霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第二章 黒士会(こくしくわい)〔一二三五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第47巻 舎身活躍 戌の巻 篇:第1篇 浮木の盲亀 よみ:うききのもうき
章:第2章 第47巻 よみ:こくしかい 通し章番号:1235
口述日:1923(大正12)年01月08日(旧11月22日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月6日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
治国別は竜公をいたわった。見れば穴の上にはタールがいる。竜公は、タールはもともとは人間のいい奴だから、善悪どちらにも傾くというと、治国別はタールの説得を竜公に命じた。
竜公は、自分はわざと治国別のところに入り込んで、ここまで宣伝使をおびきよせたのだ、と呼びかけて梯子を下ろさせた。しかし梯子から上がってきたのは治国別であった。治国別は、竜公は幽霊となったと言っておいて、後から竜公が上がってきてタールをおどかし、からかった。
タールは、今にアークが大勢の軍勢を連れてやってくるから、今のうちに逃げた方がよい、自分も供としてついていくから、と心配するが、治国別は笑って取り合わない。
そのうちにアークが数十人の騎士を引き連れてやってきて、治国別一行を取り囲んだ。アークは召し捕るように下知するが、治国別が天の数歌を奏上すると一同は身体が強直して馬上から転倒してしまった。
治国別は今度は、竜公に天の数歌を奏上させた。すると騎士たちは少しの怪我もなく身体は元に戻った。騎士たちは手早く馬にまたがって逃げ帰って行く。
後にはアークただ一人、どうしたものか体の自由がきかない。竜公がなにほど祈っても、アークの強直状態は直らなかった。治国別は、アークは自分に危害を加えようとしたから、自分が祈願してやらなければだめだろうと言って、暗祈黙祷した上で許す、と一言述べた。
アークの体は元に戻り、アークは治国別の前にひざまづいて涙を流しながら重々の無礼を謝した。治国別は自分はかすり傷一つ負っておらず、神の警告を示してくれた導師だと答えた。
そしてアークに、ランチ将軍への面会を依頼した。アークは感謝を現し、ランチ将軍に三五教への降伏を進めるように取り計らうと述べると、駒にまたがって陣中に帰って行った。
どうせランチ将軍の前に出たら前言を撤回してまたバラモン教に逆戻りするだろうと竜公が批評した。タールは、このごろアークはバラモン軍の中で決死隊を組織しているほど骨がしっかりしてきていると弁護した。
竜公が、そのアークが組織したという「国士会」の会則を見せてもらうと、立派な趣意書が書かれていたが、後に決意が骨抜きになるような但し書きが並んでいた。それを見て治国別と竜公は笑った。
二人はタールに案内されて、浮木の村の陣屋を指して宣伝歌を歌いながら進んで行く。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4702
愛善世界社版:28頁 八幡書店版:第8輯 481頁 修補版: 校定版:28頁 普及版:14頁 初版: ページ備考:
001 (おも)はぬ不覚(ふかく)をとつた治国別(はるくにわけ)は、002竜公(たつこう)(いた)はりながら、
003『オイ竜公(たつこう)004どこも怪我(けが)はなかつたかなア。005大変(たいへん)不覚(ふかく)をとつて、006(ふか)()()んだものだ』
007『ハイ有難(ありがた)(ござ)います、008(べつ)にどこも怪我(けが)(いた)して()りませぬが、009(あま)(ふか)(たく)みに(じやう)ぜられ、010(ふか)(あな)(おと)されて、011チツとばかり不快(ふくわい)でたまりませぬ。012アハヽヽヽ』
013『ウフヽヽヽ、014貴様(きさま)余程(よほど)三五教式(あななひけうしき)になつたな。015如何(いか)なる艱難(かんなん)出会(であ)つても、016(その)態度(たいど)でなくちや駄目(だめ)だ』
017『アナ有難(ありがた)や、018(あな)(たふと)しや、019三五教(あななひけう)神様(かみさま)020ヤツパリ、021バラモン(けう)三五教(あななひけう)反対(はんたい)穴有教(あなありけう)ですなア』
022『オイ何時(いつ)(まで)もこんな(ところ)蟄居(ちつきよ)して()つても(つま)らぬぢやないか。023モウいい加減(かげん)()(あが)工夫(くふう)をしたら()うだ』
024『さうですな、025(さいは)沢山(たくさん)(やり)()ててゐやがるし、026(この)(とほ)り、027蜘蛛(くも)()(ごと)く、028吾々(われわれ)身体(からだ)にまきつくやうに(あみ)をはつてゐよるのだから、029(やり)(さき)(みな)ぬいて、030(せん)ぐり(これ)をくくりつけ、031(やり)梯子(はしご)でも(こしら)へて(のぼ)つてやりませうか。032グヅグヅしてゐると、033アークの(やつ)沢山(たくさん)子分(こぶん)をつれて()て、034(うへ)から(やり)(あめ)でも()らされると(こま)りますで』
035『ナアニ(その)(とき)は、036これ(だけ)沢山(たくさん)(やり)だから、037(した)から(うへ)()けて(やり)(あめ)()らしてやればいいのだ。038マアゆつくりと(かぜ)(あた)らぬ空井(からゐど)(そこ)休養(きうやう)でもして(あが)ることにしようかい。039(とき)(あな)(ふち)には(たれ)かゐるぢやないか』
040彼奴(あいつ)ア、041タールといふ(をとこ)です。042随分(ずゐぶん)馬鹿(ばか)ですけれど、043人間(にんげん)のいゝ(やつ)ですから、044どちらへでも(かたむ)代物(しろもの)です。045(ひと)彼奴(あいつ)言向(ことむ)(やは)したらどうでせうかな』
046『お(まへ)初陣(うひぢん)(ひと)つやつて()よ、047治国別(はるくにわけ)はここにて、048竜公(たつこう)言霊戦(ことたません)観戦(くわんせん)するから……』
049 竜公(たつこう)は、
050『ハイ有難(ありがた)う』
051()ひながら、052(そら)打仰(うちあふ)ぎ、
053『バラモン(けう)先鋒隊(せんぽうたい)片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)秘書役(ひしよやく)054竜公(たつこう)055(いま)(あらた)めてタールの(やつこ)申付(まをしつ)ける。056(この)竜公(たつこう)は、057(なんぢ)()(ごと)く、058河鹿峠(かじかたうげ)(おい)治国別(はるくにわけ)(ため)一敗(いつぱい)()にまみれ、059全軍(ぜんぐん)遁走(とんそう)する(をり)しも、060腑甲斐(ふがひ)なき味方(みかた)敗残(はいざん)()るに(しの)びず一計(いつけい)(あん)じ、061松公(まつこう)(とも)(いつは)つて治国別(はるくにわけ)降参(かうさん)(よそほ)ひ、062ここ(まで)(みちび)いて()たのだ。063一時(いつとき)(はや)(この)(はう)縄梯子(なはばしご)なりと()(おろ)して(すく)(いだ)せよ。064さすれば(なんぢ)は、065アークにまさる手柄者(てがらもの)として、066ランチ将軍(しやうぐん)奏上(そうじやう)してやらう。067どうぢやタール、068(この)(はう)神算鬼謀(しんさんきぼう)(おそ)()つたであらうがなア』
069『ハイハイ、070そんな(こと)とは(ぞん)じませず、071(まこと)(もつ)御無礼(ごぶれい)(いた)しました。072サア()うぞお(あが)(くだ)さいませ。073(さいは)ひここに縄梯子(なはばしご)(ござ)いますから、074(いま)つり(おろ)します。075どうぞ貴方(あなた)(だけ)(あが)つて(くだ)さい。076そして治国別(はるくにわけ)はどうなりましたか』
077最早(もはや)治国別(はるくにわけ)にかまふ必要(ひつえう)はなくなつた。078縄梯子(なはばしご)さへつり(おろ)したらいいのだ』
079『それは(まこと)()(どく)(やう)080()(どく)でない(やう)なことで(ござ)いますな。081芋刺(いもざ)しにでもおなりなさつたのですか。082あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
083()ひながら、084縄梯子(なはばしご)(くら)陥穽(おとしあな)()(おろ)した。085治国別(はるくにわけ)縄梯子(なはばしご)(つた)うてトントンと(のぼ)りゆく。
086『ヤア竜公(たつこう)さま、087あゝ結構(けつこう)々々(けつこう)088怪我(けが)がなくて(なに)よりでした。089どうぞ(わたくし)御無礼(ごぶれい)(ひら)(ゆる)して(くだ)さいませ』
090『タールとやら、091拙者(せつしや)竜公(たつこう)では(ござ)らぬ。092治国別(はるくにわけ)だよ』
093『ヤア、094これはこれは(まこと)にはや、095(なん)ともかとも申上(まをしあ)げられませぬ。096マンマンマンお目出度(めでた)(ござ)います。097そして竜公(たつこう)()うなりましたか』
098『ウン、099竜公(たつこう)都合(つがふ)()くなつた。100マア大丈夫(だいぢやうぶ)だよ』
101『それはマア可哀相(かあいさう)なことを(いた)しました。102沢山(たくさん)()()ましただらうな』
103『ウン、104(いま)幽霊(いうれい)となつて、105井戸(ゐど)(そこ)から(あを)()をとぼし、106ヒユーとやつて()るだらうよ』
107 (この)(とき)(はや)くも竜公(たつこう)(あな)(くち)九分(くぶ)ばかり(のぼ)つて()てゐた。108そして両人(りやうにん)(はなし)小耳(こみみ)にはさみ、109(にはか)幽霊(いうれい)気分(きぶん)となつて、110()をクルリとむき、111(くち)をポカンと()け、112(した)をたらし、113(こし)をフニヤフニヤさせ、114両手(りやうて)(ちから)なげにグナリと(まへ)突出(つきだ)し、
115(うら)めしや』
116(めう)(こゑ)(しぼ)()した。117タールは、
118『キヤツ』
119(その)()尻餅(しりもち)をつき、
120『アヽヽヽヽ』
121(くち)をあけて(ふる)うてゐる。
122『アハヽヽヽ、123オイ、124タールさま、125(うそ)(うそ)だ。126竜公(たつこう)悪戯(いたづら)をしてゐるのだ。127オイ竜公(たつこう)128(あさ)つぱらから幽霊(いうれい)も、129()つからはやらないぞ』
130『オイ、131タール、132(じつ)(ところ)()まなかつたが、133井戸(ゐど)(そこ)から(おれ)()つた(こと)(みな)(うそ)だ。134地獄(ぢごく)(やう)(ところ)(おと)されたのだから、135地獄(ぢごく)相応(さうおう)(いつは)りを()つたのだよ。136最早(もはや)井戸(ゐど)(そこ)から(くら)ぶれば、137天国(てんごく)にも()すべき、138(この)平地(へいち)(のぼ)つて()たのだから、139(うそ)(いつは)りは()ふこた出来(でき)ない。140サア(これ)から、141ランチ将軍(しやうぐん)(やかた)へさして案内(あんない)をしてくれ』
142『ヤ、143それで(おれ)一寸(ちよつと)ばかり安心(あんしん)した。144(しか)しながら、145そんな(ところ)()かないで、146(わたし)一緒(いつしよ)()れて、147宣伝使(せんでんし)(さま)()げて(もら)(わけ)には()きますまいか。148なモシ治国別(はるくにわけ)(さま)とやら、149(けつ)して(わる)いこた(まを)しませぬ、150(いま)にアークが沢山(たくさん)軍勢(ぐんぜい)引連(ひきつ)れて、151貴方(あなた)召捕(めしと)りに()るに(ちが)ひありませぬ。152(はや)引返(ひきかへ)して(くだ)さい。153(その)(かは)(わたくし)もお(とも)さして(もら)ひますから』
154『ハヽヽヽヽ、155(てき)()(はた)()き、156(ほこ)(をさ)めて退却(たいきやく)するといふことはない、157三五教(あななひけう)目的(もくてき)(むか)つては退却(たいきやく)はない。158(ただ)驀進(ばくしん)あるのみだ』
159 かく(はな)(ところ)へ、160(うま)(またが)り、161先頭(せんとう)()つてやつて()たのはアークであつた。162アークは数十人(すうじふにん)騎士(きし)引連(ひきつ)れ、163(くつわ)(なら)べてバラバラと治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)取囲(とりかこ)み、
164三五教(あななひけう)治国別(はるくにわけ)とやら、165最早(もはや)かうなつては(かな)ふまい。166尋常(じんじやう)()をまはし、167(ばく)につけ。168ランチ将軍(しやうぐん)御前(みまへ)引連(ひきつ)れくれむ』
169大音声(だいおんじやう)()ばはつた。
170治国別(はるくにわけ)平然(へいぜん)として、
171『イヤ、172アークとやら、173出迎(でむか)大儀(たいぎ)174治国別(はるくにわけ)(なんぢ)要求(えうきう)なくとも、175堂々(だうだう)とランチ将軍(しやうぐん)面会(めんくわい)すべく(すす)んで()たものだ。176(かなら)心配(しんぱい)(いた)すな、177()げも(かく)れも(いた)さぬ』
178左様(さやう)なことを(まを)して、179吾々(われわれ)油断(ゆだん)をさせ、180(すき)(うかが)ひ、181遁走(とんそう)(いた)所存(しよぞん)であらう。182(その)()()はぬぞ。183ヤア部下(ぶか)(もの)184治国別(はるくにわけ)(はじ)め、185反逆者(はんぎやくしや)竜公(たつこう)諸共(もろとも)召捕(めしと)れ、186(なは)をかけよ』
187下知(げち)をする。188治国別(はるくにわけ)平然(へいぜん)として、189(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)するや、190一同(いちどう)騎士(きし)身体強直(しんたいきやうちよく)如何(いかん)ともするに(よし)なく、191パタリパタリと馬上(ばじやう)より椿(つばき)(はな)(あめ)にあうて()ちるが(ごと)く、192地上(ちじやう)顛倒(てんたう)(はじ)めた。193アークも馬上(ばじやう)から真逆様(まつさかさま)転落(てんらく)し、194治国別(はるくにわけ)脚下(あしもと)(だい)()になつて、195ふん()びて(しま)つた。196治国別(はるくにわけ)竜公(たつこう)(むか)ひ、197(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)せしめた。198竜公(たつこう)(やや)心中(しんちう)不安(ふあん)(かん)じながら、199一生懸命(いつしやうけんめい)になつて(あま)数歌(かずうた)二回(にくわい)ばかり奏上(そうじやう)した。200不思議(ふしぎ)一同(いちどう)騎士(きし)はすこしの怪我(けが)もなく強直(きやうちよく)した身体(しんたい)(もと)(ふく)し、201手早(てばや)(また)(うま)(またが)り、202(こま)(むちう)ち、203一生懸命(いつしやうけんめい)204疾風(しつぷう)(ごと)陣屋(ぢんや)をさして()(かへ)()く。205(あと)(のこ)るはアーク(ただ)一人(ひとり)206()うしたものか、207身体(からだ)自由(じいう)()かない。
208神様(かみさま)209有難(ありがた)(ござ)います。210(わたくし)(やう)悪党(あくたう)(たふと)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)(いた)しまして、211即座(そくざ)効験(かうけん)(あら)はし(くだ)さいましたのは、212(まつた)神様(かみさま)御恵(みめぐみ)御稜威(みいづ)(ぞん)じます。213(けつ)して竜公(たつこう)(ちから)では(ござ)いませぬ。214どうぞ(この)(うへ)益々(ますます)(あつ)(わたくし)身体(からだ)御使用(ごしよう)(くだ)さいます(やう)にお(ねが)(いた)します。215()いては(この)アーク一人(ひとり)のみ、216まだ言霊(ことたま)神徳(しんとく)(いただ)かずに、217(この)(とほ)強直状態(きやうちよくじやうたい)になつて()ります。218どうぞ(これ)(わたくし)(くち)(とほ)してお(すく)(くだ)さいます(やう)219御願(おねが)(いた)します。220あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
221一生懸命(いつしやうけんめい)合掌(がつしやう)する。222何程(なにほど)(いの)つても、223数歌(かずうた)奏上(そうじやう)しても、224アークの強直状態(きやうちよくじやうたい)(もと)(かへ)らなかつた。
225『モシ治国別(はるくにわけ)(さま)226()うしたものでせうか、227アーク一人(ひとり)神様(かみさま)がお(ゆる)(あそ)ばさぬのでせうかな』
228『ウン、229(この)アークは治国別(はるくにわけ)危害(きがい)(くは)へむと(いた)したのだから、230拙者(せつしや)祈願(きぐわん)(いた)してやらねば、231駄目(だめ)だらう』
232()ひながら、233(しばら)暗祈黙祷(あんきもくたう)をつづけ、234全身(ぜんしん)神格(しんかく)流入(りうにふ)充溢(じういつ)せし(とき)(うかが)ひ……(ゆる)す……と一言(ひとこと)()れば、235不思議(ふしぎ)やアークの身体(からだ)(もと)(ふく)した。236アークは治国別(はるくにわけ)(まへ)(ひざまづ)き、237(なみだ)をたらしながら、238重々(ぢゆうぢゆう)無礼(ぶれい)(しや)した。
239『アークとやら、240大変(たいへん)なお骨折(ほねを)りで(ござ)つたなア。241(しか)しながら治国別(はるくにわけ)はお(かげ)()つて(この)(とほ)り、242カスリ(きず)(ひと)()うて()らねば、243(なんぢ)(たい)して(すこ)しも(うら)むることはない。244(いな)(むし)神々様(かみがみさま)御警告(ごけいこく)だと(おも)感謝(かんしや)してゐる。245神様(かみさま)(なんぢ)()をとほし、246(この)治国別(はるくにわけ)に、247油断(ゆだん)大敵(たいてき)たることをお(しめ)(くだ)さつたのであらう。248さすれば(なんぢ)(われ)(たい)して、249唯一(ゆゐいつ)導師(だうし)だ。250(おほい)感謝(かんしや)する。251サア、252アーク殿(どの)253そなたもバラモン(ぐん)(うち)(おい)て、254()なり相当(さうたう)地位(ちゐ)()つてゐる人物(じんぶつ)らしい。255さぞ陣中(ぢんちう)にも御用(ごよう)もあらう。256(はや)(かへ)つて治国別(はるくにわけ)即刻(そくこく)ランチ将軍(しやうぐん)面会(めんくわい)(ため)257参上(さんじやう)(いた)すと(つた)へてくれ』
258『ハイ、259(なん)とも申上(まをしあ)(やう)(ござ)いませぬ。260(しか)しながら(わたくし)はこれより(あふ)せに(したが)ひ、261ランチ将軍(しやうぐん)(まへ)(まか)()で、262三五教(あななひけう)教理(けうり)申上(まをしあ)げ、263一時(いちじ)(はや)貴方(あなた)(まへ)降服(かうふく)(いた)(やう)取計(とりはか)らひませう。264(しか)らば御免(ごめん)(くだ)さいませ』
265といふより(はや)(こま)(またが)り、266一鞭(ひとむち)あてて(くも)(かすみ)陣中(ぢんちう)()して(かへ)()く。
267『ハヽヽヽヽ、268たうとうアークの大将(たいしやう)269ヘコたれよつたな。270(しか)しマア偉相(えらさう)にランチ将軍(しやうぐん)改心(かいしん)させるなんて、271御託(がふたく)()つて()きよつたが、272彼奴(あいつ)駄目(だめ)だ。273そばへゆくと、274(ねこ)(まへ)()(ねづみ)のやうにピリピリふるうて、275(なに)もよう()はないのだからなア。276ランチ将軍(しやうぐん)()(うご)(かた)(かほ)(いろ)ばかり(かんが)へて、277ハートに(なみ)()たせる代物(しろもの)だから、278到底(たうてい)成功(せいこう)覚束(おぼつか)ない。279(わか)れる(とき)のお正月(しやうぐわつ)言葉(ことば)だ。280キツとランチ将軍(しやうぐん)(うしろ)について、281治国別(はるくにわけ)征伐(せいばつ)なんて、282洒落(しやれ)てやつて()るでせうよ。283宣伝使(せんでんし)(さま)284(けつ)して油断(ゆだん)はなりませぬで、285あゝいふことはバラモン(けう)一般(いつぱん)常套(じやうたう)手段(しゆだん)ですからなア』
286『ウン、287さうかも()れないが、288吾々(われわれ)(けつ)して(ひと)(うたが)ふこた出来(でき)ない。289何事(なにごと)惟神(かむながら)(まか)しておけばいいのだ』
290『オイ竜公(たつこう)さま、291さう()くびつたものぢやないよ。292バラモン(けう)(なか)にもチツとは(ほね)もあり、293(はな)()もある人物(じんぶつ)()ぜつてゐるからな。294アークは(この)(ごろ)295バラモン(けう)(ぐん)(うち)で、296一種(いつしゆ)決死隊(けつしたい)ともいふべき団体(だんたい)(つく)つてるのだ』
297有名無実(いうめいむじつ)団体(だんたい)(いく)らあつたつて、298(やく)()つものかい。299そんなことを()つて空威張(からゐば)りをするのだらう。300コケ(おど)した、301(いは)何々団(なになにだん)302(いは)何々会(なになにくわい)と、303雨後(うご)(たけのこ)ほどにそこら(ぢう)奇々怪々(ききくわいくわい)(くわい)創立(さうりつ)されるが、304宣言(せんげん)立派(りつぱ)でも実行(じつかう)出来(でき)るためしはないぢやないか。305そしてアークの創立(さうりつ)した(くわい)はどんな(くわい)だ、306法螺(ほら)(かひ)か、307(どぶ)(かひ)か、308どうでロクなものぢやなからう』
309馬鹿(ばか)()ふな、310吾々(われわれ)国士(こくし)がよつて、311国士会(こくしくわい)といふものを(つく)り、312最善(さいぜん)のベストを(つく)してゐるのだ』
313『ハハア、314まつくろけになつて()黒死病(こくしびやう)(くわい)だな。315ウンそれで(わか)つた、316ペストを(つく)すのだ。317それよりもバラモン(しやう)掛合(かけあ)つて、318一匹(いつぴき)(ねづみ)十銭(じつせん)づつに買上(かひあ)げさせさへすりや、319それの(はう)余程(よつぽど)近道(ちかみち)だよ』
320貴様(きさま)にはテンデ(はなし)出来(でき)ないワ。321国士会(こくしくわい)()つたら、322国家(こくか)(うれ)ふる志士(しし)団体(だんたい)だ』
323獅子(しし)(とら)(おほかみ)(へう)(ねづみ)()らぬが、324どうでロクな(やつ)(あつ)まる団体(だんたい)ぢやなからう、325アークが発頭人(ほつとうにん)だと()いちや、326(あま)信用(しんよう)出来(でき)ぬぢやないか。327そして(なに)(くわい)趣意書(しゆいしよ)でも出来(でき)てゐるのか』
328()不平党(ふへいたう)張本人(ちやうほんにん)アークさまが主唱者(しゆしやうしや)で、329おれ(たち)賛助員(さんじよゐん)だ。330(この)趣意書(しゆいしよ)一寸(ちよつと)拝読(はいどく)してみよ』
331得意気(とくいげ)(ふところ)から(ちひ)さい印刷物(いんさつぶつ)取出(とりだ)して()せた。332竜公(たつこう)()()り、333趣意書(しゆいしよ)()(くだ)せば()文章(ぶんしやう)()いてある。
 
334 趣意書(しゆいしよ)
335 国事(こくじ)()()なれども、336天下一人(てんかいちにん)聴従(ちやうじゆう)すべき権威者(けんゐしや)なし、337所謂(いはゆる)慨世(がいせい)()338(くち)(ひら)けば思想(しさう)変化(へんくわ)()ひ、339思想(しさう)(たい)するには思想(しさう)(もつ)てせざる(べか)らざるを()く、340(その)(げん)不可(ふか)なしと(いへど)も、341漫然(まんぜん)たる抽象論(ちうしやうろん)(この)(さい)寸効(すんかう)なし。342(いは)んや公党(こうたう)公人(こうじん)相率(あひひき)ゐて()(あざむ)き、343(おのれ)(あざむ)き、344(ただ)(みづか)(まも)るに(きふ)にして、345心術(しんじゆつ)陋劣(ろうれつ)暴露(ばくろ)して(はばか)らず、346益々(ますます)思想(しさう)変化(へんくわ)助長(じよちやう)しつつあるに(おい)ておや。347吾々(われわれ)国民(こくみん)(むし)百人(ひやくにん)論客(ろんかく)よりも一人(いちにん)志士(しし)()つべきを(おも)ふ。348それ(なん)(おもむ)くは()本領(ほんりやう)なり、349(だい)にしては天下(てんか)国家(こくか)(なん)350(せう)にしては一地方(いちちはう)一個人(いちこじん)(なん)351(わが)(たう)()(いやし)くも()せず、352()(てい)して(これ)(すく)はむことを(ほつ)す。353もし(わが)(たう)()一度(ひとたび)()つて解決(かいけつ)せざる案件(あんけん)あらば、354そは士道(しだう)汚辱(をじよく)たらむのみ。355(なん)とならば(わが)国士会(こくしくわい)()(ただ)しからざれば、356(だん)じて()たず、357誓約十則(せいやくじつそく)(しめ)すが(ごと)く、358(ことごと)士道(しだう)率由(そつゆう)して行動(かうどう)すればなり、359(あへ)天下(てんか)(せん)す。
360  (ねん) (ぐわつ) ()
361国士会(こくしくわい)
 
362 十則(じつそく)
363一、364国士(こくし)はバラモン(けう)男子(だんし)たることを(ほこ)りとす。
365二、366国士(こくし)(なん)(おもむ)くを(もつ)本領(ほんりやう)とす、367(ただ)時処位(じしよゐ)によるべし。
368三、369国士(こくし)(ちか)つて無名(むめい)(たたか)ひを(せん)せず。370(ただ)しランチ将軍(しやうぐん)(めい)なれば(あへ)()せず。
371四、372国士(こくし)対者(たいしや)(ため)(はか)つて(ちう)なるを()す。373(ただし)三五教(あななひけう)(たい)しては(この)(かぎ)りにあらず。
374五、375国士(こくし)本来(ほんらい)(てき)(いう)せず、376(ゆゑ)勝敗(しようはい)超越(てうゑつ)す。377河鹿峠(かじかたうげ)言霊戦(ことたません)()ける(わが)(ぐん)行動(かうどう)(その)好適例(かうてきれい)なり)
378六、379国士(こくし)一諾(いちだく)一死(いつし)(あたひ)するも()いず、380(ただ)最愛(さいあい)女性(ぢよせい)(かぎ)る。
381七、382国士(こくし)精神(せいしん)(しゆ)とし、383形式(けいしき)(じゆう)とす。384(ただ)しバラモン軍中(ぐんちう)()りては、385(あるひ)適用(てきよう)せざることあるべし。
386八、387国士(こくし)過去(くわこ)()はず未来(みらい)(しん)ず、388(ただし)バラモン(けう)大棟梁(だいとうりやう)大黒主(おほくろぬし)最後(さいご)(かなら)ずしも光明(くわうみやう)ならざることを。
389九、390国士(こくし)無意義(むいぎ)なる一日(いちじつ)(てん)()づ、391(ただし)酒宴(しゆえん)(とき)仮令(たとへ)三日(みつか)四日(よつか)たりとも(これ)()づることなし。
392十、393国士(こくし)一人(いちにん)知己(ちき)(いう)すれば()れり、394(ただ)異性(いせい)なれば(もつと)もよしとなす。
 
395『なアんだ、396立派(りつぱ)なことを(なら)べてゐるが但書(ただしがき)がサツパリ駄目(だめ)ぢやないか。397これだからバラモン(しき)(あて)にならないといふのだ。398羊頭(やうとう)をかかげて狗肉(くにく)()るのだからなア』
399『これが現代(げんだい)処世法(しよせいほふ)最優秀(さいいうしう)なる手段(しゆだん)だ。400バラモン(けう)真髄(しんずゐ)をうがつたものだ、401(これ)でなくちや()(なか)(わた)れないからな』
402『アハヽヽヽ、403モシ先生(せんせい)404どうです、405国士会(こくしくわい)も、406随分(ずゐぶん)奇抜(きばつ)なことを()ふぢやありませぬか』
407『ウン結構(けつこう)だ、408(いつは)らざるバラモンの告白(こくはく)だ。409イヤもう感心(かんしん)(いた)した』
410(わたし)だつたら、411こんな(くわい)へは入会(にふくわい)しませぬな。412エキスキユーズ・ミー………とやりますよ』
413『ハヽヽヽヽ、414ドラ()かう。415タールさまに案内(あんない)して(もら)はうかなア。416(いな)国士会(こくしくわい)賛助員(さんじよゐん)さま、417御先導(ごせんだう)(ねが)ひます』
418竜公(たつこう)国士会員(こくしくわいいん)万歳(ばんざい)419アハヽヽヽ』
420 かく(わら)(きよう)じながら、421治国別(はるくにわけ)(ほか)二人(ふたり)浮木(うきき)(むら)陣屋(ぢんや)()して、422宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら、423朝露(あさつゆ)をふんで(いきほひ)よく(すす)()く。
424大正一二・一・八 旧一一・一一・二二 松村真澄録)