霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 三途館(みづやかた)〔一〇九五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻 篇:第3篇 霊魂の遊行 よみ:れいこんのゆうこう
章:第11章 第40巻 よみ:みずやかた 通し章番号:1095
口述日:1922(大正11)年11月02日(旧09月14日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
カルは際限ない枯れ野原を魔風に吹かれながら進んで行く。亡者の一団を見れば、レーブに谷底に放り投げられた男たちであった。
岩に腰かけて休んでいた男を見ると、レーブであった。カルは、どうやら共に幽界に来てしまったようだとレーブに話しかけ、生前バラモン神を信心していたのに、なぜこんなところに来てしまったのだろうといぶかった。
レーブは、自分のような英雄豪傑が若いのに死んだはずがない、お前たちが引っ張り込んだのだろうと軽口をたたく。
突然枯草の中から角を生やした恐ろしげな鬼が現れて、亡者たちを大喝した。しかし鬼はレーブとカルの二人だけには優しく接し、三途の川の岸まで案内すると申し出た。
他の亡者たちは赤と黒の鬼に責められて連れて行かれた。レーブとカルは、川辺の黄金造りの一軒家に案内された。レーブとカルはこの状況をいぶかしんでいる。
一人の少女が現れて二人を奥へ案内した。敷居をまたげて奥に入ると、外から見たのとは相違して、壁が落ちてむき出し、異臭がする小屋であった。奥座敷には、立派な衣装を着た美人が待っていて、御馳走を並べている。
二人は小屋の汚さ・むさくるしさと、美人と御馳走の取り合わせをいぶかった。女はここは三途の川で自分は鬼婆だと告げた。そしてさらに奥の間へ二人を案内するという。
二人がついていくと、ぼうぼうとした草原を進んで行く。女は、現界は表面ばかり立派にしているから、こんな家を建ててあるのだと毒づいた。
二人は女に連れられて、透明な水晶の家や汚い小屋を見せられた。女はにわかに白髪の婆になり、二人の首筋をとらえて幽界へ引きずり込もうとする。婆は、三途の川は三段に分かれており、上の激しい瀬を渡る者は現界に行き、真ん中の深い瀬を渡る者は神界へ、下の緩い瀬を渡る者は幽界へ行くのだ、と語った。
二人は婆を振り切って逃げだし、三途の川の中津瀬に飛び込んで向こう岸に泳ぎ着いた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4011
愛善世界社版:135頁 八幡書店版:第7輯 467頁 修補版: 校定版:141頁 普及版:62頁 初版: ページ備考:
001四面(しめん)寂寥(せきれう)として(むし)(こゑ)もなく
002際限(さいげん)もなき枯野原(かれのはら)
003形容(けいよう)(がた)()(かぜ)
004()かれながらに(すす)()く。
005 (みち)片方(かたはう)真赤(まつか)()(なが)れたやうな方形(はうけい)(いは)腰打掛(こしうちか)け、006(いき)(やす)めてゐる一人(ひとり)(をとこ)がある。007そこへ『ホーイホーイ』と(あや)しき(ごゑ)張上(はりあ)げながら、008(つゑ)(ちから)にトボトボと足許(あしもと)覚束(おぼつか)なげにやつて()七八人(しちはちにん)(をとこ)009(いづ)れの(かほ)()ても、010(みな)(つち)(ごと)青白(あをじろ)く、011(あたま)三角(さんかく)霊衣(れいい)(いただ)いてゐる。012(これ)()はずと()れた幽界(いうかい)(たび)をしてゐる亡者(まうじや)一団(いちだん)であつた。013(さき)腰打掛(こしうちか)けて(やす)んでゐたのは、014玉山峠(たまやまたうげ)谷底(たにそこ)から、015春造(はるざう)投込(なげこ)まれて気絶(きぜつ)したレーブである。016(あと)から()るのが、017カルを(はじ)七八人(しちはちにん)のバラモン(けう)家来(けらい)であつた。018カルは黄金姫(わうごんひめ)投込(なげこ)まれて気絶(きぜつ)し、019(その)()亡者(まうじや)(のこ)らずレーブの(ため)にやられた連中(れんちう)ばかりである。
020 カルはレーブの姿(すがた)()て、
021『ヨー、022(はや)う、023(まへ)矢張(やつぱり)こんな(ところ)へやつて()たのかなア、024附合(つきあひ)のいい(をとこ)だな。025()なば諸共(もろとも)死出三途(しでせうづ)026()(いけ)地獄(ぢごく)027(はり)(やま)028八寒(はちかん)地獄(ぢごく)()()いて、029十万億土(じふまんおくど)(まゐ)りませう。030モウ()うなつちや現界(げんかい)(ちが)つて、031幽界(いうかい)では名誉心(めいよしん)()らねば、032財産(ざいさん)必要(ひつえう)もない。033(したが)つて(あらそ)ひも怨恨(うらみ)不必要(ふひつえう)だ。034(ただ)(うら)むらくは、035生前(せいぜん)にバラモン神様(がみさま)(しん)じてゐたお神徳(かげ)で、036至幸(しかう)至楽(しらく)天国(てんごく)へやつて(もら)へるだらうと期待(きたい)してゐたのが、037ガラリと(はづ)れて、038こんな(さび)しい枯野ケ原(かれのがはら)(わた)つて()くだけが残念(ざんねん)だが、039これも仕方(しかた)がない。040サア、041レーブさま、042一緒(いつしよ)(まゐ)りませう』
043レーブ『ヤア(みな)さま、044(そろ)ひだなア。045カルさまは()つから(おれ)(おぼ)えがないが、046はたの御連中(ごれんちう)(のこ)らず(おれ)冥途(めいど)(たび)をさしてやつたやうなものだ。047(しか)(おれ)はまだ()んではゐないのだから、048亡者(まうじや)(あつか)ひは御免(ごめん)だ。049千引(ちびき)(いは)(うへ)(おい)激戦(げきせん)苦闘(くとう)をつづけた英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)のレーブさまが、050(とし)(わか)いのに今頃(いまごろ)()んで(たま)るかい。051(この)レーブさまには()きたる(かみ)御守護(ごしゆご)があるから、052メツタに()んでる気遣(きづかひ)はないのだ。053前達(まへたち)(うま)いことをいつて、054(おれ)冥途(めいど)引張(ひつぱ)りに()よつたのだな。055()ても()ても(はら)(わる)(をとこ)だ、056モウいいかげんに娑婆(しやば)妄執(まうしふ)()らさないか。057斯様(かやう)(ところ)へふみ(まよ)うて()ると結構(けつこう)天国(てんごく)()かれないぞ。058南無(なむ)カル頓生菩提(とんしようぼだい)059(ねが)はくば天国(てんごく)(すく)はせ(たま)へ。060惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
061()(あは)す。
062『オイ、063レーブ、064貴様(きさま)(なに)(とぼ)けてゐるのだ。065ここは娑婆(しやば)ぢやないぞ。066幽冥界(いうめいかい)門口(かどぐち)067枯野ケ原(かれのがはら)真中(まんなか)だ。068サア(これ)から前進(ぜんしん)しよう。069(いづ)れいろいろの(おに)()()て、070(なん)とか(かん)とか難題(なんだい)()つかけるかも()れないが、071それも自業自得(じごうじとく)だ、072各自(かくじ)(こころ)(おぼ)えがあることだから(なに)()ても仕方(しかた)がない。073(みな)(おれ)たちが(こころ)(なか)(つく)つた御親類筋(ごしんるゐすぢ)(おに)()められるのだから、074(あきら)めるより(みち)はなからうぞ』
075『ハヽヽヽヽ亡者(まうじや)(くせ)に、076(なに)(ぬか)すのだ。077気楽(きらく)さうに、078(あを)079(あか)080(くろ)(おに)鉄棒(かなぼう)()つてやつて()たら、081貴様(きさま)それこそ肝玉(きもだま)(つぶ)して、082()()かし、083二度目(にどめ)幽界(いうかい)旅行(りよかう)をやらねばならなくなるぞ。084(この)レーブさまは(なん)()つても()んだ(おぼ)えはない』
085『マアどうでも()いワ。086()くとこ(まで)()つてみれば、087()んでゐるか()きてるか、088()(わか)るのだからなア』
089 ()(はな)(をり)しも、090枯草(かれくさ)(なか)から忽然(こつぜん)として(あら)はれた、091仁王(にわう)荒削(あらけづ)りみたやうな、092真赤(まつか)(つの)(はや)した裸鬼(はだかおに)093(とら)(かは)(ふんどし)をグツと()め、094蒼白(あをじろ)牡牛(めうし)のやうな(つの)095(ひたひ)から二本(にほん)()()しながら、
096『オイ亡者(まうじや)(ども)
097大喝(たいかつ)一声(いつせい)した。098レーブは(はじ)めて、099自分(じぶん)冥途(めいど)()てゐるのだなア……と合点(がてん)した。100されど自分(じぶん)(まこと)神様(かみさま)のお(みち)(つた)ふる真最中(まつさいちう)()んだのだから、101(けつ)して斯様(かやう)(おに)迫害(はくがい)されたり(しひた)げらるるものではない。102善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)さへ使(つか)へば即座(そくざ)消滅(せうめつ)するものだと(かた)(しん)じて、103(ほか)亡者(まうじや)のやうに左程(さほど)(おどろ)きもせず、104平然(へいぜん)として(おに)(ども)(かほ)打眺(うちなが)めてゐた。105(おに)はレーブ、106カルの二人(ふたり)一寸(ちよつと)会釈(ゑしやく)して、107比較的(ひかくてき)(やさ)しい(かほ)で、
108『エー御両人様(ごりやうにんさま)109貴方等(あなたがた)(これ)から(わたし)御案内(ごあんない)しますから、110三途(せうづ)(かは)(きし)まで()(くだ)さい。111(ほか)奴等(やつら)は……オイ(くろ)(あか)両鬼(りやうおに)(したが)つて、112此処(ここ)(みぎ)()つて()くがよからう。113サア()けツ』
114疣々(いぼいぼ)だらけの鉄棒(かなぼう)()つて()つかける(やう)にする、115八人(はちにん)亡者(まうじや)はシホシホと赤黒(あかくろ)(おに)()かれて茫々(ばうばう)たる枯野ケ原(かれのがはら)彼方(かなた)()()つた。
116 青鬼(あをおに)はレーブ、117カルを(おく)つて、118(やうや)くに水音(みなおと)淙々(そうそう)()(ひび)いてゐる(ひろ)川辺(かはべ)到着(たうちやく)した。119川辺(かはべ)には(なん)とも()れぬ綺麗(きれい)黄金造(わうごんづく)りの()ざつぱりとした一軒家(いつけんや)()つてゐる。120青鬼(あをおに)鉄門(かなど)をガラリとあけ、121(なか)這入(はい)つて、
122只今(ただいま)123娑婆(しやば)亡者(まうじや)二人(ふたり)(おく)つて()ました。124どうぞ受取(うけと)(くだ)さいませ』
125叮嚀(ていねい)挨拶(あいさつ)してゐる。126レーブ、127カルは(たがひ)(かほ)見合(みあは)せ、128小声(こごゑ)で、
129レーブ『オイ、130コリヤ怪体(けつたい)(こと)になつて()たぢやないか。131(この)大川(おほかは)(わた)れといはれたら、132それこそ大変(たいへん)だぞ。133(いま)(おに)が……二人(ふたり)亡者(まうじや)(おく)つて()ました、134受取(うけと)つて(くだ)さい………なんて()つてるぢやないか。135一寸(ちよつと)()ても(つよ)さうな小面憎(こづらにく)(おに)が、136あれ(だけ)叮嚀(ていねい)挨拶(あいさつ)してるのだから、137余程(よつぽど)(つよ)大鬼(おほおに)此処(ここ)()るに(ちが)ひないぞ。138(いま)(うち)(もと)(みち)()()さうかなア』
139カル『()()すと()つたつて、140地理(ちり)(わか)らず、141何一(なにひと)障碍物(しやうがいぶつ)がない(この)枯野原(かれのはら)142(すぐ)()つかつて(しま)ふワ。143それよりも神妙(しんめう)にして(うま)交渉(かうせふ)()げ、144よい(ところ)へやつて(もら)(はう)何程(なにほど)(とく)かも()れないぞ』
145 かく(はな)(とき)しも、146青鬼(あをおに)二人(ふたり)(むか)ひ、147叮嚀(ていねい)(かしら)をピヨコピヨコ()げて、
148(わたし)(これ)からお(いとま)(まを)します。149(やかた)主人(あるじ)さまに(なに)()一伍一什(いちぶしじふ)申上(まをしあ)げておきましたから、150どうぞ御勝手(ごかつて)(はい)つて、151(ゆつ)くりお(はなし)をなさいませ』
152()ひながら大股(おほまた)にまたげて、153鉄棒(かなぼう)(かる)さうに打振(うちふ)打振(うちふ)(もと)()(みち)引返(ひつかへ)すのであつた。
154 (あと)二人(ふたり)怪訝(けげん)(かほ)しながら、
155レーブ『オイ、156如何(どう)やら此処(ここ)三途(せうづ)(かは)らしいぞ、157(なん)(めう)(かは)ぢやないか。158三段(さんだん)(なみ)(わか)れて(なが)れてゐる。159まるで(たて)(なが)れてゐるのか、160(よこ)(なが)れてゐるのか見当(けんたう)()れぬやうな(かは)だのう』
161カル『オイ、162そんな(かは)(どころ)かい、163(この)(やかた)はキツと三途川原(せうづがはら)鬼婆(おにばば)番所(ばんしよ)かも(わか)らぬぞ。164ここで俺達(おれたち)はサツパリ着物(きもの)()がれて(しま)ふのだ。165さうすればこれから前途(さき)追々(おひおひ)冬空(ふゆぞら)()くのに赤裸(まつぱだか)になつて、166八寒(はちかん)地獄(ぢごく)旅立(たびだち)といふ悲劇(ひげき)(まく)がおりるかも()れぬぞ。167(こま)つたことが出来(でき)たものだなア』
168 かく(はな)(ところ)(やかた)()押開(おしひら)いて(あら)はれて()たのは十二三才(じふにさんさい)(うつく)しい(むすめ)であつた。
169レーブ『ヤア(えら)見当違(けんたうちがひ)をしてゐたワイ。170三途(せうづ)(かは)脱衣婆(だついばば)アといへば、171エグつたらしい(かほ)をした、172(ひと)でも()ひさうな餓鬼(がき)(ひか)へてゐるかと(おも)へば、173まだ十二三才(じふにさんさい)肩揚(かたあげ)()れぬ少女(せうぢよ)(しか)二人(ふたり)174(やさ)しい(かほ)して()()るぢやないか。175矢張(やつぱり)現界(げんかい)とは(すべ)てのことが逆様(さかさま)だといふから、176現界(げんかい)所謂(いはゆる)小娘(こむすめ)幽界(いうかい)(ばば)アかも()れぬぞ。177(むすめ)()つたら幽界(いうかい)では(ばば)アのことだらう。178(ばば)アと()つたら幽界(いうかい)では少女(せうぢよ)のことだらう。179(むすめ)()つたら……』
180カル『コリヤコリヤ()んなじことばかり、181(なに)をグヅグヅ()つてるのだい。182(むすめ)()いたら(ざま)(わる)いぞ』
183(あま)りの不思議(ふしぎ)で、184ツイあんな(こと)()へたのだ』
185 二人(ふたり)少女(せうぢよ)叮嚀(ていねい)()をつかへ、
186『あなたはレーブさまにカルさまで(ござ)いますか。187サアどうぞお(ひめ)さまが最前(さいぜん)からお待兼(まちかね)(ござ)います。188弁当(べんたう)用意(ようい)もして(ござ)いますから、189どうぞトツクリとお(やす)みの(うへ)(あが)(くだ)さいませ』
190レーブ『イヤア、191洒落(しやれ)けつかるワイ、192さうすると矢張(やつぱり)ここは現界(げんかい)だな。193(この)風景(ふうけい)のよい川端(かはばた)でどこの(やつ)()らねども沢山(たくさん)のおチヨボをおきやがつて、194茶代(ちやだい)をねだつたり御馳走(ごちそう)(こしら)へて(たか)代価(だいか)請求(せいきう)し、195剥取(はぎと)りをしやがるのだな。196オイ()()けぬと着物(きもの)(くらゐ)ならいいが、197(たましひ)まで(をんな)抜取(ぬきと)られて(しま)ふかも()れぬぞ。198鬼婆(おにばば)よりも(なに)よりも(おそ)ろしいのは(うつく)しい(をんな)だからなア』
199少女(せうぢよ)『モシモシお(きやく)さま、200そんな心配(しんぱい)()りませぬ、201どうぞ(はや)くお(はい)(くだ)さいませ』
202カル『ヤツパリ(ゆめ)だつたかいな。203ネツからとんと合点(がてん)がゆかぬやうになつて()たワイ。204どこともなしに娑婆(しやば)(くさ)くなつて()たぞ』
205レーブ『それだから、206貴様(きさま)亡者(まうじや)気分(きぶん)になつてゐやがつた(とき)から、207(おれ)はキツト()んでゐるのぢやないと()つただらう。208()(かく)警戒(けいかい)して(をんな)(たましひ)()かれぬやうに(はい)つて()ようかい。209(しか)(この)(いへ)()るだけでも大変(たいへん)値打(ねうち)があるぞ。210屋根(やね)(かはら)(かべ)もどこも黄金造(わうごんづく)りぢやないか。211こんな(ところ)()るナイスはキツト世間離(せけんばな)れのした高尚(かうしやう)優美(いうび)(すこぶ)る……に(ちが)ひない』
212といひながら少女(せうぢよ)()かれて二人(ふたり)(しきゐ)(また)げた。213(そと)から()れば金光燦爛(きんくわうさんらん)たる(この)(やかた)214(なか)(はい)つてみれば、215荒壁(あらかべ)()ちて(ほね)()きだし、216まるで乞食小屋(こじきごや)のやうである。217そして(その)むさ(くる)しいこと、218異様(いやう)臭気(しうき)がすること、219(はなし)にならぬ。220二人(ふたり)(あん)相違(さうゐ)し、221(おも)はず()らず、
222『ヤア此奴(こいつ)(たま)らぬ、223エライ化家(ばけいへ)だなア。224こんな(ところ)にゐやがる(やつ)ア、225どうで(ろく)なものぢやあるまいぞ。226オイ()()けぬと(しらみ)(あし)這上(はひあが)るぞ、227エーエ気分(きぶん)(わる)いことだ』
228口々(くちぐち)(つぶや)いてゐる。229(やぶ)れた襖障子(からかみ)をパツとあけて(おく)からやつて()たのは、230こはそもいかに、231(きたな)座敷(ざしき)似合(にあ)はぬ、232立派(りつぱ)衣裳(いしやう)(ちやく)した妙齢(めうれい)美人(びじん)233襠姿(うちかけすがた)(まま)234(やぶ)れた(たたみ)(うへ)惜気(をしげ)もなく()きずりながら、235(あら)はれ(きた)り、
236『あゝ、237これはこれはお二人様(ふたりさま)238()つて()りました。239大変(たいへん)(はや)うお()しで(ござ)いましたなア。240(おく)御馳走(ごちそう)(こしら)へてありますから、241(ひと)召上(めしあが)つて(くだ)さい』
242打解(うちと)けた()ひぶりである。243レーブは合点(がてん)ゆかず、244(いへ)(なか)をキヨロキヨロ見上(みあ)見下(みおろ)し、245隅々(すみずみ)(まで)見廻(みまは)しながら、
246(なん)(すみ)から(すみ)(まで)完全無欠(くわんぜんむけつ)なムサ(ぐる)しい(いへ)だなア、247何程(なにほど)山海(さんかい)珍味(ちんみ)でも、248(この)光景(くわうけい)(なが)めては、249(のど)へは(とほ)りませぬワイ。250コレコレお女中(ぢよちう)251一体(いつたい)此処(ここ)(なん)といふ(ところ)ですか』
252(をんな)『ここは冥途(めいど)三途(せうづ)(かは)といふ(ところ)(ござ)いますよ』
253レーブ『さうすると矢張(やつぱり)(わたし)亡者(まうじや)になつたのかいなア』
254『ホヽヽヽヽ亡者(まうじや)といへば亡者(まうじや)255()きてゐるといへば(すこ)(いき)(かよ)うてゐる。256三十万年後(さんじふまんねんご)二十世紀(にじつせいき)人間(にんげん)(やう)(もの)だ。257半死半(はんしはん)せう泥棒(どろばう)とはお(まへ)さまのことですよ。258(わたし)三途川(せうづがは)有名(いうめい)鬼婆(おにばば)で、259辞職(じしよく)出来(でき)終身官(しうしんくわん)だよ。260ホツホヽヽ』
261『オイオイ馬鹿(ばか)にすない、262そんな鬼婆(おにばば)があつてたまるかい、263(とし)二八(にはち)二九(にく)からぬ、264(はな)顔容(かんばせ)(つき)(まゆ)265珂雪(かせつ)白歯(しらは)266玲瓏玉(れいろうたま)(ごと)(その)(はだ)具合(ぐあひ)267如何(どう)して(これ)鬼婆(おにばば)(おも)へるものか、268あんまり揶揄(からか)ふものではありませぬぞ、269(まへ)さまは丁度(ちやうど)二十一世紀(にじふいちせいき)のハイカラ(をんな)(やう)なことを()ふぢやないか。270こんな(むすめ)(ばば)アとはどこで算用(さんによ)(ちが)うたのだらうなア』
271『ホヽヽ(わけ)(わか)らぬ(をとこ)だこと、272百年目(ひやくねんめ)二三年(にさんねん)づつ(ひと)寿命(じゆみやう)(ちぢ)まつてゆくのだから、273二十一世紀(にじふいちせいき)(すゑ)になると、274十七八才(じふしちはつさい)になれば大変(たいへん)古婆(ふるばば)だよ。275三歳(みつつ)になると夫婦(ふうふ)(みち)(さと)るやうになるのだから……お(まへ)さまも余程(よつぽど)(あたま)(ふる)いね』
276カル『さうすると、277ここは二十一世紀(にじふいちせいき)幽界(いうかい)三途(せうづ)(かは)だな』
278(をんな)三途(せうづ)(かは)何万年(なんまんねん)()つても、279(けつ)して(かは)るものではない。280(この)(ばば)アだつて、281何時迄(いつまで)(とし)()らず、282いはば三途(せうづ)(かは)のコゲつきだ。283サア(はや)(おく)()て、284饂飩(うどん)でも()べたがよからうぞや。285大分(だいぶ)玉山峠(たまやまたうげ)活動(くわつどう)して(はら)がすいてゐるだらう』
286レーブ『それなら()(かく)(おく)(とほ)して(もら)はう。287オイ、288カル、289(おれ)一人(ひとり)では(なん)だか気分(きぶん)(わる)い、290貴様(きさま)もついて()い』
291カル『ヨシヨシ()いて()かう、292(この)(をんな)はバの()とケの()(ちが)ひないから油断(ゆだん)をすな。293そして一歩(いつぽ)々々(いつぽ)(さぐ)(さぐ)りにゆかぬと、294陥穽(おとしあな)でも(こしら)へてあつたら大変(たいへん)だぞ。295亡者(まうじや)でも矢張(やつぱり)(いのち)()しいからなア』
296()ひながら美人(びじん)(あと)()いて()く。297(おく)()かと(おも)へば(くさ)莽々(ばうばう)()えきつた(かは)(つつみ)であつた。298(その)向方(むかふ)三途(せうづ)(かは)滔々(たうたう)とウネリを()てて(しろ)(あわ)所々(ところどころ)()きながら悠々(いういう)(なが)れてゐる。
299レーブ『コレコレ()アさまとやら、300(まへ)(ところ)(おく)()といふのは、301こんな()(ぱら)か。302矢張(やつぱり)冥途(めいど)といふ(ところ)娑婆(しやば)とは(おもむき)(ちが)ふものだなア。303(むすめ)(ばば)()つたり、304野原(のはら)(おく)()つたり、305サツパリ裏表(うらおもて)だ。306なア、307カル(こう)308ますます(あや)しくなつたぢやないか』
309(をんな)『ここはお(まへ)さまの仰有(おつしや)(とほ)()(ぱら)だ、310(おく)()といふのは(つぎ)(いへ)だ。311(この)向方(むかふ)立派(りつぱ)(おく)()()つてゐるから、312そこへ案内(あんない)(いた)しませう』
313レーブ『(また)(そと)から()れば、314金殿玉楼(きんでんぎよくろう)315(なか)()つて()れば乞食小屋(こじきごや)といふやうなお(やかた)御案内(ごあんない)(くだ)さるのですかなア。316イヤもうこれで結構(けつこう)(ござ)います』
317カル『(なん)(また)これ(だけ)(そと)(かね)をかけて、318立派(りつぱ)(いへ)()てながら、319(なか)はこんなにムサ(ぐる)しいのだらう。320なアお()アさま、321コラ一体(いつたい)(なに)意味(いみ)があるだらうな』
322(をんな)『ここは三途(せうづ)(かは)現界部(げんかいぶ)だから、323こんな(いへ)()ててあるのだ。324現界(げんかい)(やつ)表面(うはつら)(ばか)立派(りつぱ)にして、325(ひと)()()えぬ(ところ)(みな)こんなものだ。326口先(くちさき)立派(りつぱ)なことを()ふが、327(こころ)(なか)丁度(ちやうど)(この)(いへ)(なか)()るやうなものですよ。328(わたし)だつて()んなナイスに粉飾(ふんしよく)してるが、329(この)(いへ)同様(どうやう)肝腎要(かんじんかなめ)(はら)(なか)本当(ほんたう)(きたな)いものだよ。330(まへ)さまもバラモン(けう)だとか、331三五教(あななひけう)だとかのレツテルを(かぶ)つて、332宣伝(せんでん)だとか万伝(まんでん)だとか()つて(ある)いてゐただらう、333(くさ)つた(にく)宣伝使服(せんでんしふく)()けて(くそ)小便(せうべん)をそこら(ぢう)()(ある)いて、334神様(かみさま)だしに、335(もの)(わか)らぬ婆嬶(ばばかか)随喜(ずゐき)渇仰(かつかう)(なみだ)をこぼさしてゐたのだらう。336(わたし)(この)着物(きもの)(ひと)()いたら、337二目(ふため)()られぬ鬼婆(おにばば)アだよ。338白粉(おしろい)()口紅(くちべに)をさし白髪(しらが)(くろ)ンボを()り、339身体中(からだぢう)(らふ)(あぶら)をすり()んで、340こんなよい肉付(にくづき)にみせてゐるが、341一遍(いつぺん)(すこ)(あつ)()(なか)へでも這入(はい)らうものなら()られた(ざま)ぢやない。342サア(これ)から本当(ほんたう)(いへ)(なか)()れて()つてあげよう。343イヤ(おく)()へつれて()きませう』
344レーブ『(なん)合点(がてん)のいかぬことをいふ娘婆(むすめば)アさまぢやなア。345(なん)だか気味(きみ)(わる)くなつて()た。346()()はれると自分等(じぶんら)(はら)(うち)浄玻璃(じやうはり)(かがみ)()らされたやうな気分(きぶん)になつて()たワイ。347のうカル(こう)
348カル『さうだな、349丸切(まるき)現代(げんだい)貴勝族(きしようぞく)生活(せいくわつ)(やう)だなア。350(そと)から()れば刹帝利(せつていり)浄行(じやうぎやう)(なに)(たふと)(かた)()んでゐるお(やかた)のやうだが、351(なか)這入(はい)つてみると、352毘舎(びしや)よりも首陀(しゆだ)よりも幾層倍(いくそうばい)(おと)つた旃陀羅(せんだら)住家(すみか)(やう)だのう』
353(をんな)せんだら(まん)だら()はずと(はや)此方(こつちや)アへ()なされよ。354サア此処(ここ)神界(しんかい)(ひと)()(やかた)だ、355かういふ(うち)住居(ぢうきよ)をするやうにならぬとあきませぬぞや』
356レーブ『どこに(うち)があるのだい、357野原(のはら)(ばか)りぢやないか。358(むか)ふには(かは)滔々(たうたう)(なが)れてる(ばか)りで、359(いへ)らしいものは(ひと)つもないぢやないか』
360カル『オイ、361レーブ、362貴様(きさま)余程(よほど)(さと)りの(わる)(やつ)ぢやなア。363神界(しんかい)(いへ)といつたら娑婆(しやば)のやうな()(いし)(たけ)(たた)んだ(いへ)ぢやない、364際限(さいげん)もなき(この)宇宙間(うちうかん)(しよう)して神界(しんかい)(いへ)()ふのだ』
365レーブ『こんな(いへ)()んで()つたら、366それでも雨露(うろ)(しの)(こと)出来(でき)ぬぢやないか。367神界(しんかい)(いへ)といふのは所謂(いはゆる)乞食(こじき)(いへ)だな。368(なに)がそんな(うち)結構(けつこう)だい。369貴様(きさま)こそ(わけ)(わか)らぬことを()ふぢやないか』
370(をんな)『コレコレお二人(ふたり)さま、371(なに)をグヅグヅいつてらつしやるのだ、372(この)(うち)()えませぬか。373水晶(すゐしやう)屋根(やね)374水晶(すゐしやう)(はしら)375(なに)もかも一切万事(いつさいばんじ)376器具(きぐ)(はし)(いた)(まで)水晶(すゐしやう)(こしら)へてあるのだから、377(まへ)さまの(くも)つた眼力(がんりき)では()えませうまい。378(わたし)(からだ)だつて神界(しんかい)這入(はい)れば、379これ(この)(とほ)り、380()えますまいがな』
381(にはか)()(とほ)つて(しま)つた。
382レーブ『()()いてゐるが(いへ)所在(ありか)一寸(ちよつと)(わか)らぬ、383これでは(めくら)同然(どうぜん)だ。384何程(なにほど)結構(けつこう)でも(いへ)(わか)らぬやうな(ところ)へやつて()て、385水晶(すゐしやう)(はしら)へでもブツカツたら、386大変(たいへん)だから、387ヤツパリ(おれ)は、388最前(さいぜん)現界(げんかい)(いへ)(はう)何程(なにほど)よいか(わか)らぬわ。389コレコレ娘婆(むすめば)アさま、390どこへ()つたのだい。391(まへ)姿(すがた)(だけ)なつと()せてくれないか』
392 (みみ)のはたに(をんな)(こゑ)
393『ホヽヽ(なん)とまア不自由(ふじゆう)明盲(あきめくら)だこと、394(すこ)(みたま)水晶(すゐしやう)(みが)きなさい。395そしたら(この)立派(りつぱ)水晶(すゐしやう)(やかた)明瞭(はつきり)()えます』
396レーブ『どうしても()えないから、397(ひと)()()いて案内(あんない)して(くだ)さいな』
398(をんな)『それなら案内(あんない)して()げませう』
399()ひながら、400水晶(すゐしやう)表戸(おもてど)をガラガラガラと(おと)をさせて()けた。
401『ヤア(かほ)()えぬが、402(たしか)()のあいた(おと)だ』
403といひながら二人(ふたり)()をつなぎ、404レーブは(をんな)()()かれて、405水晶(すゐしやう)(やかた)這入(はい)つて(しま)つた。
406レーブ『(なん)(いへ)(うち)(いへ)(そと)か、407ヤツパリ見当(けんたう)()れぬぢやないか。408アイタタ、409とうとう(あたま)をうつた、410ヤツパリ(いへ)(うち)()えるワイ、411コレコレ娘婆(むすめば)アさま、412こんな(ところ)()るのはモウ(いや)だ。413一遍(いつぺん)()引張(ひつぱ)つて()して(くだ)さいな』
414(をんな)『お(まへ)さま()二人(ふたり)勝手(かつて)()なさい。415這入(はい)つたものが()られぬといふ(はず)がない』
416カル『(なん)とマア意地(いぢ)(わる)(をんな)だなア。417そんなことを()はずに一寸(ちよつと)手間(てま)ぢやないか、418出口(でぐち)(をし)へて(くだ)さいな』
419(をんな)『お(まへ)さまの身魂(みたま)さへ(みが)けたら、420出口(でぐち)明瞭(はつきり)(わか)りますよ。421自然(しぜん)(みたま)(みが)ける(まで)422千年(せんねん)でも万年(まんねん)でもここに(すわ)つてゐなさい、423こんな綺麗(きれい)(ところ)はありませぬからなア』
424レーブ『(あま)(きたな)(みたま)水晶(すゐしやう)(やかた)(はい)つたものだから、425とうとう神徳敗(しんとくま)けをしてしまつて、426出口(でぐち)(わか)らなくなつて(しま)つた。427エヽ(かま)ふこたない、428(めくら)でさへ一人(ひとり)道中(だうちう)をする()(なか)だ。429(あたま)()たぬ(やう)()(くう)をかきながら、430()られる(ところ)()ようぢやないか』
431カル『さうだな、432なんぼ(ひろ)(うち)だつて、433さう(おほ)きうはあるまい。434小口(こぐち)から()(まは)したら出口(でぐち)はあるだらう。435本当(ほんたう)(めくら)よりひどいぢやないか。436(そと)()えて()りながら()られぬとは、437()うした因果(いんぐわ)なことだらう。438コラ大方(おほかた)あの娘婆(むすめばば)アの計略(けいりやく)にかかつてこんな(ところ)()れられたのかも()れぬぞ……ヤア(おな)(をんな)沢山(たくさん)(うつ)()した。439ハハア此奴(こいつ)(かがみ)(つく)つた(うち)だ、440(ひと)つの(かげ)彼方(あちら)反射(はんしや)し、441此方(こちら)反射(はんしや)し、442沢山(たくさん)()()しよつたのだ。443ヨーヨー俺達(おれたち)姿(すがた)四方(しはう)八方(はつぱう)(うつ)つてるぢやないか、444此奴(こいつ)閉口(へいこう)だ。445コレ娘婆(むすめば)アさま、446そんな意地(いぢ)(わる)いことを()はずに()して(くだ)さいな』
447(をんな)『ホヽヽ娑婆(しやば)亡者(まうじや)とはお(まへ)のことだ。448それならモウ()加減(かげん)()して()げませう、449折角(せつかく)水晶(すゐしやう)(やかた)(けが)れて(くも)つて(しま)ふと、450あとの掃除(さうぢ)(この)(ばば)アも(こま)るから』
451()ひながら、452二人(ふたり)()をつないで、453(そと)()した()引張(ひつぱ)つてくれた感覚(かんかく)はするが、454(こゑ)(きこ)えるばかりで、455(すこ)しも姿(すがた)()えなかつた。
456(をんな)『サア此処(ここ)(そと)だ。457モウ安心(あんしん)しなさい』
458レーブ『ヤア有難(ありがた)う、459おかげで(たす)かりました。460ヤアお()アさま、461そこに()つたのか』
462(をんな)『サア(これ)から幽界(いうかい)(やかた)案内(あんない)しませう、463(わたし)について()るのだよ』
464レーブ『神界(しんかい)現界(げんかい)立派(りつぱ)なお(うち)拝見(はいけん)したのだから、465幽界(いうかい)矢張(やつぱり)(ついで)()せて(もら)はうか。466のうカル(こう)
467カル『(きま)つた(こと)だ。468ここ(まで)やつて()幽界(いうかい)(だけ)()なくては()んで(かか)アに土産(みやげ)がないワイ』
469(をんな)『ホヽヽお(まへ)さま(たち)470()なうと()つても、471モウ()冥途(めいど)()(うへ)は、472メツタに(かへ)ることが出来(でき)ませぬぞや、473ここは三途(せうづ)(かは)渡場(わたしば)だ。474それ、475ここに(きたな)藁小屋(わらごや)がある、476これが幽界(いうかい)のお(やかた)だ』
477()ひながら(にはか)白髪(しらが)(ばば)アになつて(しま)つた。
478レーブ『ヤア、479カル(こう)480あの(むすめ)本当(ほんたう)(ばば)アになりよつたぞ。481いやらしい(かほ)をしてゐるぢやねえか』
482(ばば)『いやらしいのは当然(あたりまへ)だ。483亡者(まうじや)(かは)()脱衣婆(だついばば)アだから、484サアこれからお(まへ)さまの(ころも)をはがすのだ』
485カル『エヽ洒落(しやれ)ない、486なんだ(この)()つぽけな雪隠小屋(せんちごや)のやうな(うち)()つけやがつて、487モウ(おれ)()めた。488矢張(やつぱり)現界(げんかい)(いへ)(はう)()つて(やす)まう』
489(きびす)(かへ)さうとすれば、490(ばば)アはグツと(りやう)()二人(ふたり)首筋(くびすぢ)(つか)んだ。491二人(ふたり)はゾツとして、
492『オイ()アさま、493(はな)した(はな)した、494こらへてくれ、495こらへてくれ』
496(ばば)(なん)()つても(はな)さない。497ここは幽界(いうかい)関所(せきしよ)だから、498(まへ)赤裸(まつぱだか)にして、499地獄(ぢごく)()ひやらねばならぬのだ。500(この)三途(せうづ)(かは)には神界(しんかい)()(みち)と、501現界(げんかい)()(みち)と、502幽界(いうかい)()(みち)三筋(みすぢ)あるから、503それで三途(せうづ)(かは)といふのだよ。504伊弉諾尊(いざなぎのみこと)(さま)黄泉国(よもつのくに)からお(かへ)りなさつた(とき)御禊(みそぎ)をなさつたのも(この)(かは)だよ。505(かみ)()()(つよ)し、506(しも)()()(よわ)し、507(なか)()(くだ)()ちて、508水底(みなそこ)()ちかづきて御禊(みそぎ)(たま)ひし(とき)()りませる(かみ)()大事忍男神(おほことをしをのかみ)といふことがある。509それあの(とほ)り、510(かは)()三段(さんだん)になつてるだろ。511真中(まんなか)(わた)(みたま)神界(しんかい)()くなり、512あの(しも)(ぬる)()(わた)代物(しろもの)幽界(いうかい)()くなり、513(かみ)(はげ)しい()(わた)(もの)現界(げんかい)()くのだ。514三途(せうづ)(かは)とも(あめ)安河(やすかは)とも(とな)へるのだから、515(まへ)(みたま)善悪(ぜんあく)(あらた)める関所(せきしよ)だ。516サアお(まへ)はどこを(とほ)心算(つもり)だ。517真中(まんなか)()はあゝ()えてゐても余程(よほど)(ふか)いぞ。518グヅグヅしてると、519沈没(ちんぼつ)して(しま)ふなり、520(しも)()(ぬる)()(わた)れば(わた)りよいが(その)(かは)りに幽界(いうかい)()かねばならず、521どちらへ()くかな。522一度(いちど)娑婆(しやば)()きたくば(かみ)()(わた)つたがよからうぞや』
523レーブ『何程(なにほど)()(ぬる)いと()つても幽界(いうかい)地獄(ぢごく)()くのは御免(ごめん)だ。524折角(せつかく)ここまでやつて()現界(げんかい)後戻(あともど)りするのも()()かない。525三五教(あななひけう)退却(たいきやく)二字(にじ)はないのだから……(しか)しカルの(やつ)526一度(いちど)現界(げんかい)(かへ)りたくば()アさまの()(とほ)り、527あの()をバサンバサンと(わた)つてみい。528(おれ)はどうしても神界行(しんかいゆき)だ、529虎穴(こけつ)()らずんば虎児(こじ)()ずといふから、530(ひと)(うん)(てん)(まか)し、531(おれ)神界(しんかい)旅行(りよかう)()めた。532(とき)途中(とちう)(わか)れた連中(れんちう)はどこへ()つたのだらうか、533()アさま、534(まへ)()つてるだらうな』
535(ばば)『あいつかい、536あいつは一途(いちづ)(かは)(わた)つて、537八万地獄(はちまんぢごく)真逆様(まつさかさま)()ちよつたのだよ』
538カル『一途(いちづ)(かは)とは(いま)()(はじ)めだ。539どうしてマア彼奴等(あいつら)はそんな(ところ)()れて()かれよつたのだらう』
540(ばば)一途(いちづ)(かは)といふのは、541(ぜん)一途(いちづ)()てたものか、542(あく)一途(いちづ)()てた(もの)(とほ)(かは)だ。543(ぜん)一途(いちづ)(もの)はすぐに都率天(とそつてん)まで(のぼ)るなり、544(あく)一途(いちづ)(やつ)(わた)しを(わた)るが最後(さいご)八万地獄(はちまんぢごく)()ちる代物(しろもの)だ、545本当(ほんたう)可哀相(かあいさう)なものだよ。546カルの部下(ぶか)となつてゐたあの八人(はちにん)今頃(いまごろ)はエライ制敗(せいばい)()けてるだらう。547それを(おも)へば(この)(ばば)アも可哀相(かあいさう)でも()(どく)でも(なん)でもないわい。548オホヽヽヽ』
549カル『コリヤ鬼婆(おにばば)550(おれ)部下(ぶか)がそんな(ところ)()つているのに、551(なん)気味(きみ)がよささうに、552(その)(わら)(ざま)は…貴様(きさま)こそよい悪垂婆(あくたればば)だ。553何故(なぜ)一途(いちづ)(かは)をこんな(ばば)(わた)らぬのだらうかな、554のうレーブ』
555(ばば)(いづ)幽界(いうかい)関所(せきしよ)(まも)るやうな(ばば)慈悲(じひ)ぢやの(なさけ)ぢやの同情(どうじやう)などあつて(たま)るかい、556悪人(あくにん)だから三途(せうづ)(かは)渡守(わたしもり)をしてゐるのだ。557善人(ぜんにん)()れば(すぐ)最前(さいぜん)のやうな(むすめ)になり、558現界(げんかい)(やつ)()れば上皮(うはかは)だけ綺麗(きれい)中面(なかつら)(きたな)(むすめ)()ける。559悪人(あくにん)()ればこんな(おそ)ろしい(ばば)になるのだ。560(つま)りここへ()(やつ)心次第(こころしだい)()ける(ばば)アだよ』
561レーブ『それなら(おれ)はまだ一途(いちづ)(かは)(おに)引張(ひつぱ)つて()きよらなんだ(だけ)562どつかに見込(みこみ)があるのだな。563ヨシヨシそれなら(ひと)奮発(ふんぱつ)して神界(しんかい)旅行(りよかう)()かけよう。564オイ、565カル、566貴様(きさま)(おれ)について(なか)()(わた)れ』
567カル『ヨシ、568どこ(まで)もお(まへ)とならば道伴(みちづ)れにならう』
569両人(りやうにん)『イヤお()アさま、570大変(たいへん)なお邪魔(じやま)(いた)しました。571御縁(ごえん)があつたら(また)()にかかりませう、572左様(さやう)なら、573まめで、574御無事(ごぶじ)で、575御達者(おたつしや)で……ないやうに、576(はや)くたばりなされ、577オホヽヽヽ』
578(ばば)『コリヤ貴様(きさま)霊界(れいかい)()てまで不心得(ふこころえ)な、579悪垂口(あくたれぐち)(たた)くか、580神界(しんかい)()くと()つても、581やらしはせぬぞ』
582(いばら)(つゑ)()()げて()つかけ(きた)(その)(すさま)じさ。583二人(ふたり)はザンブと(ばか)(なか)()飛込(とびこ)み、584一生懸命(いつしやうけんめい)抜手(ぬきて)()つて、585あなたの(きし)(やうや)(およ)ぎついた。
586大正一一・一一・二 旧九・一四 松村真澄録)
   
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