霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 暗闘(あんとう)〔一三三一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第4篇 夢狸野狸 よみ(新仮名遣い):むりやり
章:第16章 暗闘 よみ(新仮名遣い):あんとう 通し章番号:1331
口述日:1923(大正12)年01月27日(旧12月11日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
小北山では、初と徳の両人が文助に乱暴して、杢助が落としたブンブン玉を奪って行ったことでちょっとした騒ぎになっていた。お菊は文助からその話を聞いて怒り、お千代に文助の介抱を任せると、初と徳を追いかけて飛び出した。
怪志の森に来てみると日が暮れてあたりは闇に包まれた。お菊は森の入り口にたたずんで思案にくれていると、ほど遠くない暗がりにウンウンとうめき声が聞こえる。
初と徳は、眼が覚めてみると玉を奪って逃げてきたときの動悸はまだ止まず、痛みも軽減していない。あたりを見れば、高姫と杢助は、自分たちを置いてどこかへ立ち去ってしまった様子である。
お菊は二人の話をすっかり聞いて、高姫と杢助が、曲輪の玉を持って逃げてしまったことを悟った。お菊は文助の声色を使い、幽霊のふりをして二人をおどかしにかかった。
初と徳は、高姫がまだその辺にいて、おどかしているのだと勘違いした。お菊は今度は高姫と杢助の声色を使い、高姫と杢助が二人を使い捨てにしたことをなぞって二人をたきつけた。そして高姫のふりをして、暗闇の中から杖で二人を殴りつけた。
二人は、高姫が暗がりから叩いているのだと思って怒り散らしながら右往左往している。お菊は杖を打ち振って手当たり次第に殴り倒し、笑い声を残すと森を立ち出で、息を殺して二人の様子を考えていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2019-01-16 00:55:39 OBC :rm5116
愛善世界社版:233頁 八幡書店版:第9輯 350頁 修補版: 校定版:239頁 普及版:107頁 初版: ページ備考:
001春風(はるかぜ)かをる小北山(こぎたやま)
002木々(きぎ)(こずゑ)(みどり)して
003(うめ)()(もも)(むらさき)
004(はな)(こずゑ)(かざ)りつつ
005(かみ)御稜威(みいづ)灼然(いやちこ)
006老若(らうにやく)男女(なんによ)朝夕(あさゆふ)
007足跡(そくせき)たえぬ(かみ)(には)
008(たづ)(きた)りし高姫(たかひめ)
009妖幻坊(えうげんばう)杢助(もくすけ)
010(かみ)御稜威(みいづ)()らされて
011(しこ)(たく)みは(たちま)ちに
012露顕(ろけん)岩下(がんか)()げられて
013コリヤたまらぬと(しり)からげ
014(いた)さをこらへてスタスタと
015(くも)(かすみ)()(くだ)
016折柄(をりから)ヨボヨボ(のぼ)()
017盲爺(めくらおやぢ)文助(ぶんすけ)
018衝突(しようとつ)したる(その)はづみ
019曲輪(まがわ)(たま)遺失(ゐしつ)して
020コハさに(ふる)(をのの)きつ
021一目散(いちもくさん)()げて()
022(あと)()つかけて()(きた)
023(はつ)(とく)二人(ふたり)命令(めいれい)
024小北(こぎた)(やま)引返(ひつかへ)
025曲輪(まがわ)(たから)取返(とりかへ)
026文助(ぶんすけ)(おやぢ)突倒(つきたふ)
027(また)もスタスタ()げて()
028(ところ)(かま)はず打撲(だぼく)され
029(くるし)(もだ)文助(ぶんすけ)
030(ちから)(かぎ)りに人殺(ひとごろ)
031(たれ)()()(たす)けよと
032(さけ)びし(こゑ)(おどろ)いて
033(たちま)ちかけ()数十(すうじふ)(にん)
034老若(ろうにやく)男女(なんによ)信徒(まめひと)
035右往(うわう)左往(さわう)彷徨(さまよ)ひつ
036こは何者(なにもの)仕業(しわざ)ぞと
037(みな)とりどりに(はな)しゐる
038かかる(ところ)階段(かいだん)
039(くだ)(きた)れる二人(ふたり)(をんな)
040千代(ちよ)(きく)立寄(たちよ)つて
041いろいろ雑多(ざつた)介抱(かいはう)
042文助(ぶんすけ)()さまに(その)(わけ)
043(うけたま)はれば(はつ)(とく)
044二人(ふたり)がわれを()(たふ)
045ブンブン(だま)神宝(しんぽう)
046(うば)つて直様(すぐさま)()()きし
047(その)物語(ものがたり)()くよりも
048侠客育(けふかくそだ)ちの両人(りやうにん)
049何条(なにでう)(もつ)(ゆる)すべき
050千代(ちよ)(あと)(のこ)しおき
051文助(ぶんすけ)(おやぢ)()(うへ)
052依頼(いらい)しおきてお(きく)(ぢやう)
053二人(ふたり)(あと)()ひかけて
054(くも)(かすみ)(はし)()
055怪志(あやし)(もり)()()れば
056(なが)春日(はるひ)()れはてて
057あたりは(やみ)(つつ)まれぬ
058(きく)(もり)入口(いりぐち)
059(たたず)思案(しあん)にくるる(をり)
060(ほど)(とほ)からぬ(くら)がりに
061ウンウンウンと(うめ)(ごゑ)
062ハテ(いぶ)かしと(みみ)すませ
063(うで)をば()みて()きゐたり。
064(はつ)『あああ、065(あま)草臥(くたび)れて、066何時(いつ)とはなしに夢路(ゆめぢ)()つて(しま)つた。067(しか)しあまり時間(じかん)()つてゐないやうだ。068(その)証拠(しようこ)には(はし)つて()(とき)動悸(どうき)はまだ()まず、069(いた)みはチツとも軽減(けいげん)してゐないし、070(あせ)(かわ)いてをらぬ。071なア(とく)072(くら)いと()つても、073これだけ(くら)()さはないぢやないか。074ヤツパリ怪志(あやし)(もり)だな』
075(とく)『ウーン、076(おれ)もまだ半眠(はんみん)半醒(はんせい)状態(じやうたい)で、077トツクリ()られないワ。078(なん)だか(むね)がドキドキして仕方(しかた)がない。079モシ高姫(たかひめ)さま、080杢助(もくすけ)さま、081チツと()きて(くだ)さいな、082ああ首筋元(くびすぢもと)がゾクゾクとして()ました。083あああ、084返辞(へんじ)をして(くだ)さらぬぞ、085ヤツパリ()両人(りやうにん)さまも草臥(くたび)れて()(ござ)ると()えるな、086夜逃(よにげ)同様(どうやう)撤兵(てつぺい)して()たのだから、087草臥(くたび)れるのも無理(むり)はないワイ。088(なん)せよ高姫(たかひめ)さまの外交(ぐわいかう)がなつてゐないものだから、089こんなヘマを()るのだよ。090グヅグヅしてると、091ここらあたりにバルチザンが襲来(しゆうらい)するかも()れないよ。092(その)()(ぐら)しの日傭(ひやと)外交(ぐわいかう)だからなア。093吾々(われわれ)国民(こくみん)(まくら)(たか)うして()られないワ。094どう(かんが)へても(しん)から()つかれないからなア』
095『どうやら、096高姫(たかひめ)さまは杢助(もくすけ)と、097吾々(われわれ)雑兵(ざふひやう)()つたらかして、098満鉄(まんてつ)逸早(いちはや)逃帰(にげかへ)つたらしいぞ。099(しか)幽霊(いうれい)内閣(ないかく)立去(たちさ)つた(あと)は、100(なに)()るか()れたものぢやないワ。101どうしてもコリヤ吾々(われわれ)国民(こくみん)腹帯(はらおび)()め、102国民(こくみん)外交(ぐわいかう)をやる()でないと、103当局者(たうきよくしや)(まか)しておいても、104肝腎(かんじん)(とき)になつたら()げられて(しま)ふからなア』
105『さうだなア、106一体(いつたい)何処(どこ)まで()げたのだらう』
107()げるのに、108(きま)つた場所(ばしよ)があるかい。109(その)(とき)()都合主義(つがふしゆぎ)だ。110(てき)(とほ)()つかければ(とほ)()げるだけのものだ。111今日(こんにち)国際(こくさい)(てき)外交(ぐわいかう)は、112(あした)一城(いちじやう)(ゆづ)(ゆふべ)一塁(いちるゐ)(あた)へて、113十万(じふまん)億土(おくど)のドン(ぞこ)まで譲歩(じやうほ)するのだからなア。114それが所謂(いはゆる)宋襄(そうじやう)仁者(じんしや)唯一(ゆゐいつ)武器(ぶき)だ、115最善(さいぜん)方法(はうはふ)だ。116(よわ)(もの)には何処(どこ)までも()つかけて()(ほど)利益(りえき)だが、117(つよ)(やつ)には()げるのが(もつと)賢明(けんめい)行方(やりかた)だ。118(しか)()(さび)しくつては仕方(しかた)がないぢやないか。119オイ、120(ひと)(うた)でも(うた)つて()をまぎらさうぢやないか。121……折角(せつかく)文助(ぶんすけ)のドタマを(なぐ)(たふ)して、122ウマウマとブンブン(だま)をひつたくり、123此処(ここ)まで()つて()杢助(もくすけ)さまに(わた)し、124(よろこ)んでは(もら)つたが、125(あま)八百長(やほちやう)芝居(しばゐ)がすぎて、126足腰(あしこし)()たぬ(ほど)()ちのめされ、127(うご)きのとれぬ(ところ)()すまして、128(この)(くら)がりに置去(おきざ)りするとは、129(まこと)残酷(ざんこく)ぢやないか。130これでは吾々(われわれ)(しも)人民(じんみん)は、131やりきれない。132どうしたらよからうかなア』
133小鳥(ことり)つきて(たか)(くら)はれ、134(うさぎ)つきて良狗(りやうく)()らるとは(おれ)たちの(こと)だ。135あれだけ吾々(われわれ)()(なが)してやつと()つた曲輪(まがわ)(たま)を、136(また)強者(きやうしや)掠奪(りやくだつ)されて(しま)ふと()ふのは、137ヤツパリ未来(みらい)何処(どこ)かの外交(ぐわいかう)手腕(しゆわん)(うつ)つてゐるのだよ。138手腕(しゆわん)のワンは(いぬ)()(ごゑ)だが、139本当(ほんたう)()(また)へはさんで、140シヨゲ シヨゲと()(かへ)喪家(さうか)(いぬ)のやうな手腕(しゆわん)だからな。141しまひには、142(ただ)(ひと)つよりない大椀(たいはん)台湾(たいわん))まで逃出(にげだ)すかも()れぬぞ。143何程(なにほど)琉球(りうきう)そに()うても、144(ほね)のない蒟蒻腰(こんにやくごし)では駄目(だめ)だ。145貴様(きさま)だつて(おれ)だつて、146半身(はんしん)不随(ふずい)だから、147腹中(ふくちう)副守(ふくしゆ)148ガラクタ連中(れんちう)には、149うまく誤魔化(ごまくわ)しておいて、150()(かく)151自分(じぶん)身体(しんたい)回復(くわいふく)()たねばなるまいぞ。152何程(なにほど)(ひと)(ため)だの、153刻下(こくか)急務(きふむ)だのといつた(ところ)で、154ドドのつまりは、155自分(じぶん)大切(たいせつ)だからな、156ハハハハハ』
157 お(きく)二人(ふたり)(はなし)をスツカリ()いて(しま)つた。158そして高姫(たかひめ)159杢助(もくすけ)両人(りやうにん)曲輪(まがわ)(たま)を、160此奴(こいつ)()両人(りやうにん)()から()つたくり、161()げて(しま)つた(こと)(さと)つた。162……此奴(こいつ)(ひと)つ、163文助(ぶんすけ)声色(こわいろ)使(つか)つておどかしてやらうか……と横着(わうちやく)なお(きく)(くら)がりを(さいはひ)に、
164お菊『ヒヤー、165(うら)めしやなア、166初公(はつこう)167徳公(とくこう)両人(りやうにん)(あたま)をコツかれ、168ブンブン(だま)をボツたくられ、169(その)(うへ)(いのち)までも()られたわいのう、170ヤイ、171(はつ)172(とく)両人(りやうにん)173冥途(めいど)道伴(みちづ)れ、174(その)(はう)生首(なまくび)(もら)うて(かへ)るぞよ』
175(はつ)『コリヤ(とく)176(この)(いや)らしい(もり)(なか)で、177馬鹿(ばか)真似(まね)をするない。178(なん)だ、179(おやぢ)(こゑ)()しやがつて……』
180(とく)『ヘン、181貴様(きさま)真似(まね)をしたぢやないか、182怪体(けたい)(やつ)だなア』
183(なに)184貴様(きさま)(めう)(こゑ)()したのだらう』
185(おれ)(けつ)してそんなこた、186()うた(おぼえ)がない。187貴様(きさま)()はないとすれば、188どつか(ほか)人間(にんげん)一匹(いつぴき)()てゐるに(ちが)ひない。189(くら)がりを(さいはひ)に、190ヤツパリ杢助(もくすけ)さまが(かく)れた真似(まね)をして、191(おれ)(たち)(はなし)()いてゐたのかも()れぬぞ。192ハテ(こま)つたのう』
193『モシ、194杢助(もくすけ)さま、195(この)(いや)らしい()さに、196そんな悪戯(いたづら)はやめて(くだ)さいな。197(こま)るぢやありませぬか』
198(きく)『ホホホホホ』
199(とく)高姫(たかひめ)さま、200(はら)(わる)い、201そんな(いや)らしい(こゑ)()したつて、202吾々(われわれ)はビクともしませぬぞや』
203お菊(しり)(たた)かれ、204(ほね)まで腫上(はれあが)り、205ビクとも出来(でき)ぬだらう。206(じつ)(あは)れなものだのう、207オホホホホホ』
208『コリヤ高姫(たかひめ)209馬鹿(ばか)にすない、210(ひと)をよい(ほど)使(つか)うておいて、211こんな(くる)しい()()はして、212(その)(うへ)可笑(をか)しさうに(わら)ふなんて、213チツとは人情(にんじやう)(わきま)へたらどうだ』
214お菊(この)高姫(たかひめ)人情(にんじやう)なんか、215(いや)だツ、216よく(かんが)へて()よ。217今日(こんにち)()(なか)人情(にんじやう)()つた(やつ)一人(ひとり)でもあるか。218ニンジヨウといへば(まつ)廊下(らうか)塩谷(えんや)判官(はんぐわん)師直(もろなほ)()りかけた(くらゐ)なものだ。219人情(にんじやう)なんか(まも)つて()らうものなら、220(いへ)断絶(だんぜつ)221(その)()切腹(せつぷく)222家来(けらい)浪人(らうにん)223しまひの(はて)には泉岳寺(せんがくじ)(はら)()らねばならぬぞや。224そんな馬鹿(ばか)今日(こんにち)(ひら)けた()(なか)にあるものかい。225時代遅(じだいおく)れの馬鹿(ばか)だなア、226オツホホホホ、227いい気味(きみ)だこと、228杢助(もくすけ)さまと(じつ)(ところ)は、229小北山(こぎたやま)占領(せんりやう)し、230貴様(きさま)()両人(りやうにん)をウマウマ チヨロまかして使(つか)つてやらうと(おも)うたなれど、231(かし)(ぼう)二十(にじふ)三十(さんじふ)(なぐ)られて、232悲鳴(ひめい)をあげ、233(ある)けないのなぞと弱音(よわね)()くやうな(やつ)は、234高姫(たかひめ)愛想(あいさう)がつきた。235そんな(こと)で、236どうして(あく)(たく)みが成就(じやうじゆ)すると(おも)ふか、237馬鹿(ばか)だなア、238オホホホホ』
239(はつ)『エー、240(むね)クソの(わる)い、241もう()うなれば馬鹿(ばか)らして小北山(こぎたやま)(かへ)(わけ)にゆかず、242(また)そんな悪人(あくにん)(あと)へついて()つたつて駄目(だめ)だし、243進退(しんたい)(これ)(きは)まつたなア、244のう(とく)245これから(ひと)善後策(ぜんごさく)(かんが)へなくちやなるまいぞ』
246(とく)『さうだなア、247マア此処(ここ)(あし)(なほ)るまで、248ゆつくり養生(やうじやう)して、249トクと(かんが)へようかい。250コリヤ杢助(もくすけ)251(おぼ)えてけつかれ、252貴様(きさま)(たく)みは何処(どこ)までも邪魔(じやま)してやるから、253一寸(いつすん)(むし)五分(ごぶ)(たましひ)だぞ』
254お菊(この)杢助(もくすけ)貴様(きさま)のやうな小童(こつぱ)武者(むしや)百匹(ひやつぴき)千匹(せんびき)255(そく)()うて()てもビクとも(いた)さぬ英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)だ。256ましてや(しり)をひつぱたかれ、257(ほね)(くじ)き、258(からだ)自由(じいう)にならぬ(やつ)が、259仮令(たとへ)(まん)(にん)()(きた)るとも、260(けつ)して(おどろ)(もの)でない。261(また)仮令(たとへ)(からだ)自由(じいう)()代物(しろもの)でも、262(いま)人間(にんげん)金輪(かなわ)魔術(まじゆつ)(もつ)(くち)にはましたならば、263どれもこれも(みな)往生(わうじやう)(いた)代物(しろもの)ばかりだ、264アハハハハ』
265『コリヤ杢助(もくすけ)266(おれ)()うして、267(こし)()たぬと()つて、268貴様(きさま)様子(やうす)(かんが)へてゐたのだ。269本当(ほんたう)(こと)此処(ここ)まで(はし)つて()(くらゐ)だから、270自由(じいう)自在(じざい)()つのだ、271サア()勝負(しようぶ)だ。272貴様(きさま)のやうな冷酷(れいこく)餓鬼(がき)(あと)()つて()(とこ)仕方(しかた)がない。273それよりも貴様(きさま)生首(なまくび)引抜(ひきぬ)いて()(かへ)り、274松姫(まつひめ)(さま)にお(わび)(しるし)にするのだ。275オイ(はつ)276貴様(きさま)もいい加減(かげん)()きぬかい』
277『ウン、278モウそろそろ活動(くわつどう)しても()時分(じぶん)だ。279(おれ)(なん)だか、280(この)(さき)浮木(うきき)(さと)()にくはぬので、281一寸(ちよつと)作病(さくびやう)(おこ)してみたのだが、282つひグツと()(しま)ひ、283(その)(あひだ)高姫(たかひめ)284杢助(もくすけ)()げられたと(おも)つて残念(ざんねん)でたまらず、285副守(ふくしゆ)(やつ)作戦(さくせん)計画(けいくわく)をやつてゐた(ところ)286(かみ)神力(しんりき)()らされて、287高姫(たかひめ)288杢助(もくすけ)(やつ)289(うしろ)引寄(ひきよ)せられよつたのだなア。290(なん)神力(しんりき)(えら)いものだ。291サア杢助(もくすけ)292高姫(たかひめ)293(なんぢ)(ごと)(おい)ぼれの五匹(ごひき)十匹(じつぴき)294(そく)()うて(かか)らうとも()()らぬ(それがし)だ、295サア()い』
296お菊『オツホホホホ、297(この)(くら)がりに()()えるのか、298(やかま)(ぬか)すと、299(こゑ)をしるべに(なぐ)りつけてやらうか。300(やみ)(ばん)(さへづ)(やつ)(くらゐ)馬鹿(ばか)はないぞ』
301『オイ(とく)302(しつか)りせぬかい、303益々(ますます)()しからぬ(こと)(ぬか)すぢやないか』
304 お(きく)足音(あしおと)(しの)ばせ、305(こゑ)をしるべに、306ついて()(つゑ)(やみ)をポンと()つた。307都合(つがふ)よく二人(ふたり)(あたま)(はし)をかけたやうに、308カツンと(あた)つた。309二人(ふたり)一度(いちど)に、
310『アイタタタ、311コラ(はつ)312馬鹿(ばか)にすない』
313『ナアニ(とく)(やつ)314(ひと)(あたま)をなぐりやがつて、315馬鹿(ばか)(くそ)もあるかい』
316『それでも貴様(きさま)317(おれ)(なぐ)つたぢやないか』
318『ナアニ、319(おれ)やチツとも(なぐ)つた(おぼえ)がない』
320お菊『ホホホホホ、321同士打(どうしうち)喧嘩(げんくわ)面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、322(むか)()ずの途中(とちう)鼻高(はなだか)が、323暗雲(やみくも)で、324(よく)ばかり(かんが)へ、325(われ)(ほど)(えら)(もの)はないと(おも)うて慢心(まんしん)(いた)すと、326何時(いつ)()にやら(はな)(たか)うなり、327(はな)(はな)とがつき()うて、328しまひには(いち)()らず()()らず、329大騒動(おほさうどう)(おこ)すぞよ。330可哀相(かあいさう)(もの)であるぞよ。331(なん)()うても(くら)がりの人民(じんみん)(たす)けるのであるから、332(あたま)(ひと)つや(ふた)つは(たた)いてやらねば()がさめぬぞよ。333(かみ)中々(なかなか)(ほね)()れるぞよ、334(はや)改心(かいしん)(いた)されよ。335(かみ)(まを)(こと)素直(すなほ)()人民(じんみん)結構(けつこう)なれど、336(いま)()はサツパリ(おに)(ぞく)悪魔(あくま)との()(なか)であるから、337(かみ)(をしへ)()(やつ)はチツともないぞよ。338(あま)改心(かいしん)出来(でき)ぬと、339スコタンくらふぞよ』
340()ひながら、341(また)カツンとやつた。
342 初公(はつこう)前額部(ぜんがくぶ)をシタタカ()たれ、
343『アイタア』
344()つたきり、345すくんで(しま)つた。346(とく)は、
347(なん)でも(ちか)くに(こゑ)がした、348高姫(たかひめ)(やつ)349ここらに()やがるに(ちが)ひない……』
350四這(よつばひ)になり、351()をふりまはして(さぐ)つてゐる。352もし(あし)にでもさはつた(くらゐ)なら、353ひつくり(かへ)してやらうと(おも)つたからである。354(きく)(なん)だか自分(じぶん)足許(あしもと)()ふものがあるやうな()がしたので、355(つゑ)(もつ)(ちから)(かぎ)り、356足許(あしもと)(はら)うた。357途端(とたん)にただれた(しり)のあたりをピシヤツと()つた。
358(とく)『アイタタ、359コリヤ、360尻叩(しりたた)きはモウすんだ(はず)だ。361まだこんなとこまで()(たた)くといふ(こと)があるかい』
362(きく)約束(やくそく)三百(さんびやく)がまだ二百(にひやく)(ばか)(のこ)つてゐるから、363これから(たた)いてやるのだ』
364(とく)『オイ(はつ)365()をつけよ、366馬鹿(ばか)にするぢやないか……コラ高姫(たかひめ)367杢助(もくすけ)368サア()い』
369(くら)がりに、370どつちに(てき)()るか(わか)りもせぬのに、371空元気(からげんき)()して気張(きば)つてゐる。372(きく)(つゑ)縦横(じうわう)無尽(むじん)()ちふり、373二人(ふたり)(あたま)といはず(しり)といはず、374手当(てあた)次第(しだい)にポンポンポンと(なぐ)(たふ)し、
375お菊『ホツホホホホ』
376(いや)らしい(わら)ひを(のこ)し、377(もり)立出(たちい)で、378(いき)(ころ)して二人(ふたり)様子(やうす)(かんが)へてゐた。
379大正一二・一・二七 旧一一・一二・一一 松村真澄録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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