霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 黒長姫(くろながひめ)〔一三四九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第3篇 衡平無死 よみ:こうへいむし
章:第13章 第52巻 よみ:くろながひめ 通し章番号:1349
口述日:1923(大正12)年02月09日(旧12月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
峠の頂上には四五人の男が車座になって火を焚きながら暖を取っている。いずれも髯をもじゃもじゃとはやした面構えで、人の腕のようなものを火の中にくべては、口に当てて噛みついている。
文助の目は内分的になってよほど明らかになってきた。文助を男たちの様子を見て、これはひと悶着ありそうだと思いながらも、惟神に任せるより仕方がないと決心を固め、かすかな声で宣伝歌を歌いながら近寄って行く。
男たちの中の一人が文助を見て、呼び止めた。文助は男たちに、あからさまに泥棒の景気を尋ねた。男は不景気で自分たちの商売はこの幽冥界でもあがったりだと答え、逆に神の取り次ぎと化けこんで神に蛇や大根を書いて、人から礼を言われて金を取っていたと、文助をほめたたえた。
泥棒たちは、講習会でも開こうと相談していたところ、文助という手本が来たので、ひとつ講師になってくれないかと頼み込んだ。文助は怒って、自分は正当な報酬をいただいていたのだ、と抗弁した。
泥棒たちは文助の強情な答えに愛想をつかし、さっさと峠を通って行くように促した。文助が死後町ばかり降って行くと、そこには形ばかりの屋根の下に六地蔵が並んでいる。文助は傍らの半ば腐った鞍掛に腰を掛けた。
よくよく見れば、古ぼけた柱に墨黒々と、文助がやがてここを通過するだろうから、黒蛇の一族はここへ集まれ、と記されていた。文助は、松彦に止められるまで、いつも黒蛇の絵を書いて竜神様だと言って信者に渡したので、黒蛇たちが神のように祀ってもらったお礼に来るのだろうと独り言を言っている。
すると、黒蛇の精・黒長姫と名乗る美人がお供を連れて現れ、文助にひどい目にあわされたお礼をこれからするのだ、と言う。
善意からしたことだと抗弁する文助に対し、黒長姫は、自分たちは畜生道に堕ちたのに、霊不相応に神様の席に上げられて祀られては、かえって目がくらみ、苦しくてたまらないのだ、と答えた。
文助の目も、分を過ぎた待遇に苦しんだ黒蛇の眷属の怨みがかたまって、見えなくなったのだという。そして、世に堕ちた者を救う力は、人間の分際にはなく、それはすべて神様の御権限であり、文助は神様の神徳を横領しようとする天の賊だと非難した。
文助は、虫けらまでも助けようとする真心からやったことだと言い張るが、黒長姫はそれは文助の慢心と保身から出た行為だと断じ、これから自分たちの眷属が五体を砕いて怨みを晴らし、その後文助は黒蛇となって眷属の奴となって働くことになるのだ、と言い渡した。
黒長姫が口笛を吹くと、あたりの草木が一本角を生やした真っ黒の蛇となって文助に襲い掛かってきた。文助は杖を打ち振って、断末魔のような悲鳴を上げながら命からがら西北に逃げて行った。
黒蛇たちは強烈な山おろしに吹き上げられ、文助の走って行く先に飛散している。文助は神事を奏上しながら逃げて行く。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5213
愛善世界社版:177頁 八幡書店版:第9輯 441頁 修補版: 校定版:185頁 普及版:75頁 初版: ページ備考:
001 天引峠(あまびきたうげ)頂上(ちやうじやう)四五人(しごにん)(をとこ)車座(くるまざ)となつて、002(あを)()をチヨロチヨロ()きながら、003(だん)()つてゐる。004(いづ)れもパルチザンのやうな面構(つらがまへ)005(ひげ)をモシヤモシヤと()やし、006(なん)だか(ひと)(かひな)のやうな(もの)を、007()(なか)へくべては、008横笛(よこぶえ)()くやうな調子(てうし)(くち)()ててしがんでゐる。009(この)(とき)文助(ぶんすけ)()余程(よほど)内分的(ないぶんてき)になつて、010(あきら)かになつて()た。011文助(ぶんすけ)は……(いや)(やつ)()やがる、012此奴(こいつ)(また)(ひと)悶錯(もんさく)だワイ。013(しか)しながら一度(いちど)()んだ(もの)(いのち)()られるやうなこともあるまい。014エエ惟神(かむながら)(まか)すより仕方(しかた)がない……と決心(けつしん)(ほぞ)(かた)め、015(かす)かな(こゑ)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら(ちか)よつて()く。016(その)(うち)一人(ひとり)()ざとく文助(ぶんすけ)()て、
017(かふ)『オイ旅人(たびびと)018一寸(ちよつと)()つて(もら)はうかい』
019 文助(ぶんすけ)悪胴(わるどう)をきめて、020ワザと平気(へいき)(よそほ)ひ、
021()つて(もら)はうと()はいでも、022(ひと)あたりさして(もら)ひたいのだ、023大分(だいぶん)(さむ)うなつたからな。024そしてお前等(まへたち)泥棒(どろばう)商売(しやうばい)()えるが、025チツと(まう)かりますかな』
026『ヤアもう不景気風(ふけいきかぜ)八衢街道(やちまたかいだう)まで()きまくつて()たものだから、027一向(いつかう)(この)(ごろ)駄目(だめ)だ。028(まへ)(おれ)から()れば随分(ずいぶん)(えら)(やつ)だ。029ウマく(ぜん)仮面(かめん)(かぶ)つて、030神様(かみさま)のお取次(とりつぎ)()()み、031鼻紙(はながみ)(はし)(まつ)()黒蛇(くろへび)032蕪大根(かぶらだいこん)()きよつて、033苦労(くらう)なしに(れい)()はして(かね)をとる(がう)(もの)だから、034(ひと)俺達(おれたち)にも(をし)へて(もら)ひたいものだ。035ここで泥棒講習会(どろばうかうしふくわい)(ひら)かうかと()つて、036最前(さいぜん)から相談(さうだん)して()つたのだが、037()つから適当(てきたう)先生(せんせい)がないので、038(じつ)(ところ)当惑(たうわく)してゐる(ところ)だ。039うまく法律(はふりつ)にふれない(やう)に、040(よろこ)ばれて泥棒(どろばう)する方法(はうはふ)研究(けんきう)するのが、041(もつと)賢明(けんめい)処世法(しよせいほふ)だから、042(ひと)小北山(こぎたやま)先生(せんせい)043吾々(われわれ)教導者(けうだうしや)になつて(くだ)さるまいかなア』
044馬鹿(ばか)なことを()ふな、045(おれ)正当(せいたう)理由(りいう)()つて正当(せいたう)報酬(ほうしう)(いただ)いて()つたのだ。046貴様等(きさまら)泥棒根性(どろばうこんじやう)があるから、047世界(せかい)一切(いつさい)(こと)(みな)泥棒的(どろばうてき)解釈(かいしやく)出来(でき)るのだ。048ピユリタンとしてのプロパガンディストの心事(しんじ)泥棒先生(どろばうせんせい)(わか)るものかい。049こんなことが(をし)へて()しければ、050やがて現界(げんかい)羽振(はぶり)()かして()つた、051大原(おほはら)さんがやつて()るだらう。052そしたら十分(じふぶん)敬礼(けいれい)(へう)し、053(うやま)して近付(ちかづ)けるのだ。054現界(げんかい)(おい)ても、055大多数盗(だいたすうたう)(よう)してゐた豪傑(がうけつ)だからのう。056(おれ)(はたけ)(ちが)ふから、057こればかりは御免(ごめん)だ、058天国行(てんごくゆき)邪魔(じやま)になると、059一生(いつしやう)不利益(ふりえき)だからのう』
060『ヤツパリお(まへ)利己主義(りこしゆぎ)だな。061幽界(いうかい)()ても自愛(じあい)世間愛(せけんあい)執着(しふちやく)してゐるから駄目(だめ)だよ。062そんなこと()はずに、063(をとこ)らしく秘密(ひみつ)(をし)へて()れたらどうだい』
064『お前達(まへたち)はピユリタンの精神(せいしん)(わか)らないから泥棒(どろばう)()えるのだが、065(ひと)(よろこ)んで(たてまつ)つたものを(いただ)くのは、066つまり神様(かみさま)から(くだ)さる(やう)なものだ。067(かみ)(たから)間接拝受(かんせつはいじゆ)するのだから、068盗人(ぬすびと)ではないよ。069前達(まへたち)往来(わうらい)(ひと)(かす)めて無理往生(むりわうじやう)()らうとする小盗人(こぬすびと)だよ。070一層(いつそう)のこと、071(いま)此処(ここ)改心(かいしん)をして(おれ)のお(とも)をしたら()うだい、072キツと天国(てんごく)へつれて()つてやるがなア』
073(おつ)『オイ甲州(かふしう)074こんな屁古垂爺(へこたれおやぢ)相手(あひて)にしても駄目(だめ)だぞ。075すべて泥棒団体(どろばうだんたい)といふものは、076こんなヒヨロヒヨロなレストレントの(ちから)のないやうな(もの)では、077(かしら)(いただ)いた(ところ)で、078統一(とういつ)出来(でき)ない、079ヤツパリ大原(おほはら)さまのやうな、080大悪盗(だいあくたう)でないと、081コントロールの(ちから)がないからな』
082文助(ぶんすけ)『さうださうだ、083(はたけ)(ちが)ふのだから、084(わし)には駄目(だめ)だ。085(もと)から()こいたやうな(をとこ)だから、086平兵衛(へいべゑ)ともいひ文助(ぶんすけ)ともいふのだから』
087(かふ)(なん)四方(しかた)のない(めくら)だなア。088それなら免除(めんぢよ)してやるから、089キリキリと()()()つたがよからうぞ。090(しか)(この)関所(せきしよ)天引峠(あまびきたうげ)二度(にど)ビツクリといふのだから、091(ひと)吃驚(びつくり)せなくちや通過(つうくわ)出来(でき)ない。092ビツクリ(ばこ)(ふた)があくぞよと、093いつも現界(げんかい)()うて()つただらう。094それの実現(じつげん)だから、095これから(ひと)実行(じつかう)にかかるよつて、096自由自在(じいうじざい)吃驚(びつくり)するがよからう、097煩悶(はんもん)苦悩(くなう)驚愕(きやうがく)権利(けんり)は、098(まへ)惟神的(かむながらてき)保有(ほいう)してるのだから、099()のものだ。100イヒヒヒヒ』
101大和魂(やまとだましひ)生粋(きつすゐ)水晶魂(すいしやうみたま)のビクとも(いた)さぬ文助(ぶんすけ)だ。102(いく)らなりと吃驚(びつくり)さして御覧(ごらん)103如何(いか)なる悪魔(あくま)も、104恐怖(きようふ)も、105醜事(しうじ)も、106(たちま)惟神(かむながら)妙法(めうはふ)()つて、107所謂(いはゆる)ザブリメーシヨンに()つて一掃(いつさう)する神力(しんりき)(そな)はつてゐるエンゼル(さま)だ。108サア、109吃驚(びつくり)さしたり吃驚(びつくり)さしたり』
110(あま)(むか)意気(いき)(つよ)盲滅法界(めくらめつぽふかい)馬鹿者(ばかもの)だから、111(はなし)にならぬワイ。112こつちが吃驚(びつくり)して(しま)ふワイ。113サア、114キリキリ此処(ここ)(とほ)れ』
115貴様(きさま)(とほ)れと()はなくても、116自由(じいう)権利(けんり)(とほ)るのだ。117桃季(たうり)(もの)()はず(おのづか)小径(こみち)をなすというて、118チヤンと(みち)がついてるのだ。119ヘンお(かま)御無用(ごむよう)120(さき)失礼(しつれい)(いた)します。121(この)文助(ぶんすけ)()()えても、122神様(かみさま)から、123重大(ぢうだい)なるメツセージを()けてゐるのだから、124汝等(なんぢら)(ごと)泥棒(どろばう)容喙(ようかい)(ゆる)さないのだ。125エツヘツヘヘヘ』
126(ほそ)()(しわ)をよせ、127(わら)ひながらコツリコツリと(つゑ)()いて(たうげ)(くだ)つて()く。128文助(ぶんすけ)四五町(しごちやう)ばかり(くだ)つて()くと、129其処(そこ)(かたち)ばかりの屋根(やね)があつて、130(いし)六地蔵(ろくぢざう)(なら)んでゐる。131ツと立寄(たちよ)つて、132(かたはら)(むし)()ひさがした(あし)(なかば)(くさ)つた鞍掛(くらかけ)(こし)(うち)かけ、133よくよく()れば(ふる)ぼけた(はしら)(すみ)黒々(くろぐろ)楽書(らくがき)がやつてある。134()るともなしに()についたのは……(めくら)宣伝使(せんでんし)文助(ぶんすけ)がやがてここを通過(つうくわ)するだらう、135さうすれば(ひと)談判(だんぱん)がある。136黒蛇(くろくちなは)一族(いちぞく)此処(ここ)(あつ)まれ……と(しる)されてあつた。137文助(ぶんすけ)(これ)()独言(ひとりごと)
138『ハハア、139おれが(あさ)から(ばん)まで、140竜人(りうじん)さまだと()つて、141黒蛇(くろくちなは)()いては信者(しんじや)(わた)し、142掛字(かけじ)(がく)仕立(した)てて(まつ)らしてやつたお(かげ)で、143結構(けつこう)飲食(おんじき)(そな)へて(もら)ひ、144黒蛇(くろくちなは)(やつ)145(おれ)行方(やりかた)(おほい)(とく)となし、146歓迎会(くわんげいくわい)でも(ひら)きよる(つもり)だなア。147そらさうだらう。148誰一人(たれひとり)給仕(きふじ)をしてくれる(もの)がないのに、149(むし)分際(ぶんざい)として大神(おほかみ)さま(かく)(まつ)つて(もら)ふのだから、150(よろこ)ぶのも無理(むり)はないワイ。151あああ(ひと)はヤツパリ禽獣(きんじう)(いた)(まで)(たす)けておかねばならぬものかいな。152ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)153三五教(あななひけう)松彦(まつひこ)さまがやつて()てゴテゴテ()ふものだから、154黒蛇(くろくちなは)()かきも中止(ちゆうし)して(しま)ひ、155(まつ)日輪様(にちりんさま)ばかりを()いて()つたが、156あれから引続(ひきつづ)いてやつてゐたなら、157まだまだ沢山(たくさん)(よろこ)ばれただらうに……何程(なにほど)日輪様(にちりんさま)(ゑが)いた(ところ)で、158日輪様(にちりんさま)(よろこ)んで(くだ)さる(はず)もなし、159ヤツパリ(しやう)()うた竜神(りうじん)さまを()いてをつたがよかつたのだ。160霊不相応(みたまふさうおう)なことをすると、161(かへつ)(なん)にもなりやしないワ』
162 ()かる(ところ)妙齢(めうれい)美人(びじん)三人連(さんにんづ)れで忽焉(こつえん)(あら)はれて()た。
163『モシ、164貴方(あなた)文助(ぶんすけ)さまぢやありませぬか、165(わたし)黒長姫(くろながひめ)(まを)します、166随分(ずいぶん)(くる)しめて(くだ)さいましたね。167(あさ)から(ばん)(まで)168(まつ)()にまき()いたなりで、169身動(みうご)きも出来(でき)ぬやうな()()はし、170殺生(せつしやう)なお(かた)ですワ。171サア(これ)から御礼(おれい)(まを)しませう』
172『お(まへ)黒竜神(くろりうじん)精霊(せいれい)()えるが、173あれだけ立派(りつぱ)(まつ)らして()げたのに、174(なに)不足(ふそく)なのだ。175畜生(ちくしやう)分際(ぶんざい)として、176神様(かみさま)として(もら)つて、177(よろこ)ぶことを()いて、178こんな(ところ)不足(ふそく)()(みみ)()ちませぬワイ』
179吾々(われわれ)畜生道(ちくしやうだう)()ちたもの、180霊相応(みたまさうおう)ですから、181さやうな神様(かみさま)(せき)()げられ(まつ)られては、182()(くら)み、183(あたま)(いた)み、184(くる)しくてなりませぬ。185それだから吾々(われわれ)(うら)みが(かた)まつて、186(まへ)さまの()()えなくなつたのだ。187(ぶん)()ぎた待遇(たいぐう)をせられては本当(ほんたう)迷惑(めいわく)だ。188(まへ)さまのお(かげ)で、189私達(わたしたち)眷族(けんぞく)幾千人(いくせんにん)(くる)しんだか()れやしない。190そしてお(まへ)さまは(これ)(まつ)つておけば、191悪事(あくじ)災難(さいなん)(のが)れるとか()つて、192神様(かみさま)真似(まね)をしたでないか。193吾々(われわれ)眷族(けんぞく)竜神(りうじん)さまだなどと(だい)それた()をつけ、194そして大変(たいへん)神力(しんりき)のある(かみ)のやうに()ひふらし、195世界(せかい)亡者(まうじや)(をが)ませて、196栃麺棒(とちめんぼう)をふらさした張本人(ちやうほんにん)だ。197神様(かみさま)(そば)(まつ)られて(くる)しくてたまらなかつたと、198(みな)()つてゐる』
199『そんな不足(ふそく)()かうと(おも)うて()いたのぢやない。200一人(ひとり)でも()()ちた(れい)()()げてやらうと(おも)つて善意(ぜんい)(もつ)てしたのだ。201チツと(その)精神(せいしん)()つて(もら)はなくちや(こま)るぢやないか』
202『よう仰有(おつしや)いますワイ。203()()ちた(もの)()にあげる(やう)(ちから)が、204人間(にんげん)分際(ぶんざい)としてどこにありますか。205それは(みな)神様(かみさま)御権限(ごけんげん)にあるのだ。206神様(かみさま)神徳(しんとく)横領(わうりやう)せむとするお(まへ)さまは(てん)(ぞく)だよ。207それだから、208こんな天引峠(あまびきたうげ)二度(にど)吃驚(びつくり)(とほ)らなくちやならぬ(やう)になつたのだ。209エエ(うら)めしい。210これから五体(ごたい)をグタグタに()(くだ)いて(うらみ)()らすから、211(その)(つも)りでゐなさい。212そしてお(まへ)身体(からだ)黒蛇(くろへび)となり、213私達(わたしたち)仲間(なかま)()り、214(やつこ)となつて(はたら)くのだ。215あのお(まへ)()いた黒蛇(くろくちなは)には、216スツカリお(まへ)霊魂(みたま)一部(いちぶ)憑依(ひようい)してゐるから、217自然(しぜん)道理(だうり)でお(まへ)霊身(れいしん)(じや)となるのは当然(あたりまへ)だ。218(まへ)(くち)(さき)で、219神様(かみさま)(ため)世人(よびと)(ため)()つてゐるが、220私達(わたしたち)仲間(なかま)姿(すがた)をかいて(まつ)らすのは、221所謂(いはゆる)ゼルブスト・ツエツクを(たつ)せむとする野心(やしん)(ほか)ならなかつたのだ』
222馬鹿(ばか)()ふな。223(かみ)(みち)(つか)へる(もの)が、224どうしてそんな(こころ)になれるか、225(いづ)れも(かみ)大御心(おほみこころ)(なら)うて、226(むし)ケラまで(たす)けようと()真心(まごころ)からやつたのだ。227何程(なにほど)大蛇(だいじや)のお(まへ)だとて蛇推(じやすゐ)するにも(ほど)がある。228チツとは善意(ぜんい)(かい)して(もら)ひたいものだな』
229(なん)()つても、230セルフ・プリサベーシヨンの(ため)にしてゐたことは、231瞭然(れうぜん)たるものだ。232(まへ)(かみ)松魚節(かつをぶし)にする偽善者(きぜんしや)だ。233なぜ自分(じぶん)謙遜(けんそん)して、234(ひと)(たの)まれても(ことわ)りを()はないのだ。235(いづ)御霊(みたま)筆先(ふでさき)には、236御神号(ごしんがう)神姿(おすがた)()(ひと)がきまつてるぢやないか。237きまつた(かた)()いて(もら)ふのなれば、238所謂(いはゆる)神様(かみさま)(みたま)がこもつてゐるから、239(へび)だつて解脱(げだつ)することが出来(でき)るが、240権威(けんゐ)なき(もの)(ゑが)かれては益々(ますます)(くる)しみを()し、241(つみ)(かさ)ぬるのみだよ』
242『それだと()つて、243(おれ)もヤツパリ天国(てんごく)天人団体(てんにんだんたい)(せき)をおいてる(もの)だ。244(へび)なんぞを勿体(もつたい)ない、245変性男子(へんじやうなんし)御手(おて)()いて(もら)ふといふことがあるか。246(おれ)()満足(まんぞく)すべきものだ、247(あま)増長(ぞうちよう)するない』
248『ホホホホホ、249どちらが増長(ぞうちよう)してゐるのか、250よく(かんが)へてみなさい。251それだから(めくら)(つんぼ)神様(かみさま)仰有(おつしや)るのだ。252(いま)口笛(くちぶえ)()いたが最後(さいご)253(まへ)(くる)しめられた眷属(けんぞく)此処(ここ)へやつて()るから覚悟(かくご)をなさい』
254()ふより(はや)く、255ピユーピユーと口笛(くちぶえ)をふいた。256(にはか)四辺(あたり)(くさ)()(きれ)()()真黒(まつくろ)けの(へび)となり、257一本(いつぽん)(つの)()やし、258(なみ)()()する(ごと)く、259文助(ぶんすけ)四辺(あたり)(ちから)一杯(いつぱい)(くち)をあけて襲撃(しふげき)して()た。260文助(ぶんすけ)(つゑ)打振(うちふ)打振(うちふ)り、261キヤアキヤアと断末魔(だんまつま)のやうな(こゑ)()し、262(へび)(むれ)()()えて、263(いのち)カラガラ西北(せいほく)さして()げて()く。264(たちま)強烈(きやうれつ)なる山颪(やまおろし)となり、265数多(あまた)(へび)中空(ちうくう)(たか)()(あが)り、266(そら)真黒(まつくろ)()めて、267文助(ぶんすけ)(はし)つて()数百間(すうひやくけん)(まへ)まで飛散(ひさん)してゐる。268文助(ぶんすけ)(こころ)(こころ)ならず、269神言(かみごと)奏上(そうじやう)しながら、270()けつ(まろ)びつ(すす)()く。
271大正一二・二・九 旧一一・一二・二四 松村真澄録)