霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第四章 御意犬(ごいけん)〔一二九八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第1篇 和光同塵 よみ(新仮名遣い):わこうどうじん
章:第4章 御意犬 よみ(新仮名遣い):ごいけん 通し章番号:1298
口述日:1923(大正12)年01月20日(旧12月4日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
後に残った初稚姫は、高姫が金毛九尾の悪孤に魅入られ、また父・杢助に化けた妖魅にだまされて狂惑されていることを憐れんだ。
しかし、高姫に憑依している悪孤は、杢助が兇霊の化け物であることを知らず、杢助に化けている兇霊も悪孤の正体を見ることができないために、互いに結託することができないでいた。
初稚姫は、精霊同士といえども、自然界の物性を通さなければ世界を認識することはできない、という神様のお仕組によって精霊の悪事が防がれていることに感謝した。
そこへ怪我を負ったスマートが戻ってきた。スマートは初稚姫に怪我を負った体を預けていたが、突然起き上がって唸り始めた。初稚姫はスマートにおとなしくするように命じた。そこへ高姫が帰ってきた。
高姫は、杢助が森林で転んで眉間を岩に打ち付け、たいへんな傷を負って谷川で休息していることを話した。高姫は、杢助はじきに戻ってくるだろうと言ったが、杢助が犬を神域に入れないように厳しく言いつけたとスマートを追い出そうとした。
初稚姫は、杢助に化けた妖怪がスマートに眉間を噛まれて怪我を負ったことを推知したが、とぼけて高姫の言にしたがい、スマートを館から連れ出した。
そしてスマートに、いったん隠れていて、日が暮れたら自分の居間の床下にそっと隠れているように、といいつけた。スマートは承諾の意を表し、二人は別れた。
初稚姫は館に帰ってきた。スマートは日が暮れた後にそっと初稚姫の居間の床下に身を忍ばせ、いいつけをよく守って初稚姫の保護の任に当たっていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-07-10 14:40:08 OBC :rm5004
愛善世界社版:45頁 八幡書店版:第9輯 165頁 修補版: 校定版:48頁 普及版:25頁 初版: ページ備考:
001初稚姫(はつわかひめ)高姫(たかひめ)()つた(あと)で、002(ちひ)さい(こゑ)で、003ホホホホホと()()さずには()られなかつた。004さうして自分(じぶん)(わら)(ごゑ)(おどろ)いて小声(こごゑ)独言(ひとりごと)
005初稚姫高姫(たかひめ)さまも()(どく)なものだなア。006さうして金毛(きんまう)九尾(きうび)悪狐(あくこ)()007(また)もや(ほこら)(もり)頑張(ぐわんば)り、008斎苑(いそ)(やかた)()神業(しんげふ)妨害(ばうがい)し、009数多(あまた)精霊(せいれい)人民(じんみん)(まよ)はさうと(おも)つてゐる。010(その)遣方(やりかた)奸黠(かんきつ)さ、011(にく)らしさよ。012高姫(たかひめ)さまは熱心(ねつしん)(ひと)だけれど、013常識(じやうしき)()らないから、014いつも狂妄(きやうまう)(おちい)(やす)く、015あの(とほ)悪魔(あくま)(とりこ)となつて(しま)つたのだなア、016どうぞして(たす)けて()げたいけれど、017(ひと)()()まさなければ、018到底(たうてい)復活(ふくくわつ)見込(みこみ)はない。019肉体(にくたい)をもつて()獅子(しし)020(とら)両性(りやうせい)妖魅(えうみ)誑惑(きやうわく)され、021(ちち)杢助(もくすけ)(おも)つて()るのはほんに()(どく)なものだ。022高姫(たかひめ)さまに憑依(ひようい)して()金毛(きんまう)九尾(きうび)悪狐(あくこ)は、023高姫(たかひめ)肉体(にくたい)(とほ)してでなければ現界(げんかい)()(こと)出来(でき)ないのだから、024あのやうな怪物(くわいぶつ)にだまされて()るのだ。025憑霊(ひようれい)自身(じしん)高姫(たかひめ)も、026(その)怪物(くわいぶつ)たる(こと)()らない。027高姫(たかひめ)自身(じしん)兇霊(きようれい)(みと)めて()るが、028あの怪物(くわいぶつ)(はう)からは、029高姫(たかひめ)憑依(ひようい)して()金毛(きんまう)九尾(きうび)正体(しやうたい)()(こと)()ないのだ。030つまり妖怪(えうくわい)妖怪(えうくわい)とが高姫(たかひめ)さまの肉体(にくたい)(へだ)てて暗中(あんちう)模索(もさく)(てき)妄動(まうどう)をやつて()るのだ。031(しか)しこれが大神(おほかみ)(さま)(みづ)()らさぬ()注意(ちゆうい)(てん)である。032杢助(もくすけ)さまに()けた怪物(くわいぶつ)高姫(たかひめ)身内(みうち)悪狐(あくこ)とが(たがひ)素性(すじやう)()()ひ、033(また)(その)姿(すがた)(みと)()たならば、034内外(ないぐわい)相応(あひおう)じて高姫(たかひめ)(いよいよ)悪化(あくくわ)せしめ、035如何(いか)なる害毒(がいどく)天下(てんか)(なが)すか()れたものぢやない。036ああ有難(ありがた)(かみ)(さま)思召(おぼしめ)し』
037感涙(かんるゐ)(むせ)んで()る。038スマートは初稚姫(はつわかひめ)(ひざ)(かしら)(よこ)たへ、039初稚姫(はつわかひめ)独言(ひとりごと)了解(れうかい)するものの(ごと)くであつた。
040初稚姫『これスマートや、041(まへ)行儀(ぎやうぎ)(わる)い、042なぜきちんとお(すわ)りなさらぬのだい』
043 スマートは(みみ)をペロペロと(うご)かしながら、044まだ()きようともしない。
045初稚姫『ああさうさう、046スマートや(こら)へてお()れ。047(まへ)さまは(あし)怪我(けが)したのだな、048(すわ)りなさいと()つたつて(すわ)れないのは無理(むり)はない。049これは(わたし)(わる)かつた、050(ゆる)してお()れ』
051とやさしく(かしら)()でてやる。052スマートは(うれ)しさうに()をふつて感謝(かんしや)()(へう)するものの(ごと)くであつた。
053 スマートはムツク()き、054(からだ)をプリプリと()りながら、055形相(ぎやうさう)(すさま)じく(まへ)(あし)()てて何物(なにもの)にか()びつくやうな(いきほひ)(しめ)した。056さうしてウーウーウと小声(こごゑ)(うな)つて()る。057初稚姫(はつわかひめ)はスマートを()でながら(こゑ)(やさ)しく、
058初稚姫『これスマートや、059(なに)()たのか()らないが、060(まへ)(かなら)イキリ()つてはいけませぬよ。061(わたし)命令(めいれい)をするまで、062どんなものが()ても、063(けつ)して(うな)つたり()びついたりする(こと)はなりませぬぞや。064(わたし)だつて(なに)()もよく()つてゐるのだけれど、065これには(すこ)(わけ)があるのだから、066何卒(どうぞ)おとなしうして()てお()れや』
067(さと)せば、068スマートは(くび)()()をふつて承諾(しようだく)(むね)表示(へうじ)した。
069初稚姫『ほんに畜生(ちくしやう)ながら(かしこ)いものだなア。070(まへ)(わたし)家来(けらい)だよ。071(わたし)何処(どこ)までも一緒(いつしよ)について()るのだ。072さうして立派(りつぱ)()神業(しんげふ)完成(くわんせい)した(うへ)は、073(ふたた)人間(にんげん)(うま)(かは)り、074立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)となつて世界(せかい)万民(ばんみん)(みちび)き、075天国(てんごく)安楽(あんらく)生活(せいくわつ)(おく)らして(いただ)くやうに忠実(ちうじつ)(つと)めるのだよ。076ほんにお(まへ)何処(どこ)ともなしに(かは)つた(いぬ)だ。077勇猛(ゆうまう)にして(かつ)柔順(じうじゆん)理想(りさう)(てき)なお(まへ)(いぬ)だ』
078(しきり)(あたま)(くび)()可愛(かあい)がつて()る。079スマートは(やうや)くにして(あし)をかがめ、080(たたみ)(あご)をすりつけ、081()(ふさ)いで柔順(じうじゆん)態度(たいど)(しめ)して()る。
082初稚姫『あの杢助(もくすけ)化相(けさう)した怪物(くわいぶつ)を、083スマートがよく看破(かんぱ)し、084最前(さいぜん)()()けていつて格闘(かくとう)(すゑ)085こんな(きず)()つて()たのだな、086ほんに勇敢(ゆうかん)なスマートだ』
087激賞(げきしやう)して()(をり)もあれ、088(れい)高姫(たかひめ)静々(しづしづ)(かへ)つて()た。
089初稚姫『アアお(かあ)さま、090()苦労(くらう)(さま)(ござ)いました。091(ちち)()られましたかな』
092高姫『ハア、093やつとの(こと)でお()にかかつて()ましたよ。094杢助(もくすけ)さまは森林(しんりん)逍遥(せうえう)なさる(さい)095藤葛(ふじかづら)(あし)引掛(ひつか)け、096岩石(がんせき)眉間(みけん)()ちつけ、097大変(たいへん)(きず)をなさつて、098谷川(たにがは)(きず)(あら)つて()られました』
099 (これ)()くよりスマートは(また)もやムツク(かしら)()げ、100ウーウと(うな)りかけた。101初稚姫(はつわかひめ)(あわ)てて(かしら)()でながら、
102初稚姫『これスマート、103おとなしくするのだよ。104主人(しゆじん)()(こと)()きなさいや』
105(しづか)になだめながら、
106初稚姫『はてな、107怪物(くわいぶつ)はこのスマートに眉間(みけん)()まれたのだな』
108鋭敏(えいびん)頭脳(づなう)直覚(ちよくかく)した。109されど素知(そし)らぬ(てい)(よそほ)ひ、110言葉(ことば)(やさ)しく満面(まんめん)(ゑみ)(たた)へながら、
111初稚姫『あのお(かあ)さま、112(とう)さまは本当(ほんたう)にお(あぶ)ない(こと)をなさいましたなア。113(たい)した(こと)(ござ)いませぬか。114(わたくし)115心配(しんぱい)でなりませぬわ。116そして(ぢき)(かへ)つて(くだ)さるのですか』
117高姫(べつ)(たい)したお怪我(けが)でもありませぬが、118中々(なかなか)()(つよ)いお(かた)で、119(まへ)さまがお()でだと()つても、120容易(ようい)にお(うご)(あそ)ばさぬのですよ』
121初稚姫(ちち)(わたくし)(こと)(なん)()つて()ましたか、122(さだ)めて(おこ)つたでせうなア』
123高姫(なに)124(はつ)さま、125自分(じぶん)(むすめ)()()るのに(おこ)(ひと)がありますか。126そんな(こと)(おこ)るやうな(かた)だつたら人間(にんげん)ぢやありませぬわ』
127初稚姫『それでも(わたくし)(ちち)はハルナの(みやこ)御用(ごよう)()むまで、128どんな(こと)があつても面会(めんくわい)(いた)さぬと、129それはそれは(きび)しう(まを)して()ましたよ』
130高姫『そこが杢助(もくすけ)杢助(もくすけ)さまたる(ところ)だ。131ほんとにお(えら)(かた)ですよ。132(はは)(あい)舐犢(しとく)(あい)133(ちち)(あい)秋霜(しうさう)(あい)()つて、134()ふに()はれぬ(ところ)があるのです。135何程(なにほど)(きび)しく仰有(おつしや)つても、136本当(ほんたう)(こころ)(うち)母親(ははおや)(あい)(まさ)千万(せんまん)無量(むりやう)(なみだ)(たた)へて(ござ)るのだからな、137(しか)しこの高姫(たかひめ)()つても()れぬ身霊(みたま)親子(おやこ)でもあり、138肉体(にくたい)(じやう)義理(ぎり)親子(おやこ)でもありますから、139(その)(あい)分量(ぶんりやう)は、140到底(たうてい)()みの(はは)(およ)(ところ)ではありませぬ。141どうぞ()ちとけて(この)(はは)()(こと)(まも)つて(くだ)されや』
142初稚姫『ハイ承知(しようち)(いた)しました。143何分(なにぶん)にも宜敷(よろし)くお(ねが)(まを)します』
144高姫早速(さつそく)ながら初稚(はつわか)さま、145(わたし)()(こと)()いて(もら)へますまいかなア』
146初稚姫『これは(また)(あらた)まつてのお言葉(ことば)147(わたし)のやうなものにお(たの)みとは、148どんな(こと)(ござ)いますか』
149高姫(じつ)(ところ)は、150(まへ)折角(せつかく)可愛(かあい)がつて(ござ)るこの(いぬ)を、151いなして(もら)ひたいのだ。152杢助(もくすけ)さまは(いぬ)大変(たいへん)(きら)ひだから、153「この神聖(しんせい)(やかた)にそんな()(あし)()れることはならぬ。154聖場(せいぢやう)(けが)れるから、155いなして()れ、156さうでなければ(わし)此処(ここ)には()ない」と、157それはそれは(かた)(かた)仰有(おつしや)るのだよ』
158 初稚姫(はつわかひめ)はそれと(かん)づきながら、159(わざ)空惚(そらとぼ)けて、
160初稚姫(なん)不思議(ふしぎ)(こと)(ござ)いますなア、161(わたくし)(ちち)特別(とくべつ)(いぬ)()きなので(ござ)いますが、162斎苑(いそ)(やかた)でも、163()(かへ)り、164(いぬ)(はな)した(こと)はないので(ござ)いますよ。165それに心機(しんき)一転(いつてん)(あそ)ばすとは不思議(ふしぎ)ぢや(ござ)いませぬか。166それ(ほど)この(いぬ)(こは)い、167イヤ(きら)ひなので(ござ)いませうかなア』
168高姫(なん)()つても此処(ここ)神聖(しんせい)なお仕組(しぐみ)場所(ばしよ)169(よご)れた四足(よつあし)()いておくと大神(おほかみ)(さま)のお気障(きざは)りになるから、170杢助(もくすけ)(かみ)(さま)(たい)謹慎(きんしん)()(へう)し、171(いぬ)をいなせと仰有(おつしや)つたのですよ』
172初稚姫『それでも産土山(うぶすなやま)聖場(せいぢやう)には沢山(たくさん)(いぬ)()つて(ござ)います。173()本山(ほんざん)でさへもあれだけ沢山(たくさん)(いぬ)()るのに、174何故(なぜ)此処(ここ)には一匹(いつぴき)()(こと)出来(でき)ないのでせう。175(わたし)この(いぬ)唯一(ゆゐいつ)のお友達(ともだち)でもあり(ちから)でもあるのですからなア』
176高姫初稚(はつわか)さま、177(まへ)さまはこの(いぬ)(はな)すのが(いや)仰有(おつしや)るのですか。178産土山(うぶすなやま)沢山(たくさん)(いぬ)()るのは、179素盞嗚(すさのをの)(みこと)(さま)八島主(やしまぬし)さまや東助(とうすけ)役員(やくゐん)(かた)御霊(みたま)(くも)つて()るのだから、180結構(けつこう)聖地(せいち)()(あし)がうろついて()るのだ。181(また)(きつね)(みたま)豆狸(まめだぬき)()()まないやうに(いぬ)()いてあるのだ。182()神徳(しんとく)さへあれば(いぬ)(ちから)()らなくても、183(きつね)(たぬき)大蛇(をろち)(がま)(みたま)()()るものぢやありませぬ。184産土山(うぶすなやま)(いぬ)()いてあるのを()ても、185()神徳(しんとく)がないのが(わか)るぢやありませぬか』
186 初稚姫(はつわかひめ)は、187高姫(たかひめ)暴言(ばうげん)(あき)れながら、188さあらぬ(てい)にて(やさ)しく空惚(そらとぼ)けて、
189初稚姫左様(さやう)(ござ)いますかなア、190()神徳(しんとく)()ふものは(たふと)いもので(ござ)いますなア』
191相槌(あひづち)()つて()る。
192高姫(さすが)杢助(もくすけ)さまの(むすめ)だけあつて、193(なに)につけても(さと)りがよいわい。194ほんに水晶(すいしやう)御霊(みたま)だ。195さう(はや)もの(わか)つた以上(いじやう)は、196(この)(いぬ)斎苑(いそ)(やかた)へおつ(かへ)して(くだ)さるだらうねえ』
197 スマートは二人(ふたり)問答(もんだふ)()いて不安(ふあん)()()ねたやうな形相(ぎやうさう)をしながら、198(また)ウーウウーウと(ちひ)さく(うな)()した。199初稚姫(はつわかひめ)はスマートの(かしら)()でながら、200耳許(みみもと)(くち)()何事(なにごと)小声(こごゑ)(ささや)いた。201スマートは柔順(じうじゆん)(かしら)()()(ふさ)いで仕舞(しま)つた。
202高姫『サア、203(とう)さまの()ひつけだから、204どうぞ(はや)くいなして(くだ)さい。205それが(おや)(たい)する一番(いちばん)孝行(かうかう)だ。206そして(かみ)(さま)(たい)する麻柱(あななひ)大道(おほみち)だから、207きつと柔順(じうじゆん)にかへして(くだ)さるだらうねえ』
208 初稚姫(はつわかひめ)()首肯(うなづ)き、
209初稚姫『お(かあ)さまやお(とう)さまのお言葉(ことば)210(そむ)いてなりませうか。211大事(だいじ)大事(だいじ)のスマートで(ござ)いますけれど、212()両親(りやうしん)(おほせ)とあれば、213(そむ)(わけ)には()きませぬ。214アア残念(ざんねん)ながらスマートに(わか)れませう』
215高姫(なん)とまア柔順(じうじゆん)なよい()だこと。216ほんたうに杢助(もくすけ)さまは、217どうしてこんな立派(りつぱ)()をお()ちなさつたのだらう。218八島主(やしまぬし)さまが宣伝使(せんでんし)になさつたのも無理(むり)はないわい』
219初稚姫(はつわかひめ)無性(むしやう)矢鱈(やたら)()めちぎつて()る。
220初稚姫『お(かあ)さま、221(いぬ)(くらゐ)いなしたつて、222さう()めて(もら)ふやうな(こと)(ござ)いませうか。223どうぞお気遣(きづか)(くだ)さいますな。224(しか)畜生(ちくしやう)とはいへ折角(せつかく)此処(ここ)まで()れて()たのですから、225門口(かどぐち)(また)一二町(いちにちやう)(ばか)(おく)つてやりまして、226そこで(とつく)()()かせ、227(ふたた)びここへ(かへ)つて()ないやうに(まを)()かせます』
228高姫『オホホホ、229(なん)とまア()叮嚀(ていねい)()()だこと、230門口(かどぐち)から()()せばよいものを、231()主人(しゆじん)(なん)ぞのやうに、232(まへ)さまが(おく)つてやるとは、233(ちつ)(ぶん)()ぎはしませぬか、234オイ畜生(ちくしやう)235(まへ)冥加(みやうが)()きるぞや、236(わたし)(むすめ)(おく)つて(もら)ふなぞとは果報者(くわはうもの)だ。237(しか)(なが)(この)高姫(たかひめ)(なん)だか(この)(いぬ)(おそ)ろしい、238イヤイヤ(こは)(きら)ひなやうな()がして()たのよ、239アアこれでやつと安心(あんしん)した。240金毛(きんまう)九尾(きうび)も……』
241(くち)から()ひかけてグツと(くち)をつまへ、242自分(じぶん)(はら)をギユーギユーと()みながら、
243高姫『こりや、244()をつけぬか』
245(われ)(わが)()をきめつけて()る。246初稚姫(はつわかひめ)(また)空惚(そらとぼ)けて、
247初稚姫『お(かあ)さま、248()をつけぬか」と仰有(おつしや)いましたが、249(なに)不都合(ふつがふ)(ござ)いますか。250何卒(どうぞ)(いた)らぬもので(ござ)いますから、251()注意(ちゆうい)(くだ)さいませ』
252高姫『エエ、253イヤ(なん)でもありませぬ、254つひ一寸(ちよつと)(なん)です……(この)聖地(せいち)何彼(なにか)につけて神聖(しんせい)(ところ)だから、255万事(ばんじ)()をつけねばならぬと()つたのですよ』
256初稚姫『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。257一寸(ちよつと)其処(そこ)まで(いぬ)(おく)つて(まゐ)ります。258(かあ)さま、259此処(ここ)()つて()(くだ)さい。260やがてお(とう)さまも(かへ)つて(くだ)さるでせう』
261言葉(ことば)(のこ)し、262スマートを(ともな)一二町(いちにちやう)ばかり(さか)彼方(かなた)(すす)み、263(やま)(すそ)(かく)れて(やかた)()えない地点(ちてん)までスマートを(ともな)()き、264(かしら)首背(くびせな)()でながら、
265初稚姫『これスマートや、266(まへ)(えら)いものだなア、267杢助(もくすけ)()けて()怪物(くわいぶつ)や、268高姫(たかひめ)身内(みうち)(ひそ)んで()(わる)(きつね)がお(まへ)大変(たいへん)(こは)がつて()る。269それだからあのやうに二人(ふたり)(わたし)に「お(まへ)をいなして()れ」と(せま)るのだよ。270(しか)(わたし)はお(まへ)主従(しゆじゆう)約束(やくそく)(むす)んだ以上(いじやう)は、271仮令(たとへ)半時(はんとき)()だつて(はな)れるのは(いや)だよ。272(まへ)だつてさうだらう。273(しか)(いま)場合(ばあひ)どうする(わけ)にも()かないから、274一旦(いつたん)(まへ)()んだ(こと)にして、275()()れたらそつと(わたし)居間(ゐま)床下(ゆかした)(かく)れて()(くだ)さい。276御飯(ごはん)をソツとお(まへ)(はら)()らないやうに()げるから』
277懇々(こんこん)(さと)せば、278スマートは()をふり(くび)数回(すうくわい)(たて)にゆりながら「万事(ばんじ)承知(しようち)(いた)しました」と()心意気(こころいき)表情(へうじやう)(しめ)して()る。
279初稚姫(わか)つたかな、280アアそれで(わたし)安心(あんしん)した。281きつと(わたし)此処(ここ)()(あひだ)姿(すがた)()せないやうにして(くだ)さい。282(しか)(また)283夜分(やぶん)には(こひ)しいお(まへ)さまと抱合(だきあ)つて(あそ)びませう。284(まへ)さまは雌犬(めんいぬ)だから、285(わたし)抱擁(はうよう)したつてキツスをしたつて、286(かま)ひはしないわネー、287ホホホ』
288(わら)ひながら(わか)れて(やかた)(かへ)つて()た。289スマートは()()るるを()()ね、290ソツと初稚姫(はつわかひめ)居間(ゐま)床下(ゆかした)()(しの)ばせ、291主人(しゆじん)()ひつけをよく(まも)り、292(かつ)初稚姫(はつわかひめ)保護(ほご)(にん)(あた)(こと)となつた。
293大正一二・一・二〇 旧一一・一二・四 加藤明子録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→