霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 (もり)(くわい)〔一三四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第1篇 鶴首専念 よみ:かくしゅせんねん
章:第5章 森の怪 よみ:もりのかい 通し章番号:1341
口述日:1923(大正12)年01月29日(旧12月13日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
イクとサールは、初稚姫が変装の術を使って熊となり、獅子と変じたスマートに乗って立ち去った後ろ姿を眺めて、しきりに両手を合わせ、舌を巻いて感じ入ってしまった。
二人はますます初稚姫のお供をしたい気持ちが高まり、体を清めて顔の塗りを落とすと、宣伝歌を歌いながら初稚姫を追いかけて荒野ヶ原を渡って行く。
二人が山口の森を目指して進んで行くと、森の一部が火のごとく明るくなった。火光を目指して進んで行くと、山の神の祠跡の台石の上に鬼が二匹いた。これは、妖幻坊の眷属である古狸・幻相坊、幻魔坊が鬼に化けてイクとサールを悩まそうと待ち構えていたのであった。
しかし二人は、初稚姫とスマートが変装術で自分たちを驚かそうとしていると思い込み、恐がりもせずにツカツカと鬼に近寄って声をかけ、変装を批評し始めた。幻相坊と幻魔坊は、自分たちの術が見破られたと思ってふるえだし、青い火柱となって消えてしまった。
イクとサールは、鬼が初稚姫たちの変装ではなく曲津が化けて脅そうとしていたことを悟り、お互いに注意し合った。イクは暗がりをいいことに、サールに手を伸ばして化け物のふりをして驚かそうとしたが、サールに殴られてしまう。
二人が茶番劇に笑い興じていると、今度は大きな火の玉が現れてその中から顔が出てきておかしそうに笑い出した。この火の玉の光に照らされて足許を見れば、二匹の古狸が大きなムカデを山ほど積んで、二人を刺し殺そうと企んでいた。
狸とムカデどもは火の玉の光に照らされて森の中に逃げ隠れてしまった。光の玉は小さくなって二人の傍らに転がってきた。二人はこれは自分たちを助けてくれた神の化身だろうと考え、両手を合わせて感謝した。
二人はいつのまにか眠ってしまった。暁のカラスの声で驚いて目を覚ますと、傍らに直径一寸ばかりの水晶玉が転がっていた。これは火の出神が、二人の危難を救うために神宝を授けたのであった。これより両人は玉を懐中に入れ、初稚姫の後を慕って駆けて行く。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:61頁 八幡書店版:第9輯 401頁 修補版: 校定版:64頁 普及版:28頁 初版: ページ備考:
001 二人(ふたり)初稚姫(はつわかひめ)変装(へんさう)(じゆつ)使(つか)つて(くま)となり、002スマートを獅子(しし)(へん)じて、003二人(ふたり)(にら)みおき、004(この)()逸早(いちはや)立去(たちさ)つて(しま)つた後姿(うしろすがた)(なが)めて、005(しき)りに(くび)(かたむ)両手(りやうて)(あは)(した)()いて(かん)()つて(しま)つた。
006『おい、007サール、008(たい)したものだらう。009初稚姫(はつわかひめ)(さま)正勝(まさか)(とき)になつたら、010あれだけの御神力(ごしんりき)があるのだから、011(おれ)貴様(きさま)(すす)めて追駆(おつか)けて()たのも無理(むり)はあるまい。012如何(どう)だ、013(おれ)先見(せんけん)は、014(これ)から(あま)馬鹿(ばか)にして()れまいぞ』
015『ヘン、016(えら)さうに(ぬか)すない。017貴様(きさま)だつて初稚姫(はつわかひめ)(さま)にあれだけの(かく)(げい)がある(こと)(はじ)めてだらう。018何処(どこ)ともなし(やさ)しい(した)はしい、019そして御神徳(ごしんとく)(そな)はつてるものだから、020何処(どこ)がどうと()(こと)なしにお(した)(まを)してやつて()たのだらう。021先見(せんけん)(めい)(くそ)もあつたものかい。022(しか)大熊(おほくま)となつて()(いか)らし「ウー」とやられた(とき)にや、023あまり気分(きぶん)のよいものぢやなかつたのう。024貴様(きさま)もビリビリ(ふる)つて()たぢやないか。025(こは)さうに()べた(くら)ひつきよつて、026(その)周章狼狽(しうしやうらうばい)さと()つたらお(はな)しにならなかつたワ』
027馬鹿(ばか)()ふな。028(おれ)屹度(きつと)初稚姫(はつわかひめ)(さま)(くま)にお()(あそ)ばすに(ちが)ひないと予期(よき)してゐたのだ。029それが(おれ)鋭敏(えいびん)頭脳(づなう)(かん)じた(とほ)現出(げんしゆつ)したのだから、030(あま)有難(ありがた)くて勿体(もつたい)なくて(ふる)うてゐたのだ。031()はば歓喜(くわんき)(ふる)ひだ。032貴様(きさま)(やう)蒟蒻慄(こんにやくぷる)ひとは(いささ)(せん)(こと)にしてるのだからね、033エヘン』
034『へ、035仰有(おつしや)りますわい。036そして今後(こんご)計画(けいくわく)()うなさいますか。037もう(これ)(ほこら)(もり)御退却(ごたいきやく)でせうね』
038馬鹿(ばか)()へ。039貴様(きさま)臆病者(おくびやうもの)だから退却(たいきやく)したがよからう。040(おれ)はあの御神力(ごしんりき)見届(みとど)けた(うへ)(いや)益々(ますます)熱心(ねつしん)にお(あと)(した)ひ、041仮令(たとへ)()(ころ)されても(かま)はないのだ。042神様(かみさま)のためには(いのち)()てる(いのち)()てると口癖(くちぐせ)のやうに()(やつ)は、043こんな(とき)にビツクリして、044ビクビクもので()()せるものだ。045(この)イクは(これ)から大熊(おほくま)さまや唐獅子(ライオン)さまに()はれにイクの(つかさ)だ。046さアここで貴様(きさま)(わか)れて、047英雄(えいゆう)卑怯者(ひけふもの)とが(かほ)(あら)水盃(みづさかづき)でもしようぢやないか。048もう(これ)貴様(きさま)(なが)(わか)れとならうかも()れぬ。049御縁(ごえん)があらば(また)地獄(ぢごく)八丁目(はつちやうめ)でお()にかかりませうよ』
050(なに)051馬鹿(ばか)のこと()ひくサールのだ。052(おれ)だつて本当(ほんたう)獅子(しし)(くま)になら、053チツとは(おどろ)くか()らぬが、054(なん)()つても化獅子(ばけじし)化熊(ばけぐま)だから生命(いのち)別条(べつでう)はない。055そんな(こと)(わか)らないサールさまとは(ちが)ふのだ。056(なに)()もあれ、057()んな(かほ)してゐては化物(ばけもの)見違(みちが)へられる。058一遍(いつぺん)(はだか)となつて体中(からだぢう)(きよ)め、059そして野馬(やば)でも()つたら、060取捉(とつつか)まへて、061其奴(そいつ)(またが)御後(みあと)()(こと)にしよう。062愚図々々(ぐづぐづ)してゐると、063()()れて行衛(ゆくゑ)見失(みうしな)ふかも()れないぞ。064さア(はや)(はや)く』
065二人(ふたり)(からだ)(きよ)め、066(かほ)白黒(しろくろ)をスツカリ(おと)し、067宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら荒野ケ原(あらのがはら)(わた)つて()く。
068イク『初稚姫(はつわかひめ)御供(おんとも)
069(つか)へて神業(しんげふ)(まつた)うし
070斎苑(いそ)(やかた)復命(かへりごと)
071(まを)さむ()めと両人(りやうにん)
072(ほこら)(もり)()()して
073河鹿峠(かじかたうげ)急坂(きふはん)
074(さき)(くだ)つて山口(やまぐち)
075(かし)根元(ねもと)()()れば
076初稚姫(はつわかひめ)神司(かむつかさ)
077谷間(たにま)をピカピカ()らしつつ
078()()()うて(くだ)()
079(その)神姿(みすがた)崇高(けだか)さよ
080スマートさまは後前(あとさき)
081なつて御身(おんみ)(まも)りつつ
082主従(しゆじゆう)ここに(あら)はれて
083白黒(しろくろ)二人(ふたり)三番叟(さんばそう)
084(なが)(たま)ひし(ゆか)しさよ
085朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
086エンヤナ、オンハ、カッタカタ
087(つき)()つとも()くるとも
088身魂(みたま)(あら)ふは(たき)(みづ)
089(みづ)身魂(みたま)(なが)れぞと
090二人(ふたり)(くち)から出放題(ではうだい)
091俄作(にはかづく)りの(うた)(うた)
092(やうや)仕組(しぐ)んだ三番叟(さんばそう)
093(その)甲斐(かひ)もなく一言(ひとくち)
094はね()ばされて両人(りやうにん)
095(かね)(たく)みし決死隊(けつしたい)
096用意(ようい)細帯(ほそおび)()()して
097堅木(かたぎ)(えだ)にパツとかけ
098プリンプリンとブラ(さが)
099(その)(くる)しさは(こと)()
100(つく)()らるる(こと)でない
101本当(ほんと)今度(こんど)()ぬのかと
102観念(くわんねん)したる折柄(をりから)
103初稚姫(はつわかひめ)(たす)けられ
104ヤツト()がつきや、あら不思議(ふしぎ)
105(おも)ひがけなき(くま)となり
106獅子(しし)(へん)じて両人(りやうにん)
107(まなこ)(いか)らし(にら)みたる
108(その)(とき)こそは吾々(われわれ)
109本当(ほんと)(こと)白状(はくじやう)すりや
110あまり()()はせなかつた
111さはさりながら荒野原(あらのはら)
112獅子(しし)(おほかみ)()(たけ)
113醜葦原(しこあしはら)(すす)()
114どうであの(やう)(かく)(げい)
115()くて一人(ひとり)(すす)まりよか
116(これ)(おも)へば吾々(われわれ)
117何程(なにほど)排斥(はいせき)せられても
118仮令(たとへ)脅喝(けふかつ)せられても
119(これ)見捨(みす)てて(かへ)れない
120何処々々(どこどこ)(まで)()ひついて
121(いのち)(まと)(すす)()
122(これ)(まこと)大和魂(やまとだま)
123(きも)(ため)すは(この)(とき)
124朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
125(つき)()つとも()くるとも
126仮令(たとへ)曲津(まがつ)()はるとも
127(おも)()つたる(この)首途(かどで)
128中途(ちうと)(かへ)つて(たま)らうか
129ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
130御霊(みたま)(さち)はひましまして
131初稚姫(はつわかひめ)(すす)みます
132ハルナの(みやこ)吾々(われわれ)
133(たふと)(めぐ)みの(その)(もと)
134(すす)ませ(たま)へと()(まつ)
135四方(よも)山々(やまやま)()()いて
136躑躅(つつじ)(はな)此処(ここ)彼処(かしこ)
137(えん)(きそ)へる(はる)()
138(また)格別(かくべつ)愉快(ゆくわい)さぞ
139紫雲英(げんげ)(はな)遠近(をちこち)
140(ところ)まんだら()(はじ)
141(まつ)(みどり)(かし)()
142新芽(しんめ)(やうや)()()ちて
143吾等(われら)二人(ふたり)荒武者(あらむしや)
144活動(くわつどう)せよと(すす)めてる
145(からす)(とび)雲雀(ひばり)まで
146御後(みあと)(した)うて(はし)れよと
147応援(おうゑん)してゐる心地(ここち)する
148こんな(ところ)屁古垂(へこた)れて
149ノメノメ(あと)(かへ)りなば
150(からす)(やつ)にも(わら)はれる
151三五教(あななひけう)退却(たいきやく)
152二字(にじ)(けつ)してない(ほど)
153(ぜん)(おも)うたら何処(どこ)(まで)
154(いのち)(かぎ)りに(すす)むのが
155(をとこ)(なか)(をとこ)だらう
156ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
157御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
158(うた)()くのはイクであつた。
159 山口(やまぐち)(この)(かし)()(ふもと)から山口(やまぐち)(もり)は、160(ちか)()えて()ても(ほとん)五十町(ごじつちやう)ばかりの距離(きより)があつた。
161()(かく)山口(やまぐち)(もり)まで(すす)まにやなるまい』
162とコンパスに(より)をかけ、163春風(しゆんぶう)(かた)(ななめ)()りながら、164(かに)(ごと)横飛(よこと)びして、165特急列車的(とくきふれつしやてき)脇目(わきめ)をふらず、166路傍(ろばう)()(にほ)(はな)にも()もくれず、167トントントンと()けついた。168(そら)はドンヨリと(くも)つて()た。169(ほし)(かげ)さへ()えなくなつてゐる。170最早(もはや)咫尺暗澹(しせきあんたん)171一歩(いつぽ)(すす)めなくなつて(しま)つた。172(にはか)山口(やまぐち)(もり)(ある)局部(きよくぶ)()(ごと)(あか)くなつた。173(なつ)(むし)灯火(とうくわ)をたづねて()()(やう)(いきほひ)で、174火光(くわくわう)目当(めあて)二人(ふたり)(すす)()くと、175(やま)(かみ)(ほこら)(あと)台石(だいいし)(うへ)に、176(やみ)()らして(かがや)いてゐる二人(ふたり)怪物(くわいぶつ)があつた。177(これ)妖幻坊(えうげんばう)眷属(けんぞく)幻相坊(げんさうばう)178幻魔坊(げんまばう)()古狸(ふるだぬき)(おに)姿(すがた)()けて、179(やみ)()らしながら両人(りやうにん)(なや)まさむと()(かま)へてゐたのである。180両人(りやうにん)十間(じつけん)ばかり近寄(ちかよ)つてツと立止(たちど)まり、
181『おい、182サール、183(めう)ぢやないか。184あれだから(おれ)()きといふのだ。185初稚姫(はつわかひめ)(さま)(おに)となり、186スマート(まで)小鬼(こおに)()けて俺達(おれたち)(おど)かし()がしてやらうとして、187ああ()芸当(げいたう)をやつて(ござ)るのだぞ。188(なん)初稚姫(はつわかひめ)(さま)(えら)いものぢやないか、189エー』
190成程(なるほど)191こいつア感心(かんしん)だ。192益々(ますます)(もつ)(その)本能(ほんのう)発揮(はつき)(たま)ふと()ふものだ。193(おれ)(ひと)(なに)かの方法(はうはふ)で、194何処(どこ)までも追跡(つゐせき)して(をし)へて(もら)はなくちや、195(ほこら)(もり)へも(かへ)れぬからのう。196(ひと)(そば)()つて談判(だんぱん)しようぢやないか』
197『ウン、198そいつは面白(おもしろ)い。199何程(なにほど)(こは)(かほ)したつて、200素性(すじやう)(わか)つてるのだから()でもないわ』
201()ひながら(うれ)しさうにツカツカと(そば)()つた。202何程(なにほど)妖怪(えうくわい)(こは)(かほ)して(おど)さうと(おも)つても、203相手方(あひてがた)(おどろ)かねば張合(はりあひ)がぬけたものである。204そして(その)妖術(えうじゆつ)次第々々(しだいしだい)()()せるものである。205幻相坊(げんさうばう)206幻魔坊(げんまばう)はいやらしき(おに)となり、207四辺(あたり)(かがや)かしながら真赤(まつか)(かほ)をして、208(うし)(やう)(つの)(ひたひ)二本(にほん)づつ一尺(いつしやく)ばかり()やし、209(みみ)まで()けた(くち)(あを)(した)()し、210(からだ)餓鬼(がき)(ごと)()(おとろ)へて壁下地(かべしたぢ)(あら)はしてゐる。211イクはツカツカと(そば)()り、
212『よう、213天晴々々(あつぱれあつぱれ)214(じつ)(かん)()りました。215おい畜生(ちくしやう)216貴様(きさま)中々(なかなか)(おつ)(こと)をやり()るのう。217エヘヘヘヘ、218そんな(こは)(かほ)したつて(おどろ)くものか。219素性(すじやう)(わか)らぬ化物(ばけもの)なら、220此方(こつち)面喰(めんくら)ふか()らぬが、221スツカリ(わか)つてるのだから面白(おもしろ)いわ。222アツハハハハ、223感心(かんしん)々々(かんしん)224のうサール、225うまいものだね』
226『ウン、227(これ)だから(たび)はやめられぬと()ふのだ。228(なに)せよ、229ハルナの(みやこ)まで悪魔(あくま)退治(たいぢ)()くのだから……こんな(こと)(こは)(くらゐ)では駄目(だめ)だから……畜生(ちくしやう)までが一人前(いちにんまへ)()けて()やがらア、230エヘヘヘヘ、231(じつ)巧妙(かうめう)なものだなア』
232 折角(せつかく)()けた幻相坊(げんさうばう)233幻魔坊(げんまばう)相手(あひて)平然(へいぜん)として、234畜生(ちくしやう)よく()けよつた」(など)()ふものだから、
235(この)両人(りやうにん)自分(じぶん)正体(しやうたい)()つてゐやがるのだな。236こんな(きも)(ふと)(やつ)悪戯(いたづら)をして(おど)かさうとしても駄目(だめ)だ。237(かへつ)てひどい()()はされるに(ちが)ひない』
238妖怪(えうくわい)(はう)(ふる)()し、239(にはか)還元(くわんげん)する(わけ)にも()かず、240(なみだ)をポロポロと(おと)()した。
241『ハハア、242コン畜生(ちくしやう)243(なみだ)(なが)してゐやがる。244おい、245サール、246こりやチツと可怪(をか)しいぞ。247初稚姫(はつわかひめ)さまなら()かつしやる(はず)がない。248(なん)でもこいつア、249妖幻坊(えうげんばう)眷属(けんぞく)()けてゐやがるのだ。250(ひと)問答(もんだふ)してやらうかい』
251『そりや面白(おもしろ)い。252こりや化州(ばけしう)253貴様(きさま)254こんな(とこ)(おれ)()をつけて首振(くびふ)芝居(しばゐ)()せて()れたつて、255(なに)(なん)だか(わけ)(わか)らぬぢやないか。256(もの)()はぬかい。257人形芝居(にんぎやうしばゐ)なら太夫(たいふ)(かた)つてくれるから意味(いみ)(わか)るが、258六斎念仏(ろくさいねんぶつ)(やう)(だま)つて(ふる)つてゐた(ところ)が、259それ(くらゐ)表情(へうじやう)では意味(いみ)(わか)らぬぞ。260おい(ひと)貴様(きさま)(おれ)合併(がつぺい)して芝居(しばゐ)をやらうぢやないか』
261『こらこら、262サール、263こんな(おに)芝居(しばゐ)したつて、264はずまぬぢやないか。265物好(ものず)きもいい加減(かげん)にしたら如何(どう)だい。266ヤ、267だんだん(ちひ)さくなりやがつたぞ』
268()つてる()に、269(あを)火柱(くわちう)となつて二人(ふたり)ともスポツと()えて(しま)つたので、270四辺(あたり)何処(どこ)ともなしに真闇(まつくら)がりになつた。
271イク『ハハア、272到頭(たうとう)夜立店(よだちみせ)流行(はや)らぬと()えて、273カンテラを()して()んで(しま)ひよつたな。274(しか)しそこらに魔誤(まご)ついてゐるかも()れぬから、275よく()をつけよ』
276サール『さうだな。277彼奴(あいつ)はヤツパリ初稚姫(はつわかひめ)さまぢやなかつたわい。278馬鹿(ばか)にしやがる、279(これ)から俺等(おれたち)十分(じふぶん)注意(ちゆうい)をしなくちや、280かう(くら)くなつちや、281(なに)がうせるか(わか)らぬからのう』
282『かふいふ(ばん)には化物(ばけもの)自分(じぶん)(まへ)()()睾丸(きんたま)(ねら)ふといふことだよ。283そしてよく(ひと)()けるから()をつけにやいくまいぞ。284(いま)()えた(おに)屹度(きつと)方法(はうはふ)()へて、285俺達(おれたち)睾丸(きんたま)(ねら)ひに()るのだから……サール、286チツト()をつけ(たま)へ』
287『ウン、288十分(じふぶん)注意(ちゆうい)する。289なるべく両人(りやうにん)接近(せつきん)して(てき)襲来(しふらい)(そな)へようぢやないか』
290『そら、291さうだ。292(しか)貴様(きさま)(まへ)(はう)に、293(くら)くてシツカリ(わか)らぬが、294(なん)だか化物(ばけもの)(あたま)をつき()してる(やう)だぞ』
295『ナーニ、296(いま)()()ばして(さぐ)つて()たけど、297(なに)()やせないわ』
298『それでも(おれ)()には、299貴様(きさま)(まへ)(なん)だか(くろ)いものがある(やう)だ。300一寸(ちよつと)()でて()ようか』
301()ひながら(くら)がりを(さいは)ひ、302イクはサールの(まへ)(あたま)をつき()した。303サールはイクがこんな悪戯(いたづら)をしてるとは()らず、304一寸(ちよつと)()()ばすと()()えた(あたま)がつかへたので、305(おどろ)きながら自棄糞(やけくそ)になつて左手(ひだりて)(たぶさ)をグツと(にぎ)り、306滅多(めつた)矢鱈(やたら)(ところ)(かま)はず(なぐ)りつけた。307そして(やうや)くに()(はな)した。308イクは自業自得(じごうじとく)だと(あきら)めながら、309ソツと(もと)()(なほ)り、
310『おい、311サール、312貴様(きさま)(いま)313(なん)だかバサバサやつてゐたぢやないか』
314『ウン、315到頭(たうとう)化物(ばけもの)(やつ)316(おれ)睾丸(きんたま)(ねら)ひに()よつたので、317(たぶさ)をグツと(にぎ)(なぐ)つてやつたのだよ』
318『ウン、319さうか。320油断(ゆだん)のならぬ(ところ)だな』
321()ひながら、322サールの(こゑ)()(ところ)目当(めあて)に、323最前(さいぜん)仕返(しかへ)しをポカポカとやつた。
324『アイタツタ、325おい、326イク、327()()れ。328(なん)だか(おれ)周囲(ぐるり)化州(ばけしう)(やつ)329ひつついてゐるやうだ。330ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
331『よう、332(なん)(なん)だ。333何処(どこ)何処(どこ)に』
334()ひながら、335今度(こんど)(のど)(した)をコソばかさうとしてヌツと()をつき()した。336サールも何気(なにげ)なく()をつき()途端(とたん)に、337(めう)(もの)があると(おも)ひグツと(にぎ)つた。
338『アイタタタ、339(おれ)(おれ)だ、340イクだイクだイクだ』
341『こりや、342イクの(やつ)343(おれ)(あたま)(くら)はせよつたのは貴様(きさま)だな。344悪戯(ふざけ)真似(まね)をさらすと了簡(れうけん)せぬぞ』
345『ヘン、346貴様(きさま)だつて(おれ)(たぶさ)一生懸命(いつしやうけんめい)(にぎ)りよつて、347(ちから)一杯(いつぱい)(なぐ)つたぢやないか』
348『ハハハハハ、349(ばち)()(まへ)だな』
350 ()(はなし)してゐる(ところ)へ、351(もり)()()()らして(あら)はれて()たのは、352直径(ちよくけい)二尺(にしやく)(くらゐ)ある(ひかり)(たま)である。353そしてその(たま)(なか)から、354()355(はな)356(くち)357眉毛(まゆげ)まで(あら)はれ「エヘヘヘヘ」と可笑(をか)しさうに(わら)つてゐる。358そのために足許(あしもと)はパツと(あか)くなつた。359よくよく()れば、360二人(ふたり)足許(あしもと)幻相坊(げんさうばう)361幻魔坊(げんまばう)二疋(にひき)古狸(ふるだぬき)一尺(いつしやく)もあらうと()大蜈蚣(おほむかで)(やま)(ほど)()んで、362二人(ふたり)(からだ)()(ころ)さうと(たく)んでゐたのである。363二匹(にひき)古狸(ふるだぬき)(この)(ひかり)()らされて(くも)(かすみ)()()り、364大蜈蚣(おほむかで)一生懸命(いつしやうけんめい)(はし)つて(もり)(なか)(やみ)(かく)れて(しま)つた。365そして(この)(ひかり)はおひおひと容積(ようせき)(げん)じ、366(ちひ)さき(たま)となつて二人(ふたり)(そば)(ころ)げて()た。367二人(ふたり)(べつ)(おどろ)きもせず、
368(これ)自分(じぶん)(たす)けてくれた(かみ)化身(けしん)だらう。369(この)(くら)がりに(この)光玉(ひかりだま)がなかつたら、370俺等(おれたち)はどんな()()つたかも()れぬ。371南無光大明神様(なむひかりだいみやうじんさま)
372両方(りやうはう)から()(あは)せて感謝(かんしや)した。373二人(ふたり)何時(いつ)()にかウトウトと(ねむ)つて(しま)つた。374山口(やまぐち)(もり)(からす)はカアカアと(あかつき)()げた。375(その)(こゑ)(おどろ)き、376()()まし四辺(あたり)()れば、377自分(じぶん)(かたはら)直径(ちよくけい)一寸(いつすん)ばかりの水晶玉(すいしやうだま)(ころ)がつてゐた。378(これ)()出神(でのかみ)二人(ふたり)危難(きなん)(すく)ふべく神宝(しんぱう)(さづ)(たま)うたのである。379(これ)より両人(りやうにん)()()けたを(さいは)ひ、380(たま)懐中(ふところ)にしパンを()ぢりながら、381初稚姫(はつわかひめ)(あと)(した)うて()けて()く。
382大正一二・一・二九 旧一一・一二・一三 北村隆光録)