霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 (いぬゐ)(たき)〔八四四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第1篇 高砂の松 よみ:たかさごのまつ
章:第2章 乾の滝 よみ:いぬいのたき 通し章番号:844
口述日:1922(大正11)年08月14日(旧06月22日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
男たちの話を寝ながら聞いていた末子姫と捨子姫は、彼らが自分たちを捕らえに来たバラモン教徒であることを知り、追い払おうと幽霊の真似をして脅かしに出た。
シーナは驚いて仲間を揺り起こした。二人の姿に驚いたイサク、チール、シーナの三人はいずこへともなく逃げ去ってしまった。
しかし残ったカールとネロは少しも驚かず、末子姫と捨子姫に向かって呼びかけた。そして、自分たちは実は珍の都の松若彦に仕える三五教徒だと明かした。二人は松若彦の内命を奉じて、バラモン教の中に入り込んで内偵をしているのだと語った。
ネロは残りの任務を果たすべく、その場を立ち去った。カールは二人を珍の都に案内することになった。途中、大瀑布の音が聞こえて来た。カールは乾の滝があるという。末子姫は禊を提案した。
カールは乾の滝には大蛇が棲んでいて、そこへ禊に行くのはバラモン教のこの地の教主・石熊だけだと止めた。しかし末子姫は、あの滝の音を聞いてどうしても行きたくなったと言い、カールも案内することになった。
果たして、滝にはすでに石熊が禊に来ていたが、滝の大蛇に魅入られて動けなくなり、正に呑まんとされるところであった。末子姫は大蛇に向かって、大蛇の身魂を慰撫する宣伝歌を歌いだした。
この宣伝歌を聴いた大蛇は涙を流し、末子姫に幾度となく頭を下げると、滝の中に姿を隠した。石熊は身体の自由を取り戻し、三人に対して命を救ってくれた大恩を感謝した。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:19頁 八幡書店版:第5輯 579頁 修補版: 校定版:20頁 普及版:7頁 初版: ページ備考:
001 シーナは(なん)となく恐怖心(きようふしん)()られて、002(ふる)(をのの)いて()た。003最前(さいぜん)から五人(ごにん)(はなし)寝乍(ねなが)(ひそ)かに()いて()末子姫(すゑこひめ)004捨子姫(すてこひめ)は、005バラモン(けう)石熊(いしくま)部下(ぶか)006自分等(じぶんら)(とら)へむとしてここに(きた)りし(もの)なる(こと)(さと)り、007上衣(うはぎ)()ぎ、008両人(りやうにん)はひそかに(しめ)(あは)せて白衣(びやくい)となり、009(かみ)をおどろに(みだ)して、010ダラリと()(なが)ら、011二人(ふたり)一度(いちど)(しろ)()(まへ)()し、
012(うら)めしやなア、013高照山(たかてるやま)谷間(たにあひ)(おい)て……』
014(ほそ)(かな)しい(こゑ)でやりかけた。015シーナは(この)姿(すがた)をチラリと()て、016イサクを(ゆす)(おこ)し、
017シーナ『オイオイ……イサク()きてくれ……(みな)(やつ)018タツタツ大変(たいへん)だー、019()()た、020()たワイのう』
021(ふる)ひおののいて()る。022チールは(この)(こゑ)(おどろ)き、023あたりを()れば、024()(しげ)みの(なか)よりいやらしき姿(すがた)白衣(びやくい)()けた幽霊(いうれい)025ボーツと()いた(やう)(あら)はれて()る。
026チール『ヤア此奴(こやつ)大変(たいへん)だー。027()げろ()げろ』
028(さき)(あらそ)ひ、029イサク、030シーナ、031チールの三人(さんにん)()けつ、032まろびつ、033(いのち)カラガラ何処(いづこ)ともなく()()つて(しま)つた。034カール、035ネロの両人(りやうにん)(すこ)しも(さわ)がず泰然(たいぜん)として、036(ふた)つの(あや)しき姿(すがた)(しばら)見守(みまも)つて()た。
037カール『失礼(しつれい)(なが)ら……貴女(あなた)(さま)顕恩城(けんおんじやう)立出(たちいで)て、038固彦(かたひこ)(ため)(とら)へられ、039ここへ漂着(へうちやく)(あそ)ばした、040神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)(さま)末子(ばつし)041末子姫(すゑこひめ)(さま)042侍女(じぢよ)捨子姫(すてこひめ)(さま)御両所(ごりやうしよ)では御座(ござ)いませぬか? (わたし)(じつ)(ところ)(うづ)(みやこ)松若彦(まつわかひこ)(さま)(つか)へて()ります三五教(あななひけう)のプロパガンデイースト(宣伝使(せんでんし))で御座(ござ)います、043一人(ひとり)(をとこ)はネロと(まを)しまして、044これもヤツパリ三五(あななひ)(みち)信者(しんじや)御座(ござ)いますが、045(この)(ごろ)高照山(たかてるやま)にバラモン(けう)一派(いつぱ)石熊(いしくま)なる(もの)(あら)はれ、046(うづ)(みやこ)へいろいろと間者(かんじや)()()ませ、047転覆(てんぷく)計画(けいくわく)をめぐらして()りますれば、048吾々(われわれ)教主(けうしゆ)松若彦(まつわかひこ)(さま)内命(ないめい)(ほう)じ、049バラモン(けう)様子(やうす)(さぐ)るべく、050バラモンの信者(しんじや)となつて、051今日迄(けふまで)()れて()ました。052(しか)るに石熊(いしくま)大将(たいしやう)言葉(ことば)に、053貴女方(あなたがた)今明日(こんみやうにち)(うち)に、054海原(うなばら)(わた)りハラの(みなと)御上陸(ごじやうりく)(あそ)ばし、055(うづ)(くに)へお()しになるに相違(さうゐ)ない。056もしも(うづ)(みやこ)両人(りやうにん)乗込(のりこ)んだが最後(さいご)バラモン(けう)(たい)し、057大変(たいへん)なる強敵(きやうてき)出来(でき)るやうなものだから、058テル山峠(やまたうげ)見張(みは)りをして、059両人(りやうにん)引捉(ひつとら)へ、060高照山(たかてるやま)()(かへ)れとの命令(めいれい)061日頃(ひごろ)吾々(われわれ)両人(りやうにん)神様(かみさま)御奉公(ごほうこう)するのは、062今此時(いまこのとき)(よろこ)(いさ)んで、063一行(いつかう)(なか)(くは)はり此処迄(ここまで)やつて()ました(もの)御座(ござ)います』
064ネロ『(わたし)貴女方(あなたがた)御一行(ごいつかう)此処(ここ)にお(やす)みと()ふことを、065ゆくりなくも(つき)にてらして(さと)りました(ゆゑ)066ワザとシーナの旧悪(きうあく)知悉(ちしつ)してゐるのを(さいは)ひ、067おどして()がさむかと(かんが)へ、068いろいろの(はなし)貴女様(あなたさま)(きこ)えよがしに申上(まをしあ)げました。069早速(さつそく)貴女様(あなたさま)頓智(とんち)によりて、070三人(さんにん)者共(ものども)は、071あの(とほ)()()せまして御座(ござ)います。072最早(もはや)一安心(ひとあんしん)御座(ござ)います。073サア(これ)からカールさまと(この)(たうげ)(いま)(うち)に、074疲労(くたびれ)でせうが、075仮令(たとへ)(すこ)しでも(かま)ひませぬから、076御登(おのぼ)(くだ)さいませ。077(わたし)(いま)()()つた三人(さんにん)(をとこ)が、078もしや後返(あとがへ)りをして()ましては、079都合(つがふ)(わる)御座(ござ)いますから、080(これ)から彼等(かれら)(あと)()ひ、081無事(ぶじ)にお二人様(ふたりさま)(うづ)(みやこ)御到着(ごたうちやく)(あそ)ばす(やう)に、082牽制(けんせい)運動(うんどう)(いた)しませう』
083末子(すゑこ)『あゝ、084あなたは三五教(あななひけう)御方(おかた)御座(ござ)いますか? ()うマア御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)います。085仮令(たとへ)十人(じふにん)二十人(にじふにん)086押寄(おしよ)(きた)(とも)087(わたし)(おい)ては(べつ)心配(しんぱい)でも御座(ござ)いませぬが、088いらぬ殺生(せつしやう)(いた)すよりも、089無事(ぶじ)目的地(もくてきち)(まゐ)れましたならば自他(じた)(とも)是程(これほど)結構(けつこう)(こと)御座(ござ)いませぬ』
090捨子『(わたし)(ひめ)(さま)侍女(じぢよ)捨子姫(すてこひめ)御座(ござ)います。091何分(なにぶん)不束(ふつつか)(もの)(ゆゑ)092(よろ)しく御指導(ごしだう)御願(おねがひ)(まを)します』
093ネロ『左様(さやう)ならばこれで(しばら)御別(おわか)(いた)し、094後日(ごじつ)(あらた)めて御目(おめ)にかかりませう』
095()ふより(はや)(この)()立去(たちさ)つた。
096カール『お二方様(ふたかたさま)097モウ大丈夫(だいぢやうぶ)です。098サア(わたし)御案内(ごあんない)(いた)しませう』
099二女(にじよ)『ハイ有難(ありがた)う』
100(ここ)三人(さんにん)(あし)(はや)めて、101夜露(よつゆ)したたるテル山峠(やまたうげ)を、102(あし)(まか)せて(のぼ)()く。
103 (のぼ)八里(はちり)104(くだ)八里(はちり)のテル山峠(やまたうげ)中央(ちうおう)にまで(のぼ)()いた。105()(やうや)()(はな)れたと()え、106小鳥(ことり)(こゑ)(さかん)(きこ)えて()る。107太陽(たいやう)はすでに地平線下(ちへいせんか)()でて、108(やや)(たか)(のぼ)(たま)(ども)109(ひがし)にテル(やま)(みね)(ひか)へたることとて、110(その)円満(ゑんまん)御姿(おんすがた)(をが)むことは出来(でき)なかつた。111(かぜ)()きまはしに()つて、112轟々(ぐわうぐわう)(ひび)(きた)(たき)(おと)に、113末子姫(すゑこひめ)(みみ)(そばだ)て、
114末子(すゑこ)『カールさま、115大変(たいへん)(すず)(さう)(おと)(きこ)えて()たぢやありませぬか? どこぞ(この)(ちか)くに瀑布(たき)でも(かか)つて()るのではありますまいか』
116カール『ハイ、117二三丁(にさんちやう)(ばか)(きた)()りますと、118(いぬゐ)(たき)()つて、119テル(やま)谷々(たにだに)から(あつ)まる、120(だい)なる(いけ)(やま)中央(ちうおう)()り、121(その)(たき)から落下(らくか)する大瀑布(だいばくふ)(ぬの)(さら)したる(ごと)くに(かか)つて()ります』
122末子(すゑこ)『ズイ(ぶん)(なが)らく潮風(しほかぜ)()かれ、123(また)大変(たいへん)(あせ)()きましたから、124(ひと)道寄(みちより)をして、125(たき)にかかつて()たら如何(いかが)でせう? なア捨子姫(すてこひめ)さま』
126捨子(すてこ)『サ、127それは(ねが)うてもない(こと)御座(ござ)います。128カール(さま)御案内(ごあんない)(ねが)ひませうか』
129カール『サア……一寸(ちよつと)(かんが)(もの)御座(ござ)いますなア。130あの(いぬゐ)(たき)(うへ)戌亥(いぬゐ)(いけ)には、131大変(たいへん)大蛇(だいじや)(ひそ)んで()ります。132さうして大蛇(だいじや)()始終(しじう)(たき)(あた)りに徘徊(はいくわい)(いた)し、133(ひと)()いたり、134(あるひ)咬付(かみつ)いたり(いた)しますので、135三五教(あななひけう)信者(しんじや)は、136彼処(あこ)魔神(まがみ)(たき)(まを)し、137(たれ)立寄(たちよ)つた(もの)御座(ござ)いませぬ。138時々(ときどき)バラモン(けう)教主(けうしゆ)石熊(いしくま)宣伝使(せんでんし)(ひそ)かに一人(ひとり)139(とも)をも()れず、140(たき)にかかりに()かれると()大評判(だいへうばん)御座(ござ)います。141バラモン(けう)一時(いちじ)142()()えた(やう)寂寥(せきれう)(きた)して()りましたが、143石熊(いしくま)教主(けうしゆ)時々(ときどき)(いぬゐ)(たき)御修行(ごしうげふ)にお()でになると()ふのが呼物(よびもの)になつて、144数多(あまた)人々(ひとびと)(その)神徳(しんとく)(かん)じ、145(この)(ごろ)余程(よほど)勢力(せいりよく)()(かへ)し、146(すす)んで(うづ)(みやこ)(ちか)(まで)147教館(をしへやかた)()り、148数多(あまた)間者(かんじや)(みやこ)()れ、149(うづ)(やかた)松若彦(まつわかひこ)(さま)往生(わうじやう)させ、150自教(じけう)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)()れようとして、151いろいろの計画(けいくわく)をして()るので御座(ござ)いますから、152もしや石熊(いしくま)大将(たいしやう)(たき)(ひた)るべく()()つたならば、153(かへつ)面倒(めんだふ)(おこ)りますから、154今度(こんど)()(かく)(この)(まま)道寄(みちより)りをせず、155(うづ)(みやこ)(まで)直行(ちよくかう)なさつたら、156どんなもので御座(ござ)いませう。157それの(はう)第一(だいいち)安全(あんぜん)御座(ござ)いませう』
158末子(すゑこ)『それもさうで御座(ござ)いませうが、159(わらは)(なん)となくあの(たき)(おと)(みみ)()つてから、160どうしても一度(いちど)(たき)()たくなつてたまりませぬ。161一寸(ちよつと)()(だけ)でも(よろ)しいから、162立寄(たちよ)らうぢやありませぬか』
163捨子(すてこ)『カール(さま)164(なん)()つても神力(しんりき)無双(むさう)神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)(さま)御血(おんち)(なが)れの末子姫(すゑこひめ)(さま)(こと)ですから、165(けつ)して御案(おあん)じには(およ)びますまい。166どうぞ案内(あんない)して(くだ)さいませぬか』
167カール『さう()つて仰有(おつしや)るならば、168これも惟神(かむながら)でせう。169……サア御案内(ごあんない)(まを)します』
170(さき)()つて、171大木(たいぼく)(しげ)(はやし)(なか)(ななめ)(きた)(きた)へと(すす)んで()く。172()れば幾十丈(いくじふぢやう)とも()れぬ大岩石(だいがんせき)中央(ちうあう)銀河(ぎんが)(たて)にした(やう)大瀑布(だいばくふ)真直(まつすぐ)(かか)り、173(あを)()つた滝壺(たきつぼ)には(しろ)(あわ)濛々(もうもう)として()()ち、174(じつ)涼味津々(りやうみしんしん)として(なつ)(あつ)さはどこへやら、175(にはか)身体(しんたい)緊張(きんちやう)爽快(さうくわい)(おも)ひに()たされた。176()()()れば、177(たき)(かたはら)(だい)(をとこ)只一人(ただひとり)178両手(りやうて)(あは)せた(まま)179(かほ)真青(まつさを)になり、180(くちびる)紫色(むらさきいろ)(かは)り、181()(ばか)りキヨロつかせ、182直立(ちよくりつ)不動(ふどう)姿勢(しせい)()つて()る。183カールは目敏(めざと)くも(これ)()て、184『アツ』と(ばか)りに(おどろ)いたが、185(とどろ)(むね)(みづか)(おさ)へ、186末子姫(すゑこひめ)(みみ)(くち)()せ、
187カール『モシ、188あれを御覧(ごらん)なさいませ。189あそこに直立(ちよくりつ)不動(ふどう)姿勢(しせい)をとつてる(だい)(をとこ)()りませう。190あれが最前(さいぜん)(まを)した、191高照山(たかてるやま)のバラモンの教主(けうしゆ)192石熊(いしくま)大将(たいしやう)御座(ござ)います。193あの(たき)(うへ)から瞰下(かんか)してゐる大蛇(をろち)(おそ)ろしい()……キツと大蛇(をろち)魅入(みい)れられ、194身体(からだ)(うご)けなくなつて()るのでせう。195こんな(とこ)長居(ながゐ)(おそ)れです。196吾々(われわれ)もあのやうな()()はされては大変(たいへん)ですから、197足許(あしもと)(あか)るい(うち)にここを立去(たちさ)らうぢやありませぬか? (また)魅入(みい)れられたら大変(たいへん)ですよ!』
198 末子姫(すゑこひめ)(かしら)左右(さいう)()(なが)ら、
199末子(すゑこ)『イエイエ、200(わらは)神素盞嗚尊(かむすさのをのみこと)(むすめ)201(てき)()退却(たいきやく)すると()(こと)到底(たうてい)(しの)びませぬ。202最早(もはや)(のり)かけた(ふね)203大蛇(をろち)言向(ことむけ)(やは)し、204石熊(いしくま)さまとやらを(たす)けて()げたら、205如何(いかが)でせう。206(これ)吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)職務(しよくむ)だと(おも)ひます』
207捨子(すてこ)素盞嗚尊(すさのをのみこと)(さま)八岐(やまた)大蛇(をろち)退治(たいぢ)(ため)208世界中(せかいぢう)御廻(おまは)(あそ)ばす御神務(ごしんむ)209()いてはお一人(ひとり)にては(この)(ひろ)世界(せかい)210()(まは)らないから、211自分(じぶん)のいたいけな御娘子(おむすめご)を、212世界(せかい)へお(つか)はし(あそ)ばす御経綸(ごけいりん)惟神的(かむながらてき)御始(おはじ)めなさつて()られるのですから、213たかが()れたあれ(くらゐ)大蛇(をろち)(おそ)れるやうな(こと)では、214到底(たうてい)アマゾン(がは)のモールバンドや、215醜大蛇(しこをろち)言霊(ことたま)(もつ)退治(たいぢ)することは出来(でき)ますまい。216斯様(かやう)(ところ)吾々(われわれ)がお(とも)をして(まゐ)つたのも、217神様(かみさま)御引合(おひきあは)せ……三五教(あななひけう)には(てき)()て、218退却(たいきやく)すると()(こと)(ゆる)されませぬ。219ひとつ誠一(まことひと)つの言霊(ことたま)(もつ)(たたか)つて()やうぢやありませぬか』
220カール『ぢやと(まを)してそれは(あんま)無謀(むぼう)では御座(ござ)いますまいか? 何程(なにほど)御神力(ごしんりき)があればとて、221こちらは人間(にんげん)身体(からだ)……(むか)うは畜生(ちくしやう)222人間(にんげん)言葉(ことば)(わか)道理(だうり)もありますまい。223(また)(ほか)(ひと)ならば()(かく)も、224極悪無道(ごくあくぶだう)のバラモン(けう)石熊(いしくま)(ごと)(もの)をお(たす)けになつた(ところ)(なん)功能(こうのう)もありますまい。225天下(てんか)害毒(がいどく)(なが)し、226人民(じんみん)(しひた)げる悪人(あくにん)(たす)けようものなら、227それこそ天下(てんか)紛乱(ふんらん)()(とき)なく、228(つひ)には(うづ)(みやこ)まで蹂躙(じうりん)し、229良民(りやうみん)(しへた)(くる)しむるは()のあたり、230(いま)大蛇(をろち)()せられて、231あの(とほ)身体(しんたい)強直(きやうちよく)し、232(いま)蛇腹(じやふく)(ほうむ)られむとしてゐるのも(かみ)御心(みこころ)御座(ござ)いませう。233サアサア、234(はや)(この)()立去(たちさ)らうぢやありませぬか?』
235末子(すゑこ)如何(いか)なる悪人(あくにん)(いへど)(もと)(おな)神様(かみさま)分心分体(ぶんしんぶんたい)236(あめ)(した)(てき)もなければ、237吾々(われわれ)(あだ)もないと(ふか)(ぞん)じて()ります。238(この)惨状(さんじやう)見棄(みす)てて、239如何(どう)して吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)(かへ)ることが出来(でき)ませう。240神様(かみさま)(たい)しても(はづ)かしくてなりませぬ。241(これ)より言霊(ことたま)発射(はつしや)し、242大蛇(をろち)帰順(きじゆん)させ、243石熊(いしくま)(いのち)(たす)けてやつたら、244キツと善道(ぜんだう)立返(たちかへ)るでせう。245(なさけ)(ひと)(ため)ならずとか(まを)しまして、246(ひと)(たす)けておけば、247(また)自分(じぶん)神様(かみさま)御恵(みめぐみ)()つて、248九死一生(きうしいつしやう)場合(ばあひ)249(たれ)かの()(とほ)して(たす)けられるものです。250吾々(われわれ)(さいは)ひ、251此処(ここ)立現(たちあら)はれたのも(まつた)仁慈(じんじ)無限(むげん)神様(かみさま)御摂理(ごせつり)でせう』
252捨子(すてこ)(ひめ)(さま)(あふ)御尤(ごもつと)も……カールさま! (けつ)して御心配(ごしんぱい)()りませぬ。253キツと御安心(ごあんしん)させますから、254(この)()妾等(わたしら)にお(まか)(くだ)さいませ』
255カール『左様(さやう)なればお言葉(ことば)(したが)ひませう』
256 (ここ)末子姫(すゑこひめ)(たき)(よこ)たはつて、257崖下(がいか)石熊(いしくま)身体(からだ)(にら)みつめ、258(いま)大口(おほぐち)()けて一呑(ひとの)みにせむとする(いきほひ)(しめ)してゐる大蛇(をろち)(むか)つて、259宣伝歌(せんでんか)(うた)()かした。
260末子姫(すゑこひめ)(かみ)(おもて)(あら)はれて
261(ぜん)(あく)とを立分(たてわ)ける
262(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
263(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
264(ただ)何物(なにもの)天地(あめつち)
265(かみ)(たふと)御水火(みいき)より
266(あら)はれ()でし(もの)なれば
267四方(よも)神人(しんじん)(はじ)めとし
268山河草木(さんかさうもく)()ふも(さら)
269禽獣虫魚(きんじうちうぎよ)(いた)(まで)
270()つても()れぬ同胞(はらから)
271数多(あまた)同胞(はらから)ある(なか)
272天地(てんち)(かみ)経綸(けいりん)
273()けて(うま)れし(ひと)()
274(すぐ)れて(たふと)きものぞかし
275あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
276御霊(みたま)(さち)はひましまして
277(いぬゐ)(いけ)(ひそ)むなる
278これの大蛇(をろち)(たましひ)
279(たふと)(かみ)御水火(みいき)をば
280かけさせ(たま)ひて天地(あめつち)
281(まも)りの(かみ)逸早(いちはや)
282神徳(しんとく)()たせ(たま)はれよ
283(みづ)御霊(みたま)()れませる
284神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)
285豊葦原(とよあしはら)国中(くになか)
286さやれる八岐(やまた)大蛇(をろち)をば
287(まこと)(つるぎ)()()たし
288(めぐみ)(たま)(ひか)らせて
289大蛇(をろち)(みたま)(ことごと)
290服従(まつろ)(やは)(たま)ふなり
291(みづ)御霊(みたま)(すゑ)()
292(あら)はれ()でたる末子姫(すゑこひめ)
293顕恩郷(けんおんきやう)立出(たちい)でて
294大海原(おほうなばら)()(わた)
295(やうや)くここに()()れば
296バラモン(けう)神司(かむづかさ)
297御稜威(みいづ)(たか)高照(たかてる)
298(やま)(ふもと)宮柱(みやはしら)
299(ふと)しく()てて(かみ)(みち)
300(つた)(たま)へる石熊(いしくま)
301(たふと)(きよ)(かみ)(みや)
302仮令(たとへ)教理(けうり)(かは)(とも)
303世人(よびと)(おも)真心(まごころ)
304吾等(われら)(むね)(たが)ふまじ
305(あさひ)()(とも)(くも)(とも)
306(つき)()(とも)()くる(とも)
307仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)(とも)
308世界(せかい)(おも)真心(まごころ)
309いかでか差別(けじめ)あらざらむ
310(よろづ)(もの)霊長(れいちやう)
311(うま)()でたる(ひと)()
312大蛇(をろち)(かみ)(あら)はれて
313()まむとするは何事(なにごと)
314森羅万象(しんらばんしやう)(ことごと)
315完美(うまら)委曲(つばら)(まも)ります
316皇大神(すめおほかみ)御心(みこころ)
317(かな)はぬ(なんぢ)振舞(ふるまひ)
318わが言霊(ことたま)聞分(ききわ)けて
319一時(いちじ)(はや)(あらた)めよ
320(かみ)(なんぢ)身辺(しんぺん)
321(あさ)(ゆふ)なに(まも)ります
322(その)神恩(しんおん)()らずして
323(かみ)宮居(みやゐ)石熊(いしくま)
324(ただ)一口(ひとくち)()まむとは
325天地(てんち)(ゆる)さぬ醜業(しこわざ)
326大蛇(をろち)(かみ)長神(ながかみ)
327今日(けふ)(なんぢ)(たま)()
328生命(いのち)(ほろ)瀬戸際(せとぎは)
329(わが)言霊(ことたま)服従(まつろ)ひて
330天地(てんち)道理(だうり)正覚(しやうかく)
331(しこ)身体(からだ)脱出(だつしゆつ)
332うつしき女神(めがみ)(たい)となり
333高天原(たかあまはら)(のぼ)りませ
334()れは(かみ)()末子姫(すゑこひめ)
335(てん)(かは)りて天津神(あまつかみ)
336()さし(たま)ひし言霊(ことたま)
337(なんぢ)(ため)()(つた)
338あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
339御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
340(うた)(をは)れば、341今迄(いままで)形相(げうさう)(すさま)じく、342石熊(いしくま)一呑(ひとの)みにせむと身構(みがまへ)()たりし大蛇(をろち)は、343両眼(りやうがん)より(たま)(ごと)(なみだ)(なが)し、344幾度(いくど)となく末子姫(すゑこひめ)(むか)つて(あたま)()げ、345感謝(かんしや)()(へう)しつつ、346巨大(きよだい)なる姿(すがた)(たき)(なか)(かく)して(しま)つた。
347 今迄(いままで)大蛇(をろち)魅入(みい)れられ、348身体(しんたい)強直(きやうちよく)して身動(みうご)きもならなかつた石熊(いしくま)(ただち)身体(しんたい)自由(じいう)()349(うれ)(なみだ)両眼(りやうがん)()らしつつ、350三人(さんにん)(まへ)()をついて救命(きうめい)大恩(たいおん)感謝(かんしや)するのであつた。
351大正一一・八・一四 旧六・二二 松村真澄録)