霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 (すくひ)(かみ)〔六四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第4篇 舎身活躍 よみ:しゃしんかつやく
章:第13章 救の神 よみ:すくいのかみ 通し章番号:641
口述日:1922(大正11)年04月28日(旧04月02日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三人は弥仙山山頂の神社でお玉を待ち伏せする。その間にも、寅若はお玉をウラナイ教に翻そうと、木花姫命の神勅を装った落書を神社の前に掲げた。ウラナイ教に変心した印に、日陰葛をかぶって下山するように、と書いた。
参拝後、日陰葛をかぶらずに下ってくるお玉を見て、三人はお玉に飛び掛り、猿轡をはめてしまう。そこへ、山を登ってくる笠が見えた。
男は三人に、お玉の所在を尋ねる。三人はごまかすが、男は三人に霊縛をかけると、茂みの中に隠されていたお玉を助け出した。男は丹州であった。
霊縛を解かれた三人は、逃げていく。丹州はお玉の家に迎えられ、丁重にもてなされた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:217頁 八幡書店版:第3輯 717頁 修補版: 校定版:224頁 普及版:100頁 初版: ページ備考:
001 寅若(とらわか)002富彦(とみひこ)003菊若(きくわか)三人(さんにん)金峰山(きんぷせん)頂上(ちやうじやう)004弥仙(みせん)神社(じんしや)(まへ)一心不乱(いつしんふらん)願望(ぐわんばう)成就(じやうじゆ)祈願(きぐわん)()らし、005(つひ)()()かした。
006寅若(とらわか)『アヽ大分(だいぶん)沢山(たくさん)神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、007最早(もはや)(こゑ)倉庫(さうこ)窮乏(きうばふ)()げたと()え、008そろそろかすつて()だした』
009(かさ)かきの(やう)(こゑ)()ふ。010二人(ふたり)(おな)じくかすり(ごゑ)
011寅若(とらわか)『もう仕方(しかた)がない、012ありだけの言霊(ことたま)献納(けんなふ)したのだから、013(こゑ)としては(ほと)んど無一物(むいちぶつ)だ、014(こゑ)(はだか)になつた(やう)なものだ、015これだけ(うま)赤子(あかご)になれば、016如何(どん)(ねがひ)()いて(くだ)さるだらう』
017()(くさ)(うへ)竹箒(たけばうき)()でる(やう)貧弱(ひんじやく)言霊(ことたま)をやつと発射(はつしや)してゐる。018寅若(とらわか)019懐中(くわいちゆう)短刀(たんたう)をヒラリと()いて(あたり)()(けづ)り、020それへ()けて矢立(やたて)から、021竹片(たけぎれ)(たた)いた、022笹葉(ささら)(やう)な、023長三角(ちやうさんかく)(ふで)()()し、024(なに)かクシヤクシヤ()(はじ)めた。025()(をは)つて(おし)(やう)にウンウンと()文字(もんじ)()よと(ゆび)さし得意顔(とくいがほ)026二人(ふたり)()()つて()()ろすと、
027木花姫(このはなひめ)(みこと)筆先(ふでさき)028今日(けふ)七十五日(しちじふごにち)忌明(いみあけ)(かなら)参拝(さんぱい)(いた)(はず)のお(たま)(かみ)()をつける、029(なんぢ)(さづ)けた玉照姫(たまてるひめ)普通(ふつう)人間(にんげん)()()いぞよ、030(かみ)御用(ごよう)()てる()めに(なんぢ)肉体(にくたい)に、031そつと這入(はい)つて(うま)(かは)つたのであるから、032(いま)此処(ここ)改心(かいしん)(いた)してウラナイ(けう)(たてまつ)り、033(かみ)のお(やく)()てて(くだ)されよ、034これが(かみ)仕組(しぐみ)であるぞよ、035()承知(しようち)(いた)したなれば(その)しるし日蔭葛(ひかげかづら)(あたま)にのせて、036其方(そなた)(いへ)まで(かへ)つて(くだ)されよ、037()不承知(ふしようち)なれば(その)(まま)(かへ)るがよい、038(また)(あと)から(かみ)みせしめ(いた)すぞよ』
039()いてある。040菊若(きくわか)041かすり(ごゑ)で、
042菊若(きくわか)『アハヽヽヽ、043うまいうまい、044ナア富彦(とみひこ)045やつぱり哥兄貴(あにき)だなア』
046寅若(とらわか)哥兄貴(あにき)だらう』
047と、048かすり(ごゑ)()つて()る。049三人(さんにん)(やが)てお(たま)朝参詣(あさまゐり)して(のぼ)つて()時刻(じこく)裏山(うらやま)より、050ずり()り、051そつと(まは)つて中腹(ちうふく)灌木(くわんぼく)繁茂(しげみ)姿(すがた)(かく)し、052(たま)下向(げかう)()つて()た。053(たま)(ただ)一人(ひとり)(さくら)(つゑ)をつき(なが)(やうや)頂上(ちやうじやう)(たつ)し、054神前(しんぜん)(むか)つて感謝(かんしや)()(たてまつ)り、055フツと社側(しやそく)大木(たいぼく)()れば(なに)文字(もじ)(あら)はれて()る。056『ハテ不思議(ふしぎ)』と近寄(ちかよ)つて()れば以前(いぜん)文面(ぶんめん)057(しばら)(その)()(にら)くらし、058(うで)()んで思案(しあん)()れて()た。059暫時(しばし)あつて、
060(たま)『エー、061馬鹿(ばか)らしい、062神様(かみさま)()んな(こと)をお()(あそ)ばすものか、063何者(なにもの)かの悪戯(いたづら)であらう。064日蔭葛(ひかげかづら)(かぶ)つて(かへ)(ところ)(なが)めて、065近在村(きんざいむら)(わか)(しう)()(たた)いて(わら)つてやらうとの悪戯(いたづら)だらう、066ホヽヽヽ、067阿呆(あほ)らしい』
068独語(ひとりご)ちつつ(また)もや神前(しんぜん)(かる)会釈(ゑしやく)をし、069もと()急坂(きふはん)(くだ)()く。070半分(はんぶん)あまり(くだ)つたと(おも)(とき)
071寅若(とらわか)『ヤア、072駄目(だめ)だ、073日蔭葛(ひかげかづら)(かぶ)つて()やがらぬぞ、074不承諾(ふしようだく)だと()える、075もう()うなる(うへ)直接(ちよくせつ)行動(かうどう)だ、076サア、077(ひい)078()079()つで一度(いちど)にかからうかい』
080菊若(きくわか)『オイオイ、081あまり(あわて)るな、082彼奴(あいつ)身体(からだ)()よ、083一歩(ひとあし)々々(ひとあし)(ちつ)とも(すき)がない、084うつかりかからうものなら、085谷底(たにそこ)()つて(はう)られるかも()れないから、086余程(よほど)ここは慎重(しんちよう)態度(たいど)をとらねばなるまいぞ』
087富彦(とみひこ)愚図々々(ぐづぐづ)()つてる()に、088さつさと(かへ)つて仕舞(しま)うちや仕方(しかた)がないぢやないか、089もう()うなつては(なん)猶予(いうよ)もない、090サア(ひい)091(ふう)092(みつ)つだ』
093とお(たま)(まへ)身体(からだ)一面(いちめん)094日蔭葛(ひかげかづら)()()いた化物(ばけもの)(やう)姿(すがた)三人(さんにん)(あら)はれた。
095(たま)『シイツ、096オイ畜生(ちくしやう)097(なん)心得(こころえ)()る、098此処(ここ)神様(かみさま)のお(みや)だ、099昼中(ひるなか)()(あし)()ると()(こと)があるものか、100(ひる)人間(にんげん)世界(せかい)101(よる)はお前達(まへたち)世界(せかい)だ、102(はや)姿(すがた)(かく)せ、103(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)……』
104 寅若(とらわか)105(つく)(ごゑ)をして、
106寅若(とらわか)『オイ、107(たま)108(その)(はう)生神様(いきがみさま)(むか)つて(けだもの)()つたな、109もう量見(りやうけん)がならぬ、110覚悟(かくご)(いた)せ』
111(たま)『オホヽヽヽヽ、112(まへ)昨日(きのふ)(わたし)(うち)へやつて()て、113(ぢい)さまに審神(さには)をせられた(きつね)(たぬき)生宮(いきみや)だらう、114やつぱり(あらそ)はれぬもの、115(うち)のお(ぢい)さまは()(たか)い、116今日(けふ)正真(せうまつ)になつて姿(すがた)(あら)はし(あそ)ばしたな、117ホヽヽヽヽ』
118寅若(とらわか)(なに)(ぬか)すのだ、119もう()()つた(うへ)此方(こちら)死物狂(しにものぐる)ひだ、120(さいは)(ほか)(ひと)()し、121何程(なにほど)貴様(きさま)神力(しんりき)があるか、122()()いて()るか、123(あら)くれ(をとこ)三人(さんにん)(をんな)一人(ひとり)124愚図々々(ぐづぐづ)(ぬか)さず(うしろ)()(まは)せ』
125(たま)『オホヽヽヽ、126(まへ)こそ、127ちつと(しり)()(まは)さぬと大変(たいへん)失敗(しつぱい)出来(でき)ますよ、128(うしろ)()(まは)(やう)人間(にんげん)はお(まへ)(やう)悪人(あくにん)ばつかりだ、129やがて捕手(とりて)()()て……(くく)つて()なれぬ(やう)御注意(ごちうい)なさいませや』
130菊若(きくわか)『エー自暴糞(やけくそ)だ、131やつて仕舞(しま)へ、132サア(ひい)133(ふう)134(みつ)つ』
135(たま)『オホヽヽヽ、136随分(ずゐぶん)(えら)馬力(ばりき)ですこと、137(みや)(まへ)綺麗(きれい)楽書(らくがき)がして御座(ござ)いましたな、138(わたし)拝見(はいけん)(いた)しまして、139見事(みごと)なる御手跡(ごしゆせき)だと感心(かんしん)しましたのよ』
140寅若(とらわか)『エー、141ベラベラと(こわ)くなつたものだから追従(つゐしやう)ならべやがつて、142(この)()ちよろまかして()(やう)(おも)つたつて、143(ほとけ)(わん)ぢや、144もうかなわんぞ、145神妙(しんめう)()(まは)さぬかい』
146(たま)(おほ)きに(はばか)りさま、147(まは)さうと、148(まは)すまいと(わたし)()149自由(じいう)権利(けんり)だ、150(かま)(くだ)さいますな、151それよりも貴方(あなた)()(うへ)御注意(ごちうい)なさいませ、152玩具(おもちや)のピストルを()きつける(やう)脅喝(けふかつ)手段(しゆだん)にのる(やう)なお(たま)ぢや御座(ござ)いませぬワ』
153富彦(とみひこ)何程(なんぼ)(くち)達者(たつしや)でも(ちから)には(かな)うまい、154オイ寅若(とらわか)菊若(きくわか)155もう()うなれば容赦(ようしや)はならぬ、156愚図々々(ぐづぐづ)して()ると、157(ひと)見付(みつ)かつちや大変(たいへん)だ、158(はや)事業(じげふ)着手(ちやくしゆ)しようぢやないか』
159『オツト合点(がつてん)だ』
160三人(さんにん)武者振(むしやぶ)()く。161(たま)(みぎ)()かし(ひだり)()かし、162飛鳥(ひてう)(ごと)()()へし()(たたか)つて()る。163寅若(とらわか)はお(たま)(あし)()ひついた途端(とたん)にお(たま)仰向態(あふむけざま)に、164ひつくりかへり二三間(にさんげん)(たに)目蒐(めが)けて、165寅若(とらわか)(うへ)になり(した)になりクレリクレリと三四回(さんしくわい)軽業(かるわざ)(えん)じた。166菊若(きくわか)167富彦(とみひこ)(かね)用意(ようい)藤綱(ふぢつな)(もつ)後手(うしろで)(しば)り、168猿轡(さるぐつわ)()(やう)とする。169(この)(とき)(した)(はう)から(しろ)(かさ)()らついて(のぼ)つて()る。
170寅若(とらわか)『ヤア、171(なん)だか(あや)しげな(やつ)一匹(いつぴき)やつて()やがつたぞ、172大方(おほかた)豊彦爺(とよひこぢい)だらう』
173菊若(きくわか)親爺(おやぢ)にしては随分(ずゐぶん)足並(あしなみ)(はや)(やう)だ、174(はや)(しば)りあげて其処辺(そこら)(かく)し、175彼奴(あいつ)(とほ)るのをば()とうぢやないか』
176(あわて)(くく)つたお(たま)肉体(にくたい)灌木(くわんぼく)繁茂(しげみ)(かく)して仕舞(しま)つた。177そこへ(のぼ)つて()一人(ひとり)(をとこ)
178『ヤアお(まへ)はウラナイ(けう)(かた)ぢやなア、179一寸(ちよつと)(もの)をお(たづ)(いた)します、180此処(ここ)於与岐(およぎ)豊彦(とよひこ)(むすめ)(たま)()綺麗(きれい)(をんな)(とほ)らなかつたかな、181()れば貴方等(あなたがた)身体(からだ)一面(いちめん)182(きつね)(たすき)()(まと)うて()るが、183(なん)面白(おもしろ)(こと)でもありましたか』
184寅若(とらわか)『イヤ、185(べつ)(なに)もありませぬ、186(たま)さまはねつからお()にかかりませぬがな』
187故意(わざ)とお(たま)(かく)した反対(はんたい)(はう)()(そそ)ぐ。
188(をとこ)『もう此処(ここ)()()らねばならぬ時刻(じこく)ですが……彼方(あちら)から一寸(ちよつと)(うかが)つて()ましたが(ひと)(かげ)(よつ)ばかり(うご)いて()つた(やう)だ』
189寅若(とらわか)『ハイ、190そう()えましたかな。191それは大方(おほかた)(ひる)(こと)でもあり影法師(かげぼうし)がさしたのでせう』
192(をとこ)(てん)(ふう)じた(この)密林(みつりん)193(かげ)()すとは(めう)ですな、194(わたくし)此処(ここ)(ひと)煙草(たばこ)でも……さして(もら)ひませう、195(なん)だか(をんな)(いき)(きこ)える(やう)だ、196ハツハツハヽヽヽ、197(まへ)198(かく)して()るのぢやあるまいな』
199寅若(とらわか)滅相(めつさう)な、200(この)昼中(ひるなか)(かく)すと()つたつて……(なに)(かく)必要(ひつえう)がありますものか、201かくすれば()くなるものと()(なが)()むにやまれぬ日本魂(やまとだましひ)()ひまして、202ホンの一寸(ちよつと)……』
203(をとこ)(なに)一寸(ちよつと)……だ、204(その)一寸(ちよつと)()かして()しい』
205寅若(とらわか)『そう四角張(しかくば)つて仰有(おつしや)るに(およ)びませぬワ、206サアサアお(とも)(いた)しませう、207貴方(あなた)(そら)へお(まゐ)りでせう、208(わたくし)(とも)(いた)します。209オイ菊若(きくわか)210富彦(とみひこ)211()いか、212合点(がつてん)か、213(まへ)足弱(あしよわ)だから、214(さき)(なに)何々(なになに)せい、215(わたし)(この)(かた)のお(とも)をしてお(そら)(まゐ)つて()るから……』
216菊若(きくわか)昨晩(ゆうべ)(まゐ)つただないか』
217 寅若(とらわか)218グツと()()き、
219寅若(とらわか)『シイツ、220(なに)()ふのだい、221(ゆめ)()やがつて……此処(ここ)までやつて()て「アヽお(やま)はきついから……神様(かみさま)何処(どこ)からも(おな)じことだ、222ここで(こら)へて(もら)はう」と平太(へた)つて仕舞(しま)つたぢやないか、223アハヽヽヽ。224昨晩(ゆうべ)のうちに(まゐ)りよつた(ゆめ)()たのぢやな、225旅人(たびびと)226こんな弱虫(よわむし)()れて()ますと閉口(へいこう)(いた)しますワイ、227サアお(とも)(いた)しませう』
228(をとこ)御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)いが、229(わたくし)はお(そら)には一寸(ちよつと)(よう)はない、230(わたくし)許嫁(いひなづけ)のお(たま)()ふものに()ひさへすればよいのだ、231(なん)だか此処(ここ)()ると(あし)がピツタリ()まつて、232(たま)(くさ)(にほ)ひがして()た』
233 三人(さんにん)徐々(そろそろ)()()とを見合(みあは)して()げかけ(やう)とする。
234(をとこ)『オイオイ、235三人(さんにん)(やつ)(ども)236貴様(きさま)談判(だんぱん)がある、237一寸(ちよつと)()て』
238寅若(とらわか)『ヘイ、239なゝゝゝ(なん)(おつ)しやいます』
240(をとこ)一寸(ちよつと)()てと()うのだ』
241寅若(とらわか)ぢや(まを)して……(おに)(まを)して……(とら)(まを)して……』
242(をとこ)『アハヽヽヽ、243随分(ずゐぶん)よく(うご)くぢやないか、244その(ざま)(なん)ぢやい』
245寅若(とらわか)『ハイ………地震(ぢしん)(れい)憑依(ひようい)しまして……いやもう(ふる)つて()ますワイ』
246(をとこ)(ほん)三人(さんにん)(とも)(ふる)つてるな、247まてまて今一(いまひと)退屈(たいくつ)(ざま)しに悪霊(あくれい)注射(ちうしや)でもやつて霊縛(れいばく)してやらう』
248菊若(きくわか)『めゝゝゝ滅相(めつさう)な、249もう(これ)沢山(たくさん)御座(ござ)います』
250(をとこ)『ウン』
251一声(ひとこゑ)252霊縛(れいばく)(ほどこ)した。253三人(さんにん)(こし)から(した)鞍掛(くらかけ)(あし)(やう)()()つたまま()から()えた()(やう)にビクツとも(うご)かず、254(こし)から(うへ)貧乏(びんばふ)ぶるひをやり(なが)()(ばか)りぎろつかせて()可笑(おか)しさ。
255(をとこ)『アーア、256(たま)さまを(これ)から(たす)けて()げねばなるまい』
257(かたはら)灌木(くわんぼく)(なか)(たふ)れて()るお(たま)(つな)()猿轡(さるぐつわ)()(はづ)し、
258(をとこ)(たび)のお女中(ぢよちう)259(いや)(たま)さま、260えらい()()ひましたね、261サ、262しつかりなさいませ、263もう大丈夫(だいぢやうぶ)ですよ、264あの(とほ)霊縛(れいばく)(ほどこ)して()きました』
265 お(たま)はキヨロキヨロ(をとこ)(かほ)見廻(みまは)し、
266(たま)『ヤア、267(その)(はう)同類(どうるゐ)であらう、268そんな八百長(やほちやう)をしたつて(だま)される(やう)なお(たま)ではありませぬよ』
269(をとこ)『これは迷惑千万(めいわくせんばん)270(わたくし)丹州(たんしう)()(をとこ)271豊彦(とよひこ)さまの知己(ちき)ですよ』
272 お(たま)(をとこ)(かほ)熟視(じゆくし)し、
273(たま)『ヤア貴方(あなた)先日(せんじつ)()(くだ)さいました丹州(たんしう)さまで御座(ござ)いますか、274これはこれはよい(ところ)()(くだ)さいました、275サア(かへ)りませう』
276丹州(たんしう)『マア、277ゆつくり()さいませ、278(あし)(ある)かねども(あめ)(した)(こと)(ことごと)()(かみ)なりと()案山子彦(かがしひこ)(また)御名(みな)曽富斗(そふど)(かみ)御三体(ごさんたい)(あら)はれました、279アハヽヽヽ』
280(たま)『ほんに、281マア見事(みごと)案山子彦(かがしひこ)(かみ)さまですこと』
282丹州(たんしう)(なん)でも世界(せかい)(こと)御存(ごぞん)じのお(かた)だから、283(ひと)(うかが)つて()ませうか』
284(たま)『それは面白(おもしろ)からう、285いやいや面白(おもしろ)いでせう』
286丹州(たんしう)神様(かみさま)(うかが)ふのに面白(おもしろ)いなんて、287……そんな失敬(しつけい)(こと)がありますか、288ちつと言霊(ことたま)をお(つつし)みなさい』
289(たま)『ホヽヽヽ、290屹度(きつと)(つつし)みませう』
291寅若(とらわか)(まへ)徐々(しづしづ)(あら)はれ、
292(たま)『ハヽア、293(この)神様(かみさま)()ばかり()いて()らつしやる、294(なに)かお(そな)へしたいが(なに)もありませぬ、295丹州(たんしう)さま、296如何(どう)でせう、297(おほ)きな(くち)()けて()らつしやいますが………』
298丹州(たんしう)『お(つち)かお(いし)団子(だんご)でも腹一杯(はらいつぱい)捻込(ねぢこ)んであげたら如何(どう)でせう、299アハヽヽヽ』
300(たま)『それは経済(けいざい)(よろ)しいね、301三方(さんかた)とも勝負(かちまけ)のない(やう)にお(そな)へしませうか』
302丹州(たんしう)『ヤア()(よご)れますから()きませうかい、303こらこら六本足(ろつぽんあし)304霊縛(れいばく)()いてやる、305一時(いつとき)(はや)立帰(たちかへ)(この)(よし)高姫(たかひめ)306黒姫(くろひめ)307高山彦(たかやまひこ)御前(おんまへ)(つつ)まず(かく)さず注進(ちうしん)(いた)して、308御褒美(ごほうび)(あづか)つたが()からう』
309 『ウン』と一声(ひとこゑ)霊縛(れいばく)()くや(いな)三人(さんにん)一生懸命(いつしやうけんめい)ガラガラガラと坂道(さかみち)石礫(ばらす)()ちあけた(やう)(ころ)んで()げて()く。
310 丹州(たんしう)はお(たま)(とも)於与岐(およぎ)豊彦(とよひこ)(いへ)黄昏(たそがれ)ごろ(かへ)つて()た。311豊彦(とよひこ)夫婦(ふうふ)はお(たま)遭難(さうなん)顛末(てんまつ)より丹州(たんしう)(たす)けて()れた一条(いちでう)(なみだ)(とも)()非常(ひじやう)感謝(かんしや)し、312丹州(たんしう)生命(いのち)(おや)として鄭重(ていちよう)待遇(もてな)され、313それよりお(たま)(うち)暫時(ざんじ)同棲(どうせい)する(こと)となつた。314されど丹州(たんしう)とお(たま)との両人(りやうにん)(なか)一点(いつてん)(あや)しき関係(くわんけい)()(きは)めて純潔(じゆんけつ)であつた。
315大正一一・四・二八 旧四・二 北村隆光録)