霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 鬼婆(おにばば)〔六七三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻 篇:第3篇 三国ケ嶽 よみ:みくにがだけ
章:第11章 鬼婆 よみ:おにばば 通し章番号:673
口述日:1922(大正11)年05月14日(旧04月18日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年3月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
夜が明けて三人が登っていくと、大岩窟と、その前に三四十軒の萱葺きの家が建っているのが見えた。
田吾作はさっそくほらを吹き始めるが、宗彦がたしなめた。この部落の人間は、岩窟に居を構えるバラモン教の蜈蚣姫が毒茶を飲ませて、話ができないようにしてしまっていた。
田吾作は、宗彦に村人の調査を任されるが、みな言葉が話せず、アアアと言うのみであった。三人が腰を下ろしていると、赤子を抱いた女たち数十人を従えた、容色の勝れた女が現れ、アアアといいながら北の谷間へ三人を招く。
この女は、玉照姫の生母のお玉であった。蜈蚣姫の手下にかどわかされて、毒茶を飲まされてこの山村に住まわされていたのであった。三人はお玉の顔を知らなかったが、後をついていった。
そこは、蜈蚣姫が拠点としている岩窟の奥であった。そこには鬼婆となった蜈蚣姫がいた。蜈蚣姫は三五教に対するバラモン教の優位をしきりに説く。三人は、蜈蚣姫が勧める毒茶を知らずに飲んでしまい、たちまち言語を失い、動けなくなってしまった。
蜈蚣姫はこのままバラモン教の修行をさせてやるのだと言って悦に入り、八岐大蛇に勝利を報告している。
そこへ、岩窟の入口に宣伝歌を歌いながらやってくる一人の男があった。また岩窟の奥からは、宣伝歌を歌う女の声が聞こえてきた。宣伝歌が響くと、三人はにわかに動き話すことができるようになった。蜈蚣姫は逆に身体がすくんでしまった。
入口に現れた男は留公だった。また、玉照姫は話せるようになっていたのだが、蜈蚣姫にそれを隠して、蜈蚣姫が奪った黄金の玉のありかを密かに探っていたのであった。
一行は、黄金の玉を取り返すと、硬直している蜈蚣姫をその場に置いて、宣伝歌を歌いながら山を下り、聖地に向かって戻っていった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:244頁 八幡書店版:第4輯 239頁 修補版: 校定版:253頁 普及版:110頁 初版: ページ備考:
001 ()(やうや)くに()(はな)れ、002()()(さへづ)諸鳥(もろとり)(こゑ)(おく)られて、003三人(さんにん)(あし)(まか)せて(すす)()く。004大岩窟(だいがんくつ)背景(はいけい)茅葺(かやぶ)屋根(やね)三四十(さんしじふ)005(のき)(なら)べて()つて()る。
006田吾作(たごさく)『サア、007とうとう三国ケ岳(みくにがだけ)鬼婆(おにばば)大都会(だいとくわい)()えて()た。008戸数(こすう)無慮(むりよ)三十余万(さんじふよまん)009人口(じんこう)(ほとん)嘘八百万(うそはつぴやくまん)()ふ、010一大都会(いちだいとくわい)だ。011大分(だいぶん)俺達(おれたち)(あし)(へん)になつたから、012(さだ)めし都会(とくわい)には高架(かうか)鉄道(てつだう)もあるだらうし、013自動車(じどうしや)014電車(でんしや)設備(せつび)完全(くわんぜん)出来(でき)()るだらう、015(ひと)()つて()ようかなア』
016 原彦(はらひこ)017田吾作(たごさく)(かた)(ゆす)り、
018原彦(はらひこ)『オイ、019田吾作(たごさく)さま、020これからが肝腎(かんじん)だ、021(いま)から(はう)けてどうするのだ、022(しつか)りせぬかいな。023片方(かたはう)岩窟(がんくつ)にたてかけた藁小屋(わらごや)三四十(さんしじふ)(なら)んで()るだけぢやないか、024そんな狂気(きやうき)じみた(こと)()うて()れると(おれ)(さび)しうなつて()た』
025田吾作(たごさく)『アハヽヽヽ、026此処(こいつ)()(ぽど)馬鹿(ばか)だなア、027一寸(ちよつと)景気(けいき)をつけるために、028誇大的(こだいてき)広告(くわうこく)して()たのだ。029蛇喰(へびく)ひや蛙喰(かはづくら)ひの半獣半鬼(はんじうはんき)巣窟(さうくつ)だ。030これからもう馬鹿口(ばかぐち)(つつし)んで不言実行(ふげんじつかう)にかからう』
031宗彦(むねひこ)『お(まへ)たち二人(ふたり)はいよいよ戦場(せんぢやう)(むか)つたのだから(しつか)りしてくれないと(こま)るよ。032(また)(けつ)して乱暴(らんばう)(こと)はしてはならないから、033(つつし)んでくれ。034(あたま)()つや()(なぐ)られた(くらゐ)で、035()()()げたり、036(くち)(ゆが)めるやうでは、037(この)(たび)御用(ごよう)(つと)まらぬから、038()(かく)(にん)()()(こころ)(はな)さぬやうにするのだ。039(にん)()()(やいば)(した)(こころ)だ。040(てき)(やいば)(した)(まこと)(こころ)(くぐ)つて(てき)改心(かいしん)させるのだから、041くれぐれも心得(こころえ)てくれ』
042 田吾(たご)043(はら)両人(りやうにん)小声(こごゑ)で『ハイハイ』と(こた)へながら(すす)んで()く。044二百人(にひやくにん)(ばか)りの老若男女(らうにやくなんによ)(ひと)つの部落(ぶらく)(つく)つて()る。045さうして此処(ここ)人間(にんげん)はどれもこれも(みな)(おし)ばかりになつて()る。046蜈蚣姫(むかでひめ)鬼婆(おにばば)計略(けいりやく)篏口令(かんこうれい)()くかはりに、047(みな)(ちや)(どく)()れて()まされたものばかりだ。048恰度(ちやうど)(おし)(くに)()たも同様(どうやう)である。049田吾作(たごさく)(すこ)しも(この)事情(じじやう)()らず、050(ひと)つの(いへ)()()み、
051田吾作(たごさく)一寸(ちよつと)052(もの)(たづ)ねますが、053(ばば)アの(やかた)はどう()つたら宜敷(よろし)いかな』
054 (なか)より四五人(しごにん)男女(なんによ)055ダラダラと戸口(とぐち)(はし)()で、056不思議(ふしぎ)(かほ)をして(いづ)れも(くち)をポカンと()けて、057アヽヽヽと(おし)のやうに()つて()る。058田吾作(たごさく)(こゑ)張上(はりあ)げて、
059田吾作(たごさく)(ばば)アの(ところ)何処(どこ)だと()うてゐるのだ』
060 天賦(てんぷ)言霊器(げんれいき)聴声器(ちやうせいき)破壊(はくわい)された一同(いちどう)は、061(なん)(こと)だか(すこ)しも(わか)らず、062(ただ)(くち)()けて、063アヽヽヽと(さけ)ぶのみである。
064田吾作(たごさく)『モシ、065宣伝使(せんでんし)さま、066(なん)()つても返事(へんじ)もせず、067(ただ)(くち)()けてアヽヽヽと()うて()(おし)()たやうな(やつ)(ばか)りですな、068(つぎ)(うち)()つて(たづ)ねて()ませうか』
069宗彦(むねひこ)『お(まへ)一任(いちにん)するから、070何卒(どうか)071(わたし)当選(たうせん)するやうに戸別(こべつ)訪問(はうもん)をして、072(きよ)一票(いつぺう)をと丁寧(ていねい)に、073辞儀(じぎ)資本(もと)()らぬから(たの)んでくれい』
074田吾作(たごさく)(なん)資本(もと)()らぬと()つても、075さうペコペコ(あたま)()げては頭痛(づつう)がします(わい)076投票(とうへう)もない(こと)仰有(おつしや)るな、077(ひと)選挙(せんきよ)疝気(せんき))を頭痛(づつう)にやんで、078(たま)りますかい。079何程(なにほど)気張(きば)つたつて解散(かいさん)命令(めいれい)(くだ)つたら、080それこそ(もと)黙阿弥(もくあみ)ですよ』
081宗彦(むねひこ)()(かく)(まへ)一任(いちにん)する』
082田吾作(たごさく)承知(しようち)(いた)しました。083在野党(ざいやたう)(おも)つて選挙(せんきよ)干渉(かんせう)をやらぬやうにして(くだ)さいや。084モシモシ()()のお(かた)085(ばば)アのお住居(すまゐ)何処(どこ)だ、086()らしてくれないか、087(けつ)して投票(とうへう)乞食(こじき)ぢやないから安心(あんしん)して()つておくれ』
088 (いへ)(なか)から(また)もや四五人(しごにん)男女(なんによ)089怪訝(けげん)(かほ)して門口(かどぐち)()(あら)はれ、090(くち)()けてアヽヽヽと()ふばかり。091あゝ此奴(こいつ)駄目(だめ)だと、092田吾作(たごさく)はまた(つぎ)()く。093()つても()つても、094アヽ(ぜめ)()はされて一向(いつかう)要領(えうりやう)()ない。095とうとう一戸(いつこ)(のこ)らず戸口(ここう)調査(てうさ)無事(ぶじ)終了(しうれう)して仕舞(しま)つた。096されど(なん)()(ところ)もなく、097(ばば)アの姿(すがた)見当(みあた)らなかつた。
098 三人(さんにん)是非(ぜひ)なく腰掛(こしかけ)都合(つがふ)()(いは)(さが)して、099ドシンと(しり)()ろし、100(しばら)(いき)(やす)める。101(あか)(ばう)懐中(ふところ)(いだ)いた(をんな)102幾十人(いくじふにん)ともなく、103不思議(ふしぎ)さうに三人(さんにん)(まへ)()(あら)はれ、104(くち)()けて、105アヽヽヽヽとア(ごゑ)連発(れんぱつ)をやつて()る。
106田吾作(たごさく)『エヽ()(たい)(ところ)だな、107矢張(やつぱり)三国ケ岳(みくにがだけ)(へん)野蛮(やばん)未開(みかい)土地(とち)だから、108言語(げんご)()いと()える(わい)
109(はな)して()る。110其処(そこ)容色(ようしよく)(すぐ)れたる一人(ひとり)(をんな)(あら)はれ(きた)り、111宣伝使(せんでんし)会釈(ゑしやく)し、112(これ)(また)アヽヽヽを連発(れんぱつ)しながら(きた)谷間(たにま)(ゆび)ざし(はし)()く。113この(をんな)玉照姫(たまてるひめ)生母(せいぼ)(たま)であつた。114(ばば)手下(てした)(もの)誘拐(かどわか)され、115この山奥(やまおく)()()まれてゐたのである。
116 (ばば)(かんが)へとしては、117玉照姫(たまてるひめ)占奪(せんだつ)する手段(しゆだん)として、118()生母(せいぼ)のお(たま)をうまうまと此処(ここ)(うば)(かへ)つたのである。119三人(さんにん)はお(たま)(かほ)一度(いちど)()(こと)がないので、120そんな秘密(ひみつ)伏在(ふくざい)する(こと)(ゆめ)にも()らず、121(たま)(あと)()つて、122スタスタと駆出(かけだ)した。
123 四五丁(しごちやう)ばかり(たに)沿()うて(ひだり)(すす)むと、124(かべ)()てたやうな巨岩(きよがん)(いく)つともなく谷間(たにま)碁列(ごれつ)して()る。125(たま)手招(てまね)きしながら、126岩窟(がんくつ)(あな)(くぐ)つて姿(すがた)(かく)した。127三人(さんにん)(その)(あと)から、128ドンドンと(あし)(はや)めて岩窟(がんくつ)(なか)五六間(ごろくけん)(ばか)(すす)む。129此処(ここ)鬼ケ城山(おにがじやうざん)割拠(かつきよ)して()鬼熊別(おにくまわけ)(つま)蜈蚣姫(むかでひめ)自転倒島(おのころじま)()ける第二(だいに)作戦地(さくせんち)であつた。130(へび)131(かへる)132山蟹(やまがに)133(その)()獣類(けもの)(にく)はよく乾燥(かんさう)さして岩窟(がんくつ)(なか)(いく)つともなく()()げられてある。
134田吾作(たごさく)『アイ御免(ごめん)なさい、135バラモン(けう)鬼婆(おにばば)アの住家(すまひ)此処(ここ)御座(ござ)いますか』
136(ばば)此処(ここ)鬼婆(おにばば)蜈蚣姫(むかでひめ)住家(すみか)だよ』
137田吾作(たごさく)『アヽ、138左様(さやう)御座(ござ)いましたか、139これは失礼(しつれい)(いた)しました。140なんと立派(りつぱ)なお(やかた)ですな、141これでは風雨雷電(ふううらいでん)142地震(ぢしん)大丈夫(だいぢやうぶ)でせう。143吾々(われわれ)もせめて半日(はんにち)なりと、144こんな結構(けつこう)(やかた)(くら)したいものです(わい)
145(ばば)『お(まへ)一体(いつたい)何処(どこ)(ひと)ぢや、146そして(また)二人(ふたり)(とも)()れて()()るのかな』
147田吾作(たごさく)『ハイ、148(じつ)(ところ)三五教(あななひけう)予備(よび)宣伝使(せんでんし)拝命(はいめい)(いた)しまして、149今日(けふ)初陣(うひぢん)御座(ござ)います。150(この)(とほ)り、151宗彦(むねひこ)152原彦(はらひこ)()ふケチな野郎(やらう)()れて()ります。153大変(たいへん)(はら)()らして()るさうですから、154(かへる)干乾(ひぼし)でも(めぐ)んでやつて(くだ)さいな』
155(ばば)折角(せつかく)御入来(ごじゆらい)だから、156大切(たいせつ)(かへる)ぢやけれど、157饗応(よん)であげませう。158この(かへる)当山(たうざん)名物(めいぶつ)殿蛙(とのがへる)()つて、159(むし)(くすり)にもなり、160一切(いつさい)病気(びやうき)妙薬(めうやく)だ。161田圃(たんぼ)にヒヨコヒヨコ()んで()青蛙(あをがへる)糞蛙(くそがへる)とは(ちつ)(せん)(こと)にして()るのだから、162(その)(つも)りで(あぢ)はつて()がりなさい。163(まへ)さんは蛙飛(かへると)ばしの蚯蚓切(みみずき)りだからなア』
164田吾作(たごさく)『チヨツ、165馬鹿(ばか)にして()やがる(わい)
166原彦(はらひこ)『オイオイ宣伝使(せんでんし)(ばけ)サン、167そんな(こと)()うてくれては(こま)るぢやないか』
168田吾作(たごさく)(こま)るやうにお(ねが)ひしたのだよ、169(むかし)170竹熊(たけくま)竜宮城(りうぐうじやう)使臣(ししん)招待(せうたい)した(とき)には、171百足(むかで)蜴蜥(とかげ)172なめくじなどの御馳走(ごちそう)()はしたと()ふぢやないか、173(かれひ)(するめ)だと(おも)うて()ひさへすりやよいのだ。174(まへ)()はず(ぎら)ひだなくて、175(かへる)(ぎら)ひだから(こま)る、176アハヽヽヽ』
177(ばば)三人(さんにん)ともそんな(ところ)()つて()ずに、178サアサア(あし)(あら)つてお(あが)りなさい。179今晩(こんばん)(ゆつ)くりと(はな)しませう。180(まへ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)初陣(うひぢん)だと()つたな』
181田吾作(たごさく)『ハイ、182(まを)しました、183(まつた)(その)(とほ)りです』
184(ばば)『そんなら(なほ)結構(けつこう)だ、185なまりはんぢやくの、186(こけ)()えた宣伝使(せんでんし)()うも強太(しぶと)うて改心(かいしん)出来(でき)ぬ。187(まへ)はまだまだほやほやだから、188十分(じふぶん)教理(けうり)()いて()やせまい』
189田吾作(たごさく)(わたし)郷里(きやうり)()つて()たところですが、190(なん)(めう)(こと)仰有(おつしや)いますな』
191(ばば)『ハヽヽヽヽ、192(まへ)()(ぽど)無学者(むがくしや)()える(わい)193けうり()(こと)故郷(こきやう)意味(いみ)ぢやない、194三五教(あななひけう)(すぢ)はどうだと()ふのだ』
195田吾作(たごさく)『つい、196きよりきよりして()ましたので(すぢ)(なに)(わか)りませぬ』
197(ばば)『アヽそうだらうそうだらう、198(すぢ)(わか)つたら阿呆(あはう)らしうて三五教(あななひけう)()れたものぢやない。199(すぢ)(わか)らぬのが結構(けつこう)だ。200サアこれから此処(ここ)百日(ひやくにち)ばかり無言(むごん)(ぎやう)をして、201(その)(うへ)言霊(ことたま)(ひら)いて、202バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)になるのだよ。203(まへ)204此処(ここ)()(みち)沢山(たくさん)(いへ)があつたらうがな、205(みな)無言(むごん)(ぎやう)がさしてあるのだ』
206田吾作(たごさく)『あの(まま)ものが()へなくなるのぢやないのですか、207どうやら(つんぼ)のやうですが』
208(ばば)(つんぼ)尚更(なほさら)結構(けつこう)だ。209(ひと)荒行(あらぎやう)をすれば()()えぬやうになつて仕舞(しま)ふ。210だけれど()だけは退()けて()かぬと、211不自由(ふじゆう)だと(おも)つて大目(おほめ)()てあるのだ。212百日(ひやくにち)(ぎやう)をして()いものもある、213十日(とをか)()いものもある、214修業(しうげふ)さへ出来(でき)たら(くち)()けるやうに、215(みみ)(きこ)えるやうにチヤンとしてあるのだ』
216田吾作(たごさく)()アサン、217そりあ無言(むごん)(ぎやう)ぢやない、218()はれぬから()はぬのだらう、219()へる(くち)()つて()つて()はぬやうにし、220(きこ)える(みみ)()つて()()かぬやうにして()るのなら、221(ぎやう)にもならうが、222しよう(こと)なしに()はざる()かざるはあまり(ぎやう)にもならないぢやないか』
223(ばば)『そんな理屈(りくつ)()ふものぢやない、224信仰(しんかう)(みち)には理屈(りくつ)禁物(きんもつ)だ。225人間(にんげん)分際(ぶんざい)として、226さうガラガラと(すず)化物(ばけもの)のやうに小理屈(こりくつ)()ふものぢやない(わい)
227田吾作(たごさく)『ヘエ』
228(くび)(かたむ)ける。
229宗彦(むねひこ)(わたし)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)です。230(いま)宣伝使(せんでんし)()つて()つた(をとこ)はまだ(たまご)ですから、231(なに)()ふか(わか)りませぬ』
232(ばば)『アヽさうだらうと(おも)つた。233(なん)だか間拍子(まべうし)()けた理屈(りくつ)()ねる(ひと)だ。234人間(にんげん)大悟(たいご)徹底(てつてい)すると、235神様(かみさま)広大無辺(くわうだいむへん)御威徳(ごゐとく)(わか)つて、236(なん)とも()はれぬやうになつて仕舞(しま)うて(だま)つて()改心(かいしん)するやうになるものぢや、237流石(さすが)にお(まへ)(えら)い、238最前(さいぜん)から(ばば)()(こと)(みみ)(かたむ)けて()きなさつた。239(えら)いものだ、240言葉(ことば)(おほ)ければ(しな)(すくな)し、241空虚(くうきよ)なる器物(きぶつ)強大(きやうだい)なる音響(おんきやう)(はつ)すと()うて、242ガラガラドンドン()(をとこ)(かぎ)り、243智慧(ちゑ)もなければ信仰(しんかう)()いものだ。244(まへ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)なら、245あの青彦(あをひこ)246紫姫(むらさきひめ)247常彦(つねひこ)248亀彦(かめひこ)249悦子姫(よしこひめ)()没分暁漢(わからずや)()つて()るだらうなア』
250宗彦(むねひこ)『イエイエ(わたし)(たち)三人(さんにん)は、251宇都山村(うづやまむら)(もの)御座(ござ)いまして、252(ただ)一度(いちど)聖地(せいち)(まゐ)り、253(しばら)修業(しうげふ)(いた)しましたが、254そんなお(かた)にはお()にかかつた(こと)御座(ござ)いませぬ、255何処(どこ)宣伝(せんでん)(まは)つて御座(ござ)るのでせう』
256(ばば)『どうぢや、257(まへ)三五教(あななひけう)()めて、258(わし)弟子(でし)になつたら』
259宗彦(むねひこ)有難(ありがた)御座(ござ)いますが、260各自(めいめい)自分(じぶん)宗旨(しうし)()()えるものです。261(わたし)貴女(あなた)改心(かいしん)をして(もら)つて、262三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)して(いただ)かうと(おも)ひ、263遥々(はるばる)(まゐ)つたのですよ。264()うです、265(わたし)()(こと)一通(ひととほ)りお()(くだ)さつて、266(その)(うへ)入信(にふしん)なさつたら』
267(ばば)『アヽ、268いやいや誰人(だれ)三五教(あななひけう)のやうな馬鹿(ばか)(をしへ)(はい)(やつ)があるものか、269改心(かいしん)をしてくれなんて、270そりやお(まへ)271(なに)()ふのだい。272(これ)(ほど)()()つた(ちり)(ひと)つない御霊(みたま)鬼婆(おにばば)だ、273改心(かいしん)があつて(たま)るものか、274改心(かいしん)するのはお前等(まへら)(こと)だ』
275 宗彦(むねひこ)拍手(はくしゆ)し、276天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)(はじ)める。277(ばば)(おどろ)いて、
278『コレコレ皆様(みなさま)279祝詞(のりと)結構(けつこう)だが折角(せつかく)(こしら)へた(かへる)御飯(ごはん)280()()らねば()べて(もら)はいでもよいが、281せめて神様(かみさま)(そな)へたのだから、282御神酒(おみき)とお(ちや)をお(あが)(くだ)さい、283それで(ゆつ)くりとお祝詞(のりと)()げなさい。284(わし)一緒(いつしよ)()げさせて(いただ)くから』
285無理(むり)()(とめ)る。
286宗彦(むねひこ)弁当(べんたう)此処(ここ)にパンを所持(しよぢ)して()ますからお(ちや)(くだ)さいませ』
287(ばば)『お神酒(みき)(すき)だらう、288自然薯(じねんぢよ)醸造(こしら)へた美味(おいし)(さけ)がある。289(ひと)つあがつたら()うだな』
290宗彦(むねひこ)『イヤ、291(ちや)さへ(いただ)けば結構(けつこう)です』
292田吾作(たごさく)()アさま、293論戦(ろんせん)一先(ひとま)中止(ちゆうし)して、294そんなら(あたた)かいお(ちや)をよんで(くだ)さい、295今晩(こんばん)(ゆつ)くりと言霊戦(ことたません)(まけ)(おと)らず開始(かいし)しませう。296そして(まけ)(はう)(したが)ふと()(こと)(いた)しませうか』
297(ばば)『アヽ面白(おもしろ)からう面白(おもしろ)からう、298そんならさう(いた)しませう。299バラモン(けう)神様(かみさま)は、300御神徳(ごしんとく)(つよ)いから、301迂濶(うつかり)御無礼(ごぶれい)(こと)()はうものなら(ばち)(あた)つて(くち)()けなくなるから、302心得(こころえ)(もの)()ひなさいや。303アヽどれどれ()づからお(ちや)(あたた)めて()げよう』
304(つぎ)()()つて()く。305(しばら)くあつて(ばば)アは土瓶(どびん)(ちや)沸騰(たぎ)らせ、
306(ばば)『サアサア(ちや)()いた、307(みな)さま沢山(どつさり)()んで(くだ)さい、308これも(ばば)寸志(こころざし)だ。309バラモン(けう)だつて、310三五教(あななひけう)だつて、311(かみ)()()(ふた)つはない。312(たがひ)()引合(ひきあ)うて御神徳(ごしんとく)のある神様(かみさま)(はう)帰順(きじゆん)するのだな。313(この)(ばば)都合(つがふ)によつては三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)せぬものでもない、314オホヽヽヽ』
315 三人(さんにん)(なん)()()かず、316(ばば)()いだ(ちや)()んではパンを()ひ、317()んでは()ひ、318(のど)(かわ)いたと()えて土瓶(どびん)一杯(いつぱい)(ちや)(のこ)らず(たひ)らげて仕舞(しま)つた。
319 三人(さんにん)(にはか)息苦(いきぐる)しくなり、320言語(げんご)(はつ)せむとすれども、321一言(ひとこと)(はつ)する(こと)出来(でき)なくなつた。322三人(さんにん)(かほ)見合(みあは)せ、323アヽヽヽとア(ごゑ)連発(れんぱつ)をやつて()る。
324(ばば)『アハヽヽヽ……()いけれまたもあればあるものだ。325とうとう(ばば)計略(けいりやく)にかかりよつた。326(くち)()けず、327(みみ)(きこ)えず、328(あは)れなものだ。329(たま)首尾(しゆび)()()()れ、330(また)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(たまご)三人(さんにん)収穫(しうくわく)した。331如何(いか)頑強(ぐわんきやう)三五教(あななひけう)でも、332玉照姫(たまてるひめ)(おや)()られ、333(また)大切(たいせつ)宣伝使(せんでんし)()られ、334(だま)つて()(こと)出来(でき)まい。335屹度(きつと)謝罪(あやま)つて(かへ)して(もら)ひに()るのだらう。336(その)(とき)には玉照姫(たまてるひめ)玉照彦(たまてるひこ)とを此方(こちら)受取(うけと)り、337(その)(うへ)(かへ)してやつたらよいのだ。338(しか)(なが)玉照姫(たまてるひめ)黄金(わうごん)なら、339此奴(こいつ)洋銀(やうぎん)(くらゐ)なものだから先方(むかう)(これ)(くらゐ)では往生(わうじやう)(いた)すまい。340マア時節(じせつ)()つて(ねずみ)(もち)をひくやうに二人(ふたり)三人(さんにん)引張込(ひつぱりこ)み、341往生(わうじやう)づくめで仮令(たとへ)玉照彦(たまてるひこ)だけでも此方(こちら)のものに仕度(した)いものだ。342鬼雲彦(おにくもひこ)大将(たいしやう)(もろ)くも波斯(フサ)(くに)(あわ)()つて()(かへ)つて仕舞(しま)はれた。343(しか)(なが)(わし)(をんな)一心(いつしん)(いは)でも()()くのだ。344此処(ここ)()うして時節(じせつ)()ち、345大江山(おほえやま)346鬼ケ城(おにがじやう)回復(くわいふく)し、347三五教(あななひけう)(にしき)(みや)往生(わうじやう)させて、348バラモン(けう)として仕舞(しま)蜈蚣姫(むかでひめ)計略(けいりやく)旨々(うまうま)端緒(たんちよ)(ひら)けかけた。349アヽ有難(ありがた)(こと)だ。350(ひと)此処(ここ)でお(たま)(しやく)でもさして(さけ)でも()まうかい、351そして三人(さんにん)(さかな)にしてやらうかい。352これこれお(たま)353(さけ)だよ。354これ(ほど)()んで()るに何故(なぜ)返事(へんじ)をせぬのか、355オヽさうさう、356(みみ)(つんぼ)になる(くすり)()まして()いた。357(きこ)えぬも無理(むり)はない。358つい(わし)(あま)(うれ)しくて、359精神車(せいしんしや)何処(どこ)かに脱線(だつせん)したと()える、360オホヽヽヽ』
361独言(ひとりごと)()ひながら笑壺(ゑつぼ)()つて()る。362三人(さんにん)無念(むねん)歯噛(はが)みをなし、363(をど)()がつて(やぶ)れかぶれ、364(ばば)(たた)()めしてやらうと(こころ)()めて()たが、365()うしたものか(からだ)がビクとも(うご)けなくなつて()る。366言霊(ことたま)応用(おうよう)するにも肝腎(かんじん)発生器(はつせいき)(あぶら)()れて、367()筒口(つつぐち)閉塞(へいそく)して()るのだから、368如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ず、369(くち)自然(しぜん)(ひも)()どけて、370(あご)一緒(いつしよ)()(さが)り、371ポカンと()いて()る。372三人(さんにん)一度(いちど)(よだれ)をタラタラ(なが)し、373(かほ)見合(みあは)せ、374(くび)()り、375アヽヽヽと(わづか)(こゑ)(はつ)する(ばか)りであつた。
376 (ばば)愉快(ゆくわい)げに安坐(あぐら)をかき、377(なが)煙管(きせる)煙草(たばこ)(くす)べ、378(さけ)()み、
379(ばば)『オイこりや、380阿呆(あはう)宣伝使(せんでんし)381(おれ)智慧(ちゑ)はこんなものだぞ。382蜘蛛(くも)()をかけて()つて()(ところ)茅蝉(ひぐらし)()んで()(ひつ)かかるやうなものだ、383(うご)くなら(うご)いて()い、384言霊(ことたま)使(つか)へるなら使(つか)つて()い、385(みみ)(きこ)えまい』
386長煙管(ながぎせる)雁首(がんくび)(みみ)(あな)をグツと()いて()る。387宗彦(むねひこ)(みみ)(あな)()かれてカツと(おこ)()した。388されど()うする(こと)出来(でき)ぬ。389此度(こんど)(ばば)煙草(たばこ)吸殻(すひがら)宗彦(むねひこ)(くち)(なか)にフツと()いて()()み、
390(ばば)(あつ)からう、391そりや(ちつ)(あつ)い、392()だからのう。393加之(おまけ)にえぐいだらう、394えぐいのはズだ。395煙草(たばこ)のズに、396えぐい(ばば)御馳走(ごちそう)だから、397(ついで)(この)(さけ)()ましてやろか。398イヤイヤ()()てこいつを()ましてやると(わし)()むのがそれだけ()道理(だうり)ぢや、399マアマア()うして二ケ月(にかげつ)三ケ月(さんかげつ)(かた)めて()けば大丈夫(だいぢやうぶ)だ、400(わか)(やつ)二三日(にさんにち)したら大江山(おほえやま)(はう)から(かへ)つて()るだらうから、401(その)(とき)この生木像(なまもくざう)穴庫(あなぐら)へでも格納(かくなふ)さしてもよい(わい)402マアマアそれ(まで)(あたま)(たた)いたり、403(みみ)煙管(きせる)()()んだりして、404バラモン(けう)御規則(ごきそく)(どほ)りの修業(しうげふ)をさしてやるのだ。405なんと心地(ここち)()(こと)だ。406(これ)八岐(やまた)大蛇(をろち)さまもさぞ御満足(ごまんぞく)だらう。407嗚呼(ああ)大蛇大明神様(をろちだいみやうじんさま)408(よろこ)びたまへ(いさ)みたまへ。409(ばば)腕前(うでまへ)()(とほ)りで御座(ござ)います、410()うぞ(この)手柄(てがら)により、411鬼熊別(おにくまわけ)失敗(しつぱい)(つみ)(ゆる)して(くだ)さいませ。412(てん)にも()にも()(わたし)(をつと)413神様(かみさま)御用(ごよう)縮尻(しくじ)つて、414()んで神罰(しんばつ)(かうむ)り、415地獄(ぢごく)(かま)焦起(こげおこ)しにせられるのも女房(にようばう)として()()られませぬ、416何卒(どうぞ)(わたし)一緒(いつしよ)に、417(いま)ぢや御座(ござ)いませぬが、418命数(めいすう)()きた(とき)天国(てんごく)にやつて(くだ)さい。419南無八岐大蛇大明神様(なむやまたをろちだいみやうじんさま)420ハズバンドの(つみ)(ゆる)したまへ、421(はら)ひたまへ、422(きよ)めたまへ、423金毛九尾(きんまうきうび)(みこと)
424祈願(きぐわん)して()る。425(この)(とき)岩窟(がんくつ)(くち)より、426(こゑ)(すず)しく宣伝歌(せんでんか)(うた)()(をとこ)があつた。
427(をとこ)(かみ)(おもて)(あら)はれて
428(ぜん)(あく)とを()()ける
429(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
430(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
431(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
432直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)
433()(あやま)ちは()(なほ)
434三五教(あななひけう)(かみ)(のり)
435(あや)聖地(せいち)()れませる
436言依別命(ことよりわけのみこと)もて
437三国ケ岳(みくにがだけ)曲津見(まがつみ)
438言向(ことむ)(やは)すそのために
439三五教(あななひけう)宗彦(むねひこ)
440宇都(うづ)(さと)をば(あと)にして
441(あし)(まか)せてテクテクと
442これの岩窟(いはや)()()れば
443(あく)にかけては()()なき
444鬼熊別(おにくまわけ)宿(やど)(つま)
445顔色(かほいろ)(くろ)蜈蚣姫(むかでひめ)
446小智慧(こぢゑ)(まは)中年増(ちうとしま)
447(この)岩窟(いはやど)陣取(ぢんど)りて
448四方(よも)人々(ひとびと)(あざむ)きつ
449赤子(あかご)(こゑ)()きつけて
450十里(じふり)二十里(にじふり)三十里(さんじふり)
451(とほ)(みち)をば(いと)ひなく
452手下(てした)魔神(まがみ)(くば)()
453(この)岩窟(がんくつ)()(かへ)
454(あさ)(ゆふ)なにさいなみて
455(あく)(かぎ)りを(つく)しつつ
456()()(さけ)()(くる)
457宗彦(むねひこ)田吾作(たごさく)原彦(はらひこ)
458(ばば)()()口車(くちぐるま)
459()らず()らずに()せられて
460毒茶(どくちや)をどつさり()みまはし
461(くち)()かねば(みみ)()かず
462五体(ごたい)すくみて一寸(いつすん)
463(うご)きの()れぬ破目(はめ)となり
464()ばかりきよろきよろきよろつかせ
465(その)(うへ)ポカンと(くち)あけて
466(よだれ)(なが)しアヽヽヽと
467()りも()はざる言霊(ことたま)
468連発(れんぱつ)するこそいとしけれ
469(あめ)真浦(まうら)神司(かむづかさ)
470この留公(とめこう)(はら)()
471肝腎要(かんじんかなめ)神策(しんさく)
472そつと()らして(くだ)さつた
473宗彦(むねひこ)原彦(はらひこ)田吾作(たごさく)
474()らず()らずに()(かみ)
475(わな)(おちい)今日(けふ)(ざま)
476(たす)けてやらねば三五(あななひ)
477(かみ)(をしへ)()()ねる
478サアこれからは留公(とめこう)
479(かみ)(もら)うた言霊(ことたま)
480御稜威(みいづ)をかりて三人(さんにん)
481危難(きなん)(すく)玉照(たまてる)
482(ひめ)(みこと)()みませる
483(たま)(かた)(すく)()
484(おに)のお(ばば)言向(ことむ)けて
485この岩窟(いはやど)改良(かいりやう)
486三五教(あななひけう)皇神(すめかみ)
487御霊(みたま)(いつき)(まつ)りつつ
488ミロクの御代(みよ)(さきがけ)
489(つか)へまつらむ(たの)もしさ
490嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
491御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ』
492(うた)ひつつ三人(さんにん)(まへ)(あら)はれ()たる。493(ばば)身体(しんたい)(すく)み、494身動(みうご)きならず、495()をぱちつかせ(くる)しみ()る。496この(とき)497岩窟(がんくつ)(おく)(はう)より(すず)しき(をんな)(こゑ)
498(かみ)(おもて)(あら)はれて
499(ぜん)(あく)とを()()けて
500(いまし)(たま)(とき)()
501四継王(よつわう)(やま)聖麓(せいろく)
502(にしき)(みや)(つか)へたる
503玉照姫(たまてるひめ)()みの(はは)
504(たま)(かた)(わらは)なり
505桶伏山(をけふせやま)(かく)されし
506(うづ)(たから)(うば)()
507()()姿(すがた)()るよりも
508(わらは)(おどろ)()(わす)
509(あと)()ひかけ山坂(やまさか)
510()ける(をり)しも木影(こかげ)より
511(あら)はれ()でたる曲神(まがかみ)
512手下(てした)(やつ)()つけられ
513手足(てあし)()ばりいろいろと
514(くる)しき(しもと)()けながら
515(うき)をみくにの(やま)(うへ)
516この岩窟(がんくつ)()()まれ
517蜈蚣(むかで)(ひめ)てふ鬼婆(おにばば)
518(ちや)(すす)められ一時(いつとき)
519(いき)(ふさ)がりて言霊(ことたま)
520(くるま)(まは)らぬ(くる)しさに
521(あさ)(ゆふ)なに三五(あななひ)
522(かみ)御前(みまへ)黙祷(もくたう)
523()たるに(たちま)(のど)(ひら)
524(むね)(すず)しく晴渡(はれわた)
525されど(わらは)(つつし)みて
526(ただ)一言(ひとこと)言挙(ことあ)げを
527なさず(おし)をば(よそほ)ひつ
528(うづ)(たから)所在(ありか)をば
529今迄(いままで)(さぐ)()たりしぞ
530(かみ)(めぐみ)(さちは)ひて
531いよいよ(ここ)宗彦(むねひこ)
532言依別(ことよりわけ)のみことのり
533()()けまして()でたまひ
534(かほ)(あは)せて()ながらも
535一面識(いちめんしき)もなき(ゆゑ)
536(さと)(たま)はず(わが)(くば)
537(まなこ)(こころ)()めまさず
538やみやみ毒茶(どくちや)()(たま)
539その(さま)()たる()(こころ)
540(つるぎ)()むよりつらかりし
541あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
542(かみ)(この)()()さずやと
543女心(をんなごころ)(おろか)にも
544愚痴(ぐち)繰事(くりごと)繰返(くりかへ)
545(とき)しもあれや(おもて)より
546(すず)しく(きこ)えし宣伝歌(せんでんか)
547(みみ)をすまして(うかが)へば
548三五教(あななひけう)(のり)(こゑ)
549地獄(ぢごく)(ほとけ)()ひしごと
550(こころ)いそいそ(いま)此処(ここ)
551(あら)はれ(きた)るお(たま)こそ
552(あま)岩戸(いはと)一時(いつとき)
553(ひら)くばかりの(うれ)しさよ
554あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
555御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましまして
556宗彦(むねひこ)田吾作(たごさく)原彦(はらひこ)
557(やまひ)()やし(たま)へかし
558(なや)みを(たす)(たま)へかし』
559(うた)ひつつ(この)()(あら)はれたり。560不思議(ふしぎ)三人(さんにん)(にはか)身体(しんたい)自由(じいう)となり、561(みみ)(きこ)え、562(くち)縦横(じうわう)無碍(むげ)(うご)()した。
563田吾作(たごさく)『イヤ、564留公(とめこう)さま、565よう()てくれた。566もう一足(ひとあし)(はや)ければこんな()()ふのだ()かつたに、567しかし(なが)最前(さいぜん)途中(とちう)()たお女中(ぢよちう)さまが、568(いま)()けば玉照姫(たまてるひめ)さまの御生母(ごせいぼ)()(こと)だ、569(なん)とマア神様(かみさま)御経綸(ごけいりん)(わか)らぬものですなア』
570(たま)(みな)さま、571()(ところ)()(くだ)さいまして結構(けつこう)御座(ござ)いました。572(じつ)はこの(ばば)アの手下(てした)者共(ものども)が、573ミロク神政(しんせい)成就(じやうじゆ)御宝(おたから)を、574桶伏山(をけふせやま)から(ぬす)()し、575(この)岩窟(がんくつ)秘蔵(ひざう)して()たのを、576今朝(けさ)になつて所在(ありか)()り、577(なん)とかして()()さうと(おも)つて()たのですが、578(ばば)アの監視(かんし)(きつ)いので、579どうする(こと)出来(でき)ず、580誰人(たれ)助太刀(すけだち)()(くだ)さつたらと(おも)うて()矢先(やさき)581貴方(あなた)のお()で、582こんな結構(けつこう)(こと)はありませぬ。583サア一時(いちじ)(はや)くこのお(たから)()つて聖地(せいち)(かへ)りませう』
584(あと)(うれ)(なみだ)(こゑ)さへ(くも)る。
585宗彦(むねひこ)『アヽさうで御座(ござ)いましたか、586(わたくし)言依別命(ことよりわけのみこと)(さま)より、587是非(ぜひ)(とも)三国ケ岳(みくにがだけ)()つて()いと(あふ)せられて、588魔神(まがみ)征服(せいふく)せむと()()たのです。589貴方(あなた)此処(ここ)(とら)はれて御座(ござ)(こと)も、590(いま)今迄(いままで)(ゆめ)にも()らなかつた。591サア(これ)からこの(ばば)アを言向(ことむ)()はし、592()()ると凱旋(がいせん)(いた)しませう』
593(たま)到底(たうてい)(ばば)アには改心(かいしん)(のぞ)みはありませぬ、594自分(じぶん)から()うして霊縛(れいばく)にかかつて()るのですから、595これを(さいは)ひに(みな)さん聖地(せいち)(かへ)りませう。596(この)(たから)厳重(げんぢう)(ふう)をして()きました、597(わたくし)捧持(ほうぢ)して(かへ)ります。598前後(ぜんご)警固(けいご)して(くだ)さい。599(この)(ばば)アは半日(はんにち)(ばか)霊縛(れいばく)()けないやうに(ねが)()けば、600()ひかけて()気遣(きづか)ひもありませぬ。601五六十人(ごろくじふにん)手下(てした)(あら)くれ(をとこ)が、602今日(けふ)(かぎ)つて、603(いづ)れも遠方(ゑんぱう)出稼(でかせ)ぎに()つた留守(るす)()604これ(まつた)(てん)(めぐ)みたまふ(とき)でせう。605サアサア長居(ながゐ)はおそれ』
606とお(たま)(かた)帰綾(きれう)(うなが)す。
607 宗彦(むねひこ)先頭(せんとう)にお(たま)608田吾作(たごさく)609留公(とめこう)610原彦(はらひこ)()順序(じゆんじよ)で、611宣伝歌(せんでんか)(たか)(うた)ひ、612四辺(あたり)木魂(こだま)(ひび)かせながら、613聖地(せいち)()して目出度(めでた)凱旋(がいせん)することとはなりける。
614 岩窟(がんくつ)(なか)には進退(しんたい)自由(じいう)(うしな)つた(ばば)(ただ)一人(ひとり)615(たに)彼方(かなた)には(さび)しげに閑古鳥(かんこどり)()いて()る。
616大正一一・五・一四 旧四・一八 加藤明子録)