霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 (ゆめ)王者(わうじや)〔七四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻 篇:第3篇 危機一髪 よみ:ききいっぱつ
章:第11章 夢の王者 よみ:ゆめのおうじゃ 通し章番号:741
口述日:1922(大正11)年07月03日(旧閏05月09日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
黄竜姫の奥殿では、蜈蚣姫と小糸姫(黄竜姫)が久しぶりの親子の対面を果たしていた。小糸姫は、今は五十子姫、梅子姫の感化によって神素盞嗚尊の教えを奉じて三五教に帰依していることを明かした。
蜈蚣姫はこの物語に驚いたが、友彦のことを許すかどうかと娘に尋ねた。案に相違して小糸姫は友彦をずっと想っていたと明かし、友彦を城内に迎えるとまた縁りを戻してしまった。
と思いきや、これは友彦の夢であった。友彦は玉治別らと一緒に城外に逃れて茂みの中で寝てしまっていた。寝返りを打ったとたんに二三間下の岩に墜落して、腰をしたたか打ってしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:180頁 八幡書店版:第4輯 678頁 修補版: 校定版:185頁 普及版:84頁 初版: ページ備考:
001 黄竜姫(わうりようひめ)奥殿(おくでん)には、002蜈蚣姫(むかでひめ)(ひと)(じま)女王(ぢよわう)なる小糸姫(こいとひめ)二人(ふたり)端坐(たんざ)して、003親娘(おやこ)再会(さいくわい)悲喜劇(ひきげき)(えん)ぜられ()たりける。
004母上様(ははうへさま)005久濶(しばらく)御座(ござ)いました。006ツイ(をさ)(ごころ)前後(ぜんご)区別(くべつ)(わきま)へず、007(いや)しき下僕(しもべ)友彦(ともひこ)(そその)かされ、008御両親様(ごりやうしんさま)()()てて家出(いへで)(いた)しました、009重々(ぢゆうぢゆう)不孝(ふかう)(つみ)010(わび)(まを)(やう)御座(ござ)いませぬ。011何卒(どうぞ)今迄(いままで)(こと)(にく)(やつ)ぢやと思召(おぼしめ)さず、012(ゆる)(くだ)さいませ』
013下坐(げざ)(なほ)つて悔悟(くわいご)()(へう)する。014蜈蚣姫(むかでひめ)(うれ)(なみだ)()(なが)ら、
015(なん)(なん)の、016(しか)りませう。017一時(ひととき)両親(りやうしん)(とも)大変(たいへん)心配(しんぱい)(いた)しまして、018(ほとん)(この)()(いや)になり、019いつそ夫婦(ふうふ)(もの)淵川(ふちかは)へでも()()げて()なうかと(まで)悲観(ひくわん)(ふち)(しづ)みました。020(しか)大慈(だいじ)大悲(だいひ)神様(かみさま)のお(かげ)で、021(さび)しき(かな)しき(こころ)にも一道(いちだう)光明(くわうみやう)(かがや)(はじ)(ふたた)夫婦(ふうふ)(こころ)取直(とりなほ)し、022大自在天(だいじざいてん)(さま)御教(みをしへ)波斯(フサ)(くに)から印度(ツキ)(くに)023自転倒島(おのころじま)まで教線(けうせん)()り、024肺肝(はいかん)(くだ)活動(くわつどう)をして()ましたが、025如何(どう)しても吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)行動(かうどう)大神様(おほかみさま)のお(こころ)()さぬと()え、026する(こと)()(こと)027(いすか)(はし)()(ちが)ひ、028(をつと)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)波斯(フサ)印度(ツキ)との国境(くにざかひ)029テルモン(ざん)山麓(さんろく)(わづか)(をしへ)(その)(ひら)(たま)ひ、030(わたし)自転倒島(おのころじま)()(めぐ)り、031(かぜ)便(たよ)りに其方(そなた)所在(ありか)()()り、032万里(ばんり)波濤(はたう)()えて(やうや)此島(ここ)()きました。033鬼熊別(おにくまわけ)()かれたなら、034(さぞ)(よろこ)びなさる(こと)であらう。035まア立派(りつぱ)()つて(くだ)さつた。036斯様(かやう)(おほ)きな(しま)女王(ぢよわう)となる(まで)には、037随分(ずゐぶん)苦労(くらう)をなさつたでせう』
038『イエイエ、039(すこ)しも苦労(くらう)ナンカ(いた)しませぬ。040何事(なにごと)神様(かみさま)大御心(おほみこころ)にまかせ、041国祖(こくそ)国治立尊(くにはるたちのみこと)御守護(ごしゆご)(あそ)ばす三五(あななひ)(をしへ)(しん)じ、042(みづ)御魂(みたま)大御心(おほみこころ)(こころ)とし、043焦慮(あせ)らず(さわ)がず、044(ひと)(にく)まず(ねた)まず、045(こころ)からの慈愛(じあい)(むね)となし万民(ばんみん)(のぞ)みました。046その(とく)によつて(この)(くに)無事(ぶじ)泰平(たいへい)(をさ)まり果実(くわじつ)よく(みの)り、047(たみ)鼓腹撃壤(こふくげきじやう)048(あたか)顕恩郷(けんおんきやう)(むかし)(やう)御座(ござ)います。049何卒(どうぞ)母上様(ははうへさま)050貴女(あなた)御夫婦(ごふうふ)(とも)今迄(いままで)(こころ)立替(たてかへ)立直(たてなほ)し、051国祖(こくそ)国治立大神(くにはるたちのおほかみ)(さま)大御心(おほみこころ)奉体(ほうたい)し、052(まこと)(ひと)つになつて(くだ)さいませ。053(まこと)ほど(つよ)いものの結構(けつこう)なものは御座(ござ)いませぬ。054如何(いか)なる(てき)(ゆる)すのが神様(かみさま)御心(みこころ)御座(ござ)います』
055『いかにも立派(りつぱ)なお心掛(こころが)け、056さうでなくては結構(けつこう)なお(みち)(ひら)けますまい。057さうしてお前様(まへさま)御用助(ごようだす)けをする(かた)誰方(どなた)御座(ござ)いますか』
058『ハイ、059(じつ)(ところ)060顕恩郷(けんおんきやう)のバラモンの本山(ほんざん)御座(ござ)つた五十子姫(いそこひめ)(さま)061梅子姫(うめこひめ)(さま)062それに()()今子姫(いまこひめ)063宇豆姫(うづひめ)四人(よにん)方々(かたがた)が、064広大無辺(くわうだいむへん)神力(しんりき)(あら)はし、065(その)手柄(てがら)(みんな)(わたし)にお(ゆづ)(くだ)され、066(わたし)(この)(しま)女王(ぢよわう)として(くだ)さつたのです』
067(なに)068あの五十子姫(いそこひめ)069梅子姫(うめこひめ)がソンナ立派(りつぱ)(おこな)ひを(いた)しましたか。070姉妹(きやうだい)八人(はちにん)(まを)(あは)せ、071顕恩城(けんおんじやう)(しの)()り、072大棟梁様(だいとうりやうさま)(うら)をかいて、073メチヤメチヤに(たた)(こは)した悪神(あくがみ)ではありませぬか』
074『あの方々(かたがた)神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)(さま)御娘子(おむすめご)075神様(かみさま)命令(めいれい)()つて顕恩郷(けんおんきやう)下僕(しもべ)となつて、076バラモン(けう)人々(ひとびと)(まこと)(みち)(すく)はむ(ため)に、077天降(あまくだ)(あそ)ばしたので御座(ござ)います。078(けつ)して(わる)(おも)はれてはなりませぬ。079今日(こんにち)(ところ)では、080五十子姫(いそこひめ)(さま)今子姫(いまこひめ)(とも)自転倒島(おのころじま)聖地(せいち)()してお(かへ)りになり、081只今(ただいま)梅子姫(うめこひめ)(さま)082宇豆姫(うづひめ)(とも)(わたし)日夜(にちや)神政(しんせい)補助(ほじよ)指導(しだう)して(くだ)さる、083結構(けつこう)神様(かみさま)(やう)なお(かた)御座(ござ)います。084何卒(どうぞ)母上様(ははうへさま)085一度(いちど)丁寧(ていねい)御礼(おれい)(まを)()げて(くだ)さいませ』
086 蜈蚣姫(むかでひめ)(この)物語(ものがたり)(おどろ)(した)()き、087『ヘーツ』と()つたきり暫時(しばし)言葉(ことば)()でず、088思案(しあん)()(くび)(とき)(うつ)したりける。
089 少時(しばらく)あつて侍女(じぢよ)(はこ)びきたる豆茶(まめちや)(のど)(うるほ)(なが)ら、090蜈蚣姫(むかでひめ)()(つい)で、
091『お前様(まへさま)はそれ()善一筋(ぜんひとすぢ)(みち)(まも)り、092結構(けつこう)女王(ぢよわう)とまで()りなさつた(くらゐ)だから、093今迄(いままで)如何(いか)なる無礼(ぶれい)(くは)へた(もの)でも(ゆる)しませうなア』
094『ハイ、095(ゆる)すの、096(ゆる)さぬのと……左様(さやう)(だい)それた……人間(にんげん)として資格(しかく)()ちませぬ。097何事(なにごと)(みな)神様(かみさま)のお仕組(しぐみ)ですから……』
098仮令(たとへ)友彦(ともひこ)(やう)(をとこ)でも、099(あやま)つて()たならば貴女(あなた)(ゆる)しますか』
100人間(にんげん)(せい)(ぜん)御座(ござ)います。101()(あらた)めさへすれば(もと)大神様(おほかみさま)分霊(わけみたま)102(つみ)(けがれ)御座(ござ)いますまい。103母上様(ははうへさま)友彦(ともひこ)をお(うら)みで御座(ござ)いませうが、104(けつ)して友彦(ともひこ)(わる)いのでは御座(ござ)いませぬ。105(わたし)こそ友彦(ともひこ)(たい)して、106(じつ)()まない(こと)(いた)しました。107神様(かみさま)御神徳(ごしんとく)(いただ)き、108斯様(かやう)結構(けつこう)()(うへ)になつたにつけても、109明暮(あけくれ)(おも)ふのは御両親様(ごりやうしんさま)(こと)110(つぎ)には友彦(ともひこ)(こと)御座(ござ)います。111()ても()きても……アヽ(じつ)()まない(こと)であつた……と(おも)へばうら(はづか)しくて()つても()ても()られない(やう)です。112何卒(どうぞ)一度(いちど)()にかかつてお(わび)(いた)()いもので御座(ござ)います。113それ(ゆゑ)(わたし)貞節(ていせつ)(まも)り、114独身(どくしん)生活(せいくわつ)(つづ)けて()ります』
115(なみだ)(そで)(ぬぐ)ふ。116蜈蚣姫(むかでひめ)はアフンと(ばか)(あき)れかへり、
117(こひ)上下(じやうげ)(へだ)てなしとは、118よくも()つたものだな。119矢張(やは)りお(まへ)さまは友彦(ともひこ)(こひ)しいのですか』
120 小糸姫(こいとひめ)俯向(うつむ)いて無言(むごん)(まま)(なみだ)にかきくれる。
121万々一(まんまんいち)(その)友彦(ともひこ)詐偽師(さぎし)122大泥棒(おほどろばう)123(ひと)(かか)(ぬす)みをする悪党(あくたう)であつたら、124(まへ)さまは如何(どう)しますか』
125『チツトも(かま)ひませぬ。126友彦(ともひこ)さまを悪人(あくにん)にしたのも(みな)(わたし)(つみ)127それなれば尚々(なほなほ)大切(だいじ)にして()げねばなりますまい』
128『ヘエ左様(さやう)ですか』
129(むすめ)(かほ)(いぶ)かしげに()看守(みまも)る。
130 (この)(とき)一人(ひとり)侍女(じぢよ)(あわただ)しく(この)()(あら)はれ(きた)り、
131女王様(ぢよわうさま)申上(まをしあ)げます。132(いま)玄関口(げんくわんぐち)(はな)(さき)(あか)い、133(いろ)(くろ)い、134不細工(ぶさいく)(をとこ)一人(ひとり)()(あら)はれ、135……「(おれ)女王(ぢよわう)(をつと)だ、136一遍(いつぺん)小糸姫(こいとひめ)()はせ」……と呶鳴(どな)つて()りますので、137大勢(おほぜい)(もの)どもが、138コンナ気違(きちが)ひを()せてはならないと種々(いろいろ)(いた)しますれど、139力強(ちからづよ)鼻赤男(はなあかをとこ)140容易(ようい)(をさ)まりませぬ。141小糸姫(こいとひめ)()げと(ばか)失礼(しつれい)(こと)(まを)して()りますが、142如何(どう)(いた)しませうか』
143()くより小糸姫(こいとひめ)顔色(がんしよく)をサツと(へん)じ、
144(なに)145(はな)(さき)(あか)(をとこ)が、146小糸姫(こいとひめ)()ひたいと()つて()ますか。147さア(わたし)(まゐ)りませう。148……母上様(ははうへさま)149暫時(しばらく)此処(ここ)()つて()(くだ)さいませ』
150()()て、151侍女(じぢよ)(あと)(したが)長廊下(ながらうか)(つた)ひ、152表玄関(おもてげんくわん)()して(すす)()く。153あとに蜈蚣姫(むかでひめ)(した)()き、
154『ナント(きつ)惚気(のろけ)(やう)だなア。155(すずめ)(ひやく)まで雄鳥(をんどり)(わす)れぬとやら、156(わし)如何(どう)やら鬼熊別(おにくまわけ)(さま)(おも)()されて、157(なつか)しうなつて()たワ』
158四辺(あたり)(ひと)()きを(さいは)ひ、159(おも)ひのままに()(さけ)ぶ。160玄関口(げんくわんぐち)(あら)はれた小糸姫(こいとひめ)は、161前後左右(ぜんごさいう)数多(あまた)下僕(しもべ)手玉(てだま)にとり()(くる)友彦(ともひこ)姿(すがた)()て、162ニコニコし(なが)ら「友彦(ともひこ)殿(どの)163友彦(ともひこ)殿(どの)」と(こゑ)()けたり。164(この)(こゑ)友彦(ともひこ)()(かへ)り、165(にはか)(えり)(つくろ)身体(からだ)恰好(かつかう)(なほ)(なが)ら、
166『やア小糸姫(こいとひめ)どの、167(ひさ)()りでお()(かか)りました。168随分(ずゐぶん)(すご)腕前(うでまへ)でしたね』
169(まこと)申訳(まをしわけ)のない(こと)御座(ござ)いました。170さア何卒(どうぞ)(おく)にお這入(はい)(くだ)さいませ。171(わたし)がお()()つてあげませう』
172 一同(いちどう)小糸姫(こいとひめ)(この)行為(かうゐ)(あき)れはて、173ポカンとして()(なが)()たり。174友彦(ともひこ)小糸姫(こいとひめ)(にぎ)つた()()(はら)ひ、
175滅相(めつさう)()い、176権謀術数(けんぼうじゆつすう)(いた)らざるなき(おそ)ろしき貴女(あなた)177迂濶(うつかり)()でも()かれ(やう)なものなら電気(でんき)にかけられた(やう)に、178寂滅為楽(じやくめつゐらく)運命(うんめい)(おちい)らねばなりますまい。179エー、180(おそ)ろしや(おそ)ろしや(わづ)十六(じふろく)十七(じふしち)で、181コンナ(おほ)きな(しま)女王(ぢよわう)()(やう)腕前(うでまへ)182活殺(くわつさつ)自在(じざい)権能(けんのう)()つて()貴女(あなた)183何卒(どうぞ)生命(いのち)ばかりは(むかし)交誼(よしみ)(たす)けて(くだ)さい。184貴女(あなた)随分(ずゐぶん)(わたし)(あわ)()はせたから、185もうあれで得心(とくしん)でせう。186(この)(うへ)(いじ)めるのは胴欲(どうよく)御座(ござ)います』
187(こひ)しき友彦(ともひこ)(さま)188(なに)御冗談(ごじようだん)仰有(おつしや)いますナ。189日日(ひにち)毎日(まいにち)190夢幻(ゆめまぼろし)貴下(あなた)(こと)(おも)ひつめ、191()つて()りました。192さア安心(あんしん)して(おく)()つて(くだ)さい。193(はは)蜈蚣姫(むかでひめ)(おく)休息(きうそく)して()られますから……』
194 友彦(ともひこ)(やや)安心(あんしん)(てい)にて、195(あか)(はな)(みぎ)()(かく)(やう)にし(なが)ら、196小糸姫(こいとひめ)(ほそ)()(ひだり)()(にぎ)られ()いて()く。
197友彦(ともひこ)さま、198アタ恰好(かつかう)(わる)い、199(みぎ)のお()をソンナ(ところ)()てたりして、200(なに)をなさいます』
201『あまり(はな)(あか)くて()つとも()御座(ござ)いますから……』
202『ホヽヽヽヽ、203(わたし)(その)(あか)(はな)()きなのですよ。204世界中(せかいぢう)(はな)(さき)(あか)立派(りつぱ)(をとこ)が、205さう沢山(たくさん)にありますものか、206ホヽヽヽヽ』
207(わら)(なが)(おく)(ふか)(すす)()く。208友彦(ともひこ)(うれ)しさと(いや)らしさと(はづか)しさが(ひと)つになり、209(あし)もワナワナ奥殿(おくでん)目蒐(めが)けて(すす)()る。
210 (おく)一室(ひとま)には蜈蚣姫(むかでひめ)(ただ)一人(ひとり)211(をつと)()(うへ)(おも)ひやり(まなこ)(はら)して()る。212其処(そこ)(いや)(いや)友彦(ともひこ)()(たづさ)へて、213(うれ)しげに這入(はい)つて()小糸姫(こいとひめ)姿(すがた)()()(おどろ)き、
214『まア、215小糸姫(こいとひめ)(さま)216冗談(じようだん)ぢやと(おも)つて()たら本当(ほんたう)ですか。217アンナ糞彦(くそひこ)奥殿(おくでん)引張(ひつぱ)()(あそ)ばしては、貴女(あなた)御威徳(ごゐとく)(かか)はりませう。218冗談(じようだん)()加減(かげん)になさいませ。219………これこれ友彦(ともひこ)220()(うへ)()らずも(ほど)がある。221前等(まへら)()(ところ)ぢやない、222さアトツトと下僕(しもべ)部屋(へや)へでも(さが)つて休息(きうそく)しなされ。223何程(なにほど)小糸姫(こいとひめ)がお(まへ)執着(しふちやく)されても肝腎(かんじん)(この)(おや)(ゆる)しませぬぞや』
224(わたし)肉体(にくたい)こそ貴女(あなた)(むすめ)225(いま)一国(いつこく)権利(けんり)(にぎ)女王(ぢよわう)御座(ござ)れば、226如何(いか)貴女(あなた)のお言葉(ことば)なりとて(うけたま)はるわけには(まゐ)りませぬ。227……友彦(ともひこ)(さま)228今迄(いままで)御無礼(ごぶれい)はお(ゆる)(くだ)さいませ。229……母上様(ははうへさま)230友彦(ともひこ)(さま)今迄(いままで)(つみ)(ゆる)してやつて(くだ)さい。231今日(こんにち)より友彦(ともひこ)(さま)(あらた)めて(わたし)(をつと)(あふ)ぎ、232竜頭王(りうづわう)御名(みな)(あた)へまする。233……いざ竜頭王(りうづわう)殿(どの)234今日(こんにち)只今(ただいま)より(わたし)貴下(あなた)(つま)御座(ござ)いますれば、235何卒(どうぞ)(よろ)しくお(ねが)(いた)しまする』
236 友彦(ともひこ)(ゆめ)では()いかと(ほほ)(つめ)つて()たり、237其処(そこら)四辺(あたり)()いて()茫然(ばうぜん)として()る。238()かる(ところ)梅子姫(うめこひめ)(うつく)しき(うつは)種々(いろいろ)珍味(ちんみ)()り、239徐々(しづしづ)として()(きた)り、
240『これはこれは蜈蚣姫(むかでひめ)(さま)241ようこそ御入来(おいで)(くだ)さいました。242(ひさ)()りでお()(かか)ります。243()御壮健(ごさうけん)にて、244(なに)より大慶至極(たいけいしごく)(ぞん)じます。245(わたし)顕恩城(けんおんじやう)(つか)へて()りました神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)(むすめ)梅子姫(うめこひめ)御座(ござ)います。246これなる一人(ひとり)宇豆姫(うづひめ)(まを)し、247(もと)鬼雲彦(おにくもひこ)(さま)侍女(じぢよ)248何卒(どうぞ)御眤懇(ごぢつこん)(ねが)(たてまつ)りまする』
249(なん)とまア(とし)()つた(こと)250如何(いか)にもお(まへ)さまは梅子姫(うめこひめ)(さま)間違(まちが)ひは()い。251意地(いぢ)(わる)さうな(かほ)をして()(なが)ら、252ようまア、253(むすめ)をここ(まで)(たす)けて出世(しゆつせ)をさして(くだ)さいました。254(しか)(なが)ら、255(あま)(えら)出世(しゆつせ)で、256(この)(おや)もチツト(くらゐ)(ねた)ましうなつた(くらゐ)御座(ござ)います。257あまり出世(しゆつせ)をし()ぎて、258母親(ははおや)()(こと)()かぬ(やう)になつて仕舞(しま)ひました。259何卒(どうぞ)貴女(あなた)から(ひと)御意見(ごいけん)(あそ)ばして(くだ)さいませ。260小糸姫(こいとひめ)(この)(やう)我儘者(わがままもの)になりますのも、261温順(をんじゆん)(をんな)になりますのも、262指導者(しだうしや)感化力(かんくわりよく)によりますのぢや。263貴女(あなた)から(ひと)(しと)やかになつて、264親子(おやこ)夫婦(ふうふ)(みち)をお(さと)(くだ)さいまして、265(その)(うへ)(むすめ)意見(いけん)をして(くだ)さらば、266(たまたま)()うた(おや)()(こと)()従順(じうじゆん)淑女(しゆくぢよ)になるでせう。267それに(なん)ぞや、268(ひと)もあらうに、269鼻赤(はなあか)(この)(やう)不細工(ぶさいく)性念(しようねん)(わる)(をとこ)を、270今日(けふ)から竜頭王(りうづわう)(あふ)(たてまつ)るなぞと……ヘン……あまり(あき)れて(もの)()はれませぬワイなア』
271(かた)をプリンプリンと(おほ)きくシヤクツて、272不平(ふへい)()つて()(どこ)(さが)()たり。
273(われ)今日(こんにち)より今迄(いままで)友彦(ともひこ)(あら)ず。274オーストラリヤの女王(ぢよわう)黄竜姫(わうりようひめ)(をつと)275竜頭王(りうづわう)御座(ござ)る。276(この)(くに)権利(けんり)(わが)()掌握(しやうあく)(いた)したれば、277何事(なにごと)(この)(はう)指図(さしづ)(まか)せ、278(つつし)(うやま)(すべ)ての行動(かうどう)()つたがよからう』
279(はじ)めて王者(わうじや)()りを発揮(はつき)し、280(はづか)(さう)(はな)(さき)()()てて宣示(せんじ)したり。
281『ヘン、282友彦(ともひこ)さま、283()()なさいませ。284何程(なにほど)竜宮島(りうぐうじま)権利(けんり)(にぎ)つたと()つても、285(わたし)(たい)しては効力(かうりよく)はありますまい。286(わたし)黄竜姫(わうりようひめ)(はは)ですよ。287()はばお(まへ)さまの義理(ぎり)(はは)ですよ。288何程(なにほど)主権者(しゆけんしや)になつたと()つても、289(おや)()(こと)(そむ)(わけ)には()きますまい。290友彦(ともひこ)さま、291返答(へんたふ)()きませうかい』
292嫉妬(しつと)軽侮(けいぶ)とゴツチヤ()ぜにして、293鼻息(はないき)(あら)()らず()らずに立膝(たてひざ)になり、294友彦(ともひこ)面部(めんぶ)(にら)みつめて()る。295一座(いちざ)(しら)けきつた(この)()()たさむと、296宇豆姫(うづひめ)蜈蚣姫(むかでひめ)()()り、
297『さア、298蜈蚣姫(むかでひめ)さま、299此方(こちら)風景(ふうけい)()立派(りつぱ)居間(ゐま)御座(ござ)います。300()(ゆつく)りと御休息(ごきうそく)(くだ)さいませ。301(とも)(いた)しませう』
302『ハイハイ、303有難(ありがた)う。304(わか)御夫婦(ごふうふ)(そば)皺苦茶婆(しわくちやばば)アが何時(いつ)(まで)(すわ)つて()るのは、305()(しら)けませう。306御機嫌(ごきげん)(そこ)ねてもなりませぬから、307それならば()()かして此処(ここ)一先(ひとま)立退(たちの)きませう。308これこれ友彦(ともひこ)……オツト ドツコイ……竜頭王様(りうづわうさま)309黄竜姫(わうりようひめ)(さま)310御夫婦(ごふうふ)(なか)よう天下(てんか)経綸(けいりん)御相談(ごさうだん)(あそ)ばせ。311御邪魔(おじやま)になるといけませぬから、312()()かして風景(ふうけい)()(ところ)で、313(ちや)なつと一杯(いつぱい)頂戴(ちやうだい)(いた)しませう』
314言葉(ことば)をシヤクリ(なが)ら、315畳触(たたみざは)(あら)身体(からだ)をピンピンと左右(さいう)()りつつ、316一間(ひとま)(うち)(すす)()る。
317 (あと)二人(ふたり)は、318(たがひ)一別(いちべつ)以来(いらい)経路(けいろ)(かた)り、319()失敗談(しつぱいだん)打明(うちあ)け、320夕立雲(ゆふだちぐも)()れたる(ごと)(ふたた)(もと)(わり)なき(なか)となりにける。
321
322 (をり)から()()烈風(れつぷう)竜頭王(りうづわう)安坐(あんざ)せる高殿(たかどの)()(たふ)され、323バチバチガタガタと木端(こつぱ)微塵(みじん)()(くだ)かれ、324()高処(かうしよ)より材木(ざいもく)破片(はへん)(とも)(いは)(うへ)()()み、325ハツト(おどろ)きの()(さま)せば、326……(あに)(はか)らむや、327城外(じやうぐわい)()(しげ)みに、328友彦(ともひこ)数多(あまた)下僕(しもべ)()()つぎ(いだ)され()てられ(なが)(つか)()ててつい熟睡(じゆくすゐ)し、329寝返(ねがへ)()つた途端(とたん)二三間(にさんげん)(した)(いは)(うへ)墜落(つゐらく)し、330(こし)をしたたか()()たりける。
331大正一一・七・三 旧閏五・九 北村隆光録)