霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 狐狸窟(こりくつ)〔一一三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻 篇:第2篇 恋海慕湖 よみ:れんかいぼこ
章:第9章 第42巻 よみ:こりくつ 通し章番号:1134
口述日:1922(大正11)年11月15日(旧09月27日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
室内のセーリス姫は、室外のセーリス姫を呼んで招き入れた。外から入ってきたセーリス姫に突き飛ばされて、ユーフテスは倒れた。
二人のセーリス姫は、ユーフテスを介抱しながら自分たちは狐の化けものだ、どちらも本物だとユーフテスをからかっている。ユーフテスは両方から腕を引っ張られて往生し、金輪際女には懲りたと白旗を上げる。
女は白狐の本性を現して、太い白い尻尾をユーフテスの前に現した。ユーフテスはあっと叫んでその場に転倒してしまった。
白狐の旭はセーリス姫にお辞儀をしてどこかに去って行った。セーリス姫は自分の顔を狐の顔に化粧し、ユーフテスの面分に清水を吹きかけた。ユーフテスは気が付いて起き上がり、セーリス姫の顔を見てびっくりり、廊下をはって逃げ帰ってしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4209
愛善世界社版:119頁 八幡書店版:第7輯 685頁 修補版: 校定版:123頁 普及版:48頁 初版: ページ備考:
001 ユーフテスは(そと)から()んだ(をんな)(こゑ)不審(ふしん)(ねん)()れやらず、002(うで)()んで(しばら)く「ウーン」と溜息(ためいき)をついてゐる。003(そと)より以前(いぜん)(をんな)(こゑ)
004『もしもしユーフテス(さま)005セーリス(ひめ)(ござ)います。006這入(はい)りましてもお差支(さしつかへ)(ござ)いませぬかな』
007差支(さしつかへ)がないとは(まを)さぬ。008二人(ふたり)もセーリス(ひめ)があつて(たま)るかい。009ばヽヽヽ化物(ばけもの)()010(はや)退却(たいきやく)せい。011ユーフテスには(うで)があるぞ』
012『オホヽヽヽ御両人(ごりやうにん)さまが密約(みつやく)御成立(ごせいりつ)間際(まぎは)に、013白首(しらくび)(まゐ)りましては、014(さぞ)御迷惑(ごめいわく)でせう。015(しか)しながら、016あたえは本当(ほんたう)のセーリスですから、017(なん)仰有(おつしや)つても侵入(しんにふ)(いた)しますよ』
018主人(しゆじん)許可(きよか)もないのに無断(むだん)闖入(ちんにふ)すると、019治警法(ちけいほふ)嘘八百条(うそはつぴやくでう)によつて告発(こくはつ)してやるぞ。020それでも承知(しようち)なら、021闖入(ちんにふ)なつと乱入(らんにふ)なつと、022やつたら()からう。023アーン、024オホン』
025何方(どなた)()りませぬが、026何卒(どうぞ)這入(はい)(くだ)さいませ。027あなたも矢張(やつぱり)セーリス(ひめ)さまで(ござ)いますか。028(めう)(こと)もあるものですな』
029『ハイ、030有難(ありがた)(ござ)います。031同名(どうめい)同人(どうにん)のセーリス(ひめ)ですよ』
032『こりやこりや女房(にようばう)033オツトセーの(おれ)(こた)へもなく、034勝手(かつて)(をんな)(わが)居間(ゐま)()()れると()(こと)があるか。035婦人(ふじん)道徳(だうとく)をチツトは(かんが)へたがよからうぞ』
036『オホヽヽヽヽようそんな(こと)仰有(おつしや)いますな。037(をんな)居間(ゐま)(をんな)()るのが、038(なに)がそれ(ほど)(わる)いのですか。039貴郎(あなた)如何(どう)です、040(わたし)一人(ひとり)(をんな)居間(ゐま)何時(いつ)もニヨコニヨコやつて()るぢやありませぬか。041(そと)のセーリス(ひめ)さまが御入来(おいで)になるのが不道徳(ふだうとく)ならば、042貴郎(あなた)(はう)余程(よほど)不道徳(ふだうとく)ですわ、043あゝもう貴郎(あなた)御面相(ごめんさう)(にはか)怪体(けたい)になつて()て、044(わたし)()(かく)045(はら)(むし)排日(はいにち)運動(うんどう)をやりかけました。046国際(こくさい)問題(もんだい)(おこ)らぬうちに(はや)退却(たいきやく)して(くだ)さい。047ねえ、048オツトセーのユーフテスさま』
049『こりやこりや女房(にようばう)050(なん)()暴言(ばうげん)()くのだ。051千年(せんねん)万年(まんねん)()うて()れと()つたぢやないか。052心機一転(しんきいつてん)()ふも(じつ)(はなは)だしい』
053()(ひるがへ)せば(あめ)となり、054()(くつが)へせば(かぜ)となる、055(きみ)()ずや管鮑貧時(くわんぱうひんじ)(かう)056(この)(みち)近人(きんじん)すてて(つち)(ごと)し、057オホヽヽヽヽ』
058(をんな)()ふものは本当(ほんたう)(わか)らぬものだな。059八尺(はつしやく)男子(だんし)三寸(さんずん)舌鋒(ぜつぽう)で、060(にく)(えぐ)(ほね)(くじ)き、061()(しぼ)るやうな()()はしやがる。062貴様(きさま)大方(おほかた)化州(ばけしう)だらう。063アーン』
064『ホヽヽヽヽ貴郎(あなた)余程(よほど)頓馬(とんま)ですな、065開闢(かいびやく)以来(いらい)(をんな)化物(ばけもの)()ふぢやありませぬか。066そんな(わけ)(わか)らぬ(やう)野呂作(のろさく)では、067婦人(ふじん)(たい)彼是(かれこれ)()資格(しかく)はありますまい。068ねえ(そと)からお()でやしたセーリス(ひめ)さま、069どつちが化物(ばけもの)だか(わか)つたものぢやありませぬねえ』
070『どうせ化物(ばけもの)ばかりの跳梁跋扈(てうりやうばつこ)する()(なか)ですもの、071このユーフテスさまだつてヤハリ化物(ばけもの)ですわ。072(こひ)()曲者(くせもの)()()誑惑(きやうわく)されて、073三代(さんだい)相恩(さうおん)主人(しゆじん)陰謀(いんぼう)(のこ)らず相手方(あひてがた)密告(みつこく)なさる(やう)()(なか)ですもの、074百鬼昼行(ひやくきちうかう)現代(げんだい)世相(せさう)だから、075如何(いかん)ともする(こと)出来(でき)ますまい。076(これ)から二人(ふたり)(をんな)両方(りやうはう)から(あぶら)(しぼ)つてあげませうか。077(をんな)()()(ふた)()いて真中(まんなか)(をとこ)()をはさむと(なぶ)られるとか()むさうですな。078オホヽヽヽヽ』
079(をとこ)()(ふた)(なら)べて(をんな)一字(いちじ)はさめると(なぶ)るとか()むさうですわ。080(いづ)(こひ)とか(ふな)とかに(なぶ)られてゐる天下(てんか)色男(いろをとこ)だから、081(なぶ)るのも(なぶ)られるのも光栄(くわうえい)でせう。082サア遠慮(ゑんりよ)()りませぬ。083(そと)のセーリス(ひめ)さま、084這入(はい)(くだ)さい』
085(なに)(なん)だか(きつね)(つま)されてる(やう)だ。086ハテ、087如何(どう)したら(この)真偽(しんぎ)(わか)るだらうかな』
088(しき)りに(くび)(ひね)る。089(その)()(そと)(をんな)(ふすま)をガラリと()()け、090()()(やう)にしてユーフテスの(まへ)にドスンと(おと)()てて(すわ)()んだ。091(その)反動(はんどう)でユーフテスは一尺(いつしやく)ばかり(だい)図体(づうたい)()()げられ、092惰力(だりよく)(あま)つて(ふた)()(もち)()きの演習(えんしふ)をやつてゐる。
093『これ、094ユーフテスさま、095怪我(けが)如何(いかが)ですか。096あてえ、097本当(ほんたう)心配(しんぱい)しましたわ』
098『こりやこりや(をんな)099(なに)()かしやがる、100セーリス(ひめ)真似(まね)をしやがつて、101馬鹿(ばか)にするな。102そんな(こと)ちよろまかされる(やう)なユーさまぢやないぞ』
103『ホヽヽヽヽ(すで)(すで)(だま)されてゐるぢやありませぬか。104ユーさまの(した)(にはか)(なほ)つたのは(なん)とお(かんが)へです。105本当(ほんたう)人間(にんげん)なれば、106さう即座(そくざ)神言(かみごと)(とな)へたつて(なほ)るものぢやありますまい。107セーリス(ひめ)ぢやと(おも)うて()なさるのは、108(その)(じつ)狐々(こんこん)さまですよ。109ねえセーリス(ひめ)さま、110さうでせう』
111『お(さつ)しの(とほ)狐々(こんこん)さまかも()れませぬ。112あたい(なん)だか(はだ)(うす)()がモシヤモシヤ()()した(やう)()(いた)しますわ。113オホヽヽヽヽ、114イヤらしいわいの。115こんな()()えたものを、116それでも女房(にようばう)にしてくれると仰有(おつしや)る、117(なみだ)もろい慈悲(じひ)(ぶか)頓馬(とんま)野郎(やらう)があるのですからね。118まるつきり(をんな)でも()てたものぢやありませぬわ。119イヒヽヽヽ』
120『こりやこりや、121セーリス、122到頭(たうとう)貴様(きさま)発狂(はつきやう)しよつたな。123オイ、124ちつとシツカリして()れぬかい』
125『あなた、126チツとシツカリなさいませや。127あてえ(いま)までセーリスさまになつて()けてゐたのよ。128ユーさまの(まつげ)()何本(なんぼん)あると()(こと)も、129みんな()つてゐますわ。130そして()(どく)ながら、131(しり)()一本(いつぽん)もない(やう)頂戴(ちやうだい)しておきました。132ウフヽヽヽヽ』
133 ユーフテスは(にはか)(ふところ)から()(のば)し、134(しり)()をあて、135尻毛(しりげ)有無(うむ)調(しら)べて()136(ゆび)でクツと()()()つて()て、
137『アイタヽヽヤツパリ()依然(いぜん)として蓬々(ぼうぼう)たりだ。138オイ、139セーリス(ひめ)140(はばか)りながら一本(いつぽん)だつて紛失(ふんしつ)はして()ないぞ』
141『オツホヽヽヽ、142いつも肛門(こうもん)から糞出(ふんしゆつ)さして御座(ござ)るぢやありませぬか。143フヽーン』
144『えー(くそ)面白(おもしろ)うもない。145糞慨(ふんがい)(いた)りだ。146オイ、147(そと)から()(をんな)148貴様(きさま)(はや)()んでくれ、149(おれ)家内(かない)貴様(きさま)邪気(じやき)にうたれてサツパリ発狂(はつきやう)して(しま)つた。150アーン、151さあ(はや)()なぬかい』
152 (をんな)(なみだ)をホロホロと(なが)し、153(かな)しさうな(こゑ)で、
154『これ旦那(だんな)さま、155(いえ)オツトセー(さま)156チツト(しつか)りして(くだ)さいませ。157あたいは本当(ほんたう)のセーリス(ひめ)ですよ』
158『これ旦那様(だんなさま)159チツト(しつか)りして(くだ)さいや。160あてえこそ本当(ほんたう)のセーリス(ひめ)よ』
161右左(みぎひだり)よりユーフテスの(そで)()りすがり、162両手(りやうて)一本(いつぽん)づつ(にぎ)つて「ヤイノヤイノ」と()ひながら(かは)つた方面(はうめん)力限(ちからかぎ)りに引張(ひつぱ)る。163ユーフテスの(かひな)関節(くわんせつ)(くろろ)如何(どう)かなつたと()えて、164パチンと(あや)しき(おと)()てた。
165『アイタヽヽヽ()つた()つた、166さう両方(りやうはう)から(かひな)引張(ひつぱ)られちや(をとこ)()たぬぢやないか、167いや(おれ)(からだ)()たぬぢやないか。168(ゆる)(ゆる)せ、169色男(いろをとこ)()ふものは(かな)はぬものぢや。170何故(なぜ)かう(をんな)()れられる(やう)(うま)れて()たのだらう。171二人(ふたり)美人(びじん)()められて、172判別(はんべつ)()かず、173(からす)雌雄(しゆう)()うして識別(しきべつ)()むやだ。174五里霧中(ごりむちゆう)彷徨(はうくわう)するとはこんな(こと)をいふのかな』
175『ホヽヽヽ、176五里霧中(ごりむちゆう)(どころ)無理(むり)夢中(むちう)ですわ。177それも一理(いちり)ありませう。178エヘヽヽヽ、179さあ(あと)のセーリスさま、180(ちから)一杯(いつぱい)可愛(かあい)(をとこ)引張(ひつぱ)つて(くだ)さい。181あたいも引張(ひつぱ)りますから……』
182『アヽヽアイタツタヽヽ()つた()つた、183()てと(まを)さば、184二人(ふたり)女房(にようばう)185(しば)らく()ちやいのう』
186(をんな)『もしユーさま、187両手(りやうて)(はな)188(みぎ)(ひだり)(つき)(ゆき)189貴郎(あなた)(いま)(はな)ですよ。190(をとこ)(うま)れたからは一度(いちど)はこんな(こと)もなくては、191この()(うま)れた甲斐(かひ)がないぢやありませぬか』
192何程(なんぼ)193甲斐(かひ)があると()つても、194さう引張(ひつぱ)られちや(かひな)がなくなるぢやないか。195もうもう(をんな)()()りだ。196只今(ただいま)(かぎ)綺麗(きれい)サツパリと断念(だんねん)する。197さう心得(こころえ)たがよからうぞよ』
198『オホヽヽヽ、199(なん)()(よわ)(をとこ)だこと。200(わづ)二人(ふたり)三人(さんにん)(をんな)(なぶ)られて弱音(よわね)()くとは見下(みさ)げはてたる瓢六玉(へうろくだま)だな。201さうだと()つて、202一旦(いつたん)(おも)()めたユーさまを如何(どう)して(おも)ひきる(こと)出来(でき)ませうぞ。203ねえ、204(あと)から御出(おい)でたセーリスさま、205さうぢやありませぬか』
206本当(ほんたう)意志(いし)薄弱(はくじやく)なユーさまには、207あたいも唖然(あぜん)(いた)しましたよ。208(をんな)にかけたら(をとこ)()(やつ)(はなし)にならぬ(ほど)(よわ)いものですな。209(わたし)だつて一旦(いつたん)約束(やくそく)したユーさまには如何(どう)しても(はな)れませぬわ。210今更(いまさら)(わか)れる(やう)(こと)なら、211(いさざよ)睾丸(きんたま)()んで()んで(しま)ひますよ。212オホヽヽヽ、213これユーさま、214(この)(うち)一人(ひとり)本真物(ほんまもの)215一人(ひとり)化物(ばけもの)だが、216どつちが本真物(ほんまもの)調(しら)べて(くだ)さい』
217『どちらを()ても何処(どこ)(ひと)(かは)つた(てん)がないのだから、218(おれ)(じつ)は、219その真偽(しんぎ)判別(はんべつ)(くる)しんでゐるのだ』
220『それなら、221その真偽(しんぎ)(わか)方法(はうはふ)(をし)へてあげませう。222貴郎(あなた)頬辺(ほほべた)二人(ふたり)(をんな)(つめ)らして御覧(ごらん)223(いた)さのひどい(はう)本物(ほんもの)ですわ。224何程(なにほど)よく()たと()つても、225ヤハリ妖怪(えうくわい)妖怪(えうくわい)226肝腎(かんじん)(とき)(ちから)がありませぬからね』
227『うん、228そりやさうだ。229よい(こと)()かして(くだ)さつた。230それなら両方(りやうはう)頬辺(ほほべた)一時(いつとき)(つめ)つて()い』
231(ちから)一杯(いつぱい)あてえも(つめ)りますから、232セーリス(ひめ)さまも(つめ)つておあげやす。233()()()つ』
234()ひながら二人(ふたり)(をんな)はユーフテスの両方(りやうはう)(ほほ)(ちから)一杯(いつぱい)()ぢる。
235『おー随分(ずゐぶん)(いた)いものだな。236あんまり(いた)くて()(わか)らぬわい。237どちらも(おな)(やう)(いた)さだよ。238オイも(ひと)気張(きば)つて(つめ)つて()い』
239 二人(ふたり)(かほ)見合(みあは)せながら、240(また)グツと(つめ)る。
241『いゝゝゝ(いた)いわい。242あゝゝゝゝもういゝもういゝ、243さつぱり(わか)らぬ。244意地(いぢ)(わる)い、245どつちも(おな)じやうに(いた)いわい。246こりやヤツパリ、247(せん)(かかあ)(うそ)つかぬと()ふから、248(まへ)のが本当(ほんたう)だらう。249オイ(あと)(やつ)250今日(けふ)から(ひま)をくれてやるからトツトと(かへ)れ』
251『いえいえ、252(なん)仰有(おつしや)つても、253これが如何(どう)して(かへ)られませうか。254(あね)のヤスダラ(ひめ)(さま)(たい)しても(あは)(かほ)がありませぬ。255父様(とうさま)(まへ)にも(おほ)きな(かほ)して(かへ)られませぬ。256それなら何卒(どうぞ)あなたの()にかけて(ころ)して(くだ)さい。257それがせめても貴方(あなた)御親切(ごしんせつ)(ござ)います。258オホヽヽヽヽ』
259益々(ますます)(わか)らぬ(やう)になつて()よつた。260オイ一寸(ちよつと)()つてくれ、261両人(りやうにん)262(これ)から手水(てうづ)使(つか)つて()て、263沈思黙考(ちんしもくかう)せなくちや真偽(しんぎ)審神(さには)出来(でき)ないわ』
264セーリス『あなた(いま)まで活動(くわつどう)なさつた(こと)(つい)最善(さいぜん)(つく)したと(おも)つて()ますか。265(あるひ)横道(よこみち)(とほ)つたとお(かんが)へにはなりませぬの。266それを一寸(ちよつと)()かして(くだ)さいな』
267縦横無尽(じうわうむじん)活動(くわつどう)するのが智者(ちしや)(みち)だ。268(たて)(よこ)もあつたものかい。269正邪不二(せいじやふじ)270明暗一如(めいあんいちによ)だ。271()(かく)(ぜん)目的(もくてき)(たつ)しさへすれば、272それが神様(かみさま)(たい)して孝行(かうかう)となるのだ。273(この)ユーフテスは悪逆無道(あくぎやくぶだう)右守(うもり)(かみ)陰謀(いんぼう)探査(たんさ)して、274王様(わうさま)(ため)獅子(しし)奮迅(ふんじん)活動(くわつどう)をやつてゐるのだから、275(けつ)して(わる)行動(かうどう)をとつたとは微塵(みじん)(おも)つて()ないよ。276忠臣(ちうしん)(かがみ)()ふのは、277天下(てんか)(ひろ)しと(いへど)(この)ユーフテスより(ほか)にはないからな。278(これ)から三十万年(さんじふまんねん)未来(みらい)になると、279(しん)予譲(よじやう)だとか、280楠正成(くすのきまさしげ)とか大石凡蔵之助(おほいしぼんくらのすけ)とかが(あら)はれて、281忠臣(ちうしん)()(ほしいまま)にする時代(じだい)()るが、282今日(こんにち)では(まさ)(おれ)一人(ひとり)だ。283(この)忠臣(ちうしん)(をつと)()つセーリス(ひめ)余程(よほど)果報者(くわほうもの)だ。284義太夫(ぎだいふ))「女房(にようばう)(よろこ)べユーフテスは王様(わうさま)のお(やく)()つたぞや…………とズツと(とほ)るは松王丸(まつわうまる)285源蔵(げんざう)夫婦(ふうふ)二度(にど)ビツクリ、286(ゆめ)(うつつ)夫婦(ふうふ)かと(あき)れはてたるばかりなり」と()次第柄(しだいがら)だ。287ウツフヽヽヽ』
288 セーリス(ひめ)はユーフテスの横面(よこづら)平手(ひらて)でピシヤピシヤと(なぐ)りながら、
289『これユーさま、290おきやんせいな。291(なに)をユーフテスのだい。292()かぬたらしい』
293(をんな)『イツヒヽヽヽ、294それなら化物(ばけもの)のセーリスさまは一先(ひとま)(ばけ)(あら)はして退却(たいきやく)(いた)します。295ユーフテスさま、296()()けて御覧(ごらん)297あてえ、298こんな(もの)ですよ』
299(はな)(はぢ)らふ(やう)美人(びじん)(たちま)ちクレツと(しり)(まく)り、300ユーフテスの()(まへ)につき()した。301()れば真白(まつしろ)()密生(みつせい)し、302(ふと)(しろ)尻尾(しりを)がブラ(さが)つてゐる。303ユーフテスは「アツ」と(さけ)んで(その)()顛倒(てんたふ)した。304(をんな)(たちま)巨大(きよだい)なる白狐(びやくこ)(くわ)し、305セーリス(ひめ)叮嚀(ていねい)辞儀(じぎ)をしながら、306ノソリノソリと(この)()()つて何処(どこ)ともなく姿(すがた)(かく)した。
307『オホヽヽヽ、308まアまア(あさひ)さまのお(ばけ)上手(じやうず)(こと)309()うなると自分(じぶん)白狐(びやくこ)になつて()たいわ。310どれどれユーフテスの(たふ)れてる(あひだ)に、311(ひと)()けて()ようかな』
312()ひながら(にはか)鏡台(きやうだい)(まへ)(すわ)り、313(きつね)(かほ)(つく)()へ、314ユーフテスの面部(めんぶ)清水(せいすゐ)()きかけた。315ユーフテスはウンウンと(うめ)くと(とも)()(あが)り、316()をパチつかせてゐる。317セーリス(ひめ)(きつね)(つく)つた(かほ)をニユツと()し、
318『これユーさま、319()がつきましたか。320ホヽヽヽヽ』
321 ユーフテスはセーリス(ひめ)姿(すがた)()二度(にど)ビツクリし、
322『やあ此奴(こいつ)(たま)らぬ』
323とノタノタノタと自分(じぶん)(きつね)(やう)()()し、324長廊下(ながらうか)をさして(おの)(やかた)()げて()く。
325大正一一・一一・一五 旧九・二七 北村隆光録)