霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 山彦(やまびこ)〔一二九四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻 篇:第4篇 鷹魅糞倒 よみ:ようみふんとう
章:第20章 第49巻 よみ:やまびこ 通し章番号:1294
口述日:1923(大正12)年01月19日(旧12月3日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年11月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
初稚姫は河鹿峠を降ってくる途中にお寅、魔我彦、ヨルの一行に出会い、祠の森に父・杢助がいることを知った。斎苑館にいるはずの父が祠の森にいることにいぶかしさを感じながらも、三人に別れを告げて祠の森に向かった。
一方、高姫と杢助は、珍彦夫婦に盛った毒が効きはじめたと思いこみ、彼らの死後に変身の術を使って自分たちが入れ替わり成りすます相談をしていた。
そこへ受付のイルから、初稚姫がやってきて父・杢助に会いたいと言っているとの報せがあった。杢助は、自分が高姫を後妻に取ったばかりで娘に会うのは恥ずかしい、また宣伝使となった娘を甘やかしてはいけないと言い訳をして、森に隠れてしまった。
杢助に化けた唐獅子の化け物は、実はスマートが恐くて逃げ出したのであった。スマートはにわかに唸りだして森林に駆け出して行ってしまった。
初稚姫は不審に思いながらスマートが飛び込んだ森林を見ていると、スマートは前足に傷を受けて帰ってきた。
初稚姫は高姫が止めるのも聞かずに奥に進み入った。スマートも足を引きずりながら初稚姫の後に従う。高姫は初稚姫が来たことを知らせるために声を限りに杢助を呼ばわったが、聞こえてくるのは山彦だけであった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4920
愛善世界社版:287頁 八幡書店版:第9輯 138頁 修補版: 校定版:296頁 普及版:133頁 初版: ページ備考:
001 初稚姫(はつわかひめ)はスマートを(ともな)ひ、002河鹿峠(かじかたうげ)宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)(くだ)つて()る。003途中(とちう)(おい)てお(とら)004魔我彦(まがひこ)005ヨルの一行(いつかう)出会(であ)(ほこら)(もり)高姫(たかひめ)杢助(もくすけ)()(こと)()き、006(いぶ)かしさの(かぎ)りよと(こころ)(おも)(なが)らも、007さあらぬ(てい)(よそほ)ひ、008三人(さんにん)(わか)れを()げて、009(ほこら)(もり)をさして(いそ)(くだ)()く。
010 (はなし)(かは)つて、011高姫(たかひめ)012杢助(もくすけ)両人(りやうにん)(また)もやヒソビソ(ばなし)(ふけ)つて()る。
013高姫(たかひめ)杢助(もくすけ)さま、014()(なか)智慧(ちゑ)(くらゐ)偉大(ゐだい)なものはありませぬな』
015杢助(もくすけ)『うん、016さうだ。017(なん)といつても智慧(ちゑ)だな。018もう()うなる(うへ)珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)も、019やがて倒死(くたばる)だらう。020さうすれば(かれ)(いき)をひきとると(とも)に、021変身(へんしん)(じゆつ)(もつ)て、022(まへ)(わたし)珍彦(うづひこ)夫婦(ふうふ)にならねばならぬ。023何時(いつ)()れるか(わか)らぬから(いま)から、024用意(ようい)にかからねばなるまい』
025高姫(たかひめ)(その)用意(ようい)とは如何(どう)すれば()いのですか』
026杢助(もくすけ)『ア、027さうだ。028すこし(いや)(こと)だけど、029(わたし)珍彦(うづひこ)()いだ(くそ)飯粒(めしつぶ)(ひと)(くらゐ)(なめ)ねばはらぬ。030(まへ)静子(しづこ)(くそ)一掴(ひとつかみ)(くらゐ)(なめ)るのだ。031さうすれば(すぐ)変身(へんしん)(じゆつ)(おこな)はれる』
032高姫(たかひめ)(なん)(なん)だつて(くそ)(なめ)られますか。033(ほか)(なに)方法(はうはふ)がありさうなものですな』
034杢助(もくすけ)(なん)()つても此奴(こいつ)あやらなくては駄目(だめ)だ。035やがて(どく)がまはつて(たふ)れるに()もあるまいから、036(はや)身代(みがは)りを(こし)らへて()かなくてはならぬ。037高姫(たかひめ)038(じつ)(ところ)此処(ここ)両人(りやうにん)(くそ)(ある)方法(はうはふ)(もつ)取寄(とりよ)せて()いたのだ』
039(たけ)皮包(かはつつ)みを(ふところ)から()()した。
040高姫(たかひめ)『アーア、041(いや)だわ。042まるで(いぬ)()(やう)(こと)をせなくてはならないのかな』
043杢助(もくすけ)(いぬ)でさへも(くそ)()へば()()えると()ふぢやないか。044(くそ)からはアンモニヤと()(くすり)をとり、045之等(これら)種々(いろいろ)(くすり)(つく)り、046パンだつて饅頭(まんじう)だつて(これ)(ふく)れるのだ。047変身(へんしん)には(これ)(ほど)()くものは()いのだ』
048高姫(たかひめ)『アー、049仕方(しかた)がありませぬわ。050(これ)もヤツパリ義理天上日(ぎりてんじやうひ)出神(でのかみ)(さま)のためだと(おも)へば、051辛抱(しんばう)して(いただ)きませうかな』
052杢助(もくすけ)(じつ)(ところ)(うそ)だよ。053(まへ)()()いてみたのだ。054もつと(ほか)にいい(くすり)があるのだよ』
055高姫(たかひめ)『アーア、056やつと安心(あんしん)しました。057本当(ほんたう)(はら)(わる)(ひと)だな。058(はら)(むし)()はぬ(さき)から、059(いや)がつてグレングレンしてゐましたよ』
060杢助(もくすけ)『これが……さア妙薬(めうやく)だ……(これ)さへ()めば、061変身(へんしん)(じゆつ)即座(そくざ)(おこな)はれるのだ』
062(ふところ)から(また)もや皮包(かはつつみ)()す。
063高姫(たかひめ)杢助(もくすけ)さま、064そりや(なん)ですかい』
065杢助(もくすけ)(これ)(さる)(きも)だ。066猿胆(ゑんたん)()ふものだ。067チツとは(にが)いけど、068(これ)()めば(すぐ)変身術(へんしんじゆつ)出来(でき)る』
069高姫(たかひめ)『お(まへ)さまは、070さうして(なに)()むの』
071杢助(もくすけ)(この)杢助(もくすけ)(ふところ)()つてゐるが、072(この)秘密(ひみつ)(をんな)(さと)られたら、073出来(でき)ぬのだから(しばら)発表(はつぺう)見合(みあは)して()かう。074さア(はや)(これ)()みなさい。075いざと()(とき)(わたし)文言(もんごん)(とな)へるから、076(これ)合図(あひづ)にパツと化身(けしん)するのだ』
077高姫(たかひめ)如何(どう)有難(ありがた)(ござ)ります。078そんなら(いただ)きませうか』
079杢助(もくすけ)『さあ(はや)()んだり()んだり』
080 高姫(たかひめ)()(ふさ)(にが)さを(こら)へて猿胆(ゑんたん)をグツと()んで(しま)つた。081その(むつ)かしい(にが)(さう)(かほ)(ほとん)形容(けいよう)出来(でき)(やう)だつた。
082杢助(もくすけ)『ハヽヽヽ如何(どう)(むつ)かしい(かほ)だつた。083三年(さんねん)(こひ)も、084あれを()ちや一度(いちど)()める(やう)だ。085まるつきり(さる)(やう)(かほ)をしたよ』
086高姫(たかひめ)『そら、087さうでせうとも、088(さる)(きも)()んだのだもの。089(しか)しお(まへ)さま、090三年(さんねん)(こひ)一度(いちど)()めるなんて、091そんな薄情(はくじやう)(こと)(おも)ふてゐなさるのかい』
092杢助(もくすけ)『ハヽヽヽヽ如何(どう)(おそ)()りました。093(やま)神様(かみさま)逆鱗(ぎやくりん)には智勇(ちゆう)兼備(けんび)杢助(もくすけ)降服(かうふく)(つかまつ)る。094南無(なむ)(やま)神大明神(かみだいみやうじん)095義理天上日(ぎりてんじやうひ)出神(でのかみ)(ゆる)させ(たま)へ、096惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
097高姫(たかひめ)『これ、098杢助(もくすけ)さま、099(わたし)()んな(にが)()をして(くる)しんでゐるのに、100陽気(やうき)(こと)()つてゐらつしやるのだな。101女房(にようばう)意思(いし)(をつと)意思(いし)102(をつと)智性(ちせい)女房(にようばう)智性(ちせい)103双方(さうはう)(あひ)和合(わがふ)してこそ、104夫婦(ふうふ)和合(わがふ)ぢやありませぬか。105それ(ほど)(わたし)(くる)しんでるのが面白(おもしろ)いのですか』
106杢助(もくすけ)『ハヽヽヽ()(なか)何一(なにひと)(こは)(こと)のない(この)杢助(もくすけ)義理天上(ぎりてんじやう)さまには(おそ)()りますわい。107南無(なむ)嬶大明神(かかだいみやうじん)108(ゆる)させ(たま)へ、109見直(みなほ)(たま)へ、110アツハヽヽヽヽヽ』
111高姫(たかひめ)杢助(もくすけ)さま、112よい加減(かげん)にチヨクツて()きなさい。113千騎一騎(せんきいつき)場合(ばあひ)ぢやありませぬか。114貴方(あなた)()(なか)(こは)いものはないけど、115(わたし)(こは)いと()ひましたね。116それ(ほど)(こは)(かほ)なら何故(なぜ)女房(にようばう)になさつたのですか』
117杢助(もくすけ)『ハヽヽヽさう短兵急(たんぺいきふ)()めかけられては(いささ)迷惑(めいわく)だ。118拙者(せつしや)(こは)いものは(いぬ)(くらゐ)なものだよ』
119高姫(たかひめ)『エー、120(まへ)さまは(みみ)(うご)くと(おも)へばヤツパリ(いぬ)(こは)いのかな、121ハテナー』
122杢助(もくすけ)『アツハヽヽヽ(いぬ)()ふのはスパイの(こと)だ。123(ひと)(こは)(いぬ)はワンワンワンと(さへづ)りまはす()()のつく(いぬ)だ、124ハツハヽヽヽヽ』
125高姫(たかひめ)(わたし)(いぬ)()ひましたな』
126杢助(もくすけ)『さうだ。127(ふた)()には悋気(りんき)してイヌイヌと()ふのだから仕方(しかた)がないわ。128イヌの、129(はし)るの、130(ひま)くれのと、131(たか)ちやんの常套語(じやうたうご)だからな』
132高姫(たかひめ)(なん)なと仰有(おつしや)いませ。133ヘン、134(また)(ばん)敵討(かたきうち)をして()げますわ』
135杢助(もくすけ)『アツハヽヽヽヽ』
136 ()(わら)(ところ)(あわ)ただしくやつて()たのは受付(うけつ)けのイルであつた。
137イル『もし、138御両人様(ごりやうにんさま)139只今(ただいま)イソの(やかた)から初稚姫(はつわかひめ)(さま)がスマートとか()(いぬ)()れてお立寄(たちよ)りになり「(わが)(ちち)杢助(もくすけ)がゐるさうだから一目(ひとめ)()はして()れえ」と仰有(おつしや)いますが如何(いかが)(いた)しませうかな』
140杢助(もくすけ)『ヤー、141初稚姫(はつわかひめ)(やつ)142(おや)()んな(ところ)()るのを(さと)りよつたのかな。143おい、144高姫(たかひめ)145(なん)(おれ)だつて(とし)()つてから(おや)だてら夫婦然(ふうふぜん)として()るのは()(たい)(はづか)しい(やう)だ。146(おれ)(しばら)(もり)姿(すがた)をかくすからお(まへ)()つて、147うまく初稚姫(はつわかひめ)()なしてくれないか。148おい、149イル、150初稚姫(はつわかひめ)杢助(もくすけ)さまはお留守(るす)だと()つてくれ』
151イル『ハイ、152承知(しようち)(いた)しました。153(しか)(なが)折角(せつかく)(むすめ)さまがお(たづ)ねなさつたのだから、154()つてやつて(くだ)さつたら如何(どう)ですかな』
155杢助(もくすけ)『いや、156(かへ)つて(あま)やかしちや(むすめ)のためにならぬから、157此処(ここ)()ふてやらぬ(はう)がよいだらう。158それが(おや)(なさけ)だ。159高姫(たかひめ)160オイお(まへ)(おもて)()初稚姫(はつわかひめ)得心(とくしん)さしてくれ』
161高姫(たかひめ)『はい、162承知(しようち)(いた)しました』
163(おほ)きな(しり)をプリンプリン()(なが)らイルを(ともな)ひ、164玄関口(げんくわんぐち)()()した。165(その)(あひだ)杢助(もくすけ)化物(ばけもの)正体(しやうたい)(あら)はし、166スマートが(こは)さに巨大(きよだい)なる唐獅子(からしし)となつて(うら)森林(しんりん)()()し、167山越(やまごし)何処(どこ)ともなく姿(すがた)(かく)しける。168初稚姫(はつわかひめ)(ともな)(きた)れるスマートは、169(にはか)に『ウーウー』と(うな)()し、170足掻(あが)きをし(なが)一目散(いちもくさん)森林(しんりん)をさして()()りぬ。171初稚姫(はつわかひめ)不審(ふしん)(まゆ)をひそめてスマートの行衛(ゆくゑ)如何(いかん)(あん)(わづら)(をり)もあれ、172スマートは前足(まへあし)(すこ)しく(きず)()(なが)(あし)をチガチガさせ初稚姫(はつわかひめ)(まへ)(かへ)()たり、173「キヤーキヤー」と二声(ふたこゑ)三声(みこゑ)()(なが)ら、174一生懸命(いつしやうけんめい)(あし)(きず)(なめ)()る。175初稚姫(はつわかひめ)高姫(たかひめ)のとどむるも()かず、176無理(むり)(おく)(すす)()つた。177スマートは(あし)をチガチガさせ(なが)ら、178廊下(らうか)(つた)ふて初稚姫(はつわかひめ)(あと)(したが)()く。179高姫(たかひめ)(わが)居間(ゐま)(かへ)つて()れば杢助(もくすけ)姿(すがた)()えないので(こゑ)(かぎ)りに『杢助(もくすけ)サーン杢助(もくすけ)サーン初稚姫(はつわかひめ)さまが()えましたぞや』と怒鳴(どな)()ててゐる。180(むか)ふの谷間(たにま)から木魂(こだま)反響(はんきやう)で、181山彦(やまびこ)が『杢助(もくすけ)サーン杢助(もくすけ)サーン初稚姫(はつわかひめ)さまが()えましたぞや』と(こた)へて()る。
182 (ゆき)(まじ)つた初春(はつはる)(さむ)(かぜ)遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく屋外(をくぐわい)(わた)つて()く。
183大正一二・一・一九 旧一一・一二・三 北村隆光録)
   
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