霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一〇章 衝突(しやうとつ)〔一〇九四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻 篇:第3篇 霊魂の遊行 よみ:れいこんのゆうこう
章:第10章 第40巻 よみ:しょうとつ 通し章番号:1094
口述日:1922(大正11)年11月02日(旧09月14日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
黄金姫と清照姫に同行していたレーブは、ハルナの都まで母娘の共をすることを懇願したが、黄金姫は宣伝使として共を連れて行くことは許されない、とレーブを諭した。
そうするうちに、バラモン教のランチ将軍の一軍が近づいてきた。彼らが斎苑館を攻撃するために進んでくると悟ったレーブは、自分が進軍を止めてみせると勇み立った。
黄金姫は、天則にしたがってあくまで言向け和すようにとレーブを諭した。軍勢の先頭に立ちはだかったレーブは、大音声で神素盞嗚大神の館への進軍を止めるようにと呼ばわった。
ランチ将軍の部下・カルは、レーブがバラモン教でありながら三五教の味方をしていることをとがめた。レーブは細く険しい山道にたちはだかり、岩つぶてを傍らに積み重ね、バラモン軍に狙いを定めている。
それでも進軍してくるバラモン軍に対し、レーブは岩つぶてを投げつけ、カルの首筋をつかんで谷底へ放り投げた。レーブは先頭の十人ばかりを相手に奮闘し、皆谷底へ放り投げたが、ついにバラモン軍によって自分も谷底に投げられてしまった。
黄金姫と清照姫はレーブが谷底に投げられてしまったのを見て、もはや天則違反もやむなしと打って出て、軍勢を相手に暴れまわった。矢を射かけるバラモン軍によって二人は谷底に転落した。武術の心得ある二人は柔らかい砂の上に無事に着地し、追ってくるバラモン軍を待ち受けていた。
バラモン軍は谷底へ降りてきて二人を取り囲み、矢を射掛けだした。その勢いに二人は最期を覚悟したが、どこからともなく狼の群れが現れて、ランチ将軍の軍勢に襲い掛かった。
ランチ将軍の軍勢は敗走し、斎苑館への近道である玉山峠を通ることをあきらめたようであった。黄金姫、清照姫の母娘は狼に送られて玉山峠を降り、無人の野を行くごとく進んで行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4010
愛善世界社版:121頁 八幡書店版:第7輯 462頁 修補版: 校定版:127頁 普及版:56頁 初版: ページ備考:
001レーブ『初秋(しよしう)(かぜ)はザワザワと
002(みね)尾上(をのへ)()きまくる
003玉山峠(たまやまたうげ)坂道(さかみち)
004黄金姫(わうごんひめ)(はじ)めとし
005清照姫(きよてるひめ)母娘連(おやこづ)
006神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)
007御言(みこと)(かしこ)(つき)(くに)
008ハルナの(みやこ)(わだか)まる
009八岐(やまた)大蛇(をろち)()かれたる
010大黒主(おほくろぬし)枉神(まがかみ)
011言向和(ことむけやは)天地(あめつち)
012(たふと)(かみ)御光(みひかり)
013(すく)はむものと両人(りやうにん)
014(けは)しき山川(やまかは)打渡(うちわた)
015(あめ)にはそぼち荒風(あらかぜ)
016()かれながらもやうやうに
017此処迄(ここまで)(すす)(きた)りけり
018(けは)しき(さか)(かたはら)
019スツクと()てる千引岩(ちびきいは)
020これ(さいは)ひと立寄(たちよ)つて
021母娘(おやこ)二人(ふたり)(こし)をかけ
022(いき)(やす)むる(をり)もあれ
023()()(ごと)峻坂(しゆんぱん)
024地響(ぢひび)きさせつトントンと
025(くだ)(きた)れる(をとこ)あり
026よくよくすかし(なが)むれば
027玉山峠(たまやまたうげ)(のぼ)(ぐち)
028(おも)はず出会(であ)うた神司(かむづかさ)
029レーブの姿(すがた)()るよりも
030母娘(おやこ)(こゑ)をはり()げて
031手招(てまね)きすれば立止(たちど)まり
032()(すご)したる坂道(さかみち)
033(ふたた)(のぼ)りて両人(りやうにん)
034(そば)近寄(ちかよ)りシトシトと
035(なが)るる(あせ)押拭(おしぬぐ)
036貴方(あなた)母娘(おやこ)神司(かむづかさ)
037(わたし)はレーブで(ござ)ります
038(たふと)(かみ)引合(ひきあ)はせ
039(おも)はぬ(とこ)()ひました
040貴方(あなた)(わか)れた(その)(とき)
041(むご)いお(かた)(こころ)にて
042きつく(うら)んで()りました
043一人(ひとり)(をとこ)森林(しんりん)
044姿(すがた)(かく)行衛(ゆくゑ)をば
045(たづ)ぬる(をり)しも(かは)(わた)
046(むか)ふへ()えた釘彦(くぎひこ)
047手下(てした)武士(つはもの)二騎(にき)三騎(さんき)
048(ふたた)(かは)打渡(うちわた)
049レーブの(まへ)(あら)はれて
050(いま)()母娘(おやこ)巡礼(じゆんれい)
051蜈蚣(むかで)(ひめ)小糸姫(こいとひめ)
052テツキリそれに(ちが)ひない
053(あと)()つかけて引捕(ひつとら)
054大黒主(おほくろぬし)御前(おんまへ)
055引連(ひきつ)()かむと呶鳴(どな)(ゆゑ)
056ハツと当惑(たうわく)しながらも
057早速(さそく)頓智(とんち)(この)レーブ
058そしらぬ(かほ)(とぼ)(づら)
059(うま)(くつわ)引掴(ひつつか)
060こりやこりや()つた、こりや()つた
061鬼熊別(おにくまわけ)(つか)へたる
062(わし)はレーブの(つかさ)ぞや
063(われ)汝等(なれら)同様(どうやう)
064母娘(おやこ)二人(ふたり)巡礼(じゆんれい)
065蜈蚣(むかで)(ひめ)母娘(おやこ)ぞと
066(うたが)ひながら近寄(ちかよ)つて
067よくよく(かほ)調(しら)ぶれば
068()ても()つかぬ(ゆき)(すみ)
069片目(かため)()さまの皺苦茶(しわくちや)
070痘痕(あばた)をあしらふ御面相(ごめんさう)
071(むすめ)如何(いか)にと(なが)むれば
072これ(また)(えら)いドテ南瓜(かぼちや)
073下賤(げせん)姿(すがた)母娘(おやこ)づれ
074(けつ)して(たづ)ぬる(ひと)でない
075くだらぬことに(ほね)()
076貴重(きちよう)光陰(くわういん)(つぶ)すより
077一時(いちじ)(はや)くカルマタの
078(みやこ)(すす)抜群(ばつぐん)
079功名(こうみやう)手柄(てがら)をしたがよい
080(なん)ぢやかんぢやと(くち)(きは)
081(ののし)()らせば釘彦(くぎひこ)
082手下(てした)騎士(きし)首肯(うなづ)いて
083(ふたた)(かは)打渡(うちわた)
084(かへ)()くこそ(うれ)しけれ
085つらつら(おも)(まは)らせば
086貴女(あなた)(わたし)()てたのは
087(ふか)仕組(しぐみ)のありしこと
088前知(ぜんち)(めい)なき(この)レーブ
089今更(いまさら)(ごと)感嘆(かんたん)
090勢込(いきほひこ)んでスタスタと
091(あと)(した)玉山(たまやま)
092(たうげ)()えて(あと)()
093此処(ここ)目出度(めでた)面会(めんくわい)
094これほど(うれ)しい(こと)はない
095あゝ(ねが)はくば両人(りやうにん)
096レーブの(つかさ)(つき)(くに)
097ハルナの(みやこ)(ともな)ひて
098鬼熊別(おにくまわけ)(やかた)まで
099(すす)ませ(たま)惟神(かむながら)
100(かみ)(ちか)ひて()ぎまつる
101途中(とちう)如何(いか)なる枉神(まがかみ)
102(あら)はれ(きた)りて()やるとも
103(かみ)(まか)せし(この)レーブ
104(いのち)(まと)()()して
105無事(ぶじ)貴女(あなた)目的(もくてき)
106達成(たつせい)せしめにやおきませぬ
107何卒(なにとぞ)(とも)(ゆる)されよ
108あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
109(かみ)御前(みまへ)()ぎまつる』
110(うた)()へて所感(しよかん)()べ、111ハルナの(みやこ)まで随行(ずゐかう)(ゆる)されむ(こと)懇願(こんぐわん)した。112黄金姫(わうごんひめ)言葉(ことば)(おごそ)かに、
113折角(せつかく)其方(そなた)親切(しんせつ)(ねがひ)なれど吾々(われわれ)母娘(おやこ)()出別(でわけ)神様(かみさま)特命(とくめい)()け、114もとより(とも)(ゆる)されなかつたのだから、115(いま)になつて何程(なにほど)(まへ)(たの)んでも()れて()(こと)出来(でき)ない、116さうだと()つて貴方(あなた)排斥(はいせき)するのではない(ほど)に、117何卒(どうぞ)(わる)くとらぬ(やう)にしてお()れ』
118レーブ『さう(あふ)せらるれば、119たつてお(たの)(まを)すわけには(まゐ)りませぬ。120それなら(わたし)是非(ぜひ)御座(ござ)いませぬから単独(たんどく)行動(かうどう)をとり、121貴女方(あなたがた)母娘(おやこ)前後(あとさき)(まも)つて(まゐ)りませう』
122清照(きよてる)何卒(どうぞ)吾々(われわれ)母娘(おやこ)()()えない範囲内(はんゐない)()つて(くだ)さいや。123もしもお(とも)をつれて()つたと()はれては吾々(われわれ)母娘(おやこ)申訳(まをしわけ)()ちませぬからな』
124レーブ『左様(さやう)なれば、125たつて無理(むり)にはお(ねがひ)(まを)しませぬ。126(わたし)(これ)より不離不即(ふりふそく)態度(たいど)(たも)ち、127()(かく)もハルナの(みやこ)(まゐ)ります、128どうぞハルナの(みやこ)へおいでになつたら(わたし)一度(いちど)御引見(ごいんけん)(くだ)さる(やう)御願(おねがひ)(いた)しておきます。129(わたし)貴女(あなた)(さま)二人(ふたり)所在(ありか)(たづ)ぬべく御主人様(ごしゆじんさま)命令(めいれい)()けたもので(ござ)いますから、130貴方(あなた)(たち)所在(ありか)さへ(わか)れば、131それで()いので(ござ)います。132それなら(これ)から()(がく)れにお(とも)をしますから、133こればかりはお(ふく)みを(ねが)ひます』
134黄金(こがね)『あゝ仕方(しかた)がない。135(まへ)勝手(かつて)にしたが()からう』
136レーブ『はい、137有難(ありがた)う』
138落涙(らくるい)(むせ)んでゐる。139(この)(とき)谷底(たにそこ)より(きこ)()法螺貝(ほらがひ)140陣太鼓(ぢんだいこ)141(かね)(おと)142矢叫(やさけ)びの(こゑ)143木谺(こだま)(おどろ)かして(ひび)()る。
144素破(すは)こそ一大事(いちだいじ)145バラモン(けう)大黒主(おほくろぬし)部下(ぶか)(もの)ならむ。146(かれ)(つか)まつては大変(たいへん)
147母娘(おやこ)(いは)(うしろ)()(かく)し、148一隊(いつたい)通過(つうくわ)()たむとした。149レーブは(いさ)()ち、
150『やあ、151(いよいよ)忠義(ちうぎ)(あら)はし(どき)152もしもし御両人様(ごりやうにんさま)153貴女(あなた)(この)岩影(いはかげ)()(しの)びお()(くだ)さいませ。154(この)軍隊(ぐんたい)をイソの(やかた)(すす)ませてはなりませぬ。155これより(わたし)力限(ちからかぎ)(たたか)つて(てき)退却(たいきやく)させて()ませう』
156黄金(こがね)(けつ)して(てき)(きず)つけてはなりませぬよ。157善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)(もつ)てお(ふせ)ぎなさい。158(この)細谷道(ほそたにみち)159(しか)急坂(きふはん)160何程(なにほど)数多(あまた)(てき)()(のぼ)(きた)るとも、161一度(いちど)にドツとかかる(こと)出来(でき)まい。162片端(かたつぱし)から言向和(ことむけやは)すが神慮(しんりよ)(かな)うたやり(かた)163()其方(そなた)第一戦(だいいつせん)(こころ)みたが()からう。164とても(かな)はぬと()てとつた(とき)(この)黄金姫(わうごんひめ)()(かは)つて言霊戦(ことたません)(ひら)いて()ようから』
165レーブ『承知(しようち)(いた)しました。166一卒(いつそつ)これに()れば万卒(ばんそつ)(すす)むべからずと()(この)難所(なんしよ)167(わたし)一人(ひとり)大丈夫(だいぢやうぶ)です』
168武者振(むしやぶる)ひして(いさ)()つた。
169 かかる(ところ)へブウブウと先登(せんとう)()つた武士(つはもの)法螺貝(ほらがひ)()陣容(ぢんよう)(ととの)(のぼ)()る。170旗指物(はたさしもの)171幾十(いくじふ)となく(かぜ)(ひるがへ)単縦陣(たんじうじん)(つく)りて(すす)(その)光景(くわうけい)172(あだか)絵巻物(ゑまきもの)()(ごと)くであつた。173レーブは千引(ちびき)(いは)(うへ)直立(ちよくりつ)し、174(この)光景(くわうけい)(なが)敵軍(てきぐん)(ちか)づくのを(いま)(おそ)しと()つてゐる。
175 先頭(せんとう)()つた武士(つはもの)急坂(きふはん)(のぼ)りつつ(いさ)ましく軍歌(ぐんか)(うた)つてゐる。
176東西南(とうざいなん)三方(さんぱう)
177青海ケ原(あをみがはら)(めぐ)らせる
178世界(せかい)(いち)(つき)(くに)
179(かみ)御稜威(みいづ)(あきら)かに
180()(かがや)きしバラモンの
181(をしへ)(はしら)(かしこ)くも
182大黒主(おほくろぬし)()れましぬ
183(この)(たび)イソの神館(かむやかた)
184神素盞嗚(かむすさのを)枉神(まがかみ)
185手下(てした)(もの)(ども)(あつ)まりて
186(あさ)(ゆふ)なに()()りつ
187一挙(いつきよ)(つき)()()せて
188バラモン(けう)本城(ほんじやう)
189(くつが)へさむと(たく)()
190(その)曲業(まがわざ)前知(ぜんち)して
191吾等(われら)(ほう)ずる神柱(かむばしら)
192大黒主(おほくろぬし)(かしこ)くも
193鬼春別(おにはるわけ)(しやう)となし
194ランチ将軍(しやうぐん)片彦(かたひこ)
195大武士(おほつはもの)()(たま)
196悪魔(あくま)征途(せいと)(のぼ)ります
197(その)神業(しんげふ)(つか)()
198吾等(われら)()こそ(たの)しけれ
199朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
200(つき)()つとも()くるとも
201仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
202三五教(あななひけう)本城(ほんじやう)
203(くつが)へさずにおくべきか
204常世(とこよ)(くに)自在天(じざいてん)
205大国彦(おほくにひこ)御守(おんまも)
206(いよいよ)(ふか)くましませば
207如何(いか)なる(まが)(たけ)ぶとも
208鬼神(きしん)(ひし)(ゆう)あるも
209などか(おそ)れむバラモンの
210(をしへ)(きた)へし(この)(からだ)
211刃向(はむか)(てき)はあらざらめ
212(すす)めよ(すす)め いざ(すす)
213神素盞嗚(かむすさのを)曲神(まがかみ)
214手下(てした)(のこ)らず(ほろ)ぶまで
215枉津(まがつ)(ぐん)()するまで』
216(うた)ひながら旗鼓(きこ)堂々(だうだう)(すす)(きた)物々(ものもの)しさ。
217 ランチ将軍(しやうぐん)部下(ぶか)(はや)くもレーブの()てる(いは)(ふもと)まで(すす)んで()た。218レーブは大音声(だいおんぜう)()()げながら、
219『ヤアヤア、220(われ)こそはバラモン(けう)神司(かむづかさ)221鬼熊別(おにくまわけ)身内(みうち)(もの)222只今(ただいま)大自在天(だいじざいてん)のお()げにより汝等(なんぢら)一行(いつかう)此処(ここ)(きた)(こと)前知(ぜんち)し、223(いま)(おそ)しと()(かま)()たり。224(なんぢ)(また)バラモンの部下(ぶか)相違(さうゐ)はない。225()はば味方(みかた)同士(どうし)だ。226案内(あんない)するは本意(ほんい)なれども、227汝等(なんぢら)(いま)軍歌(ぐんか)によつて()けば仁慈(じんじ)無限(むげん)神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)(やかた)押寄(おしよ)するものと(きこ)えたり。228かう()(うへ)(すこ)しも猶予(いうよ)はならぬ。229片端(かたつぱし)から神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)言霊(ことたま)発射(はつしや)して一人(ひとり)(のこ)らず言向和(ことむけやは)()れむ。230(しばら)()て』
231()ばはつた。232先頭(せんとう)()つた武士(つはもの)はカルと()一寸(ちよつと)()()いた小頭(こがしら)である。233カルはレーブの(この)(こゑ)()くより()(とど)まり、
234『ハテ、235心得(こころえ)(なんぢ)言葉(ことば)236(なんぢ)バラモン(けう)神司(かむづかさ)でありながら、237(なに)血迷(ちまよ)うて左様(さやう)(こと)(まを)すか。238大方(おほかた)発狂(はつきやう)(いた)したのであらう。239そこ退()け、240邪魔(じやま)になるわい』
241(すす)まむとするをレーブは(はや)くも(とが)つた(いし)何時(いつ)()にか(いは)(うへ)幾十(いくじふ)となく()(かさ)ね、242一歩(いつぽ)たりとも前進(ぜんしん)せば、243(この)(いは)(もつ)脳天(なうてん)より打挫(うちくじ)かむと右手(めて)(いは)をささげて()めつけてゐる。244カルは()(いか)らし、
245『こりや、246こりやレーブ、247左様(さやう)(いし)(ささ)げて如何(どう)(いた)心算(つもり)だ。248チツと危険(きけん)ではないか』
249レーブ『ハヽヽヽチツとも、250やつとも危険(きけん)だ。251何程(なにほど)(なんぢ)味方(みかた)沢山(たくさん)押寄(おしよ)(きた)るとも(この)一条(いちでう)難路(なんろ)252一人(ひとり)(のこ)らず討滅(うちほろぼ)すに(なん)手間暇(てまひま)()るものか。253一時(いちじ)(はや)くここを()(かへ)せよ』
254 カルはレーブの(かほ)()めつけ、255(たがひ)無言(むごん)のまま(にら)みあつて()ると、256(うしろ)(はう)より、
257(すす)(すす)め』
258(のぼ)()(その)(いきほひ)にカルもやむなく(あと)より()されて前進(ぜんしん)せむとする(とき)259レーブは無法(むはふ)にも(その)(いは)をとつて(ひと)(おど)かし()れむと、260(てき)(あた)らぬ(やう)にと(ねら)ひを(さだ)めて()げつくれば、261(いは)はカツカツと(おと)をたてて谷底(たにそこ)転落(てんらく)して(しま)つた。
262カル『こりやこりや(あぶ)ないわい。263(なに)(いた)すか』
264レーブ『(なに)(いた)さない。265其方等(そのはうら)片端(かたつぱし)から殲殺(みなごろ)しに(いた)さねば(おれ)(こころ)得心(とくしん)せぬのだ』
266()ひながら今度(こんど)両手(りやうて)(ふた)つの(いし)引掴(ひつつか)み、267(また)もや(のぼ)()(てき)(むか)つて()げつけむとする気色(けしき)(しめ)した。268ランチ将軍(しやうぐん)(やや)(うしろ)(はう)より、
269(すす)(すす)め』
270下知(げち)をする。271()むを()ずしてカルは前進(ぜんしん)せむとするを、272レーブは(みち)真中(まんなか)()ちはだかり、273第一着(だいいちちやく)にカルの首筋(くびすぢ)(つか)んで谷底(たにそこ)()がけて()げつけた。274(また)()(やつ)引掴(ひつつか)十人(じふにん)ばかりも谷川(たにがは)目蒐(めが)けて()げつくる。275かかる(ところ)(はる)(した)(はう)より数多(あまた)軍卒(ぐんそつ)()()けて(のぼ)()(だい)(をとこ)276(たちま)ちレーブの(まへ)(あら)はれ、
277何者(なにもの)ならばわが行軍(かうぐん)妨害(ばうがい)(いた)すか。278(われ)こそはランチ将軍(しやうぐん)懐刀(ふところがたな)(きこ)えたる若芽(わかめ)春造(はるざう)だ』
279()ひながらレーブの素首(そつくび)引掴(ひつつか)み、280谷川(たにがは)()がけてドスンとばかり()()んで(しま)つた。281(この)(てい)(うかが)()たる黄金姫(わうごんひめ)282清照姫(きよてるひめ)は、
283(いま)最早(もはや)(これ)までなり、284天則違反(てんそくゐはん)かは()らね(ども)285(なん)とかして(てき)()ひちらし、286(ただ)一人(ひとり)(この)(たうげ)()えさせじ』
287(うで)(より)をかけ金剛杖(こんがうづゑ)前後左右(ぜんごさいう)打振(うちふ)打振(うちふ)り、288単縦陣(たんじうぢん)()つて(のぼ)()(てき)(むか)つて打込(うちこ)めば、289素破(すは)一大事(いちだいじ)とランチ将軍(しやうぐん)(ゆみ)()をつがえ、290二人(ふたり)()がけて発矢(はつし)()かけた。291(つづ)いて数多(あまた)軍勢(ぐんぜい)(ゆみ)()より(おろ)(あめ)(ごと)二人(ふたり)(むか)つて()かける。292(その)(あひだ)(つゑ)(もつ)()けながら獅子(しし)奮迅(ふんじん)(いきほひ)(もつ)前後左右(ぜんごさいう)母娘(おやこ)()れまはる。293二人(ふたり)(つひ)坂道(さかみち)より(あし)()(はづ)し、294谷底(たにそこ)にヅデンドウと母娘(おやこ)一時(いちじ)転落(てんらく)した。295流石(さすが)黄金姫(わうごんひめ)296清照姫(きよてるひめ)武術(ぶじゆつ)心得(こころえ)あれば(すこ)しも(からだ)負傷(ふしやう)をなさず、297谷底(たにそこ)真砂(まさご)(うへ)にヒラリと(たい)(おろ)敵軍(てきぐん)(きた)れと()(つばき)して()つてゐる。298ランチ将軍(しやうぐん)母娘(おやこ)両人(りやうにん)(にが)すなと下知(げち)すれば、299数多(あまた)軍卒(ぐんそつ)都合(つがふ)よき谷川(たにがは)()(ぐち)(さが)(もと)めて、300雲霞(うんか)(ごと)二人(ふたり)取囲(とりかこ)(ゆみ)(しき)りに()かけ()した。301二人(ふたり)進退(しんたい)(これ)(きは)まつて最早(もはや)運命(うんめい)()きたりと覚悟(かくご)(ほぞ)をかたむる(をり)しもあれ、302谷底(たにそこ)よりウーウーと(おほかみ)呻声(うなりごゑ)(きこ)ゆると(とも)に、303幾百(いくひやく)とも()れぬ狼軍(らうぐん)はランチ将軍(しやうぐん)(むか)つて(きば)()()(いか)らして(あば)()る。304(その)(いきほひ)辟易(へきえき)し、305ランチ将軍(しやうぐん)(はじ)一同(いちどう)玉山峠(たまやまたうげ)雪崩(なだれ)(ごと)くバラバラバツと()げて()く。
306 黄金姫(わうごんひめ)307清照姫(きよてるひめ)前後(ぜんご)(こころ)(くば)りながら、308数十(すうじふ)(おほかみ)(おく)られて玉山峠(たまやまたうげ)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら悠々(いういう)として(くだ)()く。309谷口(たにぐち)(いた)()れば、310ランチ将軍(しやうぐん)部下(ぶか)如何(いかが)なりしか、311(かげ)だにも()えずなつて()た。312これは玉山峠(たまやまたうげ)(のぼ)れば余程(よほど)近道(ちかみち)なれども、313危険(きけん)(おそ)れて(みち)(ひがし)(むか)ひて進軍(しんぐん)したものと()える。314黄金姫(わうごんひめ)315清照姫(きよてるひめ)無人(むじん)()()心地(ここち)して悠々(いういう)(すす)()くのであつた。
316大正一一・一一・二 旧九・一四 北村隆光録)