霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 (こひ)(わな)〔一一三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻 篇:第2篇 恋海慕湖 よみ:れんかいぼこ
章:第5章 第42巻 よみ:こいのわな 通し章番号:1130
口述日:1922(大正11)年11月14日(旧09月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
イルナの都の神館の奥の間には、黄金姫、清照姫、セーリス姫の三人が鼎坐してひそびそ話にふけっている。右守のカールチンが計略に乗ってやってくるかどうかと女三人、雑談を交えている。
そこへびっこをひきながらカールチンがやってきた。カールチンは、ヤスダラ姫に化けた清照姫にでれた様子も隠さずに話しかける。
黄金姫はそっとその場をはずし、セーリス姫も退室しようとしたとき、転んで舌を切ったユーフテスがやってきた。ユーフテスはセーリス姫に介抱されて二人は退場する。
清照姫はカールチンに対して、セーラン王が退位してカールチンが王位に就いたら、自分を正妃にするようにと要求した。カールチンは自分にはテーナ姫という長年連れ添った女房があると難色を示した。
清照姫は、大黒主の前例を出してカールチンに選択を迫った。カールチンは清照姫を正妃とすることを承諾してしまった。
また清照姫は、大黒主の援軍を辞退してハルナの都に返し、逆にイルナ国から援軍を出すようにと進言した。カールチンはこれも承諾してしまい、ヤスダラ姫の館を後にした。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4205
愛善世界社版:63頁 八幡書店版:第7輯 664頁 修補版: 校定版:67頁 普及版:21頁 初版: ページ備考:
001 イルナの(みやこ)神館(かむやかた)(おく)()には、002黄金姫(わうごんひめ)003清照姫(きよてるひめ)004セーリス(ひめ)三人(さんにん)鼎坐(ていざ)して、005ヒソビソ(ばなし)(ふけ)つてゐる。
006『ユーフテスが(うま)使命(しめい)(はた)して(かへ)るだらうかなア。007カールチンの姿(すがた)()(まで)は、008(なん)とはなしに心許(こころもと)ない(かん)じが(いた)します。009清照姫(きよてるひめ)010大丈夫(だいぢやうぶ)だらうかなア』
011『お()アさま、012そんな御心配(ごしんぱい)()りませぬ、013キツと右守司(うもりのかみ)(ちう)()んでやつて()ますよ。014(まへ)(もつ)(あや)しき秋波(しうは)(わたし)(おく)つてゐましたもの、015メツタに(はづ)れつこありませぬワ、016オホヽヽ』
017『さうだらうかな、018何時(いつ)そんな微細(びさい)(ところ)(まで)看破(かんぱ)しておいたのですか、019まだ一度(いちど)より御会(おあ)ひになつてゐないぢやないか』
020一度(いちど)()うても二度(にど)()うても、021カールチンの(かほ)には変化(へんくわ)はありますまい。022どうも(あや)しい目付(めつき)でしたよ。023余程(よほど)いいデレ(すけ)ですわ、024オツホヽヽ』
025油断(ゆだん)のならぬ(むすめ)だなア。026そんなことを()つて本当(ほんたう)にお(まへ)(はう)から何々(なになに)してるのではあるまいかな。027年頃(としごろ)(むすめ)()つと、028(おや)()()めますワイ。029オホヽヽヽ』
030()()して(わら)ふ。
031『お()アさま、032(わたし)だつて(をんな)ですワ、033異性(いせい)(にほ)ひを()いでみたい(やう)(こころ)もたまには……(おこ)りませぬワ、034オホヽヽ』
035(なん)とマア貴女(あなた)(がた)母子(おやこ)気楽(きらく)(かた)ですな、036(むすめ)母親(ははおや)(つか)まへて惚気(のろけ)るといふ(こと)がありますか、037前代(ぜんだい)未聞(みもん)ですワ。038清照姫(きよてるひめ)(さま)はさうすると、039(もら)()()えますなア』
040『ハイお(さつ)しの(とほ)り、041竜宮(りうぐう)(ひと)(じま)(ひろ)うて()ましたお転婆娘(てんばむすめ)(ござ)いますよ。042(いま)こそ()うして宣伝使(せんでんし)になつて真面目(まじめ)(かほ)をして()りますが、043随分(ずゐぶん)(ひろ)つた時分(じぶん)は、044(この)(そだ)ての(おや)手古摺(てこず)らしたものですよ。045(へび)()ひたいの、046(かはづ)()ひたいのと(まを)しましてなア、047(まる)雉子(きじ)(やう)(むすめ)ですワ』
048雉子(きじ)だの、049友彦(ともひこ)だのと、050それ(だけ)()はぬやうにして(くだ)さい、051(かほ)(あか)うなりますワ』
052(かほ)(あか)うなる(だけ)053まだどこか見込(みこみ)がありますなア。054(はは)もそれ()いてチツとばかり安心(あんしん)しましたよ。055カールチンも(さだ)めて、056(まへ)さまの口車(くちぐるま)にキツと()るでせう。057(はや)うやつて()ると面白(おもしろ)いのだがなア』
058セーリス『ユーフテスを使(つかひ)にやつたのですから、059キツと(すぐ)()えますよ。060あの(をとこ)中々(なかなか)抜目(ぬけめ)のない人物(じんぶつ)ですからなア』
061黄金(わうごん)『あなたもユーフテスさまに余程(よほど)執着(しふちやく)があると()えますな。062どうぞ本当(ほんたう)にならぬやうに(ねが)ひますよ。063様子(やうす)(かんが)へてると、064(なん)だか(あやし)くてたまりませぬワ』
065『あなたの慧眼(けいがん)にさへ(あや)しく()える(くらゐ)でなければ、066あの(をとこ)如何(どう)して(とりこ)になりませう。067(わたし)随分(ずゐぶん)(すご)(うで)()つて()りませうがなア。068神様(かみさま)(なん)だかすまないやうな()(いた)しますけれど、069(これ)忠義(ちうぎ)(ため)だから、070(ゆる)して(くだ)さるでせう』
071清照(きよてる)『セーリス(ひめ)(さま)上手(じやうづ)行方(やりかた)には、072(わたし)感服(かんぷく)して()ります。073到底(たうてい)(わたし)なんぞは足許(あしもと)へも()れませぬ。074(つめ)(あか)でも(せん)じて(いただ)きたいものですな』
075 かく一生懸命(いつしやうけんめい)になつて馬鹿話(ばかばなし)(ふけ)つてゐる。076そこへチガチガと(びつこ)をひきながらやつて()たのは右守司(うもりのかみ)であつた。077セーリス(ひめ)(なん)とも()へぬ(やさ)しみを(おもて)(うか)べ、078(やさ)しい(こゑ)で、
079『アヽ貴方(あなた)右守司様(うもりのかみさま)080よう()(くだ)さいました。081大変(たいへん)()(まを)して()りましたよ』
082(うけたま)はれば、083ヤスダラ(ひめ)(さま)(すこ)しく御気分(ごきぶん)(わる)いとのこと、084(その)()経過(けいくわ)如何(いかが)(ござ)います』
085『ハイ有難(ありがた)う。086御覧(ごらん)(とほ)り、087(この)(やう)元気(げんき)にお()(あそ)ばしました。088貴方(あなた)がお()(くだ)さるに相違(さうゐ)ないと、089覚束(おぼつか)ながら独合点(ひとりがてん)して、090(ねえ)さまに申上(まをしあ)げた(ところ)091不思議(ふしぎ)なことには大病(たいびやう)はケロリと(わす)れた(やう)(かほ)をして、092ニコニコと(なに)(うれ)しいのか()りませぬが、093(いさ)んでゐらつしやるのですよ』
094『それは(なに)より結構(けつこう)でござる。095イヤ、096ヤスダラ(ひめ)(さま)097先日(せんじつ)(えら)御無礼(ごぶれい)(いた)しました。098どうぞお心易(こころやす)御願(おねがひ)(いた)します。099(すこ)しくおかげんが(わる)かつたさうですな』
100清照(きよてる)『ハイ、101有難(ありがた)(ござ)います。102(なん)だか()りませぬが、103貴方(あなた)のことを一寸(ちよつと)(おも)ふと一寸(ちよつと)(わる)くなり、104ヤツと(おも)ふとヤツと(わる)くなり、105(あるひ)一寸(ちよつと)よくなつたり、106(また)大変(たいへん)によくなつたり(いた)しますのですよ。107(わたし)身魂(みたま)はどうやら貴方(あなた)身魂(みたま)()つてる(やう)心持(こころもち)(いた)します。108本当(ほんたう)(めう)塩梅(あんばい)ですワ』
109『ヒヨツとしたら、110前世(ぜんせ)(おい)身魂(みたま)夫婦(ふうふ)だつたかも(わか)りませぬな。111(わたし)(なん)だか貴女(あなた)のことを(おも)()すと、112()(へん)になつて(たま)りませぬワ。113エツヘヽヽヽ』
114セーリス『モシ右守(うもり)さま、115ハンケチをお使(つか)ひなさいませ、116(なん)だかおチヨボ(ぐち)(よこ)(はう)から、117瑠璃(るり)(たま)のやうな(もの)がしたたつてゐるぢやありませぬか』
118『これは(わたし)()つては非常(ひじやう)神聖(しんせい)にして(かつ)貴重(きちよう)(もの)ですよ。119(わたし)のヤスダラ(ひめ)さまに(たい)する(かく)しても(かく)しきれぬ(よろこ)びの(つゆ)ですからなア。120エヘヽヽヽ』
121()(ほそ)くし、122現在(げんざい)(その)()黄金姫(わうごんひめ)六ケ(むつか)しい(かほ)をして(ひか)へてゐるのも()がつかず、123清照姫(きよてるひめ)にのみ視線(しせん)集注(しふちう)してゐた。124黄金姫(わうごんひめ)右守司(うもりのかみ)視線(しせん)()けて(やうや)(つぎ)()姿(すがた)をかくし、125ヤツと(むね)()でおろした。
126『モシ(ねえ)さま、127(わたし)がここに()つても御邪魔(おじやま)にはなりますまいかな』
128(あね)(ところ)(いもうと)()るのに、129(なに)邪魔(じやま)になりませう。130姉妹(きやうだい)同士(どうし)だから、131他人(たにん)()へないことでも、132()(ゆる)して(はな)せるぢやありませぬか』
133『さうですね。134さう()つて(くだ)されば、135(わたし)だつて(うれ)しいですワ。136(しか)貴女(あなた)137右守司様(うもりのかみさま)(なに)秘密(ひみつ)(はなし)がおありでせう。138一寸(ちよつと)()()かしませうか、139あの(すゐ)()かして別席(べつせき)(いた)しませうかなア』
140(けつ)して(けつ)してお気遣(きづか)(くだ)さいますな。141秘密(ひみつ)のあらう道理(だうり)はございませぬから、142(わたし)申上(まをしあ)げたい(こと)赤裸々(せきらら)申上(まをしあ)げますから、143ヤスダラ(ひめ)(さま)もどうぞ遠慮(ゑんりよ)なく御心中(ごしんちう)をお(はな)(くだ)さいませ』
144 清照姫(きよてるひめ)はワザとツーンとして、
145(わたし)(べつ)右守(うもり)さまに(なに)申上(まをしあ)げる(こと)(ござ)いませぬワ。146(をんな)()(もつ)(おく)さまのある御方(おかた)に、147内証話(ないしようばなし)をしては()みませぬからなア』
148 セーリス(ひめ)(おも)()りジラしてやらうと(おも)ひ、
149『さうだつて(ねえ)さま、150あなた(こころ)(くち)(ちが)つてゐるでせう。151(わたし)がゐますと(また)大病(たいびやう)(おこ)ると(たがひ)迷惑(めいわく)ですから、152(しば)らく御免(ごめん)(かうむ)ります』
153『ホヽヽ(うま)いこと仰有(おつしや)いますこと、154ユーフテスさまがあなたの居間(ゐま)()つてゐられるものだから、155()()でないのでせう』
156『あなただつて、157(わたし)がここにゐると()()ぢやありますまい。158(おも)へば(おな)女気(をんなぎ)の、159男恋(をとここひ)しき(あき)(そら)160(かほ)紅葉(もみぢ)唐紅(からくれなゐ)161とめてとまらぬ紅葉(もみぢば)の、162(いろ)……とか()ひましてなア、163()ふに()はれぬ、164(たれ)だつて秘密(ひみつ)はありますワ。165それなら(ねえ)さま、166一寸(ちよつと)()つて()ます。167どうぞシツポリとお(たの)しみ(あそ)ばせ。168なア右守(うもり)さま、169あまり御気分(ごきぶん)(わる)なる(はなし)ぢや御座(ござ)りますまい、170オホヽヽヽ』
171 カールチンは(はな)をビコつかせながら、
172左様(さやう)々々(さやう)173(きやく)白鷺(しらさぎ)174()つが美事(みごと)175(しばら)くユーフテスさまと、176郊外(かうぐわい)散歩(さんぽ)でもなさつたら面白(おもしろ)いでせう』
177右守(うもり)さまのイヤなこと、178そんな(すゐ)()かして(もら)はなくても(よろ)しいワ。179(なん)()つても自由(じいう)結婚(けつこん)流行(りうかう)する()(なか)ですもの、180そんな(こと)如才(じよさい)のある(わたし)ぢや御座(ござ)いませぬ。181なア(ねえ)さま、182(ふる)道徳(だうとく)(とら)はれてゐる連中(れんちう)(やう)に、183(わが)()一生(いつしやう)一代(いちだい)(くわん)する夫婦(ふうふ)問題(もんだい)まで、184無理解(むりかい)(おや)干渉(かんせふ)されちや(たま)りませぬからなア。185それなら右守(うもり)さま、186ユーフテス……イエイエ自分(じぶん)居間(ゐま)(しばら)(さが)りますから、187ゆつくりとお(はなし)(あそ)ばしませや。188そしてよい結果(けつくわ)(もたら)して、189(わたし)にお目出度(めでた)うといふ(やう)にして(くだ)さいませ』
190()(かく)191惟神(かむながら)ですからなア』
192 ()()(ところ)へユーフテスは(した)()り、193(あご)(あた)りまで(ふく)らせながら(はし)(きた)り、
194『あゝゝあなたは、195右守(うもり)さまでせう、196あゝ(あま)りぢや(ござ)いませぬか。197(ひと)をふみこかして(さき)()()るとは。198コヽコレ、199セーリス(ひめ)……どの、200こんな無情(むじやう)(ひと)は、201(すゑ)(おそ)ろしいから、202(ねえ)さまが(なん)仰有(おつしや)つても、203あんたが(みづ)()さねば……なりませぬぞや。204(きよ)……オツトドツコイ、205ヤスダラ(ひめ)(さま)にお()(どく)ですから』
206セーリス『ユーフテス(さま)207(その)(かほ)はどうなさいました。208チツと(へん)ぢやありませぬか』
209『ミヽ(みち)でぶつ(たふ)れ、210シヽ(した)をかんで、211コヽ(この)(とほ)り、212ハヽ()れました、213イヽ(いた)くて(たま)りませぬ』
214『コリヤ、215ユーフテス、216(なん)()無礼(ぶれい)なことを(まを)すか。217(おれ)が、218そして何時(いつ)貴様(きさま)()んだか』
219(まこと)にスヽ()みませなんだ。220セーリス(ひめ)は、221(わたし)予約済(よやくずみ)だから、222滅多(めつた)秋波(しうは)(おく)るやうなことはなさらぬでせうな。223(なん)だかチツと様子(やうす)(へん)だから……ワヽ(わたし)もキヽ()()めますワイ』
224『ワハヽヽヽ』
225清照(きよてる)『オホヽヽヽ』
226『マアいやなこと、227ユーフテスさま、228サア(わたし)居間(ゐま)へおいでなさいませ。229(わたし)介抱(かいほう)して(なほ)して()げませう、230(うれ)しいでせう』
231とワザとに意茶(いちや)ついて、232右守(うもり)(こひ)()きたてようとしてゐる。233ユーフテスはいい()になり、234(ひめ)(かた)(もた)れかかり、235ヒヨロリ ヒヨロリとこの()()つて、236セーリス(ひめ)居間(ゐま)(ともな)はれ()つてしまつた。
237 (あと)にカールチン、238清照姫(きよてるひめ)(たがひ)(かほ)見合(みあは)せ、239手持無沙汰(てもちぶさた)様子(やうす)(だま)()んで(しま)つた。240カールチンは(ひめ)発言(はつげん)何時(いつ)(まで)()つても口切(くちき)りがないので、241とうとう(がふ)()やし、242矢庭(やには)飛付(とびつ)(やう)にして、243(かほ)をそむけながら、244清照姫(きよてるひめ)(やはら)かい()(いは)のやうな(かた)()でグツと(にぎ)つた。245清照姫(きよてるひめ)は、
246『エー』
247一声(ひとこゑ)ふりはなす途端(とたん)に、248ヒヨロ ヒヨロ ヒヨロとカールチンは一間(いつけん)ばかり、249(うしろ)尻餅(しりもち)をつき、
250『あゝコレコレ、251ヤスダラ(ひめ)殿(どの)252(をんな)()のあられもない、253そんな乱暴(らんばう)なことをするものぢやありませぬぞ』
254 清照姫(きよてるひめ)(はづ)かしさうな(ふう)をして、
255『それでも(はづ)かしうてたまりませぬワ、256モウこらへて(くだ)さいな、257(たの)みですから』
258『ワハヽヽヽ、259流石(さすが)(をんな)だなア、260そこが(たふと)(ところ)だ。261矢張(やつぱり)ウブなものだワイ。262(うま)れが(ちが)ふとどこともなしに(ゆか)しい(ところ)がおありなさる、263ウフヽヽヽ』
264()ひながら、265今度(こんど)(ひめ)背後(はいご)より両手(りやうて)をグツと(かた)にかけ、266()()めようとするのを、267清照姫(きよてるひめ)は、268カールチンの両腕(りやううで)をグツと()り、269ウンと(ちから)()れた拍子(ひやうし)(たい)をすくめた。270カールチンは負投(おひなげ)(くら)つて一間(いつけん)ばかり(むか)ふへ()び、271床柱(とこばしら)後頭部(こうとうぶ)をカチンと()ち、
272『アイタヽヽヽ、273コレコレ(ひめ)さま、274(なん)といふ手荒(てあら)いことをなさるのだ。275何時(いつ)()柔術(じうじゆつ)(おぼ)えましたかな、276天晴(あつぱれ)御手際(おてぎは)だ。277ヤア感心(かんしん)々々(かんしん)
278(あま)無礼(ぶれい)(こと)をなさいますと、279(わたし)承知(しようち)(いた)しませぬぞや』
280(なん)(えら)いヒステリツクだなア。281如何(どう)したら御機嫌(ごきげん)がとれるかなア。282まてまて、283(ひめ)(こころ)奥底(おくそこ)測量(そくりやう)もせずに無暗(むやみ)相手(あひて)になつて、284はねるのは当然(たうぜん)だ。285惚切(ほれき)つた(をとこ)にからかはれると、286(かへつ)(うれ)(おどろ)きに肱鉄砲(ひぢてつぱう)をかまし、287(あと)から後悔(こうくわい)する(をんな)が、288間々(まま)あるものだ。289(ひめ)もヤツパリ(その)(でん)だなア』
290(おも)はず()らず小声(こごゑ)(ささや)く。291清照姫(きよてるひめ)可笑(をか)しさを(こら)へて、
292右守(うもり)さま、293(なん)仰有(おつしや)います。294(わたし)(けつ)してヒステリツクぢやありませぬよ。295(この)(とほ)り、296ビチビチ()えとるぢやありませぬか。297(なん)だか()らないが、298身魂(みたま)()はないと()えまして、299守護神(しゆごじん)(おこ)つて仕様(しやう)(ござ)いませぬワ。300チツと(この)守護神(しゆごじん)鎮魂(ちんこん)でもして帰順(きじゆん)するやうに()ひきかして(くだ)さいませな。301本当(ほんたう)(わたし)(こま)つちまひますワ』
302『あゝそれでよく(わか)りました。303さうすると貴女(あなた)肉体(にくたい)はカールチンに(たい)し、304(べつ)嫌忌(けんき)(じやう)をお()ちになつてるのぢやありませぬなア』
305『ハイ』
306本人(ほんにん)肉体(にくたい)さへ承知(しようち)なら、307守護神(しゆごじん)(くらゐ)308(なん)()つた(ところ)で、309(もの)(かず)でもありませぬワイ』
310()ひながら、311(また)もや(ひめ)()をグツと(にぎ)る。312清照姫(きよてるひめ)はワザと(こゑ)(とが)らし、
313(わらは)はヤスダラ(ひめ)副守護神(ふくしゆごじん)314三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)清照姫(きよてるひめ)(ござ)るぞよ。315(なんぢ)(いやし)くも右守司(うもりのかみ)となり、316万民(ばんみん)(みちび)()でゐながら(その)(いや)しき振舞(ふるまひ)何事(なにごと)ぞや。317容赦(ようしや)(いた)さぬぞ。318(いま)(その)(はう)()げつけたのは、319(この)清照姫(きよてるひめ)(れい)がしたのぢや。320(けつ)してヤスダラ(ひめ)所為(しよゐ)ではない(ほど)に、321誤解(ごかい)をせぬやうにしたがよからう。322清照姫(きよてるひめ)最早(もはや)(この)肉体(にくたい)立去(たちさ)(ほど)に、323(あと)(その)(ほう)自由(じいう)(いた)したが()からうぞや。324ウンウン』
325ドスンと飛上(とびあが)り、326清照姫(きよてるひめ)おこりのおちたやうなケロリとした(かほ)をして、327カールチンの(かほ)打眺(うちなが)め、
328『ヤア貴方(あなた)(こひ)しい(した)はしい右守(うもり)さまで御座(ござ)いましたか、329()うマア御多忙(ごたばう)職務(しよくむ)をすてて、330(わたし)(ねがひ)(かな)へて御出(おい)(くだ)さいました、331あゝ(うれ)しう御座(ござ)います。332どうぞ不束(ふつつか)(わたし)333見捨(みすて)なく末永(すえなが)可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ』
334右守(うもり)(ひざ)(かしら)をなげつけ、335(くび)左右(さいう)にふつて(うれ)(なき)真似(まね)をして()せる。336カールチンは(えつ)()り、
337『ウツフヽヽヽ、338イヤ(ひめ)339心配(しんぱい)なさるな。340其方(そち)(こと)なら、341如何(いか)なることでも(わが)(ちから)(かな)ふことならば、342(かな)へて(しん)ぜませう。343どうぞカールチンも(いま)(こころ)何時(いつ)(まで)(あい)して(くだ)さいや』
344となまめかしい(こゑ)で、345()(ほそ)くして(しやべ)()した。346どこともなく、347(をけ)()がゆるんだやうな言葉(ことば)(づか)ひである。
348『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。349それなら(この)ヤスダラ(ひめ)(ねがひ)(なん)でも()いて(くだ)さいますか』
350(まを)すに(およ)ばず、351どんな(こと)でも()いて()げるから()つて()なさい』
352『それなら申上(まをしあ)げますが、353(けつ)してお(はら)()てて(くだ)さいますなや。354貴方(あなた)御存(ごぞん)じの(とほ)り、355セーラン王様(わうさま)(ここ)一ケ月(いつかげつ)(のち)には万事(ばんじ)準備(じゆんび)(ととの)へて、356貴方様(あなたさま)(あと)をお(ゆづ)(あそ)ばすことに内定(ないてい)して()りますのは(たしか)です。357さうすれば貴方(あなた)右守司(うもりのかみ)ではなくて、358入那(いるな)(みやこ)刹帝利様(せつていりさま)359さう御出世(ごしゆつせ)(あそ)ばした(とき)は、360こんな(いや)しき(をんな)体面(たいめん)(かか)はると仰有(おつしや)つて、361キツと(わたし)をお()(あそ)ばすでせう。362貴方(あなた)本当(ほんたう)(わたし)(あい)して(くだ)さるのならば、363ここで(ひと)つどこまでも()てないと()書付(かきつけ)()いて(くだ)さいませぬか』
364如何(いか)なる難問題(なんもんだい)かと(おも)へば、365そんな(こと)か。366ヨシヨシ、367()いてやらう。368(なん)()けばいいのだなア』
369(わたし)要求(えうきう)到底(たうてい)貴方(あなた)には聞入(ききい)れられますまい。370いざと()場合(ばあひ)になれば、371キツと拒絶(きよぜつ)なさるにきまつて()りますワ』
372武士(ぶし)言葉(ことば)二言(にごん)はない。373(をんな)一人(ひとり)(くらゐ)(たぶ)かつて(なん)になるか。374(はや)(その)要求(えうきう)次第(しだい)細々(こまごま)()つて()なさい』
375貴方(あなた)刹帝利(せつていり)にお()(あそ)ばした(あかつき)は、376キツと(わたし)正妃(せいひ)にして(くだ)さるでせうなア』
377『ウーン、378そりや、379せぬでもないが、380(わたし)にはテーナ(ひめ)といふ女房(にようばう)があるぢやないか』
381(その)テーナさまは、382貴方(あなた)右守司(うもりのかみ)としての(おく)さまでせう。383(けつ)して刹帝利(せつていり)(おく)さまでは(ござ)いますまい。384刹帝利(せつていり)(おく)さまには(たれ)をお(えら)みですか。385ヤツパリ依然(いぜん)として(ふる)いのを御使用(ごしよう)(あそ)ばしますか。386それでは折角(せつかく)貴方(あなた)一切(いつさい)規則(きそく)革新(かくしん)しようとなさつても、387城内(じやうない)空気(くうき)(あたら)しくする(こと)出来(でき)ますまい。388()(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。389バラモン(けう)大教主(だいけうしゆ)大黒主(おほくろぬし)神柱(かむばしら)は、390(なが)らく(とも)苦労(くらう)(あそ)ばした糟糠(さうかう)(つま)放逐(はうちく)し、391新規(しんき)()(なほ)しの(わか)(うる)はしい石生能姫(いそのひめ)(さま)正妃(せいひ)(あそ)ばしたぢや(ござ)いませぬか。392大黒主(おほくろぬし)(さま)でさへも(あそ)ばしたことを、393貴方(あなた)出来(でき)ない道理(だうり)はありますまい。394サア何卒(どうぞ)これからきめて(くだ)さい。395おイヤですかな。396おイヤならばお(いや)とキツパリ()つて(くだ)さい。397(わたし)にも(ひと)覚悟(かくご)がありますから』
398成程(なるほど)さう()けばそれも(もつと)もだ。399それなら貴女(あなた)正妃(せいひ)とすることを(かた)(やく)しませう』
400有難(ありがた)(ござ)います、401それなら今日(けふ)から(わたし)はあなた(さま)(まこと)(つま)ですなア』
402となまめかしい(こゑ)()し、403満面(まんめん)(ゑみ)(たた)へて(もた)れかかつた。404(その)しをらしさにカールチンは(ほね)(たま)()けた(ごと)くグニヤ グニヤとなつて(しま)ひ、405(かほ)相好(さうがう)(くづ)して平素(へいそ)のさがり()一入(ひとしほ)()げ、406(こゑ)調子(てうし)まで(くる)はしながら、
407『ウンウンよしよし、408(まへ)()ふことなら、409(いのち)でもやらう。410ホンに可愛(かあい)(やつ)だなア、411エヘヽヽヽ』
412『それなら(わたし)(ひと)つの(ねがひ)(ござ)います。413御存(ごぞん)じの(とほ)り、414最早(もはや)刹帝利(せつていり)授受(じゆじゆ)円満(ゑんまん)解決(かいけつ)曙光(しよくわう)(みと)めてゐるのですから、415大黒主(おほくろぬし)(さま)軍隊(ぐんたい)借用(しやくよう)するのはお()めになつたら如何(どう)ですか、416何程(なにほど)円満(ゑんまん)解決(かいけつ)とは()ひながら、417カールチンは刹帝利(せつていり)(くらゐ)(うば)はむ(ため)に、418大黒主(おほくろぬし)(さま)軍隊(ぐんたい)借用(しやくよう)して脅迫(けうはく)したといはれては末代(まつだい)までの不名誉(ふめいよ)419(また)国民(こくみん)一般(いつぱん)(たい)しても治政上(ちせいじやう)大変(たいへん)障害(しやうがい)となるぢやありませぬか。420どうぞ(わたし)御願(おねがひ)ですから、421一時(いちじ)(はや)早馬使(はやうまづかひ)をハルナの(みやこ)にさし()け、422軍隊(ぐんたい)派遣(はけん)(ことわ)つて(くだ)さいませ。423大黒主(おほくろぬし)(さま)だつて、424近国(きんごく)動乱(どうらん)(おこ)つてゐるのですから、425大変(たいへん)御迷惑(ごめいわく)でせう。426一層(いつそう)(こと)427貴方(あなた)軍隊(ぐんたい)全部(ぜんぶ)応援(おうゑん)(ため)差向(さしむ)けになつたならば、428貴方(あなた)武勇(ぶゆう)天下(てんか)(とどろ)(また)大黒主(おほくろぬし)(さま)のお(おぼ)えはますます目出度(めでた)く、429(つひ)にはハルナの(みやこ)後継(あとつぎ)にお()りなさる端緒(たんちよ)(ひら)くといふものです。430これ(くらゐ)決断(けつだん)がなくては到底(たうてい)駄目(だめ)ですからなア』
431成程(なるほど)さう()けばさうだなア。432それなら一先(ひとま)(わが)(やかた)立帰(たちかへ)り、433早馬使(はやうまづかひ)(はし)らせて、434軍隊(ぐんたい)派遺(はけん)御辞退(ごじたい)申上(まをしあ)げ、435味方(みかた)勇士(ゆうし)をして、436(のこ)らず大黒主(おほくろぬし)(さま)(ため)応援(おうゑん)させよう。437ヤア、438ヤスダラ(ひめ)439(また)ゆつくりとお()にかからう。440キツと明日(あす)早朝(さうてう)から登城(とじやう)するから、441安心(あんしん)して()つてゐるがよい。442左守殿(さもりどの)へも其方(そち)から(よろ)しく()つて(くだ)さい。443(わたし)から()ふのは(なん)だか都合(つがふ)(わる)(やう)だから』
444(ちち)左守(さもり)最早(もはや)(わたし)(せつ)なる(こひ)看破(かんぱ)し、445夜前(やぜん)(きび)しく膝詰談判(ひざつめだんぱん)(いた)しました(ゆゑ)446(いのち)をかけて、447いろいろと陳弁(ちんべん)しました(ところ)448ヤツと得心(とくしん)して()れまして……流石(さすが)(おれ)(むすめ)だ。449よい(ところ)()がついた、450(まへ)がさうなつてくれれば、451右守司(うもりのかみ)との暗闘(あんとう)もこれでサツパリ()けるだらう……と(よろこ)(いさ)んで(わか)れた(くらゐ)ですから、452(ちち)(はう)(けつ)して御心配(ごしんぱい)くださいますなや』
453『ヤスダラ(ひめ)殿(どの)454名残(なごり)()しいが、455明日(あす)(また)()にかからう』
456()ひながら、457(したた)(よだれ)をソツとたぐり、458イソイソとして(おの)(やかた)立帰(たちかへ)るのであつた。459(あと)清照姫(きよてるひめ)(かへ)()姿(すがた)を、460(くび)()ばして(なが)めてゐたが、461何時(いつ)()にやら(ひめ)(くび)()()(たて)(うご)き、462(あか)(した)まではみ()して()た。
463大正一一・一一・一四 旧九・二六 松村真澄録)