霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 酒月(さかづき)〔一一四二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻 篇:第4篇 怨月恨霜 よみ:えんげつこんそう
章:第17章 第42巻 よみ:さかづき 通し章番号:1142
口述日:1922(大正11)年11月24日(旧10月6日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
冬のはじめ、イルナ城の門番のミルとボルチーは、日没後の無沙汰に酒を飲んで天下について議論をなし、いつしか脱線話になっていった。
ミルは酔いつぶれてしまい、ボルチーは門を開けて月下に涼んでいた。そこへカールチンが、黒装束の武装した部下十数人を連れてやってきた。マンモスは、ボルチーに開門を命じた。
ボルチーがすでに門は開いていると答えると、黒装束の一行は城内に進んで行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4217
愛善世界社版:202頁 八幡書店版:第7輯 715頁 修補版: 校定版:207頁 普及版:86頁 初版: ページ備考:
001 (ころ)しも(ふゆ)(はじ)め、002木枯(こがらし)樹々(きぎ)(わた)(こゑ)猛獣(まうじう)()(たけ)るが(ごと)(はげ)しき夕間暮(ゆふまぐれ)003イルナ(じやう)表門(おもてもん)警固(けいご)してゐたミル、004ボルチーの両人(りやうにん)は、005門番(もんばん)(つね)として無聊(むれう)(なぐさ)むる()め、006(あさ)から(ばん)まで()()つ、007将棋(しやうぎ)をさす、008日没後(にちぼつご)最早(もはや)(もん)開閉(かいへい)(えう)しないので、009(きつ)(さけ)舌鼓(したつづみ)()ち、010下宿(げしゆく)二階(にかい)天下(てんか)(ろん)ずる書生(しよせい)気分(きぶん)になり、011(しやう)にも似合(にあ)はぬ議論(ぎろん)(とき)(うつ)してゐた。
012『オイ、013ボルチー、014今日(けふ)(ひさ)しぶりでセーラン王様(わうさま)沢山(たくさん)御家来(ごけらい)をつれてお(かへ)(あそ)ばしたので、015俺達(おれたち)(なん)とはなしに、016其処等(そこら)(ぢう)(あたた)かい気分(きぶん)になつて()たよ。017肝腎(かんじん)主人(しゆじん)不在(ふざい)だと、018何処(どこ)ともなしに(つめ)たい(さび)しいものだ。019(ひと)今日(けふ)(いはひ)に、020トロツピキ()(こと)にしようかい』
021(なん)だか(おれ)(さけ)加減(かげん)で、022(つめ)たい(からだ)(あたた)かうなつて()たよ。023(しか)しながら貴様(きさま)024()いてるだらうが、025あのカールチンにお(くらゐ)(ゆづ)らるると()(こと)だが、026実際(じつさい)だらうかな。027(なん)(また)物好(ものず)きな、028王位(わうゐ)()てて、029あんな(うけ)のよくないカールチンに(くらゐ)(ゆづ)つたりなさるのだらう。030(あんま)()(なか)物騒(ぶつそう)なので、031政治(せいぢ)にお()(あそ)ばして、032吾々(われわれ)臣下(しんか)国民(こくみん)()て、033山林(さんりん)隠遁(いんとん)して光風霽月(くわうふうせいげつ)(とも)とすると()風流(ふうりう)生活(せいくわつ)(おく)られる(かんが)へだらうかな』
034(なん)()つても、035時節(じせつ)(ちから)には神様(かみさま)でも(かな)はぬのだから仕方(しかた)がないさ。036禅譲放伐(ぜんじやうはうばつ)()つて、037何時(いつ)(まで)()()ちきりと()(こと)はない。038あひさに(あたま)(かは)るのも(また)人気(にんき)(あたら)しくなつて()いかも()れないよ。039カールチンさまも、040矢張(やつぱり)神界(しんかい)御都合(ごつがふ)刹帝利(せつていり)にお()(あそ)ばす時節(じせつ)()たのだらう』
041左守司様(さもりのかみさま)差措(さしお)いて一段下(いちだんした)右守司様(うもりのかみさま)(くらゐ)(ゆづ)られるとは、042チツと順序(じゆんじよ)(ちが)ふぢやないか』
043漢朝(かんてう)帝尭(ていげう)()天子(てんし)があつた。044在位(ざいゐ)七十年(しちじふねん)045(とし)(すで)()いたれば、046何人(なにぴと)天下(てんか)(ゆづ)るべきかと大臣(だいじん)()御尋(おたづ)ねになつた。047大臣(だいじん)(みな)(へつら)つて、048(さいはひ)皇太子様(くわうたいしさま)御在(おは)しまさば、049丹朱(たんしゆ)にこそ御譲(おゆづ)りなさいませと申上(まをしあ)げた。050さうすると帝尭(ていげう)といふ天子(てんし)(げん)に、051天下(てんか)(これ)一人(いちにん)天下(てんか)ではない、052(なに)(もつ)てか(わが)太子(たいし)なればとて、053(とく)()らず(まつりごと)真義(しんぎ)()らないものに(くらゐ)(ゆづ)り、054四海(しかい)(たみ)(くる)しむべきやと(あふ)せられ、055皇太子(くわうたいし)たる丹朱(たんしゆ)(ゆづ)(たま)はず、056何処(いづこ)()賢人(けんじん)あらむと、057隠遁(いんとん)(もの)までも(たづ)(たま)ひ、058(つひ)箕山(きざん)といふ(ところ)に、059許由(きよいう)といふ賢人(けんじん)()()(ひかり)(つつ)み、060(ただ)(こけ)(ふか)(まつ)()せたる(いは)(うへ)一瓢(いつぺう)()け、061瀝々(れきれき)たる(かぜ)(おと)人間(にんげん)迷情(めいじやう)(ゆめ)(さま)して()た。062帝尭(ていげう)(これ)(きこ)しめして勅使(ちよくし)()て、063御位(みくらゐ)(ゆづ)るべき(よし)(あふ)(いだ)されたが、064許由(きよいう)(つひ)(みことのり)(こた)へず、065(あま)つさへ、066松風渓水(しようふうけいすゐ)(きよ)(おと)()きて折角(せつかく)(さはや)かになつた(みみ)が、067富貴栄華(ふうきえいぐわ)(いや)しき(こと)()かされて、068(こころ)までが(けが)れたやうだ、069()つて穎川(えいせん)(みづ)(みみ)(あら)つて()た。070(おな)山中(さんちう)()()隠居(いんきよ)して()巣父(さうふ)といふ賢人(けんじん)(うし)()いて(きた)り、071(みづ)()まさむとして、072許由(きよいう)(しき)りに(みみ)(あら)つて()るのを()て、073何故(なにゆゑ)(なんぢ)(みみ)(あら)つて()らるるか、074不思議(ふしぎ)さうに(たづ)ねた。075そこで許由(きよいう)は、076帝尭(ていげう)(われ)天下(てんか)(ゆづ)らむと(あふ)せられたのを()いて、077(みみ)(けが)れたやうな心地(ここち)がしてならないから、078(みみ)(あら)つて()るのだと(こた)へた。079巣父(さうふ)もまた(くび)()つて、080如何(いか)にもそれでこの水流(すゐりう)(つね)より(にご)つて()えたのだなア、081左様(さやう)(けが)れた(みみ)(あら)つた(みづ)(うし)()ますと大事(だいじ)(うし)(けが)れると()つて、082(うし)()()れて(かへ)つて(しま)つた。083そこで帝尭(ていげう)(さま)が、084ハテ(こま)つたことだ、085この天下(てんか)(たれ)(ゆづ)つたが()からうかと、086四方(しはう)八方(はつぱう)(くま)なく(たづ)(もと)(たま)うた結果(けつくわ)は、087冀州(きしう)虞舜(ぐしゆん)といふ(いや)しい(ひと)があつた。088その(ひと)(ちち)盲目者(めくら)なり、089(はは)精神(せいしん)ねぢけて忠信(ちうしん)(げん)(まも)らず、090徳義(とくぎ)(けい)(のつと)らずといふ(をんな)なり、091その(おとうと)(しやう)といふ驕慢悖戻(けふまんはいれい)曲者(くせもの)であつた。092(ひと)虞舜(ぐしゆん)のみは孝行(かうかう)(こころ)(ふか)くして、093父母(ふぼ)(やしな)はむが(ため)歴山(れきざん)()つて(たがや)すに、094(その)()人々(ひとびと)はその(とく)感動(かんどう)して(くろ)(ゆづ)り、095雷沢(らいたく)(くだ)つて(すなど)(とき)(その)(うら)人々(ひとびと)(きよ)(ゆづ)り、096河浜(かひん)(すえもの)するに器皆苦窪(うつはみなゆがみいじま)からず、097(しゆん)()きて()(ところ)二年(にねん)()れば(いふ)をなし、098三年(さんねん)あれば()()すといふ調子(てうし)で、099万人(まんにん)(その)(とく)(した)つて()たといふ立派(りつぱ)(ひと)である。100(とし)二十(はたち)(とき)には孝行(かうかう)(ほまれ)天下(てんか)(きこ)えたので、101帝尭(ていげう)(さま)(この)(をとこ)天下(てんか)(ゆづ)らむと思召(おぼしめ)して、102()内外(ないぐわい)()いて、103(その)(おこな)ひを()むと(ほつ)し、104娥皇女(がくわうぢよ)105(えい)といふ姫宮(ひめみや)二人(ふたり)まで(しゆん)(めあは)せられた。106そして(その)御子(みこ)九人(くにん)(しゆん)臣下(しんか)として(その)左右(さいう)(つつし)(したが)はせられた(こと)が、107三十万年(さんじふまんねん)未来(みらい)支那国(しなこく)にあつた。108カールチン(さま)矢張(やつぱり)神徳(しんとく)()つて王様(わうさま)から(くらゐ)(ゆづ)られ(たま)ふのだから、109(たい)したものだなア、110ゲーウツプーガラガラガラ、111(また)しても(さけ)(やつ)112天気(てんき)(わる)いので逆流(ぎやくりう)して()よつた。113アーン』
114(めう)(ところ)(はなし)()つて()くぢやないか。115(しか)しながら漢朝(かんてう)帝尭(ていげう)といふ王様(わうさま)(かは)つたものだな。116一点(いつてん)私利私欲(しりしよく)もなく、117子孫(しそん)()めに美田(びでん)()ふと()(やう)利己主義(りこしゆぎ)微塵(みじん)もなく、118聖人(せいじん)賢人(けんじん)()(ゆづ)つて世界(せかい)万民(ばんみん)安堵(あんど)させようと(あそ)ばす(その)御精神(ごせいしん)は、119人主(じんしゆ)たるものの模範(もはん)とすべきものではないか。120(わが)セーラン王様(わうさま)も、121さうするとヤツパリ帝尭(ていげう)(さま)(やう)名君(めいくん)だと()えるな。122(しか)しながら(おれ)(かんが)へでは右守司(うもりのかみ)のカールチンは、123それ(ほど)聖人(せいじん)賢人(けんじん)ぢやと(おも)(こと)出来(でき)ないわ。124(ただ)サマリー(ひめ)(さま)のお(とう)さまだと()(てん)が、125ひつかかりで、126刹帝利(せつていり)(ゆづ)られるのかも()れぬ。127それだつたら吾々(われわれ)(はじ)国民(こくみん)大変(たいへん)迷惑(めいわく)をせなくてはなるまいぞ』
128『そんな(こと)吾々(われわれ)門番(もんばん)(わか)つて(たま)らうかい。129善悪正邪(ぜんあくせいじや)(かみ)でなければ(わか)るものぢやないよ。130(いや)しき臣下(しんか)分際(ぶんざい)として、131そんな(こと)非難(ひなん)してみた(ところ)()突張(つつぱ)りにもなりやせぬわ。132それよりも機嫌(きげん)よく磐若湯(はんにやたう)()(あが)つたら如何(どう)だい』
133(その)許由(きよいう)()(やつ)134賢人(けんじん)()らぬが、135(おれ)から()ると余程(よつぽど)いゝ馬鹿(ばか)だなア。136普天(ふてん)(した)137率土(そつと)(ひん)138(みな)王臣王土(わうしんわうど)(あら)ざるなしと()ふぢやないか。139その王様(わうさま)御守護(ごしゆご)(あそ)ばす山林(さんりん)にもせよ、140国土(こくど)()みながら(わう)勅命(ちよくめい)拝受(はいじゆ)せず、141一箪(いつたん)(しい)142一瓢(いつぺう)(いん)143光風霽月(くわうふうせいげつ)(たの)しむと()ふ、144利己主義(われよし)仙人(せんにん)気取(きど)りになつて、145国家(こくか)忘却(ばうきやく)すると()馬鹿者(ばかもの)何処(どこ)にあるか。146(いま)(やつ)はさう()拗者(すねもの)()して聖人(せいじん)賢人(けんじん)()てはやしてゐる(やつ)(おほ)いからサツパリ(あき)れて(しま)ふわ。147巣父(さうふ)巣父(さうふ)で、148(にな)うたら(ぼう)()れる(やう)馬鹿者(ばかもの)だ。149余程(よつぽど)貧乏相(びんぼふさう)()えるわい。150(みみ)(あら)うた川水(かはみづ)(うし)()ますと(うし)(けが)れるなんて、151何処(どこ)まで馬鹿(ばか)だか見当(けんたう)がつかぬぢやないか。152そこになると虞舜(ぐしゆん)(えら)いわい。153王様(わうさま)姫君(ひめぎみ)二人(ふたり)まで女房(にようばう)(もら)ひ、154到頭(たうとう)天下(てんか)をゾロリと頂戴(ちやうだい)したのだから、155俺等(おれたち)から(かんが)へて()ると余程(よほど)理想的(りさうてき)人物(じんぶつ)だ。156末代(まつだい)(まで)尭舜(げうしゆん)()()つて、157かけかまへのない後世(こうせい)人間(にんげん)にまで持囃(もてはや)される(やう)になつたのも、158ヤツパリ虞舜(ぐしゆん)円転滑脱(ゑんてんくわつだつ)159自由自在(じいうじざい)身魂(みたま)(はたら)きをやつたからだ。160許由(きよいう)161巣父(さうふ)なんて、162(しゆん)(くら)ぶればお(はなし)にならぬぢやないか』
163『そらさうだ。164(おれ)でも許由(きよいう)だつたら、165(みみ)(あら)(どころ)(ふた)返事(へんじ)で、166(ねこ)鰹節(かつをぶし)()びついた(やう)にニヤンのカンのなしにチユウチユウチユウと()ひつくのだけどな。167(しか)しカールチン(さま)もヤツパリ虞舜流(ぐしゆんりゆう)だ。168(いち)()もなく刹帝利(せつていり)()けるのだからヤツパリ(えら)いわい。169三百余騎(さんびやくよき)()(かか)へ、170うまく大黒主(おほくろぬし)喉元(のどもと)()()睾丸(きんたま)(にぎ)つてゐるのだから、171今日(こんにち)(うん)()いて()たのだ。172左守(さもり)さまの(やう)(へい)凶器(きやうき)(なり)173(まこと)(みち)(もつ)(たみ)(をさ)むるに軍人(ぐんじん)(など)()るものかと()つて、174王様(わうさま)(はじ)自分(じぶん)(まで)軍人(ぐんじん)らしきものをお(かか)(あそ)ばさぬのだから、175()むを()(とき)(いきほひ)(かう)すべからずと()塩梅(あんばい)譲位(じやうゐ)さるる(こと)になつたのだらうよ。176これを(おも)へばヤツパリ人間(にんげん)勢力(せいりよく)肝腎(かんじん)だ。177交際術(かうさいじゆつ)(ちやう)じ、178権門勢家(けんもんせいか)()()り、179(かしら)(かたむ)け、180敏捷(すばしこ)くまはるのが社会(しやくわい)勝利者(しようりしや)だ』
181『オイ、182ミル、183貴様(きさま)はカールチンさまが刹帝利(せつていり)になられても、184ヤツパリ神妙(しんめう)門番(もんばん)(つと)める(かんが)へか。185よもや、186そんな馬鹿(ばか)(こと)はしよまいね。187忠臣(ちうしん)二君(にくん)(つか)へずと()(こと)があるからな』
188『そんなことは(いま)発表(はつぺう)する(かぎ)りでないわい。189(おれ)(おれ)としての(ひとつ)見識(けんしき)()つてゐるのだから……()大分(だいぶ)()けて()(やう)だ。190ドレ、191モウ(やす)まうぢやないか』
192()ふかと(おも)へば、193(その)(まま)ゴロンと()(たふ)れ、194白河夜船(しらかはよぶね)()いで(たちま)華胥(くわしよ)(くに)()つて(しま)つた。195ボルチーはミルの高鼾(たかいびき)寝就(ねつ)かれず、196微酔(ほろよひ)機嫌(きげん)(くぐ)(もん)をガラリと()け、197ほてつた(かほ)夜風(よかぜ)にさらし(よひ)()まさむと、198ブラリブラリと門前(もんぜん)迂路(うろ)つき(はじ)めた。199折柄(をりから)(くも)(はい)して(あら)はれた(つき)(ひかり)容赦(ようしや)なくボルチーの(かしら)()らした。
200『あゝあ、201いゝ気分(きぶん)だ。202(あき)(つき)気分(きぶん)()いが、203(ふゆ)()(そら)にかかる(つき)は、204何処(どこ)ともなしに凄味(すごみ)があつて(これ)(また)一種(いつしゆ)風流(ふうりう)だ。205(つき)()餓鬼(がき)や、206いつ()ても、207あまり気分(きぶん)(わる)くないものだ。208(その)(かは)りに日天様(につてんさま)(くら)ぶれば()()かぬこたア(おびただ)しい。209豆明月(まめめいげつ)だとか、210薯明月(いもめいげつ)だとか、211月見(つきみ)(えん)だとか、212(なん)だとか()つて、213人間(にんげん)さまの翫弄(おもちや)にしられて平気(へいき)平座(へいざ)(そら)(ひか)へてゐるのだからなア。214ゲー、215ガラガラガラ、216あゝあ(くる)しい(くる)しい、217あまり(つき)叱言(こごと)()つたので、218嘔吐(へど)つきさうだ。219サツパリ嘔吐(へど)つき220間誤(まご)つき221きよろつきさがして、222()つき(わる)くて、223こんな(ところ)までつき()されて()たのだな。224日天様(につてんさま)()ふお(かた)神威(しんゐ)赫々(くわくくわく)として(をか)すべからず、225日中(ひなか)(つき)さまの(やう)酒肴(さけさかな)(こしら)へて、226日輪見(にちりんみ)をしようと()つてお(かほ)(をが)まうものなら、227(たちま)()(くら)くなり、228(あたま)はガンガンする、229神罰(しんばつ)覿面(てきめん)(あた)る。230大自在天(だいじざいてん)(さま)日輪様(にちりんさま)だ。231三五教(あななひけう)月天様(みろくさま)だと()つてゐるが、232大自在天(だいじざいてん)弥勒(みろく)さまとは、233これだけ神力(しんりき)(ちが)ふのだから、234ヤツパリ俺達(おれたち)(ほう)ずるバラモン(けう)天下一品(てんかいつぴん)(をしへ)だ』
235(くだ)()一人(ひとり)(さへづ)つてゐる。
236 そこへ(あわただ)しく十数人(じふすうにん)部下(ぶか)引率(ひきつ)れやつて()たのは、237失恋組(しつれんぐみ)大将(たいしやう)カールチンを(はじ)め、238ユーフテス、239マンモスの面々(めんめん)であつた。240ボルチーは先頭(せんとう)()つたマンモスにドンと突当(つきあた)り、241ヒヨロ ヒヨロ ヒヨロと五歩六歩(いつあしむあし)(あと)しざりしながら、242路傍(ろばう)枯草(かれくさ)(うへ)にドスンと(こし)(おろ)した。243(くさ)(うへ)には(しも)(つるぎ)(つき)()らされて(きら)めいてゐる。
244『あいたゝゝ、245(たれ)ぢやい、246(ひと)衝突(しようとつ)しやがつて、247御免(ごめん)なさいと(ぬか)さぬかい、248アーン。249礼儀(れいぎ)()らぬも(ほど)があるわい。250一体(いつたい)きゝゝ貴様(きさま)はいゝゝ一体(いつたい)何処(どこ)馬骨(ばこつ)だ。251(おれ)何様(どなた)心得(こころえ)てゐる。252勿体(もつたい)なくもイルナ(じやう)門番(もんばん)のボルチーさまだぞ』
253マンモス『ヤア、254よい(ところ)()うた。255貴様(きさま)256これから俺等(おれたち)先頭(せんとう)をして表門(おもてもん)(ひら)くのだ。257サア()てい』
258(おれ)はチツとばかり酩酊(めいてい)してゐるから、259(しばら)此処(ここ)(つき)(なが)(よひ)()ますから、260(さき)()つてくれ。261(くぐ)(もん)(ひら)いておいたから……ヤア(なん)沢山(たくさん)黒頭巾(くろづきん)だなア』
262マンモス『(ちか)未来(みらい)刹帝利(せつていり)カールチン(さま)のお(とほ)りだ』
263肩肱(かたひじ)(いか)らし、264一行(いつかう)(とも)城内(じやうない)さして(すす)()る。
265大正一一・一一・二四 旧一〇・六 北村隆光録)