霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 清泉(きよいづみ)〔七〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第3篇 黄金化神 よみ:おうごんけしん
章:第9章 第22巻 よみ:きよいずみ 通し章番号:701
口述日:1922(大正11)年05月26日(旧04月30日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は相変わらず玉を取ったのは曲津神の仕業だと思い込んでいた。そして夜に出立すると、鷹鳥山に小さな庵を結んで二三の供人と共に潜んで時を待っていた。
高姫は鷹鳥山の庵で三五教を楯に教えを説いていたが、それを聞きに近隣の老若男女が集まってきて、栄えていた。
バラモン教のカナンボールとスマートボールは、鷹鳥山に現れて鷹鳥姫と名乗るこの婆が、如意宝珠の玉と紫の玉を飲み込んでいると噂に聞いた。そこで二人は、蜈蚣姫に献上するために鷹鳥姫を襲って玉を奪おうと画策した。
二人は鷹鳥姫の侍女・玉能姫が清泉に水を汲みに来るところを狙うが、逆に白狐につままれて気絶してしまう。スマートとカナンは気が付くが、お互いを化け物と勘違いして喧嘩を始め、清泉に落ちてしまう。泉は真っ黒になってしまった。
スマートとカナンの首尾を確かめに来た部下たちは、清泉に人が落ちた音を聞いて、てっきり玉能姫と思い込み、蜈蚣姫のところへ連れて行こうとして泉にやってきた。泉ではスマートとカナンが取っ組み合いの喧嘩をしている。
薄暗がりの中、バラモン教の部下の金助、銀助、鉄助はスマートとカナンを水に落ちた玉能姫ら鷹鳥山の侍女だと思って助けようと、水に飛びこんだ。しかしスマートとカナンの喧嘩に巻き込まれてますます混乱してしまう。
そこへ先ほどの三人の女神が現れて、金助、銀助、鉄助を恩人だと言って真っ白な肌に変えてしまった。また美しい着物を着せられて三人は喜び、女神たちと手を取って踊っている。
スマートとカナンはそれを羨ましそうに眺めている。また残りの二人のバラモン教の部下、熊と蜂も三人を呼び止めるが、金、銀、鉄の三人は、鷹鳥姫のお目にかかってくる、と言い残して、女神たちと山を登って行ってしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2209
愛善世界社版:115頁 八幡書店版:第4輯 422頁 修補版: 校定版:119頁 普及版:53頁 初版: ページ備考:
001天津御神(あまつみかみ)(たま)ひてし
002生言霊(いくことたま)(ひと)(ふた)(みつ)
003四尾(よつを)(みね)山麓(さんろく)
004(いづ)御霊(みたま)(あら)はれて
005五六七(みろく)神世(みよ)(つく)らむと
006神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)
007(うみ)御子(おんこ)()れませる
008八人乙女(やたりおとめ)(その)(なか)
009(ひい)でて(たか)英子姫(ひでこひめ)
010悦子(よしこ)(ひめ)諸共(もろとも)
011(にしき)(みや)(ここの)(たり)
012百千万(ももちよろづ)神策(しんさく)
013幾億年(いくおくねん)(すゑ)までも
014堅磐常磐(かきはときは)(かた)めむと
015天津御神(あまつみかみ)神言(みこと)もて
016金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)
017黄金(わうごん)(たま)(むらさき)
018(うづ)(たから)永久(とこしへ)
019()(かく)したる桶伏(をけぶせ)
020(やま)岩戸(いはと)何時(いつ)しかに
021(ひら)きて(ここ)黒姫(くろひめ)
022(むね)動悸(どうき)高姫(たかひめ)
023(たま)(うしな)ひし(くる)しさに
024天地(てんち)(かみ)言解(こととき)
025言葉(ことば)もなくなく高姫(たかひめ)
026千々(ちぢ)(こころ)(くだ)きつつ
027(よる)(まぎ)れて四尾(よつをう)
028(やま)(ふもと)出立(しゆつたつ)
029六甲山(ろくかふざん)峰続(みねつづ)
030蜈蚣(むかで)(ひめ)一族(いちぞく)
031立籠(たてこも)りたる魔谷ケ岳(まやがだけ)
032(たま)行方(ゆくへ)(わか)らねど
033執念(しふねん)(ぶか)曲神(まがかみ)
034八岐大蛇(やまたをろち)計画(けいくわく)
035早合点(はやがつてん)高姫(たかひめ)
036鷹鳥山(たかとりやま)(ささ)やけき
037(いほり)(むす)()(ひる)
038鷹鳥(たかとり)ならぬ(はやぶさ)
039()()(すき)(うかが)ひつ
040(みづ)()らさぬ三五(あななひ)
041(をしへ)をここに(たて)となし
042(ぬき)さしならぬ()破目(はめ)
043押開(おしひら)かむと村肝(むらきも)
044(こころ)(つつ)(いは)()
045二三(にさん)信徒(まめひと)(ともな)ひて
046(とき)()つこそ忌々(ゆゆ)しけれ。
047 (はる)陽気(やうき)(ただよ)うて、048山桜(やまざくら)此処(ここ)彼処(かしこ)049多福(たふく)(づら)ではなけれども、050(はな)より()(まへ)()る、051谷路(たにみち)(つた)うてスタスタと(のぼ)(きた)二人(ふたり)(をとこ)052山桜(やまざくら)古木(こぼく)根元(ねもと)(こし)()()け、053(たけ)子笠(こがさ)大地(だいち)()()てヒソビソ(ばなし)(ふけ)る。
054(かふ)(この)(とほ)四方(よも)山々(やまやま)新装(しんさう)をこらし、055(はる)英気(えいき)(ふく)んで、056木々(きぎ)()()時々刻々(じじこくこく)際限(さいげん)もなく新芽(しんめ)()(いだ)し、057常世(とこよ)(はる)寿(ことほ)ぎ、058(はな)(わら)ひ、059(とり)(うた)ひ、060(じつ)(なん)とも()へぬ気分(きぶん)になつて()た。061(しか)(なが)吾々(われわれ)(ほう)ずるバラモン(けう)も、062一時(いちじ)大江山(おほえやま)鬼雲彦(おにくもひこ)さまが鬼ケ城山(おにがじやうざん)鬼熊別(おにくまわけ)南北(なんぼく)相呼応(あひこおう)して、063遠近(ゑんきん)風靡(ふうび)さした隆盛(りうせい)()()へ、064今日(こんにち)のバラモン(けう)恰度(ちやうど)(ふゆ)()たやうなものだなア。065吾々(われわれ)三国ケ岳(みくにがだけ)(とりで)三五教(あななひけう)(ため)()(こぼ)たれてより、066一旦(いつたん)本国(ほんごく)(かへ)り、067(とき)()つて捲土重来(けんどぢうらい)せむものと、068蜈蚣姫(むかでひめ)(さま)幾度(いくたび)諫言(かんげん)(こころ)みたか()れなかつたが、069どうしてもお()きなさらず、070(また)もやアルプス(けう)鷹依姫(たかよりひめ)(とも)に、071大自在天(だいじざいてん)(さま)御威徳(ごゐとく)発揮(はつき)せむと主張(しゆちやう)し、072(この)魔谷ケ岳(まやがだけ)にお()しになつてから早三月(はやみつき)()つた。073(しか)(なが)高春山(たかはるやま)没落(ぼつらく)以来(いらい)影響(えいきやう)()け、074折角(せつかく)(あつ)まつて()信者(しんじや)も、075日向(ひなた)(こほり)(ごと)く、076()()消滅(せうめつ)運命(うんめい)繰返(くりかへ)し、077吾々(われわれ)()つた(こと)(なん)ぞの(やう)蜈蚣姫(むかでひめ)御大将(おんたいしやう)不機嫌(ふきげん)078日夜(にちや)八当(やつあた)り、079(じつ)(こま)つたものぢやないか。080今日(けふ)(なん)とか(ひと)つお土産(みやげ)()つて(かへ)らねば、081あの(むづ)かしい(かほ)(もと)(さや)(をさ)まらない、082(なん)とか()名案(めいあん)はあるまいかなア』
083(おつ)名案(めいあん)()つて、084吾々(われわれ)智嚢(ちなう)(そこ)(しぼ)()つた(うへ)(こと)だから、085モウ(この)(うへ)逆様(さかさま)()つても(しらみ)一匹(いつぴき)産出(さんしゆつ)……(いや)()ちて()気遣(きづか)ひがない。086(えう)するに非常(ひじやう)手段(しゆだん)(もち)ゐるより方法(はうはふ)はあるまいよ。087鷹鳥山(たかとりやま)鷹鳥姫(たかとりひめ)相当(さうたう)年増(としま)で、088蜈蚣姫(むかでひめ)(おな)(やう)年輩(ねんぱい)だが、089まだ此方(こちら)(あら)はれてから(いく)らにもならぬのに大変(たいへん)(いきほひ)だ。090何時(いつ)()(どき)からかけて鷹鳥山(たかとりやま)(いは)()(みち)()鷹鳥姫(たかとりひめ)(いほり)(かよ)老若男女(らうにやくなんによ)非常(ひじやう)なものだ。091(なん)でも鷹鳥姫(たかとりひめ)(むらさき)(たま)092金剛不壊(こんがうふゑ)宝珠(ほつしゆ)(はら)()()んで()ると()(こと)だから、093(ひと)彼奴(あいつ)直接(ちよくせつ)行動(かうどう)何々(なになに)して(しま)へば、094(あと)はバラモン(けう)天下(てんか)だ。095それに(つい)て、096(かれ)股肱(ここう)(たの)玉能姫(たまのひめ)()(すこぶ)美人(びじん)()る。097()(その)(をんな)から巧妙(うま)()きつけて、098此方(こちら)のものにしさへすれば、099鷹鳥姫(たかとりひめ)接近(せつきん)機会(きくわい)()ると()ふものだ。100大樹(たいじゆ)()(もの)()(その)(えだ)()る……』
101(しやう)()むとする(もの)()(その)(うま)()ると()筆法(ひつぱふ)だな。102(しか)しさうウマく計画(けいくわく)(どほ)りに()くだらうか。103当事(あてごと)(うし)おもがひ(むか)ふから(はづ)れると()つて、104(じつ)不安心(ふあんしん)なものだ』
105『その玉能姫(たまのひめ)何時(いつ)谷川(たにがは)(みづ)()みにやつて()るさうだ。106表口(おもてぐち)(まは)れば沢山(たくさん)参詣者(さんけいしや)だから、107到底(たうてい)目的(もくてき)(たつ)()なからうが、108玉能姫(たまのひめ)裏坂(うらさか)椿谷(つばきだに)清泉(きよいづみ)何時(いつ)()()ち、109霊泉(れいせん)()みに()ると()(こと)探知(たんち)して()るのだ。110あの(みづ)(なん)でも非常(ひじやう)薬品(やくひん)(ふく)んで()る。111それを御神水(ごしんすゐ)だと()つて、112鷹鳥姫(たかとりひめ)数多(あまた)(もの)(あた)へるので、113(すべ)ての病気(びやうき)奇妙(きめう)全快(ぜんくわい)するさうだ。114(これ)鷹鳥姫(たかとりひめ)(やつ)115御神力(ごしんりき)だと(しよう)し、116股肱(ここう)(しん)たる玉能姫(たまのひめ)にソツと()ませ、117神前(しんぜん)(そな)へさせて()くさうだ。118第一(だいいち)玉能姫(たまのひめ)巧妙(うま)此方(こちら)()()れて、119(その)(うへ)本城(ほんじやう)()(むか)へば、120成功(せいこう)(うたがひ)なしだよ。121サア清泉(きよいづみ)まで(わづ)二三丁(にさんちやう)だ。122(はや)()かう』
123とカナンボール、124スマートボールの両人(りやうにん)は、125崎嶇(きく)たる谷道(たにみち)(かさ)()にしながら、126チクチクと(のぼ)()く。
127 カナン、128スマートの両人(りやうにん)鷹鳥山(たかとりやま)清泉(せいせん)(やうや)辿(たど)()いた。129急坂(きふはん)(ふと)竹製(たけせい)手桶(てをけ)両手(りやうて)(ひつさ)げ、130背恰好(せかつかう)131容貌(ようばう)132寸分(すんぶん)(たが)はぬ三人(さんにん)(をんな)133ニコニコしながら二人(ふたり)(まへ)(あら)はれ(きた)り、
134甲女(かふぢよ)『あなたは、135バラモン(けう)のカナンさまでせう』
136カナン『御察(おさつ)しの(とほ)りカナンです。137此奴(こいつ)ア、138スマートと()つて、139(わたくし)乾児(こぶん)です。140どうぞ(この)(つら)()くお()()められまして、141(わす)れなき(やう)に……』
142『ホツホヽヽヽ、143(わす)れようと()つたつて、144(その)(かほ)如何(どう)して(わす)れられませう』
145スマート『オイ、146カナン、147一目(ひとめ)()てさへ、148()()美人(びじん)(わす)れられぬと()ふのだから、149(たい)した(もの)だらう』
150『ホヽヽヽヽ』
151(はら)(かか)へて(をんな)(しやが)む。
152スマ『コレコレお女中(ぢよちう)さま、153(なに)をお(わら)ひなさる。154どつか(わたくし)(かほ)特徴(とくちやう)がありますか……どつかお()()つた(ところ)御座(ござ)いますかなア』
155カナン『オイ、156スマート、157貴様(きさま)余程(よつぽど)()馬鹿(ばか)だなア。158一寸(ちよつと)水鏡(みづかがみ)()らして()よ。159随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)(かほ)だぞ』
160 三人(さんにん)(をんな)は、161一度(いちど)(へそ)(かか)へて(わら)()ける。
162『ハテナ』
163不審(ふしん)そうにスマートは清泉(せいせん)(かほ)()らし(なが)めようとする。164()られては大変(たいへん)()はぬ(ばか)りに、165カナンは手頃(てごろ)(いし)(ひろ)ふより(はや)(いづみ)(なか)()()んだ。166(たちま)波立(なみた)ち、167スマートの(かほ)(ほそ)(なが)(よこ)(ひら)たく、168前後左右(ぜんごさいう)随意(ずゐい)活動(くわつどう)169伸縮(しんしゆく)自在(じざい)170真黒(まつくろ)けの姿(すがた)(うつ)る。
171スマート『(なん)だかチツとも()えないワ。172(この)(いづみ)には(くろ)(ばう)(れい)()いて()るぢやないか』
173カナン『アハヽヽヽ、174(おれ)可笑(をか)しうてカナンワイ、175のうスマート』
176(また)(わら)ふ。177三人(さんにん)(をんな)益々(ますます)(わら)()ける。178スマートは合点(がてん)()かず、179(なみ)(しづ)まつたのを見定(みさだ)め、180(また)もや(のぞ)きかける。181カナンは(いし)()()む。182スマートは、
183馬鹿(ばか)にするない。184何故(なぜ)水鏡(みづかがみ)()ようと(おも)ふのに、185邪魔(じやま)をするのだ』
186貴様(きさま)(かほ)貴様(きさま)()ると、187(おれ)一寸(ちよつと)カナン(こと)があるのだよ。188アハヽヽヽ、189随分(ずゐぶん)(くろ)()だなア』
190(なん)だか(おれ)(かほ)今朝(けさ)から鬱陶敷(うつたうしく)仕方(しかた)がない。191スマートな()がせないよ。192実際(じつさい)如何(どう)なつたのか』
193『お目出度(めでた)(やつ)だ。194蜈蚣姫(むかでひめ)さまが何方(どちら)()いとるか(わか)らぬ(やう)にと、195(すみ)()つて()かしやつたのだ。196貴様(きさま)(かほ)一面(いちめん)(すみ)だらけだよ。197(おれ)面黒(おもくろ)くてカナンボールだ』
198『そりや大変(たいへん)だ。199スマートも(ひと)此処(ここ)手水(てうづ)使(つか)はうかなア』
200『イヤイヤそんな(こと)しようものなら大変(たいへん)だぞ。201貴様(きさま)注意(ちゆうい)()らぬので、202三国ケ岳(みくにがだけ)(たま)在処(ありか)をお(たま)(かた)()らした(やつ)だと蜈蚣姫(むかでひめ)さまに(にら)まれて()るのだ。203大変(たいへん)恥辱(ちじよく)(あた)へよつた……蜈蚣姫(むかでひめ)(かほ)(すみ)()りやがつたから、204あの(たま)()(かへ)(まで)はスマートの(かほ)(すみ)()つて()くのだから……と()つてな、205貴様(きさま)(さけ)(くら)()うて()てる()に、206ペツタリコと左官屋(さくわんや)(あそ)ばしたのだ』
207『そりや(あんま)殺生(せつしやう)ぢやないか。208()()ふナイスにそんな(つら)()られては(たま)らない。209スマートはあんな(くろ)(やつ)だと、210三人女(さんにんをんな)印象(いんしやう)何時(いつ)までも(のこ)つちや(たま)らない。211(ひと)(すみ)(あら)(おと)して、212好男子(かうだんし)()りを(みと)めて()いて(もら)はぬと(つま)らぬからなア』
213無理矢理(むりやり)(みづ)(すく)ひ、214(かほ)(あか)(おと)す。215如何(どう)したものか、216さしもに清冽(せいれつ)なる(いづみ)(すみ)(なが)した(ごと)真黒(まつくろ)になつて(しま)つた。217三人(さんにん)(をんな)は、
218『あれ、219マア()うしませう』
220(かほ)をかくす。221スマートはスツカリと(すみ)(おと)した。222(うま)()きの好男子(かうだんし)である。
223スマート『オイ、224カナン、225(おれ)(かほ)()りよつたのは、226蜈蚣姫(むかでひめ)さまぢやなからう。227貴様(きさま)怪体(けつたい)御面相(ごめんさう)だから、228(おれ)一緒(いつしよ)(ある)くと目立(めだ)つと(おも)つて悪戯(いたづら)をしたのだらう』
229カナン『マア()うでも()いワ。230すべて(かみ)(みち)()(もの)は、231犠牲的(ぎせいてき)精神(せいしん)肝腎(かんじん)だから、232(たれ)がしたにもせよ、233(おれ)がした(こと)にして()けば()いのだよ』
234()(かく)235三人(さんにん)のお(かた)236貴女(あなた)玉能姫(たまのひめ)さまとか()(かた)ぢやありませぬか。237どうぞスマートを鷹鳥山(たかとりやま)()れて()つて(くだ)さいますまいかな』
238甲女(かふぢよ)『ホヽヽヽヽ、239あなたの(やう)瓜実顔(うりざねがほ)()れて(かへ)らうものなら、240青物屋(あをものや)間違(まちが)へられますわ。241カナンさまの南瓜顔(かぼちやがほ)242どうぞそれ(ばか)りは勘忍(こら)へて頂戴(ちやうだい)な』
243カナン『オイ(をんな)244南瓜(かぼちや)とは(なん)だ。245瓜実顔(うりざねがほ)とは(なん)ぢや。246馬鹿(ばか)にするない。247八百屋(やほや)ぢやあるまいし、248サアもう()うなつた以上(いじやう)は、249(いや)でも(おう)でも、250魔谷ケ岳(まやがだけ)(かた)げて(かへ)る。251覚悟(かくご)をせい』
252乙女(をとめ)(たれ)(けが)らはしい。253(まへ)(やう)なヒヨツトコに(かつ)がれて()(もの)がありますかい』
254スマート『ますます貴様(きさま)七尺(しちしやく)男子(だんし)を、255馬鹿(ばか)にするのだな。256こりや、257(おれ)誰様(どなた)心得(こころえ)()る。258バラモン(けう)蜈蚣姫(むかでひめ)左守(さもり)(かみ)(きこ)えたる、259スマートさまぢやぞ。260()()えても(なに)から(なに)まで、261()らぬ(こと)のないチヤアチヤアだ。262玉能姫(たまのひめ)263覚悟(かくご)をせい』
264甲女(かふぢよ)本当(ほんたう)玉能姫(たまのひめ)が……それ(だけ)()(わか)るお(まへ)さまなら……()れだか()てて御覧(ごらん)……』
265スマート『一人(ひとり)玉能姫(たまのひめ)266二人(ふたり)はお()けだよ』
267甲女(かふぢよ)『どれがお()けで、268どれが本物(ほんもの)ですか』
269『オイ、270カナン、271此奴(こいつ)三人(さんにん)(とも)引括(ひつくく)つて()れて(かへ)らう。272()れがどうだか(あんま)()()けて()よつて、273見当(けんたう)()れぬぢやないか』
274『さうだなア。275(しか)()()美人(びじん)(かつ)いで()ぬと、276途中(とちう)(また)()がさし、277中途(ちうと)でボツたくられると(こま)るから、278(さいは)(この)(いづみ)(みづ)()()け、279真黒(まつくろ)けにして(かへ)らうかい。280(うち)(かへ)つて軽石(かるいし)曹達(そうだ)(こす)れば、281現在(いま)(やう)綺麗(きれい)(つら)になるのだからのう……オイ(をんな)282此処(ここ)()い。283(ひと)つお(くろ)いを()つてやらう』
284 三人(さんにん)(をんな)一度(いちど)に、
285『ホツホヽヽヽ』
286(わら)ひこける途端(とたん)に、287シユウシユウと()(のぼ)白煙(はくえん)288(たちま)四辺(あたり)(つつ)んで(しま)つた。289二人(ふたり)(いき)(つま)るやうな(くる)しさに(その)()にパタリと(たふ)れた。290三人(さんにん)(をんな)真黒(まつくろ)(みづ)手桶(てをけ)(すく)ひ、291二人(ふたり)(かほ)から手足(てあし)一面(いちめん)(そそ)いだ。292両人(りやうにん)焼木杭(やけぼつくひ)(やう)(いろ)になつて、293(その)(そば)(たふ)れた(まま)気絶(きぜつ)して()る。294三人(さんにん)(をんな)は、
295(あさひ)さま……月日(つきひ)さま……ヤア高倉(たかくら)さま……さア(かへ)りませう』
296(たがひ)白狐(びやくこ)還元(くわんげん)し、297魔谷ケ岳(まやがだけ)蜈蚣姫(むかでひめ)(やかた)()して(すす)()く。
298 此処(ここ)(あが)つて()たバラモン(けう)部下(ぶか)四五人(しごにん)
299(かふ)『オイ、300スマートにカナンの大将(たいしやう)は、301(この)鷹鳥山(たかとりやま)(いほり)(すす)むべく、302教主(けうしゆ)(めい)(ほう)じて(のぼ)つた(はず)だが、303どうなつただらう。304最早(もはや)()()れかかつて()る。305(なん)とか便(たよ)りがありさうなものだなア』
306(おつ)折角(せつかく)(はたら)いて、307(これ)から(やす)まして(もら)はうと(おも)つて()るのに、308大将(たいしやう)(かへ)りが(おそ)いものだから、309こんな危険区域(きけんくゐき)派遣(はけん)されて、310(たま)つたものぢやない。311(この)(やま)随分(ずゐぶん)(おそ)ろしい化物(ばけもの)()(とこ)ぢやから、312迂濶(うつかり)して()ると、313(また)(この)(あひだ)(やう)真黒黒助(まつくろくろすけ)怪物(ばけもの)()て、314目玉(めだま)()()かれるか()れやしないぞ。315転公(てんこう)目玉(めだま)()かれたきり、316たうとうあの(とほ)不自由(ふじゆう)盲目(めくら)となつて(しま)つた』
317(かふ)『なアに、318あれは(くろ)(ばう)(ばけ)もんぢやない。319(この)森林(しんりん)(くら)がり(まぎ)れに(ある)きやがつて、320(まつ)枯枝(かれえだ)目玉(めだま)突当(つきあ)()()たのだ。321()()くが最後(さいご)其辺(そこら)()えなくなつたものだから、322(くろ)(ばう)化物(ばけもの)()()つたなどと()つてるのだ。323用心(ようじん)せないと、324どんな()()ふかも()れないぞ』
325(おつ)『イヤイヤ、326(まつ)()ぢやない。327本当(ほんたう)(くろ)(ばう)()たさうだ。328用心(ようじん)せよ。329そろそろ()れかかつたからなア』
330()ひながら(のぼ)つて()る。331カナンはフト()()()れば、332赤裸(まつぱだか)にしられた真黒(まつくろ)(をとこ)(かたはら)(よこ)たはつて()る。
333『オイ、334スマート、335何処(どこ)()つた。336(はや)()()れ。337(この)(あひだ)転公(てんこう)()()きよつた(くろ)(ばう)化物(ばけもの)が、338(ここ)一匹(いつぴき)(よこ)たはつて()よるワイ。339オーイ、340()()ぬかい』
341 スマートは(この)(こゑ)にムクムクと(うご)()した。
342『ヤア、343(まへ)(こゑ)はカナンぢやないか』
344『オウさうだ。345貴様(きさま)化物(ばけもの)だらう。346(また)()をとらうと(おも)つて()よつたのだらう。347(その)()()はぬぞ』
348貴様(きさま)こそカナンに()けた(くろ)(ばう)だ。349(おれ)了簡(りやうけん)せぬのだ。350覚悟(かくご)せい』
351足許(あしもと)のガラガラした(いし)(ひろ)つて()げつける。352カナンも(また)(いし)(ひろ)つて()げつける。353双方(さうはう)より石合戦(いしがつせん)真最中(まつさいちう)
354『アイタヽヽ』
355『アイタヽヽ』
356()ひながら大格闘(だいかくとう)(はじ)め、357真黒(まつくろ)けに(にご)つた清泉(きよいづみ)(なか)()んづ()まれつ、358ドブンと落込(おちこ)んだ。359薄暗(うすくら)がりに(あが)つて()五人(ごにん)(をとこ)
360(かふ)『オイ、361(なん)だか(めう)(おと)がしたぢやないか』
362(おつ)『さうだなア。363(ひと)調(しら)べて()ようか。364(なん)でも(この)(へん)には鷹鳥姫(たかとりひめ)(いほり)(つか)へて()る、365玉能姫(たまのひめ)()美人(びじん)が、366チヨコチヨコ(あら)はれるさうだから、367ヒヨツとしたら、368水汲(みづく)みに()やがつて薄暗(うすぐら)がりに(あやま)つて、369ドンブリコとやつたのかも()れないぞ。370蜈蚣姫(むかでひめ)さまが彼奴(あいつ)さへ()()れば、371(あと)はどうでもなると仰有(おつしや)つて、372カナン、373スマートの大将(たいしやう)()ひつけて御座(ござ)(くらゐ)だから、374俺達(おれたち)手柄(てがら)をして彼奴等(あいつら)上役(うはやく)にならうぢやないか。375(この)清泉(きよいづみ)今頃(いまごろ)水汲(みづく)みに()(やつ)は、376玉能姫(たまのひめ)より(ほか)にありやせぬぞ』
377(へい)『オイ、378愚図々々(ぐづぐづ)()つて()ると、379(みづ)()んで()んで(しま)つたら(なん)にもならぬぢやないか。380サア(はや)(たす)けてやらう』
381清泉(きよいづみ)(そば)五人(ごにん)(さぐ)(さぐ)()()つた。382(あま)(ふか)くない(いづみ)(なか)383二人(ふたり)(くろ)(ばう)()んづ()まれつ無言(むごん)(まま)(つか)()うて()る。384(くろ)さは益々(ますます)(くろ)く、385(はらわた)まで()()んで(しま)つた。
386(かふ)『コレコレ、387玉能姫(たまのひめ)さま、388(あぶ)ないこつて御座(ござ)いました。389サア(わたくし)(たす)けてあげませう。390(あんま)(くら)くつて一寸(ちよつと)(わか)らぬ。391それにお(まへ)さま(くろ)着物(きもの)()()るものだからサツパリ見当(けんたう)()かぬ。392(わたくし)(こゑ)のする(はう)へお()でなさい』
393 横幅(よこはば)三間(さんげん)(たて)五六間(ごろくけん)(いづみ)(なか)で、394バサバサと一生懸命(いつしやうけんめい)格闘(かくとう)して()る。395(くろ)(みづ)両人(りやうにん)(みみ)(あな)吸収(きふしう)され、396()らぬ()(つんぼ)になつて()る。397目玉(めだま)まで真黒(まつくろ)け、398一寸先(いつすんさき)()えなくなつて(しま)つた。
399(おつ)『オイ、400玉能姫(たまのひめ)にしてはチツと様子(やうす)(ちが)ふぢやないか』
401(かふ)(なに)402何時(いつ)三人(さんにん)(おな)(やう)別嬪(べつぴん)此泉(ここ)(あら)はれると()(こと)だ。403大方(おほかた)一人(ひとり)(はま)つたので二人(ふたり)(たす)ける(つも)りで()()んで()るのだらう。404(おな)(ひと)(たす)けるのにも、405あゝ()美人(びじん)(たす)けるのは気分(きぶん)()い。406……「どこのお(かた)()りませぬが、407大切(たいせつ)生命(いのち)をお(ひろ)(くだ)さいまして、408(この)御恩(ごおん)(わす)れませぬ」……とかなんとか()つて、409俺達(おれたち)秋波(しうは)(おく)るのは請合(うけあひ)だ。410三人(さんにん)(をんな)三人(さんにん)()つて(たす)ける(こと)にしよう。411(みんな)(おな)別嬪(べつぴん)だから、412甲乙(かふおつ)がなくて(あと)争論(いさかひ)(おこ)らず、413大変(たいへん)都合(つがふ)()い。414……オイ、415(くま)416(はち)417貴様(きさま)其処(そこ)(ばん)ついて()れ。418吾々(われわれ)三人(さんにん)功名(こうみやう)手柄(てがら)をするのだから……』
419(ささや)いて()る。420(くろ)(かげ)はビシヤン、421バシヤンと相変(あひかは)らず(むか)ふの(はう)水煙(みづけむり)()てながら格闘(かくとう)(つづ)けて()る。422清泉(きよいづみ)真黒(まつくろ)けになつた(こと)は、423薄暗(うすぐら)がりで(すこ)しも五人(ごにん)には()()かなかつた。424(かふ)真裸(まつぱだか)となつて(すく)()さむと()()んだ。425(おつ)(へい)(われ)(おと)らじと()()み、
426『コレコレお女中(ぢよちう)427玉能姫(たまのひめ)さま、428(わたくし)(たす)けてあげませう』
429(すす)()く。430此奴(こいつ)真黒(まつくろ)けになり、431三人(さんにん)(とも)(めくら)(つんぼ)真黒(まつくろ)けの(からだ)(へん)じ、432五人(ごにん)(たがひ)同志打(どうしうち)(はじ)めて()る。433()追々(おひおひ)(やみ)(とばり)(ふか)()りて()た。434熊公(くまこう)は、
435『オイ(はち)436コラ一体(いつたい)どうなるのだらうなア。437オイ、438金公(きんこう)439銀公(ぎんこう)440(てつ)441(なに)してるのだ。442玉能姫(たまのひめ)如何(どう)なつたのだ。443()加減(かげん)(あが)つて()ぬか。444温泉(をんせん)(なん)ぞへ這入(はい)つたやうに気楽(きらく)さうに(いづみ)(なか)意茶(いちや)()いとるのだな。445……オイ(はや)くあがらぬかい』
446()べど(さけ)べど、447(めくら)(つんぼ)真黒黒助(まつくろくろすけ)には(すこ)しも(わか)らず、448(つひ)には(かふ)(おつ)(へい)区別(くべつ)取違(とりちが)へ、449一生懸命(いつしやうけんめい)格闘(かくとう)して()る。450(この)(とき)以前(いぜん)女神(めがみ)(また)もやパツと(この)()(あら)はれた。451さうしてアークライトの(やう)(ひかり)頭上(づじやう)(かがや)いて()た。452五人(ごにん)()は、453(はじ)めてボーツと(あか)りが()えて来出(きだ)した。
454カナン『ヤア此奴(こいつ)失策(しくじ)つた。455何時(いつ)()にか美人(びじん)(また)やつて()よつた。456オイ、457スマート、458()んな(ところ)喧嘩(けんくわ)をして()(とき)ぢやない。459(なん)だ、460貴様(きさま)姿(すがた)真黒(まつくろ)けぢやないか。461矢張(やつぱ)りスマートぢやなからう。462化衆(ばけしう)ぢやなア』
463スマート『貴様(きさま)はカナンの(こゑ)使(つか)つて、464馬鹿(ばか)にするな。465……コリヤ(をんな)466俺達(おれたち)をこんな(ところ)(おと)しよつて、467高所(たかみ)見物(けんぶつ)すると()(こと)があるかい』
468 (きん)469(ぎん)470(てつ)三人(さんにん)女神(めがみ)姿(すがた)(おどろ)いて(にはか)()ひあがつた。
471甲女(かふぢよ)(あやふ)(ところ)をお(たす)(くだ)さいまして、472(かげ)(たす)かりました。473(この)御恩(ごおん)(けつ)して(わす)れませぬ』
474(きん)『ハイハイ、475滅相(めつさう)もない。476(しか)何時(いつ)(あが)りになりました。477(わたくし)貴女(あなた)をお(たす)けしたいと(おも)うて、478(この)(とほ)()()大活動(だいくわつどう)(いた)して()りました。479……それはまア結構(けつこう)でした。480(しか)御礼(おれい)()はれるのはチツと不思議(ふしぎ)だ。481(すく)()げた(おぼ)えがないのだから』
482乙女(をつぢよ)(ぎん)さまとやら、483あなたは(わたし)(すく)うて(くだ)さつた御恩人(ごおんじん)ですよ』
484丙女(へいぢよ)(てつ)さま、485()(たす)けて(くだ)さつた』
486(てつ)『へー、487有難(ありがた)う……ナニ、488滅相(めつさう)な、489何方(どちら)()つて()いか(わけ)(わか)らぬやうになつて()たワイ、490(たす)けてあげたやうにも(おも)ふし、491(たす)けてあげない(やう)にも(おも)ふし、492……こりやマア、493如何(どう)なつたのだらう』
494甲女(かふぢよ)(きん)さま、495(まへ)さまは、496(なん)とした(くろ)姿(すがた)にならしやつたのだ。497(わたし)498残念(ざんねん)御座(ござ)います』
499 金助(きんすけ)(はじ)めて()()(からだ)()れば、500空地(あきち)なきまで(すみ)化物(ばけもの)(やう)になつて()る。501(ぎん)502(てつ)はと()れば、503これも真黒黒助(まつくろくろすけ)
504(きん)『ヤア、505(この)(ひかり)()らし()れば、506(たれ)(かれ)何故(なぜ)()(くろ)くなつたのだらう』
507甲女(かふぢよ)(わたし)生命(いのち)御恩人(ごおんじん)508(きん)さま、509(ぎん)さま、510(てつ)さま、511どうぞ此方(こちら)()(くだ)さい。512(わたし)()()つてあげませう』
513(ゆき)(やう)()()べ、514四辺(あたり)(くさ)をむしつて牛馬(ぎうば)行水(ぎやうずゐ)でもさせる(やう)に、515カサカサと(こす)(はじ)めた。516(きん)517(ぎん)518(てつ)三人(さんにん)は、519(もと)(くろ)(ばう)黄疸(わうだん)()んだ(やう)(はだへ)520(たちま)純白色(じゆんぱくしよく)となつて(しま)つた。
521乙女(をつぢよ)『ホツホヽヽヽ、522綺麗(きれい)だこと。523三人(さんにん)さま、524一寸(ちよつと)御覧(ごらん)なさいませ。525玉子(たまご)(やう)綺麗(きれい)肌付(はだつき)におなりなさいました』
526 三人(さんにん)はフト自分(じぶん)(からだ)()て、527純白色(じゆんぱくしよく)(へん)じて()るのに(かつ)(おどろ)(かつ)(よろこ)び、528(てん)にも(のぼ)心地(ここち)して、529(おも)はず()()()(あが)つた。530三人(さんにん)(をんな)(うる)はしき(きぬ)各々(めいめい)()(いだ)し、531(きん)532(ぎん)533(てつ)三人(さんにん)()せた。534(なん)とも()へぬ立派(りつぱ)好男子(かうだんし)になつて(しま)つた。535カナン、536スマートは真黒(まつくろ)けに(そま)つた(まま)(うら)めしさうに(なが)めて()る。
537甲女(かふぢよ)『スマートさま、538カナンさま、539随分(ずゐぶん)(くろ)うおなりやしたネー。540(わたし)()うして三人(さんにん)(うつく)しき殿御(とのご)()ちました。541(けな)りい(こと)御座(ござ)いませぬか』
542(うれ)しさうに()()つて、
543『サア、544(きん)さま、545(ぎん)さま、546(てつ)さま、547()()ふのだよ。548(わたし)とダンスを(いた)しませう』
549三男三女(さんなんさんによ)()()つてキリキリと()うて()せる。550二人(ふたり)()ひあがり、551(ゆび)(くは)へて、
552カナン『アーア、553(ゆめ)かいな。554(ゆめ)なれば結構(けつこう)だが、555()んな真黒(まつくろ)けになつて(しま)つては、556(うち)(かへ)つて(かか)アにだつて追払(おつぱら)はれて(しま)ふワ』
557(くま)558(はち)『オイ(きん)559(ぎん)560(てつ)561貴様等(きさまら)三人(さんにん)美人(びじん)(たす)けて、562そんな陽気(やうき)(こと)をしやがつて俺達(おれたち)馬鹿(ばか)にするのか。563チツと(おれ)にも分配(ぶんぱい)したらどうだ』
564(きん)生憎(あひにく)三人(さんにん)美人(びじん)だから、565パンか(なに)かの(やう)()つて(あた)へる(わけ)にも()かず、566まあ時節(じせつ)()つのだなア。567カナンにスマートの御大将(おんたいしやう)でさへも、568あの(とほ)(くろ)(ばう)になつて(しま)つたのだから、569(その)(こと)(おも)へば貴様(きさま)はまだ(もと)生地(きぢ)(まま)保留(ほりう)されて()るのだから、570せめてもの喜悦(よろこび)として、571グヅグヅ()はぬが(とく)だらう。572(おれ)はこれから(この)ナイスと(とも)鷹鳥山(たかとりやま)立向(たちむか)ひ、573鷹鳥姫(たかとりひめ)(さま)にお()にかかつて、574御馳走(ごちそう)(あづ)かつて()る。575まアゆつくり(くろ)(みづ)でも()んで、576俺達(おれたち)凱旋祝(がいせんいはひ)準備(じゆんび)でもして()()れ。577カナン、578スマートの御大将(おんたいしやう)579アリヨース。580サアサア三人(さんにん)御姫(おひめ)さま、581こんな(ところ)(くろ)(ばう)(なが)めてゐても殺風景(さつぷうけい)です。582どつかへ転地(てんち)療養(れうやう)()かけませうか』
583甲女(かふぢよ)新婚(しんこん)旅行(りよかう)洒落(しやれ)て、584これから鷹鳥山(たかとりやま)585再度山(ふたたびやま)586魔谷ケ岳(まやがだけ)587六甲山(ろくかふざん)と、588天然都会(てんねんとくわい)漫遊(まんいう)(いた)しませう』
589カナン『オイ、590金公(きんこう)591()たぬかい』
592呶鳴(どな)つて()る。593(たちま)ちアーク(とう)(やう)(ひかり)はブスツと()えた。594()つの(しろ)姿(すがた)(やみ)()いた(やう)山上(さんじやう)目蒐(めが)けて(うす)()く。
595大正一一・五・二六 旧四・三〇 松村真澄録)