霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 粉骨砕身(ふんこつさいしん)〔七三一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻 篇:第1篇 流転の涙 よみ:るてんのなみだ
章:第1章 第24巻 よみ:ふんこつさいしん 通し章番号:731
口述日:1922(大正11)年06月14日(旧05月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
バラモン教が顕恩郷を支配していたとき、バラモン教幹部の鬼熊別・蜈蚣姫夫婦の間に小糸姫という一人娘があった。
また部下の雉子という男、世才に長けてうまく鬼熊別夫婦に取り入り、宣伝使に取り立てられて友彦という名を賜った。しかし友彦は、なんとかして小糸姫を自分のものにして、鬼熊別の後継となろうという野心を持っていた。
あるとき鬼熊別一家は部下を連れてエデン河に船を浮かべて酒宴を催した。しかし酔った鬼熊別の鉄拳を避けようと逃げる従臣によって船が傾き、小糸姫が激流に飲まれてしまった。
水練に長けた友彦は、小糸姫を助けて蘇生せしめ、無事に館に連れ帰った。喜ぶ鬼熊別夫婦を前にして、友彦は現幹部の不甲斐なさを讒言して取り入る。
小糸姫の無事を祝ってバラモン教の祝典が開かれた。バラモン教棟梁の鬼雲彦は挨拶に立ち、小糸姫の遭難に対して幹部連が何の力にもならなかったことを引き合いに出して、バラモン教の教勢の衰えを嘆き、一同に奮起を促した。
友彦はこれに力を得て登壇し、現幹部の無力を非難して暗に己を売り込んだ。祭典の場は友彦への賛否で騒然となったが、鬼熊別一家とともに友彦はゆうゆうと引き上げた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2401
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第4輯 613頁 修補版: 校定版:7頁 普及版:3頁 初版: ページ備考:
001(とほ)神代(かみよ)(その)(むかし)
002埃及国(エジプトこく)()(たか)
003イホの(みやこ)(あら)はれし
004バラモン(けう)大棟梁(だいとうりやう)
005鬼雲彦(おにくもひこ)片腕(かたうで)
006(たの)鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)
007イホの(やかた)没落(ぼつらく)
008(あと)(くら)まして瑞穂国(みづほくに)
009メソポタミアの顕恩城(けんおんじやう)
010(をしへ)射場(いば)立直(たてなほ)
011(とき)めき(わた)るバラモンの
012(いきほひ)(あさひ)(のぼ)(ごと)
013(をしへ)四方(よも)(かがや)きて
014天地(てんち)自然(しぜん)楽園(らくゑん)
015(ひかり)()ふる芽出度(めでた)さよ
016鬼熊別(おにくまわけ)蜈蚣姫(むかでひめ)
017二人(ふたり)(なか)(うま)れたる
018十五(じふご)(はる)小糸姫(こいとひめ)
019一粒種(ひとつぶだね)初愛娘(はつまなご)
020(てふ)(はな)よと(はぐ)くみて
021隙間(すきま)(かぜ)アテドなく
022寵愛(ちようあい)()ぎて気儘者(きままもの)
023(ちち)(はは)との(こと)()
024(しり)()かして小娘(こむすめ)
025(とし)似合(にあ)はぬ悪行(いたづら)
026直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
027(また)()(なほ)()(なか)
028()()るとても(いた)からず
029悪逆無道(あくぎやくぶだう)両親(ふたおや)
030(わが)()(あい)にひかされて
031(まなこ)(くら)(みみ)()
032(はな)()ければ(くち)もなし
033(こひ)(おぼ)れてお転婆(てんば)
034あらぬ(かぎ)りを(つく)したる
035小糸(こいと)(ひめ)()()ては
036(はじ)めて()つた初恋(はつこひ)
037(むね)(ほのほ)(こが)されて
038(ひと)()らうに出歯男(でばをとこ)
039団栗眼(どんぐりまなこ)鼻曲(はなまが)
040鼻頭(びとう)(しる)した赤痣(あかあざ)
041(した)うた(をんな)(まなこ)より
042()れば牡丹(ぼたん)桜花(さくらばな)
043(おほ)きな(くち)打開(うちひら)
044(わら)姿(すがた)(なが)めては
045(をとこ)(なか)(をとこ)ぞと
046(おも)()めたが病付(やみつき)
047(おや)(ゆる)さぬ(えにし)をば
048人目(ひとめ)(しの)(むす)昆布(こぶ)
049()れてほとびてグニヤグニヤと
050寝屋(ねや)(ふすま)友彦(ともひこ)
051此上(こよ)なき(もの)(おも)()
052()()()つて両親(りやうしん)
053(やかた)()()でエデン(がは)
054人目(ひとめ)(せき)涙川(なみだがは)
055(なが)(わた)りて波斯(フサ)(くに)
056水火(いき)()はして遠近(をちこち)
057三十男(さんじふをとこ)()()かれ
058(みつ)より(あま)(ささや)きに
059肝腎要(かんじんかなめ)(たましひ)
060()かれて笑壺(ゑつぼ)()(なが)
061(めぐ)(めぐ)りて印度(ツキ)(くに)
062錫蘭島(セイロンたう)打渡(うちわた)
063(ちひ)さき(いほり)(むす)びつつ
064(まへ)(わし)との(その)(なか)
065仮令(たとへ)天地(てんち)(かへ)るとも
066月日(つきひ)西(にし)より(のぼ)るとも
067千代(ちよ)八千代(やちよ)永久(とこしへ)
068ミロクの()までも(かは)るまい
069(たけ)(はしら)(かや)屋根(やね)
070手鍋(てなべ)()げても(いと)やせぬ
071ゾツコン()れた二人仲(ふたりなか)
072天地(てんち)(あい)一身(いつしん)
073独占(どくせん)したる面色(おももち)
074二月(ふたつき)三月(みつき)(くら)(うち)
075小糸(こいと)(ひめ)(やうや)うに
076(をとこ)臭気(にほひ)(はな)につき
077(あつ)恋路(こひぢ)()()うて
078(うす)(つめ)たきあき(かぜ)
079()かれて(かは)(ふゆ)(そら)
080(ゆき)にも(まが)(たま)(はだ)
081()えては最早(もはや)(ねつ)もなく
082(すき)さへあらば()()して
083理想(りさう)(をつと)()(まか)
084社交(しやかう)(はな)(うた)はれつ
085(とき)めき(わた)るも女子(をみなご)
086(ほこ)りと心機一転(しんきいつてん)
087うるさくなつた友彦(ともひこ)
088酩酊(よひ)(さいは)一通(いつつう)
089三行半(みくだりはん)(のこ)()
090あとは()となれ(やま)となれ
091男旱魃(をとこひでり)もなき世界(せかい)
092如何(どう)なり()ことママの(かは)
093()いた(こころ)捨小舟(すてをぶね)
094(こひ)のイロハの意気(いき)()
095()(あやつ)りて印度洋(いんどやう)
096(なみ)のまにまに()()せば
097(なん)容赦(ようしや)荒海(あらうみ)
098(たちま)(ふね)暗礁(あんせう)
099正面(しやうめん)衝突(しようとつ)メキメキと
100(くだ)けて(たま)中天(ちうてん)
101()んで()でたる()りもあれ
102三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
103五十子(いそこ)(ひめ)神船(かみぶね)
104ヤツと(すく)はれ太平(たいへい)
105(うみ)真中(まなか)(うか)びたる
106竜宮島(りうぐうじま)上陸(じやうりく)
107人気(ひとげ)(あら)島人(しまびと)
108日頃(ひごろ)のおキヤンを応用(おうよう)
109鰻上(うなぎのぼ)りに島国(しまぐに)
110女王(ぢよわう)(あふ)がれ三五(あななひ)
111(かみ)(をしへ)帰順(きじゆん)して
112(まこと)(みち)(つた)へたる
113黄竜姫(わうりようひめ)物語(ものがたり)
114(しとね)(ふね)にウキウキと
115()(よこ)たへて太平(たいへい)
116(うみ)をばここに瑞月(ずゐげつ)
117男波女波(をなみめなみ)(てら)しつつ
118天涯万里(てんがいばんり)物語(ものがたり)
119(こころ)(いろ)真澄(ますみぞら)
120北極(ほつきよく)星座(せいざ)安臥(あんぐわ)して
121北斗(ほくと)(ほし)取巻(とりま)かれ
122七剣星(しちけんせい)酷似(こくじ)せる
123(なまり)(ふで)()ぎすまし
124千代(ちよ)(つた)ふる万年筆(まんねんひつ)
125ペンペンだらりと()()つる
126手具脛(てぐすね)()いて松村(まつむらし)
127(ただ)一言(ひとこと)()らさじと
128(みみ)(そばだ)(いき)こらし
129(かみ)のまにまに(しる)()
130あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
131御霊(みたま)(さち)はひましまして
132二十四巻(にじふしくわん)物語(ものがたり)
133いと(すむ)やかに()(をは)
134世人(よびと)(かみ)大道(おほみち)
135(すく)(しをり)とならせかし
136天地(あめつち)四方(よも)大神(おほかみ)
137御前(みまへ)(いの)(たてまつ)る。
138 海中(わだなか)()かべる錫蘭島(セイロンたう)は、139(むかし)はシロの(しま)()ひけり。140バラモン(けう)鬼熊別(おにくまわけ)部下(ぶか)(つか)へし雉子(きぎす)()(をとこ)141世才(せさい)()けた(ところ)より、142巧言令色(かうげんれいしよく)(かぎ)りを(つく)し、143鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)(うま)()()り、144夫婦(ふうふ)(おぼ)芽出度(めでた)く、145(つい)には抜擢(ばつてき)されてバラモン(けう)宣伝使(せんでんし)となり、146()友彦(ともひこ)(あらた)められたり。147得意(とくい)(とき)()()るは小人(せうじん)(つね)148友彦(ともひこ)何時(いつ)しか野心(やしん)()()()だし、149追々(おひおひ)露骨(ろこつ)となりて、150夫婦(ふうふ)掌中(しやうちう)(たま)()(いつくし)一人娘(ひとりむすめ)小糸姫(こいとひめ)()をつけたり。151友彦(ともひこ)(こころ)(うち)は、152夫婦(ふうふ)最愛(さいあい)(むすめ)さへ(わが)()()らば、153鬼熊別(おにくまわけ)(あと)(おそ)ひ、154天晴(あつぱ)れバラモン(けう)副棟梁(ふくとうりやう)155あわよくば鬼雲彦(おにくもひこ)地位(ちゐ)(うば)ひ、156野心(やしん)(みた)さむと昼夜(ちうや)間断(かんだん)なく心慮(しんりよ)をめぐらし()たりける。
157
158 鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)はエデン(がは)(わた)り、159対岸(たいがん)小高(こだか)(をか)(のぼ)り、160数多(あまた)従臣(じうしん)(とも)花見(はなみ)(えん)(もよほ)し、161(さけ)()(つぶ)れ、162(した)(まは)らぬ千鳥足(ちどりあし)163(をど)(くる)ひつ天下(てんか)(はる)独占(どくせん)せし心地(ここち)して、164意気(いき)揚々(やうやう)と、165(ふたた)びエデンの(かは)(わた)此方(こなた)(むか)つて(かへ)()る。166鬼熊別(おにくまわけ)酩酊(めいてい)(はなは)だしく、167船中(せんちう)にて()()(あし)()みならし(をど)(くる)悪酒(わるざけ)の、168無暗(むやみ)鉄拳(てつけん)振廻(ふりまは)し、169あたり(かま)はず従臣(じうしん)(なぐ)りつけて(きよう)がり()たりしが、170一人(ひとり)従臣(じうしん)鬼熊別(おにくまわけ)鉄拳(てつけん)()けむと、171周章狼狽(あわてふため)()(まは)(はづ)みに、172船端(ふなばた)()てる今年(こんねん)十五才(じふごさい)小糸姫(こいとひめ)身体(からだ)衝突(しようとつ)せし途端(とたん)173小糸姫(こいとひめ)は『アツ』と一声(ひとこゑ)174渦巻(うづまき)(なみ)()()み、175後白波(あとしらなみ)となりにける。
176 鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)(はじ)船中(せんちう)人々(ひとびと)は、177(はじ)めて(ゑひ)()め『アレヨアレヨ』と立騒(たちさわ)げども、178小糸姫(こいとひめ)姿(すがた)()えず、179(せま)船中(せんちう)右往左往(うわうさわう)狼狽(うろた)へまはる。180(この)(とき)()(をど)らして赤裸(まつぱだか)(まま)181河中(かちう)()()んだ二人(ふたり)(をとこ)あり。182一人(ひとり)小糸姫(こいとひめ)衝突(しようとつ)した三助(さんすけ)183一人(ひとり)友彦(ともひこ)なりき。184友彦(ともひこ)水練(すゐれん)(めう)()185()きつ(しづ)みつ、186(ひめ)行方(ゆくへ)(あし)もて(さぐ)(さぐ)り、187立泳(たちおよ)ぎしながら(なが)()く。188(やうや)(ひめ)姿(すがた)をみとめたる(とき)は、189(すで)十数丁(じふすうちやう)下流(しもて)なりき。190友彦(ともひこ)小糸姫(こいとひめ)小脇(こわき)(かか)()み、191河辺(かはべり)(から)うじて()(のぼ)り、192(みづ)()かせ、193種々雑多(しゆじゆざつた)()(つく)し、194(やうや)くにして蘇生(そせい)せしめ、195意気(いき)揚々(やうやう)として鬼熊別(おにくまわけ)(やかた)立帰(たちかへ)りたり。
196 ()れより(さき)197鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)数多(あまた)人数(にんず)()(あつ)め、198小糸姫(こいとひめ)(おちい)りし(かは)()(ちから)(かぎ)りに捜索(そうさく)し、199到底(たうてい)絶望(ぜつばう)(あきら)め、200(わが)()立帰(たちかへ)り、201夫婦(ふうふ)(たがひ)(わが)()不運(ふうん)(なげ)(かな)しみ、202(なみだ)()るる(をり)しも、203友彦(ともひこ)小糸姫(こいとひめ)(せな)()ひ、204門番(もんばん)(おく)られ、205得意(とくい)(いろ)満面(まんめん)(ただよ)はし、206揚々(やうやう)として()(きた)る。207鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)(この)(てい)()驚喜(きやうき)し、
208『ヤア小糸姫(こいとひめ)209無事(ぶじ)なりしか、210如何(どう)してマアあの激流(げきりう)生命(いのち)(たす)かりしか』
211 蜈蚣姫(むかでひめ)は、
212『アヽ(むすめ)213よく(かへ)つて()れた。214()れと()ふも、215(まつた)大自在天(だいじざいてん)(さま)のお(めぐみ)だ。216アヽ有難(ありがた)有難(ありがた)い。217………おやぢさま、218どうぞモウ()れからは(わたし)何時(いつ)()(とほ)り、219大酒(ふかざけ)()めて(くだ)さい。220(さけ)(たた)りでコンナ心配(しんぱい)をしたのも、221(まつた)大自在天(だいじざいてん)(さま)のお気付(きづ)けであらう……生命(いのち)(おや)大神様(おほかみさま)……』
222()(しづ)む。223友彦(ともひこ)怪訝(けげん)顔付(かほつ)きにて、
224『モシモシお(ぢやう)さま、225チツト貴女(あなた)(なん)とか仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。226神様(かみさま)神様(かみさま)だが生命(いのち)(おや)(たれ)御座(ござ)いましたかなア』
227『お(とう)さま、228(かあ)さま、229(わたし)(すで)縡切(ことぎ)れて()りましたのよ。230そこへ(この)友彦(ともひこ)生命(いのち)(まと)にして(わたし)(すく)つて()れました。231沢山(たくさん)家来(けらい)はあつても、232(わたし)生命(いのち)がけになつて(たす)けて()れた(もの)友彦(ともひこ)一人(ひとり)233生命(いのち)(おや)友彦(ともひこ)御座(ござ)います。234どうぞ()めてやつて(くだ)さいませ』
235 夫婦(ふうふ)一度(いちど)友彦(ともひこ)(かほ)(ながめ)236顔色(がんしよく)(やは)らげ、
237『ヤアお(まへ)常々(つねづね)から()()いた(をとこ)だと(おも)つて抜擢(ばつてき)して宣伝使(せんでんし)(めい)じたが、238わしの()(にら)んだ(こと)はチツトも(ちが)はぬ。239(まへ)ばつかりだよ。240これだけ沢山(たくさん)()つてもマサカの(とき)()()(やつ)一人(ひとり)()りはせぬ。241ようマア(はたら)いて()れた。242第一番(だいいちばん)手柄者(てがらもの)だ』
243 友彦(ともひこ)()たり(がほ)
244『これしきの(こと)にお()めの言葉(ことば)(いただ)きまして(じつ)汗顔(かんがん)(いた)りで御座(ござ)います。245(いま)(うけたま)はれば貴方(あなた)(さま)は、246これだけ沢山(たくさん)家来(けらい)があつても、247マサカの(とき)()()(やつ)()いと(あふ)せられましたが、248第一(だいいち)バラモン(けう)幹部(かんぶ)役員(やくゐん)(わか)らぬからで御座(ござ)いますよ。249神様(かみさま)のお(みち)看板(かんばん)250自分(じぶん)出世(しゆつせ)することのみを(かんが)へて()連中(れんちう)ばかりで、251自分(じぶん)より(まさ)つた(もの)(あら)はれると、252(なん)とか(かん)とか(まを)して物言(ものい)ひを()け、253(あたま)(おさ)へようとするものですから何程(なにほど)立派(りつぱ)なバラモン(けう)でも、254(まこと)神柱(かむばしら)(みな)()げて(しま)ひます。255何時(いつ)までも()持切(もちき)りにさせぬと神様(かみさま)(あふ)せられるのに、256(いま)幹部(かんぶ)何時(いつ)までも(たか)(ところ)(あが)つて権利(けんり)掌握(しやうあく)しようと(おも)卑劣(けち)(こころ)がありますから、257至誠(まこと)(もの)(すこ)()()ひさうな人物(じんぶつ)(みんな)圧迫(あつぱく)(くは)排斥(はいせき)(いた)します(ゆゑ)258何時(いつ)まで()つても幹部(かんぶ)改造(かいざう)をするか、259幹部連(かんぶれん)がモウ(ちつ)神心(かみごころ)になり、260(こころ)立替(たてかへ)立直(たてなほ)しを()つて()れぬ(こと)には駄目(だめ)です。261何程(なにほど)(てん)日月(じつげつ)(かがや)くとも、262途中(とちう)黒雲(くろくも)(ため)(ひかり)地上(ちじやう)(とど)きませぬ。263(わたし)(やう)立派(りつぱ)至誠(まこと)(もの)(かく)れて()つても、264人格(じんかく)(みと)める()もなし、265(また)(みと)めても自分(じぶん)地位(ちゐ)(まも)(ため)(かへつ)排斥(はいせき)(いた)すのですから立派(りつぱ)(もの)(みんな)(かく)れて(しま)ひ、266(かす)ばかりが浮上(うきあが)つて()るのです。267石混(いしまぜ)りの塵芥(ごもく)水溜(みづたま)りへ一掴(ひとつか)()かして()ると、268(おも)みのある充実(じうじつ)した(いし)(たちま)(みづ)(そこ)(しづ)み、269落着(おちつ)(はら)つて()りますが、270塵芥(ごもく)はパツと(うへ)()いて、271(かぜ)のまにまに浮動(ふどう)して()(やう)なものです。272(いね)()(みの)るに(したが)(かしら)()(うつ)むく(やう)に、273充実(じうじつ)した至誠(まこと)(もの)(みな)謙遜(けんそん)(とく)(まも)り、274()()らぬ稲穂(いなほ)はツンとして(そら)()いて()(やう)なもの、275()れでは到底(たうてい)バラモン(けう)発達(はつたつ)(いた)しますまい。276(しか)(なが)ら、277貴方(あなた)(さま)賢明(けんめい)なお(かた)で、278この友彦(ともひこ)実力(じつりよく)をお(みと)(あそ)ばし、279土塊(どくわい)(ごと)幹部(かんぶ)より取扱(とりあつか)はれて()雉子(きぎす)重用(ぢゆうよう)して宣伝使(せんでんし)にして(くだ)さつたのは、280(じつ)天晴(あつぱ)れな御鑑識(ごかんしき)281友彦(ともひこ)も……あゝ(わし)(なん)とした立派(りつぱ)主人(しゆじん)()つただらう。282(わたし)(やう)幸福者(かうふくもの)(また)世界(せかい)にあるまい……と(ぞん)じます。283聖人(せいじん)()にありとか(まを)しまして、284(まこと)貴方(あなた)御力(おちから)になり、285(をしへ)(あと)()(やう)人物(じんぶつ)……()はば御養子(ごやうし)になると()人物(じんぶつ)は、286幹部(かんぶ)()れだけ沢山(たくさん)287表面(へうめん)立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)はあつても、288滅多(めつた)御座(ござ)いますまい。289余程(よほど)御養子(ごやうし)御選択(ごせんたく)は……如才(じよさい)御座(ござ)いますまいが……御注意(ごちゆうい)(はら)つて(いただ)きたいもので御座(ござ)います。290何程(なにほど)容貌(きれう)(わる)くても(たましひ)さへ立派(りつぱ)であれば鬼熊別(おにくまわけ)副棟梁(ふくとうりやう)(さま)(あと)()げまする』
291調子(てうし)()つて勝手(かつて)理屈(りくつ)(なら)()得意(とくい)がつて()る。292鬼熊別(おにくまわけ)はニコニコし(なが)ら、
293『オイ友彦(ともひこ)……お(まへ)(かほ)にも似合(にあ)はぬ高遠(かうゑん)理想(りさう)(いだ)いて()(もの)だ。294吾々(われわれ)とても(おな)(こと)295中々(なかなか)棟梁(とうりやう)家来(けらい)()られないものだ。296たまたま(ちから)にならうと(おも)人物(じんぶつ)(あら)はれると、297(たちま)(くも)邪魔(じやま)して(ひかり)(かく)さうとする。298(いま)幹部(かんぶ)だつて(その)(とほ)りだ。299大自在天(だいじざいてん)(さま)(をしへ)(てら)して()れば、300一人(ひとり)として及第(きふだい)する(もの)はあるまい。301(みみ)(ふさ)ぎ、302()(ふさ)ぎ、303(くち)をつまへて、304神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)して()ればこそ、305得意(とくい)になつて幹部面(かんぶづら)をさらして()るのだが……アヽ()れを(おも)へば(ひと)使(つか)ふと()(こと)難事中(なんじちう)最大難事(さいだいなんじ)だ。306(かた)(かいな)もメキメキする(やう)だ。307どうしてこれだけ身勝手(みがつて)没分暁漢(わからずや)ばかりが、308バラモン(けう)幹部(かんぶ)には(あつま)つて()るのだろうなア』
309吐息(といき)()らすを蜈蚣姫(むかでひめ)は、
310(しかばね)()(ところ)には(わし)(あつ)まり、311美味(びみ)果物(くだもの)には害虫(がいちう)密集(みつしふ)するとやら、312(あり)(あま)きに(つど)(ごと)く、313()(ところ)へは(わる)(もの)来集(たか)つて()るものです。314これからは今迄(いままで)(やう)和光同塵式(わくわうどうぢんしき)根本(こんぽん)革正(かくせい)して、315変性男子的(へんじやうなんしてき)にパキパキと率直(そつちよく)に、316厳粛(げんしゆく)にやらねば、317何時(いつ)まで()つてもバラモン(けう)駄目(だめ)御座(ござ)いますよ。318それだから(わたし)貴方(あなた)推薦(すいせん)して雉子(きぎす)宣伝使(せんでんし)にしたのぢやありませぬか。319(わたし)雉子(きぎす)推薦(すいせん)した(とき)320貴方(あなた)(なん)()はれました。321彼奴(あいつ)()かけによらぬ()()(をとこ)だが、322アンナ(をとこ)推薦(すいせん)すると幹部(かんぶ)連中(れんちう)()()らぬから、323雉子(きぎす)人物(じんぶつ)(みと)めてゐるが、324どうも仕方(しかた)がない」……と優柔不断(いうじうふだん)(こと)仰有(おつしや)つたぢや御座(ござ)いませぬか。325あの(とき)御採用(ごさいよう)になつたればこそ、326幹部(かんぶ)として今日(けふ)花見(はなみ)(えん)同行(どうかう)(いた)したお(かげ)で、327一人娘(ひとりむすめ)生命(いのち)(ひろ)うたではありませぬか、328雉子(きぎす)雉子(きぎす)(まま)()いてあつたなれば、329どうして今日(けふ)花見(はなみ)(とも)出来(でき)ませう。330さうすれば忠義(ちうぎ)発揮(はつき)する機会(きくわい)もなし、331()()可愛(かあい)(むすめ)見殺(みごろ)しにせねばならなかつたでは()りませぬか。332チト(これ)から(しつ)かりやつて(くだ)さらぬと駄目(だめ)ですよ』
333『さうだなア、334副棟梁(ふくとうりやう)(ため)には何時(なんどき)でも生命(いのち)をあげますとか粉骨砕身(ふんこつさいしん)犬馬(けんば)(らう)(をし)まぬとか()つて()幹部(かんぶ)連中(れんちう)のあの(ざま)335(おれ)(じつ)(あき)れて(もの)()はれないのだ』
336 友彦(ともひこ)得意顔(とくいがほ)にて、
337『「()びる(ほど)(つち)()をつく(やなぎ)かな」……とか()ひまして、338()()ちて()るもの(ほど)立派(りつぱ)(もの)御座(ござ)いまする。339立派(りつぱ)人格者(じんかくしや)御座(ござ)います。340()()らぬ(かぜ)もあらうに(やなぎ)かな」……といふ……幹部(かんぶ)が………精神(せいしん)になりさへすれば、341バラモン(けう)旭日昇天(きよくじつしようてん)(いきほひ)天下(てんか)無敵(むてき)勢力(せいりよく)(くは)はりまする。342されど利己主義(われよし)猜疑心(さいぎしん)(ふか)(あたま)(おさ)への連中(れんちう)(ばか)りが幹部(かんぶ)組織(そしき)して()つては、343到底(たうてい)発展(はつてん)見込(みこ)みは()りませぬ。344現状(げんじやう)維持(ゐぢ)出来(でき)ればまだしも上等(じやうとう)345日向(ひなた)(こほり)(やう)に、346()()(おとろ)へるは明瞭(めいれう)なる事実(じじつ)御座(ござ)いませう。347どうぞ副棟梁(ふくとうりやう)(さま)348今後(こんご)情実(じやうじつ)(からま)れず、349適材(てきざい)適所(てきしよ)抜擢(ばつてき)して、350神業(しんげふ)第一(だいいち)御心得(おこころえ)(あそ)ばして忌憚(きたん)なく正邪(せいじや)賢愚(けんぐ)御立別(おたてわ)けの(うへ)351御採用(ごさいよう)あらむ(こと)懇願(こんぐわん)(いた)します』
352 小糸姫(こいとひめ)は、
353『お(とう)さま、354(わたし)大勢(おほぜい)役員(やくゐん)信者(しんじや)(なか)でも、355本当(ほんたう)(えら)いのは友彦(ともひこ)一人(ひとり)だと(おも)ひますワ』
356 蜈蚣姫(むかでひめ)は、
357『オホヽヽヽ、358子供(こども)()ふものは正直(しやうぢき)なものだナア。359実際(じつさい)()()うたのは友彦(ともひこ)だけだワ。360ナアモシ鬼熊別(おにくまわけ)(さま)
361 鬼熊別(おにくまわけ)(うつ)むいて(あた)(さはり)のない(やう)返辞(へんじ)で『ウウン』と()つて()る。362蜈蚣姫(むかでひめ)(をつと)(むか)ひ、
363今日(けふ)花見(はなみ)(えん)沢山(たくさん)なお(さけ)幹部(かんぶ)一同(いちどう)(いただ)き、364まだ充分(じうぶん)(ゑひ)()めず、365(この)(うへ)(よろこ)びの酒宴(しゆえん)(もよほ)すのは(めう)なものだが、366(しか)(なが)大切(たいせつ)(むすめ)生命(いのち)(ひろ)つたのだから、367神様(かみさま)御礼(おれい)のお(まつり)をなし、368手軽(てがる)直会(なほらひ)(えん)でも(ひら)いて、369友彦(ともひこ)表彰会(へうしやうくわい)(おこな)はねばなりますまい。370どうお(かんが)へなさいますか』
371(をつと)(かほ)(のぞ)()む。
372『アヽさうだナア。373(なん)()つても神様(かみさま)御礼(おれい)祭典(さいてん)(おこな)ひ、374(つぎ)友彦(ともひこ)手柄(てがら)表彰(へうしやう)せなくてはなるまい。375賞罰(しやうばつ)(あきら)かにせないと、376今後(こんご)(ため)にならぬから……ヤア片彦(かたひこ)377釘彦(くぎひこ)両人(りやうにん)378祭典(さいてん)用意(ようい)(とり)かかり、379(つい)直会(なほらひ)(えん)(ひら)くべく準備(じゆんび)して()れ。380そして今日(けふ)顕恩郷(けんおんきやう)在住(ざいぢゆう)信徒(しんと)381老若男女(らうにやくなんによ)()はず、382(のこ)らず八尋殿(やひろどの)(あつ)めて酒宴(しゆえん)(せき)(れつ)せしめるのだから……』
383 (かた)384(くぎ)(りやう)幹部(かんぶ)(この)一言(ひとこと)に、385(また)(さけ)かと雀躍(こをど)りし(なが)ら『ハイハイ』と(ふた)返事(へんじ)(この)()立出(たちい)で、386部下(ぶか)一般(いつぱん)通達(つうたつ)したりけり。
387 祭典(さいてん)(めい)(ごと)(おこな)はれたり。388御祝(おいは)ひを()ね、389信者(しんじや)立錐(りつすゐ)余地(よち)なきまでに、390八尋殿(やひろどの)(あふ)()した。391祭典(さいてん)無事(ぶじ)()み、392直会(なほらひ)神酒(みき)子供(こども)(はし)(いた)るまで万遍(まんべん)なく(くば)られたり。393小糸姫(こいとひめ)無事(ぶじ)安全(あんぜん)(いは)(こゑ)394殿内(でんない)(ゆる)(ばか)りなりき。395小高(こだか)壇上(だんじやう)(あら)はれたのは鬼雲彦(おにくもひこ)棟梁(とうりやう)なり。396鬼雲彦(おにくもひこ)一同(いちどう)見廻(みまは)し、
397『バラモン(けう)幹部(かんぶ)(はじ)信者(しんじや)一同(いちどう)(とも)小糸姫(こいとひめ)無事(ぶじ)安全(あんぜん)(しゆく)(たてまつ)り、398鬼熊別(おにくまわけ)御夫婦(ごふうふ)御幸運(ごかううん)をお(よろこ)(いた)します。399つきましては(わたくし)として(すこ)感想(かんさう)()べたいと(おも)ひます。400大勢(おほぜい)(なか)には(すこ)耳障(みみざは)りの(かた)もお()りなさるかも()れませぬが、401バラモン(けう)教主(けうしゆ)(けん)棟梁(とうりやう)としては()むを()ない立場(たちば)御座(ござ)いまするから、402其処(そこ)(ところ)(よろ)しく御諒解(ごりやうかい)(ねが)つて()きます。403(そもそ)多士済々(たしさいさい)たる本教(ほんけう)は、404開設(かいせつ)以来(いらい)旭日昇天(きよくじつしようてん)(いきほひ)御座(ござ)います。405これと()ふのも(まつた)幹部(かんぶ)(はじ)信者(しんじや)一同(いちどう)が、406()るに()られぬ困難(こんなん)(たたか)ひ、407所在(あらゆる)困苦(こんく)をなして、408(しの)びに(しの)びて心魂(しんこん)(きた)へて()結果(けつくわ)(わたくし)(しん)じます。409常世(とこよ)(くに)より渡来(とらい)して、410埃及(エジプト)のイホの(みやこ)(はじ)めて(をしへ)(ひら)いた(とき)411コーカス(ざん)根拠(こんきよ)(かま)へたる三五教(あななひけう)(ため)種々雑多(しゆじゆざつた)妨害(ばうがい)()け、412一時(いちじ)孤城落日(こじやうらくじつ)破目(はめ)(おちい)つた(ところ)413皆様(みなさま)はよく耐忍(たへしの)び、414(やうや)くにしてバラモン(けう)(ふたた)以前(いぜん)(まさ)隆盛(りうせい)(ゐき)(たつ)しました。415(しか)(なが)艱難(かんなん)極度(きよくど)(たつ)した(とき)(さか)えの(たね)()くものです。416今日(こんにち)のバラモン(けう)(やや)小康(せうかう)()417日々(にちにち)隆盛(りうせい)(おもむ)くに()れて人心(じんしん)弛緩(ちくわん)し、418()らず()らずの()倦怠(けんたい)(こころ)(しやう)じ、419今日(こんにち)では最初(さいしよ)熱烈(ねつれつ)なる忠誠(ちうせい)なる皆様(みなさま)精神(せいしん)何処(どこ)へやら喪失(さうしつ)し、420幹部(かんぶ)自己(じこ)(まも)(ため)高遠(かうゑん)達識(たつしき)()排除(はいじよ)し、421阿諛諂侫(あゆてんねい)()重用(ぢゆうよう)し、422各自(めいめい)(きそ)うて部下(ぶか)(つく)り、423(たがひ)権力(けんりよく)(あらそ)(ごと)傾向(けいかう)仄見(ほのみ)えて(まゐ)りましたのは、424本教(ほんけう)(ため)(まこと)(かな)しむべき現象(げんしやう)()はねばなりませぬ。425(げん)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)娘子(むすめご)小糸姫(こいとひめ)(さま)遭難(さうなん)(たい)しても、426肝腎(かんじん)幹部(かんぶ)袖手傍観(しうしゆばうくわん)()(くだ)すの(すべ)()らず、427(じつ)無誠意(むせいい)428無能力(むのうりよく)極端(きよくたん)発揮(はつき)したでは()りませぬか、429斯様(かやう)(こと)如何(どう)して神聖(しんせい)なる御神業(ごしんげふ)奉仕(ほうし)する(こと)出来(でき)ませう。430(かみ)(つか)(まつ)るにあらずして、431利己心(りこしん)といふ欲心(よくしん)奉仕(ほうし)するのだとは()はれても、432弁解(べんかい)()はありますまい。433今日(こんにち)はバラモン(けう)(たい)して国家(こくか)興亡(こうばう)(さかひ)御座(ござ)います。434教主(けうしゆ)として(わたくし)(まを)(こと)肯定(こうてい)出来(でき)ない方々(かたがた)御遠慮(ごゑんりよ)(およ)びませぬ。435ドシドシと脱会(だつくわい)(くだ)さつても、436(すこ)しも痛痒(つうよう)(かん)じませぬ。437(いな)(むし)好都合(かうつがふ)だと確信(かくしん)(いた)して()ります。438本当(ほんたう)大神(おほかみ)御心(みこころ)(わか)つた(かた)一二人(いちににん)あれば沢山(たくさん)です。439それを(たね)として立派(りつぱ)(をしへ)(おこな)はれませう。440(しか)(なが)肝腎(かんじん)幹部(かんぶ)たる(もの)441神意(しんい)誤解(ごかい)し、442利己主義(りこしゆぎ)強持(きやうぢ)するに(おい)ては、443一匹(いつぴき)(うま)(くる)へば千匹(せんびき)(うま)(くる)(たとへ)(ごと)く、444総崩(そうくづ)れになつて(しま)ふものです。445それだから幹部(かんぶ)改心(かいしん)()第一等(だいいつとう)であります。446(みなもと)(にご)つて下流(かりう)()むと()道理(だうり)御座(ござ)いませぬ。447どうぞ(この)(さい)(みな)さまは(まを)すに(およ)ばず、448幹部(かんぶ)地位(ちゐ)()方々(かたがた)から誠心誠意(せいしんせいい)449神業(しんげふ)(ため)寛容(くわんよう)(とく)(やしな)ひ、450清濁(せいだく)(あは)()(おのれ)()(ひと)(ゆる)大人(たいじん)態度(たいど)になつて(いただ)きたいものです』
451諄々(じゆんじゆん)として鋭鋒(えいほう)幹部(かんぶ)面々(めんめん)()()けたり。452幹部(かんぶ)連中(れんちう)教主(けうしゆ)鬼雲彦(おにくもひこ)(この)教示(けうじ)(たい)し、453(あま)(こころよ)(かん)ぜざれども、454一々(いちいち)(むね)()さるる(この)箴言(しんげん)に、455(かへ)言葉(ことば)もなく(ただ)冷然(れいぜん)として、456(そら)()(かぜ)()(なが)()(もの)(すくな)くなかりける。
457 (この)(とき)得意(とくい)(はな)(うごめ)かして壇上(だんじやう)大手(おほて)()(なが)ら、458()をキヨロキヨロ廻転(くわいてん)させ、459一同(いちどう)(かほ)(なが)めつつ(あら)はれた一人(ひとり)宣伝使(せんでんし)は、460小糸姫(こいとひめ)生命(いのち)(すく)うた友彦(ともひこ)なりき。461拍手(はくしゆ)(こゑ)急霰(きふさん)(ごと)く、462(ぢやう)四隅(しぐう)より(ひび)(わた)りぬ。463友彦(ともひこ)満場(まんぢやう)(むか)(かる)一礼(いちれい)し、464(やや)()()になりて(あか)(はな)をピコヅかせ(なが)ら、465無細工(ぶさいく)()げた出歯(でば)をニユツと()()し、466(いや)らしき(ゑみ)(たた)へて握拳(にぎりこぶし)(かた)め、467(テーブル)(ひと)つトンと()ち、468(らい)(ごと)蛮声(ばんせい)()()げ『(みな)さま』と一喝(いつかつ)し、
469(わたくし)只今(ただいま)教主様(けうしゆさま)御演説(ごえんぜつ)につき感慨無量(かんがいむりやう)御座(ござ)います。470皆様(みなさま)大多数(だいたすう)()かせられましても、471敬神(けいしん)472愛教(あいけう)473愛民(あいみん)教主(けうしゆ)御心中(ごしんちう)に、474(さぞ)嗚咽(をえつ)感激(かんげき)(あそ)ばした(こと)確信(かくしん)(いた)します。475我々(われわれ)大慈(だいじ)大悲(だいひ)大神様(おほかみさま)(まを)すも(さら)なり、476教主様(けうしゆさま)仁慈無限(じんじむげん)御精神(ごせいしん)(むく)(たてまつ)り、477副教主(ふくけうしゆ)として、478重任(ぢゆうにん)地位(ちゐ)()かせ(たま)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)(をしへ)(おも)(たま)御熱情(ごねつじやう)(たい)し、479どこ(まで)粉骨砕身(ふんこつさいしん)480(もつ)微力(びりよく)()らむ(かぎ)りを(つく)さねばならないではありませぬか。481(しか)るに今日(こんにち)幹部(かんぶ)偸安姑息(とうあんこそく)482大事(だいじ)(さい)して躊躇(ちうちよ)逡巡(しゆんじゆん)483なす(ところ)()らずと()為体(ていたらく)では御座(ござ)いますまいか』
484 聴衆(ちやうしう)(なか)より『賛成(さんせい)々々(さんせい)』と()()(もの)四隅(しぐう)より(あら)はれ()たりぬ。485(この)声援(せいゑん)(ちから)()友彦(ともひこ)益々(ますます)語気(ごき)(つよ)め、
486(げん)にエデン(がは)小糸姫(こいとひめ)(さま)遭難(さうなん)(たい)し、487幹部(かんぶ)御歴々(おれきれき)如何(いか)なる活動(くわつどう)をなされましたか、488幹部(かんぶ)総統(そうとう)たる片彦(かたひこ)489釘彦(くぎひこ)御両人(ごりやうにん)は、490(われ)より以下(いか)者共(ものども)(はや)河中(かちう)()()御救(おすく)(いた)せ……と()(やう)御態度(ごたいど)でいらつしやる。491(つぎ)幹部(かんぶ)(また)(つぎ)へ、492(また)(つぎ)へ、493我々(われわれ)幹部(かんぶ)にあつては(ひと)統率(とうそつ)すれば()い、494命令権(めいれいけん)()つて()るのだから、495直接(ちよくせつ)活動(くわつどう)すれば幹部(かんぶ)沽券(こけん)(きず)つけると()はぬばかり、496(つぎ)から(つぎ)()()せに(あぶ)ない(こと)()りつけ()ひ、497(ただ)一人(ひとり)として()(てい)しお(すく)ひしようとする方々(かたがた)はなかつたぢやありませぬか。498日頃(ひごろ)のお言葉(ことば)()ず、499(じつ)冷淡(れいたん)(きは)まる振舞(ふるまひ)500斯様(かやう)(こと)でどうして神業(しんげふ)発展(はつてん)(いた)しませうか。501我々(われわれ)(じつ)遺憾(ゐかん)(ぞん)じます』
502(また)もや(たく)(たた)く。503場内(ぢやうない)は『賛成(さんせい)々々(さんせい)』『(もつと)(もつと)も』の(こゑ)()るる(ばか)りに(ひび)(わた)り、504(なか)には両手(りやうて)をあげて(をど)(もの)さへ(あら)はれた。505友彦(ともひこ)(なほ)()()ぎ、
506(みな)さま、507今日(こんにち)はバラモン(けう)立替(たてかへ)時機(じき)ではありますまいか。508上流(じやうりう)(にご)つて下流(かりう)()むと()道理(だうり)はありますまい。509舎身的(しやしんてき)活動(くわつどう)をなす至誠(しせい)()……(たと)へて()れば九死一生(きうしいつしやう)(ひと)危難(きなん)(さい)し、510生命(いのち)(まと)(たす)けに()(だけ)真心(まごころ)()つた真人(しんじん)をして、511幹部(かんぶ)総統(そうとう)たらしめなば、512名実(めいじつ)相伴(あひとも)なふ(ところ)立派(りつぱ)なるバラモン(けう)(きづ)()げられ、513神政(しんせい)成就(じやうじゆ)大望(たいもう)容易(ようい)(はこ)ぶでせう。514(そもそ)幹部(かんぶ)たるものは重大(ぢゆうだい)なる責任(せきにん)御座(ござ)いますから、515自己(じこ)安全(あんぜん)のみに焦慮(せうりよ)する(ごと)人物(じんぶつ)は、516この(さい)信者(しんじや)多数(たすう)団結力(だんけつりよく)(もつ)て、517根本(こんぽん)改革(かいかく)(いた)さねば、518(とて)完全(くわんぜん)なる(をしへ)()ちますまい。519何卒(どうぞ)皆様(みなさま)御熟考(ごじゆくかう)(わづら)はす次第(しだい)御座(ござ)います』
520(むす)んで降壇(かうだん)せむとするや、521片彦(かたひこ)怒気(どき)(ふく)み、522(こぶし)(かた)め、523壇上(だんじやう)(あら)はれた。524参集者(さんしふしや)(なか)より『()がれ』『退却(たいきやく)』『無腸漢(むちやうかん)』『利己主義(りこしゆぎ)張本人(ちやうほんにん)』などと、525(しき)りに罵声(ばせい)()びせかけ、526喧々囂々(けんけんがうがう)(かなへ)()くが(ごと)く、527片彦(かたひこ)壇上(だんじやう)立往生(たちわうじやう)(まま)一言(ひとこと)(はつ)()ず、528(くちびる)をビリつかせて()る。529鬼雲彦(おにくもひこ)530鬼熊別(おにくまわけ)(りやう)夫婦(ふうふ)信者(しんじや)一同(いちどう)(かる)一礼(いちれい)し、531(やかた)悠々(いういう)として立帰(たちかへ)る。532友彦(ともひこ)(つづ)いて退場(たいぢやう)する。
533 一同(いちどう)片彦(かたひこ)壇場(だんぢやう)(のこ)し、534(さき)(あらそ)うて各々(おのおの)住家(すみか)(かへ)りゆく。535あとには幹部(かんぶ)錚々(さうさう)たる(もの)(あは)せて十二人(じふににん)何事(なにごと)かヒソヒソと(はなし)(ふけ)りゐる。
536 (たちま)(きこ)ゆる(くれ)(かね)537諸行無常(しよぎやうむじやう)()(ひび)き、538八尋殿(やひろど)屋根(やね)()まつた二羽(には)(からす)539大口(おほぐち)あけて『アホーアホー』と()きたてゐる。
540大正一一・六・一四 旧五・一九 松村真澄録)
541(昭和一〇・三・八 於吉野丸船中 王仁校正)
   
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