霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二二章 天祐(てんいう)〔一三八五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第4篇 神愛遍満 よみ:しんあいへんまん
章:第22章 第53巻 よみ:てんゆう 通し章番号:1385
口述日:1923(大正12)年02月14日(旧12月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村降光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
譜代の部下一千、徴発した農民二千からなるベルツ軍三千はビクトリヤ城を取り囲んで攻城戦が始まった。
総指揮官のハルナは城内を駆け巡って指揮をしながら固く守り、対陣はほぼ一か月に及んだ。ベルツの陣営は長引く戦に規律は乱れ、逃げ去る者も出てきてほぼ一千五百ほどに減じた。
一方鬼春別と久米彦の軍ははるかにビクトリヤの都を離れた。両将軍は猪倉山の岩窟に立て籠もって一王国を建設しようと謀っていた。猪倉山に峰続きの難所・シメジ峠まで来て将軍たちは安心し、登山の用意をして下馬すると、酒を飲んで酩酊した。
ハルナ姫とカルナ姫は、行き先が猪倉山と聞いて、実際は両将軍が治国別を恐れて遁走したのではないかと非難した。そして、どうしても自分たちは足が痛いので、騎馬でなくてはこの先一歩も進めないと駄々をこねた。
両将軍は仕方なく、山道を行けるところまで轡を取って先導しようと、二人を馬に乗せた。とたんに二人は馬首を反対に向けて鞭を当て、一目散に逃げだした。両将軍は、二人を捕えるように下知したが、バラモン軍は猪倉山に登山するためにみな下馬して乗馬用の靴を脱いでしまっていた。
バラモン軍がぐずぐすしているうちに、三五教の杢助に扮した摩利支天が、幾百ともしれない獅子を引き連れて、軍隊の中を縦横無尽に駆け回った。バラモン軍卒たちは逃げ回り、腰を抜かし、馬たちは獅子の声に驚いて逃げ散ってしまった。
摩利支天はバラモン軍を威喝すると、獅子たちを引き連れ、ハルナ姫とカルナ姫の後を追って行ってしまった。
さて、ベルツとシエールは軍規の乱れや脱退に業を煮やし、一戦して士気を鼓舞しようと覚悟を決め、獅子奮迅の勢いで大門と裏門を攻め立てた。さしもの堅固な城門もついに打ち破り、ベルツ軍は城内に乱れ入った。
ハルナは八百の手兵を指揮して防戦したが、ベルツ軍優勢を聞いて逃げていた兵士たちも戻ってきておいおいその数を増していった。そのためハルナは捕虜となり、刹帝利をはじめ重臣たちの身辺も危うくなってきた。
すると表門に宣伝歌の声が聞こえてきた。これは、治国別が松彦、竜公、万公ら部下を率いて救援にやってきたのであった。宣伝使たちの言霊を聞くとベルツはにわかにふるえだし、駒にまたがって裏門から逃げ出してしまった。
シエールは庭石につまづいて倒れ、悲鳴を上げて助けを求めた。ベルツ軍は怖気づいてシエールを助けもせず土足のまま踏み越え、先を争って大将のベルツを追って逃げ出した。
西へ逃げて行くベルツ軍の正面から、ヒルナ姫、カルナ姫の駒が戻ってやってくる。続いて摩利支天の率いる数百の獅子がその後ろからやってきて、百雷のごとく唸り声を上げた。
ベルツは驚いて馬上から転落し、路傍にのびてしまった。その他の軍卒も身体すくんで大地にかぶりつき震えおののいている。
ヒルナ姫はベルツを目ざとく見つけると馬の背中にくくりつけ、自分は敵が乗り捨てた馬に飛び乗り、カルナ姫と共にビクトリヤ王城を目指して駆けて行く。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5322
愛善世界社版:269頁 八幡書店版:第9輯 603頁 修補版: 校定版:277頁 普及版:133頁 初版: ページ備考:
001 ハルナは刹帝利(せつていり)より全軍(ぜんぐん)総指揮権(そうしきけん)委任(ゐにん)され八百(はつぴやく)兵士(へいし)城内(じやうない)(あつ)各門戸(かくもんこ)(かた)(まも)らしめ武備(ぶび)十分(じふぶん)(ととの)へて(てき)襲来(しふらい)()つてゐた。002ベルツ総指揮(そうしき)のもとに、003シエール一隊(いつたい)指揮(しき)元帥旗(げんすゐき)初夏(しよか)(かぜ)(なび)かせ(なが)ら、004(とき)(つく)つて(しろ)東西南北(とうざいなんぼく)より驀地(まつしぐら)()(きた)る。005(しか)(なが)今度(こんど)はバラモン(ぐん)(ごと)民家(みんか)()(はな)(やう)(こと)はない。006一千(いつせん)騎士(きし)(はじ)(にはか)づくりの二千(にせん)農兵(のうへい)各自(てんで)柄物(えもの)(たづさ)へ、007悪魔(あくま)牙城(がじやう)(ほろ)ぼし国民(こくみん)塗炭(とたん)()(すく)ふは(いま)(この)(とき)とベルツの侫言(ねいげん)(あやま)られ、008農業(のうげふ)をそつち()けにして(せま)(きた)(その)(いきほひ)009破竹(はちく)(ごと)くであつた。010ベルツは()騎馬(きば)にて表門(おもてもん)(むか)大音声(だいおんじやう)()ばはつて()ふ、
011ベルツ『民軍(みんぐん)総大将(そうだいしやう)ベルツ将軍(しやうぐん)012五万(ごまん)(へい)(ひき)ゐて(すす)(きた)れり。013如何(いか)刹帝利(せつていり)権威(けんゐ)(もつ)てするも、014よもやこれには(てき)すまじ。015(すみやか)(もん)(ひら)いて降服(かうふく)するか、016さもなくば(この)(しろ)四方(しはう)八方(はつぱう)より味方(みかた)軍勢(ぐんぜい)をもつて十重(とへ)二十重(はたへ)(かこ)みあれば、017(またた)(うち)粉砕(ふんさい)するは必定(ひつぢやう)(なり)018返答(へんたふ)(うけたま)はらん』
019(よば)はつた。020(しか)城内(じやうない)衛兵(ゑいへい)(しん)として一人(ひとり)(こた)ふるものもなく、021()らば()らむと手具脛(てぐすね)()いて(いき)()らして()つてゐる。022流石(さすが)のベルツも城門(じやうもん)(かた)容易(ようい)(すす)()れず、023(また)あまりの(てき)(しづ)けさに如何(いか)なる計略(けいりやく)のあるやも(はか)()られずと(やや)躊躇(ちうちよ)(いろ)(あら)はし、024()(かく)(しろ)周囲(しうゐ)(かこ)持久戦(ぢきうせん)をなさば(たちま)城内(じやうない)兵糧(ひやうらう)つき白旗(はくき)(かか)げて降服(かうふく)せむ。025(しか)らば味方(みかた)一兵卒(いつぺいそつ)(そん)せずして大勝利(だいしようり)()べしと、026(むし)のよい(かんが)へを(おこ)し、027時々(ときどき)『ワーイ ワーイ』と喊声(かんせい)(つく)つて城内(じやうない)守兵(しゆへい)威喝(ゐかつ)させ(なが)ら、028持久戦(ぢきうせん)をとる(こと)となつた。029(また)裏門(うらもん)より(むか)ひしシエールは俄将軍(にはかしやうぐん)となつた(うれ)しさ、030(わが)(ちから)(あら)はすは(いま)(この)(とき)()はぬばかりに裏門(うらもん)打叩(うちたた)(すす)()らむとする(とき)しも、031(あめ)(ごと)()(きた)()辟易(へきえき)して(とほ)(のが)一丁(いつちやう)ばかりの間隙(かんげき)(へだ)てて遠巻(とほまき)()いて()た。032()篝火(かがりび)(ひかり)033晃々(くわうくわう)()(あが)城内(じやうない)より()れば()()はれぬ美観(びくわん)であつた。034総指揮官(そうしきくわん)のハルナは城内(じやうない)彼方此方(あちらこちら)()(めぐ)指揮(しき)をなしつつ(いづ)れも櫓大鼓(やぐらだいこ)()(まで)(たたか)ふべからずと厳命(げんめい)し、035八百(はつぴやく)猛卒(まつそつ)(いき)をこらして(をさ)まりきつてゐた。036四方(しはう)(かこ)みし三千(さんぜん)敵軍(てきぐん)一丁(いつちやう)(ばか)間隔(かんかく)(たも)ち、037()()せようともせず対陣(たいぢん)(ほとん)一ケ月(いつかげつ)(およ)んだ。038(あさ)から(ばん)まで(よう)もなきに(しろ)(なが)めて命令(めいれい)(くだ)るを()つてゐる(くらゐ)039(くる)しいものはない。040(なか)にはそろそろ喧嘩(けんくわ)でも(はじ)めて無聊(ぶれう)(なぐさ)めむと角力(すまう)をとる(やつ)041(さけ)()うて鉄拳(てつけん)(ふる)(やつ)042陣中(ぢんちう)(やうや)規律(きりつ)(みだ)れて、043(なか)にはソツと夜陰(やいん)(じやう)(やみ)(まぎ)れて()()くものさへ出来(でき)()た。044(まへ)()せた三千(さんぜん)(へい)滞陣(たいぢん)一ケ月(いつかげつ)(うち)(その)大半(たいはん)(げん)じ、045(いま)(やく)一千五百(いつせんごひやく)手兵(しゆへい)となつた。046城内(じやうない)にては刹帝利(せつていり)047左守(さもり)048右守司(うもりのかみ)049タルマン()高殿(たかどの)(のぼ)(てき)陣形(ぢんけい)見下(みおろ)(あるひ)(かみ)(ねん)(あるひ)(さけ)()(かわ)援兵(ゑんぺい)(きた)るを()つてゐる。050(はなし)(かは)つて鬼春別(おにはるわけ)051久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)()きずられ(うま)(またが)(とほ)くビクトリアの(みやこ)立去(たちさ)つたるヒルナ(ひめ)052カルナ(ひめ)将軍(しやうぐん)(とも)にシメジ(たうげ)(ふもと)()いた。053(この)(あひだ)距離(きより)(ほとん)五十里(ごじふり)(およ)んでゐる。054(この)シメジ(たうげ)猪倉山(ゐのくらやま)峰続(みねつづ)きにて(もつと)難所(なんしよ)である。055到底(たうてい)騎馬(きば)にて(かよ)(こと)出来(でき)ない。056両将軍(りやうしやうぐん)真先(まつさき)にここ(まで)()げのび青草(あをくさ)(うへ)胡床(あぐら)をかき、057「ここ(まで)()げて()たなら、058()一安心(ひとあんしん)」とヒルナ、059カルナの二人(ふたり)美人(びじん)(まへ)(はべ)らせ(たづさ)()つたる(ひさご)(さけ)をチビリチビリと(をし)さうに舌嘗(したな)めずりして()(なが)(あと)よりおひおひ()()味方(みかた)全軍(ぜんぐん)をここに(あつ)めて隊伍(たいご)(ととの)へ、060(ふたた)猪倉山(ゐのくらやま)岩窟(がんくつ)立籠(たてこも)らむとの協議(けふぎ)()らした。061もとより黄金山(わうごんざん)()(のぼ)勇気(ゆうき)(すこ)しもない。062(しか)(なが)士気(しき)沮喪(そさう)せしむる(こと)(おそ)れて、063黄金山(わうごんざん)征服(せいふく)標榜(へうばう)してゐたのである。064適当(てきたう)場所(ばしよ)あれば全軍(ぜんぐん)(ひき)ゐ、065小国(せうごく)併呑(へいどん)猪倉山(ゐのくらやま)城砦(じやうさい)(かま)へて一大王国(いちだいわうこく)建設(けんせつ)せむとの(たく)みであつた。066生命(いのち)からがら、067()げて()たので両将軍(りやうしやうぐん)非常(ひじやう)空腹(くうふく)になつてゐた。068そこへ矢庭(やには)(さけ)をあほつた(こと)とて(さけ)(りやう)()して非常(ひじやう)酩酊(めいてい)をし()した。
069鬼春別(おにはるわけ)『ヒルナの女王(ぢよわう)さま、070よくまア途中(とちう)落馬(らくば)もせず()いて()ましたね、071手柄(てがら)手柄(てがら)072軍人(ぐんじん)(つま)たるものは、073これ(くらゐ)(こと)出来(でき)なくては駄目(だめ)だ。074(まへ)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)奥様(おくさま)として十分(じふぶん)資格(しかく)(そな)はつてゐるよ』
075ヒルナ(ひめ)『ホホホホホ、076大変(たいへん)()(くだ)さいますこと、077(わらは)(はじ)めて(うま)(せな)()つたものですから、078(もも)(あた)りが(いた)くなり、079(しり)()()けまして到底(たうてい)(この)(うへ)(うご)(こと)出来(でき)ませぬ。080アイタタタタ』
081故意(わざ)とに(かほ)(しか)める。
082鬼春別(おにはるわけ)『あ、083これからは(うま)()(こと)出来(でき)ない。084ここを三里(さんり)ばかり(うま)(くつわ)をとつて急坂(きふはん)(のぼ)り、085猪倉山(ゐのくらやま)()つて(しばら)滞陣(たいぢん)するのだ。086もう一足(ひとあし)だから……こんな(ところ)屁古垂(へこた)れちや(こま)るよ、087(なん)()つても将軍(しやうぐん)奥様(おくさま)だからな』
088ヒルナ(ひめ)『だと()つて、089もう一足(ひとあし)(ある)けないのだもの。090カルナさま、091貴女(あなた)如何(いかが)(ござ)いますか』
092カルナ(ひめ)(わらは)(もも)()れお(いど)()け、093(いた)くて(たま)りませぬわ。094もう(この)(うへ)一足(ひとあし)だつて(うご)けませぬわね』
095久米彦(くめひこ)斯様(かやう)(ところ)弱音(よわね)()いて(もら)つちや(こま)るぢやないか。096猪倉山(ゐのくらやま)()けば、097もはや金城鉄壁(きんじやうてつぺき)(おな)じだ。098こんな(ところ)にマゴマゴして()れば三五教(あななひけう)治国別(はるくにわけ)に……いやいや、099ウーン』
100()きつまる。
101カルナ(ひめ)『もし将軍様(しやうぐんさま)102三五教(あななひけう)治国別(はるくにわけ)()はれるのが(こは)さに、103ここ(まで)()げて()たのですか。104貴方(あなた)(これ)からエルサレムの(みや)襲撃(しふげき)し、105黄金山(わうごんざん)占領(せんりやう)するのだ、106仰有(おつしや)つたぢやありませぬか。107一時(いちじ)(はや)()かなければ時機(じき)がおくれては大変(たいへん)だと両将軍様(りやうしやうぐんさま)とも(おほ)せになつたでせう、108何故(なぜ)猪倉山(ゐのくらやま)(なぞ)滞陣(たいぢん)をなさるのです。109(わらは)は、110それがチツとも()()ちませぬわ』
111久米彦(くめひこ)『ウーン、112エー、113(すべ)兵法(へいはふ)には千変万化(せんぺんばんくわ)秘術(ひじゆつ)があるものだ。114(とき)場合(ばあひ)によつては軍略上(ぐんりやくじやう)115如何(いか)なる(こと)(いた)すかも()れない。116マアマア(だま)つて吾々(われわれ)のお手際(てぎは)()てゐるが()いわ』
117カルナ(ひめ)『ヘー、118(めう)ですな』
119ヒルナ(ひめ)『もし鬼春別(おにはるわけ)(さま)120本当(ほんたう)(あし)(いた)くて仕方(しかた)がありませぬの。121如何(どう)(いた)しませうかな』
122鬼春別(おにはるわけ)拙者(せつしや)()()でてやつたら屹度(きつと)(なほ)るよ』
123ヒルナ(ひめ)()()けたお(いど)(もも)を、124そんな()()えた(かた)()()でられちや(たま)りませぬわ、125何卒(どうぞ)それ()けは御免(ごめん)(くだ)さいませ』
126鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、127いきなり肱鉄(ひぢてつ)()はされたな。128(なん)(をんな)()ふものは(とく)なものだな』
129ヒルナ(ひめ)『そら、130さうですとも。131(をんな)なればこそ、132将軍様(しやうぐんさま)(ひげ)むしつたり頬辺(ほほべた)(たた)いたり(はな)(ひね)つても(よろこ)んでゐらつしやるのだもの。133そこが(をんな)ですわね』
134 数多(あまた)兵士(へいし)(やうや)足揃(あしぞろ)ひが出来(でき)た。135両将軍(りやうしやうぐん)は、
136『さア、137(これ)から(この)急坂(きふはん)(ひと)きばりだ』
138()(なが)立上(たちあが)り、
139『さア(ひめ)140陣中(ぢんちう)だ。141仕方(しかた)がない。142チツと(いた)くても辛抱(しんばう)するのだな』
143ヒルナ(ひめ)貴方(あなた)徒歩(かち)でおいでなさいませ。144(わらは)(うま)でなけりやチツとも(うご)けませぬわ。145ねえカルナさま、146貴女(あなた)だつてさうでせう』
147カルナ(ひめ)『さうですとも。148(うま)()せて(いただ)きたいものですわ』
149久米彦(くめひこ)斯様(かやう)急坂(きふはん)(うま)()らうものなら、150それこそ(いのち)()てる(やう)なものだ。151(なん)とかして(ある)いたら如何(どう)だ。152こんなきつい(さか)空馬(からうま)でさへも容易(ようい)()けないのだからな』
153カルナ(ひめ)(わらは)貴方(あなた)(いのち)まで差上(さしあ)げてラブしてるのですもの、154貴方(あなた)(うま)()つて()ちて()んだら得心(とくしん)ですわ。155ねえヒルナさま、156さうでせう』
157ヒルナ(ひめ)『さうですとも、158()んだつて将軍様(しやうぐんさま)(ささ)げた生命(いのち)159(なん)にも(うらみ)(のこ)りませぬわね』
160鬼春別(おにはるわけ)『エーエ、161無理(むり)()女王(ぢよわう)さまだな。162そんなら仕方(しかた)がない。163(うま)(くち)をとつて、164()ける(ところ)(まで)()げて()げませう』
165()(なが)ら、166ヒルナ(ひめ)(かか)へて(うま)にヒラリと()せた。167久米彦(くめひこ)(また)カルナを(うま)()せてやつた。168二人(ふたり)(ひめ)(あし)(いた)い、169(しり)(いた)いと駄々(だだ)(こね)たのは(うま)()つて()げる(ため)であつた。
170 二人(ふたり)(うま)()るや(いな)馬首(ばしゆ)をクレリと(ひがし)()け、171一鞭(ひとむち)あて一目散(いちもくさん)疾風迅雷(しつぷうじんらい)(ごと)()()した。172両将軍(りやうしやうぐん)(こゑ)()らして、
173『やアやア部下(ぶか)(もの)(ども)174(かれ)()()いて引捕(ひつと)らへよ』
175下知(げち)する。176(この)急坂(きふはん)にかかつたので(いづ)れの騎士(きし)全部(ぜんぶ)(うま)()り、177(くら)には拍車(はくしや)のついた(くつ)(くく)りつけ登坂(とはん)用意(ようい)をして(しま)つた(さい)とて、178(にはか)(うま)()(わけ)にも()かず(くつ)(ほど)(あし)穿(うが)ち、179グヅグヅしてゐる(うち)に、180二人(ふたり)(はや)くも()(とど)かぬ(ところ)まで()げてゐる。181(たちま)幾百(いくひやく)とも()れぬ獅子(しし)引連(ひきつ)れた三五教(あななひけう)杢助(もくすけ)(ふん)した摩利支天(まりしてん)は、182巨大(きよだい)なる獅子(しし)(またが)り『ウー』と四辺(あたり)山岳(さんがく)(ひび)かせ、183軍隊(ぐんたい)(なか)縦横無尽(じうわうむじん)()(まは)つた。184将軍(しやうぐん)(はじ)全軍(ぜんぐん)(おも)はぬ獅子(しし)襲来(しふらい)(きも)(つぶ)し、185(こし)をぬかす(もの)186真裸足(まつぱだし)()げるもの、187()(さけ)(もの)188(その)(ほか)種々雑多(しゆじゆざつた)(おも)(おも)ひに逃走(たうそう)し、189(のこ)るものは(こし)()かした弱虫(よわむし)ばかりであつた。190(うま)獅子(しし)(こゑ)(おどろ)いて(おも)(おも)ひに()()つて(しま)つた。191獅子(しし)(むれ)一所(ひとところ)(あつ)まり、192一斉(いつせい)(こゑ)(そろ)へて『ウー』と百雷(ひやくらい)(とどろ)(ごと)(うな)()威喝(ゐかつ)(こころ)みた(うへ)193ヒルナ、194カルナの(あと)()うて、195摩利支天(まりしてん)指揮(しき)のもとに(くも)(かすみ)()うて()く。
196 ベルツは一ケ月(いつかげつ)()滞陣(たいぢん)に、197士気(しき)(やうや)(みだ)れ、198夜陰(やいん)(じやう)じて脱隊(だつたい)するもの相次(あひつ)いて(きびす)(せつ)するため一戦(ひといくさ)して士気(しき)鼓舞(こぶ)せねばならぬと覚悟(かくご)をきめ、199シエールは裏門(うらもん)よりベルツは表門(おもてもん)より獅子(しし)奮迅(ふんじん)(いきほひ)にて、200猪武者(ゐのししむしや)先頭(せんとう)に、201さしも堅固(けんご)大門(おほもん)打破(うちやぶ)城内(じやうない)(みだ)()つた。202ハルナは八百(はつぴやく)手兵(しゆへい)指揮(しき)し、203(へい)八方(はつぱう)(わか)つて(ふせ)(たたか)うた。204されど(うしほ)(ごと)押寄(おしよ)せた敵軍(てきぐん)は、205刻々(こくこく)(その)(すう)()し、206一旦(いつたん)()()りし雑兵(ざふひやう)(まで)(かへ)(きた)つて『ワーイワーイ』と(わめ)()(なが)ら、207(また)もとの(ごと)三千(さんぜん)兵士(へいし)城内(じやうない)(のこ)らず進入(しんにふ)し、208手当(てあた)次第(しだい)(あば)()した。209(たちま)ちハルナは捕虜(ほりよ)となり刹帝利(せつていり)210左守司(さもりのかみ)211タルマンの身辺(しんぺん)(いま)(あやふ)しと()()に、212表門(おもてもん)(あた)つて宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(きこ)えて()た。213(これ)治国別(はるくにわけ)松彦(まつひこ)214竜公(たつこう)215万公(まんこう)部下(ぶか)(ひき)ゐて救援(きうゑん)(むか)うたのである。
216(かみ)(おもて)(あら)はれて
217(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
218(おと)名高(なだか)きビクの(くに)
219(ひがし)にライオン(がは)()
220西(にし)にビクトル(やま)(ひか)
221要害堅固(えうがいけんご)鉄城(てつじやう)
222ここに(きづ)きて永久(とこしへ)
223(もも)国民(くにたみ)(をさ)めます
224ビクトリア(わう)御居城(おんきよじやう)
225八岐大蛇(やまたをろち)醜神(しこがみ)
226誑惑(けふわく)されし右守(うもり)(かみ)
227ベルツの(つかさ)軍隊(ぐんたい)
228(ひき)ゐて不羈(ふき)(はか)らむと
229()()(きた)(あさ)ましさ
230天地(てんち)(つく)(たま)ひたる
231(まこと)(かみ)(ぜん)()
232(あく)(こら)して()(うへ)
233天国(てんごく)浄土(じやうど)建設(けんせつ)
234(かみ)王者(わうじや)(はじ)めとし
235(しも)国民(こくみん)(はし)(まで)
236(まも)らせ(たま)(たふと)さよ
237三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
238治国別(はるくにわけ)一行(いつかう)
239(あら)はれ(きた)(うへ)からは
240幾十万(いくじふまん)強敵(きやうてき)
241一度(いちど)(おそ)()()とも
242如何(いか)でか(おそ)れむビクの(くに)
243刹帝利王(せつていりわう)心安(うらやす)
244思召(おぼしめ)されよ天地(あめつち)
245(かみ)(たま)ひし言霊(ことたま)
246完全(うまら)委曲(つばら)打出(うちいだ)
247(すく)ひまつらむ惟神(かむながら)
248(かみ)(ちか)ひて()りまつる
249ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
250御霊(みたま)(さち)はひましませよ
251朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
252(つき)()つとも()くるとも
253仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
254(まこと)(ひと)つは()(すく)
255(まこと)刃向(はむか)(あだ)はなし
256(いさ)めよ(いさ)刹帝利(せつていり)
257(したが)(たま)諸々(もろもろ)
258(まこと)(つかさ)悪神(あくがみ)
259(この)襲撃(しふげき)(おそ)れずに
260(かみ)(こころ)(まか)せつつ
261(いの)らせ(たま)惟神(かむながら)
262(かみ)(かは)りて()(つた)ふ』
263 (この)言霊(ことたま)()くよりベルツは(にはか)(ふる)()し、264(こま)(またが)裏門(うらもん)より驀地(まつしぐら)()(いだ)す。265(この)(とき)シエールは庭石(にはいし)(つまづ)(たふ)れた途端(とたん)に、266(あし)()悲鳴(ひめい)()げて(すく)ひを(もと)めてゐる。267怖気(おぢけ)ついたる軍勢(ぐんぜい)は、268現在(げんざい)()(まへ)(たふ)れた大将(たいしやう)見向(みむ)きもやらず、269土足(どそく)のまま()()()()え、270シエールの身体(からだ)一面(いちめん)(どろ)まぶれにし(なが)ら、271(さき)(あらそ)うてバラバラバラと()()可笑(をか)しさ。272ベルツの(あと)(したが)つて大多数(だいたすう)軍隊(ぐんたい)西(にし)西(にし)へと()けり()く。273(この)(とき)(むか)ふの(かた)より(こま)(またが)驀地(まつしぐら)馳帰(はせかへ)つたのはヒルナ、274カルナの両女(りやうぢよ)であつた。275(つづ)いて杢助(もくすけ)(ふん)した摩利支天(まりしてん)は、276巨大(きよだい)獅子(しし)(またが)数百(すうひやく)獅子(しし)引連(ひきつ)れ、277ベルツが()(みち)(やく)し、278(こゑ)(そろ)へて『ウーウー』と百雷(ひやくらい)(とどろ)(ごと)(うな)()した。279ベルツは(この)(こゑ)(おどろ)いて馬上(ばじやう)より真逆様(まつさかさま)転落(てんらく)し、280路傍(ろばう)にふんのびてゐる。281(その)()軍卒(ぐんそつ)獅子(しし)(うな)(ごゑ)(をのの)(おそ)れ、282身体(しんたい)(すく)大地(だいち)()ぶりついて(ふる)(をのの)いてゐた。283ヒルナはベルツの(たふ)れた姿(すがた)目敏(めざと)くも()つけて(うま)(せな)引括(ひつくく)り、284(てき)()()てた(うま)()つけて、285(また)もやヒラリと()()り、286カルナと(とも)(わう)一大事(いちだいじ)驀地(まつしぐら)戛々(かつかつ)裏門(うらもん)より(いきほひ)よく(かへ)()たりぬ。
287大正一二・二・一四 旧一一・一二・二九 於竜宮館 北村隆光録)
   
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