霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 (むね)(とどろき)〔一二八七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻 篇:第3篇 暁山の妖雲 よみ:ぎょうざんのよううん
章:第13章 第49巻 よみ:むねのとどろき 通し章番号:1287
口述日:1923(大正12)年01月18日(旧12月2日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年11月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫は杢助のような立派な男を夫に持つことができ、鼻息荒く、翌日からは義理天上日の出神をやたらに振り回しだした。
高姫はヨルに朝食の用意を言いつけた。そこへ杢助が朝の礼拝から帰ってきた。高姫は、杢助の耳がよく動くのに気が付いて指摘した。杢助は、神格に充たされた神人は耳が動くのだとごまかした。
高姫と杢助は、ヨルが朝食を一膳しか用意しなかったことで喧嘩を始め、ヨルがうまく言ってその場を収めた。杢助は祠の森の境内を巡視すると言って一人で出て行った。高姫は装束を着かえて日の出神と成りすまし、参拝者が来るのを待っている。
ヨルが受付に控えていると、お寅と魔我彦がやってきた。二人はヨルから、高姫が日の出神の生き宮としてここに現れたと聞いて、高姫に合わせてもらようヨルに頼んだ。
高姫はヨルの報告を聞いて、蠑螈別と魔我彦がやってきたと勘違いし、まずは魔我彦だけを呼んで話を聞いた。魔我彦は、高姫が三五教に改心してから蠑螈別が小北山にウラナイ教を開いたこと、その後三五教の宣伝使がやってきて皆三五教に改心したことを話した。
高姫は、魔我彦の連れが、お寅という蠑螈別と一緒に小北山を開いた元幹部だと聞いて、義理天上日の出神から言って聞かせることがあるからと、お寅を自室に呼んだ。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4913
愛善世界社版:184頁 八幡書店版:第9輯 99頁 修補版: 校定版:190頁 普及版:85頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)(おも)ひもよらぬ立派(りつぱ)(をつと)()ち、002ますます鼻息(はないき)(あら)く、003翌朝(よくてう)よりは義理天上日(ぎりてんじやうひ)出神(でのかみ)(また)もや矢鱈(やたら)にふり(まは)()した。004時置師神(ときおかしのかみ)(あさ)()(はや)うから、005神殿(しんでん)参拝(さんぱい)すると()つて()()つた。006(あと)高姫(たかひめ)火鉢(ひばち)(まへ)におき、007キチンと(すわ)(なが)(なが)煙管(きせる)煙草(たばこ)をポカポカふかしてゐる、008そして(りん)をチンチンと(たた)いた。009ヨルはコワゴワ(なが)(あたま)()きもつて、010(ふすま)をソツとひらき、
011『へ、012御免(ごめん)なさいませ』
013身体(からだ)半分(はんぶん)つき()し、014(はや)くも()(ごし)になつてゐる。
015高姫(たかひめ)『コレ、016ヨル(こう)017(なん)()恰好(かつかう)だいな。018(その)(こし)(なん)だい、019みつともない、020サツサとお這入(はい)りなさい』
021ヨル『ヘー、022何分(なにぶん)夜通(よどほ)し、023使(つか)つたものですから、024とうとこんな(こし)になりました。025本当(ほんたう)世界中(せかいぢう)一所(いつしよ)によつた(やう)心持(こころもち)(ござ)いましたよ、026エヘヽヽヽ』
027高姫(たかひめ)『お(まへ)は、028(わたし)たちのヒソヒソ(ばなし)()いてゐたのだな』
029ヨル『ハイ、030エヽヽ、031世界中(せかいぢう)032よつた(やう)だと、033貴女(あなた)仰有(おつしや)つたものだから、034(わたし)()()でなく、035もしもこんな(ところ)世界中(せかいぢう)押寄(おしよ)せて()うものなら、036貴女(あなた)(まへ)(をつと)(まじ)つてゐるに(ちが)ひない。037さうすりや大喧嘩(おほげんくわ)(はじ)まるだらうと、038捻鉢巻(ねぢはちまき)でチヤンと夜通(よどほ)(ひか)えてゐました、039()()無事(ぶじ)岩戸(いはと)(びら)きも(あひ)すみ、040目出度(めでた)(ござ)います、041エツヘヽヽヽ、042何分(なにぶん)ヨルの守護(しゆご)(ござ)いますから、043(この)ヨル(こう)夜分(やぶん)()られませぬので……』
044高姫(たかひめ)(ほか)連中(れんちう)()うして()つたのだい』
045ヨル『ハイ、046(つぎ)()六人(ろくにん)(なが)ら、047並列(へいれつ)(いた)しまして、048御招伴(おせうばん)に、049ラマ(けう)修業(しうげふ)(いた)して()りました。050随分(ずいぶん)(いきほひ)のよいものでしたよ』
051高姫(たかひめ)『エーエ、052(こま)つた連中(れんちう)だなア、053(はや)御膳(おぜん)(こしら)へをしておくれ』
054ヨル『ハイ(かしこ)まりました。055(しか)しお(ぜん)(ひと)つですか、056(ふた)つにしませうか』
057高姫(たかひめ)『そんなこた()はいでも、058大抵(たいてい)()()かしたら()うだいなア』
059ヨル『そんならお二人(ふたり)さまですから、060(ふた)つに(いた)しませうか』
061高姫(たかひめ)『エーエ、062()()かぬ(をとこ)だなア、063(ふた)つは(すなは)(ひと)つ、064(いち)といへば()(さと)(をとこ)でないと(まこと)御用(ごよう)には()ちませぬぞや』
065ヨル『どうぞハツキリ()つて(くだ)さいませ。066(ふた)つか(ひと)つかと()(こと)を……』
067高姫(たかひめ)『エーエ、068よいかげんに(かんが)へておきなさい。069大抵(たいてい)(わか)つて()るだらう』
070ヨル『なる(ほど)071(わか)りました。072昨夕(ゆうべ)(ふた)つでしたな、073そんなら(ふた)つに(いた)しませう。074据膳(すゑぜん)くはぬは(をとこ)(うち)でないと()ひますから、075イツヒヽヽヽ』
076()(なが)ら、077(した)をチヨツとかみ()し、078(あご)(ふた)()つしやくり()でて()く。
079 高姫(たかひめ)煙管(きせる)火鉢(ひばち)をポンと(たた)(なが)ら、
080高姫(たかひめ)『あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)081何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)(とき)さまと末永(すゑなが)()はれまして、082神界(しんかい)(ため)結構(けつこう)御用(ごよう)出来(でき)ます(やう)に……』
083(いの)つてゐる。084そこへ時置師(ときおかし)(かみ)神殿(しんでん)礼拝(れいはい)(をは)り、085ニコニコし(なが)(かへ)(きた)り、
086時置(ときおか)『ヤア(たか)ちやん、087えらう()たせました。088さぞお(さむ)しいこつて(ござ)りませう』
089高姫(たかひめ)『コレ時置師(ときおかし)(かみ)さま、090(たれ)()いてるか(わか)りませぬよ。091(たか)ちやんなんて()つて(もら)ふと、092サツパリ威信(ゐしん)()におちます。093義理天上(ぎりてんじやう)日出神(ひのでのかみ)()つて(もら)はにやなりませぬぞや』
094時置(ときおか)『ヤツパリ日出神(ひのでのかみ)()(とほ)(つも)りですかな。095成程(なるほど)そいつあ(めう)だ。096(よろ)しい、097そんならこれから日出神(ひのでのかみ)(さま)申上(まをしあ)げませう』
098高姫(たかひめ)(なん)ですか、099(あらた)まつた(もの)()ひやうをして、100本当(ほんたう)白々(しらじら)しい』
101時置(ときおか)『そんなら、102(やま)神様(かみさま)103(なん)(まを)したらいいのですか』
104高姫(たかひめ)義理天上(ぎりてんじやう)日出神(ひのでのかみ)といふのだよ』
105時置(ときおか)『よしよし、106そんなら、107これから、108さう(まを)しませうかな』
109 高姫(たかひめ)はツーンとすねて、110(かた)をプリツとふり、111背中(せなか)()け、
112高姫(たかひめ)勝手(かつて)になさいませ。113どうでこんなお多福(たふく)はお()()しますまいからなア、114ヘン』
115時置(ときおか)『アツハヽヽヽ、116芋虫(いもむし)(やう)に、117()うプリンプリンと(あそ)ばすお(かた)だなア』
118高姫(たかひめ)『あゝ貴方(あなた)119(みみ)(うご)くぢやありませぬか、120あらマア不思議(ふしぎ)なこと』
121時置(ときおか)(わたし)(みみ)時々(ときどき)(うご)くのは、122(うま)れつきだよ。123それだから(とき)()ふのだ。124(まへ)だつて、125(ある)拍子(ひやうし)(しり)をふるだらう。126()(くらゐ)(おほ)きな(しり)でさへもプリン プリンふるのだから(ちひ)さい(みみ)(うご)(くらゐ)127(なに)可怪(をか)しいのだ。128(まへ)たちの(みみ)不随意筋(ふずゐいきん)()つて、129(おも)ふやうに(うご)かないのだらう。130祝詞(のりと)文句(もんく)にもあるだないか、131(あめ)斑駒(ふちこま)(みみ)ふりたてて()こしめせとか、132小男鹿(さをしか)()つの(みみ)ふり()てて……とか()いてあるだらう。133すべて神格(しんかく)()たされた大神人(だいしんじん)(みみ)(うご)くのだよ。134国治立(くにはるたち)大神様(おほかみさま)でさへも、135大変(たいへん)によく(みみ)(うご)いたのだ。136それだから、137あれ(だけ)大神業(だいしんげふ)出来(でき)たのだ。138(しばら)(その)御神力(ごしんりき)(かく)させ(たま)ふたのを、139(みみ)をかくし(たま)ふと祝詞(のりと)()いてあるのだ。140(みみ)(うご)くのは大神人(だいしんじん)(うま)(かは)りたる証拠(しようこ)だよ。141義理天上(ぎりてんじやう)さま、142(この)時置師(ときおかし)(みみ)(うご)くのが(いや)なら、143これきり(わたし)は、144(まへ)さまのお()にいらぬに(ちが)ひないから、145(わか)れませうよ』
146高姫(たかひめ)『さう(おこ)つて(もら)つちや(こま)るぢやありませぬか。147(たがひ)打解(うちと)けた夫婦(ふうふ)(なか)148(みみ)(うご)くと()つて()めた(くらゐ)に、149さう(おこ)るといふ(こと)がありますか』
150時置(ときおか)『アハヽヽヽ、151(まへ)(あま)りプリンプリンするので、152(なに)(ひと)返報(へんぱう)がへしをせうと(おも)つてた(ところ)だ。153それで一寸(ちよつと)すねて()たのだよ。154アハヽヽヽ』
155高姫(たかひめ)『おきやんせいなア、156よい(とし)をしてゐて、157みつともない』
158時置(ときおか)『エツヘツヘツヘ』
159 かかる(ところ)(かへで)(ふすま)をソツとあけ、
160(かへで)『もし日出神(ひのでのかみ)小母様(をばさま)161御膳(おぜん)出来(でき)ました』
162膳部(ぜんぶ)()(はこ)んで()た。
163高姫(たかひめ)『あゝ御苦労(ごくらう)さま、164どうぞ其処(そこ)においといておくれ、165そして御膳(おぜん)はたつた(ひと)つだなア、166(はや)くもう一膳(いちぜん)()つて()(くだ)さい』
167(かへで)『あの、168小母(をば)さま、169御膳(おぜん)はこれきりのよ、170ヨルさまが一膳(いちぜん)()つて()けばよいと()ひましたの』
171高姫(たかひめ)『エヽ、172()()かぬ(をとこ)だなア。173コレ(かへで)さま、174ヨルを一寸(ちよつと)此処(ここ)へお()でといつて(くだ)さい』
175(かへで)『ハイ』
176()(なが)(この)()()つて()く。
177時置(ときおか)『オイ日出神(ひのでのかみ)さま、178(ぼく)はモウお(いとま)する。179これ(だけ)虐待(ぎやくたい)されちや、180()りたくても()られないからな。181(おれ)だつて木像(もくざう)ではなし、182なんぼ杢助(もくすけ)だと()つてもヤツパリ食物(しよくもつ)必要(ひつえう)だ。183朝飯(あさめし)もよんで(もら)へぬやうな(ところ)()つても()まらないから……』
184憤然(ふんぜん)として立上(たちあが)るを、185高姫(たかひめ)(あわ)てて(とり)すがり、186金切声(かなきりごゑ)()して、
187高姫(たかひめ)『コレ、188(とき)さま、189さう短気(たんき)()すものぢや(ござ)んせぬわいな、190昨夕(ゆうべ)のことを(おぼ)えてますか、191()()かない(やつ)(ばか)りだからこんな不都合(ふつがふ)(いた)しましたのですよ。192(わたし)がトツクリと()()かせますから、193御機嫌(ごきげん)(なほ)して、194(この)(ぜん)召上(めしあが)つて(くだ)さいな』
195時置(ときおか)一人前(いちにんまへ)(をとこ)化物扱(ばけものあつか)(いた)して、196(みみ)(うご)くの(なん)のと侮辱(ぶじよく)(くは)へた(うへ)197(なん)だ。198貴様(きさま)膳部(ぜんぶ)(ばか)()()て、199(おれ)をてらしよつた。200馬鹿(ばか)らしい、201そんな(ところ)にのめのめと()(とき)さまぢやないぞ』
202高姫(たかひめ)『お(まへ)さまは(この)高姫(たかひめ)(こころ)(わか)りませぬのかい、203……コレコレ、204ヨル、205一寸(ちよつと)()で』
206 (この)(こゑ)にヨルは、207ソツと(ふすま)をあけ、
208ヨル『ハイ、209(なん)御用(ごよう)(ござ)いますか』
210高姫(たかひめ)『お(まへ)なぜ、211(ぜん)(ふた)つして()ないのだい』
212ヨル『ハイ、213夜前(やぜん)ソツと()いて()りましたら、214(ふた)つにせうか、215イヤイヤ今度(こんど)(はじ)めてだから、216(ひと)つにしておかうと仰有(おつしや)つたぢや(ござ)いませぬか、217それ(ゆゑ)仰有(おつしや)つた(とほ)(いた)しました』
218高姫(たかひめ)(なん)と、219()()かぬ(をとこ)だなア。220コレからキツと二人(ふたり)()つたら、221二人前(ににんまへ)()つて()るのだよ』
222ヨル『ハイ、223今後(こんご)心得(こころえ)ます。224(じつ)(ところ)貴女(あなた)何時(いつ)断食(だんじき)断食(だんじき)仰有(おつしや)るものですから、225今朝(けさ)から断食(だんじき)をお(はじ)めなさつたかと(おも)ひ、226客様(きやくさま)(だけ)()つて()たので(ござ)います。227(かへで)さまが(なん)()つたか()りませぬが、228(この)(ぜん)貴女(あなた)のぢや(ござ)いませぬ。229トさまので(ござ)います』
230 高姫(たかひめ)機嫌(きげん)(なほ)し、
231『あゝさうかな、232さうだらう さうだらう、233そんな()()かぬ(をとこ)此処(ここ)には()らない(はず)だ。234(しか)今朝(けさ)(わし)(いただ)くのだから、235どうぞモウ一膳(いちぜん)(こしら)へして()(くだ)さい……コレ時置師様(ときおかしさま)236(いま)(きき)(とほ)りで(ござ)います、237これで御合点(ごがつてん)(まゐ)りましただらう』
238時置(ときおか)『ヤア、239()まなかつた。240あ、241それを()いて、242(わし)満足(まんぞく)した。243高姫(たかひめ)244エライ心配(しんぱい)をかけてすまなかつた。245コレ(この)(とほ)杢助(もくすけ)両手(りやうて)(あは)せて、246(わび)(いた)します。247惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
248高姫(たかひめ)『オツホヽヽヽ、249おきやんせいなア、250(ひと)(こま)らせようと(おも)ふて、251本当(ほんたう)仕方(しかた)のない(ひと)だ。252(わたし)()(ばか)()まして、253(にく)らしいワ』
254時置(ときおか)『ワハツハヽヽ、255マア()いワイ。256(いぬ)()はぬ喧嘩(けんくわ)をして()つても、257はづまぬからなア』
258 ヨルは膳部(ぜんぶ)用意(ようい)をなすべく、259(いそ)いで(この)()立去(たちさ)つた。260(やうや)くにして二人(ふたり)機嫌(きげん)よく朝餉(あさげ)をすまし、261時置師(ときおかし)(ほこら)(もり)境内(けいだい)一々(いちいち)巡視(じゆんし)すると()つて、262(ただ)一人(ひとり)瓢然(へうぜん)()()つた。263高姫(たかひめ)はソロソロ()つて()参詣者(さんけいしや)(たい)し、264(をしへ)(つた)ふべく装束(しやうぞく)をキチンと着替(きか)へて、265日出神(ひのでのかみ)()りすまし、266(みす)()つて、267(なまり)天神(てんじん)さま(ぜん)脇息(けふそく)(もた)(なが)ら、268(きやく)()(がほ)である。
269 ヨルは(れい)(ごと)朝餉(あさげ)をすまし、270受付(うけつけ)にすました(かほ)で、271賓頭盧尊者(びんづるそんじや)(よろ)しくといふ(てい)(ひか)えてゐる。272そこへスタスタやつて()たのはお(とら)273魔我彦(まがひこ)両人(りやうにん)であつた。
274(とら)(なん)でも此処(ここ)御普請(ごふしん)出来(でき)てると()いて()りましたが、275立派(りつぱ)御普請(ごふしん)だなア、276十曜(とえう)(もん)(はた)(ひらめ)いてゐる。277イソの(やかた)(まゐ)るには此処(ここ)(とほ)りぬけにする(わけ)にも()くまい。278(こころ)()くけれど、279(ひと)参拝(さんぱい)して(まゐ)りませうか』
280魔我(まが)(おな)三五教(あななひけう)(かみ)さまぢやありませぬか、281是非(ぜひ)(とも)参拝(さんぱい)(いた)しませう』
282受付(うけつけ)にツカツカと(すす)みより、
283魔我(まが)『モシ、284(わたくし)(もと)小北山(こぎたやま)のウラナイ(けう)副教主(ふくけうしゆ)(ござ)いましたが、285三五教(あななひけう)松彦(まつひこ)(さま)(をしへ)(うけたま)はり、286両人連(ふたりづ)れでイソの(やかた)(まゐ)途中(とちう)287一寸(ちよつと)邪魔(じやま)(いた)しました。288どうぞ参拝(さんぱい)をさして(いただ)きたいもので(ござ)います』
289ヨル『それは()御参(おまゐ)りで(ござ)います。290(わたくし)()うして受付(うけつけ)(いた)して()りますが、291(もと)はバラモン(けう)信者(しんじや)(ござ)いました。292そしてイソの(やかた)宮潰(みやつぶ)しにゆく(いくさ)(うち)(くは)はり(なが)(その)神様(かみさま)御家来(ごけらい)となつて、293御用(ごよう)をするとは、294本当(ほんたう)人間(にんげん)運命(うんめい)といふものは不思議(ふしぎ)なものですよ。295(まへ)さまもウラナイ(けう)では立派(りつぱ)なお(かた)だと(うけたま)はりますが、296さぞ神様(かみさま)はお(よろこ)びでせう。297ここには義理天上(ぎりてんじやう)日出神(ひのでのかみ)(さま)生宮様(いきみやさま)御降臨(ごかうりん)(あそ)ばし それはそれは エライ御威勢(ごゐせい)(ござ)いますよ』
298魔我(まが)『エ、299(なん)(おほ)せられます、300日出神(ひのでのかみ)生宮様(いきみやさま)とは……それは何方(どなた)(ござ)いますか』
301ヨル『ハイ、302楓姫(かへでひめ)といふ(わか)(むすめ)御神懸(おかむがか)(あそ)ばしてゐられましたが、303それはホンの四五日(しごにち)(あひだ)で、304本当(ほんたう)日出神(ひのでのかみ)生宮(いきみや)305三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)高姫(たかひめ)(さま)がお()でになつて()られます、306それはそれはエライ御神力(ごしんりき)(ござ)りますわ』
307魔我(まが)『ヤア、308其奴(そいつ)不思議(ふしぎ)だ。309こんな(ところ)高姫(たかひめ)(さま)にお()にかかるとは(ゆめ)にも()らなかつた。310あゝあ蠑螈別(いもりわけ)さまが()つたら、311さぞ(よろこ)ぶことだらうに……コレお(とら)さま、312蠑螈別(いもりわけ)さまのレコですよ。313(はら)()てちや()けませぬよ』
314(とら)『オツホヽヽヽ、315コレ魔我(まが)ヤン、316いつ(まで)(なに)()ふのだい。317(この)(とら)最早(もはや)そんな恋着心(れんちやくしん)(つゆ)(ほど)()りませぬぞや。318それより(はや)く、319高姫(たかひめ)(さま)とやらに()はして(いただ)きたいものだ』
320魔我(まが)(はや)高姫(たかひめ)(さま)魔我彦(まがひこ)()たと(つた)へて(くだ)さい。321さういへば高姫(たかひめ)(さま)御存(ごぞん)じですから』
322ヨル『ハイハイ、323承知(しようち)(いた)しました。324(なん)高姫(たかひめ)さまはお(かほ)(ひろ)(ひと)だなア。325昨日(きのふ)高姫(たかひめ)さまを(たづ)ねてトさまとやらがお()でになるなり、326今日(けふ)(また)マさまとやらがお()(あそ)ばす、327此奴(こいつ)もヤツパリ、328レコだなア』
329(つぶや)きつつ、330二人(ふたり)受付(うけつけ)()たせおき、331高姫(たかひめ)居間(ゐま)(あわ)ただしく()()んだ。
332ヨル『もしもし高姫(たかひめ)さま、333マヽヽマヽヽガヽヽヒヽヽコとかいふお(かた)()えました』
334高姫(たかひめ)『ナニ、335魔我彦(まがひこ)()たといふのかい』
336ヨル『ハイ、337魔我彦(まがひこ)さまと、338そして(なん)でも蠑螈別(いもりわけ)とか……()つてゐらつしやいました、339訪問者(はうもんしや)はお二人(ふたり)(ござ)います』
340高姫(たかひめ)『コレ、341ヨルや、342魔我彦(まがひこ)さま(だけ)343一寸(ちよつと)此方(こちら)()(もら)つておくれ、344そして一人(ひとり)(かた)(わたし)()ひに()(まで)345都合(つがふ)があるから()つて(くだ)さるやうにいつておくれ、346(あま)(いそ)いで()つちや()けないよ、347(この)長廊下(ながらうか)椽板(えんいた)一枚(いちまい)一枚(いちまい)間違(まちが)はぬやうに、348()みもつて()くのだよ』
349ヨル『椽板(えんいた)百八十枚(ひやくはちじふまい)キチンと()ります。350今更(いまさら)よまなくつても(わか)つて()りますがな』
351高姫(たかひめ)『エーエ、352()()かぬ(をとこ)だな、353ボツボツ()きなと()ふのだ』
354ヨル『エヘヽヽヽヽ、355(また)(その)()におやつしの時間(じかん)()りますからな、356随分(ずいぶん)貴女(あなた)(すご)腕前(うでまへ)ですな、357イツヒヽヽヽ』
358高姫(たかひめ)『エーツ、359(この)心配(しんぱい)なのに、360そんな気楽(きらく)(こと)どこかいな。361サ、362彼方(あつち)()つて(くだ)さい』
363 ヨルは『ヘーエ』と()(なが)ら、364(した)をニユツと()し、365(あたま)をかき、366(こし)(えび)(かが)め、367スゴスゴと()()く。368高姫(たかひめ)(まど)(そと)()まはし、369時置師神(ときおかしのかみ)姿(すがた)()えぬのにヤツと(むね)()でおろし独言(ひとりごと)
370高姫(たかひめ)『あゝあ、371蠑螈別(いもりわけ)さまも、372()()かぬ(かた)だなア。373モチツと(はや)()(くだ)されば()いのに、374折角(せつかく)こがれ(した)ふて()(くだ)さつても、375高姫(たかひめ)にはモウ(とき)さまと()(をつと)出来(でき)たのだから、376(おほ)きな(かほ)でお()にかかる(わけ)にもゆかず、377あゝ()うしたらよからうかな。378歯抜婆(はぬけばば)でも、379ヤツパリどこかによい(ところ)があるとみえる……とはいふものの(こま)つた(こと)だワイ』
380 かかる(ところ)へ、381ヨルは魔我彦(まがひこ)()をひいてやつて()た。
382魔我(まが)『これはこれは高姫(たかひめ)さま、383(ひさ)(ぶり)でお()にかかります。384(わたし)もたうとう三五教(あななひけう)になりました。385貴女(あなた)(えら)御出世(ごしゆつせ)をなさいましたなア。386イヤお目出度(めでた)(ござ)います』
387高姫(たかひめ)『ヤア魔我彦(まがひこ)さま、388御機嫌(ごきげん)(よろ)しう、389(ひさ)しくお()にかからなかつたが、390一体(いつたい)(まへ)はどこに()つたのだえ、391どれ(だけ)(さが)してゐたか()れやしないワ』
392魔我(まが)『ハイ、393有難(ありがた)(ござ)います。394(じつ)(ところ)貴女(あなた)三五教(あななひけう)へお入信(はい)りになつてから、395蠑螈別(いもりわけ)(さま)北山村(きたやまむら)立退(たちの)き、396坂照山(さかてるやま)貴女(あなた)のお筆先(ふでさき)(もと)として、397ユラリ彦様(ひこさま)や、398ヘグレ神社様(じんしやさま)399種物(たねもの)神社(じんしや)400(その)(ほか)神々(かみがみ)(まつ)り、401小北山(こぎたやま)神殿(しんでん)(しよう)して、402蠑螈別(いもりわけ)(さま)教主(けうしゆ)となり、403(わたし)副教主(ふくけうしゆ)として活動(くわつどう)してゐました。404そこへ三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)がみえまして結構(けつこう)(をしへ)()かして(いただ)きまして、405たうとう帰順(きじゆん)(いた)しました。406貴女(あなた)にここでお()にかからうとは(おも)ひませなんだ』
407高姫(たかひめ)『さすが蠑螈別(いもりわけ)さまだ。408エライものだ、409(まへ)頑固(ぐわんこ)(をとこ)だが、410高姫(たかひめ)(をしへ)仮令(たとへ)ゆがみなりにせよ、411よう()てて(くだ)さつた、412マア三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)すれば(これ)()した(こと)はない。413そして蠑螈別(いもりわけ)はヤハリ三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)されたのかな』
414魔我(まが)『ハイ、415サツパリ、416(こころ)(そこ)から改心(かいしん)されまして、417(いま)では治国別(はるくにわけ)さまに(したが)ひ、418宣伝(せんでん)(ある)いてゐられます』
419高姫(たかひめ)(いま)ここへお(まへ)さまのつらつて()た、420一人(ひとり)(かた)蠑螈別(いもりわけ)さまぢやありませぬか』
421魔我(まが)『ハイ(ちが)ひます、422蠑螈別(いもりわけ)さまの……(じつ)御敷蒲団(おしきぶとん)(ござ)います。423(いま)にお()にかけませう』
424高姫(たかひめ)(さだ)めて(わか)奇麗(きれい)御方(おかた)でせうなア、425本当(ほんたう)蠑螈別(いもりわけ)さまは、426(なん)()つても色男(いろをとこ)だ、427(わたし)のやうな(もの)見限(みかぎ)(あそ)ばすのは無理(むり)はない、428(しか)(なが)(いま)となつては(かへつ)結構(けつこう)だ』
429魔我(まが)『イエイエ滅相(めつさう)もない、430六十(ろくじふ)(ばか)りのお(とら)といふお()アさまですよ、431(もと)浮木(うきき)(むら)女侠客(をんなけふかく)432白波(しらなみ)艮婆(うしとらばあ)さまといふ(がう)(もの)ですよ。433それがスツカリ改心(かいしん)して、434治国別(はるくにわけ)(さま)添書(てんしよ)(いただ)き、435これからイソの(やかた)参拝(さんぱい)して、436宣伝使(せんでんし)にならうといふとこです。437(この)魔我彦(まがひこ)もお(とら)さまのお(とも)してウブスナ(やま)聖場(せいぢやう)修行(しうぎやう)(まゐ)(つも)りです』
438高姫(たかひめ)『それは(まこと)結構(けつこう)だ。439(しか)(なが)らお(とら)さまとやらにも、440(まへ)にも、441トツクリと義理天上(ぎりてんじやう)日出神(ひのでのかみ)から()つておかねばならぬ(こと)があるから、442(その)(とら)さまを此処(ここ)へよんで()(くだ)さい……コレコレ ヨルや、443(まへ)(その)(とら)さまとやらを、444ここ(まで)御案内(ごあんない)(まを)しや』
445 『ハイ』と(こた)へてヨルは受付(うけつけ)()して、446長廊下(ながらうか)をドシドシ威喝(ゐかつ)させ(なが)(はし)()く。
447大正一二・一・一八 旧一一・一二・二 松村真澄録)