霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 家宅侵入(かたくしんにふ)〔七二二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第23巻 如意宝珠 戌の巻 篇:第3篇 有耶無耶 よみ:うやむや
章:第10章 第23巻 よみ:かたくしんにゅう 通し章番号:722
口述日:1922(大正11)年06月12日(旧05月17日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は熊野の若彦館で、人々に無理難題を言って放り出され、すごすごと帰ってきた。今度は部下を四人引き連れて、生田の森の館にやってきた。元の杢助館で、今は玉能姫が守っている。
高姫は、生田の森の館の錠をねじ切って中に勝手に入ろうとしていた。そこへ玉能姫が、虻公と蜂公を従えて戻って来て、高姫を見咎めた。
高姫と玉能姫は、入れろ・入れぬで言い争いになる。高姫は憎まれ口を叩きながら生田の森の館を去ると、浜辺にやってきた。そこで玉能姫が所有の舟を見つけた。
高姫が舟に乗ろうとしていると、舟の監督を任されている船頭たちがやってきた。船頭たちによると、玉能姫は月に一回、この舟に乗ってどこかに出かけるのだという。
高姫は、玉能姫の船出の日数から、どの島に出かけているかを聞き出す。船頭たちは家島だろうと答え、高姫はてっきり玉は家島に隠してあると思い込む。
高姫は船頭たちに、この舟を出してくれるように頼むが、船頭たちは杢助や玉能姫から厳しく言われているからと断る。高姫はあきらめた振りをして森の方に去ったが、船頭たちが行ってしまったのを見届けると、勝手に舟を出してしまった。
玉能姫は、船頭たちの報告を聞いて来て見ると、舟が無くなっている。玉能姫は虻公と蜂公に留守を言いつけると、自分は高姫を追って家島に行くのだ、と言い残して舟を出した。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2310
愛善世界社版:158頁 八幡書店版:第4輯 551頁 修補版: 校定版:161頁 普及版:73頁 初版: ページ備考:
001()れては(くも)秋冬(あきふゆ)
002空高姫(そらたかひめ)改心(かいしん)
003真如(しんによ)(つき)(くも)らせて
004(こころ)(うみ)荒波(あらなみ)
005立騒(たちさわ)ぎては(また)(くも)
006慢心(まんしん)改心(かいしん)()(かは)
007(こころ)(いろ)(さだ)めなき
008執着心(しふちやくしん)のムラムラと
009(また)もや(かしら)(もた)げつつ
010金輪奈落(こんりんならく)どこまでも
011()つの神宝(たから)所在(ありか)をば
012(さが)さにや()かぬと(いら)だちて
013四人(よにん)従者(とも)(ともな)ひつ
014(やま)()(わた)りやうやうと
015(みなみ)(はて)()(くに)
016(みち)熊野(くまの)(つつが)なく
017あてど那智(なち)滝水(たきみづ)
018(むね)()たれてシホシホと
019若彦館(わかひこやかた)立向(たちむか)
020(むね)(ほのほ)()ゆるまに
021無理難題(むりなんだい)()きかけて
022若彦(わかひこ)夫婦(ふうふ)(その)(ほか)
023信徒(まめひと)(たち)(なや)ませつ
024常楠爺(つねくすぢ)さまの腕力(わんりよく)
025(やかた)(そと)()()され
026無念(むねん)歯切(はぎ)()()めて
027(あと)()(かへ)りふりかへり
028(やかた)(にら)みスゴスゴと
029四人(よにん)(をとこ)諸共(もろとも)
030(こころ)さかしき山路(やまみち)
031(のぼ)りつ(くだ)りつ浪速江(なにはえ)
032よしもあしきも白妙(しらたへ)
033(ころも)(まと)引返(ひきかへ)
034再度山(ふたたびやま)山麓(やまもと)
035(あらた)()ちし神館(かむやかた)
036初稚姫(はつわかひめ)(まも)りてし
037生田(いくた)(もり)(かへ)()く。
038高姫(たかひめ)『アヽ此処(ここ)意地(いぢ)クネの(わる)杢助(もくすけ)(もと)(やかた)だ。039玉能姫(たまのひめ)今迄(いままで)聖地(せいち)羽振(はぶ)りをきかして、040ピカピカと(ほたる)(やう)にチツと(ばか)(ひか)つて()つたが、041到頭(たうとう)慢心(まんしん)(つよ)く、042欲心(よくしん)(ふか)いものだから、043杢助(もくすけ)(やつ)にウマウマと計略(けいりやく)にかけられ、044結構(けつこう)聖地(せいち)()()し……お(まへ)如何(どう)しても生田(いくた)(もり)因縁(いんねん)があるから、045御苦労(ごくらう)だが再度山麓(ふたたびさんろく)神館(かむやかた)守護(しゆご)をして()れ……なんて(うま)辞令(じれい)にチヨロまかされ、046こんな(ところ)左遷(させん)せられて、047有頂点(うちやうてん)になつて(よろこ)んで()(やう)なお目出度(めでた)(やつ)だ。048(だま)(きつね)(だま)されたとは(この)(こと)だ。049(じつ)()(どく)なものだワイ。050悪人(あくにん)には悪人(あくにん)()ると()えて、051若彦館(わかひこやかた)(あつ)まつて()よつた連中(れんちう)のあの(つら)()つたら、052泥坊(どろばう)でもしさうな(やつ)ばかりぢやつた。053……()れからお前達(まへたち)充分(じゆうぶん)()()けて、054(たれ)(なん)()つても、055()出神(でのかみ)命令(めいれい)(そむ)(こと)出来(でき)ないぞえ。056貫公(くわんこう)057武公(たけこう)058しつかりなされや』
059貫州(くわんしう)委細(ゐさい)承知(しようち)(いた)しました。060(しか)()れから()出神(でのかみ)(さま)聖地(せいち)御帰(おかへ)(あそ)ばすので御座(ござ)いますか、061(ただし)()方面(はうめん)御出張(ごしゆつちやう)になりますか、062一寸(ちよつと)(うかが)つて(くだ)さいませな』
063高姫(たかひめ)(なん)()ふお(まへ)頭脳(あたま)(わる)(こと)だ。064()出神(でのかみ)(さま)(うかが)つて()れとは、065そりや(なに)()ふのだ。066()出神(でのかみ)(さま)高姫(たかひめ)別々(べつべつ)(かんが)へて()るのだな。067それがテンから間違(まちがひ)だ。068高姫(たかひめ)(すなは)()出神(でのかみ)069()出神(でのかみ)(すなは)高姫(たかひめ)だ。070霊肉一致(れいにくいつち)071(まこと)生粋(きつすゐ)大和魂(やまとだましひ)高姫(たかひめ)だ』
072貫州(くわんしう)『それでも貴女(あなた)073何時(いつ)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)仰有(おつしや)るぢや御座(ござ)いませぬか。074(みや)()ふものは(もの)()はず(うご)きもせぬものだが、075あなたの(みや)はどこへでもよく(うご)きますな』
076高姫(たかひめ)『エー(わか)らぬ(をとこ)だなア。077どこへでも(おも)うた(ところ)()きよるから、078イキ(みや)()ふのだ。079(まへ)は、080霊肉一致(れいにくいつち)(この)水火(いき)(わか)らぬから仕方(しかた)がない。081余程(よつぽど)(えら)(をとこ)だと見込(みこ)んで遥々(はるばる)()(くに)まで()れて()つたのだが、082(この)()出神(でのかみ)若彦館(わかひこやかた)からつまみ()されて(こし)()ち、083(くるし)んで()るのに、084一口(ひとくち)応対(おうたい)もようせず、085()(かへ)しも(いた)さず、086菎蒻(こんにやく)化物(ばけもの)(やう)にビリビリ(ふる)うて()(ごゑ)()し……モシモシ高姫(たかひめ)さま、087一体(いつたい)如何(どう)なるので御座(ござ)いませう……なぞと、088アタ甲斐性(かひしやう)のない、089あまり阿呆(あはう)らしうて、090愛想(あいさう)()きました。091アーア何奴(どいつ)此奴(こいつ)もマサカの(とき)になつたれば(よわ)いものだ。092ここへ()()四人連(よにんづれ)高姫(たかひめ)(さま)(ため)になれば何時(なんどき)でも()にますの、093生命(いのち)差上(さしあ)げますのと、094よう()はれたものぢや。095それ(だけ)勇気(ゆうき)()るのなら、096なぜ生命(いのち)(まと)に、097若彦(わかひこ)(その)()乱暴者(らんばうもの)打懲(うちこら)さなんだのぢや。098内覇張(うちはば)りの(そと)すぼりとはお(まへ)(こと)ぢやぞえ。099()れからチツと腹帯(はらおび)()め、100(こころ)()(なほ)して(もら)はぬと、101肝腎要(かんじんかなめ)御神業(ごしんげふ)奉仕(ほうし)する(こと)出来(でき)ませぬぞえ。102()れから(こころ)()()へて(なん)でも()出神(でのかみ)()(こと)()きますか。103サア返答(へんたふ)(あらた)めて()かして(くだ)さい。104今迄(いままで)(やう)なヨタリスクはモウ()ひませぬから、105駄目(だめ)ですよ』
106貫州(くわんしう)『ハイ今日(けふ)(かぎ)(こころ)(あらた)めて、107どんな(こと)でも貴女(あなた)(こと)絶対(ぜつたい)服従(ふくじゆう)(いた)します』
108高姫(たかひめ)仮令(たとへ)(わし)がお(まへ)()ねいと()つても、109()にますかな』
110貫州(くわんしう)『ハイ一旦(いつたん)約束(やくそく)をした(うへ)は、111(わたし)一丈(いちぢやう)二尺(にしやく)(ふんどし)()めた(をとこ)だ。112(けつ)して間違(まちがひ)御座(ござ)いませぬワイ』
113高姫(たかひめ)『アヽそれでヤツと安心(あんしん)をした。114コレコレ武公(たけこう)115清公(きよこう)116鶴公(つるこう)117前等(まへら)如何(どう)だな』
118武公(たけこう)『ハイ(わたくし)(ほぼ)同意見(どういけん)御座(ござ)います。119(こと)(しな)()れば生命(いのち)でも差上(さしあ)げます』
120高姫(たかひめ)(ほぼ)同意見(どういけん)とはソラ何事(なにごと)ぢや。121優柔不断(いうじうふだん)瓢鯰主義(へうねんしゆぎ)言依別命(ことよりわけのみこと)御霊(みたま)にまだ感染(かんせん)されて()ると()えるワイ。122そんな筒井式(つつゐしき)連中(れんちう)は、123今日(けふ)(かぎ)絶縁(ぜつえん)しますから、124トツトと(かへ)つて(くだ)さい』
125武公(たけこう)『さうだと()つて、126(ひと)つよりない生命(いのち)を、127さう無暗(むやみ)貴女(あなた)()げられますか。128(わたくし)大神様(おほかみさま)差上(さしあ)げた生命(いのち)129さう貴女(あなた)自由(じいう)にはなりませぬ。130絶対(ぜつたい)服従(ふくじゆう)()つてもヤツパリ制限的(せいげんてき)絶対服従(ぜつたいふくじゆう)ですから………なア貫州(くわんしう)131貴様(きさま)絶対服従(ぜつたいふくじゆう)()づここらだらう』
132貫州(くわんしう)『………』
133鶴公(つるこう)『オイ貫州(くわんしう)134貴様(きさま)高姫(たかひめ)さまに絶対服従(ぜつたいふくじゆう)し、135源平(げんぺい)(たたか)ひぢやないが、136長門(ながと)(だん)(うら)(まで)()(つも)りか()らぬが、137俺等(おれたち)三人(さんにん)高姫(たかひめ)(さま)破門(はもん)された(とき)如何(どう)する(かんが)へだ。138我々(われわれ)四人(よにん)何処(どこ)までも行動(かうどう)(とも)にすると(ちか)つてある(こと)(わす)れはせまいなア』
139貫州(くわんしう)『そりや(けつ)して(わす)れては()らぬ。140(たがひ)(わす)れてはならぬぞと()約束(やくそく)はしたが、141まだ細目(さいもく)(きま)つて()ないのだから、142そこは自由意志(じいういし)(まか)して(もら)はなくちや()けないよ。143(その)(かは)りに(わす)れなと()約束(やくそく)は、144どこまでも(まも)つて(わす)れないから、145安心(あんしん)して()れ』
146鶴公(つるこう)(なに)(ぬか)しやがるのだい。147実行(じつかう)肝腎(かんじん)だ。148(わす)れる(わす)れぬは畢竟(つまり)(すゑ)問題(もんだい)だ。149俺達(おれたち)三人(さんにん)()れから……高姫(たかひめ)さまに(ひま)(いただ)いたのだから、150貴様(きさま)絶縁(ぜつえん)をする。151(その)(かは)りに月夜(つきよ)(ばか)りぢやないからな。152(やみ)(ばん)には用心(ようじん)なさりませ』
153貫州(くわんしう)『さう団子理屈(だんごりくつ)()(まは)したり、154脅喝(けふかつ)されては(たま)らぬぢやないか。155チツと淡泊(たんぱく)精神(せいしん)になつて、156(おれ)()(こと)善意(ぜんい)(かい)して(もら)はぬと(こま)るぢやないか』
157武公(たけこう)(なん)()つても我々(われわれ)執着心(しふちやくしん)(つよ)高姫(たかひめ)さま仕込(じこみ)だから、158淡泊(たんぱく)になれよと()つたつてなれるものかい。159(とんび)にカアカアと()け、160(つる)にコケコツコウと(うた)へと()(やう)注文(ちうもん)だ』
161高姫(たかひめ)『コレコレお前達(まへたち)大変(たいへん)御神業(ごしんげふ)(まへ)(ひか)(なが)ら、162(わし)一口(ひとくち)()つたと()うて、163(その)言葉尻(ことばじり)(つか)まへて(なに)をゴテゴテ()ふのだ。164前達(まへたち)(こころ)鞭撻(べんたつ)する(ため)(きつ)(こと)()うたのだ。165(この)高姫(たかひめ)だとてコレ(だけ)味方(みかた)()くなり………オツト……ドツコイ無形(むけい)味方(みかた)沢山(たくさん)あるわいな。166(この)場合(ばあひ)一人(ひとり)でも大切(たいせつ)だ。167(たれ)破門(はもん)したい(こと)があるものか。168そこは推量(すゐりやう)せなくてはならぬぢやないか。169なア鶴公(つるこう)170清公(きよこう)171(みな)さま、172さうぢやないか』
173と、174たらす(やう)()ふ。
175鶴公(つるこう)貴女(あなた)からさう(くだ)けて()(くだ)されば、176我々(われわれ)(べつ)額口(ひたひぐち)癇筋(かんすぢ)()て、177糊付(のりつ)(もん)(やう)鯱張(しやちこば)りたい(こと)御座(ござ)いませぬ。178(なん)でも(うけたま)はりますから、179どうぞ御用(ごよう)(あふ)()(くだ)さいませ』
180高姫(たかひめ)『あゝそれでヤツと内乱(ないらん)無事(ぶじ)鎮定(ちんてい)しました。181(また)してもお前達(まへたち)革命(かくめい)気分(きぶん)(そそ)るやうな(こと)()ふから(こま)つて(しま)ふ。182サア(これ)から()出神(でのかみ)生宮(いきみや)()(こと)()きなされや』
183鶴公(つるこう)『ハイハイ(うけたま)はりませう。184何事(なにごと)なりと御遠慮(ごゑんりよ)なく(あふ)()(くだ)さいますれば、185有難(ありがた)(ぞん)じます』
186芝生(しばふ)(うへ)端坐(たんざ)し、187両手(りやうて)をついてワザと丁寧(ていねい)挨拶(あいさつ)をする。
188高姫(たかひめ)『そんなら(この)(やかた)(いま)戸締(とじま)りぢやが、189(ぢやう)捩切(ねぢき)つてでも(なか)這入(はい)つて、190調査(しらべ)()(くだ)され。191玉能姫(たまのひめ)(やつ)192どんな(こと)をして()るか()れやしない。193箪笥(たんす)抽斗(ひきだし)一々(いちいち)点検(てんけん)して、194秘密(ひみつ)書類(しよるゐ)でもあつたら、195抜目(ぬけめ)なく持出(もちだ)して()るのだよ』
196鶴公(つるこう)主人(しゆじん)不在宅(るすたく)這入(はい)(こと)は、197(なん)となしに心持(こころもち)があまりよう御座(ござ)いませぬがなア、198そんな(こと)すれば、199家宅侵入罪(かたくしんにふざい)とか無断家宅捜索(むだんかたくそうさく)とかになりはしませぬか。200予審判事(よしんはんじ)令状(れいじやう)()ければ到底(たうてい)執行(しつかう)する(こと)出来(でき)ませぬだらう』
201高姫(たかひめ)『お(まへ)はそれだから()かぬのだ。202(した)()(かわ)かぬ(うち)に、203(すぐ)反抗的(はんかうてき)態度(たいど)()るぢやないか。204勿論(もちろん)不在宅(るすたく)這入(はい)ることは出来(でき)ないが、205ここは三五教(あななひけう)支社(でやしろ)ぢやないか、206()はば吾々(われわれ)部下(ぶか)でもあり、207居宅(きよたく)同然(どうぜん)だから、208そんな遠慮(ゑんりよ)()らぬ。209命令(めいれい)服従(ふくじゆう)しなされ』
210鶴公(つるこう)『オイ貫州(くわんしう)211武公(たけこう)212清公(きよこう)213如何(どう)しようかなア』
214貫州(くわんしう)『モシ高姫(たかひめ)(さま)215貴女(あなた)(さき)へお這入(はい)(くだ)さいませ。216大将(たいしやう)より(さき)()つと()(こと)御無礼(ごぶれい)御座(ござ)います。217(わたくし)貴女(あなた)のお()でになる(とこ)は、218どこまでもお(とも)(いた)従者(ともびと)ですから……さうでないと天地(てんち)道理(だうり)()ひますまい』
219高姫(たかひめ)『エー()(あは)(をとこ)だなア』
220無理(むり)()(ねぢ)あけようと(いら)つて()る。221(かか)(ところ)玉能姫(たまのひめ)虻公(あぶこう)222蜂公(はちこう)両人(りやうにん)(ともな)ひ、223スタスタ(かへ)(きた)り、
224玉能姫(たまのひめ)貴女(あなた)高姫(たかひめ)(さま)225()りにも(わたし)不在宅(るすたく)を、226(たれ)(ことわ)つてお()けなさるのだ。227チツと乱暴(らんばう)では御座(ござ)いませぬか』
228高姫(たかひめ)『イヤお(せつ)か、229()らぬおセツ(かい)ぢや。230三五教(あななひけう)支社(でやしろ)自由自在(じいうじざい)()けるのは、231()出神(でのかみ)特権(とくけん)ぢや。232玉隠(たまかく)しの大罪人(だいざいにん)分際(ぶんざい)として、233(なに)をゴテゴテ()資格(しかく)があるか。234今日(けふ)から(この)(やかた)()出神(でのかみ)(かり)御住居(おすまゐ)235(まへ)()れから引返(ひきかへ)し、236御苦労(ごくらう)だがマ一遍(いつぺん)()(くに)()つて、237(こひ)しい(をとこ)末永(すえなが)(たのし)んで(くら)しなさい。238さうすればお(まへ)さまも思惑(おもわく)()ち、239面白(おもしろ)月日(つきひ)(おく)れるだらう。240(この)(しきゐ)一歩(いつぽ)たりとも(また)げる(こと)(ゆる)しませぬぞや』
241玉能姫(たまのひめ)(なん)仰有(おつしや)つても(この)(やかた)(わたし)監督権内(かんとくけんない)にあるもの、242何程(なにほど)()出神(でのかみ)(さま)でも、243指一本(ゆびいつぽん)()へる(こと)(ゆる)しませぬぞ』
244(やさ)しき(をんな)()ず、245(やや)言葉(ことば)(ちから)()れて()めつけた。
246高姫(たかひめ)『あのマアおむつかしい(かほ)ワイナ。247ホヽヽヽヽ、248若彦(わかひこ)()うて、249(あま)つたるい言葉(ことば)()かされて()なさつた(とき)(かほ)と、250(いま)(かほ)とはまるで地蔵(ぢざう)閻魔(えんま)(やう)(かは)つて()る、251あゝそりや無理(むり)もない。252(にく)うて(にく)うてならぬ邪魔者(じやまもの)高姫(たかひめ)と、253可愛(かあい)可愛(かあい)てならぬ若彦(わかひこ)とだから、254無理(むり)もありますまい。255(おも)(うち)()れば(いろ)(そと)(あら)はるとやら、256結局(けつきよく)(まへ)正直(しやうぢき)なからだ』
257(かた)(ゆす)(あご)をしやくる(にく)らしさ。
258玉能姫(たまのひめ)(なん)仰有(おつしや)つても、259高姫(たかひめ)(さま)(この)(やかた)()れてはならぬと厳命(げんめい)()けて()りますから……』
260高姫(たかひめ)(なん)()ひなさる。261厳命(げんめい)()けたとは、262そりや(たれ)から()けたのだ。263そんな権利(けんり)()つて()(やつ)三五教(あななひけう)には一人(ひとり)もない(はず)だ。264大方(おほかた)僣越至極(せんゑつしごく)行動(かうどう)(あへ)てする言依別(ことよりわけ)杢助(もくすけ)指図(さしづ)だらう。265サア(この)一言(ひとこと)()いた(うへ)は、266どこまでも(しろ)(くろ)いを()けねば()かぬ。267……(たれ)()うたのだ。268有態(ありてい)白状(はくじやう)(いた)されよ』
269威丈高(ゐたけだか)になる。
270玉能姫(たまのひめ)『オホヽヽヽ、271高姫(たかひめ)(さま)(おそ)ろしいお(かほ)272(すこ)(しと)やかに(ひく)(こゑ)仰有(おつしや)つて(くだ)さいましても、273玉能姫(たまのひめ)(みみ)はよく(つう)じますのに……(わたし)()出神(でのかみ)から厳命(げんめい)()けました』
274高姫(たかひめ)()出神(でのかみ)とは(わたし)(こと)ぢや。275(わたし)何時(いつ)そんな命令(めいれい)(いた)しましたか』
276玉能姫(たまのひめ)『ハイ何時(いつ)(きび)しく(あふ)せられます。277自分(じぶん)(まも)つて()(やかた)は、278仮令(たとへ)教主(けうしゆ)でも、279如何(いか)なる長上(めうへ)(かた)でも、280生神様(いきがみさま)でも、281(だま)つて()れてはならぬ。282絶対(ぜつたい)其処(そこ)(まも)り、283()(もの)()()けるでないと、284貴女(あなた)始終(しじう)仰有(おつしや)つたぢやありませぬか。285教主(けうしゆ)(わたし)長上(ちやうじやう)なれば貴女(あなた)もヤツパリ長上(ちやうぢやう)仲間(なかま)です。286(また)自分(じぶん)以下(いか)役員(やくゐん)(さま)287信者(しんじや)(いへど)も、288自分(じぶん)守護神(しゆごじん)(ゆる)さぬ(こと)絶対(ぜつたい)にならないと、289貴女(あなた)()出神(でのかみ)(さま)(きび)しきお警告(いましめ)でせう。290(わたし)()出神(でのかみ)(さま)絶対服従(ぜつたいふくじゆう)ですから……』
291高姫(たかひめ)『それならば何故(なぜ)()出神(でのかみ)服従(ふくじゆう)せないのだ。292(まへ)()出神(でのかみ)には服従(ふくじゆう)しても、293高姫(たかひめ)()(こと)()かぬと()精神(せいしん)だなア。294高姫(たかひめ)(すなは)()出神(でのかみ)295()出神(でのかみ)(すなは)高姫(たかひめ)296密着(みつちやく)不離(ふり)関係(くわんけい)()らぬのか。297それが(わか)らぬ(やう)(こと)で、298如何(どう)して(この)結構(けつこう)神館(かむやかた)(まも)れますか』
299玉能姫(たまのひめ)『………』
300高姫(たかひめ)(くち)()きますまい。301無理(むり)(とほ)さうと()つても、302屁理屈(へりくつ)無理(むり)()出神(でのかみ)(まへ)では三文(さんもん)価値(かち)()りますまいがなア。303オツホヽヽヽ』
304玉能姫(たまのひめ)(なん)仰有(おつしや)つても、305(わたし)這入(はい)つて(もら)(こと)出来(でき)ませぬから………』
306高姫(たかひめ)(なん)剛腹(がうはら)(をんな)だなア。307理屈(りくつ)(ぬき)にして、308(おな)(みち)()吾々(われわれ)309チツとは融通(ゆうづう)()かしたらどうだな』
310玉能姫(たまのひめ)融通(ゆうづう)()かす(やう)行方(やりかた)は、311変性女子(へんじやうによし)言依別(ことよりわけ)行方(やりかた)だ、312()出神(でのかみ)一言(ひとこと)()うたら、313どこまでも間違(まちが)へられぬのだと仰有(おつしや)つたでせう。314それだから何処(どこ)までも(その)御神勅(ごしんちよく)遵奉(じゆんぽう)(いた)しまして、315()(どく)(なが)今回(こんくわい)はお(ことわ)(まを)しませう』
316虻公(あぶこう)『コレコレ高姫(たかひめ)さまとやら、317貴女(あなた)(やかた)主人(しゆじん)がこれ(ほど)(こと)(わけ)仰有(おつしや)るのに、318なぜ(わか)りませぬか』
319高姫(たかひめ)『エー(やかま)しいワイ。320新米者(しんまいもの)(くせ)に………泥棒面(どろぼうづら)をさげやがつて……玉能姫(たまのひめ)()いて()(やう)(やつ)(ろく)(やつ)一人(ひとり)()りやせぬ。321二人(ふたり)二人(ふたり)(なが)ら、322どつかで泥棒(どろばう)でも(はたら)いて()つた(やう)面付(つらつき)をして()る』
323蜂公(はちこう)()れは()しからぬ。324何時(いつ)(わたし)がお(まへ)さまの(もの)窃盗(どろぼう)しましたか。325(まへ)さまこそ、326(ひと)不在宅(るすたく)窃盗(どろぼう)しようと(おも)つて予備(よび)行為(かうゐ)をやつて()つた(ところ)327玉能姫(たまのひめ)(さま)()つけられたぢやないか。328泥棒(どろばう)上手(じやうず)(やつ)は、329滅多(めつた)夜間(よさり)這入(はい)るものぢやない。330日天様(につてんさま)のカンカンお()(あそ)ばした(とき)331公然(こうぜん)不在宅(るすたく)大勢(おほぜい)()れで、332近所(きんじよ)(ひと)にワザと(よう)がある(やう)(かほ)して這入(はい)るのが(おく)()だ。333(まへ)さまも随分(ずゐぶん)鍛練(たんれん)したものだなア。334(じつ)感心(かんしん)(いた)しますワイ。335(なが)らく泥棒(どろばう)をやつて()つた(はち)……オツトドツコイお(かた)()えて、336中々(なかなか)肝玉(きもだま)()わつて()るワイ』
337高姫(たかひめ)的切(てつき)りお(まへ)泥棒(どろばう)商売(しやうばい)をやつて()つた(やつ)(ちが)ひない。338さうでなければそんな秘訣(ひけつ)(わか)(はず)がない。339玉隠(たまかく)しの玉能姫(たまのひめ)()(やう)(やつ)だから、340ようしたものだ。341(るゐ)(とも)()ぶと()つて玉盗人(たまぬすと)家来(けらい)だから、342キツト泥棒(どろばう)しとつたに(ちがひ)なからう。343()出神(でのかみ)()(にら)んだら間違(まちがひ)はあるまいがな』
344蜂公(はちこう)『ハイ、345どうも(わか)(とき)から何々(なになに)商売(しやうばい)にやつて()つたものだから、346(いづ)れそんな臭気(にほひ)がするかも()れぬが、347今日(けふ)清浄(せいじやう)潔白(けつぱく)348水晶魂(すゐしやうだま)真人間(まにんげん)だから、349あまり(むかし)(こと)()つて、350過越苦労(すぎこしくらう)をせぬ(やう)にして(くだ)さい』
351高姫(たかひめ)『ハヽヽヽ、352ヤツパリ泥棒(どろばう)(あが)りぢやな。353泥棒(どろばう)()以上(いじやう)は、354折角(せつかく)水晶魂(すゐしやうだま)(どろ)(けが)されては大神様(おほかみさま)申訳(まをしわけ)がない。355サア貫州(くわんしう)356武公(たけこう)357清公(きよこう)358鶴公(つるこう)359(わし)()いて()なさい、360グヅグヅして()ると、361前達(まへたち)折角(せつかく)身魂(みたま)(あか)()れかけた(ところ)362(また)逆転(ぎやくてん)して(どろ)まぶれになると険難(けんのん)だから……、363サアサア(はや)(わし)()いてお()でなさるが()からう。364コレコレお(せつ)365(まへ)()家来(けらい)出来(でき)ました。366(あと)でゆつくりと、367三人(さんにん)()(まなこ)になつて、368(この)()(みだ)御相談(ごさうだん)でもなさるが(しやう)()うて()りませうぞい。369オホヽヽヽ』
370(あざけ)(わら)(なが)ら、371(はや)くも(この)()見棄(みす)てて(もり)彼方(あなた)姿(すがた)(かく)す。372四人(よにん)(こころ)()げに()いて()く。373高姫(たかひめ)生田(いくた)浜辺(はまべ)()いた。374四五艘(しごさう)(ふね)(なか)玉能丸(たまのまる)()いた(ふね)()つけ、
375高姫(たかひめ)『ハハア、376此奴(こいつ)(なん)でも(たから)(かく)しに()きよつた(とき)使用(つか)つた(ふね)らしい。377他人(ひと)(ふね)()つて()けば泥棒(どろばう)になるが、378此奴(こいつ)(おな)三五教(あななひけう)所有(しよいう)(ふね)だ。379そして(また)(かく)しよつた(ふね)()つて(さが)しに()くのは縁起(えんぎ)がよい。380コレコレ貫州(くわんしう)(ほか)三人(さんにん)381(はや)(ふね)用意(ようい)をなさつたがよからう』
382 かかる(ところ)二三人(にさんにん)船頭(せんどう)(あら)はれ(きた)り、
383船頭(せんどう)『コラコラ何処(どこ)(やつ)()らぬが、384俺達(おれたち)監督(かんとく)して()(ふね)を、385自由(かつて)にどうするのだ』
386高姫(たかひめ)『コレはお前達(まへたち)(ふね)かな』
387船頭(せんどう)(おれ)(ふね)ではないが、388監督(かんとく)(たの)まれて()るのだ。389生田(いくた)(もり)玉能姫(たまのひめ)(さま)所有船(しよいうせん)だ。390毎月(まいつき)一遍(いつぺん)づつ(この)(ふね)()つて(しま)()かつしやるのだよ』
391高姫(たかひめ)大略(およそ)何日(なんにち)(ほど)往復(わうふく)にかかつて、392玉能姫(たまのひめ)(さま)(かへ)つて()られるかな』
393船頭(せんどう)(はや)(とき)日帰(ひがへ)りの(こと)もあり、394風波(かざなみ)(わる)いと三日(みつか)もかかられる(こと)がありますワイ』
395高姫(たかひめ)『さうするとお(まへ)さんの(かんが)へでは、396どこらあたり(まで)()(やう)(おも)ふかな』
397船頭(せんどう)『マアさうだな、398家島(えじま)(あた)りだらう。399俺達(おれたち)風波(かざなみ)()()家島(えじま)往復(わうふく)するが、400恰度(ちやうど)一日(いちにち)のよい航程(かうてい)だから、401(なん)でも家島(えじま)(へん)結構(けつこう)神様(かみさま)があつてそこへお参詣(まゐり)なさるのだらう』
402高姫(たかひめ)同伴者(つれ)何時(いつ)何人(なんにん)(くらゐ)あるのかな』
403船頭(せんどう)『あの(ひと)綺麗(きれい)別嬪(べつぴん)(くせ)に、404自分(じぶん)一人(ひとり)()()いで、405(この)荒波(あらなみ)(わた)つて()くのだから、406吾々(われわれ)船頭(せんどう)仲間(なかま)(えら)(をんな)だ、407神様(かみさま)(やう)(ひと)だと()つて(あき)れて()るのだ』
408 高姫(たかひめ)(した)()いて、
409高姫(たかひめ)『なんと(えら)(やつ)だなア。410(しか)(たから)(かく)場所(ばしよ)(なん)でも(その)(へん)(ちがひ)ない。411あゝ()(こと)()いた。412あゝこれで前途(ぜんと)()かるくなつた(やう)()がする。413船頭(せんどう)さま、414(まへ)(ひと)御苦労(ごくらう)だが家島(えじま)までやつて()れぬか。415(この)(ふね)()つて……』
416船頭(せんどう)『なんと仰有(おつしや)りましても()きませぬ。417(まへ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)でせう。418(かさ)(しるし)にチヤンと(あら)はれて()る。419三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()たら、420(なん)()つても(わた)(こと)はならぬと、421(いま)聖地(せいち)()つて(えら)(もの)になつて御座(ござ)杢助(もくすけ)さまや、422玉能姫(たまのひめ)さまから(たの)まれて()るのだから、423何程(なにほど)(かね)をくれても()(こと)出来(でき)ませぬワイ』
424高姫(たかひめ)(なん)()つても、425()つて()れませぬか』
426船頭(せんどう)船頭(せんどう)仲間(なかま)にもヤツパリ一種(いつしゆ)道徳律(だうとくりつ)がありますから、427そんな、428約束(やくそく)(やぶ)らうものなら、429竜神(りうじん)さまに如何(どん)(ばつ)(かふむ)るか(わか)つたものぢやない。430船頭(せんどう)(たれ)()れも貧乏人(びんばふにん)ばつかりだが、431(しか)(なが)金銭(かね)(ため)(うご)(やつ)一人(ひとり)()い。432そんな(こと)何程(なにほど)(たの)んでも駄目(だめ)だ。433オイ源州(げんしう)434金州(きんしう)435(はや)取締(とりしまり)(たく)まで()かう。436グヅグヅして()ると(また)叱責(こごと)()はれるからなア』
437金州(きんしう)『オウさうだ。438(いそ)いで()かう。439……オイオイ女宣伝使(をんなせんでんし)440(けつ)して(この)(ふね)指一本(ゆびいつぽん)()へてはならぬぞ』
441高姫(たかひめ)『アヽ仕方(しかた)がない。442そんなら(わたし)(かへ)らうかなア』
443四人(よにん)目配(めくば)せし(なが)ら、444生田(いくた)(もり)方面(はうめん)()して(はし)()く。445三人(さんにん)船頭(せんどう)はヤツと安心(あんしん)(なが)(この)()立去(たちさ)つた。
446高姫(たかひめ)『オツホヽヽヽ、447どうやら船頭(せんどう)(やつ)448安心(あんしん)して(かへ)つて()きよつたらしい、449サアお前達(まへたち)450()れから玉能丸(たまのまる)乗込(のりこ)み、451一生懸命(いつしやうけんめい)家島(えじま)(むか)つて()()すのだ』
452とクレツと(きびす)(かへ)し、453浜辺(はまべ)()けつけ手早(てばや)(つな)をほどき、454()(あやつ)(かい)()(なが)ら、455黄昏(たそがれ)(そら)(やみ)(まぎ)れて(ちから)(かぎ)(はし)()く。456(しばら)くあつて、457玉能姫(たまのひめ)船頭(せんどう)報告(はうこく)()り、458二人(ふたり)(をとこ)引連(ひきつ)浜辺(はまべ)()()れば、459玉能丸(たまのまる)(すで)()えなくなつて()る。460玉能姫(たまのひめ)は、
461玉能姫(たまのひめ)『アヽ失敗(しま)つた。462高姫(たかひめ)一派(いつぱ)(もの)463(たから)所在(ありか)(かぎ)つけ(ふね)()つて()つたのに(ちが)ひない。464コラ()うしては()られぬ。465(わが)(ふね)はなくとも(あと)から(ことわ)りを()へば()いのだ。466サア虻公(あぶこう)467蜂公(はちこう)468用意(ようい)をして(くだ)さい。469一刻(いつこく)猶予(いうよ)はなりませぬ』
470虻公(あぶこう)(この)(くら)いのに(ふね)()した(ところ)方角(はうがく)(わか)りませぬ。471明日(あす)になさつたら如何(どう)ですか』
472玉能姫(たまのひめ)『イヤ一刻(いつこく)猶予(いうよ)はなりませぬ。473サア(はや)用意(ようい)をなされ。474一刻(いつこく)(おく)れても一大事(いちだいじ)だから……』
475虻公(あぶこう)(わたし)(ふね)(あやつ)つた(こと)は、476(うま)れてから()りませぬ。477蜂公(はちこう)()つても(その)(とほ)り、478如何(どう)したらよからうかな』
479玉能姫(たまのひめ)『そんならお前達(まへたち)は、480(また)高姫(たかひめ)一派(いつぱ)不在宅(るすたく)へやつて()ると(こま)るから、481(はや)(かへ)つて留守番(るすばん)をして(くだ)さい。482(わたし)(かへ)るのが仮令(たとへ)一日(いちにち)二日(ふつか)(おそ)くなつても心配(しんぱい)せずに、483神妙(しんめう)留守(るす)して()(くだ)されや』
484虻公(あぶこう)貴女(あなた)如何(どう)なされますの』
485玉能姫(たまのひめ)『アヽどうでも(よろ)しい。486(はや)(かへ)つて(くだ)さい』
487蜂公(はちこう)『それでも貴女(あなた)御行方(おゆくへ)(うけたま)はつて()きませぬと(こま)りますから……』
488玉能姫(たまのひめ)(わたし)家島(えじま)()くのだ』
489()ふより(はや)艫綱(ともづな)()き、490()(あやつ)り、491(ほし)のキラめく海面(かいめん)を、492()()(ごと)(すべ)()した。493二人(ふたり)是非(ぜひ)なく(やかた)(かへ)()く。
494大正一一・六・一二 旧五・一七 松村真澄録)