霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第二章 (いぬゐ)(たき)〔八四四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第1篇 高砂の松 よみ(新仮名遣い):たかさごのまつ
章:第2章 乾の滝 よみ(新仮名遣い):いぬいのたき 通し章番号:844
口述日:1922(大正11)年08月14日(旧06月22日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
男たちの話を寝ながら聞いていた末子姫と捨子姫は、彼らが自分たちを捕らえに来たバラモン教徒であることを知り、追い払おうと幽霊の真似をして脅かしに出た。
シーナは驚いて仲間を揺り起こした。二人の姿に驚いたイサク、チール、シーナの三人はいずこへともなく逃げ去ってしまった。
しかし残ったカールとネロは少しも驚かず、末子姫と捨子姫に向かって呼びかけた。そして、自分たちは実は珍の都の松若彦に仕える三五教徒だと明かした。二人は松若彦の内命を奉じて、バラモン教の中に入り込んで内偵をしているのだと語った。
ネロは残りの任務を果たすべく、その場を立ち去った。カールは二人を珍の都に案内することになった。途中、大瀑布の音が聞こえて来た。カールは乾の滝があるという。末子姫は禊を提案した。
カールは乾の滝には大蛇が棲んでいて、そこへ禊に行くのはバラモン教のこの地の教主・石熊だけだと止めた。しかし末子姫は、あの滝の音を聞いてどうしても行きたくなったと言い、カールも案内することになった。
果たして、滝にはすでに石熊が禊に来ていたが、滝の大蛇に魅入られて動けなくなり、正に呑まんとされるところであった。末子姫は大蛇に向かって、大蛇の身魂を慰撫する宣伝歌を歌いだした。
この宣伝歌を聴いた大蛇は涙を流し、末子姫に幾度となく頭を下げると、滝の中に姿を隠した。石熊は身体の自由を取り戻し、三人に対して命を救ってくれた大恩を感謝した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-01-11 19:47:50 OBC :rm3002
愛善世界社版:19頁 八幡書店版:第5輯 579頁 修補版: 校定版:20頁 普及版:7頁 初版: ページ備考:
001 シーナは(なん)となく恐怖心(きようふしん)()られて、002(ふる)(をのの)いて()た。003最前(さいぜん)から()(にん)(はなし)寝乍(ねなが)(ひそ)かに()いて()末子姫(すゑこひめ)004捨子姫(すてこひめ)は、005バラモン(けう)石熊(いしくま)部下(ぶか)006自分(じぶん)()(とら)へむとしてここに(きた)りし(もの)なる(こと)(さと)り、007上衣(うはぎ)()ぎ、008両人(りやうにん)はひそかに(しめ)(あは)せて白衣(びやくい)となり、009(かみ)をおどろに(みだ)して、010ダラリと()(なが)ら、011二人(ふたり)一度(いちど)(しろ)()(まへ)()し、
012末子姫、捨子姫(うら)めしやなア、013高照山(たかてるやま)谷間(たにあひ)(おい)て……』
014(ほそ)(かな)しい(こゑ)でやりかけた。015シーナは(この)姿(すがた)をチラリと()て、016イサクを(ゆす)(おこ)し、
017シーナ『オイオイ……イサク()きてくれ……(みな)(やつ)018タツタツ大変(たいへん)だー、019()()た、020()たワイのう』
021(ふる)ひおののいて()る。022チールは(この)(こゑ)(おどろ)き、023あたりを()れば、024()(しげ)みの(なか)よりいやらしき姿(すがた)白衣(びやくい)()けた幽霊(いうれい)025ボーツと()いた(やう)(あら)はれて()る。
026チール『ヤア此奴(こやつ)大変(たいへん)だー。027()げろ()げろ』
028(さき)(あらそ)ひ、029イサク、030シーナ、031チールの(さん)(にん)()けつ、032まろびつ、033(いのち)カラガラ何処(いづこ)ともなく()()つて(しま)つた。034カール、035ネロの両人(りやうにん)(すこ)しも(さわ)がず泰然(たいぜん)として、036(ふた)つの(あや)しき姿(すがた)(しばら)見守(みまも)つて()た。
037カール『失礼(しつれい)(なが)ら……貴女(あなた)(さま)顕恩城(けんおんじやう)立出(たちいで)て、038固彦(かたひこ)(ため)(とら)へられ、039ここへ漂着(へうちやく)(あそ)ばした、040(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)末子(ばつし)041末子姫(すゑこひめ)(さま)042侍女(じぢよ)捨子姫(すてこひめ)(さま)()両所(りやうしよ)では御座(ござ)いませぬか? (わたし)(じつ)(ところ)(うづ)(みやこ)松若彦(まつわかひこ)(さま)(つか)へて()ります三五教(あななひけう)のプロパガンデイースト(宣伝使(せんでんし))で御座(ござ)います、043一人(ひとり)(をとこ)はネロと(まを)しまして、044これもヤツパリ三五(あななひ)(みち)信者(しんじや)御座(ござ)いますが、045(この)(ごろ)高照山(たかてるやま)にバラモン(けう)一派(いつぱ)石熊(いしくま)なる(もの)(あら)はれ、046(うづ)(みやこ)へいろいろと間者(かんじや)()()ませ、047転覆(てんぷく)計画(けいくわく)をめぐらして()りますれば、048吾々(われわれ)教主(けうしゆ)松若彦(まつわかひこ)(さま)内命(ないめい)(ほう)じ、049バラモン(けう)様子(やうす)(さぐ)るべく、050バラモンの信者(しんじや)となつて、051今日迄(けふまで)()れて()ました。052(しか)るに石熊(いしくま)大将(たいしやう)言葉(ことば)に、053貴女(あなた)(がた)今明日(こんみやうにち)(うち)に、054海原(うなばら)(わた)りハラの(みなと)()上陸(じやうりく)(あそ)ばし、055(うづ)(くに)へお()しになるに相違(さうゐ)ない。056もしも(うづ)(みやこ)両人(りやうにん)乗込(のりこ)んだが最後(さいご)バラモン(けう)(たい)し、057大変(たいへん)なる強敵(きやうてき)出来(でき)るやうなものだから、058テル山峠(やまたうげ)見張(みは)りをして、059両人(りやうにん)引捉(ひつとら)へ、060高照山(たかてるやま)()(かへ)れとの命令(めいれい)061日頃(ひごろ)吾々(われわれ)両人(りやうにん)(かみ)(さま)()奉公(ほうこう)するのは、062今此時(いまこのとき)(よろこ)(いさ)んで、063一行(いつかう)(なか)(くは)はり此処迄(ここまで)やつて()ました(もの)御座(ござ)います』
064ネロ『(わたし)貴女(あなた)(がた)()一行(いつかう)此処(ここ)にお(やす)みと()ふことを、065ゆくりなくも(つき)にてらして(さと)りました(ゆゑ)066ワザとシーナの旧悪(きうあく)知悉(ちしつ)してゐるのを(さいは)ひ、067おどして()がさむかと(かんが)へ、068いろいろの(はなし)貴女(あなた)(さま)(きこ)えよがしに申上(まをしあ)げました。069早速(さつそく)貴女(あなた)(さま)頓智(とんち)によりて、070(さん)(にん)者共(ものども)は、071あの(とほ)()()せまして御座(ござ)います。072最早(もはや)一安心(ひとあんしん)御座(ござ)います。073サア(これ)からカールさまと(この)(たうげ)(いま)(うち)に、074疲労(くたびれ)でせうが、075仮令(たとへ)(すこ)しでも(かま)ひませぬから、076()(のぼ)(くだ)さいませ。077(わたし)(いま)()()つた(さん)(にん)(をとこ)が、078もしや後返(あとがへ)りをして()ましては、079都合(つがふ)(わる)御座(ござ)いますから、080(これ)から(かれ)()(あと)()ひ、081無事(ぶじ)にお二人(ふたり)(さま)(うづ)(みやこ)()到着(たうちやく)(あそ)ばす(やう)に、082牽制(けんせい)運動(うんどう)(いた)しませう』
083末子(すゑこ)『あゝ、084あなたは三五教(あななひけう)()(かた)御座(ござ)いますか? ()うマア()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)います。085仮令(たとへ)(じふ)(にん)二十(にじふ)(にん)086押寄(おしよ)(きた)(とも)087(わたし)(おい)ては(べつ)心配(しんぱい)でも御座(ござ)いませぬが、088いらぬ殺生(せつしやう)(いた)すよりも、089無事(ぶじ)目的地(もくてきち)(まゐ)れましたならば自他(じた)(とも)是程(これほど)結構(けつこう)(こと)御座(ござ)いませぬ』
090捨子『(わたし)(ひめ)(さま)侍女(じぢよ)捨子姫(すてこひめ)御座(ござ)います。091何分(なにぶん)不束(ふつつか)(もの)(ゆゑ)092(よろ)しく()指導(しだう)()(ねがひ)(まを)します』
093ネロ『左様(さやう)ならばこれで(しばら)()(わか)(いた)し、094後日(ごじつ)(あらた)めて()()にかかりませう』
095()ふより(はや)(この)()立去(たちさ)つた。
096カール『お二方(ふたかた)(さま)097モウ大丈夫(だいぢやうぶ)です。098サア(わたし)()案内(あんない)(いた)しませう』
099二女(にじよ)『ハイ有難(ありがた)う』
100(ここ)(さん)(にん)(あし)(はや)めて、101夜露(よつゆ)したたるテル山峠(やまたうげ)を、102(あし)(まか)せて(のぼ)()く。
103 (のぼ)(はち)()104(くだ)(はち)()のテル山峠(やまたうげ)中央(ちうおう)にまで(のぼ)()いた。105()(やうや)()(はな)れたと()え、106小鳥(ことり)(こゑ)(さかん)(きこ)えて()る。107太陽(たいやう)はすでに地平線(ちへいせん)()()でて、108(やや)(たか)(のぼ)(たま)(ども)109(ひがし)にテル(やま)(みね)(ひか)へたることとて、110(その)円満(ゑんまん)(おん)姿(すがた)(をが)むことは出来(でき)なかつた。111(かぜ)()きまはしに()つて、112轟々(ぐわうぐわう)(ひび)(きた)(たき)(おと)に、113末子姫(すゑこひめ)(みみ)(そばだ)て、
114末子(すゑこ)『カールさま、115大変(たいへん)(すず)(さう)(おと)(きこ)えて()たぢやありませぬか? どこぞ(この)(ちか)くに瀑布(たき)でも(かか)つて()るのではありますまいか』
116カール『ハイ、117二三丁(にさんちやう)(ばか)(きた)()りますと、118(いぬゐ)(たき)()つて、119テル(やま)谷々(たにだに)から(あつ)まる、120(だい)なる(いけ)(やま)中央(ちうおう)()り、121(その)(たき)から落下(らくか)する大瀑布(だいばくふ)(ぬの)(さら)したる(ごと)くに(かか)つて()ります』
122末子(すゑこ)『ズイ(ぶん)(なが)らく潮風(しほかぜ)()かれ、123(また)大変(たいへん)(あせ)()きましたから、124(ひと)道寄(みちより)をして、125(たき)にかかつて()たら如何(いかが)でせう? なア捨子姫(すてこひめ)さま』
126捨子(すてこ)『サ、127それは(ねが)うてもない(こと)御座(ござ)います。128カール(さま)()案内(あんない)(ねが)ひませうか』
129カール『サア……一寸(ちよつと)(かんが)(もの)御座(ござ)いますなア。130あの(いぬゐ)(たき)(うへ)戌亥(いぬゐ)(いけ)には、131大変(たいへん)大蛇(だいじや)(ひそ)んで()ります。132さうして大蛇(だいじや)()始終(しじう)(たき)(あた)りに徘徊(はいくわい)(いた)し、133(ひと)()いたり、134(あるひ)咬付(かみつ)いたり(いた)しますので、135三五教(あななひけう)信者(しんじや)は、136彼処(あこ)魔神(まがみ)(たき)(まを)し、137(たれ)立寄(たちよ)つた(もの)御座(ござ)いませぬ。138時々(ときどき)バラモン(けう)教主(けうしゆ)石熊(いしくま)宣伝使(せんでんし)(ひそ)かに一人(ひとり)139(とも)をも()れず、140(たき)にかかりに()かれると()大評判(だいへうばん)御座(ござ)います。141バラモン(けう)(いち)()142()()えた(やう)寂寥(せきれう)(きた)して()りましたが、143石熊(いしくま)教主(けうしゆ)時々(ときどき)(いぬゐ)(たき)()修行(しうげふ)にお()でになると()ふのが呼物(よびもの)になつて、144数多(あまた)人々(ひとびと)(その)神徳(しんとく)(かん)じ、145(この)(ごろ)余程(よほど)勢力(せいりよく)()(かへ)し、146(すす)んで(うづ)(みやこ)(ちか)(まで)147教館(をしへやかた)()り、148数多(あまた)間者(かんじや)(みやこ)()れ、149(うづ)(やかた)松若彦(まつわかひこ)(さま)往生(わうじやう)させ、150自教(じけう)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)()れようとして、151いろいろの計画(けいくわく)をして()るので御座(ござ)いますから、152もしや石熊(いしくま)大将(たいしやう)(たき)(ひた)るべく()()つたならば、153(かへつ)面倒(めんだふ)(おこ)りますから、154今度(こんど)()(かく)(この)(まま)道寄(みちより)りをせず、155(うづ)(みやこ)(まで)直行(ちよくかう)なさつたら、156どんなもので御座(ござ)いませう。157それの(はう)第一(だいいち)安全(あんぜん)御座(ござ)いませう』
158末子(すゑこ)『それもさうで御座(ござ)いませうが、159(わらは)(なん)となくあの(たき)(おと)(みみ)()つてから、160どうしても一度(いちど)(たき)()たくなつてたまりませぬ。161一寸(ちよつと)()(だけ)でも(よろ)しいから、162立寄(たちよ)らうぢやありませぬか』
163捨子(すてこ)『カール(さま)164(なん)()つても神力(しんりき)無双(むさう)(かむ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(さま)(おん)()(なが)れの末子姫(すゑこひめ)(さま)(こと)ですから、165(けつ)して()(あん)じには(およ)びますまい。166どうぞ案内(あんない)して(くだ)さいませぬか』
167カール『さう()つて仰有(おつしや)るならば、168これも惟神(かむながら)でせう。169……サア()案内(あんない)(まを)します』
170(さき)()つて、171大木(たいぼく)(しげ)(はやし)(なか)(ななめ)(きた)(きた)へと(すす)んで()く。172()れば幾十丈(いくじふぢやう)とも()れぬ大岩石(だいがんせき)中央(ちうあう)銀河(ぎんが)(たて)にした(やう)大瀑布(だいばくふ)真直(まつすぐ)(かか)り、173(あを)()つた滝壺(たきつぼ)には(しろ)(あわ)濛々(もうもう)として()()ち、174(じつ)涼味(りやうみ)津々(しんしん)として(なつ)(あつ)さはどこへやら、175(にはか)身体(しんたい)緊張(きんちやう)爽快(さうくわい)(おも)ひに()たされた。176()()()れば、177(たき)(かたはら)(だい)(をとこ)只一人(ただひとり)178両手(りやうて)(あは)せた(まま)179(かほ)真青(まつさを)になり、180(くちびる)紫色(むらさきいろ)(かは)り、181()(ばか)りキヨロつかせ、182直立(ちよくりつ)不動(ふどう)姿勢(しせい)()つて()る。183カールは目敏(めざと)くも(これ)()て、184『アツ』と(ばか)りに(おどろ)いたが、185(とどろ)(むね)(みづか)(おさ)へ、186末子姫(すゑこひめ)(みみ)(くち)()せ、
187カール『モシ、188あれを御覧(ごらん)なさいませ。189あそこに直立(ちよくりつ)不動(ふどう)姿勢(しせい)をとつてる(だい)(をとこ)()りませう。190あれが最前(さいぜん)(まを)した、191高照山(たかてるやま)のバラモンの教主(けうしゆ)192石熊(いしくま)大将(たいしやう)御座(ござ)います。193あの(たき)(うへ)から瞰下(かんか)してゐる大蛇(をろち)(おそ)ろしい()……キツと大蛇(をろち)魅入(みい)れられ、194身体(からだ)(うご)けなくなつて()るのでせう。195こんな(とこ)長居(ながゐ)(おそ)れです。196吾々(われわれ)もあのやうな()()はされては大変(たいへん)ですから、197足許(あしもと)(あか)るい(うち)にここを立去(たちさ)らうぢやありませぬか? (また)魅入(みい)れられたら大変(たいへん)ですよ!』
198 末子姫(すゑこひめ)(かしら)左右(さいう)()(なが)ら、
199末子(すゑこ)『イエイエ、200(わらは)(かむ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(むすめ)201(てき)()退却(たいきやく)すると()(こと)到底(たうてい)(しの)びませぬ。202最早(もはや)(のり)かけた(ふね)203大蛇(をろち)言向(ことむけ)(やは)し、204石熊(いしくま)さまとやらを(たす)けて()げたら、205如何(いかが)でせう。206(これ)吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)職務(しよくむ)だと(おも)ひます』
207捨子(すてこ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(さま)八岐(やまた)大蛇(をろち)退治(たいぢ)(ため)208世界中(せかいぢう)()(まは)(あそ)ばす()神務(しんむ)209()いてはお一人(ひとり)にては(この)(ひろ)世界(せかい)210()(まは)らないから、211自分(じぶん)のいたいけな()娘子(むすめご)を、212世界(せかい)へお(つか)はし(あそ)ばす()経綸(けいりん)惟神(かむながら)(てき)()(はじ)めなさつて()られるのですから、213たかが()れたあれ(くらゐ)大蛇(をろち)(おそ)れるやうな(こと)では、214到底(たうてい)アマゾン(がは)のモールバンドや、215醜大蛇(しこをろち)言霊(ことたま)(もつ)退治(たいぢ)することは出来(でき)ますまい。216斯様(かやう)(ところ)吾々(われわれ)がお(とも)をして(まゐ)つたのも、217(かみ)(さま)()引合(ひきあは)せ……三五教(あななひけう)には(てき)()て、218退却(たいきやく)すると()(こと)(ゆる)されませぬ。219ひとつ誠一(まことひと)つの言霊(ことたま)(もつ)(たたか)つて()やうぢやありませぬか』
220カール『ぢやと(まを)してそれは(あんま)無謀(むぼう)では御座(ござ)いますまいか? 何程(なにほど)()神力(しんりき)があればとて、221こちらは人間(にんげん)身体(からだ)……(むか)うは畜生(ちくしやう)222人間(にんげん)言葉(ことば)(わか)道理(だうり)もありますまい。223(また)(ほか)(ひと)ならば()(かく)も、224極悪(ごくあく)無道(ぶだう)のバラモン(けう)石熊(いしくま)(ごと)(もの)をお(たす)けになつた(ところ)(なん)功能(こうのう)もありますまい。225天下(てんか)害毒(がいどく)(なが)し、226人民(じんみん)(しひた)げる悪人(あくにん)(たす)けようものなら、227それこそ天下(てんか)紛乱(ふんらん)()(とき)なく、228(つひ)には(うづ)(みやこ)まで蹂躙(じうりん)し、229良民(りやうみん)(しへた)(くる)しむるは()のあたり、230(いま)大蛇(をろち)()せられて、231あの(とほ)身体(しんたい)強直(きやうちよく)し、232(いま)蛇腹(じやふく)(ほうむ)られむとしてゐるのも(かみ)御心(みこころ)御座(ござ)いませう。233サアサア、234(はや)(この)()立去(たちさ)らうぢやありませぬか?』
235末子(すゑこ)如何(いか)なる悪人(あくにん)(いへど)(もと)(おな)(かみ)(さま)分心(ぶんしん)分体(ぶんたい)236(あめ)(した)(てき)もなければ、237吾々(われわれ)(あだ)もないと(ふか)(ぞん)じて()ります。238(この)惨状(さんじやう)見棄(みす)てて、239如何(どう)して吾々(われわれ)宣伝使(せんでんし)(かへ)ることが出来(でき)ませう。240(かみ)(さま)(たい)しても(はづ)かしくてなりませぬ。241(これ)より言霊(ことたま)発射(はつしや)し、242大蛇(をろち)帰順(きじゆん)させ、243石熊(いしくま)(いのち)(たす)けてやつたら、244キツと善道(ぜんだう)立返(たちかへ)るでせう。245(なさけ)(ひと)(ため)ならずとか(まを)しまして、246(ひと)(たす)けておけば、247(また)自分(じぶん)(かみ)(さま)御恵(みめぐみ)()つて、248九死(きうし)一生(いつしやう)場合(ばあひ)249(たれ)かの()(とほ)して(たす)けられるものです。250吾々(われわれ)(さいは)ひ、251此処(ここ)立現(たちあら)はれたのも(まつた)仁慈(じんじ)無限(むげん)(かみ)(さま)()摂理(せつり)でせう』
252捨子(すてこ)(ひめ)(さま)(あふ)御尤(ごもつと)も……カールさま! (けつ)して()心配(しんぱい)()りませぬ。253キツと()安心(あんしん)させますから、254(この)()(わたし)()にお(まか)(くだ)さいませ』
255カール『左様(さやう)なればお言葉(ことば)(したが)ひませう』
256 (ここ)末子姫(すゑこひめ)(たき)(よこ)たはつて、257崖下(がいか)石熊(いしくま)身体(からだ)(にら)みつめ、258(いま)大口(おほぐち)()けて一呑(ひとの)みにせむとする(いきほひ)(しめ)してゐる大蛇(をろち)(むか)つて、259宣伝歌(せんでんか)(うた)()かした。
260末子姫(すゑこひめ)(かみ)(おもて)(あら)はれて
261(ぜん)(あく)とを立分(たてわ)ける
262(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
263(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
264(ただ)何物(なにもの)天地(あめつち)
265(かみ)(たふと)御水火(みいき)より
266(あら)はれ()でし(もの)なれば
267四方(よも)神人(しんじん)(はじ)めとし
268山河(さんか)草木(さうもく)()ふも(さら)
269禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)(いた)(まで)
270()つても()れぬ同胞(はらから)
271数多(あまた)同胞(はらから)ある(なか)
272天地(てんち)(かみ)経綸(けいりん)
273()けて(うま)れし(ひと)()
274(すぐ)れて(たふと)きものぞかし
275あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
276御霊(みたま)(さち)はひましまして
277(いぬゐ)(いけ)(ひそ)むなる
278これの大蛇(をろち)(たましひ)
279(たふと)(かみ)御水火(みいき)をば
280かけさせ(たま)ひて天地(あめつち)
281(まも)りの(かみ)逸早(いちはや)
282神徳(しんとく)()たせ(たま)はれよ
283(みづ)御霊(みたま)()れませる
284(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
285豊葦原(とよあしはら)国中(くになか)
286さやれる八岐(やまた)大蛇(をろち)をば
287(まこと)(つるぎ)()()たし
288(めぐみ)(たま)(ひか)らせて
289大蛇(をろち)(みたま)(ことごと)
290服従(まつろ)(やは)(たま)ふなり
291(みづ)御霊(みたま)(すゑ)()
292(あら)はれ()でたる末子姫(すゑこひめ)
293顕恩郷(けんおんきやう)立出(たちい)でて
294大海原(おほうなばら)()(わた)
295(やうや)くここに()()れば
296バラモン(けう)神司(かむづかさ)
297御稜威(みいづ)(たか)高照(たかてる)
298(やま)(ふもと)宮柱(みやはしら)
299(ふと)しく()てて(かみ)(みち)
300(つた)(たま)へる石熊(いしくま)
301(たふと)(きよ)(かみ)(みや)
302仮令(たとへ)教理(けうり)(かは)(とも)
303世人(よびと)(おも)真心(まごころ)
304(われ)()(むね)(たが)ふまじ
305(あさひ)()(とも)(くも)(とも)
306(つき)()(とも)()くる(とも)
307仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)(とも)
308世界(せかい)(おも)真心(まごころ)
309いかでか差別(けじめ)あらざらむ
310(よろづ)(もの)霊長(れいちやう)
311(うま)()でたる(ひと)()
312大蛇(をろち)(かみ)(あら)はれて
313()まむとするは何事(なにごと)
314森羅(しんら)万象(ばんしやう)(ことごと)
315完美(うまら)委曲(つばら)(まも)ります
316(すめ)大神(おほかみ)御心(みこころ)
317(かな)はぬ(なんぢ)振舞(ふるまひ)
318わが言霊(ことたま)聞分(ききわ)けて
319(いち)()(はや)(あらた)めよ
320(かみ)(なんぢ)身辺(しんぺん)
321(あさ)(ゆふ)なに(まも)ります
322(その)神恩(しんおん)()らずして
323(かみ)宮居(みやゐ)石熊(いしくま)
324(ただ)一口(ひとくち)()まむとは
325天地(てんち)(ゆる)さぬ醜業(しこわざ)
326大蛇(をろち)(かみ)長神(ながかみ)
327今日(けふ)(なんぢ)(たま)()
328生命(いのち)(ほろ)瀬戸際(せとぎは)
329(わが)言霊(ことたま)服従(まつろ)ひて
330天地(てんち)道理(だうり)正覚(しやうかく)
331(しこ)身体(からだ)脱出(だつしゆつ)
332うつしき女神(めがみ)(たい)となり
333高天原(たかあまはら)(のぼ)りませ
334()れは(かみ)()末子姫(すゑこひめ)
335(てん)(かは)りて天津(あまつ)(かみ)
336()さし(たま)ひし言霊(ことたま)
337(なんぢ)(ため)()(つた)
338あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
339御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
340(うた)(をは)れば、341今迄(いままで)形相(げうさう)(すさま)じく、342石熊(いしくま)一呑(ひとの)みにせむと身構(みがま)()たりし大蛇(をろち)は、343両眼(りやうがん)より(たま)(ごと)(なみだ)(なが)し、344幾度(いくど)となく末子姫(すゑこひめ)(むか)つて(あたま)()げ、345感謝(かんしや)()(へう)しつつ、346巨大(きよだい)なる姿(すがた)(たき)(なか)(かく)して(しま)つた。
347 今迄(いままで)大蛇(をろち)魅入(みい)れられ、348身体(しんたい)強直(きやうちよく)して身動(みうご)きもならなかつた石熊(いしくま)(ただち)身体(しんたい)自由(じいう)()349(うれ)(なみだ)両眼(りやうがん)()らしつつ、350(さん)(にん)(まへ)()をついて救命(きうめい)大恩(たいおん)感謝(かんしや)するのであつた。
351大正一一・八・一四 旧六・二二 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→