霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 邪神憑(じやしんかかり)〔一〇二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第2篇 青垣山内 よみ:あおがきやまうち
章:第12章 邪神憑 よみ:じゃしんかかり 通し章番号:1024
口述日:1922(大正11)年10月09日(旧08月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
喜楽は斎藤宇一を伴って、亀岡の伯母を訪問した。伯母は大の稲荷信者であり、天理教にもかぶれていた。いつも喜楽のことを甲斐性無しだとこきおろしていたのに、喜楽が祈祷で評判を取っているとなったら、打って変わって丁重に迎えて歓迎した。
しかし喜楽が神懸りのときに飯を食べないと聞くと、偽物だとののしり始めた。神懸りは人並みはずれて飯を食わないと本物とみなされない、という地方の迷信のためである。
宇一はそれを聞いて伯母の家を出て行ってしまった。喜楽も抜け出して、宇一に追いつく。そのまま、宇一の知り合いの別の稲利下げのところに調査に赴いた。
そうしたところ、小谷重吉という稲利下げは逆上して苦しんでいるという。重吉は世話役の馬吉や宇一を金縛りにして大声を上げて責め立て暴れていたが、喜楽が霊を送って霊縛した。
天の数歌で重吉を起こしたが、半分天狗に憑かれたまましゃべっている。問答している途中、裏口から飛び出し、どこかへ行ってしまった。後で聞けば、天狗が住んでいるという岩山に逃げ込んでいたという。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:149頁 八幡書店版:第7輯 86頁 修補版: 校定版:156頁 普及版:73頁 初版: ページ備考:
001 喜楽(きらく)矢田(やだ)(たき)修行(しうぎやう)()つた(ついで)002(あさ)(はや)くから亀岡(かめをか)伯母(をば)(うち)一寸(ちよつと)訪問(はうもん)してみた。003伯母(をば)(だい)稲荷(いなり)信者(しんじや)であり、004(また)(その)(ころ)一寸(ちよつと)天理教(てんりけう)にもかぶれてゐた。005喜楽(きらく)神懸(かむがか)りになつたといふことを()いて、006一度(いちど)(まゐ)つて()たく(おも)ふてゐた(さい)である。007斎藤(さいとう)宇一(ういち)(ともな)うて、008(その)()伯母(をば)(たづ)ねて()ると、009何時(いつ)も『喜楽坊(きらくばう)喜楽坊(きらくばう)』と()びずてにし、010『お(まへ)はチンコだ、011甲斐性(かひしやう)なしだ。012(うち)(せがれ)体格(たいかく)丈夫(ぢやうぶ)だし、013余程(よほど)(かしこ)い』などと、014クソカスにこきおろすのが(れい)であつた。015それに今度(こんど)()つて(かは)つて、016門口(もんぐち)這入(はい)るなり、017伯母(をば)()んで()て、
018伯母(をば)『モシモシ御台様(おだいさま)019()()(くだ)さいました、020どうぞ座敷(ざしき)御通(おとほ)(くだ)さいまして、021()ゆるりとなさいませ、022(なん)なつと御註文(ごちうもん)次第(しだい)御馳走(ごちそう)(こしら)へて()げます。023()げが(よろ)しいか、024小豆飯(あづきめし)をたきませうか、025瓢箪(へうたん)さまの御台(おだい)さまが御座(ござ)ると甘鯛(ぐじ)一塩(ひとしほ)()きだと()ふて、026(なま)なり()つて(くだ)さる、027種油(たねあぶら)()つて(くだ)さる、028(かみ)さまによると、029石油(せきゆ)でも五合(ごがふ)(くらゐ)おあがりになる、030あなたは(なに)がお()きで御座(ござ)いますか、031(なん)なりと御註文(ごちゆうもん)なさりませ、032(かみ)さまに()よう()(いただ)くほど気持(きもち)のよいことはありませぬ』
033とサツパリ稲荷下(いなりさ)げに(ひと)をして(しま)うてゐる。034喜楽(きらく)(くび)左右(さいう)()り、
035喜楽(きらく)伯母(をば)サン、036(わたし)(かみ)さまがうつつてもそんな(いや)しい(もの)()あがりにはなりませぬ、037富士(ふじ)(やま)天狗(てんぐ)さまが(うつ)つて御座(ござ)るのだから……』
038伯母(をば)天狗(てんぐ)さまなら(なほ)のこと、039()あがりなさらんならん、040いつも御台(おだい)さまに鞍馬山(くらまやま)魔王(まわう)さまがお(うつ)りになり、041(なん)でもかんでも()あがりになり(しま)ひにや瓢箪(へうたん)さままで御憑(おうつ)りになつて、042よい(こゑ)(うた)(をど)らはると、043(なん)とも()へぬ気持(きもち)のよいものだ、044さうすると、045御前(おまへ)(かみ)さまは()んだ(かみ)さまだな、046(もの)()はぬから……』
047 何時(いつ)(たぬき)()せ、048(きつね)()せをやつて()伯母(をば)は、049神懸(かむがか)りは(なん)でもかんでも()べるものと(おも)ふて()るらしい。050亀岡(かめをか)附近(ふきん)では何時(いつ)迷信家(めいしんか)()つて、051稲荷下(いなりさ)げの御台(おだい)さまを(まね)いて()寒施行(かんせげやう)といふことをする。052(その)(とき)御台(おだい)になる(をんな)神仏(しんぶつ)混淆(こんかう)御経(おきやう)をとなへ、053御幣(ごへい)()つて……おれはどこの稲荷(いなり)だ……とか、054魔王(まわう)だとか、055五郎助(ごろすけ)だとか、056太郎八(たろはち)だとか、057(たぬき)までがやつて()て、058一生懸命(いつしやうけんめい)一人(ひとり)(くち)()れて(しま)ふ。059小豆飯(あづきめし)三升(さんぜう)(くらゐ)一遍(いつぺん)にケロリと(たひら)げ、060油揚(あぶらげ)五十枚(ごじふまい)(くらゐ)()もなく()つて(しま)生節(なまぶし)十本(じつぽん)061蒲鉾(かまぼこ)二十枚(にじふまい)062種油(たねあぶら)一升(いつしよう)063醤油(しやうゆ)五合(ごがふ)御飯(ごはん)にお(さけ)(ほとん)想像(さうざう)もつかぬ(ほど)(たひら)げて(しま)ひ、064そしてよい(こゑ)()して、065身軽(みがる)()うたり(をど)つたりする。066いよいよ(かみ)よせが()むと、067(もと)肉体(にくたい)(かへ)る。068すると(その)稲荷下(いなりさ)げは大抵(たいてい)(をんな)(おほ)いが、
069『あゝ大変(たいへん)(はら)がへりました。070御膳(ごぜん)をよばれませうか』
071自分(じぶん)から催促(さいそく)して、072一人前(いちにんまへ)以上(いじやう)()つて(しま)ふ。073かういふ神憑(かむがか)りでないと亀岡(かめをか)地方(ちはう)では()てはやされぬのである。074伯母(をば)はこの(でん)をいつも()()るから、075自分(じぶん)(かか)(かみ)さまは(なに)()はないと()つたら、
076伯母(をば)『ソラお(まへ)神経(しんけい)だ。077ヤツパリ(かみ)さまぢやない』
078などと()つて、079(また)態度(たいど)一変(いつぺん)し、
080伯母(をば)『コレ喜三(きさ)081よい加減(かげん)()をさまして、082(はや)(かへ)つて(もと)乳屋(ちちや)をしたり、083百姓(ひやくせう)をしなさい。084(まへ)がさうヒヨロヒヨロしてるとお(よね)がどん(だけ)心配(しんぱい)するか()れぬ。085(わし)がこれから旅籠町(はたごちやう)天理王(てんりわう)さまへ()れて()つて御祈祷(ごきたう)して(もら)つて()げよか』
086親切(しんせつ)(さう)()うてくれる。087宇一(ういち)はポカンとして二人(ふたり)問答(もんだう)()いてゐたが(なん)(おも)つたか、088(だま)つてポイと此家(ここ)()(しま)つた。089喜楽(きらく)宇一(ういち)()たのを(さいは)ひ、090伯母(をば)(うち)(うま)()()し、091穴太(あなを)(かへ)途中(とちう)092荒塚村(あらつかむら)(まへ)宇一(ういち)()ひつき、093それから(その)(あし)寺村(てらむら)重吉(ぢうきち)といふ稲荷下(いなりさ)げの(ところ)調(しら)べがてら()くこととなつた。
094 (やうや)くにして寺村(てらむら)小谷(こたに)重吉(ぢうきち)(うち)()いた。095並河(なみかは)馬吉(うまきち)といふ(をとこ)世話係(せわがかり)元締(もとじめ)をして()る。096宇一(ういち)馬公(うまこう)懇意(こんい)(なか)であつた。097それは親類(しんるゐ)関係(くわんけい)からである。098馬吉(うまきち)宇一(ういち)姿(すがた)()るなり、
099馬吉(うまきち)『ヤア宇一(ういち)サンか、100()()(くだ)さつた。101(いま)穴太(あなを)相談(さうだん)()かうと(おも)うて()つた(ところ)だ。102昨夜(ゆうべ)から神憑(かむがか)りが(はげ)しうて、103どうにも()うにも仕様(しやう)がない、104穴太(あなを)先生(せんせい)にしづめて(もら)はうかと(おも)つてゐた(ところ)だ。105どうやろなア、106()(くだ)さるだらうか』
107(たづ)ねて()る。108宇一(ういち)は、
109宇一(ういち)(この)(ひと)喜楽(きらく)サンだ、110(たの)んでみたがよからう』
111馬吉(うまきち)『それは(ねが)うてもないこと、112イヤ失礼(しつれい)しました。113あなたが喜楽(きらく)サンで御座(ござ)いましたか、114何分(なにぶん)(よろ)しう御願申(おねがひまを)します、115サア何卒(どうぞ)(おく)御通(おとほ)(くだ)さい』
116 瓦葺(かはらぶき)田舎(いなか)では()なり(おほ)きな(いへ)であつた。117馬吉(うまきち)案内(あんない)につれて二人(ふたり)(おく)(とほ)ると、118(つぎ)()(なん)とも()れぬ(めう)(うな)(ごゑ)(きこ)えてゐる。119馬吉(うまきち)一寸(ちよつと)(その)(こゑ)する(はう)()し、
120馬吉(うまきち)『モシ喜楽(きらく)先生(せんせい)(さま)121あの(とほ)二三日前(にさんにちまへ)から(うな)(とほ)しで御座(ござ)います。122今迄(いままで)二三十人(にさんじふにん)病人(びやうにん)(たす)けましたので、123(みな)(もの)がエライ(かみ)さまだと()うて信心(しんじん)してゐましたが一寸(ちよつと)調子(てうし)()つたと()えて、124逆上(ぎやくじやう)したのか、125取止(とりと)めのない(わけ)(わか)らぬことを、126あの(とほ)りベラベラ(さへづ)つて()ります。127どうかして(なほ)(はふ)御座(ござ)いますまいかな』
128心配(しんぱい)らしく(たづ)ねてゐる。129喜楽(きらく)(うつむ)いて()をくみ思案(しあん)にくれてゐる。
130宇一(ういち)二三日前(にさんにちまへ)からうなり()したか、131ソラ大方(おほかた)大天狗(だいてんぐ)(くち)()れかも()れんぞ、132ズイ(ぶん)(おれ)ンとこで三週間(さんしうかん)修行(しうぎやう)した(とき)にも、133(いへ)がゴーゴー()る、134ゆすれる、135ソレはソレは大変(たいへん)なことがあつた。136(うち)(おやぢ)(おこ)つて、137喜楽(きらく)サンに修行場(しうぎやうば)をどつかへ()つて()てくれと呶鳴(どな)つた(くらゐ)大騒動(おほさうどう)だつた。138(その)(とき)(おれ)もズイ(ぶん)(きも)(つぶ)したが、139モウ神憑(かむがか)りに経験(けいけん)がついたので、140あの(くらゐ)(うな)(ごゑ)(なん)でもないワ。141喜楽(きらく)サンでなくても(おれ)(ひと)這入(はい)つてしづめて()てやらうか、142ナア喜楽(きらく)サン、143如何(どう)せうかな』
144喜楽(きらく)『マアやつて()い、145万一(まんいち)()けなかつたら、146(おれ)()るとせう』
147宇一(ういち)『ヨシ()た、148喜楽(きらく)サン、149ここに()つてゐてくれ……オイ(うま)サン、150(まへ)一所(いつしよ)()てくれ、151おれが(ひと)審神者(さには)をして天狗(てんぐ)(くち)をきるか、152もし悪神(わるがみ)であつたら霊縛(れいばく)をかけてやらう』
153確信(かくしん)あるものの(ごと)意気(いき)揚々(やうやう)として、154一寸(ちよつと)した廊下(らうか)をわたり、155二間建(ふたまだて)(はな)座敷(ざしき)の、156(うな)(ごゑ)のする(はう)()して(すす)んで()く。
157 (しばら)くすると大変(たいへん)甲声(かんごゑ)(ふと)いやつが(きこ)えて()た……ハテな野天狗(のてんぐ)(あら)はれて(くち)()つてるのだなア……と(おも)(なが)ら、158自分(じぶん)(ちや)()み、159二人(ふたり)(かへ)つて()るのを()つてゐたが、160何時(いつ)までたつても(かへ)つて()ない。161『ウンウン』と(うな)(こゑ)段々(だんだん)(はげ)しくなる。162(この)(いへ)(もの)はビツクリして、163(おな)(むら)親類(しんるゐ)(みんな)()げて()つて不在(ふざい)である。
164 ()(くれ)間近(まぢか)く、165座敷(ざしき)(すみ)はソロソロうす(ぐら)くなつて()た。166(ほそ)廊下(らうか)(わた)つて(こゑ)のする居間(ゐま)()つて()ると、167二人(ふたり)(とも)あべこべに霊縛(れいばく)にかかり、168ふンのびて(しま)ひ、169(その)(うへ)小谷(こたに)重吉(ぢうきち)神憑(かむがか)りになつたまま()(まる)(ひか)らせ、170妙見(めうけん)サンが波切丸(なみきりまる)宝剣(ほうけん)()()げたやうな恰好(かつかう)で、171力瘤(ちからこぶ)だらけの(うで)を、172赤裸(まつぱだか)になつて、173頭上(づじやう)片仮名(かたかな)のフの()(がた)にし、174(ひだり)()(にぎ)つて馬吉(うまきち)(あたま)をグイグイ(おさ)へつけ(なが)ら、
175重吉(ぢうきち)『コリヤ悪人(あくにん)(ども)176改心(かいしん)(いた)すかどうぢや、177きさまは(おれ)(ところ)女房(にようばう)何々(なになに)して()るだらう。178白状(はくじやう)せい、179コリヤ宇一(ういち)180貴様(きさま)(あま)(しやう)がよくないぞ、181鞍馬山(くらまやま)大僧正(だいそうぜう)(その)悪事(あくじ)をスツクリ調(しら)()げて制敗(せいばい)をしてやるのだ、182サア如何(どう)ぢや』
183()つては(あたま)をコツンとなぐる。184二人(ふたり)強直(きやうちよく)状態(じやうたい)となり、185(くび)(ばか)りふつて(こゑ)をも()()さず(くるし)んでゐた。186小谷(こたに)重吉(ぢうきち)神憑(かむがか)りは喜楽(きらく)姿(すがた)()るより、187二人(ふたり)(うへ)からツツと()りて叮嚀(ていねい)にキチンとすわり、
188重吉(ぢうきち)『これはこれは大先生(だいせんせい)さま、189()()(くだ)さいました。190(わたし)一体(いつたい)神憑(かむがか)りですやろか、191(ただし)()(ちが)うて()るのですやろか、192自分(じぶん)がてに合点(がてん)()きませぬ。193どうぞ(ひと)(しら)べて(くだ)さいな、194オホヽヽヽ』
195(いや)らしう(わら)ふ。196如何(どう)しても普通(ふつう)とは()えぬ。197そこで『ウーム!』と(ひと)鎮魂(ちんこん)をやつて()ると、198重吉(ぢうきち)(なん)感応(かんのう)もなく依然(いぜん)として(すわ)つて()る。199(れい)二人(ふたり)にかかつたと()え、200(にはか)二人(ふたり)強直(きやうちよく)状態(じやうたい)から(まぬ)がれ、201ムクムクと立上(たちあ)がり、202重吉(ぢうきち)左右(さいう)責寄(せめよ)つて、203宇一(ういち)(ひだり)()を、204馬吉(うまきち)(みぎ)()をグツと(うしろ)へまはし、205手早(てばや)手拭(てぬぐひ)(くく)らうとする。
206喜楽(きらく)『オイそんな乱暴(らんばう)なことしちや()かぬ、207()()て、208コリヤ神憑(かむがかり)だから、209本人(ほんにん)(わる)いのぢやない、210そして(おれ)がここへ()以上(いじやう)は、211キツとあばれささぬから、212(その)()(はな)してやれ』
213馬吉(うまきち)今日(けふ)(まで)こんな(こと)はなかつたのです、214(ただ)(おほ)きい(こゑ)(こわ)(つら)して()なる一方(いつぱう)でしたが、215(いま)(さき)から様子(やうす)がガラツと(かは)り、216(わたし)(この)(をとこ)女房(にようばう)何々(なになに)したとか()つて、217(おぼ)えもないことをぬかし(あたま)をコツきよるのです。218こんな神憑(かむがかり)があつてたまるものか、219常平常(つねへいぜい)から此奴(こいつ)悋気(りんき)(ぶか)(やつ)だから、220(わたくし)此処(ここ)(あそ)びに()るのを、221(なに)(めう)目的(もくてき)があつて()()るのだと(おも)うて()つたに(ちが)ひない。222それが(ひと)つになつて()(くる)ひ、223(なさけ)ないことをぬかすのだらうから、224(ひと)(あたま)から()()し、225(みづ)でもかけてやらねば(なほ)りますまいで、226なア宇一(ういち)(くん)227(まへ)如何(どう)(おも)ふか』
228宇一(ういち)(おれ)(まつた)くの気違(きちがひ)とは()(おも)はぬワ、229ドエライ野天狗(のてんぐ)()きやがつて重吉(ぢうきち)肉体(にくたい)精神(せいしん)とゴツチヤ()ぜになつて、230こんな(こと)(ぬか)すのだと(おも)ふ。231(ひと)喜楽(きらく)サンに鎮魂(ちんこん)して(もら)うたら(わか)るだらう、232(おれ)もこんな審神者(さには)をしたことは今日(けふ)(はじ)めてだ、233こんな(やつ)相手(あひて)になつて()らうものならそれこそ(いのち)がけだ、234最前(さいぜん)(おれ)喉笛(のどぶえ)(くら)ひつかうとしたので、235横面(よこづら)をはり(たふ)してやつたら、236(にはか)(くち)()()しあんな(こと)(ぬか)すんだよ』
237 重吉(ぢうきち)(また)もや()(あが)り、238両腕(りやううで)をプリンプリン()(なが)ら、
239重吉(ぢうきち)(この)(はう)鞍馬山(くらまやま)魔王(まわう)大僧正(だいそうぜう)だ、240これから鞍馬山(くらまやま)(てん)(くも)()つて、241()つて()る、242(その)(はう)はそれ(まで)ここに()つて()れ、243今度(こんど)おれが(かへ)つたら、244大変(たいへん)神力(しんりき)()けて(かへ)り、245どいつも此奴(こいつ)もゴテゴテ()かす(やつ)(かた)(ぱし)からふン()ばし、246(また)から(ひき)さき(いまし)めてやる(ほど)に、247ウツフーン』
248()(なが)ら、249ドシンドシンと一足(ひとあし)々々(ひとあし)(あし)(ちから)()(そと)()ようとする。250喜楽(きらく)両手(りやうて)()んで、251『ウーン』と一声(ひとこゑ)(れい)(おく)つた。252重吉(ぢうきち)(その)()(だい)()になつて(たふ)れて(しま)うた。
253馬吉(うまきち)『コレ喜楽(きらく)サン、254そんな無茶(むちや)なことして如何(どう)なりますか、255()(あし)(つめ)たうなつたぢやありませぬか、256()(あと)(もど)らぬやうなことがあつたら吾々(われわれ)大変(たいへん)ですがな、257どうして(くだ)さる』
258気色(けしき)をかへて、259鼻息(はないき)をはずませ、260(うで)をニユツとつき()して(せま)つて()る。
261喜楽(きらく)『ナアニ心配(しんぱい)いりませぬよ。262(いま)(もど)してやりますよ』
263()(なが)ら、264二拍手(にはくしゆ)して(あま)数歌(かずうた)二回(にくわい)まで(とな)()げた。265重吉(ぢうきち)は、
266『アハヽヽヽ』
267(わら)(なが)ら、268身体(しんたい)(もと)(ごと)(やはらか)くなつて(おき)あがり、
269重吉(ぢうきち)『アー喜楽(きらく)サン、270ホンに(えら)御神力(ごしんりき)ぢや、271モウ(これ)ならお(まへ)さまも大丈夫(だいぢやうぶ)だ、272サア法貴谷(ほふきだに)修行(しうぎやう)()きませう、273喜楽(きらく)サン()いて()(くだ)さい、274(まへ)さまに真言(しんごん)秘密(ひみつ)(はふ)(をし)へて()げるから、275(この)魔王(まわう)大僧正(だいそうぜう)直接(ちよくせつ)に、276神変不可思議(しんぺんふかしぎ)魔術(まじゆつ)(さづ)けますぞや。277アーン』
278喜楽(きらく)『おかげで(わたし)はいろいろの神術(かむわざ)高熊山(たかくまやま)(おそ)はりましたから、279モウ結構(けつこう)御座(ござ)います、280どうぞ結構(けつこう)(はふ)があるのならば、281(うま)サンや、282宇一(ういち)サンに(さづ)けて()げて(くだ)さい』
283とからかひ気分(きぶん)()ふ。284重吉(ぢうきち)(かた)(いか)らし(なが)ら、285(ことば)芝居(しばゐ)口調(くてう)になつて、
286重吉(ぢうきち)『コレなる両人(りやうにん)は、287(うま)れつきの精神(せいしん)(わる)いに()つて、288(かみ)()せしめの(ため)289ふン()ばしてやつたのだ。290かやうな(もの)魔訶不思議(まかふしぎ)(はふ)(さづ)けやうものなら、291どんなことを(いた)すか(わか)りませぬワイ、292ウツフヽヽヽ』
293()ちはだかつて、294得意面(とくいづら)をさらしてゐる。295半分(はんぶん)肉体(にくたい)296半分(はんぶん)野天狗(のてんぐ)神憑(かむがかり)といふ状態(じやうたい)であつた。297馬吉(うまきち)握拳(にぎりこぶし)をかためて重吉(ぢうきち)横面(よこづら)をピシヤピシヤとなぐりつけ、
298馬吉(うまきち)『コリヤ小谷(こたに)重吉(ぢうきち)299きさまは偽気違(にせきちがひ)偽神(にせかむ)がかりだ、300常平常(つねへいぜい)から(おれ)誤解(ごかい)してゐやがるからそんな(こと)をぬかしやがるんだ。301(おれ)貴様(きさま)()ふやうな悪人(あくにん)ぢやないぞ、302どうぢや貴様(きさま)去年(きよねん)303○○の(かか)を○○した(とき)に、304()いて(おれ)仲裁(ちうさい)(たの)みに()よつたぢやないか、305(その)御恩(ごおん)(わす)れたのか馬鹿野郎(ばかやろう)()!』
306(つら)ふくらして真向(まむき)になつて(おこ)つてゐる。
307宇一(ういち)『オイ馬公(うまこう)308こんな半気違(はんきちがひ)をつかまへて(おこ)つたつて仕方(しかた)がないぢやないか』
309馬吉(うまきち)『おれも親類(しんるゐ)なり、310友達(ともだち)だと(おも)うて、311家内(かない)でさへも()()らぬ重公(ぢうこう)世話(せわ)をしてやつて()るのに、312喜楽(きらく)サンの(まへ)で、313()りもせぬことを(ぬか)しやがると、314業腹(がふはら)がにえてたまらぬのだ』
315 重公(ぢうこう)(その)()(しり)をまくり、
316重吉(ぢうきち)『コラ馬公(うまこう)317けつでもくらへ!』
318()(なが)ら、319真黒(まつくろ)けの(しり)()し、320(ふた)()(たた)いて裏口(うらぐち)から、321どこともなし飛出(とびだ)して(しま)うた。322()はズツポリとくれて、323何処(どこ)()つたか、324チツとも見分(みわ)けがつかなくなつて(しま)うた。325(あと)にて()けば法貴谷(ほうきだに)石凝(いしこり)とか()天狗(てんぐ)()んでゐる岩山(いはやま)()()んでゐることが四五日(しごにち)してから(わか)つたのである。
326 喜楽(きらく)(ただ)一人(ひとり)穴太(あなを)自宅(じたく)(かへ)り、327日夜(にちや)参詣者(さんけいしや)(たい)して鎮魂(ちんこん)(ほどこ)神占(しんせん)取次(とりつ)いでゐた。
328大正一一・一〇・九 旧八・一九 松村真澄録)