霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一七章 (きり)(うみ)〔九八一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻 篇:第3篇 火の国都 よみ:ひのくにみやこ
章:第17章 第35巻 よみ:きりのうみ 通し章番号:981
口述日:1922(大正11)年09月17日(旧07月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
荒井ヶ岳の頂上に腰を打ちかけて、黒姫たち一行は四方を見晴らして雑談にふけっていた。徳公はあたりの地理に詳しいのを幸い、黒姫に景色を示しながら筑紫島の地図の解説をしている。
久公にせかされた徳公はくってかかり、二人は喧嘩のような言い争いを始める。黒姫が止めに入ったが、そこへ四五人の男たちがかよわい女を伴って一行の反対側から急坂を登ってきた。
荒井ヶ岳は山賊の名所とのことで、黒姫一行と、反対側から熊襲の国へ向かう一行は、お互いに相手を山賊ではないかと思って警戒している。最初はお互いに山賊だと思いあって手荒なことをしないようにと頼み込み、話がかみあわない。
黒姫が見かねて話に入り、ようやくお互いに山賊ではないことがわかり、ほっと胸をなでおろした。
旅の男の中でも勢いがよい鉄公は、黒姫一行が山賊ではないことがわかると途端にほらを吹きだした。黒姫一行の徳公と久公はそれを面白く聞いていたが、鉄公一行はまた急に臆病風に吹かれてか、坂道をっさんに下って去って行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm3517
愛善世界社版:195頁 八幡書店版:第6輯 541頁 修補版: 校定版:207頁 普及版:75頁 初版: ページ備考:
001 青葉(あをば)(かを)り、002(かすみ)(まよ)荒井ケ岳(あらゐがだけ)絶頂(ぜつちやう)(こし)(うち)かけて、003四方(しはう)()はらし、004雑談(ざつだん)(ふけ)つてゐる三人(さんにん)男女(だんぢよ)がある。005(あま)(かぜ)はなけれども(なん)となく(あさ)空気(くうき)(すず)しい。006彼方(あちら)此方(こちら)(けむり)ともつかず、007(きり)ともつかぬ(もや)大地(だいち)一面(いちめん)()()め、008(その)(なか)より()()(やう)にコバルト(いろ)山岳(さんがく)(あら)はれてゐる。
009『モシモシ黒姫(くろひめ)(さま)010(なん)といい絶景(ぜつけい)でせうか、011日中(につちう)随分(ずゐぶん)(くる)しいですが、012()朝霧(あさきり)(つつ)まれて、013(すず)しい空気(くうき)(あた)り、014四方(しはう)見下(みくだ)気分(きぶん)は、015まるで地上(ちじやう)一切(いつさい)掌握(しやうあく)した王者(わうじや)(やう)雄大(ゆうだい)なる気分(きぶん)(ただよ)うて()るぢやありませぬか』
016(じつ)雄大(ゆうだい)景色(けしき)ですなア。017()(くに)(みやこ)はどの(へん)(あた)りますか』
018『これからズツと西(にし)に、019うす(ぐろ)()()(やう)(やま)がありませう。020それが()(くに)(みやこ)西(にし)(そび)えてゐる花見ケ岳(はなみがだけ)()つて()(くに)第一(だいいち)名山(めいざん)御座(ござ)いますよ。021あの(ひがし)()えるのが()国ケ岳(くにがだけ)022(その)(すこ)(きた)へよつてゐる絶頂(ぜつちやう)(すこ)()いて()えるのが向日山(むかふやま)023それからズツと(きた)にうすく(きり)(なか)から(のぞ)いてゐるのが白山峠(しらやまたうげ)です。024(その)(ほか)山々(やまやま)全部(ぜんぶ)(きり)(うみ)沈没(ちんぼつ)して()りますから()られませぬ。025(この)(きり)がサラリと()れようものなら、026それこそ天下(てんか)壮観(さうくわん)です。027花頂山(くわちやうざん)028天狗ケ岳(てんぐがだけ)029(こし)(やま)030春山峠(はるやまたうげ)031志賀(しが)(やま)などと、032随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)青山(せいざん)点々(てんてん)してゐます。033(その)(あひだ)()うてゐる()国川(くにがは)は、034(あめ)棚機姫(たなばたひめ)(ぬの)(さら)したやうに蜿々(えんえん)として()(くに)原野(げんや)(なが)れ、035えも()はれぬ光景(くわうけい)です。036さうして西南(せいなん)(あた)つて(たつ)(うみ)といふ随分(ずゐぶん)(おほ)きな湖水(こすゐ)がありますが、037それも生憎(あひにく)(かすみ)(ため)(つつ)まれてゐます。038それから()国都(くにみやこ)名物(めいぶつ)039五重(ごぢゆう)(たふ)(きり)のない(とき)は、040うつすらと()(うつ)ります。041それを()(たび)に、042(なん)ともいへぬ気分(きぶん)になつて、043(ねむ)たくなりますよ』
044徳公(とくこう)さま、045随分(ずゐぶん)あなたは地理(ちり)(くは)しい(かた)ですなア。046さう()ふお(かた)案内(あんない)をして(もら)へば大丈夫(だいぢやうぶ)ですなア』
047乍併(しかしながら)(この)荒井峠(あらゐたうげ)(その)(じつ)048御代ケ岳(みよがだけ)といふのですが、049いつも山賊(さんぞく)()(あら)つぽい(こと)をするので、050(たれ)いふとなく荒井峠(あらゐたうげ)綽名(あだな)がついたのです。051一名(いちめい)生首峠(なまくびたうげ)とも()つて、052(この)(たうげ)には生首(なまくび)()えた(こと)のないといふ危険区域(きけんくゐき)です。053(この)徳公(とくこう)地理(ちり)には精通(せいつう)(かつ)豪胆者(がうたんもの)だといふことを、054三公(さんこう)親分(おやぶん)()つてゐますから、055抜擢(ばつてき)して御案内(ごあんない)()てと、056(めい)じたのですから、057何事(なにごと)があらうとも、058徳公(とくこう)のゐる(かぎ)大丈夫(だいぢやうぶ)ですから御安心(ごあんしん)なさいませ。059仮令(たとへ)泥棒(どろばう)千匹(せんびき)万匹(まんびき)060(たば)になつて()()(きた)るとも、061敵一倍(てきいちばい)(ちから)発揮(はつき)し、062縦横無尽(じうわうむじん)()()()()()()らし、063(てき)千里(せんり)(しりぞ)けて、064御身(おんみ)御安泰(ごあんたい)(まも)ります』
065『オホヽヽヽ、066随分(ずゐぶん)(くち)勇者(ゆうしや)ですなア』
067『ソラさうですとも、068言霊(ことたま)(さち)はひ(たす)()くる(かみ)(くに)ですもの、069(いさ)めば(いさ)(こと)出来(でき)てくる、070(くや)めば(くや)むことが出来(でき)てくるのは天地(てんち)真理(しんり)071言霊学上(ことたまがくじやう)本義(ほんぎ)ですから、072(ちから)一杯(いつぱい)(つよ)いことをいつて、073荒井ケ岳(あらゐがだけ)曲神(まがかみ)慴伏(せふふく)させる徳公(とくこう)一厘(いちりん)仕組(しぐみ)074()(いさ)ましき次第(しだい)なりけりと()(ところ)ですわい、075アハヽヽヽ』
076『オホヽヽヽ、077元気(げんき)徳公(とくこう)さまだこと』
078『オイ(とく)079モウ()()けてゐるぞ。080(なに)寝言(ねごと)()つてゐるのだ。081(ひと)手水(てうづ)でも使(つか)つて()い』
082『オイ久公(きうこう)083貴様(きさま)こそ寝言(ねごと)()つてるのだらう。084さうでなくちやそんな馬鹿(ばか)(こと)()へるかい。085よく(かんが)へて()よ。086こんな高山(かうざん)絶頂(ぜつちやう)に、087手水(てうづ)使(つか)へといつた(ところ)(みづ)があるかい。088それだから貴様(きさま)寝言(ねごと)()つてると()ふのだ』
089形体(けいたい)ある(みづ)使(つか)へと()ふのぢやないよ。090無形(むけい)清水(しみづ)手水(てうづ)使(つか)へと()つたのだ。091言霊(ことたま)(さち)はひ(たす)()くる(くに)だから、092(おれ)がかう()つたが最後(さいご)093(この)山頂(さんちやう)から(にはか)清水(しみづ)滾々(こんこん)として()()すかも()れないのだ。094(あま)茶々(ちやちや)()れて()れない』
095茶々(ちやちや)()れと()つたつて、096わかす(みづ)もないぢやないかい』
097(おれ)(ひと)魔法瓶(まはふびん)から茶々(ちやちや)()して()ましてやらうか、098それツ!』
099といひ(なが)ら、100(まへ)をまくつて、101徳公(とくこう)(はう)(むか)つて竜頭水(りうとうすい)(ごと)塩水(えんすゐ)噴出(ふんしゆつ)する。
102『エヽ(きた)ねえ(こと)をすな。103(この)親分(おやぶん)にして(この)乾分(こぶん)あり。104いつも(くだ)らぬ(こと)ばかり見聞(けんぶん)してゐよるものだから、105そんな無作法(ぶさはふ)(こと)平気(へいき)でするのだ。106(やま)には(やま)(かみ)さまがあるぞ。107すべて(やま)(いただ)きは人間(にんげん)(たと)へたら(あたま)同様(どうやう)だ。108(あたま)小便(せうべん)をひりかけるとはチツと無道(むだう)ぢやないか』
109(おれ)のは小便(せうべん)ぢやない、110バリと()ふのだ。111(あま)貴様(きさま)がイバリよるから、112(ひと)バリ(すゐ)をさして(ぬく)めてやらうと(おも)つたのだ。113(あま)りメートルが(あが)りすぎて()るからなア。114バリ洗礼(せんれい)(ほどこ)して貴様(きさま)(こころ)を、115サツパリ荒井峠(あらゐたうげ)だ、116ウツフヽヽヽ』
117黒姫(くろひめ)さま、118(つね)(なら)ひが他所(よそ)()るとか()ひまして、119日常(ふだん)教育(けういく)不用意(ふようい)()(あら)はれるものですなア。120本当(ほんたう)仕方(しかた)のない(やつ)です。121虎公(とらこう)親分(おやぶん)()んな代物(しろもの)()つて()るのは随分(ずゐぶん)大抵(たいてい)ぢやありますめえ』
122『コラ(だま)つて()れば、123(くち)番所(ばんしよ)がないと(おも)つて、124非常(ひじやう)バリ嘲弄(てうろう)(ほしいまま)にしよる。125モウ承知(しようち)せないぞ』
126貴様(きさま)貴様(きさま)(はう)からバリかけたぢやねえか。127(おれ)バリするのは当然(あたりまへ)だ。128これでも三公(さんこう)身内(みうち)(おい)ては、129徳公(とくこう)()つてバリバリ(もの)だから、130グヅグヅ(ぬか)すと(かさ)(だい)洋行(やうかう)するやうな()()はしてやらうか』
131煩雑(はんざつ)議論(ぎろん)をして()るよりも、132手取早(てつとりばや)自由(じいう)行動(かうどう)だ。133サア()勝負(しようぶ)!』
134『ハツハヽヽヽキウキウ()つつめられ、135キウ(さく)案出(あんしゆつ)して、136キウ威張(ゐば)()しよつたなア、137マアちつと冷静(れいせい)にものを(かんが)へて()よ。138親分(おやぶん)同志(どうし)和解(わかい)してゐるぢやねえか。139ワカ(もの)同志(どうし)()んな(ところ)喧嘩(けんくわ)しちや()まねえぞ、140此処(ここ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()御座(ござ)る。141無抵抗主義(むていかうしゆぎ)貴様(きさま)(なん)(おも)つてゐるかい』
142『モシモシお二人(ふたり)さま、143どうぞ(いさか)ひはやめて(くだ)さい。144()つともないぢやありませぬか』
145徳別行列車(とくべつきうかうれつしや)黒姫(くろひめ)オツトドツコイ、146コリヤ失敬(しつけい)147黒煙(くろけむり)()いて、148()(くに)大原野(だいげんや)疾走(しつそう)する(ところ)ですからなア、149アハヽヽヽ』
150久々如律令(きうきうによりつれい)151とうかみゑみため、152(はら)(たま)(きよ)(たま)へ、153南無(なむ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)154一時(いちじ)(はや)徳久列車(とくきうれつしや)勝利(しようり)(みやこ)安着(あんちやく)(いた)しまする(やう)155帰命頂礼(きみやうちやうらい)156願望成就(ぐわんまうじやうじゆ)157無上霊宝(むじやうれいほう)158珍妙如来(ちんめうによらい)159(まも)(たま)(さち)はひ(たま)へ、160ウツフヽヽヽ』
161 ()かる(ところ)四五人(しごにん)(をとこ)162一人(ひとり)のかよわき(をんな)(ともな)急坂(きふはん)(のぼ)(きた)る。
163『いよいよ泥公(どろこう)御出現(ごしゆつげん)だ。
164(この)(やま)(はたら)泥棒(どろばう)
165(なが)大刀(だんびら)()りまはし
166オイオイ貴様(きさま)(たび)(やつ)
167(かね)をスツカリおれの(まへ)
168()すか()さぬかコリヤどうぢや
169()さぬと()つたら(この)(とほ)
170おどせば久公(きうこう)()(いだ)
171(かね)()せなら()しもする
172(とも)をせいなら(とも)もする
173(いのち)ばかりはお(たす)けと
174()うても(かへ)らぬ久公(きうこう)
175(あは)れや泥棒(どろばう)がバツサリと
176()つてすてたる(おそ)ろしさ
177あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
178(かな)はぬならば久公(きうこう)
179一時(いちじ)(はや)()()せよ
180三十六計(さんじふろくけい)(おく)()
181()げるにしくはない(ほど)
182かけがひのない(その)(いのち)
183もしもバツサリやられたら
184貴様(きさま)(うち)のおなべ()
185吠面(ほえづら)かわいて(やかま)しう
186近所(きんじよ)迷惑(めいわく)かけるだろ
187アハヽヽヽ、アハヽヽヽ』
188『コリヤ(とく)189(なに)(ほざ)きよるのだ。190泥棒(どろばう)(こは)くつて侠客(けふかく)出来(でき)るかい。191おれを(たれ)だと(おも)つてゐるのかい。192(うはばみ)久公(きうこう)()つたら(おれ)のことだぞ。193(むかし)白山峠(しらやまたうげ)岩屋戸(いはやど)(かま)へ、194七十五人(しちじふごにん)乾児(こぶん)()きつれ、195往来(わうらい)人間(にんげん)真裸(まつぱだか)にし、196経験(けいけん)をつんだ悪逆(あくぎやく)無道(むだう)(うはばみ)久公(きうこう)()れの()てだ……と()ふのは(おれ)ではない。197(その)久公(きうこう)()をあやかつた新久公(しんきうこう)だから、198チツとは泥的(どろてき)(にほ)(ぐらゐ)保留(ほりう)してるつもりだから、199(あま)りバカにして(もら)ふまいかい』
200 五人(ごにん)(をとこ)久公(きうこう)法螺(ほら)()いて、201本当(ほんたう)泥棒(どろばう)出現(しゆつげん)(おも)ひ、202顔色(かほいろ)をサツと()へてゐる。203一人(ひとり)(をんな)()(うしな)ひ、
204『あゝ如何(どう)しませう、205泥棒(どろばう)()ました。206(にい)さま(たす)けて(くだ)さいな』
207(をとこ)人間(にんげん)覚悟(かくご)第一(だいいち)だ。208荒井峠(あらゐたうげ)山賊(さんぞく)()るから、209モウ(すこ)(おそ)く、210()()けてから(のぼ)らうと()つたのに、211貴様(きさま)(やかま)しく()()てて夜中立(よなかだち)をして()たものだから、212こんな(こは)()()ふのだ。213これも自業自得(じごうじとく)とあきらめて真裸(まつぱだか)となり、214(いのち)(だけ)(たす)けて(もら)ふやうにするのが第一(だいいち)上分別(じやうふんべつ)だ。215オイ(みな)(はだか)になれ、216泥公(どろこう)(はう)から請求(せいきう)されない(うち)綺麗(きれい)サツパリとおつ()りだす(はう)得策(とくさく)だ。217(ひと)(せい)(ぜん)だから、218下着(したぎ)一枚(いちまい)(ぐらゐ)(かへ)してくれるかも()れぬからのう』
219小声(こごゑ)一同(いちどう)(むか)つて(ささや)いてゐる。220久公(きうこう)(この)(ささや)(ごゑ)はチツとも(みみ)(はい)らなかつた。221(あま)りの(おどろ)きに(みみ)()つてゐたからである。
222(をとこ)(わたし)()(くに)(もの)御座(ござ)いますが、223(にはか)急用(きふよう)出来(でき)まして、224男女(だんぢよ)六人連(ろくにんづ)れ、225(この)(さか)()えて(まゐ)りました。226どうぞ(あら)いことをせないやうに(たの)みます。227(その)(かは)りスツカリ着物(きもの)()いで(わた)しますから……』
228『お(まへ)(ひと)着物(きもの)()がすのが商売(しやうばい)だから無理(むり)もないが、229どうぞ今日(けふ)日曜(にちえう)にしてくれ、230(たの)みぢや。231三五教(あななひけう)黒姫(くろひめ)さまのお(とも)をして()(くに)()くのだから、232ここで真裸(まつぱだか)にせられちやア、233本当(ほんたう)迷惑(めいわく)だからなア。234一枚(いちまい)だつて(わた)すこたア出来(でき)ないから、235どうぞ(あきら)めて(くだ)さい。236これでも(をとこ)一匹(いつぴき)侠客(けふかく)だから、237裸一貫(はだかいつくわん)大男(おほをとこ)だから……』
238 (をとこ)(また)(おどろ)きの(ため)(みみ)もろくに(きこ)えなくなつてゐた。
239『エヽ(なん)仰有(おつしや)います。240一枚(いちまい)(わた)さぬと仰有(おつしや)るのですか。241せめて下着(したぎ)なつと(くだ)さいな、242裸一貫(はだかいつくわん)とか二貫(にくわん)とか仰有(おつしや)いましたが、243(はだか)になつちや道中(だうちう)出来(でき)ませぬ、244(また)こんな孱弱(かよわ)(をんな)()るのですから、245そこはお慈悲(じひ)()のがして(くだ)さいませ』
246 (ほか)五人(ごにん)男女(だんぢよ)()をふさぎ、247(みみ)をつめ坂路(さかみち)にふるひふるひ(しやが)んでゐる。
248『アハヽヽヽ、249臆病者(おくびやうもの)同士(どうし)寄合(よりあひ)ぢやなア………コレコレ(たび)御方(おかた)250吾々(われわれ)(けつ)して泥棒(どろばう)ぢやありませぬよ。251大蛇(をろち)三公(さんこう)乾児(こぶん)で、252(よわ)きをくじき、253(つよ)きを(たす)けると()都合(つがふ)()侠客(けふかく)だから、254マアマア安心(あんしん)なさい。255(いのち)()つても着物(きもの)(まで)()らうとは()はねえから安心(あんしん)しなせえ。256(いま)人間(にんげん)(からだ)よりも着物(きもの)大切(たいせつ)がるから大切(たいせつ)着物(きもの)(はう)(たす)けて()げやせう、257アハヽヽヽ』
258『コレコレ徳公(とくこう)259久公(きうこう)260冗談(じようだん)もいい加減(かげん)にしておきなさい。261(たび)のお(かた)本当(ほんたう)泥棒(どろばう)だと(おも)つて、262あの(とほ)(ふる)うてゐられるぢやありませぬか。263そんな(はら)(わる)いことを()ふものぢやありませぬよ』
264『いかにも御尤(ごもつと)千万(せんばん)265(おそ)入谷(いりや)鬼子母神(きしぼじん)266(あき)(かはづ)(つら)(みづ)267つらつら(おも)んみれば、268()()らずの旅人(たびびと)(つかま)へ、269いらざる(おど)文句(もんく)(なら)べたて、270(まこと)(もつ)不都合千万(ふつがふせんばん)271(ひら)御容赦(ごようしや)(ねがひ)()(たてまつ)りまする……コレコレ(たび)のお(かた)272吾々(われわれ)(けつ)して泥棒(どろばう)ぢやありませぬ。273三五教(あななひけう)信者(しんじや)だから安心(あんしん)して(くだ)さい。274(じつ)此方(こちら)(はう)から、275(まへ)さま(たち)泥棒(どろばう)(むれ)だと早合点(はやがつてん)して、276雨蛙(あまがへる)胸元(むなもと)のやうに、277ペコペコとハートに(なみ)()たせてゐた(あま)(つよ)くない代物(しろもの)ですよ。278疑心暗鬼(ぎしんあんき)(しやう)ずとかや、279(たがひ)(こころ)(もつ)れから、280せいでもよい心配(しんぱい)をしたり、281させたり、282らつちもねえことで御座(ござ)んした』
283 (たび)(をとこ)(やうや)くにして(むね)()でおろし、
284『あゝそれで落着(おちつ)きました……オイお前達(まへたち)285モウ心配(しんぱい)するには(およ)ばぬ、286()(たしか)()て。287こんな(よわ)(こと)荒井峠(あらゐたうげ)()されると(おも)ふか。288仮令(たとへ)泥棒(どろばう)千匹(せんびき)万匹(まんびき)押寄(おしよ)(きた)るとも、289(この)鉄公(てつこう)鉄拳(てつけん)(ふる)つて、290泥棒(どろばう)(むれ)縦横無尽(じうわうむじん)飛込(とびこ)んだが最後(さいご)291さしも暴悪無道(ばうあくむだう)泥棒(どろばう)(むれ)(かぜ)()()()(ごと)(さき)(あらそ)ひ、292ムラムラパツと()()つたり。293()げる(やつ)には()はかけず、294()せくる(やつ)(かた)つぱしからブンなぐり、295素首(そつくび)ひきぬき、296(また)をさき()をむしり、297子供(こども)人形箱(にんぎやうばこ)のやうに(いた)してくれむは(あん)(うち)298ヤア面白(おもしろ)面白(おもしろ)し。299()()にし()荒井ケ岳(あらゐがだけ)勇将(ゆうしやう)と、300()万世(ばんせい)(とどろ)かす、301(たぐ)(まれ)なる豪傑(がうけつ)なり………と()(やう)なものだ。302マアマア()ツぱ(ども)303(いな)臆病者(おくびやうもの)(ども)304(この)鉄公(てつこう)さまに(したが)(きた)れ、305オツホーン』
306『アハヽヽヽ(また)久公(きうこう)二代目(にだいめ)出来(でき)ましたなア』
307久公(きうこう)副守護神(ふくしゆごじん)憑依(ひようい)したのですよ、308アハヽヽヽ』
309 (たび)(をとこ)五人(ごにん)男女(だんぢよ)()(まね)き、310法螺(ほら)()き、311空威張(からいば)りし(なが)ら、312ヤツパリどこかに薄気味(うすぎみ)(わる)いと()え、313(くだ)(ざか)になつたを(さいは)ひ、314()けつまろびつ、315立板(たていた)砂利(じやり)をブチまけたやうに、316バラバラと(いのち)カラガラ()げて()く。
317大正一一・九・一七 旧七・二六 松村真澄録)
   
オニド関連サイト最新更新情報
9/21【霊界物語ネット】藤沼庄平「大本検挙」を掲載(詳細はページ冒頭のインフォメーション参照)。