霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 富士咲(ふじさく)〔九五二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻 篇:第2篇 有情無情 よみ(新仮名遣い):うじょうむじょう
章:第11章 富士咲 よみ(新仮名遣い):ふじさく 通し章番号:952
口述日:1922(大正11)年09月13日(旧07月22日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
建日館の別殿に招かれた黒姫は、建日別、建能姫とともに話し合い、実の親子かどうかの確認をしていた。
黒姫は自分の出自とこれまでの経緯を語った。黒姫は、自分の夫・高山彦を追って来たのだと明かすが、建日別は自分の師匠であり筑紫の島の神司である高山彦と、黒姫の夫という高山彦が一致せずに不審に思っている。
また、黒姫の息子は幼名を富士咲と言い、背中に富士の山のような白い痣があると聞いて、建日別は自分は黒姫の息子ではないと悟った。建日別は真珠で十の字をかたどり「東」「高」という字の彫られた守り刀と共に捨てられていたという。
黒姫はその守り刀の特徴を聞いて、以前に高姫が印としていた十の字のことが思い当った。黒姫は、高姫も若いころに身の過ちから男の子の捨て子をしたことがあることを聞いていたので、なおさら怪しんだが、推測で間違ったことを吹聴しても迷惑をかけるだけだと思い直し、建日別夫婦には高姫のことは黙っていた。
実の親子でないことがわかって三人は残念がったが、建日別、建能姫は世界を宣伝に歩いている黒姫に対して、もし何か建日別の両親に関することを聞いたなら知らせてほしいと懇願した。
黒姫は建日別夫婦の切実な願いを聞いて、自分の子供ももし健在ならばこのように母である自分を尋ねているであろうと思い当り、心に感じて懺悔の涙を流した。
そうしているところへ、門番の幾公の早とちりを真に受けた差配の健彦が幹部連を連れてやってきて、建日別に母親との再会のお祝いの言葉を述べた。建日別は、母親でないことがわかったところだと説明するが、健彦は、すでに村中に発表してしまったという。
あきれた建日別は幾公を呼ぶが、幾公もすっかり黒姫が建日別の母親だと思い込んでしまっていた。
さらにそこへ、小間使いのお種がやってきて、黒姫のお供の宣伝使が黒姫を訪ねて館にやってきたと伝えた。建日別は、すぐに奥に通すようにと伝えた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-09-19 14:06:11 OBC :rm3411
愛善世界社版:141頁 八幡書店版:第6輯 413頁 修補版: 校定版:147頁 普及版:60頁 初版: ページ備考:
001 一方(いつぱう)巍峨(ぎが)たる高山(かうざん)(ひか)へ、002(まへ)には清流(せいりう)(ほとばし)幽谷(いうこく)(なが)れ、003一方(いつぱう)大原野(だいげんや)見晴(みは)らす絶勝(ぜつしよう)地点(ちてん)()てられた建日館(たけひやかた)別殿(べつでん)に、004主客(しゆかく)(さん)(にん)鼎坐(ていざ)してヒソビソと(はなし)(ふけ)つて()る。
005建国別(たけくにわけ)()老体(らうたい)()(もつ)て、006よくもお(たづ)(くだ)さいました。007貴女(あなた)矢張(やつぱ)()子息(しそく)行方(ゆくへ)(たづ)ねてお(まは)りになつてゐると()(こと)ですが、008何卒(どうぞ)(その)事情(じじやう)をお差支(さしつかへ)なくば簡単(かんたん)()()かし(くだ)さいませぬか』
009黒姫(くろひめ)『ハイ、010(わたし)三五教(あななひけう)黒姫(くろひめ)(まを)(もの)御座(ござ)います。011只今(ただいま)自転倒(おのころ)(じま)(にしき)(みや)(つか)へて()りまする宣伝使(せんでんし)御座(ござ)いますが、012()事情(じじやう)(ため)(この)筑紫(つくし)(しま)遥々(はるばる)(さん)(にん)(とも)()れ、013(をつと)所在(ありか)(さが)さむ(ため)(まゐ)つたもので御座(ござ)います。014さうした(ところ)015高山峠(たかやまたうげ)頂上(ちやうじやう)()(にん)(わか)(をとこ)が、016いろいろと(はなし)をして()るのを(うけたま)はれば、017建日(たけひ)(やかた)建国別(たけくにわけ)宣伝使(せんでんし)本年(ほんねん)三十五(さんじふご)(さい)018さうして両親(りやうしん)行方(ゆくへ)(わか)らず非常(ひじやう)にお(さが)しになつてると()(こと)()きましたので、019(わたし)(なん)とはなしに(こころ)(うご)き、020(わたし)()てた()本年(ほんねん)三十五(さんじふご)(さい)021よもや(その)(せがれ)ではあるまいかと(ぞん)じまして、022()取込(とりこみ)(なか)をも(かへり)みず()邪魔(じやま)(いた)しました』
023建国別(たけくにわけ)貴女(あなた)(をつと)(まを)すのは(なん)()ふお()御座(ござ)いますか』
024黒姫(くろひめ)『ハイ、025高山彦(たかやまひこ)(まを)します。026(この)(ごろ)()(くに)(みやこ)(おい)て、027三五教(あななひけう)宣伝(せんでん)をやつて御座(ござ)ると()(こと)(うけたま)はりまして、028其処(そこ)(たづ)ねに()(みち)すがらで御座(ござ)います。029さうした(ところ)030()(にん)(をとこ)(はなし)によつて、031(わが)()(こと)(おも)()し、032よもや貴方(あなた)が、033(わか)(とき)()てた()ではないかと(おも)ひ、034失礼(しつれい)をも(かへり)みずお(たづ)ねした次第(しだい)です』
035建国別(たけくにわけ)『え、036(なん)(あふせ)られますか。037高山彦(たかやまひこ)(さま)貴女(あなた)()主人(しゆじん)とは、038合点(がてん)のゆかぬ(こと)(うけたま)はります。039高山彦(たかやまひこ)(さま)(じつ)(わたくし)()師匠(ししやう)(さま)御座(ござ)いますが、040(かむ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)(おん)長女(ちやうじよ)愛子姫(あいこひめ)(さま)をお(めと)(あそ)ばし、041(いま)では夫婦(ふうふ)(むつ)まじく()神業(しんげふ)奉仕(ほうし)され、042神徳(しんとく)四方(よも)(かがや)(わた)り、043()(とり)(おと)(いきほひ)御座(ござ)います。044如何(どう)して(また)高山彦(たかやまひこ)(さま)貴女(あなた)()正妻(せいさい)があるのに、045(おく)さまを()たれたのでせうか。046高山彦(たかやまひこ)(さま)左様(さやう)天則(てんそく)違反(ゐはん)(てき)行為(おこなひ)をなさる(やう)なお(かた)では御座(ござ)いませぬが、047(なに)かの間違(まちがひ)では御座(ござ)いませぬか』
048黒姫(くろひめ)自転倒(おのころ)(じま)聖地(せいち)(おい)て、049一寸(ちよつと)(こと)から夫婦(ふうふ)喧嘩(げんくわ)(いた)しまして、050()れを機会(きくわい)(をつと)高山彦(たかやまひこ)(わたし)振捨(ふりす)て、051筑紫(つくし)(しま)とかへ()くと()つて()たきり、052(いま)(なん)便(たよ)りも御座(ござ)いませぬ。053(この)(しま)()()いて人々(ひとびと)(うはさ)をきけば、054貴方(あなた)(あふ)せの(とほ)り、055(わか)女房(にようばう)()つて(くら)して()られるとの(こと)056到底(たうてい)(わたし)のやうな(ばば)アが(まゐ)りましても(とり)あつて(くだ)さいますまい。057(しか)折角(せつかく)此処迄(ここまで)(まゐ)つたのですから、058一目(ひとめ)なりと()ひ、059()()(こと)()ひ、060先方(せんぱう)出様(でやう)によつては(わたし)(かみ)(みち)宣伝使(せんでんし)061あとに(なに)(のこ)らぬ(やう)離縁(りえん)をして(もら)(かんが)へで御座(ござ)います。062乍併(しかしながら)途中(とちう)(おい)貴方(あなた)(うはさ)()き、063()しや(わが)()ではあるまいかと(おも)ふにつけ、064()(おほ)(をつと)よりも自分(じぶん)(はら)(いた)めた(せがれ)出会(であ)ひ、065老後(らうご)をお世話(せわ)になり()いものだと(おも)ひ、066失礼(しつれい)(かへり)みず()(うかが)ひを(いた)しました。067(しか)(ちが)ひますれば()(ゆる)(くだ)さいませ』
068建国別(たけくにわけ)(その)()子息(しそく)には(なに)目印(めじるし)でも御座(ござ)いますか』
069黒姫(くろひめ)『はい、070赤児(あかご)(とき)(しつか)(わか)りませぬが、071(たしか)背中(せなか)真中(まんなか)(しろ)(あざ)があり、072それが富士(ふじ)(やま)(かたち)()()りますので、073これは大方(おほかた)富士(ふじ)(やま)木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)(さま)()(うま)()はりかもしれませぬと(ぞん)じまして、074富士咲(ふじさく)()()をつけ……この子供(こども)一寸(ちよつと)様子(やうす)あつて此処(ここ)()てておきますから、075何卒(どうぞ)(いづ)れの(かた)なりとも慈愛(じあい)(ふか)きお(かた)()にかかり(そだ)てて(くだ)さいます(やう)に……と()つて(すこ)しのお金子(かね)()()()いて()てました。076それつきり(せがれ)如何(どう)なつた(こと)やら、077(わか)(とき)(せがれ)(こと)(なに)かに(まぎ)れて(わす)れて()ましたが、078()年老(としよ)るとそこらが(さび)しくなり、079()てた()如何(どう)なつたかと()けても()れても(わす)れた(こと)御座(ござ)いませぬ。080(しか)失礼(しつれい)(なが)貴方(あなた)はさういふ(しるし)御座(ござ)いませぬか』
081建国別(たけくにわけ)(わたくし)赤児(あかご)(とき)両親(りやうしん)()てられた(もの)御座(ござ)いますが、082自分(じぶん)背中(せなか)自分(じぶん)()ませぬから(なん)とも(ぞん)じませぬ』
083建能姫(たけのひめ)(わたし)何時(いつ)もお(せな)(なが)しますが、084本当(ほんたう)(うつく)しいお身体(からだ)で、085黒子(ほくろ)(ひと)()(やいと)(かた)(ひと)つありませぬ。086()して(あざ)(など)何処(どこ)にも御座(ござ)いませぬ』
087黒姫(くろひめ)『あゝさうですかな。088さうすると矢張(やつぱ)(わたし)(たづ)ねる富士咲(ふじさく)では御座(ござ)いますまい』
089建国別(たけくにわけ)(なに)(その)(とき)(しるし)に、090物品(ぶつぴん)でもお()へになつた(こと)はありませぬか』
091黒姫(くろひめ)(べつ)(なに)()へた(こと)御座(ござ)いませぬ。092守袋(まもりぶくろ)木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)()神号(しんがう)()れ、093富士咲(ふじさく)()子供(こども)名前(なまへ)()れたばかりで御座(ござ)います』
094建国別(たけくにわけ)『さうすると(わたくし)貴女(あなた)(せがれ)では御座(ござ)いますまい。095(わたくし)()てられた(とき)には、096(ひと)つの守刀(まもりがたな)()へてあり、097(その)守刀(まもりがたな)真珠(しんじゆ)(もつ)(じふ)()がハツキリと(しる)して御座(ござ)いました。098その守刀(まもりがたな)(いま)所持(しよぢ)して()ります。099さうして(かたな)根尻(ねじり)に「(ひがし)」といふ()と「(たか)」といふ()(かす)かに(あら)はれて()ります。100(これ)証拠(しようこ)両親(りやうしん)(たづ)ねむと、101十五六(じふごろく)(さい)(ころ)よりそこら(ぢう)()(めぐ)り、102フサの(くに)から自転倒(おのころ)(じま)(わた)り、103(つひ)には(この)筑紫島(つくしじま)(まゐ)りまして、104高山彦(たかやまひこ)(さま)弟子(でし)となり宣伝使(せんでんし)仕立(したて)()げられ、105昨年(さくねん)今日(こんにち)(この)(やかた)養子(やうし)となつたもので御座(ござ)います』
106 黒姫(くろひめ)()()(しばら)思案(しあん)()れて()る。
107建国別(たけくにわけ)(なに)貴女(あなた)にお心当(こころあた)りは御座(ござ)いますまいかな』
108黒姫(くろひめ)『ハイ、109真珠(しんじゆ)(じふ)()(しる)した守刀(まもりがたな)110それに(ひがし)(たか)(しるし)111ハテ合点(がてん)のゆかぬ(こと)があるものだなア』
112 建国別(たけくにわけ)(たた)みかけた(やう)に、
113建国別貴方(あなた)世界(せかい)宣伝(せんでん)してお(ある)きになつたさうですから、114(なに)心当(こころあた)りは御座(ござ)いませぬか。115仮令(たとへ)間違(まちがひ)でも(かま)ひませぬから、116(すこ)しでも(かか)りがあれば仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。117今日(こんにち)如何(どう)しても(わが)両親(りやうしん)由縁(ゆかり)ある(ひと)()える(やう)()がしてならなかつたのです。118そこへ貴女(あなた)がお()しと()き、119ヒヨツとしたら(わが)(こひ)しき母上(ははうへ)ではないかと(よろこ)んで()ましたが、120(じつ)残念(ざんねん)(こと)御座(ござ)います。121乍併(しかしながら)これも(なに)かの御縁(ごえん)御座(ござ)いませう。122(わか)夫婦(ふうふ)気楽(きらく)家庭(かてい)ですから何卒(どうぞ)()遠慮(ゑんりよ)なく何時(いつ)(まで)()逗留(とうりう)して(くだ)さいませ。123(なん)だか因縁(いんねん)ある(かた)(やう)()がしてなりませぬから……』
124黒姫(くろひめ)『ハイ、125有難(ありがた)御座(ござ)います。126乍併(しかしながら)如何(どう)しても一度(いちど)高山彦(たかやまひこ)(さま)にお()にかからなくてはなりませぬから、127(また)御縁(ごえん)がありますれば()世話(せわ)になりませう。128乍併(しかしながら)(すこ)しばかり(なん)だか心当(こころあた)りがある(やう)()(いた)しますが、129(いま)(にはか)(おも)()せませぬから、130ユツクリと(かんが)(なほ)して()返事(へんじ)(いた)しませう』
131 黒姫(くろひめ)(ある)機会(きくわい)高姫(たかひめ)(むかし)述懐談(じゆつくわいだん)()いて()た。
132 その言葉(ことば)(はし)に、
133……自分(じぶん)(わか)(とき)134(おや)(ゆる)さぬ(をとこ)()()(はら)んでそれを捨児(すてご)にした……といふ(やう)(こと)()いた(やう)(おも)ふ。135高姫(たかひめ)さまは(いま)(まで)(じふ)()(しるし)をつけて御座(ござ)つたさうだが、136三五教(あななひけう)這入(はい)つてから十曜(とえう)神紋(しんもん)()へられた。137よもや高姫(たかひめ)(さま)()ではあるまいか、138いやいや、139うつかりした(こと)口走(くちばし)つて迷惑(めいわく)()けてはならない、140高姫(たかひめ)さまは(いま)何処(どこ)御座(ござ)るやら、141(ねつ)から消息(せうそく)(わか)らない。142うつかりした(こと)()つて、143行方(ゆくへ)(わか)らぬ(ひと)(たづ)ね、144建国別(たけくにわけ)(さま)苦労(くらう)をなさつて、145折角(せつかく)()うた(ところ)(いま)(やう)間違(まちが)つて()(やう)(こと)では相済(あひす)まぬ、146()らぬと()つた(はう)がお(たがひ)(ため)安全(あんぜん)だらう……
147(こころ)打諾(うちうなづ)黒姫(くろひめ)言葉(ことば)(あらた)めて、
148黒姫(くろひめ)『どうも心懸(こころがか)りが御座(ござ)いませぬ。149乍併(しかしながら)貴方(あなた)(さま)()物語(ものがたり)()きました(うへ)十分(じふぶん)()をつけて(かんが)へておきませう。150()貴方(あなた)()両親(りやうしん)相違(さうゐ)ないと()(かた)()ひましたら、151直様(すぐさま)にお()らせ(いた)しませう』
152建国別(たけくにわけ)『はい、153有難(ありがた)御座(ござ)います。154何卒(どうぞ)(よろ)しく()(ねがひ)(いた)します』
155建能姫(たけのひめ)何分(なにぶん)御存(ごぞん)じの(とほ)り、156不運(ふうん)(をつと)御座(ござ)いますから、157何卒(どうぞ)黒姫(くろひめ)(さま)158()心当(こころあた)りがつきましたらお()らせ(くだ)さいませ。159()(ねがひ)申上(まをしあ)げます』
160 黒姫(くろひめ)()につまされて(かへ)言葉(ことば)()くさし俯向(うつむ)いて()る。161さうして(こころ)(うち)(おも)(やう)
162黒姫『あゝ親子(おやこ)(じやう)()ふものは何処(どこ)(くに)()つても(おな)(こと)だなア。163建国別(たけくにわけ)(さま)両親(りやうしん)憧憬(あこが)れて、164朝夕(あさゆふ)(こころ)(くば)(あそ)ばす(やう)に、165(わが)()(また)(この)()()きて()るならば、166(さだ)めし両親(りやうしん)(した)うて()るであらう。167両親(りやうしん)のない()其処(そこ)()けて()つても、168(おこ)してくれる(もの)がないと()(こと)だ。169あゝ(おも)へば(おも)へば若気(わかげ)(いた)りとは()(なが)(つみ)(こと)をしたものだ。170こんな(つみ)(ふか)()(もつ)て、171三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)となり、172黄金(こがね)(たま)御用(ごよう)をしようなどとは(じつ)(おも)(ちが)ひであつた。173(かみ)(さま)から(たま)(かく)されたのも無理(むり)はない』
174(くち)には()さねど(こころ)(うち)懺悔(ざんげ)(なみ)(ただよ)はして()た。
175 かかる(ところ)建彦(たけひこ)数多(あまた)幹部(かんぶ)引連(ひきつ)れドヤドヤと(この)()(あら)はれ(きた)り、176丁寧(ていねい)両手(りやうて)をつき、
177建彦(たけひこ)大先生(だいせんせい)()夫婦(ふうふ)(さま)178今日(こんにち)()目出度(めでた)御座(ござ)います。179(なに)からお(よろこ)(まを)して(よろ)しいやら、180吾々(われわれ)(はじ)(やかた)者共(ものども)(じつ)抃舞(べんぶ)雀躍(じやくやく)(てい)御座(ござ)います。181今日(けふ)日頃(ひごろ)(した)(あそ)ばす(おん)母上(ははうへ)がお()えになりましたさうで、182こんな(よろこ)ばしい(こと)御座(ござ)いませぬ。183一同(いちどう)(かは)つてお(いは)申上(まをしあ)げます』
184()(なが)ら、185今度(こんど)黒姫(くろひめ)(はう)(あたま)(てん)じ、186丁寧(ていねい)再拝(さいはい)し、
187建彦(たけひこ)貴女(あなた)(さま)大先生(だいせんせい)()みの(おん)母上(ははうへ)でありましたか。188()うまあ()入来(いで)(くだ)さいました。189(わたくし)()一同(いちどう)大先生(だいせんせい)()恩顧(おんこ)日夜(にちや)(あづか)つてる(もの)御座(ござ)います。190何卒(どうぞ)()見捨(みす)てなく末長(すゑなが)可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ』
191建国別(たけくにわけ)『これ建彦(たけひこ)192(わし)母上(ははうへ)()えたのではない。193黒姫(くろひめ)(さま)()三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)がお()えになつたのだよ』
194建彦(たけひこ)『え、195(なん)仰有(おつしや)います。196(かく)しになつてはいけませぬ。197(たしか)にお母上(ははうへ)()(こと)一同(いちどう)承知(しようち)して()ります。198もはや(かく)れもなき館内(くわんない)一同(いちどう)(もの)(よろこ)びで御座(ござ)いますから、199そんな意地(いぢ)(わる)(こと)仰有(おつしや)らずに、200(あきら)かに仰有(おつしや)つて(くだ)さいませな』
201建国別(たけくにわけ)『そんな(こと)(たれ)()きましたか』
202建彦(たけひこ)『はい、203門番(もんばん)幾公(いくこう)(たしか)相違(さうゐ)ない、204貴方(あなた)のお(はなし)()いたと()つて、205駄賃(だちん)とらずの郵便(ゆうびん)配達(はいたつ)をやりましたので、206やがて(この)(むら)からもお(いは)ひに()るでせう』
207建国別(たけくにわけ)『これ建彦(たけひこ)208そりや大変(たいへん)だ。209(まつた)間違(まちが)ひだつたと()つて取消(とりけ)して(くだ)さい。210村人(むらびと)沢山(たくさん)(いはひ)()られては迷惑(めいわく)だからなア』
211建彦(たけひこ)『もはや公然(こうぜん)発表(はつぺう)(いた)しまして、212続々(ぞくぞく)とお(いはひ)()えますから、213(この)(さい)取消(とりけ)しなんか出来(でき)ませぬ。214(かみ)(さま)(やかた)から間違(まちが)つた(こと)()(まは)つたと()はれては、215それこそ信用(しんよう)(かか)はります。216そんな(こと)(あふ)せられずに、217間違(まちが)つて()つてもいいから()(かあ)さまにして()いて(くだ)さい。218(いづ)(たれ)かのお(かあ)さまでせうから……』
219建国別(たけくにわけ)(こま)つた(やつ)だなア。220幾公(いくこう)一寸(ちよつと)()んでくれ』
221 幾公(いくこう)大勢(おほぜい)(なか)から屁垂(へた)つて()つた(あたま)をヌツと()げ、
222幾公(いくこう)『はい、223(いく)此処(ここ)()ります。224幾久敷(いくひさし)()目出度(めでた)御座(ござ)います。225もし間違(まちが)ひましたら幾重(いくへ)にも()(ゆる)(くだ)さいませ。226行方(いく)()れぬ(わが)()(あと)(たづ)ねて()入来(いで)(あそ)ばしたお(かあ)さま、227何卒(どうぞ)大切(たいせつ)にして()げて(くだ)さいませ。228何程(なにほど)(かく)(あそ)ばされても、229貴方(あなた)()様子(やうす)から(かんが)へて()ますれば、230()親子(しんし)間柄(あひだがら)相違(さうゐ)御座(ござ)いませぬ』
231建国別(たけくにわけ)『ハテ(こま)つた(こと)出来(でき)たわい。232……黒姫(くろひめ)(さま)233如何(どう)(いた)しませうかな』
234黒姫(くろひめ)(わたし)(やう)(もの)突然(とつぜん)(まゐ)りましてお(やかた)()迷惑(めいわく)をかけ、235(なん)とも()まぬ(こと)御座(ござ)います……もしもし幾公(いくこう)さまとやら、236(わたし)黒姫(くろひめ)(まを)(もの)御座(ござ)います。237よくよく調(しら)べて()ますれば、238(わたし)息子(むすこ)ではなかつたので、239(じつ)(ところ)(たがひ)(かほ)見合(みあは)してガツカリして()(ところ)ですよ。240何卒(どうぞ)(やかた)迷惑(めいわく)にならぬやう、241直様(すぐさま)取消(とりけし)(ねが)ひます』
242幾公(いくこう)(なん)とまあ親子(おやこ)(こころ)(あは)して(かた)締結(ていけつ)したものだなア。243(なん)仰有(おつしや)つても以心(いしん)伝心(でんしん)244教外(けうげ)別伝(べつでん)245不立(ふりう)文字(もんじ)だ。246()両人(りやうにん)(よろこ)びの(いろ)相互(おたがひ)(かほ)にホノ()えて()りますぞえ。247こんな目出度(めでた)(とき)に、248そんな悪戯(いたづら)をして吾々(われわれ)をじらすものぢやありませぬ。249………コレコレ建彦(たけひこ)さま、250(なん)仰有(おつしや)つても()親子(しんし)だ。251唇歯(しんし)輔車(ほしや)間柄(あひだがら)だ。252きつても()れぬ親子(おやこ)(なか)253(こら)へきれない(よろこ)びの(いろ)が、254先生(せんせい)()夫婦(ふうふ)(かほ)に、255(あら)はれて()るぢやありませぬか』
256建国別(たけくにわけ)本当(ほんたう)(こま)つた(こと)出来(でき)たわい、257なア建能姫(たけのひめ)258如何(どう)(いた)しませうか、259黒姫(くろひめ)さま、260(めう)(こと)になつて()たぢやありませぬか』
261黒姫(くろひめ)本当(ほんたう)間違(まちが)へば間違(まちが)ふものですな。262これだから世間(せけん)(うはさ)()ふものはあてにならないと()ふのですよ。263……幽霊(いうれい)正体(しやうたい)()たり枯尾花(かれをばな)……と()つて、264道聴(だうちやう)途説(とせつ)()ふものはあてにはなりませぬ。265一犬(いつけん)(きよ)()へて万犬(ばんけん)(じつ)(つた)ふとやら、266(じつ)(ひと)(うはさ)()ふものは(おそ)ろしいものです。267(ひと)(くち)()(たて)られないとは此処(ここ)のことですな』
268幾公(いくこう)何処迄(どこまで)白々(しらじら)しい、269さうじらすものぢやありませぬ。270あつさりとして(くだ)さいな。271建彦(たけひこ)さま、272(はや)(はや)くお(いはひ)用意(ようい)だよ。273ここの先生(せんせい)意地(いぢ)(わる)いからな。274あんな(こと)()つて吾々(われわれ)をアフンとさす(わる)洒落(しやれ)だよ』
275 ()かる(ところ)小間使(こまづかひ)のお(たね)(あわただ)しく(はし)(きた)り、
276(たね)()主人(しゆじん)(さま)申上(まをしあ)げます。277只今(ただいま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)黒姫(くろひめ)(さま)のお(とも)だとか()つて二人(ふたり)(わか)(をとこ)房公と芳公()入来(いで)になりました。278如何(どう)(いた)しませうか』
279建国別(たけくにわけ)(いち)()(はや)此処(ここ)()(とほ)(まを)せ!』
280 お(たね)は『はい』と(こた)へて()(さが)る。
281大正一一・九・一三 旧七・二二 北村隆光録)

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