霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 (みづち)(さかづき)〔一三〇八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第50巻 真善美愛 丑の巻 篇:第3篇 神意と人情 よみ:しんいとにんじょう
章:第14章 第50巻 よみ:みずちのさかずき 通し章番号:1308
口述日:1923(大正12)年01月21日(旧12月5日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫はそれから、初稚姫、楓姫、珍彦、静子を憎むことはなはだしく、どうにかして彼らを亡ぼそうと考えるようになった。しかしこうなってはもはや初稚姫に言うことを聞かせることはできないだろうし、そうなると、彼らを害そうとすればスマートが飛び掛かってくるに違いなかった。
そこでh高姫は、腹中の悪孤たちと相談し、一種の妖術をかけることにした。虬の血を絞って百虫を壺に封じ込み、血染めの絹を護摩の火で灰にして壺に封じる。この灰を四人に盃に塗って飲ませれば、飲んだ者は神徳を失い、人の怨みを受けて身を亡ぼすのだという。
高姫はそれから、悪孤の言うとおりに妖術の材料を集めて準備した。そして四人に怪しまれないようにおとなしく過ごし、すべてが整うと、珍彦館を訪れて自分の非を涙ながらに詫び、仲直りの酒宴を開くと言って招くのだった。
初稚姫は高姫の企みをすっかり見抜いていた。そしてその妖術も、兇霊の妄言であり何の効果もないことも看破していた。初稚姫はなんとかしてこの機会に高姫に改心してもらいたいと心に誓った。
高姫の誘いに楓は嫌悪の情を現したが、初稚姫が酒宴への参加を促したので、一同は危険がないことを暗に悟り、高姫の館に向かった。
初稚姫が毒見をし、一同は妖術を施してある御馳走をすっかり平らげてしまった。珍彦は厚く礼を述べて妻子を引き連れて帰って行った。また高姫は、楓と遊んでくるように初稚姫に言ったので、初稚姫も珍彦館に行くことになった。
後に残った高姫は、計略が当たったと一人喜んでいる。高姫の腹の中から、悪孤たちが計略の成功を自慢する笑い声が聞こえてきたので、高姫は滅多なことを言うなと憑霊たちをたしなめたが、まるで聞かない。
戸の外には、彼らが恐れるスマートの吠える声が聞こえてきた。高姫は頭をかかえて震えあがり、腹中の悪孤たちも一斉に黙ってしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5014
愛善世界社版:189頁 八幡書店版:第9輯 219頁 修補版: 校定版:196頁 普及版:97頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)は、002それより初稚姫(はつわかひめ)003楓姫(かへでひめ)004珍彦(うづひこ)005静子(しづこ)(にく)むこと(はなは)だしく、006如何(いかん)ともして彼等(かれら)(ほろ)ぼさむと夜着(よぎ)(かぶ)つて(おそ)ろしき鬼心(おにごころ)辿(たど)つて()る。007されど()(かんが)へても普通(ふつう)ではいかない。008(また)まさかの(とき)になれば、009(おそ)ろしいスマートが()()して()る。010これが高姫(たかひめ)第一(だいいち)頭痛(づつう)である。011もうかうなつたら、012如何(いか)(ほど)スマートを(かへ)せと()つても初稚姫(はつわかひめ)(かへ)すまい。013(また)(はは)としての権利(けんり)(ふる)ひ、014彼女(かのぢよ)強圧(きやうあつ)(わが)()(したが)はしむる(こと)到底(たうてい)駄目(だめ)だと(かんが)へた。015そこで高姫(たかひめ)一計(いつけい)腹中(ふくちう)悪狐(あくこ)相談(さうだん)(うへ)ねり()した。016(ほか)でもない、017それは一種(いつしゆ)妖術(えうじゆつ)である。018(みづち)()(しぼ)つて百虫(ひやくちう)(つぼ)(ふう)()み、019(たう)四人(よにん)調伏(てうふく)(ため)血染(ちぞめ)(きぬ)(こしら)へ、020護摩(ごま)()にかけてこれを()(つく)し、021(つぼ)(なか)()めて()き、022和合(わがふ)酒宴(しゆえん)(しよう)し、023ソツと四人(よにん)(さかづき)(ひと)()れず()りつけて()き、024(うま)(その)(さけ)()ます(とき)は、025(これ)()んだものは(おのづか)神徳(しんとく)(うしな)ひ、026(また)(ひと)(こころ)(さか)らうて(うら)みを()け、027(つひ)には(その)()(ほろ)ぼすに(いた)るものだ……と()(こと)(をし)へられた。028それより高姫(たかひめ)(もり)(なか)表面(へうめん)散歩(さんぽ)(ごと)()せかけ、029(みづち)(さが)百虫(ひやくちう)(あさ)つてこの(おそ)ろしい計画(けいくわく)全力(ぜんりよく)(つく)した。030さうして(やうや)註文通(ちゆうもんどほ)りの(しな)(そろ)うたので自分(じぶん)床下(ゆかした)(かく)()き、031(とき)(いた)るを()ちつつあつた。
032 高姫(たかひめ)()くして、033何時(いつ)とはなしに四人(よにん)(ほろ)ぼさむと(おも)ひ、034ほくそ()みつつ、035表面(へうめん)柔順(じうじゆん)親切(しんせつ)(よそほ)ひ、036あまり小言(こごと)()はず、037(にく)まれ(ぐち)もたたかず、038可成(かなり)四人(よにん)自分(じぶん)信任(しんにん)(かつ)(こころ)(ゆる)すやうにと(つと)めて()たのである。039(じつ)(をんな)悪霊(あくれい)(まよ)はされ、040狂熱(きやうねつ)極点(きよくてん)(たつ)した(とき)(くらゐ)(おそ)るべきものはない。041(をんな)(もつと)(こころ)(よわ)きものの(また)(もつと)(つよ)きものである。042一旦(いつたん)決心(けつしん)した(うへ)は、043(ぞく)にいふ(をんな)一心(いつしん)(いは)でも()()くと()つて中々(なかなか)容易(ようい)(うご)くものではない。044高姫(たかひめ)はかくも(おそ)ろしき悪計(あくけい)敢行(かんかう)すべく決心(けつしん)(ほぞ)(かた)めてしまつた。
045 (かか)(たく)みのありと()(こと)は、046初稚姫(はつわかひめ)(のぞ)(ほか)誰一人(たれひとり)として(さと)()るものはなかつたのである。
047 一切(いつさい)計略(けいりやく)準備(じゆんび)調(ととの)うたので、048高姫(たかひめ)(みづか)珍彦館(うづひこやかた)()()で、049叮嚀(ていねい)笑顔(ゑがほ)(つく)辞儀(じぎ)をしながら、050(わざ)とに(やさ)しき(こゑ)(しぼ)り、
051『ハイ御免(ごめん)なさいませ。052(この)(あひだ)病気上(びやうきあが)りの(こと)とて(あたま)(へん)工合(ぐあひ)になりまして、053つひ(みな)さまに御無礼(ごぶれい)(こと)(まを)()げましたさうで(ござ)います。054何分(なにぶん)逆上(ぎやくじやう)(いた)して()りましたので、055如何(いか)なる不都合(ふつがふ)(こと)(いた)しましたやら皆目(かいもく)(ぞん)じませぬ。056今日(けふ)義理天上(ぎりてんじやう)日出神(ひのでのかみ)(さま)が、057こんこんと夢中(むちう)でした(こと)をお(はな)(くだ)さいましたので(わたくし)吃驚(びつくり)(いた)しまして、058(まこと)()まない(こと)(いた)したと()やんで()ても(あと)(まつ)り、059初稚(はつわか)さまにも(かへで)さまにも御夫婦様(ごふうふさま)にもえらい失礼(しつれい)(いた)したさうで(ござ)います。060(わたし)はそれを天上様(てんじやうさま)から(うけたま)はり、061()つても()ても()られなくなりましたので、062(わび)のため(はぢ)(しの)んで(まゐ)りました。063何卒(どうぞ)(わたくし)(つみ)をお(ゆる)(くだ)さるやうお(ねが)(いた)します』
064()(ごゑ)になつて空涙(そらなみだ)をこぼして()()るのであつた。065初稚姫(はつわかひめ)高姫(たかひめ)(はら)のどん(ぞこ)までよく()つて()た。066さうしてその魔術(まじゆつ)(ただ)兇霊(きようれい)妄言(まうげん)にして(なん)寸効(すんかう)なき(こと)看破(かんぱ)して()たのである。067(ゆゑ)高姫(たかひめ)悪計(あくけい)自分(じぶん)一人(ひとり)(こころ)(なか)(つつ)んで()きさへすれば、068天下泰平(てんかたいへい)である。069(しか)高姫(たかひめ)さまが悪魔(あくま)(そそのか)されて斯様(かやう)(こころ)(おこ)されるのは(まこと)御気(おき)(どく)だ。070(なん)とかして(この)(さい)改心(かいしん)して(もら)はねばならないと、071(かた)決心(けつしん)して()たのである。
072珍彦(うづひこ)『これはこれは高姫(たかひめ)(さま)とした(こと)が、073(なん)仰有(おつしや)います。074貴女(あなた)にお(わび)()はれて()うして(わたし)(たま)りませう。075(しり)こそばゆくてなりませぬ。076何事(なにごと)吾々(われわれ)がいたらぬから(おこ)つた(こと)(ござ)います。077何卒(なにとぞ)今後(こんご)はよろしくお(しか)(くだ)さいますやうに』
078『イエイエ(わたし)(わる)いので(ござ)います。079つひ(わたし)には神経病(しんけいびやう)(ござ)いまして、080時々(ときどき)脱線(だつせん)(いた)しますので、081何時(いつ)人様(ひとさま)御迷惑(ごめいわく)をかけますので、082神様(かみさま)(たい)しても貴方(あなた)(がた)(たい)しても()みませぬ。083のめのめ()られる(すぢ)では(ござ)いませぬが、084(めん)(かぶ)つて(おそ)(おそ)(まゐ)りました。085それに()いては()びの(しるし)(およ)貴方(あなた)(がた)入魂(じつこん)(ねが)(よろこ)びとして、086手製(てせい)御飯(ごはん)とお(さけ)()げたいので(ござ)いますが、087どうぞ(あま)(とほ)(ところ)では(ござ)いませぬから、088()ては(くだ)さいませぬかなア。089(なに)(まを)しても貴方(あなた)(がた)御親切(ごしんせつ)なお(かた)ですから、090(わたし)居間(ゐま)まで(くらゐ)()(くだ)さることと(かた)(しん)じて(まゐ)りました』
091『ヘイどう(いた)しまして、092貴女(あなた)御馳走(ごちそう)(いただ)いては()みませぬ。093(わたし)(はう)から(じつ)差上(さしあ)げたいので(ござ)います。094
095『さう仰有(おつしや)らずに(わたし)(ねがひ)()いて(くだ)さいませねえ。096(わたし)がどうしてもお()()さないので(ござ)いますか、097さうすれば是非(ぜひ)(ござ)いませぬ。098(わたし)(のど)でも()いて()なうより(みち)(ござ)いませぬ』
099(また)もや巧妙(かうめう)空涙(そらなみだ)(しぼ)る。
100静子(しづこ)『これ珍彦(うづひこ)さま、101あれだけ親切(しんせつ)仰有(おつしや)つて(くだ)さるのだもの、102世話(せわ)になつたらどうでせう』
103『ウンさうだな。104折角(せつかく)思召(おぼしめし)105()にするのも(かへつ)(おそ)(おほ)いから、106言葉(ことば)(あま)へて(うかが)ひませうかなア』
107『お(とう)さま、108(かあ)さま、109貴方(あなた)高姫(たかひめ)さまの(ところ)へいつてお(さけ)御飯(ごはん)(いただ)くのなら、110神丹(しんたん)をもつてお()でなさいませよ。111(また)(この)(あひだ)二度目(にどめ)文珠菩薩様(もんじゆぼさつさま)(くだ)さいましたのねえ。112あれさへ(いただ)けば、113どんな(どく)(はい)つて()てもすつかり()えますからねえ。114高姫(たかひめ)さま、115毒散(どくさん)などは今度(こんど)()れてはありますまいな、116仮令(たとへ)()れてあつても、117(わたし)(たち)神丹(しんたん)()つて()るから(ちつと)(かま)ひませぬけれどねえ』
118(わざ)とにあどけなき小児(こども)(てい)(よそほ)ひ、119高姫(たかひめ)荒肝(あらぎも)(ひし)がうとした。
120珍彦(うづひこ)『これ、121(まへ)(なん)()失礼(しつれい)(こと)()ふのだい。122高姫(たかひめ)さまが(なに)そんな(こと)をなさる理由(りいう)があらうか、123(まへ)(ゆめ)()たのだよ』
124(なん)でも(ゆめ)にして()けばよいのですなア、125初稚姫(はつわかひめ)さま、126貴女(あなた)もさう仰有(おつしや)つたで(ござ)いませう。127(しか)(わたし)義理天上(ぎりてんじやう)さまの(ところ)()つて、128(ちや)一杯(いつぱい)でもよばれるのは(いや)ですわ』
129静子(しづこ)『これ(かへで)130(まへ)はそれだから(こま)ると()ふのだ。131ほんにほんに仕方(しかた)がないなア、132ちつと初稚姫(はつわかひめ)さまの(つめ)(あか)でも(せん)じて(いただ)かして(もら)ひなさい』
133 高姫(たかひめ)(わざ)とニコニコしながら、134何気(なにげ)なき(てい)にて(こころ)(おどろ)きを(かく)しながら(には)かに(つく)(わら)ひ、
135『ホホホホホ、136やつぱりお(わか)(かた)(ゆめ)御覧(ごらん)になつても現実(げんじつ)だと(おも)つてゐらつしやるのですねえ。137ほんとに可愛(かあい)正直(しやうぢき)(かへで)さまだこと、138これ(かへで)さま、139何卒(どうぞ)(みな)さまと一緒(いつしよ)()(くだ)さいな』
140『それなら叔母(をば)さま、141()きませう。142初稚姫(はつわかひめ)(ねえ)さまも御一緒(ごいつしよ)でせうねえ』
143『お(まへ)さまの()きな初稚(はつわか)さまも一緒(いつしよ)だから、144何卒(どうぞ)一緒(いつしよ)にお(ぜん)(なら)べて、145(なか)ようこの(ばば)(こころ)()(あが)つて(くだ)さい。146そして(わたし)一緒(いつしよ)(いただ)きますから』
147(みな)さま、148(かあ)さまがあすこ(まで)親切(しんせつ)仰有(おつしや)つて(くだ)さるのだから、149サア(まゐ)りませう』
150(すす)める。151親子(おやこ)三人(さんにん)初稚姫(はつわかひめ)言葉(ことば)確証(かくしよう)(あた)へられたる(ごと)く、152安心(あんしん)して高姫(たかひめ)居間(ゐま)(れつ)する(こと)となつた。
153 高姫(たかひめ)追従(つゐしよう)たらだら、154あらゆる(こび)(てい)しながら、155(こころ)(うち)に、
156『いよいよ願望成就(ぐわんまうじやうじゆ)(とき)()た、157この(とき)(いつ)しては、158またとよい機会(きくわい)はあるまい』
159(おも)ひながら他人(たにん)膳部(ぜんぶ)(あつか)はせず、160今日(けふ)高姫(たかひめ)赤心(まごころ)(あら)はすのだからと()つて、161いそいそと(ただ)一人(ひとり)台所(だいどころ)()(まは)つて()るのが(あや)しい。
162 高姫(たかひめ)(やうや)膳部(ぜんぶ)五人前(ごにんまへ)(そろ)へ、163(さけ)(かん)(まで)ちやんとして(みづち)()()つた(さかづき)四人(よにん)(ぜん)(ひと)つづつ(くば)()き、
164『サア(みな)さま、165()たせ(いた)しました。166どうぞ(なに)(ござ)いませぬけれど、167どつさりお(あが)(くだ)さいませや、168今日(けふ)初稚(はつわか)169(まへ)もお(きやく)さまだよ』
170『お(かあ)さま、171本当(ほんたう)()みませぬねえ。172()(おや)にお給仕(きふじ)をして(もら)つたり、173御飯(ごはん)をたいて(いただ)いたりするとは、174ほんに()転倒(さかさま)ですわ。175勿体(もつたい)なくて冥加(みやうが)()きるかも()れませぬが、176(かあ)さまのお言葉(ことば)(したが)ひ、177今日(けふ)だけはお(きやく)さまにならして(いただ)きます』
178『アアさうさう、179さう打解(うちと)けて(くだ)されば、180この(はは)もどれだけ(うれ)しいぢや(わか)りませぬ』
181珍彦(うづひこ)『どうもお手間(てま)()りました御馳走(ごちそう)をして(くだ)さいまして、182(じつ)有難(ありがた)(ござ)います』
183静子(しづこ)大勢(おほぜい)(およ)ばれに(まゐ)りまして、184(まこと)()みませぬ』
185『サア初稚姫(はつわかひめ)さま、186(まへ)さまから毒試(どくみ)をするのだよ』
187燗徳利(かんどくり)差出(さしだ)した。188初稚姫(はつわかひめ)は、
189(みな)さま、190(さき)失礼(しつれい)(いた)します』
191会釈(ゑしやく)し、192(さかづき)両手(りやうて)(てのひら)にきちんとのせ、
193『お(かあ)さま、194(みづち)()(いろ)のしたお(さかづき)は、195ほんに気分(きぶん)(よろ)しう(ござ)いますね。196百虫(ひやくちう)(つぼ)(ふう)じたやうなお(さけ)(あぢ)がするでせう』
197()ひながら高姫(たかひめ)(かほ)一寸(ちよつと)(のぞ)いた。198高姫(たかひめ)初稚姫(はつわかひめ)言葉(ことば)(おどろ)いて燗徳利(かんどくり)をパタリと(その)()(おと)した。199瀬戸物(せともの)燗徳利(かんどくり)(たちま)切腹(せつぷく)(けい)(おほ)せつけられ、200(はら)一杯(いつぱい)()んでゐた(さけ)(のこ)らず()()して(しま)つた。
201『お(かあ)さまとした(こと)が、202えらい(こと)をして()せて(くだ)さいますなア。203これは(なん)法式(はふしき)(ござ)いますか』
204『これはなア、205高姫(たかひめ)(はら)には(なに)もない、206この(とほ)(きよ)(きよ)(まじ)りのないお(さけ)のやうなものだと()赤心(まごころ)(しめ)すための、207(むかし)から(つた)はつた(ひと)つの法式(はふしき)ですよ』
208 初稚姫(はつわかひめ)(わざ)空惚(そらとぼ)けて、209感心(かんしん)さうな(かほ)をしながら、
210(なん)とお(かあ)さまは故実(こじつ)通達(つうたつ)したお(かた)ですねえ。211何卒(どうぞ)212このお(さかづき)一杯(いつぱい)()いで(くだ)さいませ』
213とわざとに()()す。214高姫(たかひめ)はヤツと初稚姫(はつわかひめ)何気(なにげ)なき言葉(ことば)安心(あんしん)(むね)()(おろ)し、215笑顔(ゑがほ)(つく)つて、
216『アアよしよし、217(はつ)ちやまから()いで()げませう。218サア(さかづき)をお()しよ』
219 初稚姫(はつわかひめ)(うれ)しさうに(さかづき)(さけ)()いで(もら)ひ、220グウグウと()んで()せた。221それから来客(らいきやく)一同(いちどう)(さかづき)(まは)し、222(また)(どく)禁厭(まじなひ)のしてある御馳走(ごちそう)遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく、223心地(ここち)よく(たひら)げてしまつた。224さうして珍彦(うづひこ)妻子(つまこ)()()れ、225(あつ)(れい)()べて(やかた)(かへ)つた。226初稚姫(はつわかひめ)高姫(たかひめ)が「ゆつくり(かへで)さまと(あそ)んで()い」と()ふので、227これ(さいはひ)珍彦館(うづひこやかた)(いた)り、228素知(そし)らぬ(かほ)をしていろいろのお(みち)(はなし)をして()た。
229 高姫(たかひめ)は、230四人(よにん)()()つた(あと)(とつく)りと見送(みおく)り、231(ふたた)障子襖(しやうじふすま)をたて()(ひと)(ごと)
232『ああ、233たうとう願望成就(ぐわんまうじやうじゆ)曙光(しよくわう)(みと)めた。234やつぱり常世姫(とこよひめ)御魂(みたま)(えら)いものだなア、235ああしておけば自然(しぜん)(よわ)りに智慧(ちゑ)(にぶ)(からだ)(つひ)え、236人望(じんばう)()ちるのは()のあたりだ。237ああ気味(きみ)のよい(こと)だなア。238ああ今日(けふ)より(この)常世姫(とこよひめ)(まくら)(たか)うして()(こと)出来(でき)る。239ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)240神様(かみさま)241あなたの御神力(ごしんりき)によつて邪魔者(じやまもの)(ほろ)びますれば、242(この)高姫(たかひめ)千騎一騎(せんきいつき)活動(くわつどう)(いた)しまして、243天晴(あつぱれ)手柄(てがら)(いた)して御目(おめ)にかけませう。244ああ(なん)だか今日(けふ)(くらゐ)心地(ここち)のよい()(ござ)いませぬわい』
245とほくほく(よろこ)び、246(いや)らしき(ゑみ)()らして()る。247腹中(ふくちう)より、
248『オイ高姫(たかひめ)肉体(にくたい)249どうだ。250(この)(はう)智略縦横(ちりやくじうわう)のやり(かた)には降参(かうさん)しただらうなア』
251『シツ、252(また)しても()しやばるのか。253秘密(ひみつ)何処(どこ)(まで)秘密(ひみつ)ぢやないか。254肝腎(かんじん)(とき)になつて仕様(しやう)もない(こと)口走(くちばし)つて()よ、255この肉体(にくたい)承知(しようち)(いた)さぬから』
256『イヒヒヒヒヒ、257オイ(くろ)258(はち)259テク、260(がま)261大蛇(をろち)262(さる)連中(れんちう)263どうだ、264この金毛九尾(きんまうきうび)のやり(かた)(じつ)(えら)いものだらう。265(みづ)()らさぬ(この)(はう)仕組(しぐみ)266サアこれから(みづ)御霊(みたま)(をしへ)片端(かたつぱし)から()(くだ)き、267俺達(おれたち)世界(せかい)にするのだ。268(なん)心地(ここち)よき(こと)ではあるまいかなア、269エヘヘヘヘヘ』
270 (また)腹中(ふくちう)より種々(いろいろ)(こゑ)()て、
271有難(ありがた)(ぞん)じます有難(ありがた)(ぞん)じます、272金毛九尾様(きんまうきうびさま)273(おそ)()つて(ござ)ります。274これから何事(なにごと)九尾様(きうびさま)御命令(ごめいれい)(したが)ひます。275(この)蟇公(がまこう)一切万事(いつさいばんじ)今後(こんご)御指揮(おさしづ)(したが)ひまアす』
276一句々々(いつくいつく)(こゑ)のいろが(かは)つて(きこ)えて()る。
277『こりや、278(はら)(なか)我羅苦多(がらくた)(ども)279(なに)をつべこべと大事(だいじ)(こと)(ほざ)くのか。280沈黙(ちんもく)(いた)さぬか』
281『アハハハハハ、282どうもはや常世姫(とこよひめ)肉体(にくたい)には、283(この)(はう)(おそ)()つたぞや。284ほんに(しつか)りした肉体(にくたい)ぢや。285この肉体(にくたい)さへあれば五六七(みろく)神政(しんせい)妨害(ばうがい)し、286(たちま)悪魔(あくま)()立替(たてか)へるのは()()るよりも(あきら)かな事実(じじつ)だ。287(おも)へば(おも)へば心地(ここち)よやなア、288エヘヘヘヘヘ』
289『こりや、290(みな)守護神(しゆごじん)(ども)291(しづか)にせいと(まを)せばなぜ(しづか)(いた)さぬのか。292(こま)つた(やつ)だなア。293さうして(その)(はう)(いま)五六七(みろく)()妨害(ばうがい)して(やみ)世界(せかい)にすると(まを)したな、294(なん)()不心得(ふこころえ)(こと)(まを)す……サアもう常世姫(とこよひめ)肉体(にくたい)貴様(きさま)(たち)には()さぬから、295エー()()れ、296シツシツシツ』
297『イヒヒヒヒヒ、298(なん)()つても(この)肉宮(にくみや)()(こと)(いや)だよ』
299『それなら(はや)改心(かいしん)(いた)して、300五六七(みろく)神政(しんせい)御神業(ごしんげふ)参加(さんか)(いた)すと(まを)すか。301サア(はや)返答(へんたふ)()かせ』
302 (はら)(なか)より、303七八種(ななやいろ)(こゑ)304一時(いちじ)(おこ)り、
305『アハハハ、306イヒヒヒ、307ウフフフ、308エヘヘヘ、309オホホホ、310カカカカ、311キキキキ、312クククク、313ケケケケ、314ココココ、315パパパパ、316チチチチ、317キヒヒヒヒヒ』
318 ()(そと)にはウウーウーウーワウワウワウと、319(おそ)ろしきスマートの()える(こゑ)320高姫(たかひめ)(かしら)をかかへて(ふる)(あが)る。321(はら)(なか)沢山(たくさん)(こゑ)(みづ)()つた(やう)一時(いちじ)にピタリと()まつてしまつた。322スマートは益々(ますます)戸外(こぐわい)にウウウーと(うな)()てて()る。
323大正一二・一・二一 旧一一・一二・五 加藤明子録)