霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 試金玉(しきんぎよく)〔八九八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻 篇:第2篇 北の森林 よみ:きたのしんりん
章:第7章 試金玉 よみ:しきんぎょく 通し章番号:898
口述日:1922(大正11)年08月22日(旧06月30日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年10月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は、常彦、春彦、ヨブとともにアマゾンの時雨の森の北の林に到着した。高姫は、この森林に居る鷹依姫一行を助け出そうと森の中を進んで行った。
すると前方より、えもいわれぬ美しさの女が一人現れ、一行に向かって近づいてきた。一行は、すわ妖怪変化かと警戒している。
女は高姫の前に来てお辞儀をした。女は高姫たちがここへくることを知っており、金剛不壊の如意宝珠、紫の玉、黄金の玉、麻邇の宝珠などは、自分の館に神政成就の宝として蓄えられているので献上しようと申し出た。
改心したはずの高姫は、この甘言を聞いてたちまち元の病が再発したごとくに目を丸くして顔を緊張させ、女の話に食いついてきた。世界に二つとない宝が本当にこんなところにあるのかと疑う高姫に対し、女は実地に来てみて調べればわかる、と答えた。
女は鷹依姫たちがどこに居るかも後で教えよう、と言うと、高姫たちを迎える準備をするからしばらく待つようにと言い残して去って行った。
高姫は女を見送って上機嫌で、常彦、春彦、ヨブに自分の神徳をひけらかし始めた。常彦は高姫に合わせて、宝珠が手に入る運びになったことを馬鹿喜びしている。
春彦は、女の耳がビリビリ動いていたことを告げて、高姫と常彦に女は妖怪変化ではないかと懸念を伝え、用心するようにと戒めた。高姫は春彦を叱りつけ、言い争いになってしまう。
春彦とヨブは高姫のもとを去ろうとするが、高姫は二人をあわてて引き留める。高姫の味方をしていた常彦にしても、高姫に同意しているようで実は皮肉っている口調が現れてきてしまっていた。
そこへ先ほどの女が美々しく盛装をこらし、二人の侍女を従えてやってきた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:77頁 八幡書店版:第6輯 176頁 修補版: 校定版:81頁 普及版:29頁 初版: ページ備考:
001金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)
002紫色(むらさきいろ)宝玉(ほうぎよく)
003黄金(こがね)(たま)紛失(ふんしつ)
004(こころ)いらちて高姫(たかひめ)
005鷹依姫(たかよりひめ)黒姫(くろひめ)
006()ふも(さら)なり傍人(ばうじん)
007(むか)つて(いか)八当(やつあた)
008(たま)在処(ありか)(さぐ)らむと
009海洋万里(かいやうばんり)乗越(のりこ)えて
010(さが)(まは)れど(かげ)さへも
011なみの(うへ)をば徘徊(さまよ)ひつ
012(ふたた)聖地(せいち)立帰(たちかへ)
013八尋(やひろ)殿(との)黒姫(くろひめ)
014麻邇(まに)宝珠(ほつしゆ)(たま)しらべ
015これ(また)(あん)相違(さうゐ)して
016(つら)(ふく)らせ(あわ)をふき
017言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)()
018(みつ)つの(たから)麻邇(まに)(たま)
019(ぬす)(かく)して聖地(せいち)をば
020(あと)()すてて高砂(たかさご)
021(しま)(わた)りしものなりと
022(おも)ひつめたる一心(いつしん)
023心猿意馬(しんゑんいば)(くる)ふまで
024春彦(はるひこ)常彦(つねひこ)(ともな)ひて
025高砂島(たかさごじま)打渡(うちわた)
026テルの島国(しまぐに)振出(ふりだ)しに
027(かがみ)(いけ)立寄(たちよ)りて
028架橋御殿(かけはしごてん)侵入(しんにふ)
029()らず(ぐち)のみ(なら)()
030皇大神(すめおほかみ)(いまし)めを
031()けてやかたを()(いだ)
032アリナの(やま)乗越(のりこ)えて
033アルゼンチンの大野原(おほのはら)
034()花姫(はなひめ)化身(けしん)なる
035()出姫(でのひめ)(めぐ)()
036いよいよ(ここ)悔悟(くわいご)して
037荒野(あらの)をわたり(かは)()
038()()についでアル(みなと)
039ここより(ふね)()(まか)
040ゼムの(みなと)上陸(じやうりく)
041天祥山(てんしやうざん)乗越(のりこ)えて
042チンの(みなと)辿(たど)りつき
043鷹依姫(たかよりひめ)一行(いつかう)
044(すく)はむものと真心(まごころ)
045(こま)(むち)うち(すす)()
046アマゾン(がは)()()れば
047半濁流(はんだくりう)滔々(たうたう)
048()さへ(とど)かぬ広河(ひろかは)
049(いきほひ)(たけ)(なが)()
050(なみ)のまにまにモールバンド
051(あや)しき(かしら)(もた)げつつ
052吾物顔(わがものがほ)(すさ)()
053流石(さすが)高姫(たかひめ)仰天(ぎやうてん)
054アマゾン(がは)北岸(きたぎし)
055(いのち)からがら辿(たど)りつき
056天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)
057宣伝歌(せんでんか)をば(うた)ひつつ
058森林(しんりん)(ふか)(すす)()
059(とほ)神代(かみよ)物語(ものがたり)
060いよいよここに()()つる
061あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
062御霊(みたま)(さち)はひましませよ。
063 高姫(たかひめ)常彦(つねひこ)064春彦(はるひこ)065ヨブと(とも)(やうや)くアマゾン(がは)大森林(だいしんりん)066時雨(しぐれ)(もり)(きた)(はやし)安着(あんちやく)せり。067此処(ここ)東西(とうざい)(ほとん)三百里(さんびやくり)068南北(なんぽく)四百里(よんひやくり)(くらゐ)際限(さいげん)もなき大森林(だいしんりん)なり。
069 高姫(たかひめ)(この)森林(しんりん)鷹依姫(たかよりひめ)一行(いつかう)(まよ)()るものと(ふか)(しん)じ、070一日(いちにち)(はや)(すく)(いだ)さむものと、071鬱蒼(うつさう)たる樹木(じゆもく)(あひ)(みぎ)にくぐり(ひだり)()け、072(くさ)()け、073()(ぼつ)する(ばか)りの笹原(ささはら)をくぐり、074時々(ときどき)猛獣(まうじう)(おびや)かされ、075毒蛇(どくじや)()はれ、076(やや)(ひろ)樹木(じゆもく)(まれ)なる原野(げんや)()ることを()たり。
077 世界(せかい)第一(だいいち)大森林(だいしんりん)のこととて()()れぬ大木(たいぼく)078(かぜ)(ふく)んでごうごうと()(たけ)り、079見慣(みな)れぬ(うる)はしき果物(くだもの)所々(ところどころ)(みの)りつつあり。080一行(いつかう)樹木(じゆもく)まばらなる(この)原野(げんや)酷熱(こくねつ)太陽(たいやう)(ひかり)()びながら物珍(ものめづ)しげに日光浴(につくわうよく)(ほしいまま)にせり。
081 (この)(とき)前方(ぜんぱう)より()()はれぬ(うる)はしき一人(ひとり)(をんな)082悠々(いういう)として高姫(たかひめ)一行(いつかう)(まへ)(すす)(きた)(いぶ)かしさ。083四人(よにん)(かほ)見合(みあは)せて、084妖怪変化(えうくわいへんげ)出現(しゆつげん)ならむと、085腹帯(はらおび)()(きも)()ゑて、086(をんな)近寄(ちかよ)るを()()たる。
087 (をんな)(ごゑ)しとやかに高姫(たかひめ)(まへ)(きた)り、088辞儀(じぎ)しながら、089(すこ)しく(かほ)(あか)らめ、
090『エヽ一寸(ちよつと)(たづ)(いた)しますが、091あなたは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)092玉捜(たまさが)しの高姫(たかひめ)(さま)一行(いつかう)では御座(ござ)いませぬか? (たま)御入用(ごにふよう)ならば金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)093紫色(むらさきいろ)(たま)094黄金(こがね)(たま)095麻邇(まに)宝珠(ほつしゆ)は、096数限(かずかぎ)りなく(わらは)(やかた)(とほ)神代(かみよ)(むかし)より、097神政(しんせい)成就(じやうじゆ)(たから)として数多(あまた)(たくは)へて御座(ござ)いますれば、098どうぞ、099御検(おあらた)めの(うへ)御受(おう)()(くだ)さいますれば、100(じつ)有難(ありがた)仕合(しあは)せに(ぞん)(たてまつ)ります』
101 一旦(いつたん)(たま)執着(しふちやく)をはなれたる高姫(たかひめ)は、102(また)もや(この)言葉(ことば)()いて持病(ぢびやう)再発(さいはつ)したるものの(ごと)く、103()(まる)くし、104(かほ)(めう)緊張(きんちやう)させながら、
105『エヽ(なん)(おほ)せられます。106金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)世界(せかい)(ひと)つよりなきものと(ぞん)じて()りますが、107貴女(あなた)御宅(おたく)にはそれ(ほど)沢山(たくさん)御持(おも)ちで御座(ござ)いますか。108ソリヤ大方(おほかた)偽玉(にせだま)では御座(ござ)いませぬか? 金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)()へば世界(せかい)(ひと)つよりなき(はず)御座(ござ)いますが……』
109半信半疑(はんしんはんぎ)()見張(みは)り、110あわよくば(この)(たま)()(かへ)らむとの野心(やしん)にみたされながら、111(こころ)欣々(いそいそ)として(たづ)(かへ)した。112美人(びじん)打笑(うちわら)ひ、
113『ホヽヽヽヽ、114高姫(たかひめ)(さま)貴女(あなた)(わらは)(まを)(こと)をお(うたが)(あそ)ばすので御座(ござ)いますか? (ろん)より証拠(しようこ)115(わらは)(たく)へお()(くだ)さいますれば、116(わか)りになるでせう。117如意(によい)宝珠(ほつしゆ)(ただ)一個(いつこ)とのみ思召(おぼしめ)すのは、118失礼(しつれい)申分(まをしぶん)ながら、119井中(せいちう)(かはづ)大海(たいかい)()らざる(たとへ)同様(どうやう)御座(ござ)います。120マア一寸(ちよつと)(わらは)(たく)までお()(くだ)さいまして、121(しら)べなさいませ』
122『ナンと(めう)なことを(あふ)せられます。123さうして(また)(むかし)から(ひと)()たことのない(この)森林(しんりん)貴女(あなた)()んで()られるとは合点(がつてん)(まゐ)らぬぢやありませぬか? 何神様(なにがみさま)かの化身(けしん)では御座(ござ)いますまいか? 人間(にんげん)()むべき場所(ばしよ)ぢや御座(ござ)いますまい』
124『ホヽヽヽヽ、125(この)森林(しんりん)人間(にんげん)()めない道理(だうり)がどこに御座(ござ)いませう。126(げん)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)127鷹依姫(たかよりひめ)さまの一行(いつかう)御住居(おすまゐ)になつてゐるぢやありませぬか』
128『アヽ(その)鷹依姫(たかよりひめ)129竜国別(たつくにわけ)一行(いつかう)在処(ありか)(さが)すべく、130それが第一(だいいち)目的(もくてき)御座(ござ)います。131(たま)などは最早(もはや)断念(だんねん)して()ります。132(しか)(なが)貴女(あなた)のお(うち)(その)(たふと)(たま)があつて、133(わたくし)受取(うけと)れとの(こと)なれば、134(べつ)(いな)みは(いた)しませぬ。135そんなら(まゐ)りませう。136どうぞ御宅(おたく)まで案内(あんない)して(くだ)さい』
137一寸(ちよつと)()つて(くだ)さいませ。138つい其処(そこ)(わらは)住家(すみか)御座(ござ)いますれば、139(にはか)にお()(くだ)さいますと(あま)()らかつて()りますので()みませぬ。140どうぞ此処(ここ)でゆるゆると(やす)んでゐて(くだ)さい。141(その)(うち)(また)(むか)へに(まゐ)ります。142(また)鷹依姫(たかよりひめ)(さま)一行(いつかう)在処(ありか)御探(おたづ)ねならば、143(わらは)(ぞん)じてゐますから、144ゆつくりと(わらは)案内(あんない)(いた)します。145(この)(ひろ)(もり)五年(ごねん)十年(じふねん)当所(あてど)もなく御探(おたづ)ねになつたつて、146(わか)道理(だうり)がありませぬから……』
147(なに)から(なに)まで御親切(ごしんせつ)なる御言葉(おことば)148神様(かみさま)のなさることは()()のないもので……あなたにお()にかかるも神様(かみさま)のお引合(ひきあは)せです。
149  ほのぼのと()()けど心淋(こころさび)しく(おも)ふなよ
150(ちから)になる(ひと)用意(ようい)がしてあるぞよ
151とお(ふで)()()る。152一分一厘(いちぶいちりん)神様(かみさま)御言葉(おことば)(ちが)ひはありませぬワイ。153これが(ちが)うたら(かみ)(この)()()らぬぞよと仰有(おつしや)るのだから、154()んな大丈夫(だいぢやうぶ)なことは御座(ござ)いませぬ。155オホヽヽヽ』
156(しばら)御免(ごめん)(かうむ)ります。157()してお(むか)へに……』
158()ひながら、159足早(あしばや)にあたりの森林(しんりん)()ゆるが(ごと)姿(すがた)をかくしける。
160 高姫(たかひめ)(あと)見送(みおく)つてニコニコ(がほ)
161『コレ(つね)さま、162(はる)さま、163ヨブさまえ、164(かみ)さまと()(かた)はエライ(ちから)御座(ござ)いませうがなア。165(この)(やう)東西南北(とうざいなんぽく)()てしもなき大森林(だいしんりん)(なか)で、166あんな(うつく)しき(をんな)出会(であ)ふとは(ゆめ)にも(おも)はなかつたでせう。167(わたし)でさへもこんな(こと)があらうとは(おも)はなんだのですよ。168ついては改心(かいしん)(くらゐ)結構(けつこう)なものは御座(ござ)いますまい。169自転倒島(おのころじま)()つた(とき)に、170金剛不壊(こんがうふゑ)(ひと)つの(たま)(うつつ)をぬかし、171(この)(たから)がなければ神政(しんせい)成就(じやうじゆ)出来(でき)ない、172(また)高姫(たかひめ)(これ)使用(しよう)せなくては、173神政(しんせい)成就(じやうじゆ)駄目(だめ)だと(おも)ひつめて、174いろいろと(こころ)(くだ)きましたが、175神様(かみさま)有難(ありがた)い。176苦労(くらう)艱難(かんなん)十分(じふぶん)にさせておいて、177こんな(ところ)(おも)ひがけなく如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)(くだ)さるとは、178(なん)有難(ありがた)いことぢや御座(ござ)いませぬか。179それだから(たましひ)(みが)いて改心(かいしん)なされと(まを)すのだよ。180コレ(つね)さま、181(はる)さま、182ヨブさまよ、183(まへ)結構(けつこう)なお神徳(かげ)(いただ)いて万劫末代(まんがふまつだい)()(のこ)御用(ごよう)出来(でき)ますぞえ。184これも(まつた)()出神(でのかみ)の……オツトドツコイ、185モウ()出神(でのかみ)()はぬ(はず)だつた……(かみ)さま、186うつかりと(まを)しました、187どうぞお(ゆる)(くだ)さいませ……高姫(たかひめ)についてお()でたればこそ、188こんな御用(ごよう)出来(でき)ますぞえ。189(なに)()うても変性男子(へんじやうなんし)御系統(ごひつぽう)……オツトドツコイ、190(これ)()(はず)ぢやなかつたが(あま)りの(うれ)しさに、191ツイこぼれました。192ホヽヽヽヽ』
193常彦(つねひこ)(その)(たま)沢山(たくさん)()()るからは、194何程(なにほど)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)仰有(おつしや)らうが、195変性男子(へんじやうなんし)系統(ひつぽう)(まを)されようが、196差支(さしつかへ)はないぢやありませぬか。197正々堂々(せいせいだうだう)(たま)(たづさ)へて(かへ)り、198さすがは()出神(でのかみ)生宮(いきみや)ぢや、199変性男子(へんじやうなんし)系統(ひつぽう)のなさることは、200マアざつとこの(とほ)りだ。201(みな)さま、202ヘン()みませぬナ……と()ふやうな(かほ)して(かへ)つた(ところ)で、203(たれ)(なん)()(もの)御座(ござ)いませうか。204(かみ)さまだつて、205これ(だけ)御用(ごよう)をあそばした高姫(たかひめ)(さま)に、206少々(せうせう)(あやま)(くらゐ)あつたとて、207御咎(おとが)(あそ)ばす道理(だうり)御座(ござ)いますまい。208イヤもう結構(けつこう)(こと)到来(たうらい)(いた)しました。209(とも)()()(わたし)さへ、210(あま)(うれ)して(うれ)しうて、211()()ひ、212(あし)(をど)りますワイ。213アハヽヽヽオホヽヽヽ』
214(なに)(うれ)しいのやら、215()()つて(をど)りまはる(その)可笑(をか)しさ。216春彦(はるひこ)(あま)りすぐれぬ顔付(かほつき)にて、
217『モシモシ高姫(たかひめ)さま、218常彦(つねひこ)さま、219チツト御用心(ごようじん)なされませや。220あなたは(また)もや(たま)執着心(しふちやくしん)()()たやうな塩梅(あんばい)ですよ。221(いま)()(をんな)(まこと)人間(にんげん)だと(おも)うて()られますか。222どうも(わたくし)には()におちぬ(てん)御座(ござ)いますワ。223()()()れば、224あの(むすめ)(みみ)時々(ときどき)ビリビリと(うご)いたぢやありませぬか。225人間(にんげん)(みみ)不随意筋(ふずゐいきん)ですから、226(うご)道理(だうり)はありませぬ。227(けだもの)(かぎ)つて随意筋(ずゐいきん)発達(はつたつ)して、228(みみ)()のやうに(うご)かすものです。229コリヤうつかりはして()られますまい』
230高姫(たかひめ)人間(にんげん)分際(ぶんざい)として、231(かみ)さまの(こと)(わか)るものですか。232(はる)さまは(はる)さまらしうしてゐなさい……なア、233ヨブさま、234あなたどう(おも)ひますか、235あの御方(おかた)を……』
236ヨブ『左様(さやう)ですなア。237吾々(われわれ)にはちつとも見当(けんたう)()れませぬ』
238高姫(たかひめ)『アヽさうだらう さうだらう、239そこが正直(しやうぢき)(ところ)だ。240(みみ)(うご)くの(うご)かぬの、241(あや)しいの(あや)しくないの、242(あたま)から(うたぐ)つてかかつては神様(かみさま)御仕組(おしぐみ)(わか)りませぬワイ。243(まへ)余程(よつぽど)悧巧(りかう)(かた)だと(おも)つたが、244(わたし)()はヤツパリ(たが)ひませぬワイ、245オホヽヽヽ』
246春彦(はるひこ)『そらさうかは()りませぬが、247如何(どう)しても(わたくし)には合点(がつてん)(むし)承認(しようにん)しませぬよ。248よう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。249こんな森林(しんりん)にあんな(うつく)しい(をんな)住居(すまゐ)して()道理(だうり)はないぢや御座(ござ)いませぬか。250そして(また)金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)(ごと)結構(けつこう)(たから)(いく)つもあつて、251それを(もら)うてくれと()ふのが、252それが第一(だいいち)理由(わけ)(わか)らぬぢや御座(ござ)いませぬか。253(また)しても執着心(しふちやくしん)(おこ)して失敗(しつぱい)なされましたら、254今度(こんど)取返(とりかへ)しが出来(でき)ませぬぞ。255どうぞ(むね)()()ててトツクリと御思案(ごしあん)なされませや』
256高姫(たかひめ)『コレ(はる)さま、257(まへ)(とし)(わか)いから、258(なに)()りさうな(こと)がない。259マア(この)高姫(たかひめ)のすることを(だま)つて()()なさい。260(とし)(かう)(まめ)()261(まめ)()()()だ。262浮世(うきよ)(なみ)にさらはれて、263千軍万馬(せんぐんばんば)(こう)()(こころ)(かがみ)光明(くわうみやう)(うつ)つた以上(いじやう)は、264どうして間違(まちが)気遣(きづか)ひが御座(ござ)いませうかい。265細工(さいく)流々(りうりう)仕上(しあ)げを御覧(ごらう)じ、266そんな(わか)らぬ(こと)()ふと、267たつた(いま)アフンと(いた)さねばなりませぬぞや。268……コレ常彦(つねひこ)269ヨブの両人(りやうにん)さま、270(わたし)()ふことが(ちが)ひますかな』
271ヨブ『(ちが)ふか(ちが)はぬか、272そんなこと如何(どう)して(わか)りませう』
273高姫(たかひめ)『お(まへ)もみかけによらぬ(さき)()えぬ御方(おかた)ぢやなア。274大概(たいがい)(わか)りさうなものぢやないか。275(やぶ)()たら(たけのこ)()えて()る、276(いけ)()たら(さかな)()んで()る、277果樹(くわじゆ)()たら、278コラ(うま)果物(くだもの)がなつて()(くらゐ)(こと)(わか)らねば、279宣伝使(せんでんし)になつて(ひと)(たす)けることは出来(でき)ませぬぞえ。280筆先(ふでさき)には(いち)()いて(じふ)(さと)身魂(みたま)でないと、281まさかの(とき)()()はぬぞよと御示(おしめ)しになつてるぢやありませぬか』
282ヨブ『さうだと()つて正直(しやうぢき)告白(こくはく)してゐるのですよ。283不可解(ふかかい)(こと)(わか)つたとは(まを)されませず、284(また)断然(だんぜん)(わか)らぬとも()へぬぢやありませぬか。285否定(ひてい)肯定(こうてい)とのまん(なか)()つて御返事(ごへんじ)をしたので御座(ござ)います。286()(さは)りましたら、287真平(まつぴら)御免(ごめん)(くだ)さいませ』
288高姫(たかひめ)『エヽ仕方(しかた)のない御人足(ごにんそく)だな……コレコレ常彦(つねひこ)289(まへ)余程(よほど)悧巧(りかう)さうな顔付(かほつき)だ。290(まへ)(かんが)へは間違(まちが)ひなからう、291どう(おも)ひますかなア』
292常彦(つねひこ)(たれ)(なん)()つても、293(わたし)高姫(たかひめ)さまの仰有(おつしや)ることを(まこと)(しん)じます。294乍併(しかしながら)あの(むすめ)()つたことは実地(じつち)(あた)らねば、295愚鈍(ぐどん)(わたくし)296(たし)かな御返答(ごへんたふ)出来(でき)ませぬ』
297高姫(たかひめ)(さて)(さて)(こま)つた(わか)らずや(ばか)()つたものだな。298世界(せかい)(この)(こと)()ける(もの)一人(ひとり)ありたら物事(ものごと)立派(りつぱ)成就(じやうじゆ)するものなれど、299(あま)身魂(みたま)(くも)()りて()るから、300(かみ)(まこと)(ほね)()れるぞよ……と大神様(おほかみさま)仰有(おつしや)つた。301(おも)へば(おも)へば大神様(おほかみさま)御心(おこころ)がおいとしいわいのう……それはさうと、302何故(なぜ)(はや)くあの(むすめ)さまは()()ないだらうか。303(あま)(ひろ)座敷(ざしき)御掃除(おさうぢ)(ひま)()るのではなからうか』
304春彦(はるひこ)高姫(たかひめ)さまの天眼通(てんがんつう)御覧(ごらん)になつたら、305あの(むすめ)(なに)をしてゐる(くらゐ)(わか)らにやなりますまい』
306高姫(たかひめ)千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)307神政(しんせい)成就(じやうじゆ)御宝(おたから)()()るか()らぬかと()(とき)に、308そんな小理屈(こりくつ)()うておくれなや。309さうだから大勢(おほぜい)()らぬ、310大勢(おほぜい)()ると邪魔(じやま)()りて物事(ものごと)成就(じやうじゆ)(いた)さぬと御示(おしめ)しになつて()るぞえ』
311春彦(はるひこ)『そんなら(わたくし)はこれからお(いとま)(まを)して(かへ)りませうか』
312高姫(たかひめ)『肝腎の御用(ごよう)一人(ひとり)ありたら(つと)まるのだから、313勝手(かつて)になさりませ』
314ヨブ『(いま)御言葉(おことば)によれば、315一人(ひとり)ありたらよいとの(こと)316そんなら(わたくし)春彦(はるひこ)さまと一緒(いつしよ)にお(いとま)(いた)しませうか、317御邪魔(おじやま)をしては()みませぬからなア』
318高姫(たかひめ)『コレ()(はや)い、319そら(なに)()はつしやるのだ。320ヨブさまに(かへ)つてくれとは(まを)しませぬぞえ。321(はる)さまだとて、322(べつ)(わたし)邪魔(じやま)になると()つたのぢやない。323神様(かみさま)御言葉(おことば)参考(さんかう)(ため)(はな)して()かした(だけ)(こと)だよ。324つまり(まこと)のお(みち)大勢(おほぜい)よりは一人(ひとり)(はう)御用(ごよう)出来(でき)よいものだと()神様(かみさま)御示(おしめ)しを(はな)した(だけ)ですから、325(いま)となつて、326さう悪気(わるき)をまはして(もら)つちや(こま)りますワ。327千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)328如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)何程(なにほど)(よく)()つたとて、329一人(ひとり)(みつ)(くらゐ)より()てるものでない。330そして四人(よにん)()れば、331三四十二(さんしじふに)(たま)()()るぢやありませぬか。332あゝ()うなるとモ(すこ)しガラクタ人間(にんげん)でもよいから()れて()るのだつたに、333()(なか)(おも)ふやうに()かぬものだなア』
334春彦(はるひこ)『アハヽヽヽ、335(なん)とお(くち)達者(たつしや)(こと)336()(かく)御手際(おてぎは)拝見(はいけん)(うへ)337(わび)(いた)しませう』
338 常彦(つねひこ)(くち)(とが)らし、
339『コリヤ春彦(はるひこ)340変性男子(へんじやうなんし)御系統(ごひつぽう)に、341(なん)()御無礼(ごぶれい)(こと)(まを)すか。342()出神(でのかみ)生宮(いきみや)ぢやぞよ』
343春彦(はるひこ)『ハイ(おそ)()りました。344乍併(しかしながら)どうぞ不調法(ぶてうはふ)のないやうに、345(みな)さま御願(おねがひ)(まを)します』
346高姫(たかひめ)『オホヽヽヽヽ、347あのマア(うたがひ)(ふか)(こと)ワイのう』
348 ()(はな)(をり)しも、349以前(いぜん)(むすめ)350美々(びび)しき盛装(せいさう)をこらし、351二人(ふたり)侍女(じじよ)(したが)へて、352悠々(いういう)此方(こなた)(むか)(すす)(きた)る。
353大正一一・八・二二 旧六・三〇 松村真澄録)