霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 刺客(しかく)〔一三八二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第3篇 兵権執着 よみ:へいけんしゅうちゃく
章:第19章 第53巻 よみ:しかく 通し章番号:1382
口述日:1923(大正12)年02月14日(旧12月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ビクトリヤ王は、二女の働きによってバラモン軍から和睦を勝ち取り、また年来の懸念であった右守から兵権を返還させることになり、気が緩んでぐったりと寝に就いた。ハルナは右守の様子がただならなかったことを気遣い、父の左守に申し出て、王の隣室に宿直を勤めた。
ハルナが物思いにふけっていると、王の居間に向かって足音を忍ばせ進んでくる者がある。男はビクトリヤ王の寝台の傍らに来ると長刀を引き抜いた。ハルナは足音を忍ばせて男の背後に近寄り、綱を男の首にかけて引っ張りまわした。
男は抜身の刀を持ったまま、気絶して廊下を引きずられていく。刹帝利はこの物音に目を覚まし、刀の鞘だけが落ちているのを見て刺客が来たと悟った。槍を取って廊下に出ると、ハルナが気絶した曲者を綱にかけている。
二人が曲者の頭巾を取って顔を改めると、右守の家令シエールであった。二人は右守に反逆の意図があることを悟り、騒ぎ立てずに対応することとした。そしてシエールを縛り上げて押入れの中に入れて置いた。ハルナは引き続き王の居間を守っている。
ヒルナ姫とカルナ姫は、自分たちの意図をバラモン軍に悟られないよう、両将軍が自分たちの膝枕で寝入ってしまってもそのまま動かずにいた。二人も夜半にうとうとと夢路に入った頃、覆面頭巾の男が足音を忍ばせて入り来たり、久米彦将軍に切りつけようとした。
カルナ姫ははっと目をさまし、曲者の腕の急所を叩いた。曲者は大刀を落としたところ、姫は手早く曲者の手を後ろに廻し、細紐で縛り上げた。
カルナ姫は将軍たちを起こし、刺客を捕えたことを報告した。一同が顔を改めると、それはビク国の右守ベルツであった。カルナ姫は実の兄を捕縛することになった自分の因果をひそかに嘆いたが、国家のためと思い直した。
鬼春別と久米彦は、ビク国側の人間が刺客に来たことに怒って和睦を取り下げ兵を呼ぼうとした。ヒルナ姫は慌てて押しとどめ、右守はビク国の中でも刹帝利に刃向っていた逆臣であることを告げてなだめた。
カルナ姫も、たかだか刺客の一人くらいは軍隊を動かさずに、自分たちに始末させて欲しいと頼み込んだ。久米彦もカルナ姫の活躍で命を救われたこともあって、この申し出に承諾した。
ヒルナ姫とカルナ姫は、城の裏門にベルツを連れて行き、ベルツの短慮をたしなめた。カルナ姫は、ヒルナ姫にベルツの命乞いをした。ヒルナ姫は、どこか田舎にでも隠れて身を忍ぶように言い含め、路銀を与えてベルツを解放した。
ベルツが闇にまぎれて逃れると、二人は両将軍にベルツを亡き者にしたと報告してごまかした。そこへ刹帝利とハルナがやってきて、自分たちのところに右守ベルツの家令が刺客にやってきたことを報告した。
右守がビク国刹帝利にも刺客を送っていたことで将軍たちの疑いは晴れた。刹帝利は曲者を退けた悪魔祓いに二次会を開こうと提案し、鬼春別も賛成した。酒宴は再開して夜を明かし、翌日の昼まで十二分に歓を尽くすことになった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5319
愛善世界社版:227頁 八幡書店版:第9輯 587頁 修補版: 校定版:235頁 普及版:113頁 初版: ページ備考:
001 ビクトリア(わう)(てき)捕虜(ほりよ)となり、002生命(いのち)(ほど)覚束(おぼつか)なき破目(はめ)になつて、003非常(ひじやう)(こころ)(なや)ませてゐたが、004(おも)ひもよらぬ(たす)けに()つて、005(ふたた)(もと)(やかた)(かへ)り、006(かつ)ヒルナ(ひめ)無事(ぶじ)なる(かほ)()て、007(むね)()でおろす(さい)008年来(ねんらい)希望(きばう)たる兵馬(へいば)(けん)右守(うもり)より奉還(ほうくわん)させ、009(また)鬼春別(おにはるわけ)010久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)両女(りやうぢよ)(あやつ)()れば大丈夫(だいぢやうぶ)安心(あんしん)すると(とも)に、011()(ゆる)みグツタリとして、012(しん)()いた。013ハルナは右守司(うもりのかみ)様子(やうす)のただならざるを気遣(きづか)ひ、014(ちち)(ゆる)しを()けて今晩(こんばん)(とく)(わう)隣室(りんしつ)宿直(とのゐ)(つと)むることとなつた。
015 ハルナはカルナ(ひめ)(こと)(おも)()かべ……ああ(じつ)立派(りつぱ)女性(ぢよせい)だ。016ヒルナ(ひめ)(さま)(かれ)とがなかつたならば、017ビクの(くに)()ふも(おろ)か、018王家(わうけ)左守家(さもりけ)(たちま)破滅(はめつ)悲運(ひうん)(おちい)るとこだつた。019(いま)となつて(おも)へば、020カルナ(ひめ)自分(じぶん)がラブしたのは人事(じんじ)ではない、021(まつた)神様(かみさま)御摂理(ごせつり)だつたのだらうか。022ああ有難(ありがた)有難(ありがた)し……と暗祈黙祷(あんきもくたう)しつつあつた。023そこへ足音(あしおと)(しの)ばせて、024(わう)居間(ゐま)(むか)つて(すす)()(もの)がある。025ハルナは(みみ)をすませて様子(やうす)(かんが)へてゐると、026ボンヤリとした行灯(あんどう)(そば)(あら)はれた(くろ)(をとこ)(かげ)027行灯(あんどう)()長刀(ちやうたう)をスラリと()いて(やいば)打眺(うちなが)(なが)ら、028ニタツと(わら)つてゐる。029寝台(しんだい)(うへ)にはビクトリア(わう)(わが)()危急(ききふ)(せま)つたことも()らずに、030安々(やすやす)(ねむ)つてゐる。031ハルナはスツと足音(あしおと)(しの)ばせ、032(つな)(もつ)(をとこ)(うしろ)より(くび)(ひつ)かけて、033(つな)(はし)(かた)(ひつ)かけ、034トントントンと廊下(らうか)(はし)()した。035(あご)(ひつ)かけられた(をとこ)抜身(ぬきみ)()つたまま、036ウンともスンとも()はず、037廊下(らうか)(ひき)ずられて()く。
038 (わう)(この)物音(ものおと)()()まし、039よくよく()れば、040(かたな)(さや)()ちてゐる。041(こゑ)()てては一大事(いちだいじ)042何者(なにもの)かの刺客(しかく)()たに相違(さうゐ)あるまいと、043廊下(らうか)をみれば、044(くろ)(かげ)045(わう)矢庭(やには)長押(なげし)(やり)(ひつさ)げ、046廊下(らうか)(いつ)てみれば、047ハルナが一人(ひとり)(をとこ)(くび)引掛(ひつか)けて引摺(ひきず)りまはし、048(をとこ)気絶(きぜつ)してゐる様子(やうす)である。049(わう)(こゑ)(ひそ)めて、
050刹帝利(せつていり)(その)(はう)はハルナではないか、051何事(なにごと)ぢや』
052ハルナ『ハイ、053(あや)しき(もの)(まゐ)りまして、054(きみ)御寝室(ごしんしつ)(うかが)()りました(ゆゑ)055(うしろ)より(うかが)ひよつて、056(くび)(つな)をかけ、057ここ(まで)引摺(ひきず)つて(まゐ)りました』
058刹帝利(せつていり)『ヤ、059()かした()かした、060一寸(ちよつと)何者(なにもの)か、061此奴(こいつ)(かほ)調(しら)べて()よ』
062 ハルナは『ハイ』と(こた)へて、063(くび)をしつかり()めておき、064手燭(てしよく)(とも)して、065刺客(しかく)(おもて)()れば、066右守(うもり)家令(かれい)シエールであつた。067(わう)もハルナもハツと(おどろ)き、068少時(しばし)主従(しゆじゆう)(かほ)見合(みあは)せてゐた。
069ハルナ『刹帝利様(せつていりさま)070此奴(こいつ)右守(うもり)家令(かれい)(ござ)います。071(これ)から(さつ)しますれば、072右守(うもり)今日(こんにち)兵権奉還(へいけんほうくわん)(うらみ)(おも)ひ、073(なに)謀反(むほん)(たく)んでゐると()えまする。074(これ)(さわ)()てを(いた)せば(かへつ)(てき)術中(じゆつちう)(おちい)るかも()れませぬ。075ソツと、076シエールを、077仮令(たとへ)()(かへ)つても(うご)けないやうに手足(てあし)(しば)り、078(かく)しておきませう』
079刹帝利(せつていり)『ウン、080ア、081それが()からう。082(じつ)右守(うもり)といふ(やつ)は、083暴悪無道(ばうあくぶだう)曲者(くせもの)だのう』
084ハルナ『御意(ぎよい)(ござ)います。085王様(わうさま)十分(じふぶん)御注意(ごちゆうい)をなさいませ』
086()(なが)ら、087シエールを高手(たかて)小手(こて)にいましめ、088押入(おしいれ)(なか)()()んで素知(そし)らぬ(かほ)をなし一睡(いつすゐ)もせず、089刹帝利(せつていり)居間(ゐま)に、090ハルナは付添(つきそ)ひ、091(きび)しく(まも)つてゐる。
092 ヒルナ(ひめ)093カルナ(ひめ)は、094鬼春別(おにはるわけ)095久米彦(くめひこ)096スパール、097エミシ、098シヤム、099マルタの賓客(ひんきやく)他愛(たあい)もなく()(つぶ)れてゐるので、100(せき)(はづ)さうかと一度(いちど)(かんが)へたが、101注意深(ちういぶか)両人(りやうにん)のこととて……イヤイヤ()()(いま)一大事(いちだいじ)場合(ばあひ)だ。102刹帝利様(せつていりさま)()うて、103一度(いちど)事情(じじやう)(くは)しく申上(まをしあ)げたいけれど、104六人(ろくにん)(なか)一人(ひとり)二人(ふたり)105熟睡(じゆくすゐ)(よそほ)ひ、106もしや様子(やうす)(かんが)へてる(もの)があれば大変(たいへん)だ。107ああ()ひたいなア……と(こころ)(しき)りに(いら)(ども)108大事(だいじ)をふんで、109鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)膝枕(ひざまくら)させ、110自分(じぶん)(なに)()はぬ(かほ)にて、111()()れてもジツと(すわ)つてゐた。112(また)カルナ(ひめ)一時(ひととき)(はや)(こひ)しき(をつと)のハルナに(こと)顛末(てんまつ)報告(はうこく)したいものだ、113そして一言(ひとこと)()めて(いただ)きたいものと(おも)(ども)114これ(また)115六人(ろくにん)(うち)一人(ひとり)二人(ふたり)様子(やうす)(かんが)へてゐるものがあらうも()れぬと大事(だいじ)をふんで、116ヒルナ(ひめ)同様(どうやう)久米彦(くめひこ)膝枕(ひざまくら)させ、117時々(ときどき)ヒルナ(ひめ)()(もつ)て、118(はなし)をしてゐた。119(しか)(なが)(この)六人(ろくにん)(いづ)れも真剣(しんけん)()(つぶ)れ、120前後(ぜんご)()らずになつてゐたのである。
121 (よる)(あらし)(やかた)(そと)(おと)()てて()いてゐる。122(かぜ)(あふ)られて雨戸(あまど)はガタガタガタガタと(ふる)(ごゑ)()してゐる。123二女(にぢよ)はウトリ ウトリと夢路(ゆめぢ)()つた。124そこへ覆面頭巾(ふくめんづきん)大男(おほをとこ)大刀(だいたう)()()足音(あしおと)(しの)ばせて()(きた)り、125()久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(むか)つて、126一刀(いつたう)(もと)()りつけむとした。127(この)(とき)ハツと()()まし、128矢庭(やには)にカルナ(ひめ)曲者(くせもの)(かひな)急所(きふしよ)(たた)いた。129曲者(くせもの)はバラリと大刀(だいたう)(おと)した、130(ひめ)手早(てばや)後手(うしろで)(まは)し、131細紐(ほそひも)(ふところ)より()して(しば)()げ、132グツと(あたま)(おさ)へて(うご)かせず、
133カルナ(ひめ)将軍様(しやうぐんさま)134ヒルナ(さま)135皆様(みなさま)136()きて(くだ)さいませ、137刺客(しかく)(まゐ)りました』
138()ばはる(こゑ)(いづ)れも()()まし、
139(なん)(なん)だ』
140とカルナの(そば)()つて()る。141カルナは、
142カルナ(ひめ)『モシ将軍様(しやうぐんさま)143曲者(くせもの)(まゐ)りました。144貴方(あなた)(がた)()(つもり)でやつて()ましたので、145(わらは)(いま)ふん(じば)つた(ところ)(ござ)います』
146久米彦(くめひこ)『ヤ、147それはお手柄(てがら)手柄(てがら)148(それがし)(あぶ)ない(ところ)(ござ)つた。149して曲者(くせもの)何者(なにもの)(ござ)るかな』
150カルナ(ひめ)何者(なにもの)だか黒頭巾(くろづきん)(かぶ)つて()りますので(わか)りませぬ、151何卒(どうぞ)灯火(あかり)此処(ここ)()つて()(くだ)さいませ』
152 ヒルナ(ひめ)行灯(あんどう)()げて(ちか)づき(きた)り、153黒頭巾(くろづきん)をぬがせば、154豈計(あにはか)らむや、155右守(うもり)のベルツであつた。156ベルツは(まへ)にカルナに(かひな)短刀(たんたう)にて()され、157()れが(ため)(おも)(やう)()(うご)かず、158()もなくカルナに(しば)られたのである。159ヒルナもカルナもハツと(おどろ)いたが、160素知(そし)らぬ(かほ)にて、
161『アレまあ』
162(そら)とぼけてゐる。163カルナは(こころ)(うち)にて……(ひと)もあらうに、164自分(じぶん)(あに)捕縛(ほばく)せねばならぬとは、165(なん)とした()因果(いんぐわ)だらう。166(しか)(なが)御国(みくに)(ため)167王家(わうけ)(ため)ならば、168仮令(たとへ)(あに)だとて見逃(みのが)(わけ)()かぬ……と(すぐ)(こころ)取直(とりなほ)した。
169鬼春別(おにはるわけ)大方(おほかた)刹帝利(せつていり)(まは)(もの)(ござ)らう。170(いのち)(たす)けて(もら)(なが)ら、171酒宴(しゆえん)(こと)よせ、172吾々(われわれ)油断(ゆだん)(いた)させ、173暗殺(あんさつ)(いた)さうなどとは、174(もつ)ての(ほか)不都合千万(ふつがふせんばん)175ヨーシツ、176これから拙者(せつしや)刹帝利(せつていり)(まを)すに(およ)ばず、177何奴(どいつ)此奴(こいつ)一人(ひとり)(のこ)らず、178炮烙(はうらく)(けい)(しよ)してくれむ。179や、180スパール、181エミシ、182百人(ひやくにん)(ばか)りの兵士(つはもの)を、183直様(すぐさま)引率(ひきつ)(きた)れ』
184 ヒルナ(ひめ)(あわ)てて押止(おしとど)め、
185ヒルナ(ひめ)『モシ将軍様(しやうぐんさま)186一寸(ちよつと)()(くだ)さいまし、187(けつ)してこれは刹帝利様(せつていりさま)(はかりごと)(ござ)いませぬ。188(この)(をとこ)刹帝利(せつていり)(つか)ふる右守司(うもりのかみ)といふ悪逆無道(あくぎやくぶだう)曲者(くせもの)(ござ)います。189貴方様(あなたさま)御威勢(ごゐせい)(ねた)み、190自分(じぶん)兵馬(へいば)(けん)(にぎ)らむと(くはだ)て、191夜中(やちう)(しの)()んだものとみえます。192何卒(どうぞ)少時(しばし)軍隊(ぐんたい)引入(ひきい)れることはお()(くだ)さいませ』
193久米彦(くめひこ)鬼春別(おにはるわけ)殿(どの)194容易(ようい)ならざる事変(じへん)(ござ)る。195(おほ)せの(ごと)く、196(すくな)くとも一百(いつぴやく)(ばか)りの兵士(へいし)(この)()(ひき)よせた(はう)御互(おたがひ)安全(あんぜん)(よろ)しからう』
197カルナ(ひめ)(わが)(つま)198久米彦(くめひこ)(さま)199()づお()ちなさいませ。200(おと)名高(なだか)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)将軍様(しやうぐんさま)201かかる腰抜男(こしぬけをとこ)一人(ひとり)(ぐらゐ)に、202(へい)(もち)ふるなどとは、203将軍様(しやうぐんさま)沽券(こけん)(かかは)ります。204何卒(どうぞ)(わらは)(あい)(たま)ふならば、205左様(さやう)なことをなさらずに、206此処(ここ)処置(しよち)をして(くだ)さいませ』
207 久米彦(くめひこ)最愛(さいあい)のカルナに(とど)められ、208(かつ)(また)カルナに(あやふ)(いのち)(すく)はれたのだから、209(これ)(いな)勇気(ゆうき)はなかつた。
210久米彦(くめひこ)『ウン、211ヨシヨシ、212(しか)らば其方(そなた)一任(いちにん)する。213鬼春別(おにはるわけ)殿(どの)214てもさても弱虫(よわむし)(ども)(ござ)るな。215拙者(せつしや)(つま)216カルナ(ひめ)細腕(ほそうで)(もろ)くも(とら)はれたる(ごと)蠅虫(はへむし)217最早(もはや)御安心(ごあんしん)なさいませ』
218カルナ(ひめ)『モシ両将軍様(りやうしやうぐんさま)219(この)(をとこ)如何(いかが)なさいますか』
220鬼春別(おにはるわけ)『ウーン、221久米彦(くめひこ)奥方(おくがた)にお(あづ)(いた)す。222(しか)(なが)(けつ)して秋波(しうは)(おく)つちやならないぞ』
223カルナ(ひめ)『ホホホホホ、224(なに)御冗談(ごじようだん)仰有(おつしや)います。225ササ曲者(くせもの)226こちらへ(きた)れ……ヒルナさま、227貴女(あなた)(わらは)此奴(こいつ)(くら)(なか)突込(つつこ)んでやりませうね』
228ヒルナ(ひめ)左様(さやう)(ござ)いますな。229(につく)(やつ)(ども)充分(じゆうぶん)()らしめてやりませう。230鬼春別(おにはるわけ)将軍様(しやうぐんさま)231少時(しばし)(ひま)(くだ)さいませ、232(すぐ)(かへ)つて(まゐ)ります。233(この)曲者(くせもの)を、234妾等(わらはら)紅裙隊(こうくんたい)(おも)存分(ぞんぶん)(くるし)めねばなりませぬ、235(この)(やう)(もの)()かしておけば、236何時(いつ)(また)貴方様(あなたさま)(くび)(ねら)ふか()れませぬからね』
237鬼春別(おにはるわけ)『ウン、238ヨシヨシ、239突殺(つきころ)さうと、240嬲殺(なぶりごろ)しにしようと、241()いて()はうと、242()()はうとお(まへ)勝手(かつて)だ。243()はば紅裙隊(こうくんたい)戦利品(せんりひん)だ。244(はや)何処(どつか)()れて()つて片付(かたづ)けたがよからう』
245ヒルナ(ひめ)左様(さやう)なれば、246(この)曲者(くせもの)自由(じいう)にさして(いただ)きます。247カルナさま、248本当(ほんたう)愉快(ゆくわい)ですね。249身体(からだ)一面(いちめん)空地(あきち)なく短刀(たんたう)でついてついて()きまくつてやりませうかね』
250カルナ(ひめ)『さうですね、251面白(おもしろ)いでせう。252(しか)(をとこ)さまが()てゐられると(はづか)しいワ。253久米彦(くめひこ)将軍様(しやうぐんさま)残酷(ざんこく)(をんな)だと愛想(あいさう)つかされるのが(いや)ですもの……』
254久米彦(くめひこ)『タカが腰抜武者(こしぬけむしや)一人(ひとり)255拙者(せつしや)眼中(がんちう)にない、256(まへ)()ざましに、257自由自在(じいうじざい)にさいなんで()るがよからうよ』
258 二人(ふたり)都合(つがふ)よく両将軍(りやうしやうぐん)誤魔化(ごまくわ)し、259(しろ)裏門(うらもん)右守(うもり)()()き、260(こゑ)(ひそ)めて、
261ヒルナ(ひめ)貴方(あなた)はベルツさまだ(ござ)いませぬか。262(なん)といふさもしい(こころ)をお()しなさつたのですか』
263ベルツ『ウン、264面目(めんぼく)次第(しだい)もないことだ。265どうか(ゆる)してくれ、266……いやお(ひめ)(さま)267(ゆる)して(くだ)さいませ』
268カルナ(ひめ)貴方(あなた)兄上(あにうへ)(ござ)いませぬか、269(わらは)()らなかつたなれば、270貴方(あなた)(いのち)到底(たうてい)(たす)かりませぬぞえ。271ああして六人(ろくにん)(をとこ)()たマネをしてゐるのは、272(けつ)して本当(ほんたう)()てゐるのぢや(ござ)いませぬ。273()うた真似(まね)をして、274スツカリ様子(やうす)(かんが)へてゐるのですよ。275貴方(あなた)(はや)改心(かいしん)して(くだ)さらぬと、276右守家(うもりけ)はどうなるか()れませぬよ。277(はや)兵馬(へいば)(けん)刹帝利様(せつていりさま)奉還(ほうくわん)し、278(まこと)(あら)はしなさいませ』
279ベルツ『(じつ)(ところ)は、280スツカリ奉還(ほうくわん)して(しま)つたのだ。281(しか)(なが)ら、282それが残念(ざんねん)さに、283刺客(しかく)となつて()()んだのだ』
284カルナ(ひめ)(ひめ)(さま)285()うで(ござ)いませう。286(たす)けてやる(わけ)には()きますまいかな』
287ヒルナ(ひめ)『コレ右守(うもり)さま、288サ、289(この)裏門(うらもん)から(おち)のびなさいませ。290貴方(あなた)陰謀(いんぼう)露見(ろけん)した(うへ)到底(たうてい)(いのち)はありませぬ。291(これ)路銀(ろぎん)にして(やみ)(まぎ)れて、292田舎(いなか)(すみ)へでも()をお(しの)びなさいませ』
293(ふところ)から路銀(ろぎん)()してベルツに(わた)した。
294 ベルツは幾度(いくど)()(いただ)き、295感謝(かんしや)(なみだ)(とも)裏門(うらもん)より何処(いづく)ともなく()ちのびて(しま)つた。296二人(ふたり)(をんな)(やうや)くにして(もと)座席(ざせき)(かへ)つて()た。
297ヒルナ(ひめ)将軍様(しやうぐんさま)298(なが)らくお()たせ(まを)しました。299随分(ずいぶん)(ほね)()れましたよ。300(なん)()つても(をんな)のチヨロイ(うで)で、301(ところ)(かま)はず()りさいなんだのですもの、302(わたし)もあんな(いや)らしいことはゾツと(いた)しますワ』
303鬼春別(おにはるわけ)『そらさうだらう、304平和(へいわ)女神様(めがみさま)が、305(ひと)(ころ)すのだもの』
306ヒルナ(ひめ)『イエイエ(わたし)はホンの(かみ)()(だけ)()りそめてやりました。307(あと)はカルナさまがスツカリやつて(しま)つたのです。308本当(ほんたう)にカルナさまは女丈夫(ぢよぢやうぶ)ですワ』
309久米彦(くめひこ)『アハハハハ、310流石(さすが)はカルナだ。311曲者(くせもの)引捉(ひつとら)へたのもカルナ、312制敗(せいばい)したのもカルナだ。313ヘヘヘヘ、314久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)()()たりと()ふべしだ』
315得意(とくい)になる。
316 刹帝利(せつていり)はハルナ、317左守(さもり)(ともな)ひ、318(この)()(あら)はれ(きた)り、319一同(いちどう)(まへ)()をついて、
320刹帝利(せつていり)皆様(みなさま)321(わたし)居間(ゐま)には大変(たいへん)なことが出来(でき)まして、322(かげ)により(いのち)だけは(たす)かりました』
323鬼春別(おにはるわけ)何事(なにごと)出来(しゆつたい)(いた)しましたかな』
324刹帝利(せつていり)『ハイ、325つい只今(ただいま)のこと、326覆面頭巾(ふくめんづきん)黒装束(くろしやうぞく)をした(をとこ)が、327拙者(せつしや)寝息(ねいき)(うかが)ひ、328大刀(だいたう)(ひつさ)げ、329アワヤ(うち)おろさむとする(とき)しも、330宿直(とのゐ)(つと)めてる(この)ハルナがツと(うしろ)から(つな)をかけて曲者(くせもの)()(たふ)し、331(しば)りつけ、332(いま)押入(おしいれ)(なか)突込(つつこ)んでおいたとこで(ござ)います。333(じつ)物騒(ぶつそう)千万(せんばん)なことで(ござ)います』
334 カルナは、335ハルナが功名(こうみやう)手柄(てがら)をしたといふことを()いて(なん)となく(ほこ)りを(かん)じた。
336鬼春別(おにはるわけ)(その)曲者(くせもの)何者(なにもの)(ござ)るかな』
337刹帝利(せつていり)『ハイ、338(じつ)にお(はづか)しいこと(なが)ら、339右守(うもり)家令(かれい)シエールといふ悪人(あくにん)(ござ)います』
340鬼春別(おにはるわけ)成程(なるほど)341拙者(せつしや)居間(ゐま)へもたつた(いま)342右守(うもり)のベルツといふ(やつ)343(しの)()り、344暗殺(あんさつ)せむと(いた)した(ところ)345(この)カルナの(うで)取押(とりおさ)へられ、346高手(たかて)小手(こて)にいましめられ、347(いま)や、348(この)二人(ふたり)のナイスに(うらみ)(やいば)(くら)つて、349寂滅(じやくめつ)(いた)した(ところ)(ござ)る。350アハハハハ』
351刹帝利(せつていり)(なに)352右守(うもり)が、353左様(さやう)なことを(いた)しましたか、354(じつ)無礼(ぶれい)(やつ)(ござ)います。355(しか)(なが)悪人(あくにん)貴方方(あなたがた)(ため)(ほろ)び、356(この)(やう)(うれ)しいことは(ござ)いませぬ。357サ、358(これ)から悪魔払(あくまばらひ)に、359一度(いちど)二次会(にじくわい)でも(ひら)きませう』
360鬼春別(おにはるわけ)『ヤそれは(いた)()る。361アア(しか)(なが)ら、362かやうな危険(きけん)(のが)れたのだから、363遠慮(ゑんりよ)なく(いただ)きませう。364そして(その)シエールといふ曲者(くせもの)(さかな)(いた)し、365一杯(いつぱい)(いただ)けば尚々(なほなほ)(めう)(ござ)らう。366アハハハハ』
367 かくして(ふたたび)酒宴(しゆえん)(うつ)り、368(その)()(あか)し、369翌日(よくじつ)(ひる)(なな)(どき)(まで)おつ(つづ)けに(うた)(うた)()(くる)十二分(じふにぶん)(くわん)(つく)すこととなつた。
370大正一二・二・一四 旧一一・一二・二九 於竜宮館 松村真澄録)
   
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