霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 慰労会(ゐらうくわい)〔一二一二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻 篇:第1篇 仕組の縺糸 よみ:しぐみのれんし
章:第2章 慰労会 よみ:いろうかい 通し章番号:1212
口述日:1922(大正11)年12月15日(旧10月27日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
松彦と松姫は、出て行った四人が早く帰るようにと大広間で祈願をこらしていた。二人が教主館まで帰ってきたところ、一行七人が帰ってきた。
松彦と松姫は別館にて蠑螈別とお民が帰ってくるように祈ろうと言い、一同は慰労会を開いて休むようにと言い残して去って行った。お寅と魔我彦は迷信家のこととて、神への祈願で蠑螈別とお民がすぐに戻ってくるものと信じて、しきりに酒を飲んでいる。万公と五三公は酔って労働や恋愛についての議論を交わした。
お菊と万公が歌をうたい、皆ではやし立てる。五三公は歌を所望され、宣伝歌を歌った。最後は一同が脱線歌を歌いながら、いつのまにか夜を明かしてしまった。数多の参詣者はぞろぞろと大広間を指して参拝する。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:22頁 八幡書店版:第8輯 368頁 修補版: 校定版:23頁 普及版:9頁 初版: ページ備考:
001 松彦(まつひこ)002松姫(まつひめ)はお(とら)()アさま、003魔我彦(まがひこ)004蠑螈別(いもりわけ)などの(はや)(かへ)(きた)れかしと、005大広間(おほひろま)(おい)祈願(きぐわん)をこらし、006教主館(けうしゆやかた)玄関口(げんくわんぐち)まで(かへ)つて()たところへ、007ガヤガヤと(ささや)きながら一行(いつかう)七人(しちにん)(かへ)つて()た。
008松彦(まつひこ)『あゝ五三公(いそこう)さま、009蠑螈別(いもりわけ)さまは如何(どう)なつたかなア』
010五三(いそ)大広木正宗(おほひろきまさむね)生宮(いきみや)取逃(とりにが)しましたが、011(その)(かは)(おく)さまの鈴野姫(すずのひめ)肉宮(にくみや)奉迎(ほうげい)して()ました。012(しやう)()むと(ほつ)する(もの)()(その)(うま)()よですから、013女偏(をんなへん)(うま)引張(ひつぱ)つて(かへ)つておけば大丈夫(だいぢやうぶ)です、014(くぢら)でも(めん)()るとキツト(をん)がとれますからな、015それにモ(ひと)つの副産物(ふくさんぶつ)義理天上日(ぎりてんじやうひ)出神(でのかみ)生宮(いきみや)(ひろ)うて(まゐ)りました、016ハツハツハツハ』
017『それは御骨折(おほねをり)でした。018サア()(かく)(うち)へお這入(はい)りなさいませ』
019松姫(まつひめ)(みな)さま、020御苦労(ごくらう)でしたねえ、021蠑螈別(いもりわけ)さまとお(たみ)さまは、022たうとう()()がしましたかな、023残念(ざんねん)(こと)(ござ)いますね』
024 万公(まんこう)(そば)から、
025()げた(うを)(おほ)きいと()ひましてな、026ヤツパリ呑舟(どんしう)(うを)(あみ)(やぶ)つて()げましたよ。027海老(えび)一疋(いつぴき)帆立貝(ほだてがひ)(ひと)つ、028ゴク貧弱(ひんじやく)獲物(えもの)(ござ)いますが、029これでも今晩(こんばん)のお(さけ)(さかな)には()なり()()ふかも()れませぬ、030エヘヽヽ』
031松彦(まつひこ)『ハア、032()(かく)結構(けつこう)だ、033(これ)から松姫館(まつひめやかた)(かへ)つて神様(かみさま)にトツクリと(ねが)つて()るから、034()発見祝(はつけんいはひ)にお神酒(みき)でもあがつて(くだ)さい』
035(とら)『どうぞ蠑螈別(いもりわけ)貴方(あなた)鎮魂(ちんこん)で、036今夜(こんや)(うち)にでも此処(ここ)引着(ひつつ)けられて(かへ)りますやうに御祈願(ごきぐわん)して(くだ)さいな、037松姫(まつひめ)(さま)(よろ)しく御願(おねが)(いた)します』
038松姫(まつひめ)『ハイ、039力限(ちからかぎ)(ねが)つて()ませう』
040魔我(まが)(わたし)もお(たみ)さまが引着(ひきつ)けられて(かへ)るやうに(いの)つて(くだ)さい』
041松姫(まつひめ)『ハイ、042(いの)りませう』
043万公(まんこう)(なん)()つても、044末代日(まつだいひ)王天(わうてん)大神様(おほかみさま)上義姫(じやうぎひめ)(さま)とのお(いの)りだから大丈夫(だいぢやうぶ)だよ、045なア海老(えび)帆立貝(ほたてがひ)046マア安心(あんしん)したがよからうぞ』
047松彦(まつひこ)『アハヽヽ、048左様(さやう)なら(みな)さま、049御緩(ごゆつく)りと慰労会(ゐらうくわい)でも(ひら)いて、050(にぎや)かうして(くだ)さいませ』
051松姫(まつひめ)『どうぞ十分(じふぶん)にお神酒(みき)()(あが)りませ、052何程(なにほど)酩酊(めいてい)しても、053(はな)()ぢることだけはなりませぬぞや、054ホヽヽヽ』
055()ひながら、056松彦(まつひこ)057松姫(まつひめ)二百(にひやく)階段(かいだん)(あし)(きざ)んで()く。058万公(まんこう)(した)から二人(ふたり)姿(すがた)打仰(うちあふ)ぎ、
059御夫婦(ごふうふ)万歳(ばんざい)060よく似合(にあ)ひまつせ。061浦山吹(うらやまぶき)さま、062アツハヽヽヽ』
063 松彦(まつひこ)064松姫(まつひめ)(あと)()()きもせず、065別館(べつくわん)さして(かへ)()く。
066 一同(いちどう)大広間(おほひろま)参拝(さんぱい)し、067(をは)つて教祖館(けうそやかた)(おい)慰労(ゐらう)祝宴(しゆくえん)(ひら)いた。068ソロソロ(よひ)がまはり()し、069すべての障壁(しやうへき)()つてくだらぬことを(しやべ)(はじ)めた。070(とら)魔我彦(まがひこ)迷信家(めいしんか)(こと)とて、071ユラリ(ひこ)072上義姫(じやうぎひめ)夫婦(ふうふ)生宮(いきみや)が、073(はや)ければ夜明(よあ)(まへ)074(おそ)くても明日(あす)(ひる)(ごろ)には、075キツト両人(りやうにん)恋人(こひびと)此処(ここ)引戻(ひきもど)してくれるものと(おも)ひ、076大船(おほぶね)()つたやうな心持(こころもち)でニコニコしながら、077無性(むしやう)矢鱈(やたら)土手(どて)()らして(さけ)()んだ。
078万公(まんこう)『アヽア、079エライ労働(らうどう)をやつたものだ。080余程(よほど)報酬(ほうしう)請求(せいきう)しなくちや、081バランスが()れない。082御苦労(ごくらう)さまだつた(くらゐ)報酬(ほうしう)では、083()つから有難(ありがた)くないからな、084夜業(やげふ)までさされて、085幾分(いくぶん)かの割増(わりまし)(もら)つたて、086やり()れないワ』
087五三(いそ)『オイ万公(まんこう)088労働(らうどう)神聖(しんせい)だ。089(おれ)だつて労働(らうどう)貴様(きさま)同様(どうやう)にやつたのだ。090労働(らうどう)(りやう)相当(さうたう)しただけの報酬(ほうしう)を、091権利(けんり)として要求(えうきう)するのは道徳的(だうとくてき)には根拠(こんきよ)のないものだよ。092労働(らうどう)報酬(ほうしう)のみを(もつ)当然(たうぜん)権利(けんり)とみるならば、093それこそ社会(しやくわい)弊害(へいがい)百出(ひやくしゆつ)して()混乱(こんらん)(みちび)くより仕方(しかた)がない、094老者(らうしや)095病者(びやうしや)096小児(せうに)などは労働(らうどう)をせないからパンを(あた)へないと()つたら()うするのだ。097労働(らうどう)させて(もら)ふのもヤツパリ神様(かみさま)のおかげだよ。098現代(げんだい)八釜(やかま)しく持上(もちあが)つて()労働(らうどう)問題(もんだい)は、099人類(じんるゐ)集団(しふだん)()しくは階級間(かいきふかん)問題(もんだい)でなくして、100神様(かみさま)人間(にんげん)との問題(もんだい)だ。101吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(また)信者(しんじや)たるものは、102如何(いか)なる場合(ばあひ)にも、103永遠(ゑいゑん)真理(しんり)(うへ)()ち、104時代(じだい)超越(てうゑつ)して()なければならない。105神聖(しんせい)(かみ)(みち)でありながら、106労働(らうどう)問題(もんだい)云々(うんぬん)するやうな(こと)は、107チツと(つつし)まねばなるまいぞ』
108『それだとて、109労働(らうどう)(てん)(めぐみ)開拓(かいたく)するのだ、110宣伝使(せんでんし)だつてヤツパリ労働者(らうどうしや)でもあり、111(また)報酬(ほうしう)要求(えうきう)する権利(けんり)がなくてはヤリ()れないぢやないか』
112宣伝使(せんでんし)113信者(しんじや)(かみ)より(たま)はる報酬(ほうしう)といふものは、114(しん)(あい)(ただ)しき理解(りかい)との歓喜(くわんき)報酬(ほうしう)即時(そくじ)(かみ)から(たま)はつて()るぢやないか。115仮令(たとへ)()(なか)物貨生産(ぶつくわせいさん)労働(らうどう)従事(じうじ)し、116相当(さうたう)報酬(ほうしう)()るのを、117(いま)人間(にんげん)自分(じぶん)(まう)けるのだと()つてゐるが、118(けつ)して(まう)けるのではない、119(かみ)から(あた)へられるのだ。120おかげを(いただ)くのだ。121自分(じぶん)(まう)けるなンて(おも)つたら大変(たいへん)間違(まちがひ)だ。122人間(にんげん)()ふものは自分(じぶん)から()きるこたア出来(でき)ない、123(ゆる)されて()きてゐるのだ。124それだから(ひと)はパンのみにて()くるものに(あら)ずと(かみ)仰有(おつしや)るのだよ。125パン問題(もんだい)のみで人間(にんげん)生活(せいくわつ)解決(かいけつ)()くのならば、126()(なか)殺風景(さつぷうけい)荒野(くわうや)のやうなものだ』
127吾々(われわれ)は、128つまり()へば筋肉(きんにく)労働者(らうどうしや)だ。129ヂツとしてゐて、130(くち)(さき)やペンを使(つか)つてゐるやうな屋内(をくない)労働者(らうどうしや)とは、131苦痛(くつう)(てん)(おい)天地霄壌(てんちせうじやう)()があるのだからなア』
132『そりや(じつ)浅見(せんけん)だ。133筋肉(きんにく)労働者(らうどうしや)人体(じんたい)自然(しぜん)道理(だうり)(したが)つて活動(くわつどう)するのだから、134仮令(たとへ)(あせ)(しぼ)つても愉快(ゆくわい)なものだ、135(くる)しいと()つても(よひ)(くち)だよ。136ペンを()つて著述(ちよじゆつ)をしたり、137椅子(いす)(かか)つて調査(てうさ)などをやつたりしてゐる(もの)労働(らうどう)(くる)しみと()つたら、138筋肉(きんにく)労働者(らうどうしや)夢想(むさう)だも(およ)ばざる(ところ)だ。139(すべ)人間(にんげん)()ふものは(ひと)のやつてゐる(こと)()()えるものでなア、140(たれ)だつて(その)(きよく)(あた)つてみよ、141随分(ずゐぶん)(くる)しいものだよ。142(うへ)になる(ほど)責任(せきにん)(おも)く、143単純(たんじゆん)筋肉(きんにく)労働者(らうどうしや)()ではない。144(わし)一度(いちど)青表紙(あをべうし)(くび)つぴきをして、145沢山(たくさん)参考書(さんかうしよ)をあさり、146著述(ちよじゆつ)従事(じゆうじ)したこともある。147(また)土工(どこう)にもなり、148百姓(ひやくしやう)にもなり、149車力(しやりき)にもなつたが、150ヤツパリ(ふで)()御用(ごよう)一番(いちばん)(らく)さうに()えて一番(いちばん)(くる)しかつたよ。151霊界物語(れいかいものがたり)口述者(こうじゆつしや)だつて筆記者(ひつきしや)だつて(くる)しいものだ。152(とら)()アさまの(あと)()つかけ、153息切(いきぎ)れするやうな(くる)しい()()つたと()つても、154(からだ)(やす)(さけ)一杯(いつぱい)()めば、155それで()んで(しま)ふものだ。156著述家(ちよじゆつか)なンかになつてみよ、157一分間(いつぷんかん)だつて(こころ)のゆるむ(ひま)はない、158(ゆめ)にだつて(わす)れることが出来(でき)ない(ほど)159心身(しんしん)疲労(ひらう)させるのだ。160マアそんな小六(こむづ)かしい(はなし)打切(うちき)りにして、161今日(けふ)気楽(きらく)にお神酒(みき)(いただ)き、162(また)明朝(あす)(あたら)しいお日様(ひさま)(をが)むことにしようぢやないか。163なアお(とら)さま、164魔我(まが)さま、165(ひと)つやりませうか、166どうぞ一杯(いつぱい)()いで(くだ)さいな』
167(とら)(ばば)アでお()()りますまいが、168御免(ごめん)(かうむ)りませう』
169とニコニコしながら五三公(いそこう)(さかづき)(わた)し、170燗徳利(かんどくり)からドブドブと()いだ。171かくして(さかづき)はクルクルまはり、172(えん)ますます(たけなは)となつて()た。
173 万公(まんこう)(おも)ひの(ほか)()ひつぶれ、174独舞台(ひとりぶたい)(やう)になつて言霊(ことたま)発射(はつしや)()した。
175随分(ずゐぶん)(なん)だなア、176(すずめ)(ひやく)までとか()つて、177(とし)がよつても恋愛(れんあい)といふものは下火(したび)にならないものと()えるな、178エヽン、179(げん)にお(とら)()アさまだつてさうぢやないか、180(おれ)やどうも(この)問題(もんだい)解決(かいけつ)にや、181(じつ)(ところ)(まよ)つてゐるのだ』
182五三(いそ)恋愛(れんあい)神聖(しんせい)だ、183宗教的(しうけうてき)信仰(しんかう)(ただ)しき恋愛(れんあい)とは、184人間(にんげん)霊魂(れいこん)優美(いうび)向上(かうじやう)させるものだよ。185(ただ)しき信仰(しんかう)完全(くわんぜん)恋愛(れんあい)人間(にんげん)心霊(しんれい)発育(はついく)せしめ、186永遠無窮(ゑいゑんむきう)生命(せいめい)(あた)ふるものだ。187(しか)現代(げんだい)科学者(くわがくしや)のいふやうな浅薄(せんぱく)恋愛観(れんあいくわん)では駄目(だめ)だ。188(すべ)恋愛(れんあい)といふものは性欲(せいよく)から分科(ぶんくわ)したものだ。189そして性欲(せいよく)(うち)可能性(かのうせい)(かたち)(おい)(はじ)めて含蓄(がんちく)されてるのが恋愛(れんあい)だ。190(この)()(つく)(たま)うた(まこと)神様(かみさま)が、191人間(にんげん)生命(せいめい)性欲(せいよく)(あた)(たま)うた(とき)から、192恋愛(れんあい)といふものを含蓄(がんちく)させておかれたのだ。193信仰(しんかう)恋愛(れんあい)歓喜(くわんき)源泉(げんせん)だ。194歓喜(くわんき)といふものは心霊(しんれい)永遠(ゑいゑん)保存(ほぞん)し、195(かつ)心霊(しんれい)優美(いうび)完全(くわんぜん)なる活躍(くわつやく)(おこ)さしむるものだ』
196成程(なるほど)197それだから今晩(こんばん)大活躍(だいくわつやく)も、198ハアそこから(おこ)つたのだな。199さう()けば、200(とら)()アさまの鈴野姫(すずのひめ)(さま)御活躍(ごくわつやく)(あそ)ばしたのも、201義理天上(ぎりてんじやう)さまが、202舎身的活動(しやしんてきくわつどう)理由(りいう)解決(かいけつ)がついて()た。203五三公(いそこう)さまのやうに、204さう綿密(めんみつ)()つてくれると、205(おれ)恋愛(れんあい)(たい)しての煩悶(はんもん)綺麗(きれい)サツパリ排除(はいじよ)することが出来(でき)たやうだ』
206タク『ハヽヽヽヽ、207恋愛(れんあい)煩悶(はんもん)だなンて、208そんな(つら)でよくいへたものだ。209チツとお(まへ)(かほ)相談(さうだん)してみよ、210エヽン』
211アク『お(きく)さまの(やう)なナイスと結婚(けつこん)させてもよい(やう)口吻(くちぶり)を、212(とら)さまが()らしたものだから、213(にはか)色気(いろけ)づきよつて、214(へん)()になつたのだから、215(ただ)しからざる恋愛(れんあい)煩悶(はんもん)(おそ)はれよつたのだ、216アハヽヽヽ』
217五三(いそ)『こんな七六ケ(しちむつか)しい問答(もんだふ)はやめて、218今晩(こんばん)(さかん)にやらうぢやないか』
219(とら)『サ(みな)さま、220今日(けふ)十分(じふぶん)()うて(くだ)さい、221メツタに(はな)はつまみませぬからなア』
222とお(とら)今日(けふ)(なん)(おも)うてか、223主人(しゆじん)気取(きどり)になつて一生懸命(いつしやうけんめい)(さけ)をあふり()した。224だんだんと(よひ)がまはつて()た。
225万公(まんこう)『オイお(きく)さま、226恋愛(れんあい)()打切(うちき)りとして、227(ひと)御馳走(ごちそう)(うた)をうたひ、228()うて()せて(もら)へまいかいな』
229(きく)万公(まんこう)さまのために(うた)ふのは一寸(ちよつと)(かんが)へさして(くだ)さい、230(みな)さまの御馳走(ごちそう)ならば(うた)つても(よろ)しい』
231 お(きく)立上(たちあが)り、232(あふぎ)(ひろ)げて(みづか)(うた)(みづか)()ふ。233一同(いちどう)()()つて(はや)す。
234小北(こぎた)(やま)神床(かむどこ)
235(はな)のお(きく)(しやく)をする
236(さけ)より(さかな)よりお(きく)さまが
237万公(まんこう)さまの()についた
238ホヽヽヽヽ』
239万公(まんこう)『コリヤお(きく)240馬鹿(ばか)にするない、241()についたのは(おれ)ばかりでない。242すぐに(おれ)(むか)ふにまはし挑戦的(てうせんてき)態度(たいど)()るのだな』
243タク『ヤツパリ万公(まんこう)さまが()にかかると()えて、244乙姫(おとひめ)さまが挑戦(てうせん)(あそ)ばすのだよ、245何事(なにごと)善意(ぜんい)(かい)するのだな』
246万公(まんこう)『アハヽヽヽ』
247 お(きく)(また)(うた)ふ。
248()につかば、249つれて(ござ)れよ(うみ)(そこ)250竜宮(りうぐう)(うみ)(そこ)までも』
251アク『妙々(めうめう)252面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、253(きく)さまに(かぎ)る。254(ひと)(ねが)ひます』
255(きく)『エヽヽー今日(けふ)()もエヽヽー
256 くれーたアれど くれーたアれど
257 エヽヤのサ、258エヽーエヽー
259 わがア殿(どの)はア
260 ヤーレ、261マーだ()えぬ
262 ハーレヤーレエーヤのサアヽヽ
263オホヽヽヽ、264(おほ)きに不調法(ぶてうはふ)265これで御免(ごめん)(かうむ)りませう』
266万公(まんこう)万万万(まんまんまん)267(ひと)所望(しよもう)だ。268こんな(ところ)でやめられてたまるかい』
269(きく)(まん)さま、270(まへ)さまも(をとこ)ぢやないか、271返報(へんぱう)がへしといふ(こと)をようせないやうな(もの)は、272(をとこ)ぢやありませぬよ。273(なん)でもいいから(ひと)(うた)つて御覧(ごらん)274さうすりや(また)(わたし)()つときを(はふ)()しますから……』
275万公(まんこう)『エヽ仕方(しかた)がない、276女王(ぢよわう)さまの御託宣(ごたくせん)だ』
277()ひながら立上(たちあが)り、
278『あそばむ(ため)とて(うま)れけむ
279いたづらせむとて(うま)れけむ
280あそ……ぶ子供(こども)(こゑ)()けば
281(わが)()さへこーそゆるがるれ
282あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)…………だ、アハヽヽヽ』
283一同(いちどう)『ウツフツフヽヽ』
284万公(まんこう)(はな)(さか)り……が(ふたた)びあらうか
285 枯木(かれき)(はな)()きはせぬ
286 ドツコイシヨ ドツコイシヨ……だ
287 竜宮(りうぐう)(ちか)いな (ちか)いな
288 乙姫(おとひめ)さまが(つづみ)うつ
289 (こゑ)(きこ)えて()るぢやないか
290 (その)(また)(つづみ)(なん)とうつ
291 とどろ とどろと()つにうつ……
292サアこれで満期(まんき)免除(めんぢよ)(ねが)ひたい、293サア乙姫(おとひめ)さまの(ばん)だ』
294(きく)一枚(いちまい)295二枚(にまい)
296『コリヤコリヤ、297一枚(いちまい)二枚(にまい)はモウこりこりだ、298もつと()()いた(こと)()はぬかい』
299『ホツホヽヽヽ
300 岩屋(いはや)(なか)(たこ)(をど)
301 珊瑚(さんご)(しま)では(かめ)(うた)
302 竜宮(りうぐう)(なみ)のはざまにて
303 お(きく)乙女(をとめ)黄金(こがね)まく
304 (その)(また)黄金(こがね)(なん)とまく
305 万公(まんこう)さまにやろと()うてまく
306ホツホヽヽ』
307アク『オイ中下先生(ちうげせんせい)308得意(とくい)(ほど)309(さつ)(まを)します。310モシ(よだれ)がこぼれますよ、311オホヽヽ』
312一同(いちどう)『ワハツハヽヽ』
313万公(まんこう)『エヘヽヽ、314(みな)よつてかかつて、315(この)万更(まんざら)でもない(まん)さまを馬鹿(ばか)にしよる、316(しか)随分(ずゐぶん)()てたものだなア、317オツホヽヽヽ、318ウツフヽヽヽ』
319タク『お(きく)乙姫(おとひめ)さま、320(ひと)(ねが)ひます、321(あま)万公(まんこう)揶揄(からか)つて(もら)ふと、322(あと)始末(しまつ)(こま)りますからな、323そこはよく取捨按配(しゆしやあんぱい)して(うた)つて(くだ)さい、324(なん)なら(わたし)(こと)(ひと)つ、325(うた)つて(もら)ひたいものだな』
326(きく)『これこれもうしタクさまえ
327 (わし)()ひたくば河鹿(かじか)(なが)
328 おやなぎ小柳(こやなぎ)蛇籠(じやかご)のあひの
329 小砂利(こじやり)(まじ)りの荒砂(あらすな)つかみ
330 背戸(せど)小窓(こまど)にバラバラと
331 ()げておくれよ小雨(さめ)ふると
332 (おも)うて(わたし)()()はう
333 もしも(まん)さまであつたなら
334 雨戸(あまど)をピツシヤリ()()てて
335 長持(ながもち)(そこ)にてふるうてゐる
336 ()きと(きら)ひはこんなもの
337 ヨイトサア ヨイトサア
338 エヽエエー、339はれやーれエイヤのサ………
340モウこれで品切(しなぎれ)となりました。341(また)製造(せいざう)出来(でき)ましたら、342(みな)さまの(まへ)陳列(ちんれつ)(いた)します、343ホヽヽヽ』
344五三(いそ)『ヤア有難(ありがた)い』
345(きく)先生(せんせい)346貴方(あなた)(ひと)(ねが)ひます。347(もら)ひずては不道徳(ふだうとく)ですよ、348ねえ(みな)さま』
349五三(いそ)『わたしは(うま)れつきの無粋漢(ぶすゐかん)だ。350面白(おもしろ)(うた)はうたへない、351宣伝使(せんでんし)としての相当(さうたう)(うた)(うた)つてみませう、352折角(せつかく)(さけ)(きよう)がさめるかも()れませぬが、353やはらかい(ところ)(かた)いのが這入(はい)るのも、354調和(てうわ)()れてよいかも()れませぬ』
355万公(まんこう)(なん)乙姫(おとひめ)(さま)(まへ)ぢやと(おも)つて、356シカツウ仰有(おつしや)るワイ、357イヒヽヽヽ、358(はや)所望(しよもう)所望(しよもう)だ』
359五三(いそ)天地(てんち)(つく)(たま)ひたる
360(かみ)常住(じやうぢう)にましませど
361姿(すがた)()えぬぞ果敢(はか)なけれ
362(ひと)のおとせぬ(あかつき)
363(ほの)かに(ゆめ)にみえ(たま)
364あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
365(かみ)姿(すがた)(たふと)けれ
366
367祝詞(のりと)(ちから)(はる)(みづ)
368罪障(ざいしやう)(こほり)()けぬれば
369万法空寂(まんぽふくうじやく)(なみ)()ちて
370真如(しんによ)(きし)にぞ打寄(うちよ)する
371あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
372御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
373万公(まんこう)(なん)(とき)場所(ばしよ)(かんが)へない結構(けつこう)のやうな、374結構(けつこう)でないやうな(うた)だなア』
375(とら)(なん)だか先生(せんせい)(うた)()きますと、376(かみ)()がシーンとして()ました。377ヤツパリ(まん)さまの(うた)とは大変(たいへん)品格(ひんかく)(ちが)ひますなア、378(こころ)(いろ)言葉(ことば)()るとか()つて、379(たい)したものですワ。380(なん)とはなしに爽快(さうくわい)気分(きぶん)(ただよ)ひました』
381万公(まんこう)『モシ先生(せんせい)382目出度(めでた)う。383(とら)さまは余程(よほど)思召(おぼしめし)があると()えますよ。384オホヽヽヽ、385色男(いろをとこ)といふものは(かは)つたものだな。386(なん)()つても(むかし)別嬪(べつぴん)だからなア、387イヒヽヽヽ』
388魔我(まが)『コレ(まん)さま、389そんな(こと)()つては失礼(しつれい)ぢやありませぬか』
390万公(まんこう)『そら失恋(しつれん)です。391(なん)()つてもお(きく)さまにエツパツパをやられた立派(りつぱ)御人格者(ごじんかくしや)と、392(たみ)さまに肱鉄(ひぢてつ)(くら)つた、393どこやらの哥兄(にい)さまと、394蠑螈別(いもりわけ)さまにエツパツパのパアで置去(おきざ)りにされた、395(むかし)別嬪(べつぴん)さまと、396三組(みくみ)(そろ)うた失恋(しつれん)会議(くわいぎ)だから、397チツとは失恋(しつれん)(こと)仰有(おつしや)りませうかい。398(おも)へば(おも)へば同情(どうじやう)(いた)します。399同病相憐(あひあは)れむ同情(どうじやう)ヨシノリさまだ。400柔道行成(じうだうゆきなり)次第(しだい)()つちやつておく(わけ)にも()きますまい。401あゝ不義理(ふぎり)天上日(てんじやうひ)出神(でのかみ)(たい)し、402軽業師(かるわざし)玉乗姫(たまのりひめ)が、403あらう(こと)かあるまい(こと)か、404大広木正宗(おほひろきまさむね)さまをくはへて(はし)るといふのだから、405(こま)つたものだい。406イヒヽヽヽ』
407魔我(まが)大広木正宗(おほひろきまさむね)さまに玉則姫(たまのりひめ)
408かつさらはれて(たま)なしの魔我(まが)
409鈴野姫(すずのひめ)ガチヤ ガチヤ ガチヤと()(わた)
410(あと)()つかけて()くぞ可笑(をか)しき。
411打倒(うちたふ)(はな)()(くだ)鈴野姫(すずのひめ)
412われて飛出(とびだ)(たま)何処(いづこ)ぞ。
413地上姫(ちじやうひめ)(こひ)(ねがひ)(きく)(おも)へば
414(かた)約束(やくそく)たがやし大神(だいじん)
415面白(おもしろ)(その)面付(かほつき)(なん)(こと)
416(まん)さま(とら)さま(おも)ひやります』
417万公(まんこう)『コラ魔我(まが)(この)(まん)さまを(なん)(おも)
418(こひ)にかけたら世界(せかい)一人(いちにん)
419魔我(まが)万人(まんにん)口説(くど)いて一人(ひとり)出来(でき)(やつ)
420(ひろ)世界(せかい)(ただ)一人(いちにん)
421ウフヽヽヽうろたへ(さわ)(やみ)(よる)
422(きく)幽霊(いうれい)(きも)つぶす(かな)
423万公(まんこう)自分(じぶん)のみ二世(にせ)(つま)よと(おも)ひしに
424(たま)()りそこね()つる魔我彦(まがひこ)
425大広木正宗(おほひろきまさむね)さまに(かね)とられ
426(あと)()つかけて(はな)をとられつ。
427(とら)さま(いづ)れおとらぬ恋衣(こひごろも)
428(やぶ)れて今日(けふ)()ふすべもなし』
429(とら)(やかま)しい(こし)(まが)つた魔我彦(まがひこ)
430(こひ)(かた)らふ資格(しかく)あるべき。
431片思(かたおも)(かた)(おも)うてゐたものを
432(たま)()りそこねヒメ(悲鳴(ひめい))をあげつつ』
433万公(まんこう)(まん)これで失恋党(しつれんたう)(さけ)もりも
434一寸(ちよつと)()みけり(あと)無礼講(ぶれいかう)
435アク『見渡(みわた)せば女男(をんなをとこ)()(この)
436(つら)した(やつ)一人(ひとり)だもなし。
437(その)(なか)でアクのぬけたるアクさまは
438中立(ちうりつ)地帯(ちたい)安全(あんぜん)なもの』
439タク『タクさんにお(みや)(かみ)はありながら
440(この)(さわ)ぎをば他所(よそ)()るかな。
441(この)(かみ)夫婦喧嘩(ふうふげんくわ)(わざはひ)
442(まも)(たま)へる不義理天上(ふぎりてんじやう)
443テク『魔我彦(まがひこ)(かほ)青森白木上(あをもりしらきじやう)
444蠑螈(いもり)(わけ)横領姫(わうりやうひめ)されて』
445魔我(まが)花依(はなより)(ひめ)ではなくて鼻打(はなうち)
446婆姫(ばばひめ)さまとなりにける(かな)
447花依姫(はなよりひめ)身魂(みたま)変化(へんげ)猿彦姫(さるひこひめ)
448赤恥柿(あかはぢかき)のみのる(ひめ)かな』
449(とら)金竜姫(きんりうひめ)()られて難儀(なんぎ)大足姫(おほだるひめ)
450正宗(まさむね)さまは常世姫(とこよひめ)()げたか』
451魔我(まが)『ユラリ(ひこ)上義(じやうぎ)(ひめ)今頃(いまごろ)
452さぞ(むつま)じくおはしますらむ』
453 かく(たがひ)脱線歌(だつせんうた)(うた)ひつつ、454何時(いつ)()にやら、455カラリと()()かして(しま)つた。456数多(あまた)参詣者(さんけいしや)はゾロゾロと大広前(おほひろまへ)()して参拝(さんぱい)する、457下駄(げた)足音(あしおと)乱雑的(らんざつてき)(きこ)えて()る。
458大正一一・一二・一五 旧一〇・二七 松村真澄録)