霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 怪獣策(くわいじうさく)〔一三一七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第1篇 霊光照魔 よみ(新仮名遣い):れいこうしょうま
章:第2章 怪獣策 よみ(新仮名遣い):かいじゅうさく 通し章番号:1317
口述日:1923(大正12)年01月25日(旧12月9日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
初と徳は文助に言いつけられて、妖幻坊と高姫のために御馳走をこしらえ、酒に燗をして二人の前に並べた。妖幻坊はお菊に酌を所望したが、お菊は二人をからかうと飛び出して逃げてしまった。
高姫と妖幻坊は、松姫もあまり信用がならず、お菊も簡単には手なずけられそうにないとして、初と徳に酒を飲ませてこちらの手に引き込もうと計画した。
高姫と妖幻坊は、初と徳に酒を飲ませながら、二人をウラナイ教に引き込もうと話を持って行っている。お菊はその様子をそっと窓からのぞいていたが、宣伝歌を歌いだした。お菊は高姫の企みを歌に歌い込み、また杢助と名乗る男は悪魔が化けているのだろうと歌い終わると、さっと逃げてしまった。
妖幻坊と高姫はお菊の歌に懸念を抱くが、また初と徳を取り込みにかかった。高姫は二人を口でちょろまかしている。
妖幻坊の体はにわかにふるえだした。窓の外をちょっと覗いてみると、猛犬が矢のように階段を上り、松姫館の法にすがたを隠した。高姫はアッと驚いて腰を下ろし、妖幻坊も冷や汗をかいて震えおののいていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-08-02 14:07:44 OBC :rm5102
愛善世界社版:25頁 八幡書店版:第9輯 274頁 修補版: 校定版:26頁 普及版:12頁 初版: ページ備考:
001 (はつ)002(とく)両人(りやうにん)種々(いろいろ)馳走(ちそう)(こしら)へ、003(さけ)沢山(たくさん)(かん)して二人(ふたり)(まへ)(うやうや)しく(なら)べた。
004(はつ)(わたし)(この)(やかた)新役員(しんやくゐん)(ござ)います。005魔我彦(まがひこ)(さま)にお引立(ひきたて)(あづか)りまして、006つい(この)(あひだ)から幹部(かんぶ)選定(せんてい)されました。007(いま)(まで)はウラル(けう)信徒(しんと)(ござ)いましたが、008(あま)(この)(やかた)にお(まつ)りしてある(かみ)(さま)()威勢(ゐせい)(たか)いので、009ついお(まゐ)りする()になり、010信者(しんじや)として四五(しご)(にち)(こも)つてる(うち)011抜擢(ばつてき)されまして、012(いま)では魔我彦(まがひこ)(さま)御用(ごよう)()いて()ります。013炊事(すゐじ)なんかするやうな地位(ちゐ)では(ござ)いませぬが、014今日(けふ)特別(とくべつ)(もつ)て、015文助(ぶんすけ)(さま)()命令(めいれい)により、016料理法(れうりはふ)(すゐ)(つく)して(こしら)へて(まゐ)りました。017どうでお(くち)には()ひますまいが、018何卒(どうぞ)(ひと)召上(めしあが)つて(くだ)さいますやう()(ねが)(いた)します。019たまたまのお()(ゆゑ)020可成(なるべく)山海(さんかい)珍味(ちんみ)(もつ)献立(こんだて)がしたいので(ござ)いますが、021(あま)(には)かのお(いで)材料(ざいれう)欠乏(けつぼう)(いた)不都合(ふつがふ)(ござ)います』
022高姫(たかひめ)『ヤ、023(まへ)魔我彦(まがひこ)家来(けらい)かな、024成程(なるほど)025(さが)眉毛(まゆげ)の、026一寸(ちよつと)面白(おもしろ)(かほ)だな。027(これ)から(この)高姫(たかひめ)此処(ここ)教主(けうしゆ)だから、028(その)(つも)りで()つて(くだ)さい。029そしてここの信者(しんじや)(いく)(ほど)あるかな』
030『ヘーお(はつ)にお()にかかつて、031(かほ)批評(ひひやう)までして(いただ)きまして、032イヤもう感服(かんぷく)(いた)しました。033まだ新任(しんにん)早々(さうさう)(こと)で、034ハツキリは(わか)りませぬが、035トツ(ぴやく)ばかり、036あるとか、037ないとか()ふことで(ござ)います。038魔我彦(まがひこ)さまも、039この調子(てうし)なら、040(いま)にパツ(ぴやく)(にん)ほど()えるだらうと(まを)して()りました。041貴女(あなた)(うはさ)に……イ……(たか)き、042ダカ(ひめ)さまで(ござ)いますかな。043どうもよくお()(くだ)さいました。044そして立派(りつぱ)男様(をとこさま)貴女(あなた)(さま)()主人(しゆじん)でゐらせられますか、045どうも()夫婦(ふうふ)打揃(うちそろ)ひ、046()出張(しゆつちやう)(くだ)さいました(だん)047やつがれ()にとりまして、048恐悦(きようえつ)至極(しごく)(ぞん)(たてまつ)りまする』
049高姫(なん)面白(おもしろ)(をとこ)だなア、050()馳走(ちそう)さま、051これからお(なか)もすいたなり、052一寸(ちよつと)くたぶれたからゆつくりと(いただ)きませう』
053(わたし)(よろ)しう(ござ)いますれば、054一寸(ちよつと)(しやく)をさして(いただ)きませうかな。055(わたし)(あま)り、056()めぬ(くち)でも(ござ)いませぬから……』
057高姫『ヤ、058結構(けつこう)(ござ)います、059(いづ)(よう)があつたら、060(この)(すず)をふりますから()(くだ)さい』
061承知(しようち)(いた)しました、062それぢやお(きく)さまにお給仕(きふじ)をして(もら)ひませう』
063(きく)『コレ(はつ)さま、064(いや)だよ、065(たれ)がこんな小父(をぢ)さまや小母(をば)さまのお給仕(きふじ)するものかい。066(わたし)がお給仕(きふじ)するのは(まん)さまだよ。067イヒヒヒ、068すみませぬなア、069(かま)ひさま』
070妖幻(えうげん)『オイお(きく)とやら、071(この)杢助(もくすけ)(ひと)()いではくれまいか。072(まへ)(わか)()()いで(もら)ふのは、073(あま)気持(きもち)(わる)うはない。074高姫(たかひめ)さまといふ天下一(てんかいち)別嬪(べつぴん)さまがついて(ござ)るのだから()いやうなものの、075(また)(かは)つたのも、076此方(こちら)()(かは)つていいかも()れない』
077お菊『いやですよ、078(これ)からお千代(ちよ)さまと(あそ)んで()なならぬワ、079待合(まちあひ)酌婦(しやくふ)ぢやあるまいし……()夫婦(ふうふ)さま(なか)よう、080シンネコでお(たの)しみ……御免(ごめん)よ』
081()げるやうにして、082(あご)()()つしやくりながら、083(かた)をあげ(くび)をすくめ、084両手(りやうて)(まへ)へパツと(ひら)(そろ)へ、
085お菊『イツヒヒヒ』
086(どう)までしやくつて、087飛出(とびだ)して(しま)つた。088(あと)二人(ふたり)はイチヤイチヤ()ひながら、089(さけ)()みかはし(はじ)めた。
090高姫(たかひめ)『コレ杢助(もくすけ)さま、091松姫(まつひめ)だつて、092文助(ぶんすけ)だつて、093中々(なかなか)さう易々(やすやす)服従(ふくじゆう)するものぢやありませぬよ。094口先(くちさき)では立派(りつぱ)(こと)()つて()つても、095(こころ)(そこ)容易(ようい)帰順(きじゆん)(いた)しませぬよ。096あのお(きく)だつて、097中々(なかなか)()()はぬぢやありませぬか、098此奴(こいつ)(ひと)つ、099(なん)とか工夫(くふう)をせなくちやなりませぬよ』
100妖幻坊の杢助()(かく)101あの(はつ)(とく)とを此処(ここ)()んで、102(さけ)でも()ませ、103(はらわた)までよく調(しら)べて、104(その)(うへ)でこちらの味方(みかた)(こしら)へておかねば、105駄目(だめ)だと(おも)ふ。106何程(なにほど)(まへ)義理(ぎり)天上(てんじやう)だと()つても、107杢助(もくすけ)だと()つても、108松姫(まつひめ)(ほか)109(おれ)(かほ)()つた(もの)はないのだからな』
110高姫『ソリヤさうですな、111それなら(ひと)つ、112(はつ)(とく)()んで(さけ)()ましてやりませうかい』
113妖幻坊の杢助『ウン、114それが()い、115()いては、116あのお(きく)此処(ここ)へよせて、117(しやく)をさせるがよからう。118さうでなくちや、119彼奴(あいつ)120(ひと)すぢ(なは)ではいかぬ(やつ)だから、121(うま)()(うち)(まる)めておく必要(ひつえう)があらうぞ』
122高姫貴方(あなた)(また)123(きく)秋波(しうは)(おく)つてゐるのですか、124エーエ油断(ゆだん)のならぬ(をとこ)だなア、125それだから義理(ぎり)天上(てんじやう)さまが、126(まへ)目放(めはな)しするなと仰有(おつしや)るのだ。127本当(ほんたう)()のもめる(をとこ)だな。128(わし)()(ひと)129(また)(ひと)()く……といふ(こと)がある。130こんないい(をとこ)(をつと)()つと、131(この)高姫(たかひめ)()のもめる(こと)だワイ』
132妖幻坊の杢助『まるで監視付(かんしつき)だなア、133高等(かうとう)要視察人(えうしさつにん)みたいなものだ。134あああ、135こんな(こと)なら、136(いま)までの(とほ)り、137独身(どくしん)生活(せいくわつ)をして()つたらよかつたに、138(むすめ)初稚姫(はつわかひめ)にだつて、139(なん)だか(はづか)しくつて、140(かほ)さへ(あは)されもせないワ。141(むすめ)どころか(いぬ)にさへ(はづか)しいやうだ。142それだから、143(おれ)はあの(いぬ)(いや)といふのだ』
144高姫『お(まへ)さまは、145(ふた)()にはいぬいぬと仰有(おつしや)るが、146何程(なにほど)いぬ()つても、147(つな)をかけたら()なしはせぬぞや。148いぬなら()んでみなさい。149仮令(たとへ)十万(じふまん)億土(おくど)(そこ)までも(さが)(もと)めて、150(まへ)さまの胸倉(むなぐら)をグツと()り、151(うらみ)をはらしますぞや』
152妖幻坊の杢助『あああ、153(こは)(こと)だなア。154それなら今後(こんご)はおとなしう御用(ごよう)(うけたま)はりませう。155義理(ぎり)天上(てんじやう)(さま)156金毛(きんまう)九尾(きうび)(さま)157今日(こんにち)(かぎ)改悪(かいあく)(いた)しますから、158(ゆる)しを(ねが)ひます、159エヘヘヘヘ』
160高姫(なん)なつと、161いつてゐらつしやい、162どうでこんな(ばば)アはお(きく)には(くら)べものになりませぬから』
163妖幻坊の杢助『それなら、164女王(ぢよわう)(さま)()命令(めいれい)遵奉(じゆんぽう)し、165ドツと改悪(かいあく)(いた)して、166(きく)()れない(こと)にし、167初公(はつこう)徳公(とくこう)を、168ここへ()んで、169ドツサリ(さけ)()まさうぢやないか』
170 (つぎ)()から、
171初、徳『ヘー、172(はつ)(とく)もここに()ります。173相手(あひて)(いた)しませう』
174とまだ()びもせぬ(さき)から、175(のど)がグーグーいつて仕方(しかた)がないので、176(ふすま)をあけて、177ヌツと(かほ)()した。
178高姫(たかひめ)『コレ、179(はつ)さま、180(とく)さま、181(まへ)最前(さいぜん)から(わたし)(たち)(はなし)()いて()つたのだなア』
182(はつ)『ヘー、183大命(たいめい)一下(いつか)184時刻(じこく)(うつ)さず、185御用(ごよう)()たむと、186(つぎ)()手具脛(てぐすね)()いて(ひか)へて()りました。187イヤもうドツサリと結構(けつこう)なお二人(ふたり)(さま)情話(じやうわ)()かして(いただ)き、188有難(ありがた)いこつて(ござ)りました。189あれだけ結構(けつこう)(はなし)()かして(いただ)いた以上(いじやう)は、190一杯(いつぱい)二杯(にはい)(おご)つて(くだ)さつても(そん)はいきますまい。191のう徳公(とくこう)192本当(ほんたう)(うらや)ましいぢやないか』
193妖幻(えうげん)『ハハハハ、194どうも()()いた(をとこ)だ、195(まへ)(たち)二人(ふたり)小北山(こぎたやま)似合(にあ)はぬ立派(りつぱ)(もの)だ。196こんな立派(りつぱ)役員(やくゐん)が、197吾々(われわれ)()るに先立(さきだ)ち、198おいてあるとは、199(まつた)(かみ)(さま)のお仕組(しぐみ)だ。200オイ、201初公(はつこう)さま、202徳公(とくこう)さま、203(わし)(さかづき)一杯(いつぱい)うけてくれ』
204(はつ)『イヤ、205これはこれは()勿体(もつたい)ない、206()づから(いただ)きまして、207(じつ)光栄(くわうえい)です、208なア(とく)よ』
209(とく)『ウン有難(ありがた)いなア、210こんな(こと)毎日(まいにち)あると(なほ)結構(けつこう)だがなア』
211妖幻(えうげん)朝顔形(あさがほがた)(さかづき)はないかなア』
212(とく)『ヘー、213朝顔形(あさがほがた)(さかづき)沢山(たくさん)(ござ)いましたが、214(まへ)教主(けうしゆ)(さま)が、215高姫(たかひめ)さまの(くちびる)()てると仰有(おつしや)つたので、216(とら)さまと()内証(ないしよう)のレコが、217悋気(りんき)して(みな)()つて(しま)はれたさうで、218(いま)では(ひと)つも(ござ)いませぬ』
219妖幻坊の杢助『フフフフフ、220さうすると、221(この)(さかづき)敗残(はいざん)(へい)ばかりだな。222()ちもらされし郎党(らうたう)ばかりか、223ヤヤ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、224サ、225徳公(とくこう)226一杯(いつぱい)()かう』
227『ヤ、228これはこれは(まこと)(もつ)有難(ありがた)頂戴(ちやうだい)いたします。229(さけ)といふものは百薬(ひやくやく)(ちやう)とかいつて、230いいものですな、231かう青々(あをあを)とした(はる)()(なが)めて、232一杯(いつぱい)やる心持(こころもち)()つたら本当(ほんたう)(たと)へやうがありませぬワ、233どうぞ(これ)から貴方(あなた)(がた)()両人(りやうにん)指揮(しき)命令(めいれい)遵奉(じゆんぽう)(いた)しますから、234可愛(かあい)がつて(くだ)さいや』
235妖幻坊の杢助『ウン、236よしよし、237(しか)蠑螈別(いもりわけ)(この)杢助(もくすけ)とは、238どちらがお(まへ)偉大(ゐだい)なと(おも)ふ』
239(はつ)『ソリヤきまつて()ります。240()恰好(かつかう)()男振(をとこぶり)()ひ、241天地(てんち)(ちが)ひで(ござ)りますワ』
242妖幻坊の杢助『どちらが(てん)で、243どちらが()だ』
244『そこがサ、245テーンと、246イー(わたし)には(わか)らぬ(ところ)です。247(しか)し、248チーとばかり(おと)つて()りますなア』
249妖幻坊の杢助『どちらが(おと)つて()るのだ』
250杢助(もくすけ)(さま)251()はいでも(わか)つてるぢやありませぬか。252(おと)つた(はう)(おと)つてるのですもの、253高姫(たかひめ)さまの(まへ)だから、254何方(どちら)団扇(うちわ)をあげて()いだやら、255マア()はぬが(はな)ですなア、256夫婦(ふうふ)喧嘩(げんくわ)をたきつけるやうな(こと)があつては(まこと)にすみませぬから……』
257妖幻坊の杢助『ハハハハ、258其奴(そいつ)面白(おもしろ)い、259マア()はぬが()からう』
260高姫(たかひめ)『コレ(はつ)261(かま)はないから()つておくれ、262(わたし)だつて何時(いつ)までも、263蠑螈別(いもりわけ)さまの(こと)など(おも)つてはゐやしないよ。264あの(かた)大広木(おほひろき)正宗(まさむね)さまの生宮(いきみや)だつたが、265(いま)はサツパリ三五教(あななひけう)沈没(ちんぼつ)したのだから、266最早(もはや)普通(ふつう)人格者(じんかくしや)としても(みと)めてゐないよ。267何卒(どうぞ)蠑螈別(いもりわけ)さまのこた、268()はぬよにして(くだ)さい』
269(はつ)『モシ、270高姫(たかひめ)さま、271ここはウラナイ(けう)ぢやありませぬよ、272松彦(まつひこ)さまがお()でになつてから、273ユラリ(ひこ)さまや義理(ぎり)天上(てんじやう)さま、274ヘグレ神社(じんじや)(その)(ほか)275サーパリ、276ガラクタ(がみ)をおつ()()し、277(のこ)らず三五教(あななひけう)(かみ)(さま)(まつ)()へてあるのですから、278蠑螈別(いもりわけ)さまが三五教(あななひけう)へお(はい)りになつたのが(わる)(はず)はないぢやありませぬか、279さうすると(いま)貴女(あなた)三五教(あななひけう)ぢやないのですか』
280高姫『コレ(はつ)さま、281(まへ)野暮(やぼ)(こと)をいふものぢやない、282(かみ)(おく)には(おく)があり、283(おもて)には(うら)があるのだ。284(この)高姫(たかひめ)だつて、285表面(へうめん)三五教(あななひけう)になつてるけれど、286矢張(やつぱ)りウラナイ(けう)だよ。287()(なか)一通(ひととほ)りや二通(ふたとほ)りでいくものでないから、288(まへ)(その)精神(せいしん)()つて(くだ)さい。289これからお(まへ)()二人(ふたり)杢助(もくすけ)さまの両腕(りやううで)として出世(しゆつせ)をさして()げるから、290さうすりや文助(ぶんすけ)さまを(あご)でつかふやうになるよ、291(いま)受付(うけつけ)命令(めいれい)をハイハイと()いてるやうぢや(つま)らぬぢやないか』
292『イヤ、293(わか)りました。294のう徳公(とくこう)295貴様(きさま)賛成(さんせい)だらう』
296(とく)『ウーン、297(まへ)賛成(さんせい)すりや、298賛成(さんせい)しない(わけ)にも()かぬワ、299(しか)しながら松姫(まつひめ)さまは()うだろ、300こんな(こと)()承知(しようち)なさるだらうかなア』
301(はつ)『ソリヤ高姫(たかひめ)さまの(うで)にあるのだ、302(おれ)(たち)や、303(ただ)()両人(りやうにん)頤使(いし)(したが)つて()れば()いぢやないか』
304 お(きく)(そと)から、305(まど)(かほ)をあて、306()(にん)(さけ)()んでゐるのを()て、307あどけない(こゑ)でうたつてゐる。
308お菊(てん)(くち)あり(かべ)(みみ)
309(たく)んだ(たく)んだ陰謀(いんぼう)
310(きく)はソツと両人(りやうにん)
311(はら)(なか)まで推知(すゐち)して
312一寸(ちよつと)其処(そこ)まで()()ると
313(うま)くゴマかし()(そと)
314スツカリ様子(やうす)(うかが)へば
315(みみ)をペロペロ(うご)かして
316(とが)つた(くち)をしながらも
317高姫(たかひめ)さまと意茶(いちや)ついた
318揚句(あげく)のはてが小北山(こぎたやま)
319(この)神殿(しんでん)をウマウマと
320占領(せんりやう)せむとの(たく)みごと
321初公(はつこう)徳公(とくこう)両人(りやうにん)
322うまく抱込(だきこ)(さけ)()まし
323さうして(これ)から松姫(まつひめ)
324()(くら)まして義理(ぎり)天上(てんじやう)
325()出神(でのかみ)生宮(いきみや)
326居据(ゐすわ)泥棒(どろばう)をする(つも)
327何程(なにほど)高姫(たかひめ)(えら)いとて
328どうしてどうして松姫(まつひめ)
329(かがみ)のやうな(たましひ)
330(くも)らすことが出来(でき)ようか
331そんな悪事(あくじ)(たく)むより
332(はや)改悪(かいあく)するがよい
333改心(かいしん)するにも(ほど)がある
334オツトドツコイこりや(ちが)うた
335さはさりながら高姫(たかひめ)
336(ぜん)をば(あく)取違(とりちが)
337(あく)をば(ぜん)確信(かくしん)
338改心(かいしん)慢心(まんしん)ゴチヤまぜに
339なさつて(ござ)るお(かた)(ゆゑ)
340(わたし)一寸(ちよつと)(その)流儀(りうぎ)
341臨時(りんじ)使用(しよう)しましたよ
342コレコレもうし(もく)さまえ
343蠑螈別(いもりわけ)(おも)(もの)
344朝顔(あさがほ)猪口(ちよく)(たか)さまえ
345何程(なにほど)(まへ)()両人(りやうにん)
346(はつ)(とく)とを抱込(だきこ)んで
347うまい(こと)をばしようとしても
348(たちま)陰謀(いんぼう)露顕(ろけん)して
349()げていなねばならぬぞや
350松姫(まつひめ)さまがお(まへ)()
351(いつは)(ごと)()()けて
352()かれたとこが(この)(きく)
353中々(なかなか)承知(しようち)(いた)さない
354侠客娘(けふかくむすめ)()()つた
355浮木(うきき)(もり)のチヤキチヤキだ
356オホホホホホホオホホホホ
357(まど)から(なか)(なが)むれば
358あのマア(つま)らぬ(かほ)ワイナ
359イヒヒヒヒヒヒイヒヒヒヒ
360(もく)ちやま、(たか)ちやま左様(さやう)なら
361ゆつくり陰謀(いんぼう)(たく)みよ
362あとからあとから(この)(きく)
363(たた)きつぶしてゆく(ほど)
364(なん)だか()らぬが(もく)さまの
365姿(すがた)時々(ときどき)(かは)()
366(みみ)(うご)くはまだおろか
367(くち)までチヨイチヨイ(とが)()
368(はな)より(たか)うなつてゐる
369(わたし)一寸(ちよつと)(くび)ひねり
370(かんが)へました結末(けつまつ)
371(とら)獅子(しし)との混血児(こんけつじ)
372金毛(きんまう)九尾(きうび)()夫婦(ふうふ)
373なつてここまで小北山(こぎたやま)
374(うづ)聖場(せいぢやう)占領(せんりやう)
375(あさ)から(ばん)まで(さけ)のんで
376威張(ゐば)()らさむ計劃(けいくわく)
377(ただし)はここに(あみ)()
378斎苑(いそ)(やかた)往来(ゆきき)する
379数多(あまた)信者(しんじや)引捉(ひつとら)
380堕落(だらく)さした(うへ)ウラナイの
381(しこ)(をしへ)引込(ひきこ)んで
382(この)()(なか)泥海(どろうみ)
383(にご)らし(けが)すつもりだろ
384何程(なにほど)弁解(べんかい)したとても
385(きく)がここにある(かぎ)
386(まへ)(たく)みは駄目(だめ)だぞえ
387ああ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
388面白(おもしろ)うなつて()ましたよ
389妖幻坊(えうげんばう)杢助(もくすけ)
390金毛(きんまう)九尾(きうび)義理(ぎり)天上(てんじやう)
391鼻高姫(はなたかひめ)(うん)(つき)
392松姫(まつひめ)さまの神力(しんりき)
393千代(ちよ)(かた)神懸(かむがかり)
394さとき(まなこ)(にら)まれて
395尻尾(しつぽ)(いだ)しスタスタと
396(たちま)(この)()駆出(かけだ)すは
397(かがみ)にかけて()るやうだ
398悪魔(あくま)がそんな扮装(なり)をして
399大日(おほひ)()るのに吾々(われわれ)
400()かそとしても反対(あべこべ)
401()けが(あら)はれ(した)かんで
402(あさひ)()たれて()えるだろ
403それ(ゆゑ)(まへ)杢助(もくすけ)
404(ほこら)(もり)にゐた(とき)
405日輪(にちりん)(さま)()(とこ)
406一度(いちど)()たこたないぢやないか
407たまたま(そと)()(とき)
408日蔭(ひかげ)(ふか)(もり)(なか)
409初稚姫(はつわかひめ)(ともな)ひし
410スマートさまにやらはれて
411ビリビリ(ふる)うてゐただらう
412(きく)はチツとも()らないが
413(なん)だか()らぬが(はら)(なか)
414グルグルグルと(たま)ころが
415喉元(のどもと)(まで)もつきつめて
416(めう)(こと)をば()ひますぞ
417これこれ高姫(たかひめ)(もく)さまよ
418初公(はつこう)徳公(とくこう)両人(りやうにん)
419(むね)()をあて思案(しあん)して
420(ほぞ)をかむよな(こと)をすな
421(まこと)()()義理(ぎり)天上(てんじやう)
422(きく)(たい)をかりまして
423()(にん)(けもの)()をつける
424ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
425目玉(めだま)()()しましませよ
426アハハハハハハアハハハハ
427オホホホホホホオホホホホ』
428(うた)(をは)り、429一生(いつしやう)懸命(けんめい)青葉(あをば)()ぐむ森林(しんりん)(なか)脱兎(だつと)(ごと)()(かく)して(しま)つた。
430妖幻(えうげん)『オイ高姫(たかひめ)431ありや気違(きちが)ひぢやないか。432(こま)つた、433此処(ここ)にはモノ()るぢやないか。434あんな(こと)()はしておきや、435数多(あまた)信者(しんじや)(まよ)はすかも()れない。436(なん)とかして、437(たしな)めてやらねばなるまいぞ』
438高姫(たかひめ)本当(ほんたう)に、439仕方(しかた)のない(やつ)ですワ、440松姫(まつひめ)さまも、441なぜあんな気違(きちが)ひを()いとくのだらうなア。442コレ初公(はつこう)さま、443いつも、444あのお(きく)はあんな(こと)()ふのかい』
445(はつ)『ヘー、446随分(ずいぶん)(たれ)にでもヅケヅケといふ(をんな)ですよ。447(しか)しながら今日(けふ)みたいな悪口(わるくち)()つたこた、448まだ()きませぬな、449あの(をんな)()(こと)は、450比較(ひかく)(てき)正確(せいかく)だとの定評(ていひやう)があります』
451高姫定評(ていひやう)があると()ふからには、452(まへ)(たち)吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)(あや)しいものと観察(くわんさつ)してゐるのかい』
453『ヘー、454(べつ)に……(あや)しいとは(おも)ひませぬ。455(ただ)貴方(あなた)(がた)両人(りやうにん)(なか)は、456ヘヘヘヘ、457チと(あや)しくないかと直覚(ちよくかく)(いた)しました、458(ちが)ひますかな』
459高姫杢助(もくすけ)さまと夫婦(ふうふ)になつたのが、460(なに)(あや)しいのだ。461(かみ)(かみ)との(ゆる)(たま)うた結構(けつこう)生宮(いきみや)だぞえ。462(かみ)だとて夫婦(ふうふ)がなければ、463陰陽(いんやう)水火(いき)()はないから、464天地(てんち)造化(ざうくわ)神業(しんげふ)成功(せいこう)せないぢやないか』
465『ヤ、466さうキツパリと(うけたま)はりますれば、467今後(こんご)(その)(かんが)へでお(つか)(いた)します。468さうすると杢助(もくすけ)(さま)貴女(あなた)旦那(だんな)(ござ)いますか。469よくお似合(にあ)ひました夫婦(ふうふ)(ござ)います。470ヘヘヘヘ、471イヤもうお目出度(めでた)う、472それでは今日(けふ)()婚礼(こんれい)()披露(ひろう)(さけ)とも(まを)すべきものですな、473ドツサリ頂戴(ちやうだい)(いた)しませう。474(まこと)()馳走(ちそう)さまで』
475(とく)『オイ、476(はつ)ウ、477さう()(れい)()ふに(およ)ばぬぢやないか、478(さけ)()馳走(ちそう)材料(ざいれう)も、479(みな)小北山(こぎたやま)(もの)でしたのなり、480料理(れうり)(おれ)(たち)二人(ふたり)がしたのだ。481そして新夫婦(しんふうふ)に、482こちらから振舞(ふるま)つてゐるのだから、483()馳走(ちそう)さまも(なに)もあつたものかい、484先方(むかふ)(はう)から(れい)()つたら()いのだ』
485高姫(たかひめ)『コレ、486(とく)とやら、487(まへ)()(こと)一応(いちおう)理窟(りくつ)があるやうだが、488それは神界(しんかい)(こと)(わか)らぬ八衢(やちまた)人間(にんげん)()理窟(りくつ)だぞえ。489現界(げんかい)理窟(りくつ)霊界(れいかい)には(つう)じませぬぞや。490かうして()馳走(ちそう)出来(でき)るやうになつたのも、491(みな)天上(てんじやう)から()出神(でのかみ)(さま)御光(みひかり)()(あた)へ、492雨露(あめつゆ)()らして(くだ)さるお(かげ)で、493五穀(ごこく)494さわもの、495菜園物(しやゑんもの)一切(いつさい)出来(でき)てるぢやないか、496(その)生神(いきがみ)(さま)にお給仕(きふじ)さして(いただ)くお(まへ)(まこと)結構(けつこう)だ。497(かみ)(はう)から()(れい)(まを)すといふ理窟(りくつ)がどこにあるものかい。498チツとお(まへ)神界(しんかい)勉強(べんきやう)をしなさい、499さうすりや、500そんな小言(こごと)()はないやうになつて(しま)ひますよ』
501(とく)『ヘー、502(なん)とマア都合(つがふ)()教理(けうり)(ござ)いますこと』
503高姫『コレ、504(まへ)義理(ぎり)天上(てんじやう)()(こと)が、505どうしても(はら)(はい)らぬのかなア』
506『ヘー、507さう(には)かに(はい)りにくう(ござ)います。508何分(なにぶん)(さけ)御飯(ごはん)格納庫(かくなふこ)充実(じうじつ)してゐますから、509(いま)(ところ)では余地(よち)(ござ)いませぬ』
510高姫(なん)とマア(めくら)ばかりだなア、511そら(その)(はず)だ、512霊国(れいごく)天人(てんにん)(みたま)と、513八衢(やちまた)人間(にんげん)(みたま)とだから無理(むり)もない、514(まへ)さまもチツと(これ)から()出神(でのかみ)(さま)筆先(ふでさき)()みなさい。515さうすれば三千(さんぜん)世界(せかい)(こと)()えすくやうになるだらう、516コレ(はつ)さまえ、517(まへ)はチツと(かしこ)さうな(かほ)してるが、518高姫(たかひめ)のいふ(こと)(わか)つたかなア』
519(はつ)『ハイ、520(おほ)せの(とほ)り、521(この)(つち)(うへ)出来(でき)たものは(みな)(かみ)(さま)のお(ちから)(ござ)います。522何程(なにほど)立派(りつぱ)人間(にんげん)でも、523()()(いち)(まい)()()すことは出来(でき)ませぬ、524(おほ)御尤(ごもつと)もだと(かんが)へます』
525高姫成程(なるほど)526(まへ)(えら)いわい、527(これ)から杢助(もくすけ)(さま)片腕(かたうで)にして()げるから、528どうだ(うれ)しうないか、529結構(けつこう)だらうがな。530(なん)といつても三五教(あななひけう)三羽烏(さんばがらす)(いち)(にん)531時置師(ときおかしの)(かみ)(さま)だぞえ』
532『ハイ、533()(あま)光栄(くわうえい)(ござ)います。534オイ、535(とく)536貴様(きさま)改心(かいしん)して、537結構(けつこう)だといはぬかい……(いな)改悪(かいあく)して、538貴女(あなた)仰有(おつしや)(とほ)りだ、539と、540(こころ)はどうでもいい、541いつておかぬかい。542社交(しやかう)下手(へた)(やつ)だなア』
543(とく)『それなら高姫(たかひめ)さまの()(せつ)に、544ドツと改悪(かいあく)して賛成(さんせい)(いた)します。545何卒(どうぞ)(よろ)しう()(ねが)(まを)します』
546高姫(こころ)からの改心(かいしん)でなければ駄目(だめ)だぞえ。547ウツフフフフ、548コレ杢助(もくすけ)さま、549人民(じんみん)改心(かいしん)さすのは高姫(たかひめ)(かぎ)りませうがな』
550 妖幻坊(えうげんばう)(にはか)(からだ)(ふる)()した。551(まど)(そと)一寸(ちよつと)(のぞ)いて()ると、552猛犬(まうけん)()(ごと)階段(かいだん)(のぼ)つて、553松姫館(まつひめやかた)(はう)姿(すがた)(かく)した。554高姫(たかひめ)はアツと一声(ひとこゑ)555ドスンと(こし)(おろ)し、556()白黒(しろくろ)してゐる。557妖幻坊(えうげんばう)(また)冷汗(ひやあせ)をズツポリかき、558ガタガタと(ふる)(をのの)くこと益々(ますます)(はなはだ)しい。
559(窓外白雪皚々たり 大正一二・一・二五 旧一一・一二・九 松村真澄録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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