霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 狸相撲(たぬきずまう)〔一三三二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第4篇 夢狸野狸 よみ:むりやり
章:第17章 第51巻 よみ:たぬきずもう 通し章番号:1332
口述日:1923(大正12)年01月27日(旧12月11日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
お菊は夜明け近くになってきたので、小北山へ帰ることにした。そして暗がりに落ちていた石をニ三十拾うと、初と徳がいると思われるところに投げつけた。そして、文助の仕返しをしてやったとすばしこく帰ってしまった。
初と徳は、さらにお菊が投げた石つぶてに額や鼻を打たれて、三日ばかりウンウン唸り続け、懐のパン切れをかじって飢えをしのぐ有様であった。
ようやく手足が動くようになった二人は、暗闇から二人を馬鹿にして殴りつけ、石つぶてを打ち付けたのは高姫と杢助だと思い込み、仇を打たねば置かないと杖を突いて進んで行った。
二人は足をチガチガさせながら浮木の森にやってきた。見れば、椿の根元に高姫が泥まぶれになり、羽織を裏向けに来て、大きな狸が二匹付き添い、椿の花をおとしてうまそうに密を吸っている。高姫は一生けん命にブツブツ言いながら、腐った竹筒に草をむしっては入れ、馬糞を掴んではねじ込んでいる。
初と徳は、高姫が大きな古狸に化かされているのを見ていると、狸は椿の葉を口にくわえ、花を頭にかぶり、三つ四つ体をゆさぶると、十四五の美しい乙女になってしまった。高姫は二人の狸が化けた乙女に手をひかれ、目をつぶったまま首を振って、立派な火の見やぐらの中に引っ張られていった。
二人は抜き足差し足で火の見やぐらの側に立ち、高姫と狸の様子を覗いてみた。見れば狸たちは正体を現し、高姫に泥をかけたり木の葉を引っ付けたりしている。しまいに刈った萱をどっさり抱えてきて、高姫の体を包んで火をつけた。高姫は火焔に包まれて苦しそうに助けを呼んでいる。
何ほど憎い高姫でも、こうなると初と徳は人情にほだされて、高姫を救い出して狸を捕えようと戸をけやぶって飛び込んだ。すると二人は糞壺の中に落ち込んでしまった。
初と徳は狸に化かされたことを悔しがり、椿の木の根元の泉で着物を洗い、乾くまで寒いから相撲を取って暖を取ろうと決めた。しかし二人は依然狸に化かされており、今度は小便壺へ飛び込んで、着物を洗ったと思っている。
着物を傍らの木の枝にひっかけると、四股をふんで相撲を取りだした。妖幻坊の眷属・幻相坊、幻魔坊をはじめとしてたくさんの古狸や豆狸が幾百千ともあたりを取り巻いて、二人の相撲見物をやっている。
そこへ宣伝歌を歌いながらやってきたのは、ランチ将軍に仕えていて今は三五教改心したケースであった。ケースには、たいへんな大相撲が広い馬場で始まっているように見えた。実際は入れ替わり立ち代わり、狸が初公と徳公相手に相撲を取っていたのだが、初、徳、ケースには人間のように見えていた。
ケースは相撲の取り口が下手なのに業を煮やし、着物を脱いで四股を踏み鳴らした。数多の見物はどっと沸いた。ケースが東の土俵に腰を下ろした。ケースが取り組みを見ていると、初と徳が尻を紫色に晴らせたまま代わる代わる土俵に上がっている。
ケースは、あまり強くないくせに何度も土俵に上がる二人の男について行事に尋ねた。行事は、相撲気違いで力強く、この土地の顔役だから、特別に何度も上げているのだと答えた。ケースは取り組みを申し出て土俵に上がった。
ケースは初と取り組んだが、なんだか相手の体がヌルヌルして臭くてたまらない。初の糞まみれの体がすべり、ケースはすかしを食って土俵の真ん中へ倒れてしまった。ケースはむかついて、四本柱を引き抜いて初と徳に打ちかかった。二人も柱を抜いて荒れ狂った。ついに三人は力尽きてその場に倒れてしまった。狸たちは腹つづみを打って笑いながらおのおのの巣へ帰って行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5117
愛善世界社版:246頁 八幡書店版:第9輯 355頁 修補版: 校定版:252頁 普及版:113頁 初版: ページ備考:
001 お(きく)夜明(よあ)間近(まぢか)くなつたので、002(あま)(とほ)くもない小北山(こぎたやま)へ、003一度(いちど)(かへ)つて()ようと(おも)ひ、004(くら)がりに()ちてゐる(いし)二三十(にさんじふ)(ひろ)うて、005ここらあたりと(おも)(ところ)へ、006(ひと)(ふた)(みつ)つと(かぞ)へながら投付(なげつ)けて、
007『ああこれで文助(ぶんすけ)さまの仕返(しかへ)しもしてやつた。008(いづ)(やみ)鉄砲(てつぱう)のやうな石玉(いしだま)だけれど、009(ひと)つでも(あた)れば(なほ)面白(おもしろ)いがなア』
010独言(ひとりごと)()ひながら、011スバシこく(かへ)つて(しま)つた。012二人(ふたり)怪志(あやし)(もり)でお(きく)()つた(つぶて)(はな)()たれ、013(ひたひ)()たれて、014三日(みつか)(ばか)りウンウン(うな)りつづけ、015(ふところ)からパン(きれ)()して(うゑ)(しの)ぎ、016(やうや)手足(てあし)(うご)くやうになつたので、017何処(どこ)までも高姫(たかひめ)018杢助(もくすけ)在処(ありか)(たづ)ね、019(かたき)()たねばおかぬと、020(つゑ)(ちから)(すす)()く。
021 浮木(うきき)(もり)(つき)(もみ)022(まつ)大木(たいぼく)がコンモリとして(ひろ)展開(てんかい)してゐるのが()につき()した。023(この)(へん)一面(いちめん)(もり)(なか)(そと)()(ぼつ)する(ばか)りの(かや)がつまつてゐる。024(また)篠竹(しのだけ)小竹(こだけ)(やぶ)彼方此方(あなたこなた)散在(さんざい)してゐる。025(しか)しながらランチ将軍(しやうぐん)軍隊(ぐんたい)駐屯(ちゆうとん)してゐただけあつて、026()なり(ひろ)(みち)だけはあいて()た。027二人(ふたり)はチガチガ(あし)をさせながらやつて()ると、028椿(つばき)根元(ねもと)高姫(たかひめ)(どろ)まぶれになり、029羽織(はおり)裏向(うらむ)けに()て、030(おほ)きな(たぬき)二匹(にひき)つき()ひ、031椿(つばき)(はな)をおとしては、032(うま)さうに()うてゐる。033高姫(たかひめ)は、034竹切(たけぎ)れの(くさ)つたやうな(あな)のあいたのへ、035(くさ)をむしつては()れ、036馬糞(ばふん)をつかんでは()()み、037一生懸命(いつしやうけんめい)になつて、038わき()もふらず、039(なに)かブツブツ()ひながら竹筒(たけづつ)につめてゐる。
040(はつ)『オイ、041高姫(たかひめ)(だま)されてゐるぢやないか。042あれみよ、043(おほ)きな(たぬき)二匹(にひき)044椿(つばき)()をゆすつては(はな)()うてゐるぢやないか。045そこへ高姫(たかひめ)(やつ)046着物(きもの)逆様(さかさま)()やがつて、047ありや大方(おほかた)(だま)されてゐるのかも()れぬぞ』
048(とく)『ホンニ ホンニ(おほ)きな(たぬき)だなア。049(くら)がりに俺達(おれたち)(あたま)をはつて()げやがつた(ばち)で、050古狸(ふるだぬき)にやられてるのだ。051()つとけ()つとけ、052いい見物(みもの)だからなア』
053 二人(ふたり)(かや)(ばう)(なか)()(かく)し、054高姫(たかひめ)が、055どんな(こと)をするか、056あの(たぬき)()057どこへ()きやがるかと、058()(はな)たず()てゐると、059(たぬき)椿(つばき)()(くち)にくはへ、060(はな)(あたま)(かぶ)り、061()()(からだ)(ゆす)ると、062十四五(じふしご)(なん)ともいへぬ(うつく)しい乙女(をとめ)になつて(しま)つた。063さうして高姫(たかひめ)二人(ふたり)乙女(をとめ)()()かれ、064()をつぶつた(まま)065(くび)(しき)りにふつて、066(ある)立派(りつぱ)()()(やぐら)(なか)引張(ひつぱ)られて()くのであつた。067(これ)()両人(りやうにん)は、068(たぬき)()けるのに上手(じやうず)なのを非常(ひじやう)感心(かんしん)して、
069(はつ)『オイ(とく)070高姫(たかひめ)(やつ)071あの立派(りつぱ)()()(やぐら)(なか)引張(ひつぱ)られて()きよつたぢやないか』
072(とく)『ウン、073(たしか)()きよつた。074(しか)(たぬき)(やつ)075(うま)()けるものだな。076大方(おほかた)高姫(たかひめ)一人(ひとり)杢助(もくすけ)077一人(ひとり)蠑螈別(いもりわけ)(くらゐ)(おも)つてるか()れぬぞ。078(ひと)(あと)をつけて、079高姫(たかひめ)がどんな(こと)をしられよるか、080()てやらうぢやないか』
081『そら面白(おもしろ)い、082サア()かう』
083『そつと、084足音(あしおと)のせぬやうにして()かぬと、085(たぬき)がカンづいたら駄目(だめ)だぞ、086(しづか)(しづか)に』
087二人(ふたり)差足(さしあし)抜足(ぬきあし)しながら、088()()(やぐら)(そば)立寄(たちよ)つて、089()節穴(ふしあな)から(のぞ)いてみた。090()れば(いま)まで美人(びじん)()けてゐた(たぬき)は、091(また)もや正体(しやうたい)(あら)はし、092高姫(たかひめ)(どろ)(つか)んでかけたり、093()()引付(ひつつ)けたり、094いろいろとしてゐる。095しまひには(かや)()つた(やつ)をドツサリ(かか)へて()て、096高姫(たかひめ)身体(からだ)(つつ)んで、097一度(いちど)にドツと()をつけた。098高姫(たかひめ)火焔(くわえん)(なか)(つつ)まれて、099(くる)しさうな(こゑ)()し、
100(たす)けてくれい、101(たす)けてくれい』
102呶鳴(どな)つてゐる。103かうなつて()ると、104何程(なにほど)(にく)高姫(たかひめ)でも、105人情(にんじやう)として(たす)けねばならぬ。106高姫(たかひめ)(すく)()し、107二匹(にひき)のド(たぬき)(いけど)りくれむと、108()蹴破(けやぶ)り、109矢庭(やには)飛込(とびこ)んだと(おも)へば、110二人(ふたり)糞壺(くそつぼ)(なか)におち()み、111(あたま)から黄金(わうごん)()びて、112山吹色(やまぶきいろ)活仏(いきぼとけ)となつて(しま)つた。
113(はつ)『エー、114クソいまいましい、115(たぬき)(やつ)116こんな(とこ)(おと)しやがつたぢやないか。117オイ(とく)118ここらで清水(しみづ)()いてをつたら、119トツクリと(あら)うて、120眉毛(まゆげ)(つば)をつけ、121(この)(につ)くき(たぬき)(たひら)げようぢやないか』
122(とく)『さうだ、123馬鹿(ばか)にしてけつかる、124これでは()うも(くさ)くて仕方(しかた)がない。125いい(みづ)()いとらぬものかなア。126マア()(かく)127あの椿(つばき)()(した)あたり、128()つて()ようぢやないか。129キツと椿(つばき)()のある(ところ)にや溜池(ためいけ)のあるものだ。
 
130 井底(ゐそこ)より(うへ)におち()椿(つばき)かな
 
131()つてな、132椿(つばき)(はな)(うへ)から()ちるのが、133(みづ)(うつ)つて、134(いけ)(そこ)から(うへ)()ちて()るやうに()えるものだ。135(おれ)(ひと)井戸(ゐど)をみつけて、136(した)(うへ)へ、137椿(つばき)ぢやないが、138ドブンと()ちこみ、139肉体(にくたい)洗濯(せんたく)をして、140それから()かけよう。141赤裸(まつぱだか)では(こま)るから、142(しばら)く、143(かわ)くまで、144(この)馬場(ばば)相撲(すまう)でも()つて()らなくちや、145(さむ)くて辛抱(しんぼう)出来(でき)ぬぢやないか、146ヤ、147(あん)(でう)泉水(せんすい)があるぞ』
148と、149今度(こんど)小便壺(せうべんつぼ)(くそ)まぶれの着物(きもの)ぐち飛込(とびこ)み、150バサバサと()(おと)し、151(やうや)()(あが)り、152両人(りやうにん)はクルクルと赤裸(まつぱだか)となつて、153(いし)(うへ)着物(きもの)をおいて、154()ぢたり、155()んだり、156圧搾(あつさく)したりして、157(やうや)水気(すいき)(おと)し、158(かたはら)()(えだ)引懸(ひつか)け、159それから四股(しこ)をふんで、160一生懸命(いつしやうけんめい)(かや)(なか)相撲(すまう)()つてゐる。161妖幻坊(えうげんばう)眷族(けんぞく)162幻相坊(げんさうばう)163幻魔坊(げんまばう)(はじ)めとし、164沢山(たくさん)古狸(ふるだぬき)豆狸(まめだぬき)幾百千(いくひやくせん)とも(わか)らぬ(ほど)165四辺(あたり)取巻(とりま)いて、166二人(ふたり)相撲見物(すまうけんぶつ)をやつてゐる。167そこへ宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながらやつて()たのは、168ランチ将軍(しやうぐん)(つか)へてゐたケースであつた。169ケースは……大変(たいへん)大相撲(おほずまう)(ひろ)馬場(ばば)(はじ)まつてるなア、170なんと沢山(たくさん)見物(けんぶつ)だ、171(おれ)(あま)(いそ)(たび)ぢやないから、172(ひと)見物(けんぶつ)して()かうか、173ロハの相撲(すまう)なら(やす)いものだ……と蓑笠(みのかさ)()ぎすて、174金剛杖(こんがうづゑ)にもたれて、175沢山(たくさん)見物(けんぶつ)(うしろ)(はう)から()(あが)つて、176(くち)をあけ「ワハハハワハハハ」と(わら)(きよう)じてゐた。177立変(たちかは)入変(いりかは)り、178古狸(ふるだぬき)初公(はつこう)179徳公(とくこう)相手(あひて)相撲(すまう)()つてゐる。180けれども(はつ)181(とく)()ふに(およ)ばず、182ケースの()にも人間(にんげん)とより()えなかつた。183ケースは(にはか)にどの力士(りきし)取口(とりくち)下手(へた)なのに、184(ごふ)()いて(たま)らず……(おれ)(ひと)飛入(とびい)りでやつてやらう……と(はや)くも着物(きもの)をそこに()()て、185(まはし)をしめ(なほ)し、186土俵(どへう)(そば)飛出(とびだ)し、187ドンドンと四股(しこ)()()らしてゐる。188数多(あまた)見物(けんぶつ)()(たた)いて「ワアワア」とぞめいてゐる。189ケースは(おれ)(いま)()たので、190(なん)といふ立派(りつぱ)体格(たいかく)だ、191彼奴(あいつ)()たら、192(この)相撲(すまう)活気(くわつき)がつくだらうと(おも)うて、193田舎者(ゐなかもの)見物(けんぶつ)(さわ)いでゐやがるのだな、194ヨーシ、195()(した)開山(かいざん)横綱(よこづな)のケースが力量(りきりやう)をみせてやらう。196(ひがし)から()ようか、197西(にし)から()ようか……()てよ、198(ひがし)智慧証覚(ちゑしようかく)(すぐ)れた(もの)()(ところ)だ。199さうすると、200ヤツパリ(おれ)(ひがし)大関(おほぜき)惟神的(かむながらてき)にきまつてゐる……と独言(ひとりごと)()ひながら、201(ひがし)土俵(どへう)にドスンと(こし)をおろし、202横綱気取(よこづなきどり)(たぬき)相撲(すまう)を「アハハハアハハハ」と(わら)ひながら()てゐる。203(はる)とはいふものの、204まだ何処(どこ)ともなしに(さむ)くて仕方(しかた)がない。205(ひと)相撲(すまう)でも取組(とりく)まなくては体温(たいをん)(たも)(こと)出来(でき)ぬ。206ぢやと()つて、207()うやら三番勝負(さんばんしようぶ)になつたらしい。208さうすると(この)大関(おほぜき)(じゆん)(まは)つて()るのは()(くれ)だらう。209三役(さんやく)今頃(いまごろ)から(はだか)になつて()つても(つま)らない。210(いま)(うち)着物(きもの)()て、211(おれ)(ばん)()るまで()たうかな、212(しか)しながら一旦(いつたん)大勢(おほぜい)(なか)赤裸(まつぱだか)になつたのだから、213(あと)引返(ひつかへ)して着物(きもの)()()るのも、214力士(りきし)体面(たいめん)(はづか)しめるやうなものだ。215ナアニ(かま)ふものか、216ここが辛抱(しんぼう)だ……と我慢(がまん)してみたが、217(からだ)一面(いちめん)寒疣(さむいぼ)()てガタガタ(ふる)うて()る。218此奴(こいつ)四股(しこ)をふみ、219体中(からだぢう)(ちから)()れるに(かぎ)る」と一生懸命(いつしやうけんめい)(うで)(かた)めドンドンと四股(しこ)ばかり()んでゐる。220(やうや)(あせ)がタラタラ(なが)()した。221(しか)(いま)(うち)にこれだけ(ちから)()して(しま)つたら、222肝腎(かんじん)(おれ)(ばん)になつた(とき)は、223モウ(ちから)品切(しなぎ)れになるかも()れぬぞ。224マア(しばら)休養(きうやう)しようかなア……とドスンと(ひがし)力士(りきし)(せき)(すわ)()んだ。225さうすると行司(ぎやうじ)唐団扇(たううちは)()つてやつて()た。
226『モシ貴方(あなた)()()りで(ござ)いますか』
227『ウン、228飛込(とびこみ)だ』
229(なん)()ふお力士(すまう)さまで(ござ)います』
230(おれ)()(した)開山(かいざん)231野見(のみ)宿禰(すくね)再来(さいらい)232摩利支天(まりしてん)兄弟分(きやうだいぶん)233谷風(たにかぜ)234小野川(をのがは)235稲川(いながは)236雷電為右衛門(らいでんためゑもん)237出羽(では)(うみ)(こと)梅ケ谷(うめがたに)238大錦(おほにしき)(ぢやう)常陸山勝右衛門(ひたちやまかつゑもん)だ。239体量(たいりやう)はウソ八百八十貫(はつぴやくはちじふはちくわん)八百八十匁(はつぴやくはちじふめ)240如何(いか)なる(もの)なりとも、241(この)(はう)(まはし)()をかけた(もの)は、242ルーブル紙幣(しへい)百円(ひやくゑん)褒美(はうび)として(つか)はす』
243『ヤア、244それは随分(ずいぶん)(えら)力士(りきし)()(くだ)さつたものです。245勧進元(くわんじんもと)もさぞ満足(まんぞく)(いた)しませう。246(しか)しながら、247それ(ほど)(つよ)いお(かた)にはお相手(あひて)(ござ)いますまい。248(たれ)とお相撲(すまう)をお()りなさいますか』
249『ハハハ(たれ)でもよい。250山門(さんもん)仁王(にわう)呼出(よびだ)し、251それに(れい)()きかけて、252活躍(くわつやく)させても(くる)しうない。253それでゆかねば、254ゴライヤス、255五大力(ごだいりき)256まだ()らねば、257当麻蹴速(たいまのけはや)258それで()かねば、259八岐(やまた)大蛇(をろち)金毛九尾(きんまうきうび)260妖幻坊(えうげんばう)261(たれ)でもよいから、262(つよ)いと()のついた(やつ)には相手(あひて)になつて(つか)はす』
263(まへ)(もつ)貴方(あなた)のやうな力士(りきし)がお()でになるといふ(こと)(わか)れば、264相手方(あひてがた)(ねが)つておくのでしたが、265(あま)(にはか)(こと)で、266一寸(ちよつと)(こま)ります。267エー(この)相撲(すまう)晴天(せいてん)十日(とをか)(つづ)くの(ござ)いますから、268今日(けふ)はお(ひか)へを(ねが)つて、269明日(あす)明後日(あさつて)あたり、270堂々(だうだう)土俵(どへう)(あが)つて(もら)(わけ)には(まゐ)りますまいかな』
271折角(せつかく)(はだか)になつたのだ。272武士(ぶし)(かたな)()いたら、273キツト()()なくちやをさまらぬと同様(どうやう)に、274力士(りきし)(はだか)になつた以上(いじやう)は、275せめて一番(いちばん)なりと組合(くみあ)はなくては、276(この)(まま)(さが)(わけ)には(まゐ)(まを)さぬ。277孫悟空(そんごくう)でも金角坊(きんかくばう)でも銀角坊(ぎんかくばう)でもよいから、278一寸(ちよつと)臨時(りんじ)(やと)うて()てくれないか』
279『ハイ、280それなら直様(すぐさま)281飛行機(ひかうき)(もつ)て、282金角坊(きんかくばう)さまを(ねが)つて(まゐ)りませう』
283『エー、284(およ)時間(じかん)(いく)(ほど)かかるかな。285(あま)(おそ)くなると、286こつちも(こま)るのだが』
287『ハイ半時(はんとき)(ばか)りお()ちを(ねが)ひます。288さうすれば仮令(たとへ)一万里(いちまんり)あらうとも、289魔法(まはふ)(もつ)呼寄(よびよ)せます』
290『ソリヤどうも有難(ありがた)い、291(はや)(たの)むぞ。292イヤア、293(うで)がなる、294(この)(うで)()つて()きどころがないと(おも)うて()つたに、295マアこれで(おれ)(をとこ)()つといふものだ。296如何(いか)金角坊(きんかくばう)魔術(まじゆつ)使(つか)ふとも神力(しんりき)があるとも、297(この)ケース横綱(よこづな)(うで)(ぷし)(もつ)て、298(ただ)一突(ひとつき)土俵(どへう)(そと)へ、299(かへる)をブツけたやうに投出(なげだ)し、300(たちま)(だい)()地上(ちじやう)(ゑが)大曲芸(だいきよくげい)301(この)(なか)には随分(ずいぶん)美人(びじん)沢山(たくさん)()る。302キツト(おれ)力量(りきりやう)()たならば()れるだらう……相撲取(すもうとり)(をとこ)にもち、303江戸(えど)長崎(ながさき)国々(くにぐに)()かんしやんした(その)(あと)で、304(をつと)怪我(けが)のないやうと、305妙見様(めうけんさま)精進(しやうじん)を……なんて、306ぬかすナイスが(いち)ダースや()ダース()()すに(ちが)ひない。307さうすりや(おれ)もチツと(こま)らぬでもないが、308(その)(うち)から互選(ごせん)をさして、309最高点者(さいかうてんしや)女房(にようばう)にするのだなア。310(その)(うへ)堂々(だうだう)(ほこら)(もり)()え、311斎苑(いそ)(やかた)へ、312()(した)開山(かいざん)御参拝(ごさんぱい)だ。313まだ斎苑(いそ)(やかた)へは、314沢山(たくさん)(ひと)参詣(さんけい)するけれど、315()(した)開山(かいざん)横綱(よこづな)力士(りきし)(まゐ)るのは(はじ)めてだらう、316エヘヘヘヘ、317面白(おもしろ)うなつて()たぞよ、318オホホホホ』
319とシクシク(ばら)(しり)(おろ)し、320得意(とくい)になつて、321一人(ひとり)笑壺(ゑつぼ)()つてゐる。322()ちかはり()りかはり、323幾十組(いくじつくみ)ともなく、324()せた力士(りきし)(はら)ばかり(おほ)きな不恰好(ぶかつかう)(やつ)土俵(どへう)(あら)はれては、325(もろ)くも(たふ)れる可笑(をか)しさ。326(はつ)327(とく)二人(ふたり)(しり)紫色(むらさきいろ)()らかした(まま)328かはるがはる土俵(どへう)(あが)つては取組(とりく)んでゐる。329ケースは……
330『あの(しり)(くろ)(をとこ)331()しでもないのに、332何遍(なんべん)でも()やがる。333(その)(くせ)(あま)(つよ)力士(りきし)ではない。334此奴(こいつ)()しからぬ、335(ひと)行司(ぎやうじ)掛合(かけあ)つて()ようかなア……オイオイ行司(ぎやうじ)336一寸(ちよつと)(たづ)ねたい(こと)がある。337あの(しり)(むらさき)とも(すみ)とも(わか)らぬやうな力士(りきし)338二人(ふたり)(かぎ)つて何遍(なんべん)でも()()(あは)せをするぢやないか、339あら()うしたものだい。340(おれ)だとて彼奴(あいつ)()られるならば、341()られない(はず)がないぢやないか』
342『ハイ、343あの(かた)相撲気違(すまうきちがひ)ですから、344特別(とくべつ)(ゆる)してあるのですよ。345年寄(としより)連中(れんちう)も、346彼奴(あいつ)(この)土地(とち)()つての顔役(かほやく)でもあり、347力強(ちからづよ)でもあるから、348()(とほ)りしておかねば、349(あと)面倒(めんど)いといふので、350相撲道(すまうだう)規則(きそく)には(そむ)きますが、351これも地方(ちはう)状況(じやうきやう)によつて、352()むを()()らして()ります。353随分(ずいぶん)(つよ)(をとこ)でせうがな』
354『ウン、355相当(さうたう)(つよ)いな、356(しか)(ほか)(やつ)(よわ)いから(つよ)()えるのだ』
357貴方(あなた)とはどんなものでせうな』
358『さうだ、359到底(たうてい)相撲(すまう)にならぬワイ。360(しか)しながら、361(おれ)()うチヨコナンと、362見役(みやく)ばかりしてゐるのも手持無沙汰(てもちぶさた)だから、363(たの)みとあれば、364彼奴(あいつ)二人(ふたり)(むか)ふへ(まは)し、365()つてみてもいい』
366『ああ左様(さやう)(ござ)いますか。367それなら、368(ひと)年寄(としより)相談(さうだん)(いた)します。369一寸(ちよつと)()つてゐて(くだ)さいませ』
370行司(ぎやうじ)頭取(とうどり)(せき)(はし)()き、371(なん)だかブシヤ ブシヤと(はなし)をし、372(また)(ひがし)(せき)()んで()て、373頭取(とうどり)年寄(としより)(ささや)き、374ケースの(まへ)(あら)はれ、
375『ヤ、376エー、377頭取(とうどり)年寄衆(としよりしう)賛成(さんせい)です。378何卒(どうぞ)(ひと)取組(とりく)んでみて(くだ)さい。379そして貴方(あなた)のお名乗(なのり)(あま)りお(なが)いやうですが、380(なん)とか簡単(かんたん)なお()をつけて(いただ)きませぬかな』
381摩利支天(まりしてん)でも仁王ケ岳(にわうがたけ)382ゴライアスでもいいぢやないか』
383『それなら貴方(あなた)浮木(うきき)(もり)()()()けたらどうでせう』
384『ウン、385そら結構(けつこう)だ、386どうぞ(たの)むよ』
387『ハイ』
388行司(ぎやうじ)(こた)へて、389土俵(どへう)(あが)り、390唐団扇(たううちは)をふつて、
391(ひがし)浮木(うきき)(もり)392西(にし)負田山(まけたやま)(ならび)転田山(こけたやま)ツ、393二人(ふたり)一度(いちど)()(した)開山(かいざん)394浮木(うきき)(もり)()しがかり』
395 見物(けんぶつ)雨霰(あめあられ)(ごと)くピシヤ ピシヤ ピシヤと()()ち、396各自(かくじ)(たぬき)腹鼓(はらつづみ)をうつて、397ワアワアと(わめ)()てた。398(はつ)399(とく)両人(りやうにん)は、
400『ヤア面白(おもしろ)い、401新手(あらて)()よつた、402俺達(おれたち)両人(りやうにん)彼奴(あいつ)十六俵(じふろくぺう)土俵(どへう)(そと)投出(なげだ)し、403大喝采(だいかつさい)()けねばなるまい。404馬鹿(ばか)らしい、405二人(ふたり)一緒(いつしよ)にかかるのは、406一人(ひとり)(かぎ)るよ』
407(ささや)きながら、408土俵(どへう)(のぼ)る。409()初公(はつこう)西方(にしがた)(あら)はれ、410四股(しこ)()みならし、411(すな)()(すく)うて(からだ)にぬりつけ、412両方(りやうはう)から(ねこ)(ねら)ふやうな調子(てうし)呼吸(こきふ)をはかつてゐる。413行司(ぎやうじ)は「ヤツ」と団扇(うちは)をひいた。414ペタペタペタと(よつ)つに()んだが、415(なん)だか負田山(まけたやま)(からだ)がヌルヌルしてゐて(くさ)くて(たま)らない。416されど大法螺(おほぼら)()いた手前(てまへ)417此奴(こいつ)(たふ)さねば(をとこ)()たぬと、418ケースは一生懸命(いつしやうけんめい)()して()く。419(くそ)まぶれの一方(いつぱう)(からだ)はヌルヌルと(どぜう)(ごと)(うなぎ)のやうに(すべ)(ところ)へ、420スカシをくつて、421土俵(どへう)中央(まんなか)へ、422うつ()けに(たふ)れ、423(くち)(すな)一杯(いつぱい)頬張(ほほば)り、424()から()(にじ)()した。425行司(ぎやうじ)団扇(うちは)西(にし)(はう)()げた。426見物(けんぶつ)一度(いちど)にワアイ ワアイと(わめ)く。427ケースはむかついて(たま)らず、428死物狂(しにものぐるひ)となつて、429四本柱(しほんばしら)引抜(ひきぬ)き、430縦横無尽(じうわうむじん)負田山(まけたやま)431転田山(こけたやま)二人(ふたり)(むか)つて()ちかかる。432二人(ふたり)(また)(おな)じく(はしら)引抜(ひきぬ)き、433前後左右(ぜんごさいう)()(くる)ひ、434(つひ)には(ちから)()きて三人(さんにん)(その)()にドツと(たふ)れて(しま)つた。435彼方(あちら)にも此方(こちら)にもポンポンポンと(つづみ)(こゑ)436これは沢山(たくさん)豆狸(まめだぬき)腹鼓(はらつづみ)()つて(わら)ひながら、437(おのおの)古巣(ふるす)(かへ)()(こゑ)であつた。
438大正一二・一・二七 旧一一・一二・一一 松村真澄録)