霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 盲動(まうどう)〔一三五九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第5篇 洗判無料 よみ:せんばんむりょう
章:第23章 第52巻 よみ:もうどう 通し章番号:1359
口述日:1923(大正12)年02月10日(旧12月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
文助は、秋の時雨の季節を現した八街の関所で、路傍の石に腰かけて門を通る数多の精霊の審判を聞いていた。
高姫は妖幻坊にさらわれて空中をかけり、途中で取り離されて空中から転落し、デカタン高原のある地点の砂原に気絶していた。その間に精霊が八街にやってきた。高姫はあたりかまわず日の出神の生き宮を振り回し、自分は時置師神・杢助の妻だと威張り散らしている。
八街の守衛は杢助は斎苑の館でずっと総務を取っていると高姫をたしなめるが、高姫はまったく聞かず、守衛たちを嘲弄する。文助は高姫に声をかけ、幽冥界の役人に乱暴な言葉を使わないように注意するが、高姫の態度は変わらない。
そこへ、伊吹戸主神様に御用がある本物の杢助が天の一方からやってきた。高姫は杢助に一緒に帰ろうと声をかけるが、本物の杢助は、高姫が妖幻坊という妖怪にだまされていること、自分は高姫と祠の森で会っていないし曲輪城も知らない、と事実を説いて聞かせた。
高姫は杢助の話を信じず、門内に入ろうとする杢助にすがって泣き喚いた。杢助は高姫をポンとけって街道に転げさせ、文助を招いて門内に入って行った。
高姫は八街の街道に転がりながら、自分は常世姫の再来、高宮姫だと大音声に呼ばわっている。この声をききつけて、八街に来る精霊が集まってきた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5223
愛善世界社版:269頁 八幡書店版:第9輯 476頁 修補版: 校定版:277頁 普及版:120頁 初版: ページ備考:
001 (ひと)しきり(あめ)()るかと(おも)へば、002(また)(ひと)しきり()れわたる(あき)時雨(しぐれ)季節(きせつ)(あら)はした八衢(やちまた)関所(せきしよ)に、003文助(ぶんすけ)はロハ(だい)(こし)()ちかけて、004(この)関門(くわんもん)(とほ)数多(あまた)精霊(せいれい)審判(しんぱん)を、005(むね)(とどろ)かせながら()いてゐた。006そこへやつて()たのは、007(かほ)白粉(おしろい)をベツタリとつけた、008高慢(かうまん)さうな面付(つらつき)をした(ばば)アである。009文助(ぶんすけ)不思議(ふしぎ)(やつ)()()たものだなア、010さぞ彼奴(あいつ)審判(しんぱん)面白(おもしろ)いだらうと、011(やや)興味(きようみ)(もつ)()つてゐた。012これは肉体(にくたい)のある精霊(せいれい)とみえて、013(やや)(うつむ)いてヒヨロリ ヒヨロリとやつて()る。014関所(せきしよ)(もん)にトンと()(あた)り、015(ひたひ)()ち、
016『アイタタ、017こんな(ところ)に、018(ことわ)りもなく赤門(あかもん)(こしら)へ、019通行人(つうかうにん)(あたま)()たすとは(もつ)ての(ほか)だ。020()出神(でのかみ)義理天上(ぎりてんじやう)さまがお(とほ)(あそ)ばすのに、021(なん)()不都合(ふつがふ)だ……ヤアお(まへ)はここの門番(もんばん)()えるが、022なぜ職務(しよくむ)大事(だいじ)(いた)さぬのかい。023こんな怠惰(たいだ)(こと)をして()ると、024()出神(でのかみ)承知(しようち)(いた)しませぬぞや』
025とエライ権幕(けんまく)である。026文助(ぶんすけ)()出神(でのかみ)といふ(こゑ)()いて、027よくよく(すか)しみれば高姫(たかひめ)であつた。028高姫(たかひめ)妖幻坊(えうげんばう)にかつ(さら)はれ、029空中(くうちう)(かけ)()途中(とちう)(おい)て、030デカタン高原(かうげん)(ある)地点(ちてん)妖幻坊(えうげんばう)取放(とりはな)され、031空中(くうちう)より(すな)(ぱら)顛落(てんらく)して気絶(きぜつ)してゐた。032(その)(あひだ)精霊(せいれい)此処(ここ)(まよ)うて()たのである。033されど高姫(たかひめ)自分(じぶん)正気(しやうき)(うしな)つた(こと)も、034霊界(れいかい)()てゐることも(すこ)しも()がつかず、035依然(いぜん)として現界(げんかい)(ある)いてゐるやうな心持(こころもち)であつた。036赤色(あかいろ)守衛(しゆゑい)大喝(たいかつ)一声(いつせい)
037高姫(たかひめ)038(しばら)()て、039取調(とりしら)べることがある』
040呶鳴(どな)りつけた。
041『ヘン門番(もんばん)分際(ぶんざい)として、042義理天上(ぎりてんじやう)()出神(でのかみ)(さま)取調(とりしら)べるとは片腹痛(かたはらいた)いワ。043それよりも此方(こちら)から取調(とりしら)べにやならぬ(こと)がある。044三五教(あななひけう)三羽烏(さんばがらす)一人(いちにん)045時置師(ときおかし)神様(かみさま)何処(どこ)(かく)したか。046サ、047キツパリと白状(はくじやう)しなさい。048グヅグヅ(いた)すと、049(あめ)八衢(やちまた)はまだおろか、050地獄(ぢごく)(かま)のドン(ぞこ)(おと)しますぞや』
051(その)(はう)はデカタン高原(かうげん)(おい)て、052妖幻坊(えうげんばう)といふ悪魔(あくま)のために空中(くうちう)から取落(とりおと)され、053気絶(きぜつ)(いた)して此処(ここ)へやつて()亡者(まうじや)であるぞ。054最早(もはや)此処(ここ)()れば冥土(めいど)規則(きそく)(したが)はねばならぬ。055これから(その)(はう)罪状(ざいじやう)調(しら)べるに()つて、056(つつ)まず(かく)さず申開(まをしひら)きを(いた)したがよからうぞ』
057『オホホホホ、058あのマア鹿爪(しかつめ)らしい(かほ)わいの、059一石(いつこく)(こめ)百両(ひやくりやう)するやうな、060(その)しやつ(つら)(なん)だい、061(まへ)余程(よほど)(この)(ごろ)生活難(せいくわつなん)(おそ)はれて、062会計(くわいけい)(つら)いと()える。063()出神(でのかみ)義理天上(ぎりてんじやう)さまに(したが)うて()れば、064(この)()(なか)不景気(ふけいき)もなければ心配(しんぱい)もいりませぬ。065三千世界(さんぜんせかい)(すく)(ぬし)066()出神(でのかみ)生宮(いきみや)高姫(たかひめ)さまで(ござ)るぞや。067さてもさても、068()(なか)可哀相(かあいさう)人民(じんみん)沢山(たくさん)あるものだなア。069これだから一時(いつとき)(はや)現界(げんかい)070幽界(いうかい)071神界(しんかい)立直(たてなほ)しを(いた)さねば、072五六七(みろく)神政(しんせい)成就(じやうじゆ)(いた)さぬと仰有(おつしや)るのだ。073あああ、074世界中(せかいぢう)人民(じんみん)(たす)けねばならぬ()出神(でのかみ)(さま)も、075(この)高姫(たかひめ)肉宮(にくみや)も、076並大抵(なみたいてい)ぢやありませぬワイな、077ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
078 (あか)守衛(しゆゑい)は、079(あま)りきつい高姫(たかひめ)脱線振(だつせんぶり)に、080取調(とりしら)べる(わけ)にも()かず、081(また)生死簿(せいしぼ)には()んでゐない、082(ちか)(うち)現界(げんかい)(かへ)(やつ)だから、083本真剣(ほんしんけん)調(しら)べる(わけ)にも()かず、084いい加減(かげん)にあしらつて()(かへ)さむものと(おも)ひながら、
085『オイ、086高姫(たかひめ)087(まへ)はここを(なん)心得(こころえ)てるか』
088『ヘン、089釈迦(しやか)(きやう)()くやうな(こと)()ふものぢやありませぬぞや。090馬鹿(ばか)にするにも(ほど)がある。091此処(ここ)大門(おほもん)神社(じんしや)一里(いちり)(ばか)手前(てまへ)ぢやないか。092前達(まへたち)素盞嗚尊(すさのをのみこと)厄雑神(やくざがみ)眷属(けんぞく)だらう。093こんな(ところ)にしやちこ()つて()るよりも、094(この)義理天上(ぎりてんじやう)肉宮(にくみや)(をしへ)()いて、095一度(いちど)大門開(おほもんびら)きの御用(ごよう)()つたら()うだ。096結構(けつこう)(こと)()かしてやるぞや』
097 文助(ぶんすけ)高姫(たかひめ)(そで)()いて、
098『モシモシ高姫(たかひめ)さま、099(めづら)しい(ところ)でお()にかかりました。100(わたし)三五教(あななひけう)文助(ぶんすけ)(ござ)いますよ』
101『ヤア、102最前(さいぜん)から怪体(けつたい)(をとこ)()ると(おも)うたら文助(ぶんすけ)だな。103ても()ても(さび)しさうな(つら)をして、104こんな(ところ)(なに)をしてゐるのだい。105サ、106文助(ぶんすけ)どん、107高姫(たかひめ)()いて(ござ)れ。108ウラナイ(けう)誠生粋(まこときつすゐ)()かして()げよう。109こんな赤面(あかづら)青瓢箪面(あをべうたんづら)が、110(なに)()つてゐるものか。111()(もと)根本(こつぽん)根本(こつぽん)(もと)(つか)んだ、112(この)高姫(たかひめ)ぢやぞえ。113途中(とちう)から()いた(かみ)や、114(がく)知恵(ちゑ)出来(でき)鼻高(はなだか)が、115()うして(まこと)(こと)(わか)るものか。116……()きたくば(たづ)ねて(ござ)れ。117(かみ)(おもて)(あら)はれて、118義理天上(ぎりてんじやう)()出神(でのかみ)119高宮姫命(たかみやひめのみこと)となつて、120世界(せかい)(こと)(なに)もかも()いて()かすぞや。121……こんな門番(もんばん)(いた)して()るやうな、122途中(とちう)鼻高(はなだか)に、123ヘン、124神界(しんかい)(まこと)(わか)つてたまりますかい。125サアサア文助(ぶんすけ)どん、126(わたし)()いて(ござ)れ』
127(あか)高姫(たかひめ)128まだ(その)(はう)がここへ()るのはチツと(はや)い。129これから現界(げんかい)(かへ)り、130充分(じうぶん)狂態振(きやうたいぶ)りを発揮(はつき)し、131()(あし)()なくなつてから(はじ)めて()がつくだらう。132さうすれば三五教(あななひけう)(たふと)(こと)や、133素盞嗚尊(すさのをのみこと)(さま)御心(みこころ)(わか)るであらう。134事務(じむ)(さまた)げとなるから、135トツトと此処(ここ)()()れ』
136『ヘン、137(あか)さまは、138(わし)()ると都合(つがふ)(わる)いでせう。139ハハア、140ここは(あん)(たが)はず、141ヤツパリ三五教(あななひけう)門口(もんぐち)だな。142時置師(ときおかし)神様(かみさま)を、143うまく引張(ひつぱ)()みやがつたに(ちがひ)ない。144(てこ)でも(ぼう)でも(うご)きは(いた)さぬぞや。145ササ(はや)時置師(ときおかし)神様(かみさま)を、146此処(ここ)()して(くだ)され』
147時置師(ときおかし)神様(かみさま)は、148斎苑(いそ)(やかた)総務(そうむ)をして(ござ)るのだ。149まだ現界(げんかい)にゐらつしやるから、150此処(ここ)へお()しになる(はず)がない。151さてもさても(わか)らぬ代物(しろもの)だなア』
152『ヘン、153うまい(こと)仰有(おつしや)いますワイ、154ホホホホホ、155流石(さすが)変性女子(へんじやうによし)(あく)(をしへ)(はら)()()みて()るとみえて、156上手(じやうず)(うそ)をつきますな。157そんな(こと)にチヨロまかされるやうな義理天上(ぎりてんじやう)ぢや(ござ)りませぬワイな、158(あか)さま』
159()(ほそ)うして(あご)をしやくつて嘲弄(てうろう)する。
160文助(ぶんすけ)『モシ高姫(たかひめ)さま、161此処(ここ)冥土(めいど)八衢(やちまた)関所(せきしよ)ですよ。162(けつ)して現界(げんかい)ぢやありませぬから、163そんな(こと)()ふものぢやありませぬ。164ササ、165トツトと(かへ)りなさい。166そして三五教(あななひけう)にお(わび)をして(まこと)(たましひ)立帰(たちかへ)り、167(あらた)めて天国(てんごく)(のぼ)れるやうに御願(おねが)ひなさりませ』
168『ようマア、169文助(ぶんすけ)どん、170しらばくれますね。171(まへ)余程(よほど)変性女子(へんじやうによし)(みたま)(うつ)つたとみえますワイ。172(うそ)(ひと)つも()はれぬお(みち)ですよ。173(うそ)(かた)めた三五(あななひ)(みち)174オホホホホ、175高姫(たかひめ)(まこと)感心(かんしん)(いた)しました。176(まへ)()(わる)いから、177(ゆめ)でも()()るのだらう。178チツと(しつか)りしなさらぬかいな』
179横面(よこづら)をピシヤピシヤと(なぐ)りつけた。180文助(ぶんすけ)(すこ)しばかりムツとして、
181『コリヤ高姫(たかひめ)182これだけ(こと)()けて()らしてやるのに、183まだお(まへ)(わか)らぬのか。184なぜお役人(やくにん)さまの言葉(ことば)(まも)つて(かへ)りなさらぬのだ。185(しわ)だらけの(つら)(しろ)(もの)()つて、186(なん)だ。187まるきり気違(きちが)ひの所作(しよさ)ぢやないか』
188『ヘン、189(かま)御無用(ごむよう)190これでも、191トさまが()いと仰有(おつしや)るのだから、192(べつ)にお(まへ)(やう)(めくら)(ども)()(もら)はなくても(よろ)しい。193サ、194(これ)から(おく)()()んで、195トさまにお()にかかり、196(いや)でも(おう)でもウラナイ(けう)()れて(かへ)らなおきませぬぞや。197かう()えても、198(この)高姫(たかひめ)(いま)(まで)とは(ちが)ひますぞや。199曲輪城(まがわじやう)城主(じやうしゆ)高宮彦(たかみやひこ)(つま)200高宮姫(たかみやひめ)とは()出神(でのかみ)生宮(いきみや)(こと)だ。201そんな(こと)()はずに、202一遍(いつぺん)浮木(うきき)(もり)曲輪城(まがわじやう)まで(わたし)()いて()てみなさい。203いかなお(まへ)でも、204あの御殿(ごてん)()たら吃驚(びつくり)(いた)すぞえ。205神変不思議(しんぺんふしぎ)曲輪(まがわ)(はふ)によつて、206中天(ちうてん)(たか)飛行(ひかう)(じゆつ)(なら)(おぼ)えた(この)高姫(たかひめ)207最早(もはや)天下(てんか)(おそ)るる(もの)はチツともありませぬ。208どうか(その)(つも)りで交際(つきあ)つて(くだ)さいや』
209高姫(たかひめ)浮木(うきき)(もり)妖怪(えうくわい)ばれ(こと)はまだ()がついて()らぬらしい。210()かる(ところ)(おほ)きな獅子(しし)()つて驀地(まつしぐら)(てん)一方(いつぱう)から(くだ)つて()たのは、211まがふ(かた)なき杢助(もくすけ)であつた。
212 高姫(たかひめ)(この)姿(すがた)()(おほい)(よろこ)び、
213『ホホホホホ、214手柄(てがら)手柄(てがら)215杢助(もくすけ)さま、216(まへ)()うしてマア、217それ(ほど)(えら)いお(かた)になつたのだ。218これほど猛悪(まうあく)唐獅子(からじし)自由自在(じいうじざい)使(つか)ふとは、219ヤツパリ(わたし)(をつと)だな。220コレ文助(ぶんすけ)どん、221アレ御覧(ごらん)222曲輪(まがわ)法力(ほふりき)によつて、223あんな(はな)(わざ)出来(でき)るのだもの、224ウラナイ(けう)(えら)いものでせう。225三五教(あななひけう)(やつ)一人(ひとり)だつて、226こんな(こと)出来(でき)ますか。227初稚姫(はつわかひめ)治国別(はるくにわけ)228言依別(ことよりわけ)東助(とうすけ)に、229杢助(もくすけ)さまの、230天晴(あつぱれ)武者振(むしやぶり)()せてやりたいものだなア。231エヘヘヘヘ、232南無(なむ)杢助(もくすけ)大明神(だいみやうじん)(さま)
233()()はして(をが)可笑(をか)しさ。234杢助(もくすけ)獅子(しし)(せな)からヒラリと()びおり、235高姫(たかひめ)には()もくれず、236(あか)守衛(しゆゑい)(むか)ひ、
237御役目(おやくめ)御苦労(ごくらう)です。238一寸(ちよつと)伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)(さま)にお()にかかりたいと、239三五教(あななひけう)杢助(もくすけ)(まを)()れたと(つた)へて(くだ)さい』
240 (あか)守衛(しゆゑい)幾度(いくたび)(こし)(かが)め、241敬礼(けいれい)(へう)しながら走早(あしばや)門内(もんない)()る。242高姫(たかひめ)杢助(もくすけ)言葉(ことば)(すこ)合点(がてん)()かぬ(ふし)があるとは(おも)へども、243ワザとあんな(こと)()つて()るのであらう、244杢助(もくすけ)さまは洒落(しやれ)上手(じやうず)だから……と(こころ)(うち)にきめて(しま)ひ、
245『コレ杢助(もくすけ)さま、246ええ加減(かげん)洒落(しやれ)ておきなさい。247斎苑(いそ)(やかた)東助(とうすけ)()()され、248アタ(けが)らはしい、249三五教(あななひけう)杢助(もくすけ)なんて、250()ふものぢや(ござ)りませぬぞや。251サア、252一緒(いつしよ)(かへ)りませう』
253高姫(たかひめ)殿(どの)254(まへ)さまは妖幻坊(えうげんばう)にチヨロまかされ、255(その)悪魔(あくま)杢助(もくすけ)だと(おも)()め、256随分(ずいぶん)狂態(きやうたい)(えん)じてるやうだが、257(この)杢助(もくすけ)にはお(まへ)さまに()つて、258ウラナイ(けう)(はなし)をした(こと)もなし、259(また)(ほこら)(もり)面会(めんくわい)した(こと)もない。260まして曲輪城(まがわじやう)などには足踏(あしぶ)みも(いた)して()らぬから、261よく(むね)()をおいて、262真偽(しんぎ)判別(はんべつ)(ねが)ひたいものだ』
263『ホホホホホ、264白々(しらじら)しい、265(もく)さまの()(やう)266(ひと)(まへ)だと(おも)つて、267そんな体裁(ていさい)(つく)るものぢやありませぬぞや。268コレ高宮彦(たかみやひこ)さま、269そんな六ケ(むつか)しい(かほ)せずに、270ササ(はや)曲輪城(まがわじやう)(かへ)りませう。271コレ文助(ぶんすけ)どん、272()うだえ、273高姫(たかひめ)三国一(さんごくいち)婿(むこ)といふのは、274(この)杢助(もくすけ)さまだぞえ。275三羽烏(さんばがらす)一人(いちにん)(きこ)えたる時置師神(ときおかしのかみ)(さま)276(いま)はウラナイ(けう)大教主(だいけうしゆ)277曲輪城(まがわじやう)城主様(じやうしゆさま)だ。278サ、279(わし)()いて(ござ)れ。280(むかし)厚誼(よしみ)で、281キツと立派(りつぱ)(やく)にして()げよう。282小北山(こぎたやま)受付(うけつけ)(くらゐ)して()つてもはづみませぬぞや』
283文助(ぶんすけ)『あああ、284(こま)つた(ひと)だな、285(めくら)気違(きちがひ)馬鹿(ばか)(ぐらゐ)始末(しまつ)()へぬものはないワ。286(わたし)も、287モツと高姫(たかひめ)さまは(えら)(ひと)だと(おも)うて()つたに……現在(げんざい)八衢(やちまた)()てゐながら、288執着心(しふちやくしん)(ふか)(ため)289ヤツパリ娑婆(しやば)だと(おも)うてるらしい。290ああ()(どく)なものだなア』
291(つぶや)く。292高姫(たかひめ)耳敏(みみざと)(これ)()()つて、
293『ヘン、294気違(きちがひ)だの、295馬鹿(ばか)だのとよう仰有(おつしや)いますワイ。296オホホホホ、297()出神(でのかみ)(こころ)(かがみ)にお(まへ)迷妄暗愚(めいまうあんぐ)(みたま)(うつ)つたのだよ。298……(ひと)(こと)だと(おも)うてゐると(みな)(わが)(こと)であるぞよ。299(いま)人民(じんみん)(みな)(めくら)(つんぼ)ばかりであるぞよ。300()出神(でのかみ)(あら)はれて、301(よる)守護(しゆご)()(なか)()()守護(しゆご)(いた)し、302五六七(みろく)()(まゐ)りたならば、303(めくら)()があき、304(つんぼ)(みみ)(きこ)えるやうになるぞよ……と変性男子(へんじやうなんし)筆先(ふでさき)にも(あら)はれてゐませうがな。305()出神(でのかみ)真似(まね)筆先(ふでさき)にもチヤンと()てますよ。306……コレ杢助(もくすけ)さま、307エエ加減(かげん)とぼけておかんせいな』
308 かかる(ところ)(あか)守衛(しゆゑい)(うやうや)しく杢助(もくすけ)(まへ)(あら)はれ、
309三五教(あななひけう)杢助様(もくすけさま)310伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)(さま)が、311早速(さつそく)()にかからうと仰有(おつしや)います。312サ、313(わたし)()いてお()(くだ)さいませ』
314『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。315(この)ライオンは(しばら)御預(おあづか)りを(ねが)ひます』
316『ハイ(よろ)しう(ござ)います。317叮嚀(ていねい)保護(ほご)(いた)します。318コレ(しろ)さま、319(まへ)さま此処(ここ)(まも)つてゐて(くだ)さい。320……サア杢助様(もくすけさま)321かうお()でなさいませ』
322(さき)()つて()かうとする。323杢助(もくすけ)(あと)(したが)(もん)(くぐ)りかけた。324高姫(たかひめ)(そで)にすがり、325金切声(かなきりごゑ)()して、326涙交(なみだまじ)りに、
327『コレ杢助(もくすけ)さま、328(あま)りぢや(ござ)んせぬか。329ここは三五教(あななひけう)奴等(やつら)(あつ)まる場所(ばしよ)330なぜあれ(ほど)(かた)約束(やくそく)をしながら、331(いま)となつて変心(へんしん)をなさるのだえ。332義理天上(ぎりてんじやう)()出神(でのかみ)(おそ)れませぬか』
333高姫(たかひめ)さま、334拙者(せつしや)拙者(せつしや)権利(けんり)(もつ)て、335伊吹戸主様(いぶきどぬしさま)にお()にかかるのだ。336貴女(あなた)(これ)からお(かへ)りなさい』
337()かうとする。338高姫(たかひめ)(そで)(くら)ひついて(はな)さず、
339『イエイエ(なん)仰有(おつしや)つても、340(この)高姫(たかひめ)()(くろ)(うち)は、341一足(ひとあし)たりとも、342三五教(あななひけう)(もん)(くぐ)らせませぬぞや。343アンアンアンアンアン、344(をとこ)(こころ)(あき)(そら)345(かは)ると()うても(あま)りだ。346エーエ残念(ざんねん)残念(ざんねん)や、347クク口惜(くちを)しい』
348『アハハハ、349(なん)と、350面白(おもしろ)芝居(しばゐ)()せて(もら)うたものだ。351ああ文助(ぶんすけ)殿(どの)352拙者(せつしや)(あと)へついて(ござ)れ』
353()ひながら、354ポンと()れば、355高姫(たかひめ)(おも)はず(すそ)(はな)し、356(ふた)()つコロコロコロと街道(かいだう)(まり)(ごと)(ころ)げて、357(その)終点(しうてん)でパツと(だい)()(ひろ)がり(たふ)れて(しま)つた。
358 杢助(もくすけ)359文助(ぶんすけ)(もん)をガタリと()めて、360奥庭(おくには)姿(すがた)(かく)した。361高姫(たかひめ)(だい)()になつて、362手足(てあし)(うご)かせながら、
363(この)(をんな)は、364(もと)(ただ)せば、365変性男子(へんじやうなんし)(たい)をかつて、366(うま)()でたる常世姫命(とこよひめのみこと)再来(さいらい)367高宮姫(たかみやひめ)368(わか)(とき)から、369男女(をとこをんな)綽名(あだな)()つたヤンチヤ(むすめ)370一度(いちど)東助(とうすけ)さまと夫婦(ふうふ)になり、371()までなしたる(なか)なれど、372(あま)東助(とうすけ)(こころ)無情(むじやう)冷酷(れいこく)なるが(ゆゑ)373斎苑(いそ)(やかた)でキツパリ(ひま)をくれて、374(ほこら)(もり)立帰(たちかへ)り、375杢助(もくすけ)さまと夫婦(ふうふ)となり、376(いま)浮木(うきき)(もり)曲輪城(まがわじやう)(きづ)き、377高宮姫(たかみやひめ)()(あらた)めてウラナイ(けう)神柱(かむばしら)378(さき)をみてゐて(くだ)されよ』
379大音声(だいおんじやう)()ばはつてゐる。380八衢(やちまた)()精霊(せいれい)(この)(こゑ)()きつけ、381(おのおの)()(いそ)ぎバラバラと()けつけた。
382大正一二・二・一〇 旧一一・一二・二五 松村真澄録)