霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 (やま)(うみ)〔七一一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第22巻 如意宝珠 酉の巻 篇:第5篇 神界経綸 よみ:しんかいけいりん
章:第19章 第22巻 よみ:やまとうみ 通し章番号:711
口述日:1922(大正11)年05月28日(旧05月02日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
佐田彦は玉を入れた箱をかつぎ、玉能姫はバラモン教徒の目をくらますために、気違いの真似をして駆けて行った。
バラモン教徒たちは途中で玉を奪おうと待ち構えていたが、玉能姫の演技に気づかずに見過ごしてしまった。一行は高砂の浜辺で漁師から舟を買うと、神島さして漕ぎ出した。
浜辺にいたときは暴風により海が荒れていたが、一行が漕ぎ出すと不思議にも暴風は止んでしまい、みるみる島に着いた。初稚姫と玉能姫が神島の山頂に着くと、五人の童子と三人の童女が現れて、黄金の鍬で固い岩石を掘ってしまった。
初稚姫は、童子・童女たちに向かって厳の大神様・瑞の大神様と呼びかけ、言依別命の命によって神玉を無事に持って来たことを伝えた。
童子と童女は玉箱を受け取ると、掘った穴の中に消えてしまった。二人が穴をのぞくと、二つの玉箱が微妙の音声と鮮光を放っていた。二人は童子・童女が残した黄金の鍬で穴を埋め、あたりの小松をその上に植えて祝詞を奏上し、山を下った。
佐田彦と波留彦は帰ってきた二人に、せめて埋めた後を拝ませて欲しいと願い出た。初稚姫と玉能姫は黙って首を横に振るだけだった。すると雷のような声が、すぐに立ち去れ、と佐田彦・波留彦を戒めた。
一行は神島を後にして去っていった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2219
愛善世界社版:263頁 八幡書店版:第4輯 477頁 修補版: 校定版:271頁 普及版:121頁 初版: ページ備考:
001 佐田彦(さだひこ)腰帯(こしおび)()き、002幾重(いくへ)にも(つつ)みたる玉函(たまばこ)をクルクルと両端(りやうはし)(つつ)み、003(かた)ふわり引掛(ひつか)()るやうに荷造(にづく)りした。004波留彦(はるひこ)(おどろ)いて、
005『コリヤ佐田彦(さだひこ)006大切(たいせつ)御神宝(ごしんぱう)を、007(なん)だ、008貴様(きさま)(はだ)につけた穢苦(むさくるし)三尺帯(さんしやくおび)(つつ)むと()ふことがあるか、009(たま)威徳(ゐとく)(けが)すと()ふことを心得(こころえ)ぬか。010さうして()(ざま)(なん)だ。011帯除(おびと)裸体(はだか)になつて、012みつともないぞ』
013佐田彦(さだひこ)『お(まへ)(おび)(たて)引裂(ひつさ)いて、014半分(はんぶん)()れなければ仕方(しかた)がない。015藤蔓(ふぢづる)でもちぎつて(おび)にしよう』
016『エー、017そんなことして道中(だうちう)出来(でき)るか、018みつともない。019自分(じぶん)(おび)自分(じぶん)がして()け。020神玉(しんぎよく)御威徳(ごゐとく)(けが)すぞよ』
021『イヤ波留彦(はるひこ)022さうでないよ。023(この)(やま)(つづ)きは随分(ずゐぶん)バラモンの連中(れんちう)徘徊(はいくわい)してゐるから、024貴重品(きちようひん)()せかけて(ねら)はれてはならぬ。025幾重(いくへ)にも(つつ)んだ宝玉(ほうぎよく)026滅多(めつた)(けが)れる気遣(きづか)ひはない。027()うして()かねば剣呑(けんのん)だから』
028如何(いか)剣呑(けんのん)だと()つて、029そりや(あま)りぢやないか』
030万劫末代(まんがふまつだい)一度(いちど)大切(たいせつ)御用(ごよう)だ。031二度目(にどめ)岩戸(いはと)(びら)きの瑞祥(ずゐしやう)(しゆく)するため、032言依別(ことよりわけ)(さま)(この)再度山(ふたたびやま)山頂(さんちやう)で、033二度(にど)とない結構(けつこう)御用(ごよう)(あふ)せつけられたのだ。034失策(しくじ)つては大変(たいへん)だから、035()うして()くが安全(あんぜん)だよ』
036 波留彦(はるひこ)は、
037『なんだか勿体(もつたい)ないやうな心持(こころもち)がするのだ。038(しか)(なが)肝腎(かんじん)(たから)(てき)()られては一大事(いちだいじ)だから、039そんならお(まへ)()(とほ)りにして()かう。040サア、041(おれ)(おび)半分(はんぶん)やらう』
042(たて)真中(まんなか)からバリバリと引裂(ひきさ)いて佐田彦(さだひこ)(わた)した。043佐田彦(さだひこ)は、
044『イヤ、045有難(ありがた)う。046これで(しつ)かり腹帯(はらおび)(しま)つて()た。047(しか)(なが)玉能姫(たまのひめ)さま、048初稚姫(はつわかひめ)さま、049貴女(あなた)(がた)はそんな綺麗(きれい)服装(ふくさう)御出(おいで)になつては、050悪漢(わるもの)(あと)をつけられては(つま)りませぬよ、051(なん)とか工夫(くふう)をなさいませ』
052玉能姫(たまのひめ)『ハイ、053吾々(われわれ)二人(ふたり)着物(きもの)裏向(うらむ)けに()て、054気違(きちが)ひの真似(まね)をして(まゐ)りませう』
055佐田彦(さだひこ)『ヤー、056それは妙案(めうあん)だ。057流石(さすが)玉能姫(たまのひめ)(さま)だ。058サアサア、059佐田彦(さだひこ)着替(きか)へさして()げませう』
060()(あが)らむとするを玉能姫(たまのひめ)061初稚姫(はつわかひめ)(くび)左右(さいう)()り、
062玉能姫(たまのひめ)『イエイエ、063滅相(めつさう)な、064(わたし)玉能姫(たまのひめ)065自分(じぶん)のことは自分(じぶん)処置(しよち)をつけねばなりませぬ』
066()ひつつ、067クルクルと(おび)()き、068裏向(うらむ)けに着物(きもの)着替(きか)へて(しま)つた。
069 初稚姫(はつわかひめ)(また)着物(きもの)()がうとするを、070玉能姫(たまのひめ)(すこ)(くび)(かたむ)け、
071一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい。072気違(きちが)ひが二人(ふたり)もあつては(かへ)つて(うたが)はれるかも()れませぬから、073貴方(あなた)気違(きちが)ひの(むすめ)になつて(くだ)さい』
074初稚姫(はつわかひめ)『そんなら気違(きちが)ひのお(かあ)さま。075サア、076何処(どこ)なつと(まゐ)りませう』
077玉能姫(たまのひめ)『オイ佐田公(さだこう)078波留公(はるこう)079貴様(きさま)何処(どこ)(やつ)だ。080余程(よつぽど)()いヒヨツトコ野郎(やらう)だな』
081佐田彦(さだひこ)『これはしたり、082玉能姫(たまのひめ)さま、083姫御前(ひめごぜ)のあられもない、084(なん)()(あら)いことを仰有(おつしや)りますか』
085()らぬ()らぬ、086アーア、087()んなヒヨツトコ野郎(やらう)莫迦者(ばかもの)道伴(みちづ)れになるかと(おも)へば残念(ざんねん)だ。088()(くる)ひさうだ』
089玉能姫(たまのひめ)さま、090(いま)から気違(きちが)ひになつて(もら)つては波留彦(はるひこ)(たま)りませぬで』
091伊勢(いせ)()()つ、092()伊勢(いせ)()つ。093大根役者(だいこんやくしや)(たま)()つ、094コリヤコリヤコリヤ』
095佐田彦(さだひこ)玉能姫(たまのひめ)さま、096洒落(しやれ)()加減(かげん)になさいませな。097これから()沢山(たくさん)道程(みちのり)098(いま)から気違(きちが)ひの真似(まね)して()つては(たま)りませぬで』
099『なに、100(わらは)気違(きちが)ひとな。101エー残念(ざんねん)だ。102バラモン(けう)(おい)()(ひと)ありと(きこ)えたる鬼熊別(おにくまわけ)(つま)103蜈蚣姫(むかでひめ)とはわが(こと)なるぞ。104(なんぢ)三五教(あななひけう)腰抜(こしぬけ)宣伝使(せんでんし)105この蜈蚣姫(むかでひめ)(しり)でも(くら)へ。106残念(ざんねん)なか、107口惜(くや)しいか。108あの(つま)らぬさうな顔付(かほつき)ワイの。109オホヽヽヽ』
110(へそ)(かか)へて(わら)()ける。
111佐田彦(さだひこ)『アー、112仕方(しかた)がないなア、113あんまり(うれ)しうて玉能姫(たまのひめ)さまは本当(ほんたう)逆上(のぼ)せて(しま)つたのだらうかなア、114波留公(はるこう)
115玉能姫(たまのひめ)(さだ)めて逆上(のぼ)せたのであらう。116逆上(のぼ)()つた蜈蚣姫(むかでひめ)再来(さいらい)が、117(まへ)(あたま)をポカンと波留彦(はるひこ)だ』
118()ひながら波留彦(はるひこ)横面(よこづら)をピシヤピシヤと(なぐ)り、
119『アハヽヽヽ』
120(はら)(かか)へて(わら)()ける。
121波留彦(はるひこ)『なんぼ(をんな)にはられて気分(きぶん)()いと()つても、122(じるし)(なぐ)られて(たま)るものか。123さア()きませう、124玉能姫(たまのひめ)さま、125(しつ)かりなさいませ』
126玉能姫(たまのひめ)『ホヽヽ、127(わし)玉能姫(たまのひめ)ぢやないよ、128狸姫(たぬきひめ)だよ』
129波留彦(はるひこ)『エー、130怪体(けたい)(わる)い、131肝腎(かんじん)御神業(ごしんげふ)最中(さいちう)やくたいだなア。132初稚姫(はつわかひめ)さま、133ちつと(しつ)かり()つて()かして(くだ)さいな。134コリヤ本当(ほんたう)逆上(のぼ)せて()ますで』
135初稚姫(はつわかひめ)『お(かあ)さま、136()きませう』
137とすがり()()()()(はな)し、
138『エー、139(まへ)(まで)(わし)気違(きちが)ひと(おも)つて()るのかい。140アヽ(けが)らはしい。141()んな(ところ)には一時(いつとき)()れない』
142(ふた)つの(たま)(つつ)んだ(おび)(かた)()つかけ、143山伝(やまづた)ひに(くも)(かすみ)(はし)()く。
144 初稚姫(はつわかひめ)()けず(おと)らず、145玉能姫(たまのひめ)(あと)(したが)()(ごと)(はし)()く。146佐田彦(さだひこ)147波留彦(はるひこ)()げられては大変(たいへん)一生懸命(いつしやうけんめい)(あと)()ふ。148何時(いつ)()にか玉能姫(たまのひめ)149初稚姫(はつわかひめ)姿(すがた)()えなくなつた。
150佐田彦(さだひこ)『オイ、151波留彦(はるひこ)152大変(たいへん)なことが(おこ)つたものぢやないか』
153貴様(きさま)(しつか)(にぎ)つて()らぬから、154到頭(たうとう)(たぬき)(うつ)りやがつて()つて()んで(しま)つたのだい。155アヽもう仕方(しかた)がない、156神様(かみさま)申訳(まをしわけ)がない。157(この)絶壁(ぜつぺき)から()(わけ)のために()()げて()んで(しま)はうかい』
158『さうだと()つて、159そんな(こと)をすれば益々(ますます)神界(しんかい)(つみ)だよ』
160心配(しんぱい)さうに(くや)んでゐる。
161 (むか)ふの()(しげ)みから、
162『オーイ、163波留彦(はるひこ)さま、164佐田彦(さだひこ)さま、165此処(ここ)だよ此処(ここ)だよ』
166玉能姫(たまのひめ)()んでゐる。
167波留彦(はるひこ)『ヤア、168在処(ありか)(わか)つた。169気違(きちが)()170あの禿()げた(やま)(よこ)小松(こまつ)(した)(かほ)だけ()してゐよる、171(おもて)から()くと(また)()げられては大変(たいへん)だ。172(まは)(みち)をしてそつと(つか)まへようかい』
173二人(ふたり)山路(やまみち)(はづ)し、174()(しげ)みの(なか)蜘蛛(くも)()()つかかりながら、175(やうや)玉能姫(たまのひめ)間近(まぢか)()つた。
176玉能姫(たまのひめ)『あの二人(ふたり)御方(おかた)177よう()(くだ)さんした。178たまたま御用(ごよう)(あふ)せつけられながら、179玉能姫(たまのひめ)(たま)()られて(たま)らぬだらう。180さアさア初稚姫(はつわかひめ)さま、181あんなヒヨツトコ野郎(やらう)(かま)はず()きませうよ。182ホヽヽヽ』
183嘲笑(あざわら)ひと(とも)()()(ごと)く、184(また)もや一目散(いちもくさん)()(しげ)みを()けて、185何処(どこ)へか姿(すがた)(かく)した。186二人(ふたり)一生懸命(いつしやうけんめい)()ひかける。187初稚姫(はつわかひめ)(はか)らひで処々(ところどころ)小柴(こしば)()つて(しるし)がしてある。
188佐田彦(さだひこ)『ヤア、189流石(さすが)初稚姫(はつわかひめ)さまだ。190子供(こども)似合(にあ)はぬ()智慧(ちゑ)()たものだ。191俺達(おれたち)(これ)合図(あひづ)()いと()つて、192小柴(こしば)所々(ところどころ)()つて(しるし)をつけて(おい)(くだ)さつた。193オイ、194(これ)(たづ)ねて(はし)らうぢやないか、195のう波留彦(はるひこ)
196『オーさうだ』
197二人(ふたり)捩鉢巻(ねぢはちまき)しながら、198小柴(こしば)()れを目標(めあて)()ひかけて()く。
199 鷹鳥ケ岳(たかとりがだけ)山麓(さんろく)松林(まつばやし)七八人(しちはちにん)(をとこ)200胡床(あぐら)()車座(くるまざ)になつて、201ひそびそ(ばなし)(ふけ)つてゐる。
202(かふ)『オイ、203大変(たいへん)(つよ)(をんな)もあればあるものぢやないか。204俺達(おれたち)兄分(あにぶん)のスマートボールやカナンボールを()もなく滝壺(たきつぼ)()()み、205(あま)つさへ俺達(おれたち)谷底(たにそこ)()()みやがつて、206(この)(とほ)(いた)()()はせ、207終局(しまひ)(はて)には蜈蚣姫(むかでひめ)教主様(けうしゆさま)まで、208あんな()()はせよつた。209彼奴(あいつ)(なん)でも(えら)神様(かみさま)再来(さいらい)かも()れないよ』
210(おつ)『なアに、211彼奴(あいつ)玉能姫(たまのひめ)()つて鷹鳥山(たかとりやま)鷹鳥姫(たかとりひめ)(はした)()となり、212清泉(きよいづみ)水汲(みづくみ)をやつて()つた(やつ)だ。213あの(とき)此方(こちら)(をんな)子供(こども)(おも)つて油断(ゆだん)をして()たから、214あんな不覚(ふかく)()つたのだ。215(いづ)此辺(ここら)迂路(うろ)ついて()るかも()れない。216なんでも彼奴(あいつ)(つか)まへて三五教(あななひけう)(たから)在処(ありか)白状(はくじやう)させ、217バラモン(けう)占領(せんりやう)せねば、218到底(たうてい)(この)自転倒島(おのころじま)(おい)ては俺達(おれたち)教派(けうは)(ひろ)まらない、219なんとかして、220まア一度(いちど)彼奴(あいつ)行方(ゆくへ)(たづ)ね、221目的(もくてき)(たつ)したいものだ』
222(へい)『そんな(あぶ)ないことは()しにせエ。223生命(いのち)あつての物種(ものだね)だ。224蜈蚣姫(むかでひめ)さまでさへも彼奴(あいつ)乾児(こぶん)がやつて()て、225谷底(たにそこ)()()げたやうな強力(がうりき)()いてゐるから、226うつかり手出(てだ)しは出来(でき)ないよ』
227(かふ)『ちよろ(くさ)いことを()ふな。228計略(けいりやく)(もつ)(うま)引張(ひつぱ)()めば(なん)でもない。229(おれ)(ひと)智慧(ちゑ)()してやらう』
230(へい)『どうすると()ふのだい』
231(かふ)貴様等(きさまら)二三人(にさんにん)(おれ)一緒(いつしよ)(をんな)()けて鷹鳥山(たかとりやま)()()み、232三五教(あななひけう)求道者(きうだうしや)となつて誤魔化(ごまくわ)すのだ』
233(おつ)貴様(きさま)(つら)では(をんな)変装(へんさう)したつて到底(たうてい)駄目(だめ)だよ。234貴様(きさま)変装(へんさう)したら、235それこそ鬼婆(おにばば)()えて仕舞(しま)ふぞ』
236(かふ)鬼婆(おにばば)でも、237鬼爺(おにぢぢ)()えなければ()いぢやないか。238それで完全(くわんぜん)(をんな)になつたのだ。239善悪美醜(ぜんあくびしう)()ふところに(あら)ず。240(おれ)皺苦茶婆(しわくちやばあ)さまになつて()()むから、241貴様(きさま)皺苦茶爺(しわくちやぢぢ)になつて、242(つゑ)でもついて(こし)(かが)め、243(おれ)(あと)()いて()い』
244(おつ)『いつその(こと)245堂々(だうだう)(をとこ)求道者(きうだうしや)になつて()つたらどうだ』
246(へい)『そんな悪相(あくさう)(つら)をして()かうものなら、247(たちま)看破(かんぱ)されて(しま)ふぜ』
248 ()雑談(ざつだん)(ふけ)(をり)しも、249(むか)ふの(はう)より一人(ひとり)(をんな)250(なに)(かた)()つかけ、251(かみ)()(みだ)し、252衣服(きもの)裏向(うらむ)けに()ながら、253(をんな)似合(にあ)はず大股(おほまた)にトントンと此方(こなた)(むか)つて()る。
254 七歳(しちさい)ばかりの少女(せうぢよ)は、
255『お(かあ)さま お(かあ)さま』
256連呼(れんこ)しながら(あと)()ひかけ(きた)る。257(また)もや(つづ)いて二人(ふたり)荒男(あらをとこ)
258『オーイオーイ。259()つた()つた』
260一生懸命(いつしやうけんめい)(いき)(はづ)ませ(すす)(きた)る。
261(かふ)『アリヤ(なん)だ、262あた(いや)らしい。263(かみ)()(みだ)着物(きもの)裏向(うらむ)けに()やがつて、264(ふんどし)(なん)だか(いし)のやうなものを(つつ)んで(はし)つて()るぢやないか。265彼奴(あいつ)てつきり気違(きちが)ひだよ。266気違(きちが)ひに()ぶりつかれでもしたら、267まるで(いぬ)()はれたやうなものだ。268オイ、269(みな)(やつ)270すつこめ すつこめ』
271『よし()た』
272(はやし)(くさ)(なか)(ちひ)さくなつて(よこ)たはる。273その(まへ)()まむ(ばか)りに玉能姫(たまのひめ)274初稚姫(はつわかひめ)は、
275『キヤア キヤア』
276金切声(かなきりごゑ)()()げながら(とほ)つて()く。277二人(ふたり)(をとこ)(あせ)()らし、
278『オーイ、279気違(きちが)()つた』
280(また)もや一生懸命(いつしやうけんめい)西方(せいはう)()して(すす)()く。281一同(いちどう)はやうやう(あたま)()げ、
282(かふ)『ヤー何処(どこ)(やつ)()らぬが、283女房(にようばう)()(くる)つたと()えて、284(えら)(いきほひ)()ひかけて()きよつた。285可愛相(かはいさう)に、286あんな(むすめ)がある(なか)で、287女房(にようばう)発狂(はつきやう)されては(たま)つたものぢやない。288(しか)しなかなか別嬪(べつぴん)らしかつたぢやないか』
289(おつ)『さうだなア、290可愛相(かはいさう)なものだ。291(さき)()つたのはあれの(おやじ)だらう。292(あと)から()(やつ)はヒヨツとしたら下男(げなん)かなんかだらうよ。293(なに)()もあれ、294どえらい(いきほひ)だつた。295まるきり夜叉明王(やしやみやうわう)()(くる)うたやうな(いきほひ)だ。296マアマア俺達(おれたち)無事(ぶじ)御通過(ごつうくわ)(ねが)うて(さいは)ひだつた』
297(はな)してゐる。298(しば)らくすると蜈蚣姫(むかでひめ)は、299スマートボール、300カナンボール(その)()拾数人(じふすうにん)部下(ぶか)引連(ひきつ)れ、301一生懸命(いつしやうけんめい)(この)()()(きた)り、302五六人(ごろくにん)姿(すがた)()て、
303『オイ、304(まへ)信州(しんしう)305播州(ばんしう)306芸州(げいしう)連中(れんちう)ぢやないか。307なにして()る。308(いま)此処(ここ)玉能姫(たまのひめ)(とほ)つた(はず)だがお(まへ)()らぬか』
309信州(しんしう)最前(さいぜん)から此処(ここ)一服(いつぷく)して()ましたが、310玉能姫(たまのひめ)のやうな(やつ)()つから(とほ)りませぬで。311(かみ)()(みだ)した気違(きちがひ)がキヤアキヤア()つて(とほ)つたばかり、312(あと)から(おやじ)可愛相(かはいさう)(あせ)をブルブルに()いて()つかけて()きました』
313『どうしても此処(ここ)(とほ)らにやならぬ(はず)だが、314ハテ不思議(ふしぎ)だなア。315それなら大方(おほかた)杢助館(もくすけやかた)へでも(まは)つたのだらう。316一体(いつたい)何処(どこ)()きよるのか。317(みな)(やつ)318()うしては()られない。319再度山(ふたたびやま)山麓(さんろく)320生田(いくた)(もり)引返(ひきかへ)せ』
321(あわただ)しく()ばはつた。322スマートボールを先頭(せんとう)全隊(ぜんたい)引率(ひきつ)れて、323(ひがし)()して一生懸命(いつしやうけんめい)バラバラと(はし)()く。
324 (こずゑ)(わた)松風(まつかぜ)(おと)325刻々(こくこく)(はげ)しくなり、326瀬戸(せと)(うみ)(なみ)山嶽(さんがく)(ごと)(たけ)(くる)うてゐる。327玉能姫(たまのひめ)328初稚姫(はつわかひめ)漸々(やうやう)にして高砂(たかさご)(もり)()いた。329四辺(あたり)(ひと)なきを(さいは)ひ、330(みだ)(がみ)()()げ、331(かほ)立派(りつぱ)(つくろ)ひ、332着物(きもの)()()へ、333(もと)玉能姫(たまのひめ)となつて(しま)つた。334(いき)()()つて(はし)(きた)つた佐田彦(さだひこ)335波留彦(はるひこ)()姿(すがた)()て、
336佐田彦(さだひこ)『ヤー、337玉能姫(たまのひめ)さま、338()がつきましたか。339大変(たいへん)心配(しんぱい)でしたよ』
340玉能姫(たまのひめ)『オホヽヽヽ、341約束(やくそく)(どほ)上手(じやうず)気違(きちがひ)()けたでせう。342須磨(すま)浜辺(はまべ)難関(なんくわん)を、343あゝせなくては通過(つうくわ)出来(でき)ませぬからなア』
344佐田彦(さだひこ)『イヤもう(おそ)()りました。345流石(さすが)言依別命(ことよりわけのみこと)(さま)御見出(おみいだ)(あそ)ばしただけあつて、346佐田彦(さだひこ)(ごと)凡夫(ぼんぶ)到底(たうてい)(およ)ばぬ智慧(ちゑ)()つてゐなさるなア』
347波留彦(はるひこ)本当(ほんたう)七尺(しちしやく)男子(だんし)波留彦(はるひこ)睾丸(きんたま)()かしたくなつて()ました。348アハヽヽヽ』
349佐田彦(さだひこ)『それにしても初稚姫(はつわかひめ)さま、350(ちひ)さいのによく()いてお()でなさいましたなア。351何時(いつ)もお(とう)さまに(あま)へて()はれ(どほ)しだのに、352今日(けふ)(また)どうしてそんな(いきほひ)()たのでせう』
353神様(かみさま)(わたくし)()(かか)へて()(くだ)さいました。354あの(おほ)きな神様(かみさま)御目(おめ)()まりませ(なん)だか』
355『さう()くと(なん)だか(おほ)きな(かげ)(やう)なものが、356始終(しじう)()いて()たやうに(おも)ひました』
357かげ()えましたか。358それが神様(かみさま)()かげですよ。359オホヽヽヽ』
360子供(こども)(くせ)によく洒落(しやれ)ますなア。361シヤレ シヤレ(おそ)()りましたもので御座(ござ)るワイ』
362『サア、363これから高砂(たかさご)浜辺(はまべ)へボツボツ(まゐ)りませう。364(さいは)ひに()()れました』
365玉能姫(たまのひめ)(さき)()つ。366三人(さんにん)欣々(いそいそ)(あと)(したが)ひ、367(はま)()(むか)ふ。
368 五月五日(ごぐわついつか)(つき)西天(せいてん)(かがや)き、369薄雲(はくうん)(きぬ)(あるひ)(かぶ)(あるひ)()ぎ、370月光(げつくわう)明滅(めいめつ)371四人(よにん)秘密(ひみつ)神業(しんげふ)()(かく)れに、372(うかが)ふものの(ごと)くであつた。373鳴門嵐(なるとあらし)暴風(ばうふう)遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく海面(かいめん)()で、374山嶽(さんがく)(ごと)荒浪(あらなみ)()(くる)ひ、375高砂(たかさご)浜辺(はまべ)押寄(おしよ)せ、376駻馬(かんば)(たてがみ)()つて()みついて()る。
377 佐田彦(さだひこ)は、378猿田彦(さるたひこ)気取(きど)りで(さき)(すす)み、379船頭(せんどう)(いへ)(たた)き、
380『モシモシ、381船頭(せんどう)さま、382これから家島(えじま)()くのだから、383(ふね)()して(くだ)さいな。384賃銀(ちんぎん)幾何(いくら)でも()しますから』
385 船頭(せんどう)(いへ)(なか)より、
386何処(どこ)(かた)()らぬが、387(なに)(ほう)けてゐるのだ。388レコード(やぶ)りの荒浪(あらなみ)に、389如何(どう)して(ふね)()せるものかい。390こんな()(おき)()ようものなら、391生命(いのち)いくつあつても(たま)るものでない。392マア、393二三日(にさんにち)(かぜ)()(まで)()つたらよからう』
394 佐田彦(さだひこ)小声(こごゑ)で、
395『ハテ、396(こま)つたなア。397吾々(われわれ)はどうしても家島(えじま)(わた)らねばならないのだ。398せめて中途(ちうと)神島(かみじま)までなつと(おく)つて()れないか』
399『なんと()つても()時化(しけ)には(ふね)()せないよ。400桑名(くはな)徳蔵(とくぞう)ならばイザ()らず、401俺達(おれたち)のやうな普通(ふつう)船頭(せんどう)では、402到底(たうてい)駄目(だめ)だよ。403こんな()(ふね)()(くらゐ)なら、404(いへ)もなんにも()つたものぢやない。405そんな(わか)らぬことを()はずと、406二三日(にさんにち)()つたがよからうに』
407『どうしても()して()れませぬか、408仕方(しかた)がない。409それなら(ふね)()して(くだ)さいな』
410滅相(めつさう)もないこと仰有(おつしや)るな。411(ふね)でも()さうものなら商売(しやうばい)道具(だうぐ)(たちま)滅茶々々(めちやめちや)にされて(しま)うて、412女房(にようばう)()(はな)(した)乾上(ひあ)がつて(しま)ふ。413(ひと)つの(ふね)(こしら)へるにも百両(ひやくりやう)金子(かね)()るのだ。414自家(うち)身代(しんだい)()(ふね)(ひと)つだ。415マア、416そんなことは絶対(ぜつたい)御断(おことわ)(まを)さうかい』
417()(ほか)船頭衆(せんどうしう)はあらうな』
418()浜辺(はまべ)には二三十人(にさんじふにん)船頭(せんどう)()る。419(しか)(なが)開闢(かいびやく)以来(いらい)420この荒浪(あらなみ)(ふね)()すやうな莫迦者(ばかもの)一人(いちにん)()りませぬワイ。421今日(けふ)五月五日(ごぐわついつか)422菖蒲(しやうぶ)節句(せつく)423神様(かみさま)神島(かみじま)から高砂(たかさご)御出(おい)(あそ)ばす()だから、424尚々(なほなほ)(ふね)()せないのだ。425仮令(たとへ)(なみ)はなくとも今日(けふ)一日(いちにち)は、426()(うみ)渡海(とかい)出来(でき)ないのだ。427(くれ)()つから神様(かみさま)高砂(たかさご)(もり)へお()しになるのだ。428モー今頃(いまごろ)神島(かみじま)御出立(ごしゆつたつ)(あそ)ばして御座(ござ)時分(じぶん)だよ。429(なん)としてそんな(とこ)()くのだい』
430(おれ)家島(えじま)()くのだ。431(なみ)都合(つがふ)一寸(ちよつと)御水(おみづ)(いただ)きに神島(かみじま)()りたいと(おも)ふのだよ』
432 船頭(せんどう)不思議(ふしぎ)(やつ)()()たものだと(つぶや)きながら(おもて)立出(たちい)で、
433『ヤー、434()れば(わか)御女中(おぢよちう)(むすめ)さま。435(まへ)さま()御一行(ごいつかう)かな』
436玉能姫(たまのひめ)『ハイ、437左様(さやう)御座(ござ)います。438どうぞ(ふね)御出(おだ)(くだ)さいませ』
439 船頭(せんどう)(しきり)(くび)()り、
440『アーいかぬいかぬ、441途方(とはう)もないこと()ひなさるな。442(をとこ)でさへも()かれぬ(ところ)へ、443妙齢(としごろ)(をんな)(わた)ると()ふことは到底(たうてい)出来(でき)ない。444平常(つね)()でも(をんな)絶対(ぜつたい)()せることは出来(でき)ませぬワイ』
445初稚姫(はつわかひめ)小父(をぢ)さま、446そんなら()(ふね)()つて御呉(おく)れぬか』
447()つて()れと()つたつて、448中々(なかなか)(やす)うはないぞ。449百両(ひやくりやう)もかかるのだから』
450『それなら小父(をぢ)さま、451二百両(にひやくりやう)()げるから、452(まへ)(ふね)()つてお()れ』
453百両(ひやくりやう)(ふね)二百両(にひやくりやう)()つて(もら)へば、454(ふね)二隻(にせき)新調(しんてう)出来(でき)るやうなものだ。455それは(まこと)有難(ありがた)いが、456(しか)(なが)らみすみすお(まへ)さま(たち)(うみ)藻屑(もくづ)となし、457(ふか)餌食(ゑじき)にして(しま)ふのは何程(なにほど)(よく)船頭(せんどう)でも(しの)びない。458そんなことは()はずに(あきら)めて(かへ)つて(くだ)さい。459(をとこ)(かた)なら二三日(にさんにち)したら(ふね)()して()げよう』
460(をんな)()うしていけないのですか』
461『アヽ、462いけないいけない。463理屈(りくつ)()らぬが、464(むかし)から()つたことがない(しま)だから』
465佐田彦(さだひこ)船頭(せんどう)さま、466そんなら時化(しけ)()んでから明日(あす)でも俺達(おれたち)勝手(かつて)()いで()くから、467二百両(にひやくりやう)()つて(くだ)さい』
468百両(ひやくりやう)のものを二百両(にひやくりやう)()ると()ふことは、469大変(たいへん)欲張(よくば)つたやうで()()まぬが、470(しか)(ふね)()つて(しま)へば、471(つぎ)(ふね)出来(でき)るまで徒食(としよく)をせねばならぬから、472貯蓄(たくはへ)()俺達(おれたち)473そんなら二百両(にひやくりやう)()りませう』
474有難(ありがた)い、475そんなら()()ちます。476(いち)477()478(さん)
479船頭(せんどう)佐田彦(さだひこ)(かほ)見合(みあは)せ、480()()つて(しま)つた。
481 初稚姫(はつわかひめ)(ふところ)より山吹色(やまぶきいろ)小判(こばん)取出(とりだ)し、
482『サア、483小父(をぢ)さま、484(あらた)めて受取(うけと)つて(くだ)さい』
485()()す。486船頭(せんどう)(あらた)めて()て、
487『ヤー、488有難(ありがた)う、489左様(さやう)なら。490モウ一旦(いつたん)()()つたのだから、491変換(へんが)へは()きませぬよ』
492()()て、493(こは)さうに(いへ)()()み、494(なか)よりピシヤンと()()め、495丁寧(ていねい)突張(つつぱ)りをこうてゐる。496(なみ)益々(ますます)(たけ)(くる)ふ。
497『アヽ()(ふね)だ。498サア(みな)さま、499()りませう。500ちつと()れた(はう)面白(おもしろ)からう』
501佐田彦(さだひこ)(さき)()()んだ。502三人(さんにん)(よろこ)んで船中(せんちう)(ひと)となつて(しま)つた。
503佐田彦(さだひこ)『サア、504波留彦(はるひこ)505(かい)使(つか)つて(くだ)さい。506(おれ)船頭(せんどう)だ。507()()いで()く。508随分(ずゐぶん)(たか)(なみ)だよ』
509とそろそろ捩鉢巻(ねぢはちまき)になつて、510()(あやつ)(はじ)めた。
511 (つき)(くも)()(ひら)きて利鎌(とがま)のやうな(ひかり)()げ、512四人(よにん)()つた神島丸(かみじままる)(てら)して()る。513不思議(ふしぎ)暴風(ばうふう)(たちま)()まり、514(なみ)()()(たたみ)(ごと)()(わた)つた。515二人(ふたり)一生懸命(いつしやうけんめい)(かい)(あやつ)りながら、516(おき)(うか)べる神島(かみじま)目標(めあて)()()した。517(やうや)くにしてミロク(いは)磯端(いそばた)横付(よこづ)けになつた。
518玉能姫(たまのひめ)(みな)さま、519御苦労(ごくらう)でした。520貴方(あなた)(がた)二人(ふたり)此処(ここ)()つて()(くだ)さい』
521佐田彦(さだひこ)『イエ(わたくし)御供(おとも)(いた)しませう。522これ(だけ)篠竹(しのたけ)(しげ)つた(やま)523大蛇(をろち)沢山(たくさん)()ると()ふことですから、524保護(ほご)のために吾々(われわれ)両人(りやうにん)御供(おとも)(いた)しませう。525言依別(ことよりわけ)教主様(けうしゆさま)より「両人(りやうにん)保護(ほご)(たの)む」と()はれたのだから、526もし御両人様(ごりやうにんさま)大蛇(をろち)にでも()まれて(しま)ふやうなことが出来(しゆつたい)したら、527それこそ申訳(まをしわけ)がありませぬ。528是非(ぜひ)御供(おとも)(いた)します』
529初稚姫(はつわかひめ)『その大蛇(をろち)(よう)があるのだから、530()(くだ)さるな。531大蛇(をろち)(をとこ)()くと大変(たいへん)(はら)()てて(おこ)るさうですから』
532波留彦(はるひこ)大蛇(をろち)でも矢張(やつぱ)(をんな)()いのかなア。533()うなると(をとこ)(うま)れたのも(つま)らぬものだ』
534玉能姫(たまのひめ)『さア、535初稚姫(はつわかひめ)さま、536(まゐ)りませう。537御両人(ごりやうにん)御方(おかた)538(けつ)して、539(あと)から()てはなりませぬよ。540(よう)()んだら()びますから、541それまで此処(ここ)()つてゐて(くだ)さい』
542 二人(ふたり)(あたま)()(なが)ら、
543佐田彦(さだひこ)『エー仕方(しかた)がない。544役目(やくめ)(ちが)ふのだから、545そんなら神妙(しんめう)()つて()ます。546御用(ごよう)()んだら()んで(くだ)さい』
547玉能姫(たまのひめ)『ハイ、548承知(しようち)しました。549()うぞ機嫌(きげん)よう()つて()(くだ)さいませ』
550初稚姫(はつわかひめ)()()り、551篠竹(しのたけ)押分(おしわ)山上(さんじやう)目蒐(めが)けて(のぼ)()く。
552 (から)うじて二人(ふたり)(やま)(いただき)到着(たうちやく)した。553五六歳(ごろくさい)童子(どうじ)五人(ごにん)童女(どうぢよ)三人(さんにん)554黄金(こがね)(くは)()つて何処(いづこ)よりともなく(あら)はれ(きた)り、555さしもに(かた)岩石(がんせき)(またた)()()つて(しま)つた。
556初稚姫(はつわかひめ)『アー、557貴女(あなた)(いづ)身魂(みたま)558(みづ)身魂(みたま)大神様(おほかみさま)559只今(ただいま)言依別命(ことよりわけのみこと)(さま)御命令(ごめいれい)()つて、560無事(ぶじ)此処(ここ)まで(たま)御供(おとも)をして(まゐ)りました。561さア、562()うぞ(をさ)めて(くだ)さい』
563 五人(ごにん)童子(どうじ)にこにこ(わら)ひながら、564ものをも()はず一度(いちど)(ちひ)さき()差出(さしだ)す。565初稚姫(はつわかひめ)金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)玉函(たまばこ)()り、566(うやうや)しく頭上(づじやう)(ささ)げながら五人(ごにん)()(うへ)()せた。567十本(じつぽん)(てのひら)(うへ)一個(いつこ)玉函(たまばこ)568(たちま)五瓣(ごべん)梅花(ばいくわ)(ひら)いた。569童子(どうじ)玉函(たまばこ)(とも)に、570(いま)()つたばかりの(いは)(あな)()えて(しま)つた。
571 三人(さんにん)童女(どうぢよ)(また)もや()(ひろ)げて、572玉能姫(たまのひめ)(まへ)(すす)(きた)る。573玉能姫(たまのひめ)(むらさき)宝珠(ほつしゆ)(はこ)()()げ、574(うやうや)しく頭上(づじやう)(ささ)げ、575(つい)三人(さんにん)童女(どうぢよ)()(わた)した。576童女(どうぢよ)はものをも()はず微笑(びせう)(うか)べたまま、577玉函(たまばこ)(とも)(おな)岩穴(いはあな)()えて(しま)つた。578玉能姫(たまのひめ)(あや)しんで(あな)(のぞ)()れば、579童男(どうなん)580童女(どうぢよ)姿(すがた)(かげ)もなく、581(ただ)(ふた)つの玉函(たまばこ)582微妙(びめう)音声(おんせい)(はつ)し、583鮮光(せんくわう)孔内(こうない)()らして()る。
584 二人(ふたり)(うやうや)しく天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)し、585(つい)神言(かみごと)(とな)へ、586(あま)数歌(かずうた)(うた)ひ、587岩蓋(いはふた)をなし、588(その)(うへ)(いま)童女(どうぢよ)()()きし、589黄金(こがね)(くは)各自(てんで)()()げ、590(つち)(あつ)()せ、591四辺(あたり)小松(こまつ)(その)(うへ)()ゑて、592(また)もや祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、593悠々(いういう)として(やま)(くだ)()く。
594 玉能姫(たまのひめ)は、
595『お二人(ふたり)さま、596えらう御待(おま)たせしました。597さア、598もう御用(ごよう)()みました。599(かへ)りませう』
600 佐田彦(さだひこ)601波留彦(はるひこ)両人(りやうにん)(くち)(そろ)へて、
602『それは結構(けつこう)御座(ござ)いました。603御目出度(おめでた)う。604これから私等(わたくしら)一度(いちど)(のぼ)つて()ますから、605(しば)らく此処(ここ)()つて()(くだ)さいませ』
606初稚姫(はつわかひめ)『モー御用(ごよう)()みましたのですから、607一歩(ひとあし)(あが)つてはなりませぬ。608さア(かへ)りませうよ』
609佐田彦(さだひこ)折角(せつかく)此処迄(ここまで)苦労(くらう)して御供(おとも)をして()たのだから、610(うづ)めた(あと)なりと(をが)まして(くだ)さいな』
611 初稚姫(はつわかひめ)(くび)左右(さいう)()つてゐる。612玉能姫(たまのひめ)()れば、613(これ)(また)無言(むごん)(まま)(くび)左右(さいう)()つてゐる。614何処(どこ)ともなく(らい)(ごと)(こゑ)
615一刻(いつこく)猶予(いうよ)はならぬ。616これより高砂(たかさご)へは()らず、617淡路島(あはぢしま)目標(めあて)再度山(ふたたびやま)(ふもと)(ふね)をつけよ。618サア、619(はや)(はや)く』
620呶鳴(どな)るものがある。621(この)言葉(ことば)佐田彦(さだひこ)622波留彦(はるひこ)は、
623『ハイ、624(かしこ)まりました』
625玉能姫(たまのひめ)626初稚姫(はつわかひめ)(むか)()一生懸命(いつしやうけんめい)艪櫂(ろかい)(あやつ)りつつ、627再度山(ふたたびやま)方面(はうめん)()して(かへ)()く。
628大正一一・五・二八 旧五・二 外山豊二録)