霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 怯風(けふふう)〔一一八五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第44巻 舎身活躍 未の巻 篇:第3篇 珍聞万怪 よみ:ちんぶんばんかい
章:第16章 第44巻 よみ:きょうふう 通し章番号:1185
口述日:1922(大正11)年12月09日(旧10月21日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年8月18日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
万公はうら寂しく、寝付かれずに一行の寝息をうかがいながら夜明けを待っている。このさびしい森でぐっすり寝ている連れの三人の肝の太さに感心し、我が身を省みて、言霊を打ち出してみることにした。
そうするうちに、五三公は幽霊の夢に驚いて目を覚ました。五三公は不安そうに治国別はちゃんとここに寝ているだろうかと万公に尋ねた。五三公と万公は寝られずに話を続けている。
すると少し離れたところで何かひそひそと人声が聞こえてきた。万公と五三公は口をつぐんで耳を傾けた。これはバラモン教の斥候、アク、タク、テクであった。三人は昨晩、鬼娘におどかされた後に、三五教の宣伝歌で追い散らされて恐ろしい目にあったとびくついている。
万公と五三公は、鬼の夫婦の真似をして三人を驚かせた。アク、テク、タクは腰が抜けてその場から動けなくなってしまった。そこへ月の光が照らして、一同の顔は互いに明らかになった。
万公と五三公は竜彦と起こそうとしたが、どうしたわけか治国別と竜彦の姿が見えない。代わりに起きてきたのは松彦であった。二人は松彦に、腰が抜けて動けなくなっているバラモン軍の三人を見せた。
松彦はアク、テク、タクの三人を安堵させて、一緒に話をするようにと打ち解けた。万公と五三公も三人を受け入れることとし、五三公はこの場のなごやかな空気に思わず愉快気に笑い出した。
この笑い声はあたりの陰鬱を破り、一同はにわかに陽気となって敵味方声をそろえて高笑いをした。今まで我が物顔にこずえを飛び交っていた猿どもは一度に声を潜めてしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4416
愛善世界社版:212頁 八幡書店版:第8輯 213頁 修補版: 校定版:222頁 普及版:91頁 初版: ページ備考:
001(つめ)たき初冬(しよとう)(こがらし)
002()かれて()()村時雨(むらしぐれ)
003治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)
004珍彦(うづひこ)親子(おやこ)河鹿山(かじかやま)
005(のぼ)(ぐち)まで(おく)りつけ
006万公(まんこう)五三公(いそこう)竜公(たつこう)
007松彦(まつひこ)(ひき)つれ大野原(おほのはら)
008時雨(しぐれ)(をか)して(すす)()
009(あゆ)みも(はや)山口(やまぐち)
010(もり)をば右手(めて)(なが)めつつ
011草野(くさの)()けてやうやうに
012野中(のなか)(もり)到着(たうちやく)
013(あや)しき(こゑ)()(しげ)
014()(しの)びつつ(うかが)へば
015(おに)をもひしぐ荒男(あらをとこ)
016一人(ひとり)のか(よわ)(をんな)をば
017(とら)へて無体(むたい)打擲(ちやうちやく)
018なし()れるこそ(うた)てけれ
019治国別(はるくにわけ)木蔭(こかげ)より
020(この)惨状(さんじやう)一瞥(いちべつ)
021(その)成行(なりゆき)(まか)(うち)
022(をんな)(たちま)白煙(はくえん)
023なつて()えしと(おも)()
024(おも)ひもよらぬ白狐(しろぎつね)
025のそりのそりと()(いだ)
026野中(のなか)()して()げて()
027七八人(しちはちにん)荒男(あらをとこ)
028(たがひ)棍棒(こんぼう)ふりかざし
029(まなこ)くらみて同士打(どうしうち)
030(いど)(たたか)可笑(をか)しさに
031万公(まんこう)さまは()きいだす
032治国別(はるくにわけ)松彦(まつひこ)
033五三公(いそこう)竜公(たつこう)もこらえかね
034(おも)はず()らず()()せば
035(をとこ)(おどろ)(くも)(かすみ)
036(もり)(おく)へと一散(いつさん)
037(いのち)からがら()げて()
038治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)
039月日(つきひ)白狐(びやくこ)出現(しゆつげん)
040驚異(きやうい)(まなこ)()はりつつ
041白狐(びやつこ)(あと)伏拝(ふしをが)
042(もり)広場(ひろば)(みの)()
043天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)
044生言霊(いくことたま)(とな)へつつ
045一夜(いちや)(ここ)()かさむと
046(ひぢ)(まくら)(よこ)たはる
047(つめ)たき(かぜ)容赦(ようしや)なく
048(もり)(こずゑ)(ゆる)がして
049ザワザワザワと()()てる
050彼方(あなた)此方(こなた)にキヤツ キヤツと
051(きこ)ゆる(こゑ)山猿(やまざる)
052(ただし)魔神(まがみ)襲来(しふらい)
053只事(ただごと)ならじと万公(まんこう)
054一人(ひとり)(むね)をば(をど)らせて
055(ねむ)りもえせずパチパチと
056()繁叩(しばたた)(すわ)りゐる。
057 万公(まんこう)(なん)となく、058(うら)(さび)しく、059(おも)(やう)()つかれねば、060(よこ)になつて()たり、061(すわ)つて()たり、062一行(いつかう)寝息(ねいき)(うかが)つたりなどして、063()()けるのを一時(いつとき)(はや)かれと()つてゐる。
064先生(せんせい)()ひ、065松彦(まつひこ)さまと()ひ、066肝玉(きもだま)(ふと)(かた)(ばか)り、067()他愛(たあい)もなく()(しま)はれては(さび)しい(こと)だわい、068(おり)(また)()うして()られぬのか()らぬがなア、069昨夜(さくや)のやうに(また)もや(かへで)化者(ばけもの)がやつて()よつたなら、070おらモウ、071仮令(たとへ)真人間(まにんげん)であらうと辛棒(しんぼう)出来(でき)ないワ。072七八分(しちはちぶ)(まで)肝玉(きもだま)をどつかへやつて(しま)つたのだから、073(つよ)(さう)()うてるものの、074実際(じつさい)はビクビクものだ、075(たれ)()きて(くだ)さらぬかいなア。076折角(せつかく)安眠(あんみん)(ゆす)(おこ)してお目玉(めだま)頂戴(ちやうだい)してはたまらないし、077(なん)だか首筋元(くびすぢもと)がゾクゾクして()だした。078(たれ)(もの)()(やつ)一人(ひとり)あると、079(たがひ)(かた)()うて(この)(さび)しさを(まぎ)らすのだけれど(いびき)(ばか)りでは()つから有難(ありがた)くないわい。080五三公(いそこう)(やつ)081怪体(けたい)(いびき)()しよつて、082(なん)だ。083がらがらがらがらといふ(いびき)がどこにあるかい。084グツグツグツグツと(はな)()らしてゐるのは、085コリヤ竜公(たつこう)だろ、086(まる)でお(かゆ)をたいた(やう)(こゑ)()しよる。087エヽ、088こンな(こゑ)()くと益々(ますます)(さび)しうなつて()た。089(ひと)(はな)でも()まンで(おこ)してやろかな、090(おこ)つたら(つみ)のない喧嘩(けんくわ)(はじ)める(まで)(こと)だ。091(なん)とかして(まぎ)らさなくちや、092仕方(しかた)がないワ。093オウさうださうだ、094言霊(ことたま)(わす)れて()つた。095夜前(やぜん)先生(せんせい)()いた言霊(ことたま)(ひと)打出(うちだ)して()よう。096さうすれば、097陰鬱(いんうつ)空気(くうき)がどつかへ退散(たいさん)し、098(おれ)気分(きぶん)もさえるだろ。099エーエ、100副守(ふくしゆ)(やつ)101(はや)から()(ごゑ)()しよる。102おりやそンな(よわ)(をとこ)だないが、103怪体(けたい)(わる)い、104(よわ)つたらしい守護神(しゆごじん)がくつついてると()えるわい』
105 五三公(いそこう)昨夜(さくや)(ゆめ)()たと()え、106いやらしい(こゑ)()して、
107『キヤア、108幽霊(いうれい)だア、109鬼娘(おにむすめ)だア、110オイ万公(まんこう)111ウニヤ ウニヤ ウニヤ』
112『アヽア、113(また)ビツクリさしよつたナ、114此奴(こいつ)(ひと)(ゆす)(おこ)してやろ、115(おそ)はれてけつかるのだろ。116オイオイ五三公(いそこう)117()きたり()きたり、118万公(まんこう)さまだぞ、119大変(たいへん)(うな)されてるぢやないか』
120『あ……、121(おそ)ろしことだつた。122よう(おこ)してくれた。123万公(まんこう)124(まへ)(また)無事(ぶじ)()つたのか。125マアそれで安心(あんしん)だ』
126無事(ぶじ)()つたかて、127……(めう)(こと)()ふぢやないか、128(おれ)(ゆめ)でも()たのかい』
129『ウーン、130()()た、131貴様(きさま)はなア、132昨夜(さくや)()うた(かへで)さまの変装(へんさう)以上(いじやう)の……(いや)らしい怪物(くわいぶつ)(あら)はれて、133赤黒(あかぐろ)(やせ)()()して、134貴様(きさま)()(くび)をグツと(にぎ)り、135山奥(やまおく)へひつ(さら)へて()つた(ゆめ)()たのだ。136(その)(とき)にキヤアキヤアとお(まへ)()(こゑ)(なん)とも()れぬ(いや)らしかつたよ。137まだ(たれ)かキヤアキヤア()つてるぢやないか』
138 万公(まんこう)身慄(みぶる)ひし(なが)ら、
139貴様(きさま)身魂(みたま)(くも)つて()るから、140そンなケヽ怪体(けたい)な、141悪夢(あくむ)(おそ)はれるのだ。142キヤツ キヤツ()うてるのは(さる)(こゑ)だよ。143オイちとしつかりせぬかい。144エヽー、145万公(まんこう)だつて気味(きみ)(わる)て、146たまらぬぢやないか。147せうもない(ゆめ)()かされて……』
148 五三公(いそこう)不安(ふあん)さうに、
149先生(せんせい)此処(ここ)()られるかなア』
150()られえでかい。151(げん)(この)(とほ)(いびき)がしてるぢやないか。152(あま)(くら)くつてお姿(すがた)はハツキリせぬが、153大抵(たいてい)(いびき)(わか)つてるわ』
154『さうだらうかなア。155(おれ)(ゆめ)には、156貴様(きさま)化物(ばけもの)引掴(ひつつか)まれ、157キヤアキヤア()つて()げた(とき)158治国別(はるくにわけ)先生(せんせい)松彦(まつひこ)さまとが、159(あと)()つかけて()つて(しま)はれた(ゆめ)()たのだ』
160『そら(ゆめ)だ。161(げん)此処(ここ)(いびき)をかいて()られるのだからマア安心(あんしん)せい。162(とき)竜公(たつこう)(ひと)(ゆす)(おこ)してくれぬか、163貴様(きさま)二人(ふたり)面白(おもしろ)うない(はなし)をしてゐると、164だんだん(からだ)(ちぢ)まるやうになつて()るワ、165(なん)とマア陰気(いんき)()さぢやな』
166『それ(ほど)(さび)しければ、167(おれ)(くら)ひついて()れ。168()うても五三公(いそこう)さまは(きも)(たま)(ふと)いからなア』
169『さうだらう、170(ゆめ)()てもビツクリするやうな(をとこ)だからな、171ヘン』
172 二三間(にさんげん)(かたはら)(なに)かヒソヒソと人声(ひとごゑ)(きこ)えて()る。173万公(まんこう)174五三公(いそこう)(にはか)(くち)をつめ、175(だき)ついた(まま)176(みみ)(かたむ)()した。
177『オイ、178テク、179昨夜(さくや)随分(ずゐぶん)(おどろ)いたねえ、180今晩(こんばん)もこンな(ところ)(やす)むのはいいが、181(また)ホツホヽなンて仰有(おつしや)ると、182モウ(この)(うへ)はアクさまも()たたまらないから、183小声(こごゑ)大自在天様(だいじさいてんさま)(をが)まうぢやないか』
184『コリヤ、185アク、186貴様(きさま)悪人(あくにん)似合(にあ)はぬ()(よわ)(やつ)だなア。187(ひと)相談(さうだん)しなくつても、188自分(じぶん)(くち)神様(かみさま)(ねが)つたら()うだい』
189(おれ)だつて(あま)りビツクリしたので、190(かみ)さままでが(こは)うなつて、191(つれ)がなくては(をが)めぬぢやないか。192どうだ、193三人(さんにん)(こゑ)(そろ)へて御祈願(ごきぐわん)せうぢやないか。194(また)ホツホヽヽがやつて()さうだぞ。195どうも陰欝(いんうつ)になつて()た。196(わづ)二十里(にじふり)(みち)(ねこ)(やう)に、197草原(くさはら)(ばか)りやつて()たのだから、198枯芒(かれすすき)()(あし)(かほ)(きず)だらけだ。199(なん)だかピリピリと体中(からだぢう)(いた)くて仕方(しかた)がないワ』
200『さうだから、201(あた)(まへ)(みち)(おれ)()のやうにテクらういふのに、202貴様(きさま)臆病風(おくびやうかぜ)(さそ)はれて、203(みち)もない(ところ)四這(よつばひ)になつて(ある)きよるものだから……自業自得(じごふじとく)だよ』
204『それだと()つて、205うつかり()つて(ある)かうものなら、206俺達(おれたち)(からだ)()えるぢやないか。207もしも三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)にでも()つけられてみよ。208それこそ大変(たいへん)だ。209アクさまの提案(ていあん)遵奉(じゆんぽう)したお(かげ)()つて、210やうやう、211此処(ここ)まで安着(あんちやく)したではないか。212オイ、213タク、214(なん)だ、215糞落着(くそおちつ)きに(おち)つきよつて、216チと(なに)(はなし)でもせぬかい、217(さび)しうて仕方(しかた)がないワ』
218『おりやモウ(こし)()タクて、219(はなし)どころかい。220気息奄々(きそくえんえん)だ。221随分(ずゐぶん)四足(よつあし)真似(まね)(くる)しいものだなア』
222貴様(きさま)はコンパスが(なが)くて、223()(はう)比較的(ひかくてき)(みじか)いから、224四足(よつあし)になるのもえらかろ、225ソリヤ(もつと)もだ。226(しか)(あし)(なが)いのは()(なが)いのよりもマシだ。227()(なが)いと交番所(かうばんしよ)(まへ)(とほ)れぬからのオ』
228(なん)だか()らぬが、229(にはか)(この)(もり)へテクリ()んでから(さび)しくなつたぢやないか。230そこらあたりに死屍累々(ししるゐるゐ)(よこ)たはつてるやうな怪体(けたい)気分(きぶん)がするぢやないか』
231『ヒヨツとしたら、232ここは墓場(はかば)ぢやあるまいかな。233(いびき)(きこ)えるやうだ、234幽霊(いうれい)がタク(さん)()てけつかるのだなからうかな』
235馬鹿(ばか)()へ。236幽霊(いうれい)(いびき)をかくかい。237大方(おほかた)(たぬき)()てゐるのだらう。238(たしか)野中(のなか)(もり)だ、239墓場(はかば)気遣(きづか)ひないワ、240マア安心(あんしん)せい、241テクが保証(ほしよう)するよ』
242(なん)だかお(かゆ)でもタク()ナ、243()いてるやうな(おと)がするぞ』
244『オイ、245そんな怪体(けたい)(はなし)はやめて、246トツクリと()やうぢやないか。247()さへすれば(こは)(こと)(なん)にも(わす)れて(しま)ふからな。248疑心暗鬼(ぎしんあんき)(しやう)ずとか()つて、249(この)(やみ)(ばん)にそンな(こと)(ばか)()うてると、250(また)それ、251アク()がホツホヽヽぢや』
252 万公(まんこう)253五三公(いそこう)二三間(にさんげん)(そば)で、254三人(さんにん)(はなし)()(をは)り、255万公(まんこう)声低(こゑび)くに、
256『オイ五三公(いそこう)257此奴(こやつ)ア バラモン(けう)臆病者(おくびやうもの)だで。258昨夜(さくや)晴公(はるこう)(かへで)さまに(あぶら)をとられた(やつ)()えるワイ。259オイ(ひと)(おれ)晴公(はるこう)になるから、260五三公(いそこう)(まへ)(かへで)になつたらどうだ、261(まへ)(こゑ)(をんな)()てゐるからなア』
262『ウン、263そら面白(おもしろ)い。264そンなら(おれ)から(ひと)戦闘(せんとう)開始(かいし)しようかな。265貴様(きさま)(おれ)とは余程(よほど)臆病者(おくびやうもの)だと(おも)つてゐたら、266モウ一段(いちだん)臆病者(おくびやうもの)(あら)はれよつた。267(うへ)には(うへ)のあるものだのオ』
268小声(こごゑ)(ささや)いてゐる。269三人(さんにん)はそンな(こと)とは()らず、270(くら)がりに()(つな)(あは)せ、271(ふる)(ふる)小声(こごゑ)(ささや)いてゐる。
272『オイどうも形勢(けいせい)不穏(ふをん)だぞ。273キヤツキヤツと(ぬか)(さる)(こゑ)が、274(なん)とはなしにアク()()(いう)さまの(こゑ)のやうに(きこ)えて()るぢやないか。275こンな(とき)には腹帯(はらおび)をしつかり(しめ)()らぬと、276ヒユードロドロドロとやられちや、277おたまり小坊子(こぼうし)がないからなア』
278 五三公(いそこう)(くら)がり(なが)らも、279両手(りやうて)(まへ)にニユツと()ばし、280手首(てくび)をペロツと()げ、281(すこ)立膝(たてひざ)をして、282蟷螂(かまきり)(やう)(からだ)(まへ)へつき()し、
283『ヒユードロドロドロドロ、284ホツホヽヽ』
285『ソーレ アク、286(いう)だ、287()げろ()げろ』
288()げろと()つたつて、289テクろと()つたつて駄目(だめ)だよ、290(また)()けた』
291『あゝあ、292(おれ)もぬけた。293アク、294俺達(おれたち)二人(ふたり)をかたげてのいてくれ、295タヽタクが(たの)む』
296(おれ)もチヨボチヨボだ、297アクものは(くち)(ばか)りだ』
298『ホツホヽヽ、299アツハヽヽ』
300『ヤア昨夜(さくや)化州(ばけしう)だ、301執念深(しふねんぶか)い、302どこ(まで)もついて()よるのだな。303オイ、304タク、305テク、306かう幽霊(いうれい)魅入(みい)られては仕方(しかた)がない、307アク(どう)()ゑようぢやないか』
308 ()(はな)(うち)十九日(じふくにち)(よる)(つき)東天(とうてん)をこがして一層(いつそう)(あざや)かな(ひかり)地上(ちじやう)()げた。309丁度(ちやうど)此処(ここ)()(まばら)(ところ)で、310(ひがし)がすいてゐるので、311一同(いちどう)(かほ)はパツと(あきら)かになつた。
312『アハヽヽヽ、313これで天地開明(てんちかいめい)気分(きぶん)になつて()た、314ヤツパリ(つき)大神様(おほかみさま)のお(かげ)有難(ありがた)いものだな。315(はら)(そこ)まで(ひか)つたやうな()がする。316モウ大丈夫(だいぢやうぶ)だ。317オイ(たつ)318()きぬかい、319万公(まんこう)さまだよ』
320「ウン」と()つて()きて()たのは松彦(まつひこ)である。
321『ヤア()(つき)だな。322治国別(はるくにわけ)(さま)竜公(たつこう)姿(すがた)()えぬぢやないか、323何処(どこ)()かれたのだろ』
324『ヤア、325マンマンマンマン大変(たいへん)だ。326()らぬ()何者(なにもの)先生(せんせい)(かど)はかしよつたなア』
327『ナアニ(いも)でもイソイソ()けに()かれたのだよ。328(なに)俺達(おれたち)()てて勝手(かつて)()くなンて、329そンな不親切(ふしんせつ)(こと)をなさるものかい。330なア松彦(まつひこ)さま』
331『ソリヤ(なん)とも(わか)らぬなア。332何程(なんぼ)兄弟(きやうだい)だつて、333(こころ)(なか)(まで)(わか)らぬからなア、334松彦(まつひこ)には』
335『ヘーン、336もしもそンな(こと)だつたら大変(たいへん)ですがな、337あイソを(つく)されたのか』
338師匠(ししやう)(つゑ)につくな、339(ひと)(たよ)りにすなと神様(かみさま)仰有(おつしや)るぢやないか、340一丈(いちぢやう)二尺(にしやく)(まはし)をかいた(をとこ)がそンな弱音(よわね)()くものぢやない、341(これ)から各自(かくじ)単独(たんどく)で、342ランチ将軍(しやうぐん)陣営(ぢんえい)突撃(とつげき)せよと(めい)ぜられたら()うするか。343それでも()かねばなるまい。344前達(まへたち)(せい)執着(しふちやく)(きつ)いから恐怖心(きようふしん)(おこ)るのだ。345捨身(すてみ)になれば(なに)(おそ)ろしい(こと)はないぢやないか。346最前(さいぜん)から随分(ずゐぶん)臆病風(おくびやうかぜ)()かれて()たなア、347松彦(まつひこ)()いて()れば(なん)だホツホヽヽなンてせうもない余興(よきよう)をやるぢやないか』
348何程(なにほど)恐怖心(きようふしん)にかられたといつても、349流石(さすが)万公(まんこう)さまは三五教(あななひけう)信者(しんじや)ですわい。350余裕(よゆう)綽々(しやくしやく)として滑稽(こつけい)(えん)ずるのですからなア。351あれ御覧(ごらん)なさい、352あこに三匹(さんびき)四足(よつあし)へたつて()りますわ』
353『ウン、354あれはバラモン(ぐん)斥候(せきこう)(つと)めてるアク、355タク、356テクの三人(さんにん)だ、357(かへで)さまに(あぶら)()られた連中(れんちう)だらう』
358松彦(まつひこ)さま、359貴方(あなた)(いびき)をかき(なが)()いてゐたのですかい』
360『ウン、361(いびき)(いびき)362()くのは()くのだ、363(はな)(やす)ンで()つても、364(みみ)()きてゐるからなア』
365 アクは()(あは)せ、
366『モシモシ、367三五教(あななひけう)先生(せんせい)368(わたし)はお(さつ)しの(とほ)り、369アク、370タク、371テクの三人(さんにん)(ござ)います。372(けつ)して貴方方(あなたがた)(あだ)をするものでは(ござ)いませぬから、373どうぞ(よろ)しく(たの)みます……とは(まを)しませぬが、374いぢめぬやうにして(くだ)さい、375(かま)うてさへ(もら)はねば、376()うなつと処置(しよち)をつけますから、377本当(ほんたう)貴方(あなた)家来(けらい)には意地(いぢ)(わる)(かた)がありますなア。378吾々(われわれ)三人(さんにん)(こし)()いて(しま)つたのですから本当(ほんたう)(こま)りますワ』
379『それは()(どく)だ。380(しか)(なが)二十里(にじふり)(みち)四這(よつばひ)になつて()るのは、381随分(ずゐぶん)(くる)しかつたでせうなア、382松彦(まつひこ)感心(かんしん)したよ』
383(なに)もかも(みな)御存(ごぞん)じですな。384(その)(とほ)(しばら)四足(よつあし)修行(しうぎやう)をアク(まで)やつてみましたが、385随分(ずゐぶん)(くる)しいもので(ござ)いますよ』
386『コンパスの(なが)()(みじか)いタクさまは余程(よほど)(こま)りだつたさうですねえ』
387()(みじか)いのは正直者(しやうぢきもの)証拠(しようこ)ですから、388どうぞ大目(おほめ)()(くだ)さいナ、389松彦(まつひこ)さまとやら』
390『アハヽヽヽ、391マア此方(こちら)へお(いで)なさい、392ゆつくり(はなし)交換(かうくわん)しませう』
393『オイ、394タク、395テク三五教(あななひけう)大将(たいしやう)余程(よほど)(ひら)けてるぢやないかエヽー、396バラモン(けう)(つかさ)だつたら、397随分(ずゐぶん)威張(ゐば)(ところ)だがなア。398ヤツパリ平民(へいみん)主義(しゆぎ)()えるワイ、399(おれ)平民(へいみん)主義(しゆぎ)大好(だいす)きだ……三五教(あななひけう)先生(せんせい)400そンなら一切(いつさい)障壁(しやうへき)(のぞ)いて御昵懇(ごぢつこん)(あづ)かりませう』
401 松彦(まつひこ)は、
402『ハア、403(たがひ)御心(おこころ)(やす)(たの)みますよ』
404(かる)くうなづく。
405『モシモシ先生(せんせい)406あンな(こと)()つて、407様子(やうす)(かんが)へてゐるのですよ、408万公(まんこう)気懸(きがか)りですワ。409(ひと)つホヽヽヽヽでおどかして()がしてやりませう』
410『ホツホヽヽ、411モシモシ万公(まんこう)さま、412正体(しやうたい)(あら)はれた以上(いじやう)は、413ホヽヽもアハヽヽヽも(わら)ひの(たね)にこそなれチヨツとも(おそ)ろしくありませぬよ。414アク(まで)得意(とくい)のホヽヽヽヽをやつて御覧(ごらん)なさい』
415『オイ、416五三公(いそこう)417()駄目(だめ)だ、418仕方(しかた)()いなア』
419松彦(まつひこ)さまがあゝ仰有(おつしや)るのだもの、420俺達(おれたち)()寝入(ねいり)かな。421無条件(むでうけん)降服(かうふく)だ……(いな)無条件(むでうけん)還附(くわんぷ)だ。422(これ)から臥薪嘗胆(ぐわしんしやうたん)423十年(じふねん)()をなめて、424捲土重来(けんどぢうらい)復讐戦(ふくしうせん)をやるのだなア、425アツハヽヽヽ』
426(はじ)めて愉快(ゆくわい)げに五三公(いそこう)(わら)()した。427(この)(わら)(ごゑ)四辺(しへん)陰鬱(いんうつ)(やぶ)つて一同(いちどう)(にはか)陽気(やうき)となり、428(てき)味方(みかた)(こゑ)(そろ)へて、429「ワハヽヽヽ」と高笑(たかわら)ひする、430今迄(いままで)吾物顔(わがものがほ)(こずゑ)()()ひ、431キヤツキヤツ(さへづ)つてゐた(さる)一度(いちど)(こゑ)(ひそ)めて(しま)つた。
432大正一一・一二・九 旧一〇・二一 松村真澄録)
433(昭和九・一二・二九 於湯ケ島 王仁校正)