)はモウ()かれました』
433背中(せなか)(ゆす)る。434常彦(つねひこ)(ゆめ)からさめた(やう)心地(ここち)
435常彦(つねひこ)『ナニ、436二人(ふたり)はモウ()かれたと……エー何事(なにごと)神様(かみさま)のお仕組(しぐみ)だらう。437とも(かく)438弥仙山麓(みせんさんろく)()つて()たいやうな()がするが、439(はじ)めに(おも)()つた青彦(あをひこ)事件(じけん)から解決(かいけつ)するのが順序(じゆんじよ)だ。440サア(みな)さま、441(まゐ)りませう……』
442大正一一・四・二八 旧四・二 松村真澄録)