霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 漆山(うるしやま)〔九五三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻 篇:第2篇 有情無情 よみ:うじょうむじょう
章:第12章 第34巻 よみ:うるしやま 通し章番号:953
口述日:1922(大正11)年09月13日(旧07月22日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
房公と芳公は、黒姫に先に行かれ、激しい嵐に会いながらも玉治別宣伝使の宣伝歌に救われ、黒姫も嵐に悩んではいないかと必死に山道を追って進んでいた。
房公と芳公は、黒姫が出くわした村人たちのところまでやってきた。黒姫を建日別の館に送って行った玉公以外の村人は、山中の道に座ったままでいた。村人の一人、侠客の虎公は、房公と芳公のさまを見て、草鞋をめぐんでやろうと声をかけた。
房公と芳公は、虎公とおかしな掛け合いを始める。房公と芳公は、黒姫という婆様がここを通ったかと尋ねる。虎公は相撲を取って自分に勝ったら教えてやると返す。芳公と房公は相撲の経歴についての与太話をし、虎公は大いに受けた。
虎公は二人を案内して建日別の館に連れて行くことになった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm3412
愛善世界社版:154頁 八幡書店版:第6輯 418頁 修補版: 校定版:160頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001高山峠(たかやまたうげ)中腹(ちうふく)
002おき()られたる(ふさ)(よし)
003(あし)()つたを(さいは)ひに
004黒姫司(くろひめつかさ)(あと)()
005()国都(くにみやこ)(すす)まむと
006(やうや)絶頂(ぜつちやう)にいざりつく
007壁立(かべた)(さか)(くだ)りつつ
008房公(ふさこう)芳公(よしこう)両人(りやうにん)
009(あし)拍子(へうし)()(なが)
010(いは)()()()ふさくみ
011房公(ふさこう)『ウントコドツコイ芳公(よしこう)さま
012()をつけなされよ(あぶ)ないぞ
013(かべ)()てたよな坂路(さかみち)
014(いし)(くるま)がゴロゴロと
015人待顔(ひとまちがほ)にころげてる
016油断(ゆだん)出来(でき)ない(さか)(みち)
017オツトドツコイ(あし)(すべ)
018アイタヽヽタツタ(つまづ)いた
019(あし)(あたま)がうづき()
020芳公(よしこう)()をつけシツカリせい
021この(また)きつい坂路(さかみち)
022黒姫(くろひめ)さまはドツコイシヨ
023どうして(くだ)つて()ただろか
024ホンに(あぶ)ない坂路(さかみち)
025それについても孫公(まごこう)
026どこにマゴマゴしてるだろ
027(こころ)(かか)(たび)(そら)
028一天(いつてん)(にはか)にかき(くも)
029レコード(やぶ)りの暴風雨(ばうふうう)
030岩石(がんせき)()ばし()(たふ)
031げに(すさま)じき光景(くわうけい)
032(ちぢ)()がつて黒姫(くろひめ)
033ドツコイドツコイドツコイシヨ
034そこらに(ころ)げていやせぬか
035ウントコドツコイガラガラガラ
036それ()芳公(よしこう)こけたぢやないか
037(あし)爪先(つまさき)ドツコイシヨ
038一足々々(ひとあしひとあし)()をつけて
039(とが)つた(いし)をよけ(なが)
040キヨクキヨク(わら)膝坊主(ひざばうず)
041シツカリ(やいと)をすゑ(なが)
042(この)峻坂(しゆんぱん)(くだ)らねば
043()国都(くにみやこ)にや()かれない
044さぞ今頃(いまごろ)黒姫(くろひめ)さま
045高山彦(たかやまひこ)襟首(えりがみ)
046グツと(つか)んでドツコイシヨ
047ヤイノヤイノの真最中(まつさいちう)
048愛子(あいこ)(ひめ)新妻(にひづま)
049さぞや(こころ)()めるだろ
050(ひと)(こと)とは()(なが)
051(おれ)心配(しんぱい)ドツコイシヨ
052(こころ)(かか)つて(たま)らない
053高山彦(たかやまひこ)(わか)やいで
054綺麗(きれい)女房(にようばう)をドツコイシヨ
055(もら)うて(よろこ)最中(さいちう)
056(いろ)(くろ)(しわ)だらけ
057皺苦茶婆(しわくちやば)さまがやつて()
058(わたし)本当(ほんたう)女房(にようばう)
059シラを()られちやドツコイシヨ
060本当(ほんたう)迷惑(めいわく)なさるだろ
061さはさり(なが)最前(さいぜん)
062三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)
063玉治別(たまはるわけ)のドツコイシヨー
064(うた)うた(こゑ)(かげ)もなく
065(くも)(かすみ)()()せた
066(この)急坂(きふはん)如何(どう)してか
067玉治別(たまはるわけ)神司(かむつかさ)
068如何(どう)して其様(そのよ)にドツコイシヨ
069(はや)(くだ)つて()たのだろ
070(やま)天狗(てんぐ)がドツコイシヨ
071運上(うんじやう)()りに()るだらう
072アイタタ ドツコイ(また)()けた
073()()()たいと黒姫(くろひめ)
074恋路(こひぢ)(やみ)(つつ)まれて
075(とり)(かよ)はぬ山坂(やまさか)
076(のぼ)りつ(くだ)りつドツコイシヨ
077(をつと)(あと)(した)()
078(その)猛烈(まうれつ)()加減(かげん)
079(あき)れて(もの)()はれない
080ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨ
081オツと(むか)ふに(ひと)(かげ)
082彼奴(あいつ)如何(どう)やら(あや)しいぞ
083(これ)から腹帯(はらおび)しめ(なほ)
084天狗(てんぐ)(まご)だと(いつ)はつて
085彼奴(あいつ)()しもドツコイシヨ
086泥棒(どろばう)かせぎであつたなら
087(あたま)のテツペから()なりつけ
088(ひと)荒肝(あらぎも)()つてやろ
089あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
090御霊(みたま)(さち)はひましまして
091高山峠(たかやまたうげ)急坂(きふはん)
092()なく(こと)なく(すみやか)
093(くだ)らせ(たま)純世姫(すみよひめ)
094国魂神(くにたまがみ)御前(おんまへ)
095(つつし)(うやま)()ぎまつる
096オツトドツコイ(また)(すべ)
097(なん)(これ)(ほど)(いし)コロが
098沢山(たくさん)ころげて()るのだろ
099文明開花(ぶんめいかいくわ)今日(こんにち)
100どこのどこ(まで)(みち)をあけ
101如何(いか)なる(けは)しき山路(やまみち)
102三寸(さんずん)四寸(しすん)勾配(こうばい)
103自動車(じどうしや)人車(じんしや)(とほ)(やう)
104開鑿(かいさく)されてあるものを
105コリヤ(また)エライ野蛮国(やばんこく)
106アイタタ アイタタ(つまづ)いた
107草鞋(わらぢ)(さき)()れよつた
108何程(なにほど)(いた)石路(いしみち)
109跣足(はだし)()かねばならないか
110(こま)つた(こと)出来(でき)()
111こんな(こと)だと()つたなら
112草鞋(わらぢ)用意(ようい)をドツコイシヨ
113ドツコイドツコイドツコイシヨ
114して()()つたらよかつたに
115黒姫(くろひめ)さまはドツコイシヨ
116年寄(としよ)(だけ)()()いて
117無花果(いちじゆく)(まで)用意(ようい)して
118吾々(われわれ)二人(ふたり)饑渇(きかつ)をば
119ヤツと(すく)うて(くだ)さつた
120黒姫(くろひめ)さまが()うてゐる
121草鞋(わらぢ)一足(いつそく)()して()しい
122さうぢやと()つて黒姫(くろひめ)
123所在(ありか)はどこだか(わか)らない
124ホンに(こま)つたドツコイシヨ
125破目(はめ)になつたぢやないかいな
126黒姫(くろひめ)さまがドツコイシヨ
127いつも(なが)らに()うただろ
128(まへ)(わか)(もの)だから
129向意気(むこいき)(ばか)りが(つよ)すぎて
130(まへ)(うしろ)()がつかぬ
131(たび)をする(とき)如何(どう)しても
132草鞋(わらぢ)用意(ようい)第一(だいいち)
133馬鹿口(ばかぐち)(たた)(その)ひまに
134草鞋(わらぢ)(つく)つておくがよい
135途中(とちう)(こま)(こと)あると
136口角(こうかく)(あわ)()ばしつつ
137(をし)へてくれた(こと)()
138(いま)()のあたり(あら)はれて
139後悔(こうくわい)すれ(ども)仕様(しやう)がない
140あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
141(かみ)御霊(みたま)(さち)はひて
142房公(ふさこう)(あし)少時(しばし)()
143獅子(しし)(おほかみ)(あし)となり
144跣足(はだし)()かして(くだ)さんせ
145そうして(この)(さか)(くだ)つたら
146(また)もや(もと)(ひと)(あし)
147(つく)(なほ)して(くだ)されや
148房公(ふさこう)御願(おねがひ)(まを)します
149ウントコドツコイ ドツコイシヨ
150緩勾配(くわんこうばい)坂道(さかみち)
151ヒソヒソささやく(ひと)(かげ)
152彼奴(あいつ)はテツキリ山賊(さんぞく)
153いよいよ(これ)から大天狗(だいてんぐ)
154(まご)だと名乗(なの)つておどさうか
155一筋縄(ひとすぢなは)ではゆくまいぞ
156ウントコドツコイドツコイシヨ』
157(うた)(なが)(くだ)つて()る。158緩勾配(くわんこうばい)坂路(さかみち)(こし)うちかけて雑談(ざつだん)(ふけ)つてゐる四人(よにん)(をとこ)159二人(ふたり)姿(すがた)()て、
160(かふ)『オイ(たび)(しう)161一寸(ちよつと)一服(いつぷく)しなさい。162随分(ずゐぶん)最前(さいぜん)暴風雨(ばうふうう)で、163谷路(たにみち)()れて、164エライ(いし)コロ(みち)になつたので、165随分(ずゐぶん)草臥(くたび)れただろ。166ヤアお(まへ)跣足(はだし)だなア、167其奴(そいつ)(たま)るまい、168如何(どう)だ、169(あし)()ふか()らぬが、170(おれ)草鞋(わらぢ)一足(いつそく)(しん)ぜるから、171(これ)()きなさい。172こんな(いし)(とが)つた急坂(きふはん)を、173(ふもと)まで(くだ)(まで)にや、174コンパスが破損(はそん)して(しま)ふからなア』
175房公(ふさこう)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。176ヨウ御親切(ごしんせつ)仰有(おつしや)つて(くだ)さいました。177あゝそんなら(いく)()しましたら(いただ)けますかなア』
178(かふ)(おれ)草鞋売(わらぢうり)ではないぞ、179(あま)軽蔑(けいべつ)してくれない。180(これ)でも武野村(たけのむら)虎公(とらこう)()つて、181チツとは()()つた(をとこ)だ。182(まへ)難儀(なんぎ)()るにつけ、183()(どく)なと(おも)つたから、184()らうと()ふのだ』
185房公(ふさこう)『それでも()()らずの(かた)に、186無料(ただ)(いただ)きましては、187如何(どう)(こころ)()みませぬ。188どうぞ御遠慮(ごゑんりよ)なく代価(だいか)御取(おと)(くだ)さいませ』
189虎公(とらこう)他人(たにん)らしい水臭(みづくさ)(こと)()ふな。190(おれ)三五教(あななひけう)信者(しんじや)だが、191(かみ)さまの(をしへ)には(あめ)(した)には他人(たにん)()(こと)なきものぞ、192(たれ)(かれ)も、193()きとし()ける(もの)は、194人間(にんげん)はおろか、195禽獣虫魚草木(きんじうちうぎよさうもく)(いた)(まで)196(たふと)(かみ)さまの御子(みこ)だ、197さうして宇宙(うちう)一切(いつさい)(のこ)らず兄弟姉妹(けいていしまい)だと仰有(おつしや)つたぞ。198それだから(おれ)はお(まへ)本当(ほんたう)兄弟(きやうだい)だと(おも)ふてゐるのだから、199遠慮(ゑんりよ)せずに()いてくれ』
200房公(ふさこう)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。201神様(かみさま)(をしへ)(えら)いものだなア。202こんな野蛮国(やばんこく)(まで)感化力(かんくわりよく)()びてると(おも)へば、203宣伝使(せんでんし)馬鹿(ばか)にはならぬワイ。204黒姫(くろひめ)さまだつて、205俺達(おれたち)沢山(たくさん)(さう)(なん)につけ、206かにつけ、207からかつて()たが、208本当(ほんたう)勿体(もつたい)ない(こと)をしたものだ。209一時(いちじ)(はや)黒姫(くろひめ)さまにお()にかかつてお(わび)をしようぢやないか、210なア芳公(よしこう)
211 芳公(よしこう)虎公(とらこう)(むか)丁寧(ていねい)会釈(ゑしやく)をし(なが)ら、
212()()らずの吾々(われわれ)(たい)し、213御親切(ごしんせつ)(めぐ)んで(くだ)さいまして有難(ありがた)御座(ござ)います。214(この)御恩(ごおん)(けつ)して(わす)れませぬ。215(この)房公(ふさこう)草鞋(わらぢ)()つて(こま)つて()つた(ところ)216あなたの御恵(みめぐみ)(あづか)り、217(じつ)()(かへ)つたやうな、218(わたし)(まで)(おも)ひを(いた)します』
219虎公(とらこう)親切(しんせつ)にほだされて、220(なみだ)ぐみつつ(れい)()ふ。
221虎公(とらこう)『エヽそんな(なみだ)つぽい(こと)()うてくれな、222兄弟(きやうだい)同志(どうし)ぢやないか。223(おれ)(この)草鞋(わらぢ)をはいて()けと()つたら、224(まへ)(はう)から……ヨシ()た、225はいてやろ、226貴様(きさま)中々(なかなか)()()いた(やつ)だ、227それでこそ(おれ)兄弟分(きやうだいぶん)だ、228今日(けふ)から(おれ)がお(とも)をさしてやるから()いて()い。229()(こく)()つたら(さけ)一杯(いつぱい)(おご)つてやる……と()元気(げんき)よう()つてくれ。230(をとこ)のくせにメソメソと、231有難(ありがた)いの勿体(もつたい)ないのと()うてくれると小癪(こしやく)(さは)つて仕方(しかた)がないワ』
232房公(ふさこう)『オイ(とら)野郎(やらう)233貴様(きさま)猛獣(まうじう)(やう)()だが、234(わり)とは()(よわ)(やつ)だ。235(おれ)天狗(てんぐ)(まご)だと(おも)つて、236追従(つゐせう)一足(いつそく)よりない草鞋(わらぢ)(はう)()しよつたのだなア。237貴様(きさま)草鞋(わらぢ)大方(おほかた)(やぶ)れてるぢやないか。238(おれ)(この)草鞋(わらぢ)をはいてやつたら貴様(きさま)如何(どう)する(つも)りだ。239(わけ)(わか)らぬ馬鹿者(ばかもの)だなア』
240虎公(とらこう)『オツトお()でたな、241天狗(てんぐ)(まご)どん……草鞋(わらぢ)一足(いつそく)(くらゐ)()くなつたつて、242(あし)(かた)(ぱう)(くらゐ)千切(ちぎ)れたつて、243こたへるやうな哥兄(にい)さまだと(おも)つて()るのか。244天狗(てんぐ)(まご)でさへ草鞋(わらぢ)()れて吠面(ほえづら)かはきやがつた(くらゐ)だのに、245(この)虎公(とらこう)真跣足(まつぱだし)(この)(さか)(くだ)るのだから、246天狗(てんぐ)(まご)よりも余程(よほど)(えら)いのだよ』
247房公(ふさこう)『アツハヽヽヽ此奴(こいつ)面白(おもしろ)い、248(これ)から(おれ)家来(けらい)にしてやらう。249チツと(その)(かは)りに(つら)いぞ』
250虎公(とらこう)(なに)(つら)い、251俺達(おれたち)神様(かみさま)生宮(いきみや)だ。252(この)()(つら)(こと)も、253(こわ)(こと)()らぬと()金剛不壊(こんがうふえ)如意宝珠(によいほつしゆ)()(やう)肉体(にくたい)だからなア』
254芳公(よしこう)『オイ(とら)255貴様(きさま)(ひと)()ひたい(こと)があるが白状(はくじやう)するか如何(どう)だ』
256虎公(とらこう)白状(はくじやう)せいとは(なん)(こと)だ。257(まる)(おれ)科人(とがにん)(あつかひ)にして()やがるのだなア』
258芳公(よしこう)『きまつた(こと)よ、259世界(せかい)人間(にんげん)何奴(どいつ)此奴(こいつ)祖神(おやがみ)さまの()から()れば科人(とがにん)(ばか)りだ。260(ろく)(やつ)一匹(いつぴき)だつて()るものぢやない。261(みな)()(あし)容器(いれもの)(ばか)りぢやからなア。262貴様(きさま)のやうに折角(せつかく)人間(にんげん)(うま)(なが)ら、263()(あし)(やう)()をつけやがつてトラ(なん)(こと)だい』
264虎公(とらこう)『アハヽヽヽ馬鹿(ばか)にしやがるワイ。265ヨシ()()つた。266貴様(きさま)こそ(おれ)特別(とくべつ)兄弟分(きやうだいぶん)だ。267大方(おほかた)貴様(きさま)(ばば)(あと)()ひかけて()たウルサイ代物(しろもの)だらう』
268芳公(よしこう)『さうだ、269(その)(ばば)所在(ありか)()つてゐるなら、270(つつ)まずかくさず、271一々(いちいち)芳公(よしこう)(まへ)白状(はくじやう)(いた)せと()ふのだ。272()らぬの(なん)のと、273薄情(はくじやう)(こと)(ぬか)すと、274(おに)(わらび)貴様(きさま)(よこ)(つら)御見舞(おみまひ)(まを)すぞ』
275虎公(とらこう)『アハヽヽヽ一寸(ちよつと)此奴(こやつ)276(あぢ)をやりよるワイ。277貴様(きさま)一体(いつたい)どこの(うま)(ほね)だ』
278芳公(よしこう)(おれ)かい、279(おれ)自転倒島(おのころじま)芳公(よしこう)()つたら(たれ)()(もの)()る、280()らぬ(もの)一寸(ちよつと)()らぬ、281天下無双(てんかむさう)豪傑(がうけつ)だよ。282摩利支天(まりしてん)さまにさへ相撲(すまう)とつて()けたことのない哥兄(にい)さまだからなア』
283虎公(とらこう)貴様(きさま)284摩利支天(まりしてん)とどこで相撲(すもう)とつたのだ。285何程(なにほど)法螺(ほら)()いても、286其奴(そいつ)通用(つうよう)しないぞ、287摩利支天(まりしてん)()けぬと()(やつ)三千世界(さんぜんせかい)にあるものか。288そんなウソいふと、289貴様(きさま)290()んだら()がつぶれ、291(もの)()へぬやうになり、292(からだ)(うご)けなくなつて(しま)ふぞ』
293芳公(よしこう)(おれ)摩利支天(まりしてん)木像(もくざう)相撲(すもう)とつたのだ。294(ひと)()いてやつたら、295一遍(いつぺん)仰向(あふむ)けにこけるのだけれど、296(うで)()れたり(ゆび)()れたりすると面倒(めんだう)だからなア。297それで(こら)へてやつたのだ』
298虎公(とらこう)『アハヽヽヽ大方(おほかた)そんな(こと)だと(おも)ふて()つたよ。299(しか)芳公(よしこう)300貴様(きさま)小相撲(こずもう)(ひと)つも()れさうな(からだ)をしてゐるが、301相撲(すもう)とつたことがあるのか』
302芳公(よしこう)『あらいでかい、303相撲道(すもうだう)名人(めいじん)だ。304自転倒島(おのころじま)横綱(よこづな)芳野川(よしのがは)()つたら(おれ)のことだ。305貴様(きさま)(みみ)余程(よほど)遅手耳(おくてみみ)だなア』
306房公(ふさこう)『オイ虎公(とらこう)307(この)芳公(よしこう)はなア、308随分(ずゐぶん)(くち)達者(たつしや)だが、309相撲(すもう)にかけたら、310随分(ずゐぶん)(みじ)めなものだよ。311芳野川(よしのがは)なんて、312ソラ(となり)()んで()つた相撲取(すもうとり)のことだ。313此奴(こいつ)鍋蓋(なべぶた)()力士(りきし)だ。314()つたが最後(さいご)315すぐに仰向(あふむ)くといふ代物(しろもの)だからなア』
316虎公(とらこう)『オウ(ひと)鍋蓋(なべぶた)317(この)虎ケ岳(とらがだけ)一勝負(ひとしようぶ)318此処(ここ)でやらうぢやないか』
319芳公(よしこう)『オウ面白(おもしろ)からう。320やらぬ(こと)はないが、321()んな石原(いしはら)では面白(おもしろ)くねえ、322(すこ)平地(へいち)()つて、323(あらた)めて()(こと)にしようかい。324(おれ)今日(けふ)から漆山(うるしやま)改名(かいめい)するから、325(おれ)(さは)つたらすぐに()けるから、326(その)覚悟(かくご)()つたがよいワイ』
327虎公(とらこう)『うるさい漆山(うるしやま)だなア』
328房公(ふさこう)『オイ虎ケ岳(とらがだけ)329こんな漆山(うるしやま)相撲(すもう)なんか()るものぢやない。330貴様(きさま)沽券(こけん)()がるよ。331此奴(こいつ)ア、332相撲(すもう)()つて、333ついぞ()つたことのない(やつ)だからなア』
334芳公(よしこう)(やかま)しう()ふない。335(おれ)(ところ)のお(たき)何時(いつ)もなア……角力(すまう)にや()けても怪我(けが)さへなけりや、336(ばん)にや(わたし)()けて()げよ……と(ぬか)しやがるのだから、337(なん)()つても色男(いろをとこ)だ。338貴様(きさま)なぞの燕雀(えんじやく)容喙(ようかい)すべき(ところ)ぢやない。339(よわ)(やつ)(よわ)(やつ)らしくスツ()んでをれ』
340房公(ふさこう)『オイ鍋蓋(なべぶた)341貴様(きさま)聖地(せいち)宮相撲(みやずもう)のあつた(とき)如何(どう)だつた。342鬼ケ岳(おにがだけ)貴様(きさま)()つた(とき)343たしか二番(にばん)勝負(しようぶ)だつたなア』
344虎公(とらこう)『ソラ面白(おもしろ)い、345(その)(とき)勝負(しようぶ)()かしてくれ、346どうだつた、347キツと()けただらう』
348房公(ふさこう)(その)(とき)(この)鍋蓋(なべぶた)()……』
349()はうとする。350あわてて(くち)()()て、
351芳公(よしこう)『コリヤ天機(てんき)()らす(べか)らずだ。352()はいでも(わか)つてるワイ。353互角(ごかく)勝負(しようぶ)だつたよ』
354虎公(とらこう)『さうすると一番(いちばん)(づつ)()つたのだな』
355芳公(よしこう)(はじめ)勝負(しようぶ)には都合(つがふ)(わる)うて、356(この)鍋蓋(なべぶた)鬼ケ岳(おにがだけ)()けたのだ。357(つぎ)勝負(しようぶ)には、358(むか)うが()つたのだ。359つまり(さき)(おれ)()けて、360此度(こんど)先方(むかふ)()つたのだよ』
361虎公(とらこう)『アハヽヽヽ大方(おほかた)そんな(こと)だと(おも)つて()つた』
362房公(ふさこう)(あま)相撲(すもう)(はなし)で、363黒姫(くろひめ)所在(ありか)白状(はくじやう)さすのを(わす)れて()つた。364サア()()りチヤツと申上(まをしあ)げぬか』
365虎公(とらこう)(やかま)()ふない。366(おれ)()(ところ)()いて()さへすれば(わか)るのだ。367何事(なにごと)三五教(あななひけう)不言実行(ふげんじつかう)だからなア。368(ことば)(おほ)ければ(しな)(すくな)し……と()ふことがある、369(だま)つて()いて()い』
370()(なが)ら、371虎公(とらこう)(ほか)三人(さんにん)二人(ふたり)(さき)()ち、372急坂(きふはん)(くだ)り、373(やや)緩勾配(くわんこうばい)(まが)(みち)になつた(ところ)より坂路(さかみち)(ひだり)()え、374(ちひ)さい(やま)()(ふた)()(まは)つて建日(たけひ)(やかた)()して(すす)()くのであつた。
375大正一一・九・一三 旧七・二二 松村真澄録)