霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 艶兵(えんぺい)〔一三七四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第2篇 貞烈亀鑑 よみ:ていれつきかん
章:第11章 第53巻 よみ:えんぺい 通し章番号:1374
口述日:1923(大正12)年02月13日(旧12月28日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
バラモンの鬼春別軍は、ハルナの指揮する城内の防衛軍を襲い、なぎ倒した。ビクトリヤ軍は敗走して武器を捨てて散乱し始めた。ハルナは槍を持って敵の陣中に入り縦横無尽に戦ったが、身に数多の傷を受けて倒れ、捕縛されてしまった。
城内に押し入ったバラモン軍は、ビクトリヤ王、左守、右守も難なく捕縛し、ハルナと共に牢獄に投げ入れてしまった。
カルナ姫は味方の勢力ではとうてい敵し難しと見て、にわかに武装を解いて美々しく装い蓑笠をつけて旅人に扮し、バラモン軍が進軍してくる路傍に倒れて気を引いた。敵の主将を美貌と弁舌で切腹しようとの試みであった。
バラモン軍の副将たちはカルナ姫の美貌を見てさっそく、大将に差し出して手柄にしようとした。カルナ姫は、自分はビク国の女で多くの軍隊を見て肝をつぶして動けなくなったのだと身の上を語った。副将たちは久米彦将軍の配下であったので、久米彦にカルナ姫を送り届けた。
久米彦は、隣のテントに上官である総司令官の鬼春別将軍が陣取っているので、あからさまに喜ぶわけにもいかず、表面は陣中に女を入れるなどけしからんと怒鳴りたてたが、内心は喜んで、さっそくあたりの幕僚に用を言いつけて遠ざけ、カルナ姫を口説きだした。
久米彦はすっかりカルナの手玉となって心をとろかせ、作戦計画も地図もほったらかしてしまった。カルナは両親にかけあった上で結婚の段取りをしようと婚約をほのめかした。
鬼春別は、隣の久米彦のテンドで女の声がし、どうやら久米彦が女の承諾を得たような気配がするので嫉妬し、顔を真っ赤にして久米彦の室に入ってきて怒鳴りつけた。久米彦は上官に対してこの場を取り繕うと焦っている。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5311
愛善世界社版:108頁 八幡書店版:第9輯 543頁 修補版: 校定版:112頁 普及版:54頁 初版: ページ備考:
001 鬼春別(おにはるわけ)股肱(ここう)(たの)む、002シヤムは驀地(まつしぐら)城内(じやうない)(おそ)ひ、003ハルナの指揮(しき)する軍隊(ぐんたい)(かた)(ぱし)から()りちらし、004薙倒(なぎたふ)した。005城内(じやうない)味方(みかた)周章狼狽(しうしやうらうばい)し、006武器(ぶき)()て、007卑怯(ひけふ)にも一目散(いちもくさん)四方(しはう)八方(はつぱう)散乱(さんらん)した。008ハルナは(やり)(ひつさ)げて(てき)陣中(ぢんちう)()り、009縦横無尽(じうわうむじん)(たたか)へども、010(てき)()(あま)大軍(たいぐん)011(つひ)(ちから)()き、012()十数創(じふすうさう)(かうむ)り、013無念(むねん)()()ひしばり(なが)ら、014ドツと(たふ)れた。015シヤムは部下(ぶか)(めい)じ、016高手(たかて)小手(こて)(しば)つて捕虜(ほりよ)となし、017城内(じやうない)(くら)投込(なげこ)(つな)いでおいた。018()れより(わう)殿中(でんちう)阿修羅王(あしゆらわう)(ごと)(いきほひ)にて(すす)()り、019右守(うもり)のベルツを()もなく捕縛(ほばく)し、020()(また)ハルナを投込(なげこ)んだ(くら)(なか)(つな)いでおいた。021ビクトリア(わう)022キユービツトは(ゆみ)()をつがへ、023よせ()(てき)七八人(しちはちにん)(たふ)した。024(わう)弓弦(ゆづる)はプツツと()れた、025最早(もはや)運命(うんめい)()(まで)なりと、026短刀(たんたう)(ひき)ぬき自殺(じさつ)せむとする一刹那(いつせつな)027左守(さもり)(ゆみ)()をやめて、028(わう)()(すが)りつき、029(なみだ)(とも)自殺(じさつ)(おも)()まらむ(こと)(いさ)めた。
030左守(さもり)『モシ(わが)君様(きみさま)031短気(たんき)をお()しなされますな。032神様(かみさま)のお(まも)りある以上(いじやう)は、033屹度(きつと)(この)(たたか)ひは恢復(くわいふく)出来(でき)まする。034貴方(あなた)がお崩御(かくれ)になれば、035どうして三軍(さんぐん)指揮(しき)出来(でき)ませう。036国家(こくか)(ため)()(おも)()まつて(くだ)さいませ』
037一生懸命(いつしやうけんめい)()めようとする、038(わう)決心(けつしん)(いろ)(うか)べ、
039刹帝利(せつていり)(この)()(およ)んで、040卑怯未練(ひけふみれん)(いのち)(なが)らへむとし、041(かへつ)()もなき雑兵(ざふひやう)(くび)(わた)せば王家(わうけ)恥辱(ちじよく)042(その)()(はな)せ』
043左守(さもり)『イヤ(はな)しませぬ』
044(あらそ)(ところ)(すす)(きた)るシヤムは、045有無(うむ)()はせず、046数十人(すうじふにん)雑兵(ざふひやう)(とも)二人(ふたり)捕縛(ほばく)し、047猿轡(さるぐつわ)をはめて、048(おな)(くら)(なか)(つな)ぎ、049バラモン(ぐん)万歳(ばんざい)三唱(さんしやう)した。
050 カルナ(ひめ)到底(たうてい)味方(みかた)勢力(せいりよく)にては(てき)(がた)しと()()り、051(にはか)武装(ぶさう)()き、052美々(びび)しき()(よそほ)ひ、053蓑笠(みのかさ)()け、054旅人(たびびと)(ふん)し、055軍隊(ぐんたい)(すす)(きた)路傍(ろばう)(うめ)(ごゑ)()して、056ワザと(たふ)れてゐた。057久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)副官(ふくくわん)エミシは(ひやく)()軍隊(ぐんたい)引率(いんそつ)して、058(すす)(きた)路傍(ろばう)何者(なにもの)(たふ)れてゐるのを()て、059部下(ぶか)のマルタに(めい)じ、060調査(てうさ)せしめた。
061マルタ『コレヤ、062(その)(はう)吾々(われわれ)進軍(しんぐん)路傍(ろばう)(よこ)たはり、063不都合千万(ふつがふせんばん)064何者(なにもの)だ』
065()(なが)蓑笠(みのかさ)無雑作(むざふさ)(ひき)むしつた、066みれば妙齢(めうれい)美人(びじん)(くる)(さう)にウンウンと(うめ)いてゐる。
067マルタ『モシ、068エミシ(さま)069ステキ滅法界(めつぱふかい)美人(びじん)(ござ)いますぞ。070これは旅人(たびびと)()えますが、071(あま)沢山(たくさん)軍隊(ぐんたい)(いきほひ)(おそ)れ、072(をんな)(ちひ)さき(こころ)より吃驚(びつくり)(いた)して、073()(まは)したので(ござ)いませう、074(なん)(うつく)しい(もの)(ござ)いますなア』
075エミシ『成程(なるほど)076立派(りつぱ)(をんな)だ。077(なに)()もあれ、078久米彦(くめひこ)(さま)御前(ごぜん)()(まゐ)り、079将軍(しやうぐん)のお(なぐさ)みに(きよう)したならば如何(いかが)であらうか』
080マルタ『如何(いか)にも将軍(しやうぐん)(さだ)めて満足(まんぞく)さるるでせう。081(しか)らば(これ)より拙者(せつしや)がお(とど)(まを)しませう』
082エミシ『マルタ、083(けつ)して(その)(はう)手柄(てがら)(いた)しちやならぬぞ、084……エミシが将軍様(しやうぐんさま)にお(とど)(まを)せ……と()つたと(つた)へるのだぞ』
085マルタ『ヘヘヘ、086(けつ)して如才(じよさい)(ござ)いませぬ、087御安心(ごあんしん)(くだ)さいませ』
088三四人(さんよにん)部下(ぶか)(かつ)がせ、089マルタは(あと)()いて、090将軍(しやうぐん)仮陣営(かりじんえい)(おく)()く。091エミシは城内(じやうない)()して、092四辺(あたり)民家(みんか)()をつけ(なが)ら、093猛虎(まうこ)(いきほひ)094(かち)(じやう)じて(すす)()く。
095 一方(いつぱう)ヒルナ(ひめ)到底(たうてい)(たたかひ)()あらずと()()り、096(おな)じく旅人(たびびと)(ふう)(よそほ)ひ、097軍隊(ぐんたい)(すす)(きた)路上(ろじやう)(よこ)たはり、098黄泉比良坂(よもつひらさか)(たたか)ひに、099大神(おほかみ)(もも)()紅裙隊(こうくんたい)(もち)(たま)ひし故智(こち)(なら)ひ、100(てき)主将(しゆしやう)(わが)美貌(びばう)弁舌(べんぜつ)(もつ)説服(せつぷく)せしめむと忠義(ちうぎ)一途(いちづ)(こころ)より危険(きけん)(をか)して()つてゐる。101此処(ここ)隊伍(たいご)(ととの)堂々(だうだう)とやつて()たのは、102鬼春別(おにはるわけ)股肱(ここう)(たの)むスパールであつた。103スパールは目敏(めざと)く、104ヒルナ(ひめ)()て、105(その)美貌(びばう)(きも)をつぶし、106軍隊(ぐんたい)進行(しんかう)()め、107ヒルナ(ひめ)(まへ)(すす)みよつて、
108スパール『(その)(はう)進軍(しんぐん)途上(とじやう)(なに)(いた)して()るか、109(はや)立去(たちさ)らないか』
110とワザと声高(こわだか)(ののし)りける。
111ヒルナ(ひめ)『ハイ、112(わらは)(たび)(をんな)(ござ)います。113ビクトル山上(さんじやう)盤古神王様(ばんこしんのうさま)(ほこら)参拝(さんぱい)(ため)114遥々(はるばる)(まゐ)りました(ところ)115(あま)沢山(たくさん)のお武家様(ぶけさま)(きも)(つぶ)し、116(こし)()かし、117一歩(ひとあし)(あゆ)めなくなりました、118何卒(どうぞ)(たす)(くだ)さいませ。119(けつ)して()寸鉄(すんてつ)()びない(をんな)なれば、120手向(てむか)ひは(いた)しませぬ』
121涙含(なみだぐ)みつつ()ふ。122スパールはヒルナ(ひめ)美貌(びばう)熟視(じゆくし)し、123(くび)(かたむ)(した)をまき(なが)ら、124ウツトリとして()とれてゐる。
125 (しばら)くあつてスパールは顔色(かほいろ)(やは)らげ、
126スパール『イヤ、127(たび)のお女中(ぢよちう)128(けつ)して御心配(ごしんぱい)なさるな、129拙者(せつしや)貴女(あなた)()(うへ)安全(あんぜん)(まも)つて()げませう。130……従卒(じゆうそつ)(ども)131鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)御前(おんまへ)に、132スパールが(この)(をんな)(よろ)しくお(たの)(まを)したと()つて(おく)(とど)けて()い』
133 『ハイ』と(こた)へて、134前列(ぜんれつ)兵卒(へいそつ)二名(にめい)135従卒(じゆうそつ)二名(にめい)(とも)にヒルナ(ひめ)大事(だいじ)(さう)(かつ)いで、136鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)陣営(ぢんえい)(おく)(とど)けたり。
137 鬼春別(おにはるわけ)138久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)陣営(ぢんえい)はテントを()りまはし、139若草(わかぐさ)芝生(しばふ)(うへ)臨時(りんじ)(つく)られてあつた。140そして両将軍(りやうしやうぐん)とも(ひと)つのテントを(へだ)つるのみにて、141二間(にけん)(ばか)りの距離(きより)(いう)するのみであつた。142久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)味方(みかた)勇士(ゆうし)戦報(せんぱう)()きつつ、143ビクトリア(じやう)内外(ないぐわい)地図(ちづ)(ひら)いて、144敵味方(てきみかた)配置(はいち)調(しら)べてゐた。145そこへマルタは四人(よにん)兵卒(へいそつ)美人(びじん)()かせて入来(いりきた)り、
146マルタ『エー、147将軍様(しやうぐんさま)申上(まをしあ)げます、148城内(じやうない)(てき)(ほとん)殲滅(せんめつ)(いた)しました様子(やうす)(ござ)いますれば、149()御安心(ごあんしん)(あそ)ばせ。150()きましては何処(どこ)(もの)とも()らず、151吾々(われわれ)軍隊(ぐんたい)威勢(ゐせい)(おそ)れ、152路傍(ろばう)(たふ)()()かしてゐる(をんな)(ござ)いますので、153(つよ)(ばか)りが武士(ぶし)(なさけ)でないと、154近寄(ちかよ)つてみれば、155かくの(ごと)妙齢(めうれい)美人(びじん)156やうやう介抱(かいほう)(いた)し、157(いき)吹返(ふきかへ)させました。158(ところ)貴方(あなた)副官(ふくくわん)エミシ殿(どの)一目(ひとめ)みるより()(ほそ)くし、159(よだれ)をくらせ(たま)ひ……(をし)いものだなア、160(この)(をんな)陣中(ぢんちう)無聊(むれう)(なぐさ)むる(ため)161(わが)女房(にようばう)にしたいものだ……などと(むし)のよい(こと)(まを)します。162(しか)(なが)ら、163(この)(をんな)をみつけたのも、164介抱(かいほう)(いた)したのも、165(ひろ)つたのも(この)マルタで(ござ)います。166()はば戦利品(せんりひん)同様(どうやう)167中々(なかなか)エミシの自由(じいう)には(いた)させませぬ、168(これ)将軍様(しやうぐんさま)献上(けんじやう)し、169陣中(ぢんちう)のお(なぐさ)みに(きよう)したいと(おも)ひ、170ワザワザ(おく)つて(まゐ)りました。171何卒(どうぞ)首実検(くびじつけん)(うへ)172()()(くだ)さいますれば有難(ありがた)(ぞん)じます』
173追従(つゐしよう)(なら)べて()()てた。174久米彦(くめひこ)一目(ひとめ)()るより恍惚(くわうこつ)として、175()(ほそ)くし、176(よだれ)(したた)るのも()らなかつた。177されど(となり)のテントには上官(じやうくわん)鬼春別(おにはるわけ)陣取(ぢんど)つてゐる(こと)とてワザと(こゑ)(とが)らし、
178久米彦(くめひこ)不都合千万(ふつがふせんばん)な、179(この)陣中(ぢんちう)(をんな)()(はこ)ぶとは、180武士(ぶし)にあるまじき(その)(はう)所業(しよげふ)181(けが)らはしい、182トツトと()(かへ)れ』
183マルタ『ヘー、184貴方(あなた)日頃(ひごろ)御性質(ごせいしつ)にも()ず、185斯様(かやう)美人(びじん)がお()()りませぬか。186左様(さやう)なれば是非(ぜひ)には(およ)びませぬ、187(この)戦争(せんそう)がすむ(まで)どつかにしまひおき、188(わたし)女房(にようばう)(いた)し、189軍隊(ぐんたい)()して、190(たの)しき一生(いつしやう)(この)ナイスと(とも)(おく)ることに(いた)しませう。191何程(なにほど)軍人(ぐんじん)なればとて、192(をんな)一人(ひとり)()すてるは武士(ぶし)()るべき(みち)では(ござ)いますまい。193()にいらねばどつかへ()れて(まゐ)ります』
194四人(よにん)目配(めくば)せして()(かへ)らうとする。195久米彦(くめひこ)は、196(あわ)てて、197()(しき)りに()(なが)ら、
198久米彦(くめひこ)『アア、199イヤイヤ、200(けが)らはしいと()ふは(おもて)201ソツと(その)(をんな)をここへおツ()()し、202(その)(はう)一時(いちじ)(はや)戦陣(せんぢん)(むか)つたがよからう』
203マルタ『ヘツヘヘヘ、204ヤツパリお()()りましたかな。205(ねこ)松魚(かつをぶし)206(をとこ)(をんな)207何程(なにほど)軍人(ぐんじん)だとて、208(をんな)(きら)ひな(をとこ)(ござ)いますまい。209(しか)(なが)(のど)をならして(ほつ)しがつてゐる(をとこ)沢山(たくさん)(ござ)いますから、210(あま)り、211()(すす)まぬものを無理(むり)につきつけようとは(まを)しませぬ。212これ(ほど)美人(びじん)貴方(あなた)(たてまつ)るのに、213苦虫(にがむし)()んだやうな(つら)をして()られちや、214()つから張合(はりあひ)骨折甲斐(ほねをりがひ)(ござ)いませぬワ』
215久米彦(くめひこ)軍人(ぐんじん)戦争(せんそう)さへすれば()いのだ。216ゴテゴテ(まを)さず、217(はや)立去(たちさ)つて戦陣(せんぢん)(むか)へ、218()しからぬ代物(しろもの)だ』
219とワザとに隣室(りんしつ)(きこ)えるやう、220呶鳴(どな)()てた。221マルタは(つら)をふくらし、222ブツブツ小言(こごと)()(なが)ら、223シヨゲシヨゲとして(ふたた)陣中(ぢんちう)(すす)()る。
224 久米彦(くめひこ)四辺(あたり)幕僚(ばくれう)種々(いろいろ)(よう)()ひつけ、225(とほ)ざけおき、226(をんな)(そば)(ちか)()り、227(せな)()(なが)ら、228猫撫(ねこな)(ごゑ)()し、
229久米彦(くめひこ)其方(そち)何処(いづく)(もの)だ。230殺気立(さつきだ)つた軍隊(ぐんたい)出会(であ)ひ、231(さぞ)(おどろ)いたであらうのう。232(この)(はう)久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)()つて全軍(ぜんぐん)指揮官(しきくわん)だ。233最早(もはや)(わが)(ふところ)()(うへ)大丈夫(だいぢやうぶ)だ、234安心(あんしん)(いた)せよ』
235(をんな)『ハイ、236(わらは)はカルナと(まを)しまして、237(この)(くに)(うま)れで(ござ)います。238日頃(ひごろ)信仰(しんかう)(いた)します盤古神王様(ばんこしんのうさま)参拝(さんぱい)せむと、239一人(ひとり)()れと(とも)此処(ここ)(まで)(まゐ)りました途中(とちう)に、240沢山(たくさん)なお武家様(ぶけさま)出会(であ)ひ、241ビツクリ(いた)し、242()(くら)路傍(ろばう)(たふ)れて()りました。243(ところ)がお情深(なさけぶか)いお武家様(ぶけさま)(たす)けられて、244斯様(かやう)(うれ)しい(こと)(ござ)いませぬ。245モウ(かへ)りましても気遣(きづか)ひは(ござ)いますまいかな、246(なん)ならば貴方様(あなたさま)のお(しるし)(いただ)き、247それを(もつ)軍隊内(ぐんたいない)通過(つうくわ)し、248帰国(きこく)さして(もら)へますまいかな』
249 久米彦(くめひこ)折角(せつかく)()()つた(この)美人(びじん)(かへ)しては大変(たいへん)だと(ただち)言葉(ことば)(まう)け、
250久米彦(くめひこ)武士(ぶし)(なさけ)見知(みし)るを(もつ)第一(だいいち)とする、251(しか)(なが)らここ(しばら)くの(あひだ)はいろいろ雑多(ざつた)のよからぬ軍人(ぐんじん)(まじ)つて()れば、252(じつ)険難千万(けんのんせんばん)だ。253(この)(いくさ)(かた)づく(まで)254(わが)陣営(ぢんえい)()つたらどうだ。255それの(はう)其方(そち)()(ため)には安全策(あんぜんさく)だと(おも)ふ。256()()(おや)(ふところ)(はい)つた心算(つもり)で、257()()()けてゆつくり(いた)すがよからうぞ』
258カルナ(ひめ)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。259左様(さやう)なればお言葉(ことば)(あま)え、260世話(せわ)(あづか)りませう』
261久米彦(くめひこ)『ヨシヨシ、262それで(おれ)もヤツと安心(あんしん)(いた)した』
263カルナ(ひめ)(なん)といい陽気(やうき)になつたもので(ござ)いますな。264(この)(あを)(しば)(うへ)にテントをめぐらし、265陣営(ぢんえい)(かま)へて、266三軍(さんぐん)指揮(しき)(あそ)ばす将軍様(しやうぐんさま)御勇姿(ごゆうし)は、267(じつ)(なん)とも()へぬ崇高(すうかう)(ねん)()られます。268(わらは)(をんな)(うま)れた(うへ)は、269どうかして軍人(ぐんじん)(つま)になりたいもので(ござ)います、270ホホホ』
271久米彦(くめひこ)其方(そち)はまだ未婚者(みこんしや)()えるなア』
272カルナ(ひめ)『ハイ、273現代(げんだい)男子(だんし)(すべ)恋愛神聖論(れんあいしんせいろん)だとか、274デモクラチツクだとか、275耽美生活(たんびせいかつ)だとか()つて、276(じつ)(をんな)(くさ)つたやうな(をとこ)(ばか)りで(ござ)いますから、277(わらは)(をつと)として(さだ)むる男子(だんし)見当(みあた)りませぬので、278()独身生活(どくしんせいくわつ)(つづ)けて()ります』
279久米彦(くめひこ)其方(そち)理想(りさう)とする(をつと)は、280さうすると軍人(ぐんじん)だと()ふのかな、281軍人(ぐんじん)(くらゐ)単純(たんじゆん)潔白(けつぱく)(いさ)ましいものはない。282(をつと)()つのならば軍人(ぐんじん)(かぎ)るなア、283アハハハハ』
284カルナ(ひめ)何程(なにほど)(わらは)(ごと)(もの)が、285軍人(ぐんじん)(をつと)()たうと(おも)ひましても、286駄目(だめ)(ござ)いますワ。287軍人(ぐんじん)にもいろいろ(ござ)いまして、288(かみ)将軍(しやうぐん)より(しも)一兵卒(いつぺいそつ)(いた)(まで)289ヤツパリ軍人(ぐんじん)(ござ)いますが、290靴磨(くつみが)きや(うま)掃除(さうぢ)をするやうな軍人(ぐんじん)なら、291真平(まつぴら)御免(ごめん)です。292どうかしてせめて、293士官(しくわん)(ぐらゐ)(をつと)()ちたいと希望(きばう)(いた)して()ります』
294 久米彦(くめひこ)自分(じぶん)(はな)(おさ)へて、
295久米彦(くめひこ)拙者(せつしや)はお()()さぬかな』
296カルナ(ひめ)『あれマア(なに)仰有(おつしや)います、297御勿体(ごもつたい)ない、298(わらは)士官級(しくわんきふ)結構(けつこう)(ござ)います。299将軍様(しやうぐんさま)将官級(しやうくわんきふ)では(ござ)いませぬか。300そんな(こと)(ゆめ)(おも)うても(ばち)(あた)ります、301ホホホホホ、302御冗談(ごじようだん)仰有(おつしや)らないやうにして(くだ)さいませ。303ねエ将軍様(しやうぐんさま)
304 久米彦(くめひこ)策戦計画(さくせんけいくわく)地図(ちづ)(なに)()つたらかして、305(となり)のテントに鬼春別(おにはるわけ)(ひか)へて()(こと)(わす)れて(しま)ひ、306ソロソロ、307拍手(びやうし)のぬけた、308惚気声(のろけごゑ)()して、309カルナを膝元(ひざもと)(ひき)よせ、310カルナの(かた)()(なが)ら、
311久米彦(くめひこ)『オイ、312カルナ、313さう(をとこ)(はぢ)をかかすものだない。314どうだ、315キツパリと将軍(しやうぐん)()(まか)すと()つたらどうだい』
316カルナ(ひめ)貴方(あなた)最早(もはや)(おく)さまもあり、317子様(こさま)(おほ)きくなつてゐらつしやるでせう。318何程(なにほど)顕要(けんえう)地位(ちゐ)()たれる貴方(あなた)だとて、319(めかけ)になつて(をんな)貞操(ていさう)(もてあそ)ばれるのはつまりませぬからなア、320そんな御冗談(ごじやうだん)はやめて(くだ)さいませ』
321とワザとにプリンと(しり)をふつてみせた。322久米彦(くめひこ)はたまりかね、323()(ほそ)くし(なが)ら、
324久米彦(くめひこ)『イヤ、325御説(ごせつ)御尤(ごもつと)も、326(しか)(なが)拙者(せつしや)理想(りさう)(をんな)がないので、327(はづか)(なが)ら、328今日(こんにち)(まで)独身生活(どくしんせいくわつ)(つづ)けてゐるのだ』
329カルナ(ひめ)『ホホホホホ、330四十(しじふ)(さか)()えてゐ(なが)ら、331独身生活(どくしんせいくわつ)(つづ)けてると仰有(おつしや)るのは、332どこか御身体(おからだ)一局部(いつきよくぶ)欠点(けつてん)がお()りなさるので(ござ)いませぬか。333貴方(あなた)(をとこ)らしい立派(りつぱ)(をとこ)334()して顕要(けんえう)地位(ちゐ)にあらせらるる将軍様(しやうぐんさま)ですから、335沢山(たくさん)(をんな)にチヤホヤされ包囲(はうゐ)攻撃(こうげき)をくつて、336(つひ)には肝心(かんじん)機械(きかい)毀損(きそん)し、337六〇六号(ろつぴやくろくがう)御厄介(ごやくかい)にお(あづか)(あそ)ばしたのでは(ござ)いますまいか。338そんな(こと)であつたならば折角(せつかく)無垢(むく)(わらは)(からだ)病毒(びやうどく)感染(かんせん)し、339一生(いつしやう)不幸(ふかう)(おちい)らねばなりませぬ、340(しか)失礼(しつれい)(だん)はお(ゆる)(くだ)さいませ』
341(はや)くもカルナは久米彦(くめひこ)自分(じぶん)(のろ)()つてゐるのを看破(かんぱ)したので、342ソロソロ厭味半分(いやみはんぶん)揶揄(からか)ひ、343ヂラさうと(かんが)へてゐる剛胆不敵(がうたんふてき)(をんな)である。
344 久米彦(くめひこ)()(ほそ)うし、345(こゑ)調子(てうし)(まで)(くる)はせて、
346久米彦(くめひこ)『コレヤ、347ナイス、348(あま)(をとこ)馬鹿(ばか)にするものでないぞ、349エエー。350(まへ)(うつく)しい(かほ)にも()ず、351随分(ずいぶん)(おも)()つた(こと)をいふ(をんな)だな。352大抵(たいてい)(をんな)ならば、353かやうな(をとこ)(ばか)りの殺風景(さつぷうけい)陣中(ぢんちう)(おく)られて()(とき)は、354ブルブル(ふる)うて、355一言(ひとこと)もよう()はないものだが、356(まへ)言葉(ことば)から(かんが)へても、357どうやら女子大学(ぢよしだいがく)卒業(そつげふ)した才媛(さいえん)とみえる。358どこともなしに、359(まへ)のいふ(こと)垢抜(あかぬ)けがしてゐるよ。360(この)(をつと)にして(この)(つま)ありだ。361軍人(ぐんじん)(つま)たる(もの)軍隊(ぐんたい)(おそ)るるやうな(こと)では(つと)まらない、362今時(いまどき)女性(ぢよせい)活気(くわつき)がないから(じつ)(こま)つたものだ。363(しか)しお(まへ)新教育(しんけういく)()けた(だけ)あつて、364(じつ)明敏(めいびん)快活(くわいくわつ)頭脳(づなう)()つてゐる。365イヤそれが久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)にはズツと()()つた。366どうだ(おれ)奥様(おくさま)になる()はないか』
367カルナ(ひめ)『ハイ、368有難(ありがた)(ござ)います。369(ねが)うても()御縁(ごえん)(ござ)います。370(しか)(なが)何程(なにほど)(あたら)しい(をんな)だと()うても、371(わらは)には両親(りやうしん)(ござ)いますから、372(この)(たたか)ひの終局(しうきよく)次第(しだい)373両親(りやうしん)(ゆる)しを()けてお世話(せわ)(あづか)りませう。374貴方(あなた)(いま)やビクトリア(じやう)攻撃(こうげき)真最中(まつさいちう)(おい)て、375(をんな)相手(あひて)となさる(わけ)にも()きますまいからねエ。376本当(ほんたう)()きな将軍様(しやうぐんさま)だワ』
377久米彦(くめひこ)『そんな()(なが)(こと)()つて()つてゐられるものだない。378(おれ)はモウ情火(じやうくわ)()(ひろ)がり(ほとん)全身(ぜんしん)をやき(つく)さん(ばか)りになつてゐる。379どうだ、380此処(ここ)(ひと)情約締結(じやうやくていけつ)をやらうではないか』
381カルナ(ひめ)左様(さやう)ならば、382(たがひ)(こころ)(そこ)(わか)つたので(ござ)いますから、383予定(よてい)夫婦(ふうふ)(いた)しておきませう。384それから相当(さうたう)仲介人(なかうど)(たの)んで、385両親(りやうしん)掛合(かけあ)つて(もら)ひ、386そこで内定(ないてい)といふ順序(じゆんじよ)をふみ、387いよいよ確定(かくてい)(すす)むべきものですから、388マア(たのし)んで、389(たがひ)吉日良辰(きちにちりやうしん)(きた)るを()(こと)(いた)しませうかねえ』
390久米彦(くめひこ)成程(なるほど)391予定(よてい)392内定(ないてい)393確定(かくてい)394ヤア面白(おもしろ)い。395いかにも新教育(しんけういく)()けた(だけ)あつて、396(まへ)のいふ(こと)条理(でうり)整然(せいぜん)たるものだ。397(まる)軍隊式(ぐんたいしき)だ、398ヤ、399益々(ますます)()()つた、400アハハハハ』
401他愛(たあい)もなくド拍子(びやうし)()けた(こゑ)(わら)ふ。402カルナ(ひめ)所在(あらゆる)(こび)(てい)し、403『ホホホホホ』と何気(なにげ)なき(てい)(わら)つてゐる。404(しか)(こころ)(うち)では、405……(をつと)のハルナさまはどうなつたであらうか、406もしや討死(うちじに)をなさつたのではあるまいか、407(ただし)捕虜(ほりよ)となつて、408(てき)(とら)はれて(ござ)るのではあるまいか、409刹帝利様(せつていりさま)父上(ちちうへ)如何(いかが)なり()(たま)ひしか……と()()でなかつた。410(しか)(なが)大事(だいじ)(まへ)一小事(いちせうじ)と、411胸底(むなそこ)(ふか)(つつ)んで(すこ)しも(いろ)(あら)はさなかつたのは、412天晴(あつぱれ)女丈夫(ぢよぢやうぶ)である。
413 鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(わら)(ごゑ)聞耳(ききみみ)()て、414様子(やうす)(うかが)へば、415(なん)だか(なまめ)かしい(をんな)(こゑ)416そしてどうやら久米彦(くめひこ)情意投合(じやういとうがふ)したやうな気配(けはい)がするので、417()けて(たま)らず(かほ)真赤(まつか)にしてテントを()で、418久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(しつ)(すす)(きた)り、419(こゑ)(とが)らして、
420鬼春別(おにはるわけ)久米彦(くめひこ)殿(どの)421ここは陣中(ぢんちう)(ござ)るぞ。422(その)狂態(きやうたい)何事(なにごと)(ござ)る』
423怒気(どき)(ふく)んで叱責(しつせき)した。
424 久米彦(くめひこ)(かしら)(おさ)(なが)ら、
425久米彦(くめひこ)『ヘー、426エ、427(なん)(ござ)います、428これには一寸(ちよつと)様子(やうす)があつて……』
429(しき)りに(こし)(かが)め、430()()み、431(この)()糊塗(こと)せむと(あせ)つてゐる可笑(をか)しさ。432カルナ(ひめ)(おも)はず、
433『フツフフフフ』
434吹出(ふきだ)し、435(うつむ)いて(はら)(かか)へてゐる。
436大正一二・二・一三 旧一一・一二・二八 於竜宮館 松村真澄録)
   
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