霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 信仰(しんかう)()〔七五五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻 篇:第3篇 竜の宮居 よみ:たつのみやい
章:第9章 第25巻 よみ:しんこうのみ 通し章番号:755
口述日:1922(大正11)年07月10日(旧閏05月16日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
たちまち満天は墨を流したような黒雲に覆われてしまった。五人は祠の前で涼しく祝詞を唱えれば、黒雲の中から一塊の火光が現れて雷のような轟音と共に落下した。たちまち雲は晴れて辺りは日の光に輝いた。
五人が我に返ると、諏訪の湖面には紺青の波がキラキラと気高く輝いていた。純白の帆を掲げた舟が、多数こちらに向かってやってくる。五人は衣服を脱ぎ捨てて、湖の中にザンブと飛び込んだ。
浅瀬を進んで行った五人は、深みに足を取られて水底に落ち込んだ。五人は、水底から浮かんできた金銀をちりばめた神船に救い上げられて、湖を北へと進んで行った。そして気が付くと、湖中の夫婦島に五人は置かれていた。
ここには大小無数の金銀の蛇が、空き地がないほどに群れて遊んでいた。清公は金色の蛇に口の中に這いこまれ、その胸苦しさで眼を覚ました。チャンキーは蛇を引き出そうとしたが、尾ではねられて隣の島に飛ばされてしまった。
チャンキーが飛ばされた島には金銀のムカデがびっしりと群れていた。ムカデはチャンキーの体に這い登って包んでしまったが、チャンキーは少しも痛みも苦しみも感じなかった。ただそのこそばゆさに、チャンキーは腹をかかえて笑い転げた。
清公たちが最初に置かれた島は男島、チャンキーが飛ばされた島は女島といった。清公はにわかに身体が黄金色に変じ、両眼から金剛石のような光を発した。顔色輝いて荘厳の度を増し、背も一尺ばかり伸びると、アイルを掴んで女島に投げ飛ばした。
アイルもムカデに体を包まれて笑い出した。アイルとチャンキーがこの不思議な出来事について放していると、清公に投げられたテーナが島にやってきた。テーナもたちまちムカデに包まれてしまった。
男島のモンキーだけは、なぜか蛇も近づかなかった。モンキーは、蛇が自分に近づかないのは、自分が善だからなのか悪だからなのか判断がつかず、清公の前に平伏して頼み入るが、清公は目ばかりぎろぎろと動かして無言のまま立ち尽くしていた。
モンキーは、この島の蛇もムカデも悪魔のような感じがしない以上、竜宮に居るからには諸善神の化身に違いないと結論し、岩の上に祝詞を上げて諸手を組んで首を垂れ、考え込んでいた。
すると美妙の音楽が眼下から聞こえてきた。驚いて見れば、崇高な女神が舵を取って、厳たる漆塗りの船が進んで行くのが、パインの茂みの間から見えた。船中には、清公、チャンキー、アイル、テーナの四人が薄絹を身につけ、瓔珞の冠を戴いて、各々笛や笙やひちりきを奏でながら、愉快気に湖面を進んでいる。四人の肌は水晶のように透明に清まっていた。
モンキーが思わずアッと叫ぶと、四人は金扇を開いてモンキーを差し招く。船は悠々と波の上を進んで姿を隠してしまった。モンキーは我が身を省みれば、赤銅のような肌に毛がボウボウと生え、嫌な臭いを放出していた。
モンキーは自分のほうが間違っていたことに気付き、磯端に走ると全身を清めて端座し、瞑想にふけった。涼風が吹き、モンキーは気分が晴れてきた。しかし湖面を行く神船はモンキーに一瞥もくれずに過ぎてゆく。
モンキーがやや不安にくれて、船が消えた方向を見ていると、水面から緑毛の亀が浮かび上がり、島に駆け上がって走り出した。モンキーはその後について行く。亀は大木に登って、そこから落ちた。モンキーも同じように木に登って落ちた。
モンキーは亀の真似をしてもがいたり、付いて湖に飛び込んで泳いだ。モンキーが手足がだるくなって泳げなくなると、亀はモンキーを待って留まった。モンキーが亀に掴まると、亀は水中深く潜っていった。モンキーは必死でしがみついた。
モンキーは今度は女島に居て、亀の後をついていった。数多のムカデもその後に続いた。亀は島の頂上の大木の梢から、水面に飛び込んだ。モンキーは遥か下の水面を見て恐ろしさを感じたが、死に物狂いで亀と同じく頭を下にして飛び込んだ。
気が付くと、モンキーは金色の亀にまたがって紺碧の湖面を悠々と進んでいた。亀はいつしか金銀珠玉をちりばめた神船となっていた。
モンキーは初めて、何事も一切万事神に任せれば良いのだ、ということに気が付いた。蛇の島では蛇の心、ムカデの島ではムカデの心になって神様にお任せして行動してこそ、神の慈悲を体現できるのだ、ということを悟った。
モンキーは四人に再び会えることを願い、悔悟の涙を絞って合掌し、天津祝詞を奏上した。微妙の音楽が聞こえて麝香の芳香が漂い、その身はたちまち薄絹に包まれた。天上を行くごとき爽快な気分に包まれた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2509
愛善世界社版:135頁 八幡書店版:第5輯 80頁 修補版: 校定版:139頁 普及版:61頁 初版: ページ備考:
001三五教(あななひけう)太柱(ふとはしら)
002変性男子(へんじやうなんし)系統(ひつぽう)
003唯一(ゆいつ)(たの)みと経緯(たてよこ)
004我儘(わがまま)気儘(きまま)振舞(ふるま)ひし
005天狗(てんぐ)(はな)高姫(たかひめ)
006部下(ぶか)(つか)へし清公(きよこう)
007左守神(さもりのかみ)(あら)はれて
008鰻上(うなぎのぼ)りに(のぼ)()
009(こひ)瀬川(せがは)宇豆姫(うづひめ)
010(つま)となさむと(たく)()
011カラクリがらりと相外(あいはづ)
012地恩(ちおん)(しろ)頂上(ちやうじやう)より
013大地(だいち)急転直下(きふてんちよくか)せし
014名誉(めいよ)(もと)(かへ)さむと
015執着心(しふちやくしん)のほとぼりに
016(むね)()がして清公(きよこう)
017チヤンキーモンキー二人(ふたり)()
018タカの(みなと)立出(たちい)でて
019屋根無(たなな)(ぶね)()(まか)
020(こころ)荒波(あらなみ)()(なが)
021(やみ)(まぎ)れて和田(わだ)(はら)
022(まこと)明石(あかし)のヒル(みなと)
023(まこと)魔言(まこと)取違(とりちが)
024()出神(でのかみ)(その)(むかし)
025(あら)はれませる山奥(やまおく)
026(さけ)(いづみ)()()たる
027(その)滝壺(たきつぼ)(あら)はれて
028大蛇(をろち)(すさ)びを(なが)めてゆ
029転迷開悟(てんめいかいご)(はな)()かせ
030(うま)赤子(あかご)蘇生(よみがへ)
031ヒルの郷人(さとびと)二人(ふたり)まで
032(たび)御供(みとも)(さだ)めつつ
033セーラン(ざん)山続(やまつづ)
034(ふか)谷間(たにま)打渉(うちわた)
035(とら)(おほかみ)(おに)大蛇(をろち)
036狒々(ひひ)猩々(しやうじやう)(あつ)まれる
037魔窟ケ原(まくつがはら)宣伝歌(せんでんか)
038(うた)(なが)らに(すす)()
039(いし)(まくら)(くも)屋根(やね)
040(つゆ)(しとね)(かず)()えて
041(こころ)(ひか)玉野原(たまのはら)
042天空海濶(てんくうかいくわつ)(かぎ)りなき
043金砂銀砂(きんしやぎんしや)()()めし
044諏訪(すは)(さと)にと()きにける
045()花姫(はなひめ)御化身(おんけしん)
046巨大(きよだい)狒々(ひひ)村肝(むらきも)
047(こころ)(たま)(あら)はれて
048一行(いつかう)五人(ごにん)天地(あめつち)
049(かみ)(めぐみ)(さと)りつつ
050(こころ)(いさ)()(かる)
051紺青(こんじやう)(なみ)(たた)へたる
052玉依姫(たまよりひめ)永遠(とことは)
053(かく)(たま)ひし諏訪(すは)(うみ)
054()つの御玉(みたま)(そこ)(ふか)
055(をさ)まる竜宮(りうぐう)(きし)()
056(こころ)(あら)ひし清公(きよこう)
057チヤンキーモンキー(はじ)めとし
058アイル、テーナの五柱(いつはしら)
059(ほこら)(まへ)()きにける
060(ころ)しもあれや天上(てんじやう)
061黒雲(くろくも)(たちま)顕現(けんげん)
062()()四方(よも)拡大(くわくだい)
063満天(まんてん)(すみ)(なが)すごと
064黒白(あやめ)()かずなりにける
065あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
066御霊(みたま)(さち)はひましまして
067(こころ)雲霧(くもきり)()(はら)
068天津御空(あまつみそら)国土(くにつち)
069(きよ)(すず)しく天津(あまつ)()
070(かがや)(たま)清明(せいめい)
071天地(てんち)(かへ)(たま)はれと
072(いつ)つの(くち)()祝詞(のりと)
073(こゑ)(すず)しく(とな)ふれば
074あゝ(いぶ)かしや黒雲(くろくも)
075(なか)より()でし一塊(いつくわい)
076火光(くわくわう)(たちま)()(まへ)
077雷鳴(いかづち)(ごと)音響(おんきやう)
078(とも)轟然(がうぜん)落下(らくか)して
079一度(いちど)(ひら)()(はな)
080四方(よも)()るよと()(うち)
081さしも暗黒(あんこく)(つつ)まれし
082六合(りくがふ)(たちま)朝日子(あさひこ)
083伊照(いて)(かがや)()となりぬ
084五人(ごにん)(われ)立返(たちかへ)
085諏訪(すは)湖面(こめん)見渡(みわた)せば
086紺青(こんじやう)(なみ)キラキラと
087魚鱗(ぎよりん)(ごと)日光(につくわう)
088(かがや)(ひらめ)崇高(けだか)さよ
089(はるか)向方(むかふ)島影(しまかげ)
090(あら)はれ()でたる純白(じゆんぱく)
091真帆(まほ)片帆(かたほ)数多(かずおほ)
092此方(こなた)(むか)つて(すす)()
093(その)光景(くわうけい)(はる)()
094青野ケ原(あをのがはら)蝶々(てふてふ)
095(はな)(たはむ)翩翻(へんぽん)
096()(くる)ひたる(ごと)くなり
097(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
098(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
099(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
100直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
101()(あやま)ちは()(なほ)
102三五教(あななひけう)(かみ)(みち)
103(おに)大蛇(をろち)曲津霊(まがつひ)
104(われ)身魂(みたま)(ほか)にして
105(かみ)(つく)りしうまし()
106(かげ)(かたち)白煙(しらけぶり)
107()ゆる(おも)ひに()たされて
108天地(てんち)万有(ばんいう)(おのづか)
109至善(しぜん)至美(しび)なる(かみ)()
110(かは)りし(ごと)心地(ここち)しつ
111五人(ごにん)衣服(いふく)()()てて
112湖水(こすゐ)(なか)一時(いちどき)
113ザンブと(ばか)()()めば
114姿(すがた)(たちま)水底(みなそこ)
115()えて(あと)なき泡沫(うたかた)
116(ゆめ)(うつつ)(まぼろし)
117(かみ)ならぬ()如何(いか)にして
118()(よし)もなき御経綸(ごけいりん)
119(あふ)ぐも(たか)久方(ひさかた)
120(かみ)(こころ)万分一(まんぶいち)
121竜宮海(りうぐうかい)(そこ)(そこ)
122(ふか)仕組(しぐみ)玉手箱(たまてばこ)
123(ひら)いて()ぶる物語(ものがたり)
124竜宮館(りうぐうやかた)教主殿(けうしゆでん)
125(おく)一間(ひとま)瑞月(ずゐげつ)
126心天(しんてん)(たか)()()らし
127(こころ)(うみ)三五(あななひ)
128真如(しんによ)(つき)(うか)べつつ
129御国(みくに)(おも)真心(まごころ)
130井上(くもゐのうへ)留五郎(とめごらう)
131(かみ)大道(おほぢ)(あきら)めて
132世人(よびと)(みちび)神界(しんかい)
133(かがみ)()らす真澄(ますみそら)
134(ただ)一言(ひとこと)()らさじと
135鉛筆(えんぴつ)(とが)らし松村(まつむら)
136(こころ)()めて(しる)()
137()きて(かへ)らぬ(くは)(ゆみ)
138(くは)(つくゑ)にもたれつつ
139無尽意菩薩(むじんいぼさつ)(かたは)らに
140(はべ)らし(まこと)()()つる
141(いよいよ)(ここ)五五(ごご)(まき)
142(やや)(なかば)(まで)()きしるす
143(かみ)出口(でぐち)因縁(いんねん)
144(ひら)常磐(ときは)松風(まつかぜ)
145()(たましひ)清々(すがすが)
146(かた)()くこそ芽出度(めでた)けれ
147
148 清公(きよこう)ほか四人(よにん)諏訪(すは)(うみ)(ほとり)(ちひ)さき(ほこら)(まへ)端坐(たんざ)し、149天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)し、150数歌(かずうた)(うた)ひあげ、151(をは)つて紺青(こんじやう)(なみ)(ただよ)へる諏訪(すは)(うみ)岸辺(きしべ)()ち、152際限(さいげん)もなき(ひろ)湖面(こめん)崇高(すうかう)()()たれて(なが)()つた。153(たちま)心機一転(しんきいつてん)して、154天国(てんごく)よりも(きよ)(うる)はしき感想(かんさう)()たれ、155一同(いちどう)()せずして、156衣類(いるゐ)()ぎ、157湖中(こちう)(むか)つてザンブと(ばか)り、158何気(なにげ)なく()()んで(しま)つた。159千尋(ちひろ)(ふか)水底(みなそこ)(おも)ひきや水溜(みづたま)りは(おも)うたよりも(あさ)く、160七尺(しちしやく)乃至(ないし)八尺(はつしやく)肉体(にくたい)の、161(あさ)きは(へそ)あたり(まで)162(ふか)きは(くび)のあたりまで(くらゐ)よりなかつたのに、163(ふたた)(おどろ)(なが)神言(かみごと)奏上(そうじやう)しつつ、164(なみ)()()けて(きた)(きた)へと(すす)()く。
165 摺鉢(すりばち)(やう)になつた湖底(うなぞこ)(あし)(すべ)らせ、166(ここ)五人(ごにん)一時(いつとき)水底(みなそこ)(ふか)()()み、167一旦(いつたん)人事不省(じんじふせい)(やく)()うた。168折柄(をりから)()かび()金銀(きんぎん)(ちりば)めて(つく)りたる神船(しんせん)(すく)()げられ、169(きた)(きた)へと(はこ)ばれた。
170 湖中(こちう)()かべる夫婦島(めをとじま)一角(いつかく)(すく)()げられ、171五人(ごにん)肉体(にくたい)(その)(まま)自然(しぜん)()()(まで)()()かれたのである。172酷熱(こくねつ)太陽(たいやう)()げつく(ごと)く、173赫々(かくかく)()(かがや)けども、174老樹(らうじゆ)鬱蒼(うつさう)として(てん)(ふう)じたる(この)浮島(うきしま)は、175涼風(りやうふう)颯々(さつさつ)として(おもむろ)()(きた)り、176(なつ)(あつ)さを(すこ)しも(かん)じなかつた。177此島(ここ)には大小(だいせう)無数(むすう)金銀(きんぎん)(へび)空地(あきぢ)なき(まで)(あそ)(たはむ)れて()る。178五人(ごにん)金銀(きんぎん)(へび)179(たたみ)()(ごと)地上(ちじやう)(つつ)んで()(その)(うへ)(すく)()げられ、180(しばら)くは(なに)()らずに、181睡眠(すゐみん)(ほしいまま)にして()た。
182 清公(きよこう)(やや)(ふと)金色(こんじき)(へび)に、183(くち)をポカンと()けて()(その)隙間(すきま)より()()まれ、184胸苦(むなぐる)しさに()()まし、185『キヤツ キヤツ』と(さけ)んだ(こゑ)(おどろ)いて、186チヤンキー、187モンキー、188アイル、189テーナの四人(よにん)(はじ)めて()()き、190附近(あたり)()れば金銀(きんぎん)索麺(さうめん)()いた(ごと)く、191億兆(おくてう)無数(むすう)(へび)樹上(じゆじやう)にも樹下(じゆか)にも、192()(みき)にまで一面(いちめん)(つつ)んで()る。193清公(きよこう)(くち)には金色(こんじき)(ふと)(へび)194七八分(しちはちぶ)まで(くち)より()()み、195(わづか)七八寸(しちはつすん)(ばか)尻尾(しつぽ)(さき)(あま)し、196()前後左右(ぜんごさいう)にプリンプリンと活動(くわつどう)し、197()(さき)にて(みみ)(あな)198(はな)(あな)199()などを無性(むしやう)矢鱈(やたら)掃除(さうぢ)して()る。200チヤンキーは(その)()(つか)(へび)引出(ひきだ)し、201清公(きよこう)(たす)けむと猿臂(ゑんぴ)()ばして()(つか)んだ途端(とたん)に、202ビンと()ねられて、203(となり)(しま)()(おく)られた。
204 一方(いつぱう)(しま)には金銀(きんぎん)蜈蚣(むかで)(かず)(かぎ)りもなく、205(むしろ)()いた(ごと)く、206沢山(たくさん)(あし)をチヤンと(そろ)へて、207地上(ちじやう)(つつ)んで()る。208樹上(じゆじやう)にも()(みき)にも金銀色(きんぎんいろ)蜈蚣(むかで)209空地(あきぢ)もなく()きついて()た。210()()二三尺(にさんじやく)(なが)蜈蚣(むかで)は、211ゾロゾロとチヤンキーの身体(からだ)()()がり、212空地(あきぢ)なく身体(からだ)(つつ)んだ。213されど不思議(ふしぎ)にも(すこ)しの(いた)みも(くるし)みも(かん)ぜず、214(ただ)(すこ)(ばか)りこそばゆい(かん)じがしだし、215蜈蚣(むかで)(あし)(した)(もつ)(からだ)()(はじ)()すに()れ、216こそばゆさは益々(ますます)(その)()()し、217(つい)には(わら)()まず、218(はら)(かか)へて蜈蚣原(むかではら)七転八倒(しちてんばつたう)するに(いた)つた。219(この)(しま)女島(めしま)()ふ。220一方(いつぱう)清公(きよこう)金色(こんじき)(へび)()んだ(しま)男島(をしま)()ふ。
221 清公(きよこう)(にはか)身体(しんたい)黄金色(わうごんしよく)(へん)じ、222両眼(りやうがん)より金剛石(こんがうせき)(ごと)(ひかり)(はな)ち、223(くち)をもがもがと(うご)かせ(なが)ら、224(なに)()はむとするものの(ごと)く、225七八寸(しちはつすん)(くち)から()()尻尾(しつぽ)は、226何時(いつ)()にか腹中(ふくちう)(ふか)(をさ)まつて(しま)つた。227清公(きよこう)顔色(がんしよく)(かがや)き、228層一層(そういつそう)荘厳(さうごん)()(くは)へ、229身長(せい)一尺(いつしやく)(ばか)(たか)()び、230(からだ)総体(そうたい)(その)(ふと)さを()して()た。231(もの)をも()はず清公(きよこう)はアイルの首筋(くびすぢ)をグツと(つか)み、232女島(めしま)(むか)つて(ねこ)()()げる(やう)()もなく()(うつ)した。233チヤンキーが(うつ)むいて(わら)つて()背中(せなか)(うへ)に、234フワリと(うま)()つた(やう)()ちて()た。235蜈蚣(むかで)(たちま)ちアイルの全身(ぜんしん)(つつ)んだ。236アイルも(また)(にはか)際限(さいげん)もなく(わら)()した。237()()蜈蚣(むかで)(からだ)一面(いちめん)()げつく(やう)になつて、238両人(りやうにん)(からだ)全身(ぜんしん)蜈蚣(むかで)斑紋(はんもん)(つつ)まれて(しま)つた。239チヤンキーは(はじ)めて(くち)()け、
240『あゝ地恩城(ちおんじやう)蜈蚣姫(むかでひめ)(かは)りに蜈蚣彦(むかでひこ)両人(りやうにん)(そろ)うた。241……オイ、242アイルさま、243()(からだ)蜈蚣(むかで)変化(へんくわ)した以上(いじやう)は、244モウ仕方(しかた)がない。245一生(いつしやう)(この)(しま)守護神(しゆごじん)となつて()らせと()神様(かみさま)思召(おぼしめ)しかも()れないよ。246(しか)(なが)ら、247(むかし)諾冊二尊(なぎなみにそん)自転倒島(おのころじま)御降(おお)りになつた(とき)には、248陰陽(いんやう)(そろ)うて夫婦(ふうふ)(ちぎり)(むす)び、249(やま)250(かは)251(くさ)252()をお()みになつたのだが、253我々(われわれ)(をとこ)ばかりだから国生(くにう)みもする(わけ)には()かず、254つまり(てい)よい島流(しまなが)しになつたのではあるまいかなア』
255アイル『サア(なん)だか()らぬが、256(なん)とも()へぬ()気分(きぶん)ぢやないか。257(いづ)れどちらかが(をんな)になるのかも()れないよ。258(しか)(この)(しま)女島(めしま)()ふからは、259二人(ふたり)(なが)(をんな)にならうも()れぬ。260さうすれば尚々(なほなほ)(めう)(こと)になつて(しま)ふ。261(しか)何時(いつ)(おれ)(をんな)何故(なぜ)(うま)れて()なんだかと始終(しじう)小言(こごと)()つて()つたから、262言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)だと()ふからには、263御註文(ごちゆうもん)(どほ)(をんな)変化(へんくわ)するかも()れぬ。264さうすれば所謂(いはゆる)平和(へいわ)女神(めがみ)となつて、265(まへ)はチヤンキー、266(わし)はアイル、267アイルチヤンキーの女神(めがみ)として後世(こうせい)(うた)はれるやうになるかも()れないよ』
268チヤンキー『馬鹿(ばか)()へ、269アイルチヤンキーの女神(めがみ)()(やう)なものが何処(どこ)にあるか。270アイルテーナの女神(めがみ)()へば(むかし)から()いてるがなア』
271『それなら男島(をしま)(のこ)つてる(やつ)(おれ)(あは)せばアイルテーナだ』
272(おれ)今日(けふ)(かぎ)りチヤンキーと()()返上(へんじやう)して、273アポールと()()改名(かいめい)しよう。274アポールの女神(めがみ)は、275所謂(いはゆる)アテーナの(また)御名(みな)だ』
276 ()(はな)(をり)しも(また)もや、277清公(きよこう)(つか)まれて()(おく)られたテーナは、278二人(ふたり)(まへ)(くう)()つて()つて()た。
279チヤンキー『アイルテーナ、280……此奴(こいつ)不思議(ふしぎ)
281とソロソロ地金(ぢがね)(あら)はし、282洒落(しやれ)気分(きぶん)になつて無駄口(むだぐち)(たた)きかけた。283テーナはものをも()はず(うつ)むいて、284膝頭(ひざがしら)()つたと()(かほ)(しか)(なが)()でて()る。285蜈蚣(むかで)はそろそろテーナの全身(ぜんしん)(つつ)んだ。286テーナは向脛(むかふずね)()つた(とき)(やう)(いた)さうなこそばゆさうな、287(いた)さとこそばゆさが(ひと)つになつた(やう)(こゑ)で、288()きと(わら)ひの中間的声(ちうかんてきこゑ)()して『キユーキユー』と(わき)のあたりを()らして()る。
289 男島(をしま)()けるモンキーは、
290『モシモシ清公(きよこう)大明神(だいみやうじん)291(まへ)金竜(きんりう)化神(けしん)となつて(しま)ひ、292三人(さんにん)(やつ)まで(みんな)金銀(きんぎん)蜈蚣(むかで)衣服(いふく)()て、293平和(へいわ)女神(めがみ)だとか(なん)とか威張(ゐば)つて()るが、294(この)モンキー一人(ひとり)はどうして(くだ)さるのだ。295(はじ)めの(うち)(へび)蜈蚣(むかで)()てゾツとし、296(つみ)(おも)(やつ)()んな(ところ)()たものだから、297(へび)蜈蚣(むかで)()められて(くる)しむのだと(おも)ひ、298アーア(わし)(だけ)はヤツパリ(ぬす)んで()(ふね)(かへ)しに()つた正直者(しやうぢきもの)発頭人(ほつとうにん)だから、299(へび)蜈蚣(むかで)如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ないのだと、300(やや)得意気分(とくいきぶん)になつて()た。301(しか)(なが)ら、302(たれ)(かれ)金銀(きんぎん)(からだ)になり、303(あま)苦痛(くつう)さうにもないのを()ると、304(なん)とはなしに、305自分(じぶん)(けな)りくなり当然(あたりまへ)肉体(にくたい)(かへつ)(つみ)(かたまり)(やう)(かん)じが(いた)しますワ。306一体(いつたい)何方(どちら)(ぜん)ですか。307万一(まんいち)四人(よにん)(もの)308(かみ)冥罰(めいばつ)()れて()んな(ざま)になつたのならば、309我々(われわれ)友人(いうじん)(ため)充分(じうぶん)謝罪(おわび)神界(しんかい)(いた)さねばならず、310(また)四人(よにん)神徳(しんとく)(かうむ)りて出世(しゆつせ)をしたのならば、311我々(われわれ)(おな)じく出世(しゆつせ)をする(やう)(ねが)つて(いただ)かねばなりませぬ。312善悪(ぜんあく)不二(ふじ)()(こと)(かね)()いて()りました。313(しか)(なが)(かみ)(おもて)(あら)はれて、314(ぜん)(あく)とを立分(たてわ)けると()以上(いじやう)は、315(いま)()()けられた五人(ごにん)は、316どちらが(ぜん)(あく)か、317どうぞ()かして(くだ)さいませ』
318一生懸命(いつしやうけんめい)()(あは)せ、319清公(きよこう)(まへ)平伏(へいふく)して(たの)()る。320清公(きよこう)(くち)をへの()(むす)び、321()(ばか)りギロギロさせ(なが)一言(ひとこと)(こた)へず時々(ときどき)(ふた)つの(はな)(あな)から、322フウフウと(あら)(いき)()()すのみである。323モンキーの(かたはら)二尺(にしやく)(ばか)りの四方(しはう)は、324何故(なにゆゑ)か、325金銀(きんぎん)(へび)近寄(ちかよ)(きた)らず。326()うなるとモンキーも(かみ)(きら)はれて()るのか、327()かれて()るのか、328(すこ)しも合点(がてん)がゆかぬ。329()むを()(やや)自棄気味(やけぎみ)になつて、330島中(しまぢう)歩行(ある)(はじ)めた。331(へび)(さき)(あらそ)うて、332モンキーに()まれまじと(あわ)ただしく(みち)(ひら)(その)(あや)しさ。
333 一時(ひととき)(ばか)(しま)彼方(あなた)此方(こなた)金銀(きんぎん)(へび)(おどろ)かせ(なが)ら、334()(うる)はしき金色燦爛(きんしよくさんらん)たる(こけ)()えた(いは)(かたはら)辿(たど)りつき、335恰好(かつかう)休息所(きうそくしよ)岩上(がんじやう)()(よこ)たへ、336頬杖(ほほづゑ)()き、337思案(しあん)()れて独言(ひとりごと)()つて()る。
338モンキー『あゝサツパリ善悪(ぜんあく)不可解(ふかかい)だ、339(おに)大蛇(をろち)悪魔(あくま)も、340すべて自分(じぶん)である。341自分(じぶん)(はな)れて極楽(ごくらく)もなければ地獄(ぢごく)もなし、342(また)(かみ)もなければ(おに)もない…………と(くし)滝壺(たきつぼ)大蛇(をろち)(むか)つて清公(きよこう)宣伝歌(せんでんか)(うた)つた(とき)343大蛇(をろち)(たちま)(ちひ)さくなつて()えて(しま)つた。344さうすれば尚々(なほなほ)合点(がてん)のゆかぬは(この)(しま)()てからの出来事(できごと)だ。345清公(きよこう)(はじ)(その)()連中(れんちう)(のこ)らず、346金銀(きんぎん)(へび)蜈蚣(むかで)全身(ぜんしん)取巻(とりま)かれ、347(かみ)(すく)はれたのか、348()てられたのか、349チツとも(わけ)(わか)らなくなつて(しま)つた。350さうして我々(われわれ)身辺(しんぺん)には(へび)蜈蚣(むかで)近寄(ちかよ)らず疥癬患者(ひぜんかき)()(やう)に、351(みな)吃驚(びつくり)したやうな調子(てうし)(みち)()けて()れよる。352(かんが)へれば(かんが)へる(ほど)353(おれ)精神(せいしん)(かみ)御心(みこころ)(かな)うて()るのか、354(あるひ)四人(よにん)連中(れんちう)(かた)()いのか、355どうしても合点(がてん)がゆかない。356我輩(わがはい)神徳(しんとく)()つて(へび)蜈蚣(むかで)(おそ)れて()げるのか、357(あるひ)威勢(ゐせい)(おそ)れて()けて()るのか、358此奴(こいつ)(ひと)(かんが)(もの)だ。359諸善(しよぜん)竜宮(りうぐう)()(たま)ふと()以上(いじやう)は、360(この)竜宮島(りうぐうじま)悪神(あくがみ)一柱(ひとはしら)()(はず)361仮令(たとへ)金銀(きんぎん)(いろ)をして()つても、362(へび)蜈蚣(むかで)()(やつ)363(あま)気分(きぶん)()いものだない。364(しか)此島(ここ)(へび)蜈蚣(むかで)悪魔(あくま)(やう)(かん)じもせぬ。365悪魔(あくま)でなければ諸善神(しよぜんしん)化身(けしん)であらう、366(この)(てん)一向(いつかう)合点(がてん)()かぬ(ところ)だ。367清公(きよこう)だとて(あま)神様(かみさま)()かれる(やう)至善(しぜん)至美(しび)人間(にんげん)でもなし、368(また)(おれ)だとて神様(かみさま)(おそ)れて()げなさる(やう)御神徳(ごしんとく)があらう(はず)もなし、369(また)(へび)悪魔(あくま)であるとすれば、370我々(われわれ)神徳(しんとく)(おそ)れて()げる(やう)(へび)には(ちから)(とく)もないのだ。371ヤツパリ竜宮(りうぐう)竜宮式(りうぐうしき)だ。372薩張(さつぱり)五里霧中(ごりむちゆう)彷徨(はうくわう)して、373見当(けんたう)()れぬ仕組(しぐみ)実地(じつち)()せて(もら)うたのだらうか。374あゝ如何(どう)したら(この)解決(かいけつ)()くだらう。375(はじめ)(うち)金銀(きんぎん)(へび)376一二尺(いちにしやく)づつ遠慮(ゑんりよ)した(やう)(さき)(あらそ)うて()げて()よつたが、377何時(いつ)()にか見渡(みわた)(かぎ)り、378(おれ)周囲(まわり)には、379一匹(いつぴき)(へび)()なくなつて(しま)つた。380(へび)()かれるのも(あま)気分(きぶん)()(はなし)ではないが、381(この)(とほ)敬遠(けいゑん)主義(しゆぎ)()られるのも、382(なん)だか面白(おもしろ)くない(やう)気分(きぶん)がする。383あゝ到底(たうてい)人間(にんげん)理智(りち)では(わか)るものでない。384()神様(かみさま)天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)し、385(ゆつ)くりと(こころ)落着(おちつ)けて、386鎮魂三昧(ちんこんさんまい)()つたならば、387(なん)とか(この)解決(かいけつ)がつくであらう。388あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
389と、390拍手(はくしゆ)をなし、391祝詞(のりと)を、392(こゑ)(かぎ)奏上(そうじやう)(をは)つて、393(また)もや岩上(がんじやう)端坐(たんざ)し、394(うで)()(かんが)()んだ。
395 モンキーは岩上(がんじやう)双手(もろで)()み、396(くび)()れ、397善悪(ぜんあく)解決(かいけつ)心身(しんしん)傾注(けいちう)する(とき)しもあれ、398美妙(びめう)音楽(おんがく)眼下(めした)(きこ)ゆるに(おどろ)き、399()(ひら)いて(なが)むれば、400金銀珠玉(きんぎんしゆぎよく)(もつ)(つつ)まれたる、401(うる)はしき漆塗(うるしぬり)(ふね)に、402()()はれぬ崇高(すうかう)なる女神(めがみ)(かぢ)()り、403清公(きよこう)404チヤンキー、405アイル、406テーナの四人(よにん)407赤裸(まつぱだか)(はず)(をとこ)が、408(なん)とも()れぬ(うるは)しき薄衣(うすぎぬ)()()け、409身体(からだ)水晶(すゐしやう)(ごと)透明(とうめい)(きよ)まり、410各自(てんで)横笛(よこぶえ)411(しやう)412ひちりき()き、413(うる)はしき纓絡(やうらく)()いた(かんむり)(かしら)(いただ)き、414愉快気(ゆくわいげ)波面(はめん)(すす)()光景(くわうけい)が、415パインの(しげ)みを()かしてアリアリと(あら)はれた。416モンキーは(おも)はず『アツ』と(さけ)んだ。417四人(よにん)金扇(きんせん)(ひろ)げ、418モンキーに(むか)つて『(はや)(きた)れ』と差招(さしまね)(なが)ら、419微妙(びめう)音楽(おんがく)(こゑ)諸共(もろとも)に、420紺青(こんじやう)(なみ)(うへ)悠々(いういう)として彼方(あなた)島影(しまかげ)姿(すがた)(かく)しける。
421 モンキーは(ふと)(いき)()(なが)ら、422(わが)()()(かへ)れば、423赤銅(しやくどう)(やう)黒赤(くろあか)(はだ)()をボウボウと()やし、424()()はれぬ汗臭(あせくさ)い、425(いや)臭気(にほひ)放出(はうしゆつ)して、426(われ)()(はな)をつく。
427『あゝヤツパリ(おれ)(はう)間違(まちが)つて()たのかい。428こりやモ(ひと)(かんが)(なほ)さなくちやなるまいぞ』
429(いは)(はな)れて磯端(いそばた)(はし)()り、430全身(ぜんしん)(きよ)め、431(ふたた)磯端(いそばた)端坐(たんざ)して瞑想(めいさう)(ふけ)りゐる。
432 涼風(りやうふう)颯々(さつさつ)(おもて)()くさま、433()()はれぬ気分(きぶん)となつて()た。434(むか)ふの島影(しまかげ)()れば、435金砂青松(きんしやせいしよう)()(ごと)展開(てんかい)し、436()()れぬ羽毛(うまう)(うるは)しき(とり)437迦陵頻伽(かりようびんが)孔雀(くじやく)(つる)か、438(しか)とは(わか)らねど、439長閑(のどか)(こゑ)(はな)ちて天国(てんごく)(はる)(うた)ふものの(ごと)(かん)じられた。440金銀珠玉(きんぎんしゆぎよく)(ちりば)めたる白帆(しらほ)をかけた神船(しんせん)(あるひ)(ひと)つ、441(あるひ)()つと、442時々刻々(じじこくこく)眼下(がんか)波面(はめん)()()く。443されどモンキーの(はう)には一瞥(いちべつ)もくれず、444素知(そし)らぬ(かほ)して(すす)()(ふね)のみである。445モンキーは益々(ますます)合点(がてん)ゆかず、446心中(しんちゆう)(やや)不安(ふあん)(かん)じて(うら)めしげに、447四人(よにん)(ふね)姿(すがた)(かく)れた方面(はうめん)(そら)(なが)めて(たたず)()る。
448 (たちま)足許(あしもと)水面(すゐめん)より緑毛(りよくまう)(かめ)449忽然(こつぜん)として(うか)()で、450()()(しま)()(あが)り、451一生懸命(いつしやうけんめい)(はし)()せば、452モンキーは(その)(かめ)(うしろ)()いてスタスタと(はし)()く。453(かめ)益々(ますます)速力(そくりよく)(はや)(つい)には大木(たいぼく)(みき)()きつき二三間(にさんげん)(ばか)(のぼ)つた(ところ)で、454如何(どう)した(はず)みか、455()(はな)大地(だいち)顛倒(てんたふ)した。456モンキーも(かめ)()うて大木(たいぼく)()(のぼ)つた。457(かめ)()ちたのを()て、458自分(じぶん)(また)()(はな)し、459地上(ちじやう)顛落(てんらく)し、460(した)たか(あたま)()ち『惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』と()ひつつ、461()(ひら)にて(いき)()きかけ、462創所(きずしよ)二三回(にさんくわい)()でまはせば、463(いた)みは(とみ)()まりぬ。464(かめ)(はら)(うへ)にし、465()つの(あし)(そら)()いて藻掻(もが)いて()る。466(これ)()たモンキーは、467(また)もや地上(ちじやう)(せな)()け、468手足(てあし)()げて(そら)()き、469(かめ)真似(まね)をして()る。470(かめ)はカタリと(おと)をさせて()(あが)り、471(また)もやノタノタと反対(はんたい)方面(はうめん)(はし)(いだ)す。472モンキーも(おな)じくクレリと(たい)をかはし、473(おと)がせぬので(くち)で『カタリ』と()(なが)(かめ)(あと)引添(ひきそ)うて、474今度(こんど)四這(よつばひ)になつて()いて()く。
475 (かめ)矢庭(やには)湖面(こめん)(むか)つてドブンと()()むを()て、476モンキーも(また)四這(よつばひ)のまま、477湖水(こすゐ)(なか)にドブンと()()()れば、478(かめ)(かしら)をあげて悠々(いういう)水面(すゐめん)(およ)いで()る。479モンキーは(また)(かめ)(あと)()いて(くび)をあげた(まま)(およ)いで()く。480手足(てあし)(だる)くなり、481最早(もはや)(この)(うへ)十間(じつけん)たりとて(およ)げなくなつて(しま)つた。482(かめ)はモンキーの()()(きた)るを()つものの(ごと)く、483ポカンと()いたまま、484(くび)()ばして(うしろ)()りかへつて()る。485モンキーは(その)()(かめ)追付(おひつ)き、486(かふ)両側(りやうがは)両手(りやうて)をかくれば、487(かめ)水中(すゐちう)(ふか)(もぐ)()した。488死物狂(しにものぐる)ひになつて両手(りやうて)(かふ)()けた(まま)水底(みなそこ)(つづ)いて()く。
489 フト()(ひら)()れば、490自分(じぶん)(からだ)(かめ)(とも)に、491女島(めしま)磯端(いそばた)(あが)つて()た。492金銀色(きんぎんしよく)蜈蚣(むかで)一面(いちめん)(なら)んで()(その)(うへ)を、493(かめ)容赦(ようしや)なく()(なが)ら、494島山(しまやま)(いただき)目蒐(めが)けて(すす)()く。495数多(あまた)蜈蚣(むかで)は、496今度(こんど)(へび)(やう)()けず、497足許(あしもと)をウザウザさせ(かめ)(うしろ)に、498一生懸命(いつしやうけんめい)()うて()く。
499 (かめ)(また)もや大樹(たいじゆ)(えだ)(のぼ)つて(しま)つた。500モンキーも(また)大樹(たいじゆ)(えだ)(かめ)(あと)()うて(のぼ)りついた。501眼下(がんか)水面(すゐめん)見渡(みわた)せば、502(かす)(ばか)りに(たか)島山(しまやま)頂上(ちやうじやう)大木(たいぼく)(しん)から水面(すゐめん)()(こと)とて非常(ひじやう)(おそ)ろしい。503(かめ)(また)もや水面(すゐめん)目蒐(めが)けて、504(くび)をすくめ(なが)()()んだ。505モンキーは死物狂(しにものぐるひ)になりて水面(すゐめん)目蒐(めが)け、506()(をど)らし、507(あたま)(した)にしたまま、508()()んで(しま)つたと(おも)つてハツと()()けば、509モンキーは金色(こんじき)(かめ)(かふ)(また)がり、510紺碧(こんぺき)湖面(こめん)を、511悠々(いういう)として(およ)いで()た。512(かめ)何時(いつ)しか容積(ようせき)()(ふね)(ごと)(おほ)きくなり、513()らぬ()金銀珠玉(きんぎんしゆぎよく)(ちりば)めた目無堅間(めなしかたま)神船(しんせん)になつて()る。514(ふね)()()(ひと)()きに、515自然(しぜん)(うご)()し、516四人(よにん)(すす)んだ方面(はうめん)()して(すべ)つて()く。517モンキーは(はじ)めて(さと)つた。
518モンキー『あゝ何事(なにごと)一切万事(いつさいばんじ)519(かみ)(まか)せば()いのだ。520(がう)()つては(がう)(したが)へと()(こと)がある。521(へび)(しま)()れば(へび)(ひと)つの(こころ)になり、522蜈蚣(むかで)(しま)()れば蜈蚣(むかで)(こころ)になつて済度(さいど)をしてやらねばならぬ。523(へび)()んでも(かま)はぬ、524(からだ)()きつけられても、525(すく)ひの(ため)には(いと)(ところ)でない。526蜈蚣(むかで)我々(われわれ)肉体(にくたい)()めたがつて()るならば、527何程(なにほど)(いや)らしくても()めさしてやるのが(かみ)慈悲(じひ)だ。528神心(かみごころ)だ。529我々(われわれ)理智(りち)()けて、530(かみ)慈悲心(じひしん)(かろ)んじて()た。531最早(もはや)()うなる以上(いじやう)は、532何事(なにごと)神様(かみさま)のままに、533(まか)せするが安全(あんぜん)だ。534……惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)……と(くち)(まか)せの(やう)(とな)へて()たが、535今迄(いままで)何事(なにごと)頭脳(づなう)判断(はんだん)をし青人草(あをひとぐさ)(なら)ひの(おこな)ひをやつて()たのが(あやま)りだ。536あゝ神様(かみさま)有難(ありがた)御座(ござ)います。537どうぞ清公(きよこう)(その)()一行(いつかう)に、538一時(いちじ)(はや)面会(めんくわい)出来(でき)まする(やう)539御取計(おとりはか)らひ(くだ)さいませ。540モウ(この)(うへ)一切万事(いつさいばんじ)541貴神(あなた)にお(まか)(いた)します』
542悔悟(くわいご)(なみだ)をしぼり、543湖面(こめん)(むか)つて合掌(がつしやう)天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)して()る。
544 何処(いづく)よりともなく、545以前(いぜん)(ごと)美妙(びめう)音楽(おんがく)(きこ)(きた)り、546麝香(じやかう)(ごと)(かぜ)湖面(こめん)()いて、547(その)()(たちま)薄物(うすもの)綾錦(あやにしき)(つつ)まれ、548天上(てんじやう)()(ごと)爽快(さうくわい)なる気分(きぶん)()はされて()た。
549 あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
550大正一一・七・一〇 旧閏五・一六 松村真澄録)
   
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