霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 醜嵐(しこあらし)〔一三七六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第2篇 貞烈亀鑑 よみ(新仮名遣い):ていれつきかん
章:第13章 醜嵐 よみ(新仮名遣い):しこあらし 通し章番号:1376
口述日:1923(大正12)年02月13日(旧12月28日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
副官のスパールとエミシは、軍を指揮統率する将軍職の二人が切り合いをしていることの重大さを説いてきかせて二人を諌めた。鬼春別は撃剣の稽古だとごまかしたが、久米彦は、鬼春別が軍律を乱そうとしたので斬ろうとしたと答えた。
久米彦の副官エミシは、それが本当であっても、上官に刃で向かうとことは許されないと憤慨した。スパールは、ヒルナ姫・カルナ姫の争奪戦が原因だと断じ、それぞれの副官が二人の女を助けたのだから、鬼春別はヒルナ姫、久米彦はカルナ姫を取るべきだとその場を裁定した。
久米彦は、仕方なくカルナ姫で辛抱しようと言った。これを聞いたカルナ姫は怒り、鬼春別に下女にでも使ってもらう方がましだとはねつけた。
久米彦はまたもや怒ってカルナ姫を斬りつけようとしたが、エミシに制止された。カルナ姫は久米彦を嘲弄して、鬼春別に取り入ろうとする。色男気取りになった鬼春別に、今度はヒルナ姫が愛想をつかしたふりをして、久米彦を持ち上げた。するとカルナ姫は、先ほどは久米彦の気を引こうとわざとあんなことを言ったのだ、とヒルナ姫に食ってかかった。
将軍たちは二人の女が自分を想っているとすっかり信用して骨抜きにされてしまい、鬼春別はヒルナ姫と、久米彦はカルナ姫を連れて、悦に入りながら自室に戻って行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-03-31 06:40:51 OBC :rm5313
愛善世界社版:145頁 八幡書店版:第9輯 557頁 修補版: 校定版:150頁 普及版:72頁 初版: ページ備考:
001 スパール、002エミシ両人(りやうにん)仲裁(ちうさい)によつて鬼春別(おにはるわけ)003久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)()(あひ)(やうや)(をさ)まつた。004両将軍(りやうしやうぐん)椅子(いす)にかかつてハートに(なみ)()たせ(なが)(あせ)(ぬぐ)うてゐる。005スパールは鬼春別(おにはるわけ)(むか)(うやうや)しく、
006スパール『もし将軍(しやうぐん)(さま)007何故(なにゆゑ)のお(あらそ)ひで(ござ)いますか。008三軍(さんぐん)指揮(しき)部下(ぶか)模範(もはん)(しめ)すべき(たふと)(おん)()()(なが)ら、009(この)状態(じやうたい)如何(どう)ですか。010(これ)には(なに)かの様子(やうす)ある(こと)(おも)ひますが、011(この)副官(ふくくわん)(つつ)まず(かく)さず()打明(うちあ)かし(くだ)さらば、012拙者(せつしや)拙者(せつしや)として最善(さいぜん)方法(はうはふ)(かう)ずる(かんが)へで(ござ)います』
013 鬼春別(おにはるわけ)赤面(せきめん)(なが)()(にく)さうに、
014鬼春別(おにはるわけ)『いや、015(べつ)(たい)した(こと)はない。016あまり無聊(ぶれう)(あま)久米彦(くめひこ)殿(どの)撃剣(げきけん)稽古(けいこ)(いた)して()つたのだ。017アハハハハ』
018スパール『撃剣(げきけん)稽古(けいこ)ならば何故(なぜ)竹刀(しない)をお()ちなさらぬ。019(たがひ)真剣(しんけん)()いて()打合(うちあひ)とは険難(けんのん)千万(せんばん)020拙者(せつしや)()()けるのが、021(すこ)(おそ)かつたならば両将軍(りやうしやうぐん)(とも)如何(いか)なる運命(うんめい)(おちい)(たま)ふかも(はか)られますまい。022万一(まんいち)(これ)(だけ)軍隊(ぐんたい)重鎮(ぢうちん)(うしな)へば軍紀(ぐんき)(たちま)(みだ)れ、023部下(ぶか)士卒(しそつ)支離(しり)滅裂(めつれつ)になつて(しま)ひます。024何卒(どうぞ)(たはむ)れもいい加減(かげん)にして(くだ)さいませ』
025鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、026えらい……もう()()ませました。027ツイ(おだ)てが真剣(しんけん)になつて、028(らつ)ちもない(こと)だつたよ』
029 エミシは久米彦(くめひこ)(むか)ひ、
030エミシ『将軍(しやうぐん)(さま)031(いま)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)仰有(おつしや)つた(とほ)撃剣(げきけん)をなさいましたのですか』
032 久米彦(くめひこ)()(にく)さうに、
033久米彦(くめひこ)『ウン、034撃剣(げきけん)()へば撃剣(げきけん)だが、035(じつ)(ところ)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)軍律(ぐんりつ)(みだ)さむと(いた)した(ゆゑ)一刀(いつたう)(もと)()りつけむとしたのだ。036もう一息(ひといき)()(とき)其方(そなた)がたがやつて()て、037いかい邪魔(じやま)(いた)したな。038アハハハハ』
039エミシ『(これ)将軍(しやうぐん)のお言葉(ことば)とも(おぼ)えませぬ。040拙者(せつしや)貴方(あなた)副官(ふくくわん)として只今(ただいま)(まで)忠実(ちうじつ)(つか)へて(まゐ)りましたが、041仮令(たとへ)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)如何(いか)なる非違(ひゐ)があるとも、042(やいば)(もつ)(むか)ふと()乱暴(らんばう)(こと)がありますか。043拙者(せつしや)(これ)より貴方(あなた)部下(ぶか)(はな)れ、044鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)同情(どうじやう)(いた)します。045その()面相(めんさう)如何(どう)ですか。046顔部(がんぶ)一面(いちめん)に、047()()り、048(いろ)()せ、049(くちびる)(むらさき)(かは)つて()りますぞ。050それに引替(ひきか)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)は、051顔色(がんしよく)(すこ)しも(かは)らせ(たま)はず余裕(よゆう)綽々(しやくしやく)として(そん)し、052英雄(えいゆう)態度(たいど)(くづ)さずに()られます。053……何卒(なにとぞ)鬼春別(おにはるわけ)(さま)054一兵卒(いつぺいそつ)末輩(はし)でも(かま)ひませぬ。055何卒(どうぞ)貴方(あなた)直轄(ちよくかつ)使(つか)つて(いただ)()いもので(ござ)います』
056鬼春別(おにはるわけ)(また)(のち)ほど久米彦(くめひこ)殿(どの)とトツクリ協議(けふぎ)(いた)し、057その意見(いけん)(うけたま)はつた(うへ)058久米彦(くめひこ)殿(どの)異議(いぎ)がなければ、059拙者(せつしや)部下(ぶか)(いた)すであらう』
060スパール『(わたくし)愚考(ぐかう)する(ところ)によれば、061(この)(あらそ)ひはここに(ござ)るヒルナ(ひめ)062カルナ(ひめ)争奪戦(さうだつせん)だと(かんが)へますが、063ヒルナ(ひめ)(さま)拙者(せつしや)途上(とじやう)にてお(たす)(まを)鬼春別(おにはるわけ)(さま)(たてまつ)つたもので(ござ)いますれば、064(べつ)(あらそ)ひは(ござ)いますまい。065(また)カルナ(ひめ)はエミシがお(たす)(まを)し、066久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)(たてまつ)つたものなれば、067(はじ)めからきまりきつた(はなし)(ござ)いまする。068どうか両将軍(りやうしやうぐん)とも如何(いか)なる()意見(いけん)衝突(しようとつ)()りませぬが、069(てん)から(あた)へられた(この)ナイス、070さうなさつたら如何(どう)ですか』
071 鬼春別(おにはるわけ)はニコニコとし(なが)ら、
072鬼春別(おにはるわけ)如何(いか)にも、073スパールの(まを)(とほ)り、074さう(いた)せば問題(もんだい)はないのだ。075久米彦(くめひこ)殿(どの)076如何(いかが)(ござ)る。077(これ)異存(いぞん)(ござ)らうまいがな』
078久米彦(くめひこ)『はい、079是非(ぜひ)(およ)びませぬ。080(しか)らばカルナにて辛抱(しんばう)(いた)しませう。081当座(たうざ)鼻塞(はなふさ)ぎに』
082()ふのを()いてカルナ(ひめ)故意(わざ)とに柳眉(りうび)逆立(さかだ)て、
083カルナ(ひめ)『これ、084久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)085(わらは)一人前(いちにんまへ)(をんな)086当座(たうざ)鼻塞(はなふさ)ぎだとか、087カルナ(ひめ)でも……とか、088左様(さやう)条件(でうけん)のもとには()(まか)(こと)出来(でき)ませぬ。089貴方(あなた)はラブ・イズ・ベストと()(こと)御存(ごぞん)じのないお(かた)()えまする。090(こころ)(おほ)い、091(をんな)玩弄物(ぐわんろうぶつ)(あつか)ひになさる悪性(あくしやう)(をとこ)性質(せいしつ)遺憾(ゐかん)なく暴露(ばくろ)(あそ)ばしたぢやありませぬか。092貴方(あなた)萍草(うきぐさ)(やう)な、093フィランダラーで(ござ)いますな。094(わらは)(はう)からキツパリお(ことわ)りを(まを)し、095フオーム・ウエーゼン・デヤ・リーベを(わきま)へた鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)仮令(たとへ)下女(げぢよ)になりとも使(つか)つて(いただ)(かんが)へで(ござ)います。096何卒(どうぞ)これ(まで)御縁(ごえん)(あきら)めて(くだ)さいませ。097左様(さやう)無情(むじやう)なお(かた)()(まか)すよりも、098(わらは)(むし)ろセリバシー生活(せいくわつ)(いとな)(はう)何程(なにほど)(たのし)いか()れませぬ。099貴方(あなた)恋愛(れんあい)所謂(いはゆる)虚偽(きよぎ)恋愛(れんあい)です』
100手厳(てきび)しく()ねつけられ、101(また)もや久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(つか)()をかけ憤然(ふんぜん)として、102カルナ(ひめ)一刀(いつたう)(もと)()りつけむとした。103(この)様子(やうす)()るよりエミシは久米彦(くめひこ)()をグツと(にぎ)り、
104エミシ『将軍殿(しやうぐんどの)105相手(あひて)(をんな)(ござ)るぞ。106チツトおたしなみなさい』
107 久米彦(くめひこ)は『ウーン』と()()らぬ返事(へんじ)をして椅子(いす)(こし)をおろした。
108カルナ(ひめ)『ホホホホホ、109あのまア(をとこ)らしうもない、110()さげ()てたる久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)111繊弱(かよわ)(をんな)一人(ひとり)相手(あひて)(やいば)()かうとなさる(その)卑怯(ひけふ)さ、112未練(みれん)さ、113(わらは)はゾツコン(いや)になつてしまひました。114ホホホホホ、115もし鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)116下女(げぢよ)になつと使(つか)つて(くだ)さいと(まを)したのは表向(おもてむ)き、117何卒(どうぞ)(わらは)宿(やど)(つま)としてイターナルに(あい)して(くだ)さいませ』
118 鬼春別(おにはるわけ)色男(いろをとこ)気取(きどり)になり、
119鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、120ても()ても可愛(かあい)いものだな。121(しか)(なが)拙者(せつしや)にはヒルナ(ひめ)()尤物(いうぶつ)(すで)予約済(よやくずみ)なれば、122折角(せつかく)(ねがひ)なれどもお(ことわ)(まを)すより(みち)はない。123ヒルナ(ひめ)(ゆる)しさへあれば、124其方(そなた)第二(だいに)夫人(ふじん)として()れてやらぬ(こと)もないがな』
125()(なが)ら、126ヒルナ(ひめ)(かほ)一寸(ちよつと)(のぞ)いた。127ヒルナ(ひめ)故意(わざ)柳眉(りうび)逆立(さかだ)(こゑ)(とが)らし、
128ヒルナ(ひめ)『これ将軍(しやうぐん)(さま)129貴方(あなた)(なん)とした薄情(はくじやう)なお(かた)です。130(わらは)仰有(おつしや)つた(こと)(みな)虚偽(きよぎ)(ござ)いましたな。131貴方(あなた)性質(せいしつ)はアマンジヤクだから(かふ)(をんな)にも(おつ)(をんな)にも()をおかけ(あそ)ばすのでせう。132(しん)恋愛(れんあい)一人(いちにん)(たい)一人(いちにん)のもので(ござ)いますよ。133()()えても(わらは)(けつ)して娼婦(しやうふ)ぢや(ござ)いませぬから、134カニパニズムの(やう)醜行(しうかう)御免(ごめん)(かうむ)りまする。135貴方(あなた)婦人(ふじん)(たい)沈痛(ちんつう)なる侮辱(ぶじよく)(くは)へましたね』
136鬼春別(おにはるわけ)『ア、137いやいや、138さう(おこ)つて(もら)つちや(たま)らない。139あれはホンの冗談(じようだん)だよ。140(まへ)(そば)であの(やう)(こと)()へるか、141よく(かんが)へて()よ。142流石(さすが)(をんな)だな』
143ヒルナ(ひめ)(かり)にも三軍(さんぐん)指揮(しき)する(おん)()(もつ)冗談(じようだん)仰有(おつしや)ると()(こと)がありますか。144左様(さやう)()戯談(ぜうだん)仰有(おつしや)ると軍隊(ぐんたい)のコンテネンスが(たも)たれますまい。145どうして部下(ぶか)をコントロールする(こと)出来(でき)ませうか。146よくお(かんが)へなさいませ。147(わらは)(かり)にも将軍(しやうぐん)(さま)夫婦(ふうふ)にならうと言挙(ことあ)(いた)しました(うへ)将軍(しやうぐん)(さま)(たい)し、148十分(じふぶん)()注意(ちうい)申上(まをしあ)げる権能(けんのう)具備(ぐび)して()りますよ』
149鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、150賢明(けんめい)なるヒルナ(ひめ)諫言(かんげん)により、151いやもう鬼春別(おにはるわけ)152()()めた(やう)だ。153(なん)其方(そなた)悧巧(りかう)(をんな)だな』
154ヒルナ(ひめ)『カルナを貴方(あなた)如何(どう)してもお使(つか)ひなさるお(かんが)へですか』
155鬼春別(おにはるわけ)『さうだ。156(たの)まれた以上(いじやう)無下(むげ)(ことわ)(わけ)にも()くまい。157下女(げぢよ)になつと使(つか)つてやらうかな。158其方(そなた)腰元(こしもと)がなければ不便(ふべん)だらうからな』
159ヒルナ(ひめ)将軍(しやうぐん)(さま)160腰元(こしもと)なんか()りませぬ。161下女(げぢよ)仕事(しごと)(みな)(わらは)(いた)します。162(をんな)()つたら牝猫(めんねこ)一匹(いつぴき)でもお(そば)()きなさつたら(この)ヒルナが承知(しようち)(いた)しませぬぞや』
163鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、164(なん)嫉妬深(しつとぶか)(をんな)だな。165(をんな)嫉妬(しつと)大事(だいじ)()らすとやら。166チツトは心得(こころえ)たが()からうぞや。167嫉妬(しつと)(ほど)(をんな)(とく)(きず)つけるものはないからのう』
168ヒルナ(ひめ)嫉妬(しつと)のない(やう)夫婦(ふうふ)関係(くわんけい)ならば真正(しんせい)(あい)では(ござ)いませぬ。169嫉妬(しつと)せない(をんな)屹度(きつと)(ほか)(なに)かがあるのですよ。170三角(さんかく)生活(せいくわつ)(いとな)んでゐる不貞腐(ふてくさ)れのやる(こと)です。171嫉妬(しつと)恋愛(れんあい)神聖(しんせい)(あら)はすものです』
172鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、173(めん)174小手(こて)175(どう)176(つき)177手厳(てきび)しく打込(うちこ)まれては如何(いか)なる英雄(えいゆう)退却(たいきやく)せざるを()ないわ。178(なん)好男子(かうだんし)(うま)れて()ると()()めるものだな。179エヘヘヘヘ』
180カルナ(ひめ)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)181貴方(あなた)(なん)仰有(おつしや)いましても(わらは)はお(あと)(した)ひます。182何卒(どうぞ)(めかけ)でも(よろ)しいから使(つか)つて(くだ)さいませ』
183ヒルナ(ひめ)『これカルナさま、184(まへ)さま、185それ()鬼春別(おにはるわけ)(さま)にラブしてゐるならば主人(しゆじん)(わらは)貴女(あなた)(こひ)横取(よこど)りしたと()はれては片腹痛(かたはらいた)いから、186何卒(どうぞ)鬼春別(おにはるわけ)(さま)正妻(せいさい)になつて(くだ)さい。187(わらは)(むし)久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)正妻(せいさい)にして(いただ)きまする』
188両人(りやうにん)交互(たがひちがひ)(はら)(あは)せて両将軍(りやうしやうぐん)(あやつ)(うで)(すご)さ。189両将軍(りやうしやうぐん)(こひ)(とりこ)となり(をは)(まなこ)血走(ちばし)らしてナイスの争奪戦(さうだつせん)固唾(かたづ)()んでゐる。190久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)侍女(じぢよ)のカルナ(ひめ)(まで)肱鉄(ひぢてつ)()まされ、191(をとこ)をさげ自棄(やけ)気味(ぎみ)になつてゐた(ところ)へ、192ヒルナ(ひめ)久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)正妻(せいさい)にして(いただ)きませうと()つた言葉(ことば)に、193百万(ひやくまん)援軍(ゑんぐん)()(やう)強味(つよみ)(かん)じ、194(ただち)得意(とくい)(いろ)満面(まんめん)(みなぎ)らし、
195久米彦(くめひこ)『エツヘヘヘヘ、196ヒルナ姫殿(ひめどの)197拙者(せつしや)将軍(しやうぐん)一人(ひとり)198所望(しよまう)とならば()請求(せいきう)(おう)じませう。199(ひと)には()うて()よ、200(うま)には()つて()よと()(ことわざ)(ござ)れば、201鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(ごと)箒木(はうき)さまに()(まか)すよりも、202何程(なにほど)貴方(あなた)幸福(かうふく)かも()れませぬぞ』
203ヒルナ(ひめ)『はい、204有難(ありがた)(ござ)います。205さう(ねが)へれば(まこと)幸福(かうふく)(ござ)います。206マリド・ラブの真味(しんみ)は、207(たがひ)意気(いき)疎通(そつう)した間柄(あひだがら)でなくては、208完全(くわんぜん)()(こと)出来(でき)ませぬからね』
209 鬼春別(おにはるわけ)はヒルナ(ひめ)形勢(けいせい)(なん)となく(へん)になつたので(また)もや(かほ)(しか)()した。210カルナ(ひめ)故意(わざ)とに(おこ)つた(やう)(かほ)をして、
211カルナ(ひめ)『もし、212ヒルナ(さま)213貴女(あなた)主人(しゆじん)だと()つても(わらは)のラブを横領(わうりやう)する(こと)出来(でき)ますまい。214(わらは)久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)にあの(やう)(こと)(まを)しましたのは(けつ)して(しん)から()つたのぢや(ござ)いませぬ。215一寸(ちよつと)悋気(りんき)をして(すね)()たのですよ。216もし将軍(しやうぐん)(さま)217(わらは)貴方(あなた)先約(せんやく)(ござ)いますから、218何卒(どうぞ)ヒルナさまの(やう)(かた)相手(あひて)にならない(やう)にして(くだ)さいませ』
219 久米彦(くめひこ)二人(ふたり)(をんな)揶揄(からかは)れてゐるのを(こひ)逆上(のぼ)せた()からは(すこ)しも気付(きづ)かず、220得意(とくい)になつて、
221久米彦(くめひこ)『ヘツヘヘヘヘ、222アーア、223(こま)つた(こと)だ。224……此方(こちら)()てれば彼方(あちら)()たぬ、225彼方(あちら)()てれば此方(こちら)()たぬ、226両方(りやうはう)()つれば()()たぬ。227……好男子(かうだんし)()ふものは(つら)いものだなあ。228もし鬼春別(おにはるわけ)殿(どの)229粗末(そまつ)(なが)ら、230一旦(いつたん)約束(やくそく)覆行(りかう)し、231拙者(せつしや)(つま)とカルナをした(うへ)232(ふる)閣下(かくか)進上(しんじやう)しませうから霊相応(みたまさうおう)(よろこ)んでお()()され。233エヘヘヘヘ、234(これ)(まつた)上官(じやうくわん)(たい)する拙者(せつしや)懇切(こんせつ)(まを)すもの、235よもや不足(ふそく)(ござ)るまいな』
236 鬼春別(おにはるわけ)閻魔(えんま)煙草(たばこ)()()んだ(やう)(かほ)して、237巨眼(きよがん)(みひら)き、238身慄(みぶる)ひし(なが)ら、239(つるぎ)(つか)()をかけ、240(かほ)真赤(まつか)()めて殺気(さつき)(みなぎ)らしてゐる。
241ヒルナ(ひめ)久米彦(くめひこ)さま、242自惚(うぬぼれ)もいい加減(かげん)になさいませ。243貴方(あなた)腰元(こしもと)のカルナで結構(けつこう)ですよ、244(わらは)一寸(ちよつと)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)(さま)恋愛(れんあい)程度(ていど)(ため)(ため)斯様(かやう)(こと)(まを)しました。245(けつ)して心中(しんちう)より、246(たれ)貴方(あなた)(やう)なお(かた)秋波(しうは)(おく)りませうか。247生憎(あいにく)(さま)248チツと()面相(めんさう)()相談(さうだん)なさいませ。249ねえ鬼春別(おにはるわけ)(さま)250貴方(あなた)久米彦(くめひこ)(さま)とを(くら)ぶれば(つき)(すつぽん)251(くも)(どろ)(ぐらゐ)252(その)人格(じんかく)(ちが)つてゐますわね』
253 鬼春別(おにはるわけ)(たちま)(かほ)(ひも)()き、254ニコニコ(がほ)(かは)つて(しま)つた。255両将軍(りやうしやうぐん)面相(めんさう)二人(ふたり)(をんな)自由(じいう)自在(じざい)翻弄(ほんろう)されて(あき)(そら)(ごと)(たちま)(はれ)となり、256(たちま)時雨(しぐれ)となり、257その変転(へんてん)(すみや)かさ、258(あだか)走馬灯(そうまとう)()(やう)であつた。
259鬼春別(おにはるわけ)『おい、260ヒルナ(ひめ)261随分(ずいぶん)其方(そなた)(ひと)(わる)いぢやないか。262当時(たうじ)教育(けういく)()けた(をんな)到底(たうてい)一筋縄(ひとすぢなは)二筋縄(ふたすぢなは)ではおへないと()いてはゐたが、263(じつ)感心(かんしん)なものだな』
264ヒルナ(ひめ)『ホホホホホ、265今時(いまどき)(をんな)は、266こんな(こと)(よひ)(くち)(ござ)います。267(わらは)高竹寺(かうちくじ)女学校(ぢよがくかう)(おい)ても(もつと)品行(ひんかう)方正(はうせい)(うた)はれた淑女(しゆくぢよ)(ござ)いますよ。268(うそ)思召(おぼしめ)すならば学校(がくかう)()つて(わらは)のメモアルを調(しら)べて()(くだ)さいませ。269行状録(ぎやうじやうろく)には……品行(ひんかう)方正(はうせい)にして優美(いうび)なり、270柔順(じうじゆん)にして()(とも)(あい)し、271(ひと)(した)しみ、272智慧(ちゑ)晃々(くわうくわう)として日月(じつげつ)(ごと)(かがや)(わた)り、273()玲瓏(れいろう)(たま)(ごと)く、274瞳孔(どうこう)より一種(いつしゆ)(ひと)(あつ)するの(ひかり)(はな)ち、275(いろ)飽迄(あくまで)(しろ)く、276(みみ)尋常(じんじやう)に、277(はな)(かほ)中央(まんなか)(ただ)しく位置(ゐち)(たも)ち、278(くれなゐ)(くちびる)279瑪瑙(めなう)歯並(はなみ)280()(たか)からず(ひく)からず、281皮膚(ひふ)(やは)らかく肉体(にくたい)曲線美(きよくせんび)天下(てんか)にその()()ざるべし……とキツパリ(しる)してありますよ。282ホホホホホ』
283鬼春別(おにはるわけ)『そら、284さうだらう。285教育者(けういくしや)(えら)いものだな。286よく調(しら)べてゐるワイ。287いや、288もう(なに)弁解(べんかい)()らぬ、289百聞(ひやくぶん)一見(いつけん)()かずだ。290実物(じつぶつ)()以上(いじやう)(なん)にも文句(もんく)はない。291いざ(これ)より其方(そなた)将来(しやうらい)相談(さうだん)(いた)さう。292久米彦(くめひこ)殿(どの)293ここは拙者(せつしや)事務室(じむしつ)294どうか貴方(あなた)(しつ)へお(かへ)(くだ)さい』
295カルナ(ひめ)(もつと)(あい)する久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)296さア(かへ)りませう。297何程(なにほど)ヒルナ(さま)(わらは)主人(しゆじん)だつて、298容貌(きれう)()いといつても、299あまり(うらや)むには(およ)びませぬ。300本当(ほんたう)(こころ)(こころ)との夫婦(ふうふ)でなければ駄目(だめ)ですからね』
301としなだれかかる。302久米彦(くめひこ)は、
303久米彦(くめひこ)『ウン、304よし、305そんなら(かへ)らう』
306カルナ(ひめ)『さアおじや』
307(むつま)じげに()()いて(わが)事務室(じむしつ)(かへ)()く。308スパール、309エミシの二人(ふたり)逸早(いちはや)軍務(ぐんむ)監督(かんとく)()めに、310(この)悶錯(もんさく)一段落(いちだんらく)()げたのを()()でて()く。
311大正一二・二・一三 旧一一・一二・二八 於竜宮館 北村隆光録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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