霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 槍襖(やりぶすま)〔一三二八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第3篇 鷹魅艶態 よみ:ようみえんたい
章:第13章 第51巻 よみ:やりぶすま 通し章番号:1328
口述日:1923(大正12)年01月26日(旧12月10日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ランチと片彦は館の立派なのに感心している。高姫は侍女二人に命じて、父王に来客を告げに行かせた。初花姫を騙る高姫は、ランチと片彦を案内して奥の間に進ん出で行く。
観音開きの部屋の前に着いた。扉が開いて、さらに侍女たちが出てきて三人を迎えた。高姫は侍女にランチと片彦の案内を命じると、自分は父母に会ってくると言って姿を隠した。ランチと片彦は観音開きの扉をくぐって中の間に入り、侍女に勧められるままに椅子に腰を下ろした。これは実は高姫に与えられた狸穴であった。
二人は何ともいえない心地よい気分になり、コクリコクリと夢路に入った。ドアはいつの間にか固く閉ざされてしまった。
しばらくすると、二人の肩を叩く者がある。目を覚ますと、机の上には美しい器に盛られた酒や寿司や果物が並べられていた。見ると、美しい着物を着た妙齢の婦人が三人、二人に向かい合っている。
ランチは驚いてうたた寝をしてしまった不調法を詫びた。三人の中に中央の美人は、自分は三五教の宣伝使・初稚姫だと名乗り、両脇の二人は秋子姫、豊子姫というコーラン国の侍女だと紹介した。そして、ハルナの都を目指す宣伝の旅の途上、ここでコーラン国の如意王に出会い、しばらく足を止めることにしたのだ、と語った。
ランチと片彦は、思わぬところで高名な宣伝使・初稚姫に面会を得たと、それぞれ挨拶と自己紹介を行った。初稚姫は、秋子と豊子に命じて、さかんに両人に酒を進めさせた。二人は酒と女の美貌に酔いつぶれてしまった。
二人は秋子と豊子に手をひかれて一室に導かれ、寝に就いた。しばらくして二人が気が付くと、石に囲まれた一室に横たわっていた。一枚板を立てたような大理石で包まれていて、どこにも出入り口がない。
二人は慌てて、難事に当たって天津祝詞を奏上しようとしたが、どうしたことか一言も祝詞の言葉が出てこない。アオウエイの言霊を繰り返したが、何の効能もなかった。
しばらくすると、足許や壁からカツカツと音がして、タケノコのように鋭利な槍が石畳を通して突き出してきた。二人は槍を避けて、槍に包まれながらまっすぐに立っているのがやっとだった。
すると槍の穂先が蛇に変じて鎌首をもたげ、火を吐くやつ、水を吐くやつ、黒煙を吐くやつがいる。次第に蛇の首は伸びてきて、両人の体をがんじ絡みにしてしまった。するとどこからともなく太鼓のような声が聞こえてきて、二人に三五教を棄てるように迫った。
二人はいかに脅されても屈せずに声に言霊で言いかえし、抵抗した。槍は林のごとく立ち、火は炎々とt燃えてきた。蛇とムカデはが体一面にたかってくるが、なぜか痛くもかゆくもなかった。ランチと片彦はこれぞまったく神様のご守護と大神を念じ、一時も早く天国に上らんことのみを念じつつあった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5113
愛善世界社版:188頁 八幡書店版:第9輯 333頁 修補版: 校定版:194頁 普及版:85頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)玄関口(げんくわんぐち)につき、
002『もし御両人様(ごりやうにんさま)003何卒(どうぞ)(あが)(くだ)さいませ。004これが(ちち)本宅(ほんたく)(ござ)います』
005ランチ『イヤ有難(ありがた)(ござ)る。006(なん)とまア、007四辺(あたり)(まばゆ)きばかり七宝(しつぱう)をもつて(かざ)られ、008(あだか)天国(てんごく)浄土(じやうど)荘厳(さうごん)()るやうで(ござ)る』
009片彦(かたひこ)『いかにも左様(さやう)010(それがし)(うま)れてからまだ、011斯様(かやう)(やかた)拝見(はいけん)した(こと)がない。012ハルナの(みやこ)霊照殿(れいせうでん)でも、013このお(やかた)(くら)ぶれば非常(ひじやう)(おと)りを(かん)じまする』
014『お二人様(ふたりさま)015(はづ)かしい破家(あばらや)(ござ)います、016何卒(どうぞ)(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ。017これ高子(たかこ)018宮子(みやこ)019(はや)(おく)()つてお(とう)さまやお(かあ)さまにお客様(きやくさま)がみえたと()つて()るのだよ』
020『ハイ』
021(こた)へて二人(ふたり)侍女(じぢよ)衝立(ついたて)(かげ)姿(すがた)(かく)した。022七宝(しつばう)をもつて(ゑが)かれたる衝立(ついたて)()月夜(つきよ)海面(かいめん)であつた。023如何(いか)なる画伯(ぐわはく)()になりしものか、024一目(ひとめ)()るより幽玄壮大(いうげんさうだい)気分(きぶん)(ただよ)はさるるのであつた。025二人(ふたり)はオヅオヅ高姫(たかひめ)(あと)について(なが)廊下(らうか)面恥(おもはづ)かしげに(すす)みながら、026ランチは片彦(かたひこ)(むか)ひ、
027片彦(かたひこ)殿(どの)028(じつ)瑠璃宮(るりきう)のやうで(ござ)るなア』
029成程(なるほど)030形容(けいよう)(ことば)(ござ)らぬ。031これは これはとばかり(はな)吉野山(よしのやま)032とでも()つて()きませうかな。033嬋妍窈窕(せんけんえうてう)たる美人(びじん)(みちび)かれ、034(きん)035(ぎん)036瑠璃(るり)037珊瑚(さんご)038瑪瑙(めなう)039硨磲(しやこ)040玻璃(はり)七宝(しつぱう)をもつて(かざ)られたる(うづ)御殿(ごてん)(すす)()吾々(われわれ)両人(りやうにん)は、041(ゆめ)でも()()るので(ござ)るまいかなア』
042と、043こんな(こと)(ささや)きながら、044(おく)(おく)へと(すす)()つた。045パツと()(あた)つた(ところ)観音開(くわんおんびら)きの(くら)のやうなものが()つて()る。046其処(そこ)から(はな)(あざむ)(ばか)りの十二三(じふにさん)乙女(をとめ)七八人(しちはちにん)047バラバラと(あら)はれ、048(なか)(もつと)(とし)かさらしき乙女(をとめ)叮嚀(ていねい)()(つか)へ、
049『お嬢様(ぢやうさま)050どこへ()つていらしたので(ござ)います。051御両親様(ごりやうしんさま)大変(たいへん)御心配(ごしんぱい)(ござ)いました。052そこで(わらは)がお(たづ)ねに()かうと(おも)つて()(ところ)053そこへ高子(たかこ)054宮子様(みやこさま)が、055嬢様(ぢやうさま)(いま)(きやく)さまを()れてお(かへ)りとの(こと)に、056(むか)へに(まゐ)りました。057ようまア(かへ)つて(くだ)さいました』
058叮嚀(ていねい)()ふ。
059高姫(たかひめ)其方(そなた)五月(さつき)ぢやないか、060御苦労(ごくらう)だつたねえ。061このお(かた)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)だよ。062サア(おく)御案内(ごあんない)して(くだ)さい。063初稚姫(はつわかひめ)(さま)のお居間(ゐま)へねえ』
064五月(さつき)『ハイ承知(しようち)(いた)しました。065サアお客様(きやくさま)066(わらは)案内(あんない)(いた)しませう』
067ランチ『ヤア、068これは(まこと)(おそ)()ります』
069片彦(かたひこ)左様(さやう)なれば遠慮(ゑんりよ)なく御免(ごめん)(かうむ)りませう』
070観音開(くわんのんびら)きを(くぐ)らうとする(とき)
071高姫(たかひめ)『もしお客様(きやくさま)072(わらは)一寸(ちよつと)父母(ふぼ)()つて(まゐ)りますから、073何卒(どうぞ)応接(おうせつ)()()つて()(くだ)さい。074これ五月(さつき)や、075客様(きやくさま)鄭重(ていちよう)御待遇(もてなし)なされや』
076『ハイ(かしこ)まりました』
077片彦(かたひこ)『どうぞ初花姫(はつはなひめ)(さま)078(かま)(くだ)さいますな』
079ランチ『左様(さやう)ならばお()(まを)して()ります、080どうぞ(すぐ)にお(かほ)()せて(くだ)さい』
081『ハイ承知(しようち)(いた)しました。082一寸(ちよつと)失礼(しつれい)(いた)します』
083と、084(とびら)()けてパツと姿(すがた)(かく)した。085これは高姫(たかひめ)(あた)へられた狸穴(まみあな)立派(りつぱ)部屋(へや)である。086片彦(かたひこ)087ランチは八人(はちにん)少女(おとめ)(みちび)かれ、088観音開(くわんのんびら)きを(くぐ)つて(なか)(はい)つた。089室内(しつない)諸道具(しよだうぐ)行儀(ぎやうぎ)よく整理(せいり)され、090五脚(ごきやく)椅子(いす)が、091(まる)いテーブルを中央(まんなか)にして(なら)べられてある。092二人(ふたり)五月(さつき)(すす)めらるる(まま)(こし)(おろ)した。093(なん)とも()へぬよい気分(きぶん)である。094ドアは何時(いつ)()にか(かた)(とざ)された。095二人(ふたり)はコクリコクリと夢路(ゆめぢ)()つた。
096 (しばら)くすると、
097『もしもし』
098(かた)(たた)くものがある。099二人(ふたり)はフツと()()ませば、100(つくゑ)(うへ)()(こと)もない綺麗(きれい)(うつは)に、101(さけ)寿司(すし)果物(くだもの)()られて()た。102そして(なん)とも()へない妙齢(めうれい)婦人(ふじん)衣服(いふく)一面(いちめん)宝玉(はうぎよく)(ちりば)め、103(その)(ひかり)灯火(とうくわ)反射(はんしや)して一層(いつそう)(うるは)しく(かがや)いて()る。104(あか)105(むらさき)106(あを)107(くれなゐ)108()109(しろ)110橄欖色(かんらんしよく)111紫紺色(しこんしよく)などの(ひかり)全身(ぜんしん)から(あふ)れて()る。112二人(ふたり)(ゆめ)かとばかり(おどろ)いた。113さうして室内(しつない)灯火(ともしび)のついて()るのを()て、114余程(よほど)(なが)(ねむ)つて()たものだと(おも)つた。
115ランチ『ヤア、116どうも失礼(しつれい)(いた)しました。117結構(けつこう)なお(やかた)()()れられまして、118失礼千万(しつれいせんばん)にも(ねむ)つて仕舞(しま)ひました。119何卒(どうぞ)吾々(われわれ)無作法(ぶさはふ)をお(とが)めなく、120(ゆる)しを(ねが)ひます』
121 三人(さんにん)(をんな)(いづ)れも玉子(たまご)目鼻(めはな)のやうな、122(そろ)ひも(そろ)うた容貌(ようばう)をして()る。123(しか)中央(ちうあう)(こし)をかけて()(をんな)は、124どこともなしに気品(きひん)(たか)く、125()(ふた)つばかり(とし)かさのやうに()えた、126十八才(じふはちさい)十六才(じふろくさい)(ぐらゐ)姿(すがた)である。127(なか)なる美人(びじん)両人(りやうにん)(むか)ひ、
128(わたし)初稚姫(はつわかひめ)(ござ)います。129(うけたま)はれば貴方等(あなたがた)はランチ将軍(しやうぐん)130片彦(かたひこ)将軍様(しやうぐんさま)ださうですなア、131よくまア三五(あななひ)(みち)御入信(ごにふしん)なさいました。132(わらは)大神(おほかみ)(めい)()けハルナの(みやこ)()して宣伝(せんでん)(たび)(のぼ)途中(とちう)133如意王様(によいわうさま)見出(みいだ)され、134(しばら)此処(ここ)(あし)(とど)むる(こと)となりました。135さうして(この)(みぎ)()られる(かた)秋子姫(あきこひめ)136(ひだり)(かた)豊子姫(とよこひめ)(まを)すお(かた)(ござ)います。137まだお(とし)(わか)(ござ)いますが、138王様(わうさま)がコーラン(ごく)から侍女(じぢよ)としてお()(あそ)ばした淑女(しゆくぢよ)(ござ)います。139何卒(どうぞ)以後(いご)相共(あひとも)宜敷(よろし)御提携(ごていけい)(ねが)ひます』
140ランチ『貴女(あなた)が、141()(たか)初稚姫(はつわかひめ)(さま)(ござ)いましたか。142これは(また)不思議(ふしぎ)(ところ)でお()(かか)りました。143(わたし)(おほ)せの(とほ)りランチで(ござ)いまする。144一度(ひとたび)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)部下(ぶか)となり、145大黒主(おほくろぬし)(めい)(ほう)じ、146勿体(もつたい)なくも斎苑(いそ)(やかた)()()せむとした罪人(つみびと)(ござ)います。147(しか)るに、148大神様(おほかみさま)のお(めぐみ)によつてスツカリ改心(かいしん)(いた)し、149治国別(はるくにわけ)(さま)(なが)らくの御教訓(ごけうくん)をうけ、150御添書(ごてんしよ)(いただ)いて斎苑(いそ)(やかた)修業(しゆげふ)(まゐ)途中(とちう)151王女(わうぢよ)初花姫(はつはなひめ)(さま)にお()にかかり、152(みちび)かれて此処(ここ)まで参上(さんじやう)(いた)しました。153何卒(どうぞ)(いた)らぬ吾々(われわれ)154万事(ばんじ)御指導(ごしだう)(ねが)(たてまつ)ります』
155拙者(せつしや)片彦(かたひこ)(ござ)います。156ランチ殿(どの)同様(どうやう)径路(けいろ)辿(たど)つて、157(いま)治国別(はるくにわけ)(さま)のお弟子(でし)となり、158(この)門前(もんぜん)(おい)王女様(わうぢよさま)(みちび)かれ、159只今(ただいま)これへ(まゐ)つた(ところ)(ござ)います。160何分(なにぶん)宜敷(よろし)御指導(ごしだう)(ねが)ひます』
161 これより初稚姫(はつわかひめ)は、162秋子(あきこ)163豊子(とよこ)(めい)(さかん)両人(りやうにん)(さけ)(すす)めさせた。164両人(りやうにん)恍惚(くわうこつ)として(さけ)二人(ふたり)美貌(びばう)()ひ、165(わが)()(てん)にあるか、166()にあるか、167海中(かいちう)にあるか、168()(やま)か、169殿中(でんちう)か、170(ほとん)見当(けんたう)のつかぬ(ところ)まで()ひつぶれて(しま)つた。171さうして三五教(あななひけう)教理(けうり)も、172治国別(はるくにわけ)教訓(けうくん)も、173(のこ)らず念頭(ねんとう)より遺失(ゐしつ)し、174(いま)(ただ)ランチには豊子(とよこ)(かほ)175片彦(かたひこ)には秋子(あきこ)(かほ)が、176()いたやうに()にボツと(うつ)るのみである。177ランチ、178片彦(かたひこ)両人(りやうにん)二人(ふたり)(をんな)()()かれ、179ヒヨロリヒヨロリと廊下(らうか)(わた)つて、180(うるは)しき一間(ひとま)(みちび)かれ、181二男(になん)二女(にぢよ)(まくら)(なら)べて(しん)についた。
182 (しばら)くあつて二人(ふたり)()がつき四辺(あたり)()れば、183(いし)(いし)とに(たた)まれた一室内(いつしつない)石畳(いしだたみ)(うへ)(よこ)たはつて()た。184さうして何処(どこ)にも出口(でぐち)がない。185一枚板(いちまいいた)()てたやうな(なめ)らかな大理石(だいりせき)四方(よも)(つつ)んである。186二人(ふたり)(にはか)顔色(がんしよく)()へ、
187ランチ『ヤア、188こりや大変(たいへん)だ。189片彦(かたひこ)さま、190どうだらう、191美人(びじん)()()かれ(ねむ)つたと(おも)へば、192斯様(かやう)石牢(いしらう)(なか)()()まれたぢやないか』
193片彦(かたひこ)成程(なるほど)194こいつは(こま)つた。195どうしたらよからうかなア』
196『どうしようと()つても()のかかる(ところ)もなければ、197()しても()いても出口(でぐち)入口(いりぐち)もないのだから、198仕方(しかた)がないぢやないか。199()()(とき)にこそ、200天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)するのだな』
201如何(いか)にも左様(さやう)
202二人(ふたり)天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)せむと(あせ)れども、203どう()ふものか、204一口(ひとくち)()()ない。205(ほか)言葉(ことば)なら(なん)でも()るが、206天津祝詞(あまつのりと)(かぎ)つて一言(ひとこと)()ないのは、207不思議中(ふしぎちう)不思議(ふしぎ)であつた。
208ランチ『ヤア駄目(だめ)だ、209片彦(かたひこ)210御身(おんみ)駄目(だめ)()えるのう』
211片彦(かたひこ)(まこと)残念(ざんねん)至極(しごく)(ござ)る。212(ひと)(ちから)(かぎ)呶鳴(どな)つて()ようでは(ござ)らぬか。213さうすれば(たれ)かが(こゑ)()きつけて(すく)()して()れるだらう』
214宜敷(よろし)からう』
215二人(ふたり)はアオウエイを連発的(れんぱつてき)幾度(いくど)(かさ)ねて(うな)()した。216(しか)石畳(いしだたみ)(すこ)しの(すき)もなく(かこ)まれた十坪(とつぼ)(ばか)りの(この)(しつ)は、217(こゑ)(そと)()れる(はず)もなく、218(こゑ)(のこ)らず反響(はんきやう)して、219(つひ)には両人(りやうにん)とも(のど)(やぶ)り、220カスリ(ごゑ)しか()なくなつて仕舞(しま)つた。
221ランチ『ああ駄目(だめ)だ、222もう此処(ここ)でミイラになるより仕方(しかた)がないワイ』
223片彦(かたひこ)『これも吾々(われわれ)罪劫(ざいごふ)(むく)うて()たのだと(あきら)めて、224男同士(をとこどうし)心中(しんちゆう)でもしようぢやないか』
225『どうも仕方(しかた)がない』
226とこれもひつついたやうな(こゑ)(つぶや)いて()る。227(たちま)足許(あしもと)から、228カツカツカツと鋭利(えいり)(のみ)(いは)()(くだ)くやうな(おと)がしたかと(おも)へば、229(たけのこ)のやうに鋭利(えいり)(やり)石畳(いしだたみ)(とほ)してヌツと(あら)はれた。
230『ヤアこれは険難(けんのん)だ』
231(うしろ)へすざると、232(また)もやカツと(おと)がして(やり)穂先(ほさき)()いて()る。233(またた)(うち)三本(さんぼん)四本(しほん)五本(ごほん)十本(じつぽん)石畳(いしだたみ)(とほ)して隙間(すきま)もなく鋭利(えいり)(やり)()(なら)んで()た。234横壁(よこかべ)になつて()石畳(いしだたみ)からも(やり)穂先(ほさき)三尺(さんじやく)(ばか)り、235カツカツと()ひながら四方(しはう)から(あたま)()した。236最早(もはや)両人(りやうにん)真直(まつすぐ)()つて()るより、237(よこ)になることも()うする(こと)出来(でき)ないやうに(やり)(つつ)まれて(しま)つた。238(やり)穂先(ほさき)(たちま)(へび)(へん)じ、239ペロペロと両人(りやうにん)身体(からだ)()めむと一斉(いつせい)(くび)(もた)げて舌端(ぜつたん)()()(やつ)240(なか)には(みづ)()(やつ)241黒煙(こくえん)()(やつ)242次第々々(しだいしだい)延長(えんちやう)して両人(りやうにん)身体(からだ)雁字搦(がんじがら)みにして(しま)つた。243二人(ふたり)(こゑ)得上(えあ)げず、244(たがひ)(かほ)見合(みあは)せた。245(にはか)(かほ)はやつれ、246(うらみ)顔色(がんしよく)物凄(ものすご)く、247(たちま)地獄(ぢごく)餓鬼(がき)のやうな面相(めんさう)になつて(しま)つた。
248 (この)(とき)249何処(いづく)ともなく太鼓(たいこ)のやうな(こゑ)(きこ)えて()た。250二人(ふたり)(みみ)()ましてよく()けば、
251『アアア悪魔(あくま)外道(げだう)(をしへ)をもつて()(たぶ)らかす三五教(あななひけう)迷信(めいしん)(いた)し、
252イイイ印度(いんど)(みやこ)ハルナに()します大黒主(おほくろぬし)命令(めいれい)(そむ)軍務(ぐんむ)()てて、
253ウウウ迂濶千万(うくわつせんばん)にも三五教(あななひけう)寝返(ねがへ)りを()迷信(めいしん)(いた)した(つみ)によつて、
254エエエ閻魔(えんま)(ちやう)より(ゆる)しを()け、255(なんぢ)両人(りやうにん)(つるぎ)(やま)256(へび)(むろ)257(ほのほ)牢獄(らうごく)につつ()み、
258オオオ臆病者(おくびやうもの)汝等(なんぢら)霊肉(れいにく)(ほろ)ぼし、259地獄(ぢごく)のどん(ぞこ)(おと)して()れむ。
260カカカ改悪(かいあく)(いた)して片時(かたとき)(はや)(かみ)にお(わび)(いた)せばよし、261何時迄(いつまで)頑張(ぐわんば)りて()るならば、
262キキキ(きり)地獄(ぢごく)へつき(おと)し、263(のこぎり)()をもつて(なんぢ)(くび)()(やぶ)り、
264ククク(くる)しみの極度(きよくど)(たつ)せしめ、265(くそ)食料(しよくれう)(あた)へてやるがどうだ。
266ケケケ()しからぬ(その)(はう)
267コココ(これ)より此処(ここ)改心(かいしん)(いた)すと(まを)せば、268この苦痛(くつう)(ゆる)してやらうが、269何処(どこ)までも三五教(あななひけう)(ほう)ずるとあらば、270最早(もはや)(ゆる)さぬ百年目(ひやくねんめ)271返答(へんたふ)はどうだ』
272(らい)(ごと)(こゑ)(きこ)えて()る。
273ランチ『拙者(せつしや)(いやし)くも三軍(さんぐん)指揮(しき)したる武士(ぶし)(ござ)る。274(いつ)たん三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)したる(うへ)は、275(けつ)して所信(しよしん)はまげぬ(この)(はう)276サア(はや)(それがし)如何(いか)やうとも(いた)したがよからう。277仮令(たとへ)肉体(にくたい)(ほろ)ぼさるとも、278如何(いか)なる責苦(せめく)()ふとも、279拙者(せつしや)(みたま)(にく)(はな)れ、280大神(おほかみ)天国(てんごく)(のぼ)り、281神軍(しんぐん)引率(いんそつ)して汝等(なんぢら)魔軍(まぐん)木端微塵(こつぱみじん)粉砕(ふんさい)して()れむ。282如何(いか)(やう)なりとも(いた)したらよからう』
283 何処(いづこ)ともなく(また)もや(おほ)きな(こゑ)
284『さてもさても合点(がてん)(わる)代物(しろもの)だなア。
285シシシ強太(しぶと)(いた)して()()りよると、286(なんぢ)霊肉(れいにく)粉砕(ふんさい)し、287高天原(たかあまはら)(のぼ)(どころ)か、288第三天国(だいさんてんごく)軍勢(ぐんぜい)をもつて、289(なんぢ)悪業(あくごふ)(かぞ)()て、290(やり)穂先(ほさき)(ほろ)ぼし()れむ。
291ススス素直(すなほ)改悪(かいあく)(いた)して、292(この)(はう)()(ぶん)についたが(なんぢ)()(ため)であらう。
293セセセ背中(せなか)(はら)はかへられまい。
294ソソソ(そば)()(のぼ)るその剣先(けんさき)295(いま)(ほのほ)()いて(なんぢ)()(つく)すだらう。296片彦(かたひこ)同様(どうやう)だぞ。297一同(いちどう)思案(しあん)(さだ)めて返答(へんたふ)(いた)すがよからう』
298片彦(かたひこ)『タタタ(たた)くな(たた)くな、299悪魔(あくま)計略(けいりやく)(じやう)ぜられて、300仮令(たとへ)(この)肉体(にくたい)(ほろ)ぶとも、
301チチチ(ちつ)とも(おそ)れは(いた)さぬ。
302ツツツ()くなと()るなと勝手(かつて)(いた)せ。
303テテテテンゴを(いた)すと、304やがて三五(あななひ)大神(おほかみ)(あら)はれたまひ、305(なんぢ)(ばつ)したまふべし。
306トトトとほうに()れて、307如何(いか)栃麺棒(とちめんぼう)()るとも、308(けつ)して(その)(はう)(ゆる)されまいぞ』
309 (あたま)(うへ)から(また)(あや)しの(こゑ)
310『ナナナ(なに)をゴテゴテと世迷言(よまひごと)(ぬか)すか。
311ニニニ二人(ににん)とも大黒主(おほくろぬし)(さま)叛旗(はんき)(ひるがへ)し、
312ヌヌヌヌツケリコと士節(しせつ)(やぶ)三五教(あななひけう)(みち)に、
313ネネネ寝返(ねがへ)()つた横着物(わうちやくもの)
314ノノノ(のぞ)みとあらば、315(この)(やり)穂先(ほさき)廻転(くわいてん)させ、316(のど)()はず、317(あたま)()はず、318(はら)()はず、319()いて()いて()(まく)つてやらうか』
320ランチ『ハハハ(はら)なりと(のど)なりと、
321ヒヒヒ(ひぢ)なりと(せな)なりと勝手(かつて)に、
322フフフ不足(ふそく)のないやうに、323サア()けい、324ガツプリ()けい。
325ヘヘヘ下手(へた)(こと)(いた)して地獄(ぢごく)(くる)しみを()けな。
326ホホホ(はう)野郎(やらう)()327このランチは、328(なんぢ)(ごと)悪神(あくがみ)屁古垂(へこた)れるやうな弱虫(よわむし)ではない(ほど)に、329(こひ)(まないた)(うへ)()せらるれば(けつ)して()ねも(うご)きも(いた)さぬ。330武士(ぶし)(はな)(うた)はれたるこのランチ、331片彦(かたひこ)両人(りやうにん)一寸(ちよつと)(うご)かばこそ、332大磐石心(だいばんじやくしん)だ、333勝手(かつて)(いた)したがよからう』
334と、335かすれた、336ひつついた(こゑ)()して抵抗(ていかう)して()た。
337 不思議(ふしぎ)(こと)には(やり)(はやし)(ごと)突立(つつた)ち、338()炎々(えんえん)として()えて()る。339(へび)340蜈蚣(むかで)(からだ)一面(いちめん)(たか)つて()るが、341(しか)(いた)くも(かゆ)くもない。342両人(りやうにん)はこれぞ(まつた)神様(かみさま)御守護(ごしゆご)大神(おほかみ)(ねん)じ、343(かつ)一時(いちじ)(はや)天国(てんごく)(のぼ)らむ(こと)をのみ(ねん)じつつあつた。
344 ああ(この)両人(りやうにん)如何(いか)にして(すく)はるるであらうか。
345大正一二・一・二六 旧一一・一二・一〇 加藤明子録)